説明

電池電圧監視装置

【課題】各電圧検出手段にて隣接する電圧検出手段に対応する単位電池の電池セルを監視可能な電池電圧監視装置において、各電池セルにおける消費電流のバラツキを抑制する。
【解決手段】各電圧検出回路3それぞれは、対応する単位電池Viを構成する電池セル1aそれぞれに結線され、結線された電池セル1aの電圧を検出する電圧検出部31、および対応する単位電池Viの端子間電圧を所望の電圧に変換して電圧検出部31へ出力するための電源部32を含んで構成され、隣接する電圧検出回路3における一方の電圧検出回路は、電圧検出部31および電源部32のうち電圧検出部31だけが他方の電圧検出回路3に対応する単位電池Viを構成する一部の電池セル1aの電圧を検出するように結線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池を構成する複数の電池セルそれぞれの電圧を監視する電池電圧監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池電圧監視装置は、複数の電池セルを直列に接続して構成される組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した単位電池に対応して複数設けられ、対応する単位電池を構成する電池セルそれぞれの電圧等を監視する電圧検出手段(監視回路)を備えている。各電圧検出手段によって対応する単位電池を構成する電池セルを監視することで、単位電池における各電池セル間の電圧バラツキを均等化することが可能となる。
【0003】
しかし、単に各電圧検出手段によって対応する単位電池を構成する電池セルを監視する構成とする場合、各電圧検出手段における測定精度が異なると、各単位電池間の電圧バラツキを適切に均等化することが難しい。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1に記載の蓄電池バッテリー用調整装置では、各電圧検出手段(各調整モジュール)を隣接する電圧検出手段(調整モジュール)に対応する単位電池(モジュール)に接続(たすきがけ接続)することで、各電圧検出手段にて隣接する電圧検出手段に対応する単位電池を監視する構成を採用している。これにより、各電圧検出手段における測定精度が異なったとしても、各単位電池間の電圧バラツキを適切に均等化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−55643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的な電圧検出手段は、対応する単位電池を構成する電池セルの電圧を検出する電圧検出部、および電圧の検出対象となる各電池セルから電圧検出部へ電圧を出力する電源部を有して構成されている。
【0007】
しかしながら、従来技術のように、各電圧検出手段を隣接する電圧検出手段に対応する単位電池の電池セルに接続する構成とすると、各電圧検出手段を駆動する電源が、対応する単位電池、および隣接する電圧検出手段に対応する単位電池の電池セル(共通セル)で構成されることとなる。これにより、共通セルの消費電流が他の電池セルに比べて増大し、各電池セル間の電圧バラツキを均等化しようとしているにも関わらず、単位電池内の各電池セルにおける消費電流にバラツキが生ずるといった問題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、各電圧検出手段にて隣接する電圧検出手段に対応する単位電池の電池セルを監視可能な電池電圧監視装置において、各電池セルにおける消費電流のバラツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の電池セルを直列に接続して構成される組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した単位電池に対応して複数設けられ、対応する単位電池を構成する電池セルそれぞれの電圧を監視する電圧検出手段を備える電池電圧監視装置であって、複数の電圧検出手段それぞれは、対応する単位電池を構成する電池セルそれぞれに結線され、結線された電池セルの電圧を検出する電圧検出部、および対応する単位電池の端子間電圧を所望の電圧に変換して電圧検出部へ出力するための電源部を有し、複数の電圧検出手段のうち隣接する電圧検出手段における一方の電圧検出手段は、電圧検出部および電源部のうち電圧検出部だけが他方の電圧検出手段に対応する単位電池を構成する一部の電池セルの電圧を検出するように結線されていることを特徴とする。
【0010】
