説明

電源素子保持器具及び電源素子保持トレイ

【課題】電源素子の形状や端子の位置にかかわらず、容易に行える作業で電源素子を保持させることができる電源素子保持器具を提供する。
【解決手段】保持器具1のベース板10には、電池パック800の前面802に対向する前方固定板21と、電池パック800の両側面803,804にそれぞれ対向するパッド31,41を支持する側方固定板35,45と、電池パック800の背面805に対向するパッド51を支持する背方固定板52とが固定されている。パッド41は、パッド31に対して遠近する方向に変位可能であり、パッド51は、前方固定板21に対して遠近する方向に変位可能である。ユーザは、電池パック800を前方固定板21とパッド51との間に挟み、パッド31とパッド41との間に挟むことにより、容易な作業で、電池パック800を保持器具1により保持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源素子保持器具、電源素子保持トレイ、及び電源素子試験装置に関し、特に、形状や端子の位置などが異なる様々な電源素子を保持可能な電源素子保持器具、電源素子保持トレイ、及び電源素子試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池や電源として用いられるキャパシタなどの電源素子としては、規格化された形状を有するもの(例えば、乾電池など)もあれば、使用される機器の形状などに応じてパッケージ化されたもの(例えば、携帯電話機に用いられるような電池パックなど)もある。近年では、様々な機器で広く電源素子が用いられており、形状や端子の位置などが異なる、様々な電源素子が存在している。
【0003】
ところで、このような電源素子について、性能や状態に関する試験又は検査などを行うためには、電源素子が移動しないように電源素子を器具に保持させた状態で、電源素子の端子を試験機器側の電極などに接続する必要がある。しかしながら、上記のように電源素子の外径や端子の位置は様々であるため、電源素子を保持するための器具を個々の電源素子のそれぞれにあわせて用意するのは、困難である。
【0004】
下記特許文献1には、電池の形状や端子の配置位置などが異なっても、電池の端子と電極とを当接させることができるように、2つの部材間で電池を挟持する電池固定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−252039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されている電池固定装置では、上記問題を十分に解決できない場合がある。すなわち、電極が端子に接触するような適切な位置で電池を挟持させるためには、電池の位置決めなどに複雑な作業が必要となり、保持させる電池を変更する際に時間がかかる場合もある。また、特に、平型で側面に端子を有する電池を保持させる場合、特許文献1に記載されている電源固定装置では、電池の厚みによっては、弾性部材間に挟持させることが不可能であったり、挟持させることが極めて困難であったりする。
【0007】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、電源素子の形状や端子の位置にかかわらず、容易に行える作業で電源素子を保持させることができる電源素子保持器具、電源素子保持トレイ、及び電源素子試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、電源素子保持器具は、電源素子の前面に対向する壁部を有する固定部と、固定部にそれぞれ支持されており、電源素子の両側部にそれぞれ対向する2つの側部支持部材と、固定部に支持されており、電源素子の背部に対向する背部支持部材とを備え、2つの側部支持部材のうち、少なくとも一方は、他方の側部支持部材に対して遠近する方向に、固定部に対して変位可能に設けられており、背部支持部材は、壁部に対して遠近する方向に、固定部に対して変位可能に設けられている。
【0009】
好ましくは背部支持部材は、弾性部材により壁部に向けて付勢されている。
【0010】
好ましくは電源素子保持器具は、固定部に支持されており、電源素子の底部を支持する底部支持部材と、底部支持部材の固定部に対する昇降方向の位置を調節する調節部材とをさらに備える。
【0011】
好ましくは2つの側部支持部材のうち、少なくとも一方は、弾性部材により他方の側部支持部材に向けて付勢されている。
【0012】
好ましくは2つの側部支持部材のうち、一方は、他方の側部支持部材に対して遠近する方向の固定部に対する位置が調節できるように設けられている。
【0013】
好ましくは壁部には、電源素子の前面に設けられた端子に接触する電極が配置されている。
【0014】
好ましくは背部支持部材には、電源素子の背部側に設けられた端子に接触する電極が配置されている。
【0015】
好ましくは固定部は、ベース部材と、ベース部材上に配置され、一部が壁部を構成する第1の固定支持部と、ベース部材上に配置され、少なくとも背部支持部材を支持する第2の固定支持部とを有する。
【0016】
この発明の他の局面に従うと、電源素子保持トレイは、トレイ本体と、トレイ本体上に配置された、複数の上述のいずれかに記載の電源素子保持器具とを備える。
【0017】
この発明のさらに他の局面に従うと、電源素子保持トレイは、トレイ本体と、トレイ本体上に着脱可能に配置された、複数の上述に記載の電源素子保持器具とを備え、トレイ本体には、被係合部が形成されており、複数の電源素子保持器具のそれぞれのベース部材には、被係合部に係合する係合部が設けられており、係合部が被係合部に係合することで、電源素子保持器具のそれぞれがトレイ本体上に配置されている。
【0018】
この発明のさらに他の局面に従うと、電源素子試験装置は、庫内部に設けられた上述に記載の電源素子保持トレイと、庫内部の温度を調節する温度調節装置とを備える。
【発明の効果】
【0019】
これらの発明に従うと、固定部の壁部と、固定部に対して変位可能な側部支持部材及び背部支持部材とで電源素子を保持することができる。したがって、電源素子の形状や端子の位置にかかわらず、容易に行える作業で電源素子を保持させることができる電源素子保持器具、電源素子保持トレイ、及び電源素子試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおける電源素子保持器具を示す斜視図である。
【図2】保持器具の分解斜視図である。
