説明

電池パック及びその組立て方法並びにそれを用いた携帯電子機器

【課題】 携帯電子機器に用いる電池パックにおいて、電池セルと保護回路基板を容易に接続し、かつ部品点数を削減し、組立作業が容易とする。
【解決手段】 電池セル1と保護回路基板2とを、上ケース10と下ケース11とによりパックした電池パックにおいて、保護回路基板2をケースの側面に密着配置しておき、電池セル1と保護回路基板2とを電気的に接続する方法として、リード板をスポット溶接するのではなく、保護回路基板2上に設けられて、耐アルカリ性に優れ、電気抵抗の小さい材料の導電性の接続部品5,6に、電池セル1の負極3及び正極4を圧入することにより接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池パック及びその組立て方法並びにそれを用いた携帯電子機器に関し、特に電池ケース内に電池セルと回路基板とを収納してなる電池パック及びその組立て方法並びにそれを用いた携帯電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、携帯電話等の携帯型の電子機器における主電源は、充放電可能なリチウムイオン二次電池等が使用されている。リチウムイオン二次電池を使用した電池パックは、過充電、過放電、過電流、短絡を防止するための保護回路を搭載した回路基板(保護回路基板と称す)と、電池セルと、外装ケースとで構成されている。
【0003】
図4及び図5は従来の電池パックの構成を説明するための図であり、図4において、(A)は電池パックを端子側から見た側面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図であり、図5はケースを除く分解斜視図を示す。この従来の電池パックの構成について説明する。
【0004】
従来の電池パックの構成は、図4及び図5に示している様に、電池セル1、電気部品8を搭載した保護回路基板2、負極リード板5’、正極リード板6’、上ケース10、下ケース11により構成されている。
【0005】
電池セル1はアルミ缶であり、その内部には正極及び負極がセパレータを介して集電帯として収納されている。電池セル1には、凸状の電池負極端子3が形成されており、それ以外の部分は、すべて電池正極端子4となる。凸状の電池負極3は、負極リード板5’を介して保護回路基板2上の導電性プレート7に接続されており、電池正極4は正極リード板6’(図5に示す様に、正極リード板6’はL字状の一対の導電性リード板6d,6eからなる)を介して、保護回路基板2上の導電性プレート9に接続されている。
【0006】
そして、電池セル1において、正極3と負極リード板5’との間には、両者のショートを防止すべく絶縁紙12が貼り付けられている。保護回路基板2の一面には、負極リード板5’及び正極リード板6’を接続するための導電性プレート7及び9や、電気部品8が実装されている。保護回路基板2の反対面には、携帯機器との接続のための端子9が設けられている。
【0007】
電池パックは、下ケース11に電池セル1、保護回路基板2を組み込み、最終的に、上ケース10を被せた状態で、超音波溶着または熱溶着等により固着されて直方体の電池パックが完成することになる。
【0008】
次に、電池セル1と保護回路基板2の接続方法について説明する。保護回路基板2上に導電性プレート7,9及び電気部品8を実装した後、導電性プレート7と負極リード板5’とを、また導電性プレート9と正極リード板6eとを、それぞれスポット溶接する。次に、電池セル1の正極4と正極リード板6dとをスポット溶接し、負極リード板5’を治工具でクランク状(または、U字状)に折り曲げて、電池セル1の負極3とスポット溶接する。最後に、正極リード板6dと正極リード板6eとをスポット溶接することにより、電池セル1と保護回路基板2との接続が完成するのである。
【0009】
電池パックの構造に関する技術として特許文献1及び2がある。特許文献1では、電池セルと回路基板との接続に際して、電池セルの正極及び負極と回路基板へタブを返して溶接により行っている。また、特許文献2では、自動車用の円筒形ニッケル水素電池の構造であり、電池セルから溶接電極棒を引き出して、溶接により行う様になっている。
【0010】
【特許文献1】特開2005−142153号公報
【特許文献2】特開2000−067833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した図4,5の従来の電池パックでは、電池パック内部に、電池セル1と保護回路基板2とが設けられ、電池セル1と保護回路基板2とは、ニッケル製の導電性リード板5’,6’で電気抵抗溶接(スポット溶接)して、電気的接続される様になっており、従来では、このような組立て方法が主流となっている。
【0012】
かかる従来の電池パックの組立て構造における課題としては、電池セルと保護回路基板とは、電池セルの正極と保護回路基板との間、及び電池セルの負極と保護回路基板との間を、それぞれニッケル製の導電性リード板を用いてスポット溶接するようになっているために、スポット塵や半田ボール等が飛散して、ショートを発生させるという問題がある。更に、スポット溶接の溶接強度ばらつきにより、リード板がセル側または保護回路基板上から外れてしまう問題がある。
【0013】
