説明

電池ユニット

【課題】電池の交換性を向上させる。
【解決手段】
車両搭載用の電池ユニットであって、電池パックと、電池パックの底部を載置面から離隔させるように電池パックに回転可能に設けられた絶縁体からなる回転部材と、電池パックの底部が載置面に接する第1の位置と、電池パックの底部が載置面から離隔する第2の位置とを切り替えるように、回転部材の位置を移動させる移動機構と、を備え、回転部材は、電池パックの一端側及び他端側に設けられ、移動機構は、第2の位置で電池パックの一端側が他端側よりも高い位置に離隔されるように回転部材の位置を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換性を向上させた電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車(以下、これらを総称して電気自動車という。)は、車両の駆動用電源として、充放電可能なバッテリパック(以下、電池ユニットという)を備える。この種の電池ユニットとして、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池などが使われている。
【0003】
しかしながら、電気自動車用の電池ユニットは、耐久性が求められるため、重量が重くなり、メインテナンスや交換時に取り外しや新たな装填を行う場合に、交換性が悪いという問題を有している。具体的には、駆動用の動力源の場合、電池ユニットの重量が30kg〜100kgになるため、取り外し等の作業では2人以上で行う必要があり、人的・時間的なコストがかかっていた。
【0004】
特許文献1及び2は、自動車用の電池ユニットをスライドさせて搭載させる構造が開示されている(図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−125867号公報
【特許文献2】特開2010−129181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2の構造では、取り外しや新たな装填を行う場合に、電池ユニットを空中に浮かして作業する必要があるため、上述した駆動用動力源としての電池ユニットに適用した場合には、依然として交換性に難点がある。
【0007】
そこで、本発明は、電池ユニットにおける交換性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、車両搭載用の電池ユニットであって、車両搭載用の電池ユニットであって、電池パックと、電池パックの底部を載置面から離隔させるように電池パックに回転可能に設けられた絶縁体からなる回転部材と、電池パックの底部が載置面に接する第1の位置と、電池パックの底部が載置面から離隔する第2の位置とを切り替えるように、回転部材の位置を移動させる移動機構と、を備え、回転部材は、電池パックの一端側及び他端側に設けられ、移動機構は、第2の位置で電池パックの一端側が他端側よりも高い位置に離隔されるように回転部材の位置を移動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交換性が向上された電池ユニットが提供される。電池ユニットを車両内、車両外で自由自在に移動できる動く非常用電源として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電池ユニットが搭載された車両の概略図である。
【図2】電池ユニットの外観斜視図である。
【図3】電池ユニットの外観斜視図である。
【図4】電池パックに車輪部を取付ける構造及び電池ユニットを載置面に固定する構造を説明する図であり、(a)が固定状態、(b)が固定解除状態をそれぞれ示す。
【図5】電池パックに車輪部を取付ける構造の他の実施の形態を説明する図であり、(a)が車輪部を収納した状態、(b)が車輪部を突出させた状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電池ユニットを搭載した車両の概略図であり、車両後方のみを図示する。ここで、矢印Frは車両の進行方向(車両前進方向)を示し、Rrは車両の進行方向とは反対方向(車両後進方向)を示している。なお、図1では、電池ユニットを概略して図示する。車両200は、リアシート201、ラゲッジルーム202及び電池ユニット100を備える。
【0012】
本実施形態の車両200は、電池ユニット100の電力を用いてモータを駆動する第1の駆動部を動力源として備える電気自動車を例示するが、電池ユニット100が使用可能な車両としてはこれに限定されず、例えば電池ユニット100の電力を用いてモータを駆動する第1の駆動部と、内燃機関からなる第2の駆動部とを動力源として兼用するハイブリッド自動車であってもよい。
【0013】
ラゲッジルーム202は、リアシート201のRr方向に形成されている。ラゲッジルーム202は、バックドア204により開閉可能である。ラゲッジルーム202は、電池ユニット100が載置される載置面としてのデッキパネル202Aを備える。
【0014】
図1の例では、電池ユニット100は、デッキパネル202Aの上に載置されており、デッキパネル202Aに不図示の固定ボルトを用いて固定される。電池ユニット100の固定方法については後述する。
【0015】