これによると、各電圧検出手段における電圧検出部および電源部のうち、電圧検出部だけを、隣接する電圧検出手段に対応する単位電池における一部の電池セルに結線する構成としているので、各電圧検出手段にて隣接する電圧検出手段に対応する単位電池における一部の電池セルの電圧を検出することができる。加えて、各電圧検出手段を駆動する際の電源を対応する単位電池だけで構成することができるので、隣接する電圧検出手段に接続された共通セルの消費電流が他の電池セルに比べて増大することを抑制することができる。
【0011】
従って、各電圧検出手段にて隣接する電圧検出手段に対応する単位電池の電池セルを監視可能に構成された電池電圧監視装置において、各電池セルにおける消費電流のバラツキを抑制することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電池電圧監視装置において、電源部は、電圧検出部へ出力する電圧を電圧検出部にて検出する電池セルの電圧よりも大きくなるように昇圧させる昇圧回路を有することを特徴とする。
【0013】
これによれば、電源部から供給される電圧を検出対象となる電池セルの電圧(入力電圧)よりも大きくすることができるので、隣接する電圧検出手段に対応する単位電池を構成する電池セルの電圧を電圧検出部にて適切に検出することが可能となる。
【0014】
具体的には、請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の電池電圧監視装置において、電源部は、電圧検出部へ出力する電圧を降圧させる降圧回路を有し、昇圧回路は、電圧検出部にて検出する電池セルの電圧に、降圧回路の出力電圧を加算した電圧を出力するチャージポンプ回路として構成されていることを特徴とする。これにより、電池電圧監視装置の各電圧検出手段を具体的かつ容易に実現することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、請求項2に記載の電池電圧監視装置において、昇圧回路は、電圧検出部にて検出する電池セルの電圧に、複数の電池セルにおける1つ以上の電池セルの電圧を加算した電圧を出力するチャージポンプ回路として構成されていることを特徴とする。これにより、電池電圧監視装置の各電圧検出手段を具体的かつ容易に実現することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項4に記載の電池電圧監視装置において、昇圧回路を、複数の電池セルのうち、最も高電圧となる電池セルを優先的に用いて電圧検出部へ出力する電圧を昇圧するように構成すれば、各電池セルの均等化を実現することができる。すなわち、電源部における昇圧回路を均等化手段として機能させることができるので、電池電圧監視装置の簡素化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る電池電圧監視装置を含んだ電圧監視システムの全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る電圧検出回路の内部の概略構成を示す回路図である。
【図3】第1実施形態に係る電圧検出部および電源部の内部構成を示す回路図である。
【図4】第1実施形態に係る電圧検出部のマルチプレクサおよびレベルシフト手段の内部構成を示す回路図である。
【図5】第1実施形態に係る電源部の作動を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】第1実施形態に係る昇圧回路内における電流の流れを説明するための説明図である。
【図7】第2実施形態に係る電圧検出部および電源部の内部構成を説明するための回路図である。
【図8】第2実施形態に係る電源部の作動を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る電池電圧監視装置を含んだ電圧監視システムの全体構成図であり、図2は、本実施形態に係る電圧検出回路の内部の概略構成を示す回路図である。
【0020】
図1に示すように、電圧監視システムは、組電池1と電池電圧監視装置2を備えて構成されている。組電池1は、最小単位である電池セル1aが直列に複数接続されて構成された電池群である。電池セル1aは所定数の電池セル毎(例えば8個毎)に複数の単位電池V1〜Vnにグループ化されている。
【0021】
本実施形態では、電池セル1aとして充電可能なリチウムイオン二次電池を採用している。そして、電池電圧監視装置2は、例えばハイブリッド車等の電気自動車に適用されるものであり、組電池1はハイブリッド車や電気自動車に搭載され、インバータやモータ等の負荷を駆動するための電源や電子機器の電源等に用いられる。
