説明

電池及び電池の製造方法

【課題】複数の膜の間を電子もしくはイオン化物質が通過し易く、充電や放電の性能が良い電池を提供する。
【解決手段】電池1は基板5と、基板5の同一面上に隣接して配置された中間集電体膜9、正極電解質膜10、負極電解質膜12を有する。中間集電体膜9と正極電解質膜10とは隣接して配置され、中間集電体膜9と正極電解質膜10との一部が重ねて配置される。同様に、中間集電体膜9と負極電解質膜12とは隣接して配置され、中間集電体膜9と負極電解質膜12との一部が重ねて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池及び電池の製造方法等にかかわり、特に、同一面上に複数の電解質膜が配置された電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器や電気自動車は電気を供給する2次電池を備えている。この電池を小型かつ高出力にする構造と製造方法が特許文献1に開示されている。それによると、電池は直線状の充放電反応部が絶縁体上に複数配置されたバイポーラ電池となっている。この充放電反応部は直線状に形成した電極、正極活物質部、固体電解質部、負極活物質部、電極の膜がこの順序で配置されている(以下、電極を集電体膜、活物質部を電解質膜、固体電解質部を中間電解質膜と称す)。
【0003】
充放電反応部の製造にはインクジェット法が用いられている。各膜の材料を含むインクを用意し、各インクを絶縁体に吐出して塗布する。そして、塗布したインクを乾燥した後、重合等の過程を経て各膜を形成していた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−174617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁体上には集電体膜、電解質膜、中間電解質膜が配置されている。隣接する各膜は膜の端同士が接触して配置されている。充電及び放電が行われるとき電子もしくはイオン化物質が各膜の間を移動する。このとき、電子もしくはイオン化物質は各膜が接触している接触面を通過する。接触面を境にして膜の構造が変わるので、接触面では電子もしくはイオン化物質が通過し難くなっている。膜が薄いとき隣接する膜の接触面の面積が狭いので、電子もしくはイオン化物質が通過し難くなる。このため、複数の膜の間を電子もしくはイオン化物質が通過し易く、充電や放電の性能が良い電池が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる電池であって、基体と、前記基体の同一面上に隣接して配置された複数の膜と、を有し、前記膜の少なくとも一部が隣接する前記膜に重ねて配置されることを特徴とする。
【0008】
この電池によれば、基体上に複数の膜が配置されている。そして、膜の内部を電子もしくはイオン化物質が移動することにより、充電及び放電が行われる。膜は複数配置されるので、膜と膜との間を電子もしくはイオン化物質が移動する。このとき、隣接する膜の接触する面積が狭いときより広い方が膜と膜との間を電子もしくはイオン化物質が移動し易くなる。そして、隣接する膜の端同士が接触するように膜を配置するときに比べて、隣接する膜の端同士を重ねて配置する方が膜同士の接触面積を広くすることができる。従って、隣接する膜と膜との間で電子もしくはイオン化物質を移動し易くすることができる。
【0009】
[適用例2]
上記適用例にかかる電池において、複数の前記膜は集電体膜及び電解質膜を含み、前記集電体膜と前記電解質膜とが隣接して配置され、隣接する前記集電体膜と前記電解質膜との少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする。
【0010】
この電池によれば、隣接する集電体膜と電解質膜とが重ねて配置されている。集電体膜は電子を電解質膜に供給もしくは電解質膜から収集する膜であり、電子の移動が行われる膜である。そして、集電体膜と電解質膜とが重ねて配置されている為、集電体膜と電解質膜との接触面積が広く形成されている。その結果、集電体膜と電解質膜との間で電子を移動し易くすることができる。
【0011】
[適用例3]
上記適用例にかかる電池において、前記集電体膜上に前記電解質膜が重ねて配置されることを特徴とする。
【0012】
この電池によれば、集電体膜を形成した後に電解質膜を形成し易い配置になっている。集電体膜は導電性の良い材質で形成されるので、金属が用いられることが多い。このとき、集電体膜は金属の微粒子を塗布した後、焼成して形成される。電解質膜を配置した後に集電体膜を形成する場合には、集電体膜を焼成する熱により電解質膜に損傷を与える可能性がある。一方、本適用例では電解質膜を形成する前に集電体膜を形成できるので、電解質膜に損傷を与え難くすることができる。
【0013】
[適用例4]
上記適用例にかかる電池において、前記電解質膜は正極活物質を含む正極電解質膜であることを特徴とする。
【0014】
この電池によれば、集電体膜と正極電解質膜との一部が重ねて配置される。従って、集電体膜と正極電解質膜との間で電子を移動し易くすることができる。その結果、正極電解質膜にて電気化学反応を活性化することができる。
【0015】
[適用例5]
上記適用例にかかる電池において、前記電解質膜は負極活物質を含む負極電解質膜であることを特徴とする。
【0016】
この電池によれば、集電体膜と負極電解質膜との一部が重ねて配置される。従って、集電体膜と負極電解質膜との間で電子を移動し易くすることができる。その結果、負極電解質膜にて電気化学反応を活性化することができる。
【0017】
[適用例6]
上記適用例にかかる電池において、複数の前記膜は複数の電解質膜を含み、少なくとも一対の前記電解質膜が隣接して配置され、隣接する前記電解質膜の少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする。
【0018】
この電池によれば、隣接する電解質膜が重ねて配置されている。電解質膜はイオン化物質の移動が行われる膜である。そして、電解質膜同士が重ねて配置されている為、電解質膜同士の接触面積が広く形成されている。その結果、隣接する電解質膜の間でイオン化物質を移動し易くすることができる。
【0019】
[適用例7]
上記適用例にかかる電池において、前記電解質膜は正極活物質を含む正極電解質膜と活物質を含まない中間電解質膜とを有し、前記正極電解質膜と前記中間電解質膜とが隣接して配置され、隣接する前記正極電解質膜と前記中間電解質膜との少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする。
【0020】
この電池によれば、隣接する正極電解質膜と中間電解質膜とが重ねて配置されている。従って、正極電解質膜と中間電解質膜との間でイオン化物質を移動し易くすることができる。その結果、正極電解質膜にて電気化学反応を活性化することができる。
【0021】
[適用例8]
上記適用例にかかる電池において、前記電解質膜は負極活物質を含む負極電解質膜と活物質を含まない中間電解質膜とを有し、前記負極電解質膜と前記中間電解質膜とが隣接して配置され、隣接する前記負極電解質膜と前記中間電解質膜との少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする。
【0022】
この電池によれば、隣接する負極電解質膜と中間電解質膜とが重ねて配置されている。従って、負極電解質膜と中間電解質膜との間でイオン化物質を移動し易くすることができる。その結果、負極電解質膜にて電気化学反応を活性化することができる。
【0023】
[適用例9]
本適用例にかかる電池の製造方法は、集電体膜と電解質膜とが基体の同一面上に配置された電池の製造方法であって、前記基体上に前記集電体膜を配置する集電体配置工程と、前記基体上に前記電解質膜を配置する電解質配置工程と、を有し、前記電解質配置工程は前記集電体配置工程の後に行われ、前記電解質配置工程において前記集電体膜と前記電解質膜とを隣接して配置し、前記集電体膜と前記電解質膜との少なくとも一部を重ねて配置することを特徴とする。
【0024】
この電池の製造方法によれば、集電体膜を形成した後に電解質膜を形成している。集電体膜は導電性の良い材質で形成されるので、金属が用いられることが多い。このとき、集電体膜は金属の微粒子を塗布した後、焼成して形成される。電解質膜を配置した後に集電体膜を形成する場合には、集電体膜を焼成する熱により電解質膜に損傷を与える可能性がある。一方、本適用例では電解質膜を形成する前に集電体膜を形成するので、集電体膜を焼成する熱により電解質膜に損傷を与え難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、具体化した実施形態について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0026】