【図3】保持器具の平面図である。
【図4】保持器具の側面図である。
【図5】保持器具の正面図である。
【図6】保持器具の背面図である。
【図7】保持器具の底面図である。
【図8】電池パックがセットされている状態の保持器具を示す斜視図である。
【図9】電池パックがセットされている状態の保持器具の平面図である。
【図10】電池パックがセットされている状態の保持器具の側面図である。
【図11】保持器具のパッドを示す正面図である。
【図12】本実施の形態に係る電源素子保持トレイの一例を示す斜視図である。
【図13】トレイ本体の一例を示す平面図である。
【図14】各保持器具に電池パックが保持されている状態の保持トレイを示す斜視図である。
【図15】本実施の形態に係る恒温器の一例を示す斜視図である。
【図16】本実施の形態の電源素子保持器具の一変型例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態における電源素子保持器具について説明する。
【0022】
[実施の形態]
【0023】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける電源素子保持器具を示す斜視図である。
【0024】
電源素子保持器具1(以下、保持器具1ということがある)は、電池パック(電源素子の一例)800を保持する治具として用いられる。保持器具1に電池パック800を保持させることで、電池パック800についての充放電試験など、種々の試験が行える。
【0025】
[電池パック800の説明]
【0026】
保持器具1の説明を行う前に、電池パック800について説明する。
【0027】
図1に示されるように、電池パック(電源素子の一例)800は、例えば、厚み方向の寸法が、奥行き方向や幅方向の寸法と比較して小さめである平型の略直方体形状を有する。電池パック800は、例えばリチウムイオンポリマー二次電池である。電池パック800の表面について、前面、背面、側面、上面などの別は任意に決めることができるが、便宜上、以下の説明では、図1に示されるように、前面802、左側面803、右側面804、背面805、及び底面806などと呼ぶ。
【0028】
電池パック800の前面802には、端子810が設けられている。電池パック800には電荷が蓄電されており、端子810を通じて放電が行われる。
【0029】
保持器具1が対応可能な電池パック800の電池の種類や形状は、上記のものに限られない。例えば、保持器具1は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、種々の一次電池など、種々のタイプの電池を用いた電池パックを保持可能である。また、保持器具1は、円柱形や半円柱形の電池パックや、種々の乾電池(電源素子の一例)などを保持可能である。
【0030】
[保持器具1の説明]
【0031】
図2は、保持器具1の分解斜視図である。図3は、保持器具1の平面図である。図4は、保持器具1の側面図である。図5は、保持器具1の正面図である。図6は、保持器具1の背面図である。図7は、保持器具1の底面図である。
【0032】
図1〜図7を参照しながら、保持器具1の構成について次に説明する。なお、各図において、ねじの図示は省略している。
【0033】
図1を参照して、保持器具1は、大まかに、ベース板(ベース部材の一例)10と、ベース板10上に固定された固定支持部20と、左支持部30と、右支持部40と、背部支持部50と、底部支持部60(図2に示す。)とを有している。本実施の形態では、大まかに、ベース板10と固定支持部20とが、他の部材を支持する固定部として機能する。保持器具1は、電池パック800の前面802、左側面803、右側面804、背面805、及び底面806をそれぞれ支持することで、電池パック800を保持することができる。以下の説明において、図1に示されるX軸方向手前側を保持器具1の前方と、X軸方向奥側を保持器具1の後方と、Y軸方向手前側を左側方と、Y軸方向奥側を右側方と、Z軸方向上方を上方と、Z軸方向下方を下方と、それぞれいうことがある。
【0034】
ベース板10は、平面視で略長方形形状を有するように形成されている。図2に示すように、ベース板10には、ベース板10の底面から下方に突出する係合爪(係合部の一例)11が設けられている。ベース板10のうち、後述のように電池パック800が配置される部位の下方には、ねじ穴15が設けられている。図7に示されるように、係合爪11は、左右両側部の前端部及び後端部に設けられている。すなわち、係合爪11は、4箇所に設けられている。
【0035】
ベース板10は、例えばアルミニウム板を用いて形成されている。4つの係合爪11は、アルミニウム板を下方に折り曲げることで形成されている。
【0036】
固定支持部20は、おおまかに、電池パック800が保持器具1に保持されている状態で、電池パック800の前方と両側方とに位置する第1の固定支持部20aと、電池パック800の背方を支持する第2の固定支持部20bとに分けられる。
【0037】
図2に示されるように、第1の固定支持部20aは、前方固定板(壁部の一例)21と、側方固定板35,45とが組み付けられて構成されている。前方固定板21は、電池パック800の前方に位置するように、ベース板10上に固定されている。側方固定板35,45は、前方固定板21の左右の側部にそれぞれの前面が接触するように、ベース板10上に固定されている。前方固定板21及び側方固定板35,45と、ベース板10とは、ベース板10の下方からベース板10を介して前方固定板21及び側方固定板35,45のそれぞれにねじ込まれるねじ19により、結合されている。前方固定板21と、側方固定板35,45のそれぞれとは、前方固定板21を介して側方固定板35,45にねじ込まれるねじ29により、結合されている。すなわち、図3に示されるように、第1の固定支持部20aは、上面視で電池パック800の前方及び両側方の3方を囲むようなC型チャンネル形状(U字形状)をなすように、ベース板10上に立設されている。
【0038】
図2に示されるように、本実施の形態では、第2の固定支持部20bとして、背方固定板52が設けられている。背方固定板52は、ベース板10の背方の端部近傍部位に位置するように、ベース板10上に固定されている。背方固定板52は、電池パック800の背方に位置している。背方固定板52とベース板10とは、ベース板10の下方からベース板10を介して背方固定板52にねじ込まれるねじ19により、結合されている。
【0039】