【0022】
電池電圧監視装置2は、組電池1を構成する各電池セル1aの電圧(セル電圧)を監視する装置である。このような電池電圧監視装置2は、各単位電池V1〜Vnに対応して複数設けられ、各単位電池V1〜Vnを構成する電池セル1aの電圧を監視する電圧検出回路(電圧検出手段)3、マイクロコンピュータ4(以下、マイコン4という。)等を備えている。なお、各電圧検出回路3とマイコン4とは、フォトカプラ等の絶縁素子5を介して接続されている。
【0023】
まず、電圧検出回路3について図2に基づいて説明する。図2は、電圧検出回路の内部構成を示す回路図である。各電圧検出回路3は、対応する単位電池V1〜Vnを構成する各電池セル1aそれぞれに結線され、結線された各電池セル1aの電圧を検出する電圧検出部31、および対応する単位電池V1〜Vnを構成する各電池セル1aそれぞれに結線されて電圧検出部31に電圧を出力する電源部32を有して構成されている。なお、単位電池に対応する電圧検出回路3とは、各単位電池における最も高電圧側の電池セル1aの正極端子、および最も低電圧側の負極端子それぞれに接続された電圧検出回路を示している。例えば、単位電池V1に対応する電圧検出回路3は、単位電池V1における最も高電圧側の電池セル1aの正極端子、および最も低電圧側の負極端子それぞれに接続された電圧検出回路を示している。
【0024】
そして、各電圧検出回路3のうち、隣接する電圧検出回路3における一方の電圧検出回路3は、その電圧検出部31および電源部32のうち電圧検出部31だけが他方の電圧検出回路3に対応する単位電池を構成する一部の電池セル1a(共通セル)の電圧を検出するように結線されている。換言すれば、隣接する電圧検出回路3における一方の電圧検出回路3は、その電圧検出部31が他方の電圧検出回路3に対応する単位電池を構成する一部の電池セル1aの電圧を検出するように結線され、電源部32が他方の電圧検出回路3に対応する単位電池を構成する一部の電池セル1aに結線されていない構成となっている。
【0025】
具体的には、本実施形態では、図2に示すように、隣接する電圧検出回路3における低電圧側の電圧検出回路3(低電圧側の単位電池Vi−1に対応する電圧検出回路3)が、その電圧検出部31および電源部32のうち電圧検出部31だけが高電圧側の電圧検出回路3(高電圧側の単位電池Viに対応する電圧検出回路3)に対応する単位電池Viの最も低電圧となる電池セル1aの電圧を検出するように結線されている。
【0026】
本実施形態の電圧検出回路3における電圧検出部31および電源部32について図3および図4に基づいて説明する。図3は、本実施形態に係る電圧検出部および電源部の内部構成を示す回路図であり、図4は、本実施形態に係る電圧検出部のマルチプレクサおよびレベルシフト手段の内部構成を示す回路図である。
【0027】
図3に示すように、電圧検出回路3における電圧検出部31は、マルチプレクサ311、レベルシフト手段312、AD変換器313、スイッチ選択手段314を有して構成されている。
【0028】
マルチプレクサ311は、対応する単位電池Viの各電池セル1a、および対応する単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1の一部の電池セル1aのうちいずれかとレベルシフト手段312とを選択的に接続する選択スイッチである。単位電池Vi+1は、単位電池Viの高電圧側の単位電池を示し、単位電池Vi−1は、単位電池Viの低電圧側の単位電池を示す。なお、マルチプレクサ311の選択スイッチとしては、例えば、トランジスタで構成することができる。
【0029】
このマルチプレクサ311は、図4に示すように、選択スイッチとして、対応する単位電池Viの各電池セル1aの正極側に接続される複数の正極側スイッチSW1_1〜SW8_1、および各電池セル1aの負極側に接続される複数の負極側スイッチSW1_2〜SW8_2を含んで構成されている。
【0030】
例えば、単位電池Viにおける最も高電圧側の電池セル1aの電圧を検出する場合、最も高電圧側の電池セル1aの正極側に接続された正極側スイッチSW8_1と当該電池セル1aの負極側に接続された負極側スイッチSW8_2とがオンされる。
【0031】
さらに、マルチプレクサ311は、対応する単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1の一部の電池セル1a(単位電池Vi+1における最も低電圧側の電池セル1a)の正極側に接続される正極側スイッチSWc_1、および当該電池セル1aの負極側に接続される負極側スイッチSWc_2を有している。