スポット溶接した部分の防錆処理を完全にしないと、そこから錆が発生する問題があり、また、スポット溶接を行うためには、保護回路基板上及び電池セルの正極、負極に、導電性のプレートが必要であり、さらには、電池セルと導電性リード板のショート防止のための絶縁紙が必要であるために、部品点数が増加し、またスポット溶接点数も多いために、コスト増や質量増となって、問題点が多いという欠点がある。
【0014】
更にはまた、電池セル及び保護回路基板上に実装する導電性プレートは、熱伝導等も考慮する必要があるために、比較的大きな面積を必要とすることになり、よって電池パックの小型化を阻害する要因ともなっている。
【0015】
特許文献1,2の場合にも、溶接による接続のために、組立て工数の増加、部品点数の増加となり、また小形化に寄与しないという欠点がある。
【0016】
本発明の目的は、電池セルと保護回路基板を容易に接続し、かつ部品点数を削減し、組立作業が容易な電池パック及びその組立て方法並びにそれを用いた携帯電子機器を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による電池パックは、電池ケース内に電池セルと回路基板とを収納してなる電池パックであって、前記電池パックと前記回路基板との接続が圧入によりなされていることを特徴とする。
【0018】
本発明による電池パックの組立て方法は、電池ケース内に電池セルと回路基板とを収納してなる電池パックの組立て方法であって、前記電池パックと前記回路基板との接続の際に、前記電池パックの正及び負電極端子を前記回路基板の接続部品に圧入するステップを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明による携帯型電子機器は、上記の電池パックを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下に記載するような効果を奏する。第1の効果は、電池セルと保護回路基板は、電池セルの正極と保護回路基板との間、及び電池セルの負極と保護回路基板との間を、それぞれニッケル製の導電性リード板でスポット溶接することが不要となり、またスポット溶接した部分の防錆処理が不要となるために、スポット塵や半田ボール等が飛散することなく、信頼性の高い電池パックを提供できることである。
【0021】
第2の効果は、従来は、スポット溶接を行うために保護回路基板上に導電性プレートを実装する必要があったが、本発明では、導電性プレートが不要となり、また電池セルと保護回路基板との間において、ニッケル製の導電性リード板のショート防止の絶縁紙が不要となるために、電池パックの部品点数の低減、質量の低減かつコストの低減が、それぞれ可能となることである。
【0022】
第3の効果は、保護回路基板上の導電性プレート及びスポット溶接するための導電性リード板が不要となるために、導電性リード板の引き回し等が不要とり、よって、電池パックの小型化を図ることが可能となることである。第4の効果は、電池パックの組立作業において、下ケースの側面壁に沿って、保護回路基板を固定し、保護回路基板のプレートに電池セルの正極、負極を圧入するのみのため、組立作業が容易となることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2は本発明を説明するための図である。図1において、(A)は電池パックを端子側から見た側面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図であり、図2はケースを除く分解斜視図を示す。なお、図1及び図2において、図4及び図5と同等部分は同一符号により示す。
【0024】
電池パックの構成は、図1に示すように、電池セル1、保護回路基板2、上ケース10、下ケース11により構成されている。電池セル1はアルミ缶であり、その内部には正極及び負極がセパレータを介して集電帯として収納されている。電池セル1には、円柱状の突部3aを有する負極端子3が形成されており、それ以外の部分は、すべて正極端子4となるが、保護回路基板2との接続部分の正極端子4は、円柱状の突部4aを有している。
【0025】
保護回路基板2は、電池セル1の負極端子3の突部3a及び正極端子4の突部4aを、それぞれ圧入して接続するための、耐アルカリ性に優れかつ電気抵抗の小さい導電性材料からなる負極接続部品5、正極接続部品6を有し、また、過充電、過放電、過電流、短絡を防止する回路の電気部品8が実装されている。この保護回路基板2はケースの側面に密着して設けられている。
【0026】
負極接続部品5及び正極接続部品6には、電池セル1の負極端子3の突部3a及び正極端子4の突部4aをそれぞれ圧入するための挿入孔50及び60がそれぞれ設けられている。これら挿入孔50及び60は、電池セル1の正極端子3、負極端子4の各突部3a,4aよりやや小さめの径を有する円形状とする。保護回路基板2の反対面には、携帯機器と接続するための端子9が設けられている。
【0027】
上ケース10、下ケース11は、成型樹脂を用いて超音波溶着するが、ラベル等で電池セル1と保護回路基板2とを包み込んで電池パックとすることも可能である。
【0028】
次に、電池セル1と保護回路基板2との接続方法について説明する。保護回路基板2上に負極接続部品5及び正極接続部品6と、電気部品8とをそれぞれ実装した後、保護回路基板2を下ケース11の側面に装着固定し、電池セル1の負極端子3の突部3aと、正極端子4の突部4aとを、それぞれ負極接続部品5と、正極接続部品6とに圧入しつつ、電池セル1を下ケース11に組み込む。
【0029】