左支持部30は、パッド(側部支持部材の一例)31と、シャフト33と、ばね(弾性部材の一例)34と、ノブ37とを有している。
【0040】
パッド31は、その1つの面に形成されたパッド面31aが電池パック800の左側面803に対向するようにして配置されている。すなわち、パッド31は、パッド面31aが、保持器具1の使用時に電池パック800に当たるように、右支持部40に向いた状態で配置されている。パッド面31aは、電池パック800に向けて凹凸がある形状を有している。また、本実施の形態において、パッド面31aの上部には、上端部に近づくに従ってパッド31と右支持部40のパッド41との間隔が広くなるように形成されたテーパ部31zが設けられている。
【0041】
シャフト33は、パッド面31a側からパッド31に設けられた孔部31bに差し込まれ、パッド31を貫通し、側方固定板35に設けられたねじ穴35bにねじ込まれている。これにより、パッド31は、シャフト33を介して、側方固定板35に支持されている。
【0042】
ノブ37は、側方固定板35から側方に突出したシャフト33の一端部に取り付けられている。ノブ37の周囲には、ローレット加工が施されている。これにより、ユーザが容易にノブ37を摘み、回転操作を行うことができる。
【0043】
シャフト33の他端部には、パッド31の孔部31bの内径よりも径方向の寸法が大きいつば部33aが形成されている。
【0044】
ばね34は、コイルばねである。ばね34は、シャフト33と略同軸に、すなわちシャフト33がばね34の内部を貫通するように、配置されている。
【0045】
ばね34は、パッド31の左側面(パッド面31aとは反対側の面)と側方固定板35の右側面との間で圧縮された状態で、配置されている。したがって、パッド31は、ばね34により、側方固定板35及びベース板10に対して右方向(図2においてY方向)に付勢されている。パッド31は、シャフト33のつば部33aに接触することでシャフト33に対してとりうる位置が規制された状態で、保持されている。
【0046】
なお、ばね34により付勢された状態であっても、パッド31は、ばね34を圧縮してシャフト33の軸方向(左方向)に変位可能である。また、ばね34によりパッド31が付勢された状態では、つば部33aはパッド31の内部に入り込んでおり、パッド面31aからつば部33aは突出しない。
【0047】
ここで、ノブ37が回転操作されるなどしてシャフト33が側方固定板35に対して回転することで、シャフト33の、側方固定板35からの右方向への突出量は変更可能である。このとき、ばね34の付勢力により、パッド31のシャフト33に対する位置は保たれる。したがって、シャフト33が回転すると、パッド31の側方固定板35に対する位置が変更する。すなわち、パッド31は、後述する右支持部40のパッド41に対して遠近する方向(図2においてY方向)の、側方固定板35に対する位置が調節できるように設けられている。
【0048】
右支持部40は、パッド(側部支持部材の一例)41と、2本のシャフト43a,43bと、2つのばね(弾性部材の一例)44a,44bと、2つの固定ねじ46a,46bと、2つのストッパ部材47a,47bとを有している。
【0049】
パッド41は、その1つの面に形成されたパッド面41aが電池パック800の右側面804に対向するようにして配置されている。すなわち、パッド41は、パッド面41aが保持器具1の使用時に電池パック800に当たるように、左支持部30に向いた状態で配置されている。パッド41は、パッド31に対向するようにして配置される。また、本実施の形態において、パッド面41aの上部には、上端部に近づくに従ってパッド31,41間の間隔が広くなるように形成されたテーパ部41zが設けられている。パッド41は、シャフト43a,43bが取り付けられる部分を除き、パッド31と略対称の形状を有している。
【0050】
シャフト43aは、パッド41の上方に取り付けられている。シャフト43bは、パッド41の下方であってシャフト43aの下方に取り付けられている。各シャフト43a,43bには、パッド面41a側からパッド41を貫通するようにして、固定ねじ46a,46bがねじ込まれている。これにより、シャフト43a,43bはパッド41に固定されている。
【0051】
シャフト43a,43bは、側方固定板45に設けられた2つの孔部45aのそれぞれに差し込まれ、側方固定板45を貫通している。シャフト43a,43bは、側方固定板45に対して、その軸方向(図2においてY方向)にスライド可能である。これにより、パッド41は、2つのシャフト43a,43bを介して、側方固定板35にスライド可能に支持されている。すなわち、パッド41は、左支持部30のパッド31に対して遠近する方向に、側方固定板45及びベース板10に対して変位可能に設けられている。
【0052】
シャフト43a,43bの端部には、それぞれ、ストッパ部材47a,47bが取り付けられている。ストッパ部材47a,47bは、例えば側方固定板45の孔部45aの内径よりも径方向の寸法が大きいワッシャなどを有するねじである。ストッパ部材47a,47bは、シャフト43a,43b及びパッド41が側方固定板45に対してスライド可能な範囲を規制する。本実施の形態では、例えば、パッド41は、パッド面41aが上面視で電池パック800が配置される位置の中央部(後述する電極71が配置される位置)を越えて左支持部30側に張り出すことがないように、ストッパ部材47a,47bにより規制されている。
【0053】
ばね44a,44bは、コイルばねである。各ばね44a,44bは、シャフト43a,43bと略同軸に配置されている。ばね44a,44bは、シャフト43a,43bがばね44a,44bの内部を貫通するようにして配置されている。
【0054】
ばね44a,44bは、パッド41の右側面(パッド面41aとは反対側の面)と側方固定板45の左側面との間で圧縮された状態で、配置されている。すなわち、パッド41は、ばね44a,44bにより、側方固定板45及びベース板10に対して、左方向に、すなわち左支持部30に向けて付勢されている。
【0055】
なお、ばね44a,44bにより付勢された状態であっても、パッド41は、ばね44a,44bを圧縮するようにしてシャフト43a,43bの軸方向に変位可能である。本実施の形態において、保持器具1が使用状態であるときのパッド41に作用する2つのばね44a,44bの復元力は、パッド31に作用するばね34の復元力と比較してやや小さい。これにより、後述のように保持器具1に電池パック800を保持させるときに、ユーザは、容易に、主にパッド41を変位させて、電池パック800を所定位置に配置することができる。