【0032】
従って、正極側スイッチSWc_1および負極側スイッチSWc_2をオンすることで、電圧検出部31にて、対応する単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1における一部の電池セル1aの電圧を検出することが可能となっている。なお、単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1の一部の電池セル1aの負極側は、単位電池Viにおける最も高電圧側の電池セル1aの正極側に対応しており、負極側スイッチSWc_2は、単位電池Viにおける最も高電圧側の電池セル1aの正極側に接続される。
【0033】
また、各正極側スイッチSW1_1〜SW8_1、SWc_1におけるレベルシフト手段312側は、出力配線を介してレベルシフト手段312に接続されている。同様に、各負極側スイッチSW1_2〜SW8_2、SWc_2におけるレベルシフト手段312側は、出力配線を介してレベルシフト手段312に接続されている。
【0034】
レベルシフト手段312は、マルチプレクサ311の各出力配線に接続されており、マルチプレクサ311で選択された電池セル1aのセル電圧を増幅する増幅回路である。具体的には、レベルシフト手段312は、オペアンプ312a、抵抗312b〜312e、バッファ312f、312gを有して構成されている。抵抗312bは、バッファ312fを介して各正極側スイッチSW1_1〜SW8_1、SWc_1の出力配線に接続され、抵抗312cは、抵抗312bとグランド(GND)との間に接続されている。これら抵抗312bと抵抗312cとの間の接続点がオペアンプ312aの非反転入力端子に接続されている。また、抵抗312dは、バッファ312gを介して各負極側スイッチSW1_2〜SW8_2、SWc_2の出力配線に接続され、抵抗312eは、抵抗312dとオペアンプ312aの出力端子との間に接続されている。これら抵抗312dと抵抗312eとの間の接続点がオペアンプ312aの反転入力端子に接続されている。
【0035】
AD変換器313は、マイコン4からの指令信号に応じて、レベルシフト手段312で増幅された電池セル1aのセル電圧を測定する回路である。AD変換器313は、測定したセル電圧をデジタル信号に変換してAD出力としてマイコン4に出力する。
【0036】
図3に戻り、スイッチ選択手段314は、上述のマルチプレクサ311を構成する選択スイッチ、および後述する電源部32における昇圧回路321の各スイッチSWa、SWbのオン/オフ制御を行う回路である。スイッチ選択手段314は、図示しないカウンタやデコーダ等を有して構成されている。
【0037】
スイッチ選択手段314は、マイコン4からの指示信号をトリガとして、予め定められたシーケンスに従ってマルチプレクサ311の選択スイッチ、および後述する昇圧回路321の各スイッチSWa、SWbの作動を制御する。本実施形態では、シーケンスとして、単位電池Viにおける最も低圧側の電池セル1aのセル電圧から最も高圧側の電池セル1aのセル電圧を順に検出し、最も高電圧側の電池セル1aのセル電圧を検出した後、単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1における最も低圧側の電池セル1aの電圧を検出するように設定されている。
【0038】
電圧検出部31は、対応する単位電池Viから電源部32を介して電力供給されて作動するように構成されている。本実施形態では、電圧検出部31におけるマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312によって、対応する単位電池Viの端子間電圧よりも高い電圧で作動する高電圧作動手段が構成されている。なお、マルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCは、対応する単位電池Viの端子間電圧よりも大きい電圧に設定されている。
【0039】
また、本実施形態では、電圧検出部31におけるAD変換器313およびスイッチ選択手段314によって、対応する単位電池Viの端子間電圧よりも低い電圧で作動する低電圧作動手段が構成されている。なお、AD変換器313およびスイッチ選択手段314の電源電圧は、対応する単位電池Viの端子間電圧よりも小さい電圧(5V)に設定されている。
【0040】