(第1の実施形態)
本実施形態における特徴的な電池と電池を製造する場合の例とについて図1〜図11に従って説明する。
【0027】
(電池)
最初に、電池1について図1を用いて説明する。図1(a)は、電池を示す概略斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の電池のA−A’線に沿う模式断面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、電池1は矩形のシート状の上外装2及び下外装3を備え、上外装2と下外装3とが外周において密着して配置されている。電池1の両端には上外装2と下外装3との間から電池基板4が突出して配置されている。電池基板4は基体としての基板5を備え、基板5の一端には膜及び集電体膜としての負極集電体膜6が配置されている。負極集電体膜6と逆側の端には膜及び集電体膜としての正極集電体膜7が配置されている。負極集電体膜6は電池1の負極端子であり、正極集電体膜7は正極端子となっている。負極集電体膜6と正極集電体膜7とが配置されている方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。そして、電池1の厚み方向をZ方向とする。
【0028】
上外装2及び下外装3の材料は絶縁性に優れ、引張り強度や耐衝撃性があり破れ難く、さらには熱伝導性の良い材料が好ましい。上外装2及び下外装3の材料には、例えば、金属箔と樹脂フィルムとが積層された高分子金属複合フィルム、アルミラミネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系材料等からなるフィルム等を用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミラミネートフィルムを採用している。
【0029】
図1(c)は電池基板を示す模式平面図である。図1(c)に示すように、電池基板4は基板5上の両端に負極集電体膜6と正極集電体膜7とを備えている。負極集電体膜6と正極集電体膜7との間には電解質パターン8と膜及び集電体膜としての中間集電体膜9とが交互に配置されている。電解質パターン8は、それぞれ膜及び電解質膜としての正極電解質膜10、中間電解質膜11、負極電解質膜12により構成され、この順に並べ配置されている。負極集電体膜6と負極電解質膜12とが隣接して配置され、正極集電体膜7と正極電解質膜10とが隣接して配置されている。各膜は直線状に形成され、平行に配置されている。本実施形態では、例えば、1個の電池基板4に電解質パターン8が4個配置され、各電解質パターン8の間に中間集電体膜9が3個配置されている。電解質パターン8と中間集電体膜9の個数は電池基板4の大きさと性能に合わせて設定すれば良く、特に限定されない。
【0030】
図1(d)は電池基板を示す要部模式断面図である。図1(d)に示すように、中間集電体膜9と隣接して正極電解質膜10が配置され、正極電解質膜10の一部が中間集電体膜9上に重ねて配置されている。正極電解質膜10と隣接して中間電解質膜11が配置され、正極電解質膜10の一部が中間電解質膜11上に重ねて配置されている。中間電解質膜11と隣接して負極電解質膜12が配置され、負極電解質膜12の一部が中間電解質膜11上に重ねて配置されている。さらに、負極電解質膜12と隣接して中間集電体膜9が配置され、負極電解質膜12の一部が中間集電体膜9上に重ねて配置されている。そして、隣接する膜の少なくとも一部が重ねて配置されている。
【0031】
同様に、負極集電体膜6と隣接して負極電解質膜12が配置され、負極電解質膜12の一部が負極集電体膜6上に重ねて配置されている。また、正極集電体膜7と隣接して正極電解質膜10が配置され、正極電解質膜10の一部が正極集電体膜7上に重ねて配置されている。
【0032】
基板5は絶縁性のある板またはシートであればよく、ガラス板、シリコン板を用いることができる。他にも、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエステル等の樹脂板や樹脂と絶縁性のある材料を混成した紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板等を用いることができる。基板5は剛体に限らず可撓性のあるシートでも良い。本実施形態では、例えば、ポリプロピレン板を採用している。基板5は必ずしも板状に限らず、電解質パターン8や集電体膜が形成可能な面を備えていれば良い。
【0033】
負極集電体膜6と正極集電体膜7と中間集電体膜9との材料は、導電性を有する材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル、銀等の金属を微粒子により形成した膜や金属箔、電解箔、圧延箔を用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミニウム微粒子により形成した膜を採用している。集電体の厚みは、特に制約はないが、集電体の強度が保てる厚みが良い。本実施形態では、例えば、厚みは通常5〜30μmを採用している。
【0034】
正極電解質膜10は正極活物質、導電助剤、金属粒子、結着材、電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)、添加剤、等から構成されている。正極活物質は遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)を用いることができる。例えば、LiMnO2、LiMn24、Li2MnO4等のLi−Mn系複合酸化物、LiCoO2等のLi−Co系複合酸化物、Li2Cr27、Li2CrO4等のLi−Cr系複合酸化物、LiNiO2等のLi−Ni系複合酸化物を用いることができる。他にも、LiNi1・xCoxO2等のLi−Ni−Co系複合酸化物、LiNi1/2Mn1/2O2等のLi−Ni−Mn系複合酸化物、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のLi−Ni−Mn−Co系複合酸化物、Li4Ti512等のLi−Ti系酸化物を用いることができる。他にも、LixFeOy、LiFeO2等のLi−Fe系複合酸化物、LiFePO4等の燐酸鉄リチウム系化合物等やLi2S等のリチウム硫化物等から選択することが可能である。また、これらの材料に限定されるものではなく各種の材料から選択することが可能である。本実施形態においては、例えば、正極活物質にLi2MnO4を採用している。
【0035】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができる。また、これらの材料に限定されるものではなく各種の材料から選択することが可能である。本実施形態においては、例えば、導電助剤にアセチレンブラックを採用している。金属粒子は負極集電体膜6と同じ金属を微細な粒子にしたものであり、本実施形態においては、例えば、金属粒子にアルミニウム微粒子を採用している。
【0036】
結着材としては、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド等を用いることができる。ただし、これらに限られるわけではなく、公知の結着材を用いることができる。また、結着材がなくとも電解質ポリマーが正極活物質の微粒子同士を結びつける場合には必ずしも必要でない。本実施形態においては、例えば、結着材にポリフッ化ビニリデンを採用している。
【0037】
電解質支持塩には公知のリチウム塩が用いられ、例えば、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(C25SO22Nとも記載)を用いることができる。他にも、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)及びこれらの混合物等を用いることができる。これらの材料に限定されるものではなく各種の材料から選択することが可能である。本実施形態においては、例えば、電解質支持塩にリチウムビスを採用している。
【0038】