【0056】
ばね44a,44bによる付勢力(復元力)は、例えば、電池パック800が保持器具1にセットされているときに、電池パック800がパッド41とパッド31との間で確実に保持されるように、設定されている。付勢力の設定は、例えば、ばね定数やばねの自然長などを調整することで行えばよい。
【0057】
なお、側方固定板35と側方固定板45とは、同一の形状を有する、共通化された部材である。すなわち、側方固定板35,45のそれぞれに、ねじ穴35bと2つの孔部45aとが設けられている。このように部品の共通化が図られることで、保持器具1の製造コストが低減されている。また、部品の種類が少なくなることにより、保持器具1は、容易に組立て可能である。
【0058】
背部支持部50は、パッド(背部支持部材の一例)51と、2本のシャフト53a,53bと、2つのばね(弾性部材の一例)54a,54bと、2つの固定ねじ57a,57bとを有している。
【0059】
パッド51は、保持器具1の左右方向(図2においてY方向)が長手方向となるようにして、電池パック800の背面805に対向するようにして配置されている。図2に示されるように、パッド51の左右方向の略中央部には、他の部位よりも電池パック800の背面805から離れる方向に一段低くくぼんだ凹部51cが形成されている。
【0060】
シャフト53a,53bは、共に、その軸方向が前後方向(図2においてX方向)に一致するように、背方固定板52により支持されている。図3に示されるように、シャフト53aは、背方固定板52の左側方に固定されている。シャフト53bは、背方固定板52の右側方に固定されている。シャフト53a,53bは、それぞれの一端部に、背方固定板52を貫通するようにして固定ねじ57a,57bがねじ込まれることにより、背方固定板52に固定されている。
【0061】
ばね54a,54bは、コイルばねである。各ばね54a,54bは、シャフト53a,53bと略同軸に配置されている。ばね54a,54bは、シャフト53a,53bがばね54a,54bの内部を貫通するようにして配置されている。
【0062】
図2に示されるように、パッド51の左側部には、孔部51aが形成されている。また、パッド51の右側部には、孔部52aが形成されている。パッド51は、孔部51aにシャフト53aが差し込まれ、孔部51bにシャフト53bが差し込まれた状態で、シャフト53a,53bを介して、背方固定板52に支持されている。
【0063】
パッド51は、シャフト53a,53bに対して、シャフト53a,53bの長手方向すなわち保持器具1の前後方向にスライド可能に支持されている。換言すると、パッド51は、前方固定板21に対して遠近する方向に、背方固定板52に対して変位可能に設けられている。
【0064】
なお、図4に示されるように、パッド51は、シャフト53a,53bなどによっては規制されずに、前方(図4において左方向)へ可能である。しかしながら、保持器具1が組み立てられている状態では、パッド51は、シャフト53a,53bがパッド51から抜脱するより先に、パッド31,41や側方固定板35,45に当接するため、脱落することはない。このように、パッド51の位置を規制するための部材を設ける必要がないように構成されているので、保持器具1の部品点数を少なくすることができ、製造コストを低くし、組み立てやすくすることができる。
【0065】
パッド51がシャフト53a,53bに保持されている状態で、ばね54a,54bは、パッド51の背面(凹部51cが設けられている面とは反対側の面)と背方固定板52の前面との間で圧縮された状態となっている。すなわち、パッド51は、ばね54a,54bにより、背方固定板52及びベース板10に対して、前方向に、すなわち固定支持部20aに向けて付勢されている。なお、ばね54a,54bにより付勢された状態であっても、パッド51は、ばね54a,54bを圧縮するようにして、シャフト53a,53bの軸方向に変位可能である。ばね54a,54bによる付勢力(復元力)は、例えば、電池パック800を保持器具1にセットされているときに、電池パック800がパッド51と前方固定板21との間で確実に保持されるように、設定されている。付勢力の設定は、例えば、ばね定数やばねの自然長などを調整することで行えばよい。
【0066】
底部支持部60は、支持板(底部支持部材の一例)61と、調節ねじ(調節部材の一例)63と、ノブ67とを有している。
【0067】
図2に示されるように、支持板61は、例えば円形板形状を有している。支持板61は、上面が略水平になるように(図2におけるXY平面に略平行になるように)配置されている。支持板61は、上面が電池パック800の底面806に面し、保持器具1にセットされる電池パック800の底面806を支持する。
【0068】
調節ねじ63は、その軸方向が略垂直になる方向(図2におけるZ方向)に配置されている。調節ねじ63の上端は、支持板61の中央部に結合されている。調節ねじ63の胴部には、ベース板10のねじ穴15に設けられたねじとかみ合うねじが切られている。調節ねじ63は、ねじ穴15にねじ込まれており、これによりベース板10に固定されている。換言すると、支持板61は、調節ねじ63を介して、ベース板10に支持されている。
【0069】
ノブ67は、調節ねじ63の下端部に取り付けられている。図6に示されるように、ノブ67は、ベース板10の底面から下方に突出している。ノブ67の周囲には、ノブ37と同様に、ローレット加工が施されている。これにより、ユーザが容易にノブ67を摘み、回転操作を行うことができる。
【0070】
ユーザは、ノブ67を回転させる操作を行うことで、調節ねじ63を回転させ、調節ねじ63をベース板10に対して昇降させることができる。換言すると、ユーザは、調節ねじ63を回転させる操作を行うことで、支持板61のベース板10に対する昇降方向(図2におけるZ方向)の位置を調節することができる。
【0071】
ここで、本実施の形態において、前方固定板21には、電極71が配置されている。また、背部支持部50のパッド51には、電極72が配置されている。電極71,72は、電池パック800の端子810に接触し、電池パック800についての試験を行うために設けられている。電極71,72は、外部の検査機器に接続されて利用されるが、配線の図示などは省略する。
【0072】