電圧検出回路3における電源部32は、対応する単位電池Viの端子間電圧を所望の電圧に変換して電圧検出部31の各種回路等に出力する電源回路である。この電源部32は、電圧検出部31におけるマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312へ出力する電圧を昇圧する昇圧回路321、電圧検出部31におけるAD変換器313およびスイッチ選択手段314へ出力する電圧を降圧する降圧回路322を有して構成されている。
【0041】
降圧回路322は、対応する単位電池Viの端子間電圧を降圧する回路であり、電圧検出部31におけるAD変換器313およびスイッチ選択手段314の電源電圧(5V)を生成するものである。
【0042】
降圧回路322は、その入力端子が対応する単位電池Viの正極端子および負極端子に接続され、出力端子がAD変換器313およびスイッチ選択手段314の電源端子に接続されている。
【0043】
昇圧回路321は、対応する単位電池Viの端子間電圧を電圧検出部31にて検出する各電池セル1aの電圧よりも大きくなるように昇圧する回路であり、電圧検出部31におけるマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCを生成するものである。
【0044】
本実施形態の昇圧回路321は、チャージポンプ回路として構成されており、スイッチSWa、SWb、およびコンデンサCを有している。昇圧回路321は、入力端子321aが降圧回路322の出力端子に接続されると共に、入力端子321bが単位電池Viの負極端子に接続され、さらに、その出力端子321c、321dがマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源端子に接続されている。
【0045】
昇圧回路321の入力端子321aと出力端子321cとの間には、スイッチSWaおよびスイッチSWbがこの順で直列に接続され、昇圧回路321の入力端子321bと出力端子321dとの間には、スイッチSWbおよびスイッチSWaがこの順で直列に接続されている。
【0046】
入力端子321aおよび出力端子321c間のスイッチSWaおよびスイッチSWbの接続点には、コンデンサCの一方の端子が接続され、入力端子321bおよび出力端子321d間のスイッチSWbおよびスイッチSWaの接続点との間には、コンデンサCの他方の端子が接続されている。昇圧回路321における各スイッチSWa、SWbは、スイッチ選択手段314からの指令に基づいて制御される。
【0047】
図1に戻り、マイコン4は、図示しないCPU、ROM、EEPROM、RAM等を備え、ROM等に記憶されたプログラムに従って各電池セル1aの状態を監視する制御回路である。このようなマイコン4は、AD変換器313にて各電池セル1aのセル電圧を測定する際に、スイッチ選択手段314等へマルチプレクサ311や昇圧回路321を制御する。また、マイコン4は、AD変換器313にて測定された各電池セル1aのセル電圧と図示しない測定回路により測定された組電池1に流れる電流とを用いて組電池1の残存容量(State of Charge;SOC)等を取得して、この残存容量等に基づいて図示しない均等化放電回路等により電池セル1aの充電や放電を制御する。
【0048】
以上が、本実施形態に係る電池電圧監視装置2および電圧監視システムの構成である。次に、本実施形態に係る電池電圧監視装置2の電圧検出回路3における各電池セル1aを検出する作動について説明する。
【0049】
マイコン4からスイッチ選択手段314に所定の指令信号がトリガとして入力されると、スイッチ選択手段314では、予め定められたシーケンスに従って電圧検出部31のマルチプレクサ311の選択スイッチを切り替える。
【0050】
具体的には、先ず、単位電池Viにおける最も低電圧となる電池セル1aの正極側スイッチSW1_1と負極側スイッチSW1_2とがオンされ、最も低電圧となる電池セル1aと電圧検出回路3の電圧検出部31とが接続される。そして、電圧検出部31のAD変換器313では、レベルシフト手段312を介して入力される電池セル1aのセル電圧のAD変換が行われ、AD変換器313からマイコン4に電池セル1aのセル電圧が出力される。
【0051】
このように、マイコン4は最も低電圧となる電池セル1aのセル電圧を取得する。この後、マイコン4は、上記と同様に、シーケンスに従って低電圧側の電池セル1aから順に電池セル1aのセル電圧を取得する。
【0052】
上記のようにして単位電池Viにおける最も高電圧となる電池セル1aのセル電圧が検出されると、次に、スイッチ選択手段314にて、隣接する単位電池Vi+1における最も低電圧となる電池セル1aの正極側スイッチSWc_1と負極側スイッチSWc_2とがオンされ、隣接する単位電池Vi+1における最も低電圧となる電池セル1aと電圧検出回路3の電圧検出部31とが接続される。