電解質ポリマーとしては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、及びこれらの共重合体等を用いることができる。これらのポリアルキレンオキシド系高分子は、イオンを伝導する機能を備え、上述のリチウム塩をよく溶解する特徴がある。さらに、ポリアルキレンオキシド系高分子は重合した後で機械的強度が高くなる性質を備えている。本実施形態においては、例えば、電解質ポリマーにポリエチレンオキシドを採用している。添加剤は、例えば、電池の性能や寿命を高めるためのトリフルオロプロピレンカーボネートや、補強材として各種フィラー等を適宜用いてもよい。添加剤がなくとも電池の性能が得られる場合には添加剤は必ずしも必要ではない。さらに、電解質ポリマーを重合させるために重合開始剤を用いても良い。重合開始剤は電解質ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させ、重合方法(熱重合法、光重合法、放射線重合法、電子線重合法等)や重合させる化合物に応じて適宜選択する必要がある。例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル等を用いることができるが、これらに制限されるべきものではない。本実施形態においては、例えば、重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルを採用している。
【0039】
中間電解質膜11は電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)、添加剤、等から構成されている。これらの材料は正極電解質膜10の材料と同様な材料を用いることができる。本実施形態においては、例えば、電解質ポリマーにポリエチレンオキシドを採用し、電解質支持塩にはリチウムビスを採用している。
【0040】
負極電解質膜12は負極活物質、導電助剤、結着材、電解質材料(電解質支持塩及び電解質ポリマー)、添加剤、等から構成されている。負極活物質は各種の黒鉛類、例えば、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボン等、公知の黒鉛類を用いることができる。他にも公知の金属化合物、金属酸化物、Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)、ホウ素添加炭素、Li4Ti512等のリチウム−チタン複合酸化物、Li22Si5等のシリコン化合物、LiC6等の炭素化合物、リチウム金属等を用いることができ、これらの材料を単独で使用しても良いし、複合して用いても良い。負極活物質はこれらに制限されるべきものではなく従来公知のものを適宜利用することができる。本実施形態においては、例えば、負極活物質にLi4Ti512を採用している。
【0041】
導電助剤、結着材、電解質材料は正極電解質膜10と同様な材料をそれぞれ用いることができる。負極活物質に黒鉛を用いる場合には導電助剤は必ずしも必要ではない。本実施形態においては、例えば、導電助剤にアセチレンブラックを採用し、結着材にポリフッ化ビニリデンを採用している。さらに、電解質ポリマーにポリエチレンオキシドを採用し、電解質支持塩にはリチウムビスを採用している。
【0042】
正極電解質膜10、電解質パターン8、負極電解質膜12の厚さは厚い方が薄い場合に比べて、イオン化物質を多く含有できるため、充電量の大きな電池1にすることができる。各層の厚さは特に限定されてないが、本実施形態では、例えば、各層の厚さは5〜30μmを採用している。
【0043】
電池1を充電するとき、電池1と図示しない充電装置とを接続する。そして、電池1に電圧を印加する。正極電解質膜10に含まれるリチウム金属がイオン化してリチウムイオンになる。リチウムイオンは中間電解質膜11を経由して負極電解質膜12に移動する。負極電解質膜12ではリチウムイオンに電子が供給され、リチウム金属を含む化合物が形成される。
【0044】
電池1を放電するとき、図示しない電気的負荷を接続する。このとき、負極電解質膜12に含まれるリチウム金属がリチウムイオンになる。そして、リチウムイオンが中間電解質膜11を経由して正極電解質膜10に移動する。さらに、負極電解質膜12は電子を放出する。この電子は負極集電体膜6、電気的負荷、正極集電体膜7を経由し正極電解質膜10に流入する。従って、正極電解質膜10にはリチウムイオンと電子が供給される。そして、リチウムイオンと電子とが結合して、リチウム金属を含む化合物が形成される。
【0045】
充電及び放電するとき、リチウムイオンが正極電解質膜10と中間電解質膜11と負極電解質膜12との間を移動する。そして、電子が負極集電体膜6と負極電解質膜12との間を移動する。他にも、電子が正極集電体膜7と正極電解質膜10との間を移動する。さらに、電子が中間集電体膜9と負極電解質膜12との間を移動する。さらに、電子が中間集電体膜9と正極集電体膜7との間を移動する。そして、リチウムイオン及び電子を移動し易くすることにより電池1は出力を大きくすることができる。
【0046】
(液滴吐出装置)
図2は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置15により、膜を構成する材料を含む機能液が吐出されて塗布される。図2に示すように、液滴吐出装置15には、直方体形状に形成される基台16を備えている。本実施形態では、この基台16の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0047】
基台16の上面16aには、Y方向に延びる一対の案内レール17a,17bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台16の上側には、一対の案内レール17a,17bに対応する図示しない直動機構を備えたステージ18が取付けられている。そして、ステージ18はY方向に移動可能になっている。
【0048】
さらに、基台16の上面16aには、案内レール17a,17bと平行に主走査位置検出器19が配置され、ステージ18の位置が計測できるようになっている。そのステージ18の上面には、載置面20が形成され、その載置面20には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。そして、載置面20に基板21を載置して、基板21を載置面20の所定位置に位置決めする。その後、基板チャック機構によって基板21が載置面20に固定されるようになっている。
【0049】
基台16のX方向両側には、一対の支持台22a,22bが立設され、その一対の支持台22a,22bには、X方向に延びる案内部材23が架設されている。案内部材23は、その長手方向の幅がステージ18のX方向よりも長く形成され、その一端が支持台22a側に張り出すように配置されている。案内部材23の上側には、吐出する液体を供給可能に収容する収容タンク24が配設されている。一方、その案内部材23の下側には、X方向に延びる案内レール25がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0050】
案内レール25に沿って移動可能に配置されるキャリッジ26は、略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ26は直動機構を備え、X方向に移動可能になっている。案内部材23とキャリッジ26との間には、副走査位置検出装置27が配置され、キャリッジ26の位置が計測可能になっている。そして、キャリッジ26のステージ18側に向いている下面26aには、液滴吐出ヘッド28が凸設されている。ステージ18とキャリッジ26とを移動しながら、液滴吐出ヘッド28から液滴を吐出することにより、所望のパターンに描画することが可能になっている。
【0051】
X方向と逆の基台16側面であってキャリッジ26の移動範囲と対向する場所には、保守装置29が配置され、液滴吐出ヘッド28をクリーニングする機構が配置されている。そして、液滴吐出ヘッド28をクリーニングすることにより、液滴吐出ヘッド28を正常に吐出可能な状態に保つことが可能となっている。
【0052】
図3(a)は、キャリッジを示す模式平面図である。図3(a)に示すようにキャリッジ26には9個の液滴吐出ヘッド28が配置され、液滴吐出ヘッド28の下面には、それぞれノズルプレート30が備えられている。そのノズルプレート30には、それぞれ複数のノズル31がX方向に所定の間隔で配列されている。
【0053】