図5に示されるように、電極71は、前方固定板21の左右方向略中央部に配置されている。図2に示されるように、前方固定板21には、電極71が取り付けられる貫通孔21aが設けられている。電極71は、貫通孔21aに差し込まれるようにして配置され、ナットなどを用いて、前方固定板21に固定されている。
【0073】
図3に示されるように、電極71は、端子810に接触する部分が前方固定板21の背面(パッド51に対向する面)に露出するように配置されている。電極71は、電池パック800の前面802側に設けられた端子810に接触することで、電池パック800の試験を行うことを可能にする。
【0074】
また、図3に示されるように、前方固定板21の上面のうち、貫通孔21aの上方であって背面側の部分には、スリット21bが形成されている。スリット21bは、前方固定板21の上面と背面とに開口するように形成されている。また、スリット21bは、貫通孔21aにつながるように深く形成されている。これにより、ユーザは、保持器具1の上方から、スリット21bを通して、電極71の状態を目視により確認することができる。また、ユーザは、スリット21bを通して、電極71に触れる作業を行うこともできる。
【0075】
図2に示されるように、電極72は、パッド51の略中央部に、ナットなどを用いて取り付けられている。図3に示されるように、電極72は、電池パック800の背面805に端子810が配置されている場合にその端子810に接触する部分が、パッド51の前面(前方固定板21に対向する面)に露出するように配置されている。電極72は、パッド51の中央部に設けられた凹部51cに設けられている。
【0076】
なお、本実施の形態において、図1に示されるように、前方固定板21の下部には、2つのトンネル部21cが設けられている。これにより、前方固定板21の前面側と背面側との間で、トンネル部21cを介して配線することができる。例えば保持器具1に保持させる電池パック800に種々のセンサを設ける場合や、端子の位置が特殊である電池パック800について試験などを行う場合などに、トンネル部21cを通して配線することで、保持器具1をより便利に用いることができる。
【0077】
電極71,72は、それぞれ電池パック800の端子810などに接触する先端部分が、電極71,72のうち前方固定板21やパッド51に保持されている部分に対して、若干量変位可能に構成されている。すなわち、電極71,72の先端部分は、前方固定板21やパッド51の表面から突出していても、電池パック800などにより付勢されると適度に変位するので、電極71,72が壊れることがない。また、電池パック800の前面802や背面805に端子810が無い場合でも、保持器具1により電池パック800を支障なく保持することができる。また、電池パック800によって、端子810が前面802の表面からくぼんだ部分に配置されていても、電極71,72は、電池パック800が保持器具1に保持された状態で、確実にその端子810に接触した状態が維持される。
【0078】
電極71と電極72とは、互いに、保持器具1の前後方向の軸(図2におけるX方向の軸)に略同軸となるように配置されている。これにより、例えば乾電池のように、前面と背面とに端子810を有する電池パック800について、保持器具1で保持した状態で、試験などを行うことができる。
【0079】
[電池パック800をセットした状態の保持器具1の説明]
【0080】
図8は、電池パック800がセットされている状態の保持器具1を示す斜視図である。図9は、電池パック800がセットされている状態の保持器具1の平面図である。図10は電池パック800がセットされている状態の保持器具1の側面図である。
【0081】
図8〜図10を参照しながら、電池パック800をセットした状態の保持器具1について次に説明する。
【0082】
図8に示されるように、電池パック800は、前方固定板21と背部支持部50のパッド51との間に挟まれ、左支持部30のパッド31と右支持部40のパッド41との間に挟まれて、保持器具1に保持されている。また、電池パック800は、支持板61により支持されて、保持器具1に保持されている。パッド51は前方固定板21に向けて付勢されており、パッド41はパッド31に向けて付勢されている。また、パッド31は、パッド41に向けて付勢されている。このようにパッド31,41,51がばね34,44a,44b,54a,54bにより付勢されていることにより、電池パック800は、確実に、保持器具1に保持されたままの状態で維持される。
【0083】
電池パック800は、前面802が前方固定板21に位置決めされ、左側面803が左支持部30のパッド31により位置決めされ、底面806が支持板61により位置決めされた状態で、保持器具1に保持されている。このとき、電池パック800は、前面802の端子810が、電極71に接触するようにして位置決めされている。これにより、確実に電極71が端子810に接触している状態が保たれる。また、電池パック800を同一形状の他の電池パック800と交換するときも、容易に、毎回、電池パック800を同位置に保持させることができる。
【0084】
保持器具1は、パッド31の位置及び支持板61の位置が容易に調整可能であるので、種々の外径寸法や端子位置を有する電池パック800に対応可能である。
【0085】
すなわち、パッド31の位置は、電池パック800の左側面803から端子810までの距離に応じて調節されればよい。例えば、図9に示すように、左側面803から端子810までの左右方向(図9において縦方向)の距離と、パッド面31aから電極71までの左右方向(図9において縦方向)の距離(図において寸法yで示す。)とが略等しくなるように、パッド31の位置が調節されればよい。
【0086】
また、支持板61の位置は、電池パック800の底面806から端子810までの距離に応じて調節されればよい。例えば、図10に示すように、底面806から端子810までの垂直方向(図10において上下方向)の距離と、支持板61の上面から電極71までの垂直方向(図10において上下方向)の距離(図において寸法zで示す。)とが略等しくなるように、支持板61の位置が調節されればよい。
【0087】
なお、パッド31の位置や支持板61の位置は、電池パック800の厚み(両側面803,804間の距離)や電池パック800の上下方向の寸法などに応じて変更されてもよい。例えば、第1の電池パック800がセットされていたとき、第1の電池パック800に代えて、厚みがそれよりも10ミリ厚い第2の電池パック800をセットするときには、両電池パック800の厚みの差分の半分の寸法(すなわち、5ミリ)だけパッド31の位置を調整することができる。これにより、容易に、第1の電池パック800と中心位置をそろえて、第2の電池パック800をセットすることができる。