【0053】
そして、電圧検出部31のAD変換器313では、レベルシフト手段312を介して入力される電池セル1aのセル電圧のAD変換が行われ、AD変換器313からマイコン4に電池セル1aのセル電圧が出力される。
【0054】
これにより、電圧検出回路3にて対応する単位電池Viを構成する各電池セル1aに加えて、対応する単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1を構成する電池セル1aの電圧を検出することができる。
【0055】
ここで、電圧検出部31にて各電池セル1aの電圧を検出する作動を行っている際の電源部32の作動について図5、図6に基づいて説明する。図5は、本実施形態に係る昇圧回路321の各スイッチSWa、SWbの作動を示すタイミングチャートであり、図6は、電源部32の昇圧回路内の電流の流れを説明するための説明図である。
【0056】
電源部32では、昇圧回路321を介して電圧検出部31におけるマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312へ所望の電圧を出力すると共に、降圧回路322を介して電圧検出部31におけるAD変換器313およびスイッチ選択手段314へ所望の電圧を出力する。
【0057】
この際、昇圧回路321では、スイッチ選択手段314からの指令信号をトリガとして、スイッチSWaとスイッチSWbとを交互にオンすることで、マルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧を、電圧検出部31にて検出する各電池セル1aのセル電圧よりも大きくなるように昇圧する。
【0058】
具体的には、図5に示すように、スイッチ選択手段314からの指令信号が入力されると、スイッチSWaをオンすると共にスイッチSWbをオフして、コンデンサCに降圧回路322の出力電圧を保持する。この際、図6の昇圧回路321内に示す太実線矢印のように電流が流れる。
【0059】
その後、スイッチSWaをオフすると共にスイッチSWbをオンして、対応する単位電池Viの端子間電圧にコンデンサCに保持された降圧回路322の出力電圧を加算した電圧をマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCとして出力する。この際、図6の昇圧回路321内に示す太破線矢印のように電流が流れる。
【0060】
これにより、マルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCを、対応する単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1を構成する電池セル1aの電圧以上に昇圧することができる。マルチプレクサ311およびレベルシフト手段312は、それらの電源であるVCC以下の電圧を正確に検出することができるので、昇圧回路321の効果によって適切に駆動することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、電池電圧監視装置2の各電圧検出回路3における電圧検出部31および電源部32のうち、電圧検出部31だけを、隣接する電圧検出回路3に対応する単位電池Vi+1における最も低電圧となる電池セル1a(共通セル)に結線する構成としているので、各電圧検出回路3にて隣接する電圧検出回路3に対応する単位電池Vi+1における一部の電池セル1aの電圧を検出することができる。
【0062】
加えて、各電圧検出回路3を駆動する際の電源を対応する単位電池Viだけで構成することができるので、隣接する電圧検出回路Viに接続された共通セルの消費電流が他の電池セルに比べて増大することを抑制することができる。
【0063】
従って、各電圧検出回路3にて隣接する電圧検出回路3に対応する単位電池Vi+1の電池セルを監視可能に構成された電池電圧監視装置において、各電池セル1aにおける消費電流のバラツキを抑制することができる。
【0064】