図3(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図である。図3(b)に示すように、ノズルプレート30の上側であってノズル31と相対する位置には、キャビティ32が形成されている。そして、キャビティ32には収容タンク24に貯留されている材料液としての機能液33が供給される。キャビティ32の上側には、上下方向に振動して、キャビティ32内の容積を拡大縮小する振動板34と、上下方向に伸縮して振動板34を振動させる圧電素子35が配設されている。圧電素子35が上下方向に伸縮して振動板34を振動し、振動板34がキャビティ32内の容積を拡大縮小する。それにより、キャビティ32内に供給された機能液33は液滴36となってノズル31から吐出される。
【0054】
詳細に述べると、液滴吐出ヘッド28が圧電素子35を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子35が伸張する。そして、圧電素子35が振動板34を押圧することにより、キャビティ32内の容積を縮小させる。その結果、液滴吐出ヘッド28のノズル31からは、縮小した容積分の機能液33が液滴36となって吐出される。
【0055】
(電池の製造方法)
次に、上述した液滴吐出装置15を用いて、電池1を製造する方法について図4〜図11にて説明する。図4は、電池を製造する製造工程を示すフローチャートである。図5〜図11は、電池の製造方法を説明する図である。
【0056】
図4に示したフローチャートにおいて、ステップS1は、撥液面形成工程に相当し、基板の上面に撥液面を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、集電体塗布工程に相当し、集電体の材料からなる機能液を塗布して乾燥する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は、集電体固化工程に相当し、塗布した集電体の機能液を焼成して固化する工程である。ステップS2及びステップS3がステップS11の集電体配置工程であり、集電体を配置する工程となっている。次にステップS4に移行する。ステップS4は、中間電解質塗布工程に相当し、電解質支持塩及び電解質ポリマー等からなる機能液を塗布して乾燥する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は、中間電解質固化工程に相当し、塗布した電解質ポリマーを重合させる工程である。ステップS4及びステップS5がステップS12の中間電解質配置工程であり、中間電解質膜を配置する工程となっている。次にステップS6に移行する。
【0057】
ステップS6は、表面改質工程に相当する。この工程は、ステップS1にて形成した撥液面の撥液性を除去する。そして、撥液性を除去した場所と別の場所に撥液面を形成する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7は、正負電解質塗布工程に相当する。この工程では、正極電解質膜を形成する予定の場所に正極活物質、導電助剤、結着材、電解質ポリマー、電解質支持塩、添加剤等の材料からなる機能液を塗布する。さらに、負極電解質膜を形成する予定の場所に負極活物質、導電助剤、結着材、電解質ポリマー、電解質支持塩、添加剤等の材料からなる機能液を塗布する。その後、塗布した機能液を乾燥する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は、正負電解質固化工程に相当し、塗布した正極及び負極の電解質膜の機能液に含まれる電解質ポリマーを重合させる工程である。ステップS7及びステップS8がステップS13の正負電解質配置工程であり、正極及び負極の電解質膜を配置する工程となっている。そして、ステップS12の中間電解質配置工程とステップS13の正負電解質配置工程とが電解質配置工程である。電解質配置工程はステップS11の集電体配置工程の後に実施される工程となっている。ステップS9は、外装配置工程に相当し、外装部品を配置する工程である。以上の工程により電池の製造工程を終了する。
【0058】
続いて、図5〜図11を用いて電池の製造工程を詳細に説明する。図5はステップS1の撥液面形成工程に対応する図である。図5(a)において、撥液面を形成する予定の場所である撥液領域39を斜線にて示す。撥液領域39は負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜9、中間電解質膜11を配置する予定の場所を取り囲んで配置される。
【0059】
図5(b)に示すように、凸版印刷法の1種であるマイクロコンタクトプリンティング法を用いる。この方法を実施する印刷機40は微細なパターンを印刷することが可能になっている。
【0060】
印刷機40は載置台41とスタンプ台42とスタンプ43を備えている。載置台41は印刷する基板5を載置するための台であり、基板5を吸着して保持する機構を備えている。スタンプ台42には受皿が形成され、受皿には多孔質の樹脂からなるインクマット42aが配置されている。インクマット42aには撥液性の膜を形成するための液体材料を配置してある。この液体材料としては、撥液原料を溶剤に溶かしたものが用いられ、本実施形態においては、例えば、オプツールDSX(ダイキン工業社製)をフッ素系溶剤に希釈した液体材料を採用している。
【0061】
スタンプ43はステージ44に保持されている。ステージ44は昇降機構と直動機構とを備えている。そして、ステージ44はインクマット42aと対向する位置に移動した後下降することにより、スタンプ43をインクマット42aに押圧する。次に、ステージ44が上昇して基板5と対向する位置に移動した後下降することにより、スタンプ43を基板5に押圧する。つまり、印刷機40は液状材料を基板5に印刷することが可能になっている。
【0062】
スタンプ43は弾力性を有する樹脂等により形成されている。本実施形態では、例えば、シリコンゴムを採用している。スタンプ43には撥液領域39に対応するパターンが形成されている。このパターンは光リソグラフィー法や電子線リソグラフィー法を用いて形成することにより高精度なパターンになっている。
【0063】
スタンプ43を用いて撥液性の膜を形成するための液体材料を基板5に転写する。続いて、塗布した液状材料を乾燥して固化する。その結果、図5(c)に示すように、基板5上に撥液膜45が形成される。この撥液膜45の上面を撥液面45aとする。
【0064】
図6(a)〜図6(b)はステップS2の集電体塗布工程に対応する図である。ステップS2では、図6(a)に示す負極集電体配置予定場所46、正極集電体配置予定場所47、中間集電体配置予定場所48に集電体の材料等からなる機能液33を塗布する。負極集電体配置予定場所46、正極集電体配置予定場所47、中間集電体配置予定場所48はそれぞれ負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜9を配置する予定の場所である。
【0065】
そして、図6(b)に示すように、液滴吐出ヘッド28のノズル31から中間集電体配置予定場所48に液滴36を吐出する。この液滴36は第1機能液33aからなり、第1機能液33aは集電体の材料を分散媒に分散した液状体である。
【0066】
この分散媒は、特に限定されないが、作業効率の観点から、常圧における沸点が50〜200℃のものが好ましい。この分散媒は、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒を用いることができる。他にも、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒を用いることができる。他にも、酢酸エチル、酢酸プロピル、乳酸メチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等を用いることができる。本実施形態では、例えば、プロピレンカーボネイトとN−メチルピロリドンとの混合液を採用している。
【0067】
中間集電体配置予定場所48の周囲には撥液面45aが形成されているため、第1機能液33aは中間集電体配置予定場所48に精度良く塗布可能になっている。尚、負極集電体配置予定場所46及び正極集電体配置予定場所47においても同様に行う。その結果、図6(c)に示すように、中間集電体配置予定場所48に第1機能液33aが塗布される。尚、負極集電体配置予定場所46及び正極集電体配置予定場所47においても同様に第1機能液33aが塗布される。
【0068】
続いて、図6(d)に示すように、第1機能液33aが塗布された基板5を乾燥装置49の内部に配置する。乾燥装置49は乾燥室50を備えている。乾燥室50は載置台51を備え、基板5をこの載置台51に配置する。乾燥室50は図中上側の供給管52及び供給バルブ53を介して乾燥気体供給部54と接続されている。さらに、乾燥室50は図中下側の排気管55及び排気バルブ56を介して排気部57と接続されている。そして、乾燥気体供給部54から供給される乾燥気体58が供給バルブ53及び供給管52を介して乾燥室50に供給される。乾燥気体供給部54と排気部57とを制御することにより、乾燥室50の気圧を制御することができる。そして、第1機能液33aを減圧乾燥することが可能になっている。