【0088】
このように、ユーザは、電池パック800を、容易な作業で、保持器具1により保持させることができる。また、電池パック800の試験を行うために端子810に接続することが必要な電極71を、電池パック800を保持器具1に保持させるのと同時に、端子810に接続することができる。このとき、電池パック800を保持器具1に保持させたままにすることにより、確実に、電極71を端子810に接触させたままで維持することができる。
【0089】
各パッド31,41,51は、電池パック800が保持されている状態でも、それぞればね34,44a,44b,54a,54bを圧縮しながら所定の方向に変位可能である。そのため、例えば保持されている電池パック800が変形(例えば、膨張など)しても、保持器具1は電池パック800に大きなストレスを加えることなく、電池パック800の変形を許容し、かつ、電池パック800を保持し続けることができる。したがって、電池パック800を安全に保持することができる。
【0090】
本実施の形態において、第1の固定支持部20aと、第2の固定支持部20bと、パッド31,41,51と、支持板61とは、樹脂製であって、絶縁性を有している。したがって、各部材の成型は容易に行うことができる。また、保持器具1により保持されている電池パック800に異常が発生したとしても、保持器具1の外部の部材と電池パック800との絶縁を保つことができ、安全な状態が保たれる。
【0091】
図11は、保持器具1のパッド31,41を示す正面図である。
【0092】
本実施の形態において、パッド31,41のそれぞれの上部には、テーパ部31z,41zが形成されていることにより、電池パック800を保持器具1に保持させる作業を、より容易に行うことができる。すなわち、図11に示されるように、保持器具1に電池パック800が保持されていないとき、パッド41がパッド31に近接しており、テーパ部31zとテーパ部41zとが互いに向き合っている。この状態で、ユーザにより、電池パック800の底部がテーパ部31z,41zに押し当てられ、電池パック800に下方向に力が加えられると、パッド31とパッド41との間隔を広げる方向に力が働く。これにより、パッド31とパッド41との間隔が広がり、電池パック800を両パッド31,41間に配置することができる。パッド31や41を直接変位させる操作を行わなくても、容易にパッド31,41の間隔を変更し、電池パック800をセットすることができる。
【0093】
[保持トレイの説明]
【0094】
本実施の形態において、保持器具1は、複数台が一緒にトレイ上に配置されて、電源素子保持トレイとして用いられる。これにより、複数台の保持器具1を用いて、一度に複数の電池パック800の試験などを容易に行うことができる。
【0095】
図12は、本実施の形態に係る電源素子保持トレイの一例を示す斜視図である。
【0096】
図12に示されるように、電源素子保持トレイ(以下、保持トレイということがある。)500は、トレイ本体501と、10台の保持器具1とを有している。保持器具1は、トレイ本体501上の所定位置に位置決めされて配置されている。本実施の形態において、保持器具1は、トレイ本体501に着脱可能に配置されている。なお、保持トレイ500に設置される保持器具1の数や位置は、これに限られるものではない。
【0097】
図13は、トレイ本体501の一例を示す平面図である。
【0098】
図13に示されるように、トレイ本体501は、孔部(被係合部の一例)510と、窓部520と、軽量化孔525,529と、コネクタ550などを有している。トレイ本体501は、例えば、アルミニウム板やステンレス板などを用いて形成されている。
【0099】
図13において、二点鎖線は、保持器具1が配置される位置を示す。孔部510、窓部520、軽量化孔525、及びコネクタ550は、保持トレイ500に設けられるそれぞれの保持器具1に対応する位置に、合計10組設けられる。これらの10組うち8組は、トレイ本体501の手前側(図13において下端側)に2段4列に略等間隔に配置され、その奥に、左右に分かれて、残りの2組が配置されている。
【0100】
軽量化孔529は、保持器具1が配置されない部分に形成された穴部である。軽量化孔529が設けられていることにより、保持トレイ500が軽量化されている。
【0101】
各組の孔部510、窓部520、軽量化孔525、及びコネクタ550は、例えば次のように配置されている。すなわち、孔部510は、保持器具1に設けられている4つの係合爪11のそれぞれに対応するように4つが設けられている。各孔部510は、係合爪11が貫入可能に形成されている。
【0102】
窓部520は、保持器具1の底面側から下方に突出するノブ67に対応する位置に配置された穴部である。保持器具1がトレイ本体501上に配置された状態では、ノブ67が窓部520からトレイ本体501の底面側に露出する。これにより、ユーザは、保持トレイ500上に設置された各保持器具1のノブ67を操作し、保持器具1をトレイ本体501から取り外すことなく、各支持板61の位置を調節することができる。
【0103】
軽量化孔525は、トレイ本体501のうち保持器具1により覆われる位置に形成された穴部である。軽量化孔525が設けられていることにより、保持トレイ500が軽量化されている。
【0104】
コネクタ550は、例えば各保持器具の左後方側に配置されている。コネクタ550には、各保持器具1の電極に接続される配線(図示せず)が接続される。各コネクタ550には、保持トレイ500から外部に引き出されるケーブル(図示せず)が接続され、各コネクタ550を介する入出力がひとまとまりに束ねられている。これにより、保持トレイ500の各コネクタ550と試験を行うための機器との接続を容易に行うことができる。なお、配線類の態様はこれに限られるものではない。また、コネクタ550がトレイ本体501に設けられていなくてもよい。
【0105】