図2は、電池ユニット100の概略を示す斜視図である。なお、図2では、デッキパネル202Aへの固定が解除された状態の電池ユニット100を示している。
【0016】
図示のように、電池ユニット100は、電池本体をなす電池パック2と、電池パック2の底部を載置面(デッキパネル202A)から離隔させるように電池パック2に回転可能に設けられた回転部材としての車輪部3とを備える。
【0017】
電池パック2は、平面略四角形の略ブロック状の外形を有する。電池パック2は、その内部に、図示しない二次電池を構成する部材及び電極が備えられる。本実施形態では、電池パック2内の二次電池としてリチウムイオン電池を備えたものを例示するが、これに限られず、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、他の各種の二次電池を使用することができる。
【0018】
また、電池パック2の外形も図示のものに特に限定されるものではない。ただし、電池パック2の底部については、凹凸が少ない形状とすることが好ましい。図示しないが、本実施形態では、電池パック2の底部は平面となっている。
【0019】
電池ユニット100は、回転部材としての4個の車輪部3が、電池パック2の一端側及び他端側に2個ずつ設けられる。
【0020】
車輪部3は、各車輪がそれぞれの回転軸(図示せず)に取付けられ、4つの車輪が相互に独立に回転する構造となっているが、これに限られず、両端で一対の車輪を支持する回転軸を用いて当該一対の車輪が同時に回転する構造とすることもできる。本実施形態では、載置面(デッキパネル202A)に接触する各車輪が合成樹脂などの絶縁部材で形成される。
【0021】
図4は、電池パック2に車輪部3を取付ける構造及び電池ユニット100を載置面に固定する構造の一例を説明する図であり、(a)が固定状態、(b)が固定解除状態をそれぞれ示す。図4の例では、電池パック2内にばね24を介して車輪部3が収容される。具体的には、電池パック2内(アッパーケース21の側面側)に空間部20が設けられ、この空間部20内にばね24、支持部材25及び車輪部3が収容されることで、電池パック2に対する車輪部3の相対位置を移動させる移動機構を構成する。かかる移動機構により、電池パック2に対する車輪部3の開/閉状態が切り替えられる。
【0022】
移動機構において、ばね24の一端側は電池パック2内の上壁部2Aに固定され、ばね24の他端側は、支持部材25の上端に固定される。支持部材25は、空間部20内を図中の上下方向に移動可能な外形(この例では略円筒状)をなし、車輪部の軸を回転可能に支持する。また、支持部材25は、固定ボルト22が挿入可能な穴部を有している(図4(a)参照)。
【0023】
電池ユニット100を載置面(デッキパネル202A)に固定する際には、図4(a)に示すように、略L字状の固定ブラケット23の各面を電池パック3の側面部及びデッキパネル202Aに当接させる。そして、2つの固定ボルト22をそれぞれ固定ブラケット23の孔部を通じて、デッキパネル202A及び電池パック3に設けられた各々のねじ穴にねじ込む。このとき、電池パック3にねじ込まれた固定ボルト22の先端は、支持部材25の穴部に挿入される。
【0024】
すなわち、図4の例では、ばね24により各車輪が下方(載置面側)に付勢される構造となっている。そして、図4(a)の固定時には、固定ブラケット23及び固定ボルト22により電池パック2の端部(この実施形態では4箇所)がデッキパネル202Aに固定され、各車輪がデッキパネル202Aと接触した状態(閉状態)を保ちつつ、各ばね24が変形し圧縮された状態となる。
【0025】
これに対して、電池ユニット100の交換やメインテナンスの際に、図4(a)の状態から各固定ボルト22が取り外されると、各ばね24の付勢力により各車輪が下方に押圧される。このとき、依然として車輪とデッキパネル202Aとの接触状態が維持されることから、電池パック2の底部すなわちデッキパネル202Aとの接触箇所が、デッキパネル202Aから図1のUp方向に離隔される。さらに、このとき車輪が開状態となり電池ユニット100のデッキパネル202Aとの接触箇所が各車輪のみとなるので、デッキパネル202Aと接触する各車輪の回転及び電池ユニット100の重さによる慣性力を利用して、最小限の力で電池ユニット100をバックドア204側に移動させることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態の電池ユニット100は、車輪部3が絶縁体で形成されているため、車輪が開状態となることで高電圧が遮断され、台風時での大雨、震災時の洪水などで多量の水が車内に冠水した場合であっても、デッキパネル202A等を通じて電池の電源が漏電されるようなケースをより低くすることができ、電池交換等の作業を簡単に行うことが可能となる。
【0027】
さらに、本実施形態では、図4(b)に示すように、載置面に対する固定解除状態において、固定ボルト22を再び電池パック3のねじ穴にねじ込むことができる。この場合に、固定ボルト22の先端は、支持部材25の上端の位置を規制する機能を担う。したがって、上方から外力が加えられた場合でも、電池パック2の底部がデッキパネル202Aと接触することを回避することが可能になる。
【0028】