【0069】
乾燥気体58は基板5に塗布された第1機能液33aに沿って流動する。このとき、第1機能液33aに含まれる溶媒及び分散媒を乾燥気体58中に蒸発させて除去することにより、第1機能液33aを乾燥させる。そして、第1機能液33aが乾燥することにより、第1機能液33aの材料からなる膜が形成される。次に、分散媒を含んだ乾燥気体58は排気管55及び排気バルブ56を通過して、排気部57により図示しない処理装置に排気される。
【0070】
続いて、ステップS3の集電体固化工程では乾燥室50の温度を上げて、第1機能液33aに含まれる金属微粒子を焼成する。その結果、図6(e)に示すように、中間集電体配置予定場所48に中間集電体膜9が形成される。同様に、負極集電体配置予定場所46には負極集電体膜6を形成し、正極集電体配置予定場所47に正極集電体膜7を形成する。
【0071】
図7(a)〜図7(c)はステップS4の中間電解質塗布工程に対応する図である。ステップS4では、図7(a)に示す中間膜配置予定場所61に中間電解質膜11の材料等からなる機能液33を塗布する。中間膜配置予定場所61は中間電解質膜11を配置する予定の場所である。そして、図7(b)に示すように、液滴吐出ヘッド28のノズル31から中間膜配置予定場所61に液滴36を吐出する。この液滴36は第2機能液33bからなり、第2機能液33bは中間電解質膜11の材料を溶媒もしくは分散媒に溶解もしくは分散した液状体である。この溶媒もしくは分散媒はステップS2にて用いた分散媒と同様の液体を用いることができる。
【0072】
その結果、図7(c)に示すように、中間膜配置予定場所61に第2機能液33bが塗布される。中間膜配置予定場所61の周囲には撥液面45aが形成されている為、中間膜配置予定場所61に精度良く第2機能液33bを塗布できる。
【0073】
図7(d)はステップS5の中間電解質固化工程に対応する図である。ステップS5では、ステップS3と同様に第2機能液33bを乾燥する。その後、第2機能液33bに含まれる電解質ポリマーを乾燥装置49を用いて加熱して重合することにより第2機能液33bを固化する。その結果、図7(d)に示すように、中間膜配置予定場所61に中間電解質膜11が形成される。
【0074】
図8はステップS6の表面改質工程に対応する図である。図8(a)は撥液面45aのうち撥液性を除去して親液化する場所である親液化領域45bを示している。中間集電体膜9と中間電解質膜11との間の場所は親液化領域45bである。他にも、負極集電体膜6と中間電解質膜11との間の場所が親液化領域45bであり、正極集電体膜7と中間電解質膜11との間の場所も親液化領域45bである。
【0075】
図8(b)に示すように、マスク62を用いて親液化領域45bの撥液面45aに限定してレーザ光63を照射する。照射する場所の撥液面45aを改質することにより、撥液性を除去する。光の照射条件は、撥液膜45を形成する材料や厚み等を考慮して、撥液膜45の表面が親液化するように光の強度及び照射時間等を適宜調整する。また、照射する光には、例えばNb:YAGレーザ光、炭酸ガスレーザ光等のレーザ光の他、紫外光等を用いても良い。
【0076】
次に、負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜9、中間電解質膜11上に撥液膜45を配置することにより、撥液面45aを形成する。撥液膜45の形成方法はステップS1において撥液膜45を形成した方法と同様の方法を用いる。
【0077】
図8(c)は撥液面45aを形成する場所を示す。図8(c)に示すように中間電解質膜11上に配置する撥液膜45の幅は中間電解質膜11の幅の1/3程度にする。この撥液膜45の幅を撥液幅64とする。撥液膜45は中間電解質膜11の幅方向(Y方向)の中央に配置する。同様に、中間集電体膜9上に配置する撥液膜45の幅は中間集電体膜9の幅の1/3程度にする。本実施形態では、例えば、中間電解質膜11の幅と中間集電体膜9の幅とは同じ長さに設定した。従って、中間集電体膜9上に形成する撥液膜45の幅と中間電解質膜11上に形成する撥液膜45の幅とは同じ撥液幅64にした。そして、撥液膜45は中間集電体膜9の幅方向(Y方向)の中央に配置する。
【0078】
負極集電体膜6上に配置する撥液膜45は負極集電体膜6の中間電解質膜11側の端6aから撥液幅64の長さだけ離れた場所に配置する。そして、負極集電体膜6上の撥液膜45の幅も撥液幅64と同じにする。同様に、正極集電体膜7上に配置する撥液膜45は正極集電体膜7の中間電解質膜11側の端7aから撥液幅64の長さだけ離れた場所に配置する。そして、正極集電体膜7上の撥液膜45の幅も撥液幅64と同じにする。撥液膜45の位置と幅とはこれに限定されない。電池1の性能と製造の難易度を考慮して設定するのが好ましい。
【0079】
図9(a)〜図10(c)はステップS7の正負電解質塗布工程に対応する図である。図9(a)は負極電解質膜12の材料を含む機能液33を塗布する予定の場所である負極電解質膜配置予定場所65を示す。中間集電体膜9と中間電解質膜11との間の場所において負極集電体膜6から偶数番目の場所は負極電解質膜配置予定場所65である。他にも、負極集電体膜6と中間電解質膜11との間の場所が負極電解質膜配置予定場所65である。
【0080】
そして、図9(b)に示すように、液滴吐出ヘッド28のノズル31から負極電解質膜配置予定場所65に液滴36を吐出する。この液滴36は第3機能液33cからなり、第3機能液33cは負極電解質膜12の材料を溶媒もしくは分散媒に溶解もしくは分散した液状体である。この溶媒もしくは分散媒は、特に限定されないが、ステップS2で用いた分散媒を用いることができる。
【0081】
負極電解質膜配置予定場所65の周囲には撥液面45aが形成されているため、第3機能液33cは負極電解質膜配置予定場所65に精度良く塗布可能になっている。その結果、図9(c)に示すように、負極電解質膜配置予定場所65に第3機能液33cが塗布される。
【0082】
図10(a)は正極電解質膜10の材料を含む機能液33を塗布する予定の場所である正極電解質膜配置予定場所66を示す。中間集電体膜9と中間電解質膜11との間の場所において負極電解質膜配置予定場所65以外の場所は正極電解質膜配置予定場所66である。他にも、正極集電体膜7と中間電解質膜11との間の場所が正極電解質膜配置予定場所66である。
【0083】
そして、図10(b)に示すように、液滴吐出ヘッド28のノズル31から正極電解質膜配置予定場所66に液滴36を吐出する。この液滴36は第4機能液33dからなり、第4機能液33dは正極電解質膜10の材料を溶媒もしくは分散媒に溶解もしくは分散した液状体である。この溶媒もしくは分散媒は、特に限定されないが、ステップS2で用いた分散媒を用いることができる。
【0084】
正極電解質膜配置予定場所66の周囲には撥液面45aが形成されているため、第4機能液33dは正極電解質膜配置予定場所66に精度良く塗布可能になっている。その結果、図10(c)に示すように、正極電解質膜配置予定場所66に第4機能液33dが塗布される。
【0085】
図10(d)はステップS8の正負電解質固化工程に対応する図である。ステップS8では、ステップS3と同様に乾燥装置49を用いて第3機能液33c及び第4機能液33dを乾燥する。その後、乾燥室50の温度を上げて第3機能液33c及び第4機能液33dに含まれる電解質ポリマーを重合することにより第3機能液33c及び第4機能液33dを固化する。その結果、図10(d)に示すように、負極電解質膜配置予定場所65に負極電解質膜12が形成され、正極電解質膜配置予定場所66に正極電解質膜10が形成される。そして、負極電解質膜12の一端が中間集電体膜9上に重ねて配置され、負極電解質膜12の他端が中間電解質膜11上に重ねて配置される。同様に、正極電解質膜10の一端が中間集電体膜9上に重ねて配置され、正極電解質膜10の他端が中間電解質膜11上に重ねて配置される。この工程で電池基板4が完成する。
【0086】