保持器具1は、その4つの係合爪11が、トレイ本体501の所定の箇所のそれぞれの孔部510に貫入するようにして、トレイ本体501上に配置される。すなわち、保持器具1は、係合爪11が孔部510にはまり込む(係合の一態様)ことで、トレイ本体501上に位置決めされて、着脱可能に配置されている。この場合、コネクタ550に接続可能なコネクタを有する配線を各電極71,72に接続しておくことで、より容易に、トレイ本体501への保持器具1の取り付け、取りはずしを行うことができる。なお、保持器具1は、トレイ本体501に、例えば着脱用の金具を用いた機構など、上記とは異なる機構により取り付けられていてもよい。保持器具1は、例えば、所定の位置に貼り付けられた面ファスナなどにより、互いに位置決めされて取り付けられていてもよい。
【0106】
図14は、各保持器具1に電池パック800が保持されている状態の保持トレイ500を示す斜視図である。
【0107】
図14に示されるように、電池パック800は、各保持器具1に配置することができる。各保持器具1の電極71,72とコネクタ550とが接続されることにより(図示せず)、一度に複数の電池パック800について、容易に、試験などを行うことができる。
【0108】
各保持器具1について、パッド31,41,51は、それぞれ独立して変位可能である。また、各保持器具1について、ノブ37,67の調整は独立して行うことができる。したがって、それぞれの保持器具1について、互いに異なる形状の電池パック800を、確実に、かつ容易な作業で、保持させることができる。
【0109】
なお、保持トレイ500の使用目的などによっては、複数の保持器具1間でそれぞれのパッド31,41,51を互いに連動するように接続する部材を設けてもよい。また、複数の保持器具1間でそれぞれのシャフト33や調節ねじ63を互いに連動して回転させるような連動機構を設けてもよい。例えば一度に複数の同一形状の電池パック800について試験などを行うような用途では、これらの部材や機構を設けることにより、より容易に試験などを行うことができる場合がある。
【0110】
[電源素子保持器具を利用した装置の説明]
【0111】
本実施の形態において、保持トレイ500は、電源素子試験装置内に配置されて用いられる。ここで、電源素子試験装置は、例えば、所望の温度環境に調整可能な庫内に試験対象物を収容し、試験を行えるようにする、恒温器である。恒温器は、例えば、1つの保持トレイ500又は複数の保持トレイ500をその庫内に収容可能である。
【0112】
図15は、本実施の形態に係る恒温器の一例を示す斜視図である。
【0113】
図15に示されるように、恒温器(電源素子試験装置の一例)600は、例えば扉610を開けて庫内部にアクセス可能に構成されている。恒温器600は、温度調節装置650を有している。温度調節装置650は、恒温器600の庫内の温度を、所定値に調節する。温度調節装置650は、恒温器600の庫内の温度を、例えばセ氏数十度からセ氏マイナス数十度の範囲で調節することができる。温度調節装置650は、例えば事前に設定された温度プロファイルに応じて、恒温器600の庫内の温度を変化させる。
【0114】
恒温器600の庫内には、保持トレイ500が配置されている。保持トレイ500は、例えば、扉610が開けられている状態で、恒温器600の庫内から略水平に引き出し可能である。これにより、保持トレイ500上の保持器具1に電池パック800をセットしたり取り除いたりする作業を容易に行うことができる。
【0115】
恒温器600を用いて、その庫内の保持トレイ500上の保持器具1に保持させた電池パックの試験を行うことができる。これにより、電池パック800の周囲の温度を変化させながらの充放電試験などを、容易に、効率良く行うことができる。
【0116】
[電源素子保持器具1の変型例]
【0117】
保持器具1の左支持部30のパッド31や右支持部40のパッド41に代えて、それらとは異なる形状のものを取り付けてもよい。
【0118】
図16は、本実施の形態の電源素子保持器具の一変型例について説明する図である。
【0119】
図16は、本変型例に係る保持器具1の左支持部30及び右支持部40を前面側から見て示す図である。本変型例に係る保持器具1は、上記の保持器具1のパッド31に代えて、パッド31とは形状が異なるパッド131を有している。また、保持器具1は、パッド41に代えて、パッド41とは形状が異なるパッド141を有している。図16において、左支持部30のばね34及び右支持部40のばね44a,44bなどの図示は省略されている。
【0120】
図16に示されるように、パッド131,141のそれぞれは、互いに略対称な形状のパッド面131a,141bを有している。パッド面131a,141bは、例えば半円柱面状(円弧面状)の形状を有している。また、パッド131,141のそれぞれは、それぞれのパッド面131a,141bの上部に、上端部に近づくに従ってパッド131,141間の間隔が広くなるように形成されたテーパ部131z,141zを有している。
【0121】
本変型例では、両パッド131,141間に、パッド面131a,141bよりも曲率が大きい外形を有するような電池パック890などを保持することができる。電池パック890としては、例えば円筒形状の電池パック(図に2点鎖線で示す)や、乾電池などが挙げられる。このような形状のパッド131,141を採用することで、より多様な形状の電池パックを保持器具1で保持することができる。また、テーパ部131z,141zが設けられていることにより、上述の実施の形態と同様に、容易にパッド131,141間の間隔を広げ、電池パック890などを保持させることができる。
【0122】
なお、パッド131,141とパッド31,41とは、互いに着脱交換できるように構成されていてもよい。また、パッド面31a,41a,131a,141aなど、様々な形状のパッド面を、パッド31,41の本体に着脱可能にしてもよい。パッド31とパッド41とは、互いに異なる形状や寸法を有していてもよい。パッド31,41,131,141に、テーパ部31z,41z,131z,141zが設けられていなくてもよい。
【0123】
[その他]
【0124】
保持器具の各部材の構成や形状は、適宜変更可能である。
【0125】
例えば、保持器具の固定部の構成は上記に限られるものではない。上記の実施の形態の保持器具において、側方固定板は、前方固定板とは独立してベース板上に固定されていてもよい。また、例えば、背方固定板と側方固定板とが互いに結合されていてもよい。前方固定板、側方固定板、及び背方固定板のうちいずれか2つ以上が、互いに一体に形成されていてもよい。また、これらがベース部材と一体に形成されていてもよい。すなわち、左支持部、右支持部、及び背部支持部のそれぞれのパッドは、一体に形成された固定部材により指示されていてもよい。