この圧入時に、負極接続端子5が電池セル1の正極とショートしないよう電池セル1の負極3の面積は負極接続端子5より大きな形状とすることにより、絶縁紙等の貼り付けが不要となる。最終的に、上ケース10を被せた状態で、超音波溶着または熱溶着等により固着することによって、直方体の電池パックが完成することになる。
【0030】
次に、本発明による他の実施の形態について説明する。図3(A)〜(C)は、本実施の形態による正極接続部品および負極接続部品の例を示す図である。図3(A)を参照すると、正極接続部品6aおよび負極接続部品5aは、先の実施の形態における図2に示した構造と同等であるが、弾性材を使用して弾性変形可能な様にしたものである。
【0031】
すなわち、電池セル1と保護回路基板2の接続の負極接続5aと正極接続子部6aとは、バネ性を有した導通性のある材質のものを使用し、電池セル1との圧入しやすさを考慮して左右に可動するものを使用することにより先の実施の形態と同じ効果を得ることができる。この場合には、負極端子3、正極端子4における突部3a,4a、および負極接続部品5a,6aにおける孔50,60はなくても良く、負極端子3、正極端子4の各々と負極接続部品5a,6aの各々との圧接による面接触でも良いものである。
【0032】
図3(B)では、負極接続部品5b、正極接続部6bを弾性のあるZ字型の形状としたものである。この場合も、負極端子3、正極端子4における突部3a,4a、および負極接続部品5a,6aにおける孔50,60を設けて圧入するものであるが、そうでなくても、負極端子3、正極端子4の各々と負極接続部品5a,6aの各々との圧接による面接触でも良いものである。
【0033】
さらに、負極接続部品5c、正極接続部品6cのようなコイルタイプのバネ性を有した部品を圧入してカシメることでも、同様な効果が得ることができる。なお、本例でも、負極端子3、正極端子4における突部3a,4aを設けなくても、負極端子3、正極端子4の各面で、コイルバネの先端部分と圧触する様にしても良い。
【0034】
上記の各実施の形態における電池パックは、携帯電話機、携帯情報処理端末などの携帯端末や、デジタルカメラなどの携帯型の電子機器における電池パックに広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であり、(A)は電池パックを端子側から見た側面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図である。
【図2】本発明の実施の形態において、ケースを除く分解斜視図を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における接続部品の変形例をそれぞれ示す図である。
【図4】従来例を示す図であり、(A)は電池パックを端子側から見た側面図、(B)は(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は(A)のC−C線に沿う断面図である。
【図5】従来例において、ケースを除く分解斜視図を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 電池セル
2 保護回路基板
3 電池負極
3a,4a 突部
4 電池正極
5 負極接続部品
6 正極接続部品
8 電気部品
10 上ケース
11 下ケース
50,60 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケース内に電池セルと回路基板とを収納してなる電池パックであって、前記電池パックと前記回路基板との接続が圧入によりなされていることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記回路基板が前記電池ケースの側面に密着配置されていることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記回路基板上の負極接続端子が、前記電池セルの負極端子より小であることを特徴とする請求項1または2記載の電池パック。
【請求項4】
前記電池パックの正極端子及び負極端子の突部を前記回路基板上の接続部品の孔部に圧入することによりなされたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の電池パック。
【請求項5】
前記突部の径は前記孔部の径よりやや大に設定されていることを特徴とする請求項4記載の電池パック。
【請求項6】
前記接続部品は弾性及び導電性の材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の電池パック。
【請求項7】
電池ケース内に電池セルと回路基板とを収納してなる電池パックの組立て方法であって、前記電池パックと前記回路基板との接続の際に、前記電池パックの正及び負電極端子を前記回路基板の接続部品に圧入するステップを含むことを特徴とする電池パックの組立て方法。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか記載の電池パックを含むことを特徴とする携帯型電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−200630(P2007−200630A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15755(P2006−15755)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】