図11はステップS9の外装配置工程に対応する図である。図11(a)に示すように、ステップS9において、電池基板4を囲んで上外装2及び下外装3を配置する。予め、上外装2と下外装3とはX方向の両端が接続されて筒状に形成されている。そして、上外装2及び下外装3の中に電池基板4を挿入する。このとき、負極集電体膜6及び正極集電体膜7の一部が上外装2及び下外装3から突出するように配置する。次に、上外装2のY方向両端の端部2aと下外装3のY方向両端の端部3aに接着剤を塗布する。そして、接着剤を塗布した上外装2と下外装3とをそれぞれ基板5に押圧して、接着剤を固化することにより、上外装2と下外装3とで覆われた基板5を密閉する。その結果、図11(b)に示すように電池1が完成する。
【0087】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、基板5上に負極集電体膜6、正極集電体膜7、正極電解質膜10、中間電解質膜11、負極電解質膜12の膜が配置されている。そして、膜の内部を電子もしくはイオン化物質が移動することにより、充電及び放電が行われる。膜は複数配置され、膜と膜との間を電子もしくはイオン化物質が移動する。このとき、膜と膜とが接触する面積が狭いときより広いときの方が膜と膜との間を電子もしくはイオン化物質が移動し易くなる。そして、隣接する膜の端同士が接触するように膜を配置するときに比べて、隣接する膜の端同士を重ねて配置する方が膜同士の接触面積を広くすることができる。従って、隣接する端同士を重ねて配置することにより隣接する膜と膜との間で電子もしくはイオン化物質を移動し易くすることができる。
【0088】
(2)本実施形態によれば、隣接する負極集電体膜6と負極電解質膜12とが重ねて配置されている。負極集電体膜6は電子を負極電解質膜12に供給もしくは電解質膜から収集する膜であり、電子の移動が行われる膜である。そして、負極集電体膜6と負極電解質膜12とが重ねて配置されている為、負極集電体膜6と負極電解質膜12との接触面積が広く形成されている。その結果、負極集電体膜6と負極電解質膜12との間で電子を移動し易くすることができる。
【0089】
同様に、正極集電体膜7と正極電解質膜10とが重ねて配置されている為、正極集電体膜7と正極電解質膜10との接触面積が広く形成されている。その結果、正極集電体膜7と正極電解質膜10との間で電子を移動し易くすることができる。
【0090】
同様に、中間集電体膜9と負極電解質膜12とが重ねて配置されている為、中間集電体膜9と負極電解質膜12との接触面積が広く形成されている。その結果、中間集電体膜9と負極電解質膜12との間で電子を移動し易くすることができる。
【0091】
同様に、中間集電体膜9と正極電解質膜10とが重ねて配置されている為、中間集電体膜9と正極電解質膜10との接触面積が広く形成されている。その結果、中間集電体膜9と正極電解質膜10との間で電子を移動し易くすることができる。
【0092】
(3)本実施形態によれば、負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜9の集電体膜の上に重ねて電解質パターン8の電解質膜が配置されている。従って、集電体膜を形成した後に電解質パターン8の電解質膜を形成し易い配置になっている。集電体膜は導電性の良い材質で形成されるので、金属が用いられることが多い。このとき、集電体膜は金属の微粒子を塗布した後、焼成して形成される。電解質膜を配置した後に集電体膜を形成する場合には、集電体膜を焼成する熱により電解質膜に損傷を与える可能性がある。一方、本実施形態では電解質膜を形成する前に集電体膜を形成できるので、電解質膜に損傷を与え難くすることができる。
【0093】
(4)本実施形態によれば、正極電解質膜10の一端と中間電解質膜11の一端とが重ねて配置されている。同様に、負極電解質膜12の一端と中間電解質膜11の一端とが重ねて配置されている。電解質膜はイオン化物質の移動が行われる膜である。そして、電解質膜同士が重ねて配置されている為、電解質膜同士の接触面積が広く形成されている。その結果、隣接する電解質膜の間でイオン化物質を移動し易くすることができる。
【0094】
(5)本実施形態によれば、ステップS11の集電体配置工程にて負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜9の集電体膜を形成する。その後、ステップS12の中間電解質配置工程及びステップS13の正負電解質配置工程にて電解質パターン8の電解質膜を形成している。電解質膜を形成する前に集電体膜を形成するので、集電体膜を焼成する熱により電解質膜に損傷を与えることをなくすことができる。
【0095】
(6)本実施形態によれば、撥液面45aを配置した後、撥液面45aに囲まれた場所に膜の材料を含む機能液33を塗布している。従って、撥液面45aの位置及び形状を精度良く形成することにより、負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜9、正極電解質膜10、中間電解質膜11、負極電解質膜12の各膜の位置及び形状を精度良く形成することができる。
【0096】
(第2の実施形態)
次に、電池及び電池の製造方法の一実施形態について図12及び図13を用いて説明する。図12は電池基板を示す要部断面図であり、図13は電池を製造する製造工程を示すフローチャートである。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、正極電解質膜10及び負極電解質膜12の上に隣接する膜の一端が重ねて配置される点である。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0097】
すなわち、本実施形態では図12に示すように、電池67の電池基板68は基板5を備えている。基板5上には膜及び集電体膜としての中間集電体膜69が配置されている。さらに、基板5上には膜及び電解質膜としての正極電解質膜70、中間電解質膜71、負極電解質膜72が配置されている。中間集電体膜69と隣接して正極電解質膜70が配置され、中間集電体膜69の一部が正極電解質膜70上に重ねて配置されている。正極電解質膜70と隣接して中間電解質膜71が配置され、中間電解質膜71の一部が正極電解質膜70上に重ねて配置されている。中間電解質膜71と隣接して負極電解質膜72が配置され、中間電解質膜71の一部が負極電解質膜72上に重ねて配置されている。さらに、負極電解質膜72と隣接して中間集電体膜69が配置され、中間集電体膜69の一部が負極電解質膜72上に重ねて配置されている。
【0098】
次に、電池67の製造方法について図12及び図13を用いて説明する。ステップS21は、撥液面形成工程に相当する。この工程は、基板5に撥液面45aを配置する工程である。撥液面45aは正極電解質膜70及び負極電解質膜72を配置する予定の場所を取り囲む場所に配置する。撥液面45aの形成方法は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。次にステップS22に移行する。ステップS22は、正負電解質塗布工程に相当する。この工程では、正極電解質膜の材料からなる第4機能液33dを基板5上に塗布する。さらに、負極電解質膜の材料からなる第3機能液33cを基板5上に塗布する。その後、塗布した第3機能液33c及び第4機能液33dを乾燥する工程である。第3機能液33c及び第4機能液33dの塗布方法と乾燥方法は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。次にステップS23に移行する。ステップS23は、正負極電解質固化工程に相当し、塗布した第3機能液33c及び第4機能液33dに含まれる電解質ポリマーを重合させる工程である。ステップS22及びステップS23がステップS31の正負電解質配置工程であり、正極及び負極の電解質膜を配置する工程となっている。次にステップS24に移行する。
【0099】
ステップS24は、表面改質工程に相当する。この工程では、ステップS21にて形成した撥液面45aの撥液性を除去する。そして、正極電解質膜70及び負極電解質膜72上に撥液面45aを形成する工程である。撥液面45aの除去方法と形成方法は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。次にステップS25に移行する。ステップS25は、集電体塗布工程に相当し、集電体膜の材料からなる第1機能液33aを塗布して乾燥する工程である。このとき、第1機能液33aを正極電解質膜70及び負極電解質膜72の一部上から基板5上にかけて塗布する。塗布方法は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。次にステップS26に移行する。ステップS26は、集電体固化工程に相当し、塗布した集電体の第1機能液33aを焼成して固化する工程である。中間集電体膜69の一部は正極電解質膜70及び負極電解質膜72に重ねて形成される。同様に、負極集電体膜6の一部は負極電解質膜72に重ねて形成され、正極集電体膜7の一部は正極電解質膜70に重ねて形成される。塗布方法と焼成方法は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。ステップS25及びステップS26がステップS32の集電体配置工程であり、集電体を配置する工程となっている。次にステップS27に移行する。