このように、本実施形態の電池ユニット100は、電池パック2の底部を載置面から離隔させるように車輪部3が設けられていることから、いわゆる自走式の電池ユニットとなり、例えば30kg〜100kg程度の重量物であっても、交換等の作業が一人で簡単に行えるようになり、人的・時間的コストを大幅に削減することが可能になる。具体的には、電気自動車の駆動用二次電池の交換作業時間として、従来と比較して2分の1から3分の1の時間で交換作業ができるようになる。
【0029】
さらに、本実施形態の電池ユニット100は、図3に示すように、電池パック2におけるリアシート201側の端部がバックドア204側の端部よりも高くなるように設定されている。すなわち、電池ユニット100は、移動(進行)方向における高低差ができるように構成され、電池パック2の一端側(移動方向側)の載置面202Aからの高さH1が他端側の同高さH2よりも低く設定されている(H1<H2)。かかる構成とすることにより、電池ユニット100を一層小さい力で移動させることが可能となり、バックドア204側への移動を容易に行うことができる。
【0030】
このような高低差の設定は、例えば、車輪の径を変更したり、図4(b)で上述したような支持部材25の上端の規制位置を調節することで、実現可能である。
【0031】
上述の実施形態では、電池パック2と車輪部3との相対移動(車輪の開/閉状態の切り替え)をばね24による付勢力を用いて行う構成としたが、これに限定されず、シリンダを用いて行うこともできる。この場合の構成例としては、例えば図5に示すように、電池パック2内に油圧シリンダ26を設け、かかる油圧シリンダの上下移動するシリンダ部で車輪部3を支持する構造とし、シリンダへの油の出し入れを電動式で行うようにすることができる。
【0032】
(変形例1)
上述の実施形態では、電池ユニット100をラゲッジルーム202に配置したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の様々な位置に搭載することができる。例えば、本実施形態の自動車を非常用電源車として活用する場合に、電池ユニット100を複数の所定位置に搭載することにより、バッテリー切れとなった他の自動車に迅速に電池ユニット100を移動・搭載させたり、或いは本実施形態の自動車の内部の任意の位置に電池ユニット100を移動させて、バッテリー切れとなった他の自動車のバッテリーを充電させることが可能となる。
【0033】
(変形例2)
また、上述の実施形態では、電池ユニット100を載置面に固定させる構造について説明したが、かかる固定構造は必須のものではない。すなわち、本実施形態の自動車を非常用電源車として活用する場合に、1または複数の電池ユニット100をトランク内に配置し、該トランク内で自由に移動可能な状態としておくことにより、非常時における電池ユニット100の供給や電源供給等の作業を迅速に行うことが可能となる。
【0034】
(変形例3)
上述の実施形態では、回転部材として4個の車輪を設ける構成としたが、本発明はこれに限られるものではなく、車輪を3個以下とする、あるいは5個以上設ける構成とすることもできる。例えば2個の車輪を設ける場合には、車輪1個当たりの幅を広くしたローラー状部材を用いることができる。
【0035】
(変形例4)
さらに、上述の実施形態では、回転部材として車輪を用いたが、これに限定されず、例えば球状体を用いることもできる。この場合には、車輪を用いた場合と比較して、電池ユニット100の載置面に対する移動方向がより自由になる。
【0036】
(変形例5)
さらにまた、上述の実施形態では、電池パックに回転部材が一体化される構成例について説明したが、これに限定されず、回転部材が電池パックに着脱可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 電池ユニット 2 電池パック 3 車輪部
200 車両 201 リアシート 202 ラゲッジルーム
202A デッキパネル(載置面) 204 バックドア
2A 上壁部 20 空間部 21 アッパーケース 22 固定ボルト
23 固定ブラケット 24 ばね 25 支持部材 26 シリンダ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックと、
前記電池パックの底部を載置面から離隔させるように前記電池パックに回転可能に設けられた絶縁体からなる回転部材と、
前記電池パックの底部が載置面に接する第1の位置と、前記電池パックの底部が載置面から離隔する第2の位置とを切り替えるように、前記回転部材の位置を移動させる移動機構と、
を備え、
前記回転部材は、前記電池パックの一端側及び他端側に設けられ、
前記移動機構は、前記第2の位置で前記電池パックの一端側が他端側よりも高い位置に離隔されるように前記回転部材の位置を移動させることを特徴とする車両搭載用の電池ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−38002(P2013−38002A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175067(P2011−175067)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】