【0126】
左支持部のパッド及び右支持部のパッドのそれぞれの側方固定板に対する位置が調整可能に構成されていてもよい。また、これらの両パッドの位置のいずれも、調整不可能であってもよい。例えば、電池パックを両パッド間に配置したときに、ばねの付勢力の釣合いによって平面視で左右略中央部に電池パックが保持されるようにしてもよい。
【0127】
底部支持部は、設けられていなくてもよい。すなわち、電池パックは、ベース部材上に配置されることで、電池パックの底面が支持されるようにしてもよいし、電池パックの前面、背面、両側面に作用する摩擦力によって、上下方向に変位しないようにして保持されるようにしてもよい。
【0128】
保持器具は、試験や検査用途に限られず、電池パックの充電を行うために電池パックを固定する用途に用いられてもよい。
【0129】
保持器具は、二次電池に対応するものに限られない。保持器具は、例えば、一次電池や、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)など、他の種類の電源素子を保持する用途に用いられるものであってもよい。
【0130】
保持器具は、上記のようにトレイ本体上に複数個を並べて使用されるものに限られない。1つの保持器具をそれ単独で用いることも可能である。保持器具は、恒温器の内部に設置されて用いられるものに限られない。保持器具は、作業台上などに据え置き可能な形状を有するベース部材を用いたものであってもよい。
【0131】
トレイ本体上には、同一種の保持器具だけでなく、互いに形状や大きさなどが異なる複数種類の保持器具をセットしてもよい。
【0132】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0133】
1 電源素子保持器具
10 ベース板(ベース部材の一例)
11 係合爪(係合部の一例)
20 固定支持部
20a 第1の固定支持部
20b 第2の固定支持部
21 前方固定板(壁部の一例)
31 パッド(側部支持部材の一例)
34 ばね(弾性部材の一例)
35,45 側方固定板
41 パッド(側部支持部材の一例)
44a,44b ばね(弾性部材の一例)
51 パッド(背部支持部材の一例)
52 背方固定板
54a,54b ばね(弾性部材の一例)
61 支持板(底部支持部材の一例)
63 調節ねじ(調節部材の一例)
71,72 電極
500 電源素子保持トレイ
501 トレイ本体
510 孔部(被係合部の一例)
600 恒温器(電源素子試験装置の一例)
650 温度調節装置
800 電池パック(電源素子の一例)
810 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源素子の前面に対向する壁部を有する固定部と、
前記固定部にそれぞれ支持されており、前記電源素子の両側部にそれぞれ対向する2つの側部支持部材と、
前記固定部に支持されており、前記電源素子の背部に対向する背部支持部材とを備え、
前記2つの側部支持部材のうち、少なくとも一方は、他方の側部支持部材に対して遠近する方向に、前記固定部に対して変位可能に設けられており、
前記背部支持部材は、前記壁部に対して遠近する方向に、前記固定部に対して変位可能に設けられている、電源素子保持器具。
【請求項2】
前記背部支持部材は、弾性部材により前記壁部に向けて付勢されている、請求項1に記載の電源素子保持器具。
【請求項3】
前記固定部に支持されており、前記電源素子の底部を支持する底部支持部材と、
前記底部支持部材の前記固定部に対する昇降方向の位置を調節する調節部材とをさらに備える、請求項1又は2に記載の電源素子保持器具。
【請求項4】
前記2つの側部支持部材のうち、少なくとも一方は、弾性部材により他方の側部支持部材に向けて付勢されている、請求項1から3のいずれかに記載の電源素子保持器具。
【請求項5】
前記2つの側部支持部材のうち、一方は、他方の側部支持部材に対して遠近する方向の前記固定部に対する位置が調節できるように設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の電源素子保持器具。
【請求項6】
前記壁部には、前記電源素子の前面に設けられた端子に接触する電極が配置されている、請求項1から5のいずれかに記載の電源素子保持器具。
【請求項7】
前記背部支持部材には、前記電源素子の背部側に設けられた端子に接触する電極が配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の電源素子保持器具。
【請求項8】
前記固定部は、
ベース部材と、
前記ベース部材上に配置され、一部が前記壁部を構成する第1の固定支持部と、
前記ベース部材上に配置され、少なくとも前記背部支持部材を支持する第2の固定支持部とを有する、請求項1から7のいずれかに記載の電源素子保持器具。
【請求項9】
トレイ本体と、
前記トレイ本体上に配置された、複数の請求項1から8のいずれかに記載の電源素子保持器具とを備える、電源素子保持トレイ。
【請求項10】
トレイ本体と、
前記トレイ本体上に着脱可能に配置された、複数の請求項8に記載の電源素子保持器具とを備え、
前記トレイ本体には、被係合部が形成されており、
前記複数の電源素子保持器具のそれぞれのベース部材には、前記被係合部に係合する係合部が設けられており、
前記係合部が前記被係合部に係合することで、前記電源素子保持器具のそれぞれが前記トレイ本体上に配置されている、電源素子保持トレイ。
【請求項11】
庫内部に設けられた請求項9又は10に記載の電源素子保持トレイと、
庫内部の温度を調節する温度調節装置とを備える、電源素子試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−252848(P2012−252848A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123887(P2011−123887)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【特許番号】特許第4890656号(P4890656)
【特許公報発行日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(399105623)松定プレシジョン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】