【0100】
ステップS27は、中間電解質塗布工程に相当し、この工程では、中間電解質膜71の材料からなる第2機能液33bを塗布する。その後、塗布した第2機能液33bを乾燥する工程である。このとき、第2機能液33bを正極電解質膜70及び負極電解質膜72の一部上から基板5上にかけて塗布する。第2機能液33bの塗布方法と乾燥方法は第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。次にステップS28に移行する。ステップS28は、中間電解質固化工程に相当し、塗布した第2機能液33bに含まれる電解質ポリマーを重合させる工程である。中間電解質膜71の一部は正極電解質膜70及び負極電解質膜72に重ねて形成される。ステップS27及びステップS28がステップS33の中間電解質配置工程であり、中間電解質膜71を配置する工程となっている。そして、ステップS31の正負電解質配置工程とステップS33の中間電解質配置工程とが電解質配置工程である。ステップS9は、外装配置工程に相当し、外装部品を配置する工程である。以上の工程により電池の製造工程を終了する。
【0101】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、基板5上に負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜69、正極電解質膜70、中間電解質膜71、負極電解質膜72の膜が配置されている。そして、隣接する膜の端同士を重ねて配置している。従って、隣接する膜と膜との間で電子もしくはイオン化物質を移動し易くすることができる。
【0102】
(2)本実施形態によれば、各膜を形成する前に各膜を取り囲んで撥液面45aを形成している。従って、各膜を精度良く形成することができる。
【0103】
(3)本実施形態によれば、負極集電体膜6及び正極集電体膜7は基板5上にのみ形成されているので、形状及び膜厚を精度良く形成することができる。
【0104】
(第3の実施形態)
次に、電池の一実施形態について図14を用いて説明する。図14は電池基板を示す要部断面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、正極電解質膜10及び負極電解質膜12の上に中間電解質膜11の一端が重ねて配置される点である。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0105】
すなわち、本実施形態では図14に示すように、電池75の電池基板76は基板5を備えている。基板5上には膜及び電解質膜としての中間集電体膜77、正極電解質膜78、中間電解質膜79、負極電解質膜80が配置されている。中間集電体膜77と隣接して正極電解質膜78が配置され、正極電解質膜78の一部が中間集電体膜77上に重ねて配置されている。正極電解質膜78と隣接して中間電解質膜79が配置され、中間電解質膜79の一部が正極電解質膜78上に重ねて配置されている。中間電解質膜79と隣接して負極電解質膜80が配置され、中間電解質膜79の一部が負極電解質膜80上に重ねて配置されている。さらに、負極電解質膜80と隣接して中間集電体膜77が配置され、負極電解質膜80の一部が中間集電体膜77上に重ねて配置されている。
【0106】
次に、電池基板76を形成する概要の製造方法を説明する。まず負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜77の配置する予定の場所の周囲に撥液面45aを配置する。その後、負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜77を配置する。次に、正極電解質膜78及び負極電解質膜80を配置する予定の場所の撥液面45aを除去する。続いて、正極電解質膜78及び負極電解質膜80を配置する。次に、正極電解質膜78及び負極電解質膜80上に撥液面45aを配置する。次に、中間電解質膜79を配置する。以上で、電池基板76が完成する。本実施形態の構成においても第1の実施形態の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)と同様の効果を得ることができる。
【0107】
(第4の実施形態)
次に、電池の一実施形態について図15を用いて説明する。図15は電池基板を示す要部断面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、正極電解質膜10及び負極電解質膜12の上に中間集電体膜9の一端が重ねて配置される点である。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0108】
すなわち、本実施形態では図15に示すように、電池83の電池基板84は基板5を備えている。基板5上には膜及び電解質膜としての中間集電体膜85、正極電解質膜86、中間電解質膜87、負極電解質膜88が配置されている。中間集電体膜85と隣接して正極電解質膜86が配置され、中間集電体膜85の一部が正極電解質膜86上に重ねて配置されている。正極電解質膜86と隣接して中間電解質膜87が配置され、正極電解質膜86の一部が中間電解質膜87上に重ねて配置されている。中間電解質膜87と隣接して負極電解質膜88が配置され、負極電解質膜88の一部が中間電解質膜87上に重ねて配置されている。さらに、負極電解質膜88と隣接して中間集電体膜85が配置され、中間集電体膜85の一部が負極電解質膜88上に重ねて配置されている。
【0109】
次に、電池基板84を形成する概要の製造方法を説明する。まず中間電解質膜87を配置する予定の場所の周囲に撥液面45aを配置する。その後、中間電解質膜87を配置する。次に、正極電解質膜86及び負極電解質膜88を配置する予定の場所の撥液面45aを除去する。続いて、正極電解質膜86及び負極電解質膜88を配置する。次に、正極電解質膜86及び負極電解質膜88上に撥液面45aを配置する。次に、負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜85を配置する予定の場所の撥液面を除去する。続いて、負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜85を配置する。以上で、電池基板84が完成する。本実施形態の構成においても第1の実施形態の(1)、(2)、(4)、(6)と同様の効果を得ることができる。
【0110】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、電池1は1枚の電池基板4により構成されたが、複数の基板に構成されても良い。図16は、電池の断面図である。例えば、図16に示す電池90のように、3枚の電池基板4を重ねて配置しても良い。そして、各電池基板4の負極集電体膜6を配線91を用いて接続し、各電池基板4の正極集電体膜7を配線91を用いて接続する。各電池基板4を並列接続することにより電流出力の大きな電池90にすることができる。尚、電池基板4の枚数は限定されず、2枚でも良く、4枚以上でも良い。この内容は第2〜第4の実施形態にも適用することができる。
【0111】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、基板5上に撥液面45aを形成したが、撥液面45aのパターンと同形状の隔壁を設けても良い。機能液33を撥液面45a上に流動させ難くすることができる。従って、1回に塗布する機能液33の量を増やすことができる。
【0112】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、マイクロコンタクトプリンティング法を用いて撥液膜45を形成したが、他の方法を採用しても良い。例えばフッ素系化合物を含むガス(フッ素含有ガス)を処理ガスとしてプラズマ処理する方法を採用することができる。フッ素化合物を用いることにより、基板5の表面にフッ素基が導入され、これにより液体材料を弾くことが可能になる。フッ素化合物としては、例えばCF4、SF6、CHF3等が挙げられる。