また、電源部32に昇圧回路321を設ける構成とすることで、電圧検出回路3の電圧検出部31におけるマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCを、検出対象となる電池セル1aの電圧(電圧検出回路3の入力電圧)よりも大きくすることができるので、隣接する電圧検出回路Viに対応する単位電池Viを構成する電池セル1aの電圧を電圧検出部31にて適切に検出することが可能となる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7、図8に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係る電圧検出部および電源部の内部構成を示す回路図であり、図8は、本実施形態に係る昇圧回路321の各スイッチSWa_1〜SWa_8、SWbの作動を示すタイミングチャートである。本実施形態では、昇圧回路321の内部構成が第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0066】
本実施形態の電源部32における昇圧回路321は、図7に示すように、スイッチSWb、コンデンサCに加えて、対応する単位電池Viの各電池セル1aとコンデンサCとを選択的に直列接続するスイッチSWa_1〜SWa_8を有している。
【0067】
昇圧回路321の各スイッチSWa_1〜SWa_8それぞれは、対応する単位電池Viの各電池セル1aの正極側および負極側に接続されており、スイッチSWa_1〜SWa_8のいずれかがオンされることで、オンされたスイッチに対応する電池セル1aの端子間電圧がコンデンサCに保持される。なお、各スイッチSWa_1〜SWa_8は、スイッチSWbと同様にスイッチ選択手段314からの指令に基づいて制御される。
【0068】
次に、本実施形態に係る昇圧回路321の作動について説明する。昇圧回路321では、スイッチ選択手段314からの指令信号をトリガとして、各スイッチSWa_1〜SWa_8のうち一組のスイッチとスイッチSWbとを交互にオンすることで、マルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧を、電圧検出部31にて検出する各電池セル1aのセル電圧よりも大きくなるように昇圧する。
【0069】
具体的には、図8に示すように、スイッチ選択手段314からの指令信号が入力されると、各スイッチSWa_1〜SWa_8のうち、スイッチSWa_1をオンすると共にスイッチSWbをオフして、コンデンサCに単位電池Viにおける最も低電圧となる電池セル1aの端子間電圧を保持する。
【0070】
そして、スイッチSWa_1をオフすると共にスイッチSWbをオンして、対応する単位電池Viの端子間電圧にコンデンサCに保持された電圧(単位電池Viにおける最も低電圧となる電池セル1aの端子間電圧)を加算した電圧をマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCとして出力する。
【0071】
この後、図7に示すように、所定の順番でスイッチSWa_2〜SWa_8、およびスイッチSWbのオンオフを行うことで、低電圧側の電池セル1aから順に電池セル1aのセル電圧をコンデンサCに保持し、対応する単位電池Viの端子間電圧に、コンデンサCに保持された電圧を加算した電圧をマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCとして出力する。
【0072】
これによれば、マルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧VCCを、対応する単位電池Viに隣接する単位電池Vi+1を構成する電池セル1aの電圧以上に昇圧することができるので、マルチプレクサ311およびレベルシフト手段312を適切に駆動することができる。
【0073】
また、各スイッチSWa_1〜SWa_8を順次オンする構成としているので、各スイッチSWa_1〜SWa_8に接続された各電池セル1aを均等に放電させることができる。
【0074】
なお、マイコン4にて取得した各電池セル1aのセル電圧にバラツキが生じている場合には、各スイッチSWa_1〜SWa_8のうち、セル電圧が高い電池セル1aに対応するスイッチSWaをオンする回数を他のスイッチSWaをオンする回数に比べて増加させることで、各電池セル1aの均等化を実行することができる。すなわち、各電池セル1aのうち、高電圧側の電池セル1aを優先的に用いて、電圧検出部31へ出力する電圧を昇圧する構成とすることで、各電池セル1aの均等化を実行することができる。これによれば、電源部32を均等化回路としても機能させることができるので、電池電圧監視装置2の簡素化を図ることが可能となる。
【0075】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0076】