【0113】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、キャビティ32を加圧する加圧手段に、圧電素子35を用いたが、他の方法でも良い。例えば、コイルと磁石とを用いて振動板34を変形させて、加圧しても良い。他に、キャビティ32内にヒータ配線を配置して、ヒータ配線を加熱することにより、機能液33を気化させたり、機能液33に含む気体を膨張させたりして加圧しても良い。他にも、静電気の引力及び斥力を用いて振動板34を変形させて、加圧しても良い。前記実施形態と同様に機能液33を塗布することができる。
【0114】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、正極電解質膜10、中間電解質膜11、負極電解質膜12が直線状に平行に配置された。これに限らず、例えば、正極電解質膜10及び負極電解質膜12は方形の凹凸を平面上に形成し、互いの凸部と凹部とが噛み合うようなパターンに配置しても良い。凹凸の形状は方形に限らず他の形状でも良い。凹凸の形状は波型でも良く、三角形や多角形でも良い。また、直線でも良く。非周期的なパターンでも良い。この内容は第2〜第4の実施形態にも適用することができる。
【0115】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、正極電解質膜10、中間電解質膜11、負極電解質膜12、負極集電体膜6、正極集電体膜7、中間集電体膜9の各膜の材料を含む機能液33の塗布と固化を1回のみ行ったが、複数回繰り返しても良い。各膜の材料を含む機能液33の塗布と乾燥を複数回行って膜の厚みを厚くした後、固化しても良い。各膜が厚い方が、イオン化物質や電子が移動し易くなるので、電池1の性能を上げることができる。この内容は第2〜第4の実施形態にも適用することができる。
【0116】
(変形例7)
前記第1の実施形態では、ステップS7の正負電解質塗布工程において、負極電解質膜12の材料を含む第3機能液33cを塗布した後、正極電解質膜10の材料を含む第4機能液33dを塗布した。塗布する順番は逆でも良い。同様の膜を形成することができる。
【0117】
(変形例8)
前記第1の実施形態では、ステップS5の中間電解質固化工程で中間電解質膜11の重合を行い、ステップS8の正負電解質固化工程で正極電解質膜10及び負極電解質膜12の重合を行った。これに限らず、ステップS4の中間電解質塗布工程にて中間電解質膜11の材料を含む第2機能液33bが乾燥により固化するときには、ステップS5を省略しても良い。そして、ステップS8において、中間電解質膜11を重合しても良い。工程を減らせるので、生産性良く電池1を製造することができる。この内容は第2〜第4の実施形態にも適用することができる。
【0118】
(変形例9)
前記第1の実施形態では、基板5上に各種の膜を配置して電池基板4を形成したが、基板5に限らず直方体等の面上に形成しても良い。各種の構造物の面を活用して電池を形成することができる。このとき、各種の構造物の面を有効利用することができる。
【0119】
(変形例10)
前記第2の実施形態では、ステップS32の集電体配置工程の後、ステップS33の中間電解質配置工程を行ったが、この工程順に限らない。ステップS33の後ステップS32を行っても良い。この場合にも、中間集電体膜69及び中間電解質膜71を配置することができる。
【0120】
(変形例11)
前記第1の実施形態において、中間電解質膜11は電解液を含まない膜であったが、電解液を含んだ層にしても良い。ステップS4の中間電解質塗布工程にて、中間電解質膜11の材料を塗布したあとに電解液を塗布しても良い。また、ステップS5の中間電解質固化工程にて中間電解質膜11を形成したあとに電解液を塗布しても良い。中間電解質膜11がゲル電解質になり、イオン化物質を伝導し易くすることができる。尚、この内容は第2の実施形態〜第4の実施形態にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は、電池を示す概略斜視図、(b)は、(a)の、電池のA−A’線に沿う模式断面図、(c)は電池基板を示す模式平面図、(d)は電池基板を示す要部模式断面図。
【図2】液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図3】(a)は、キャリッジを示す模式平面図、(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。
【図4】電池を製造する製造工程を示すフローチャート。
【図5】電池の製造方法を説明する図。
【図6】電池の製造方法を説明する図。
【図7】電池の製造方法を説明する図。
【図8】電池の製造方法を説明する図。
【図9】電池の製造方法を説明する図。
【図10】電池の製造方法を説明する図。
【図11】電池の製造方法を説明する図。
【図12】第2の実施形態にかかわる電池基板を示す要部断面図。
【図13】電池を製造する製造工程を示すフローチャート。
【図14】第3の実施形態にかかわる電池基板を示す要部断面図。
【図15】第4の実施形態にかかわる電池基板を示す要部断面図。
【図16】変形例にかかわる電池の断面図。
【符号の説明】
【0122】
5…基体としての基板、6…膜及び集電体膜としての負極集電体膜、7…膜及び集電体膜としての正極集電体膜、9,69,77,85…膜及び集電体膜としての中間集電体膜、10,70,78,86…膜及び電解質膜としての正極電解質膜、11,71,79,87…膜及び電解質膜としての中間電解質膜、12,72,80,88…膜及び電解質膜としての負極電解質膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体の同一面上に隣接して配置された複数の膜と、を有し、
前記膜の少なくとも一部が隣接する前記膜に重ねて配置されることを特徴とする電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池であって、
複数の前記膜は集電体膜及び電解質膜を含み、
前記集電体膜と前記電解質膜とが隣接して配置され、隣接する前記集電体膜と前記電解質膜との少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする電池。
【請求項3】
請求項2に記載の電池であって、
前記集電体膜上に前記電解質膜が重ねて配置されることを特徴とする電池。
【請求項4】
請求項3に記載の電池であって、
前記電解質膜は正極活物質を含む正極電解質膜であることを特徴とする電池。
【請求項5】
請求項3に記載の電池であって、
前記電解質膜は負極活物質を含む負極電解質膜であることを特徴とする電池。
【請求項6】
請求項1に記載の電池であって、
複数の前記膜は複数の電解質膜を含み、
少なくとも一対の前記電解質膜が隣接して配置され、隣接する前記電解質膜の少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする電池。
【請求項7】
請求項6に記載の電池であって、
前記電解質膜は正極活物質を含む正極電解質膜と活物質を含まない中間電解質膜とを有し、
前記正極電解質膜と前記中間電解質膜とが隣接して配置され、隣接する前記正極電解質膜と前記中間電解質膜との少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする電池。
【請求項8】
請求項6に記載の電池であって、
前記電解質膜は負極活物質を含む負極電解質膜と活物質を含まない中間電解質膜とを有し、
前記負極電解質膜と前記中間電解質膜とが隣接して配置され、隣接する前記負極電解質膜と前記中間電解質膜との少なくとも一部が重ねて配置されることを特徴とする電池。
【請求項9】
集電体膜と電解質膜とが基体の同一面上に配置された電池の製造方法であって、
前記基体上に前記集電体膜を配置する集電体配置工程と、
前記基体上に前記電解質膜を配置する電解質配置工程と、を有し、
前記電解質配置工程は前記集電体配置工程の後に行われ、
前記電解質配置工程において前記集電体膜と前記電解質膜とを隣接して配置し、前記集電体膜と前記電解質膜との少なくとも一部を重ねて配置することを特徴とする電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−55764(P2010−55764A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216284(P2008−216284)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】