(1)上述の各実施形態では、隣接する電圧検出回路3のうち、低電圧側の電圧検出回路3の電圧検出部31に対して、高電圧側の電圧検出回路3に対応する単位電池Viの最も低電圧となる電池セル1aを結線する構成としているが、これに限定されない。
【0077】
例えば、隣接する電圧検出回路3のうち、高電圧側の電圧検出回路3の電圧検出部31に対して、低電圧側の電圧検出回路3に対応する単位電池Viの最も高電圧となる電池セル1aを結線する構成としてもよい。この場合には、電圧検出回路3におけるマルチプレクサ311およびレベルシフト手段312の電源電圧を各電池セル1aからの入力電圧よりも大きくなるように電圧を変更する回路(昇圧回路)を追加すればよい。
【0078】
(2)上述の各実施形態では、各電圧検出回路3がそれぞれマイコン4に接続される構成を採用する例について説明したが、各電圧検出回路3のうち一部がマイコン4に接続され、各電圧検出回路3同士がそれぞれ通信可能に接続(デイジーチェーン接続)された構成を採用してもよい。
【0079】
(3)上述の各実施形態では、電池電圧監視装置2を複数の電圧検出回路3および1つのマイコン4で構成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、各電圧検出回路3に対応して複数のマイコン4を設ける構成としてもよい。この場合、電池電圧監視装置2は、電圧検出回路3およびマイコン4からなる監視ユニットを複数備える構成となる。
【0080】
(4)上述の各実施形態では、電池電圧監視装置2をハイブリッド車等の電気自動車に適用することについて説明したが、これは装置の適用の一例であり、車両に限らず組電池1を利用して装置を作動させる場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 組電池
1a 電池セル
3 電圧検出回路(電圧検出手段)
31 電圧検出部
32 電源部
321 昇圧回路
322 降圧回路
V1〜Vn 単位電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列に接続して構成される組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した単位電池に対応して複数設けられ、対応する前記単位電池を構成する前記電池セルそれぞれの電圧を監視する電圧検出手段を備える電池電圧監視装置であって、
前記複数の電圧検出手段それぞれは、対応する前記単位電池を構成する前記電池セルそれぞれに結線され、結線された前記電池セルの電圧を検出する電圧検出部、および対応する前記単位電池の端子間電圧を所望の電圧に変換して前記電圧検出部へ出力するための電源部を有し、
前記複数の電圧検出手段のうち隣接する電圧検出手段における一方の電圧検出手段は、前記電圧検出部および前記電源部のうち前記電圧検出部だけが他方の電圧検出手段に対応する前記単位電池を構成する一部の前記電池セルの電圧を検出するように結線されていることを特徴とする電池電圧監視装置。
【請求項2】
前記電源部は、前記電圧検出部へ出力する電圧を前記電圧検出部にて検出する前記電池セルの電圧よりも大きくなるように昇圧させる昇圧回路を有することを特徴とする請求項1に記載の電池電圧監視装置。
【請求項3】
前記電源部は、前記電圧検出部へ出力する電圧を降圧させる降圧回路を有し、
前記昇圧回路は、前記電圧検出部にて検出する前記電池セルの電圧に、前記降圧回路の出力電圧を加算した電圧を出力するチャージポンプ回路として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電池電圧監視装置。
【請求項4】
前記昇圧回路は、前記電圧検出部にて検出する前記電池セルの電圧に、前記複数の電池セルにおける1つ以上の前記電池セルの電圧を加算した電圧を出力するチャージポンプ回路として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電池電圧監視装置。
【請求項5】
前記昇圧回路は、前記複数の電池セルのうち、最も高電圧となる前記電池セルを優先的に用いて、前記電圧検出部へ出力する電圧を昇圧することを特徴とする請求項4に記載の電池電圧監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7573(P2013−7573A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138486(P2011−138486)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】