説明

電源装置、電源システム及び電源システム制御方法

【課題】汎用性が高く低コストであり、システム設計を容易に行うことができる電源装置、電源システム及び電源システム制御方法を提供する。
【解決手段】電源装置1は、電池セル11と電池セル11の電圧・電流を監視する電池監視基板12とをモジュール化した少なくとも1つの電池モジュール10と、電池モジュール10に対して充放電される直流電力の電力変換を行うDC/DCコンバータ20と、電池モジュール10に設けられた電池監視基板12の監視結果を参照しつつ、外部から入力される指令信号に応じてDC/DCコンバータ20で変換される直流電力の電力量を制御するコントローラ40とをユニット化してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力の充放電が可能な電源装置、電源システム及び電源システム制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)の排出量を低減すべく、モータが動力発生源として盛んに用いられている。例えば、自動車等の車両では、一般的に動力発生源としてエンジン等の内燃機関が用いられていたが、近年では動力発生源としてエンジンとモータとを併用するハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)や動力発生源としてモータのみを用いる電気自動車(EV:Electric Vehicle)の研究・開発が盛んに行われている。
【0003】
モータを動力発生源として用いる装置では、直流電力の充放電が可能なリチウムイオン二次電池等の二次電池が電源として用いられる。一般的に、二次電池は、複数の電池モジュールと、これら電池モジュールの状態を統合して管理・制御する管理制御装置とから構成される。ここで、上記の電池モジュールは、複数の単電池セルが積層されてなる電池セルと、電池セルの電圧・電流等を監視する監視基板とをモジュール化したものである。また、上記の管理制御装置は、各電池モジュールに設けられる監視基板の監視結果を統合して二次電池全体の電池状態を求め、その電池状態を外部に通知する。
【0004】
二次電池を電源とするシステムを構築する場合に、システム設計者は、二次電池、二次電池の充放電を制御するDC/DCコンバータ、及び制御対象の電気機器を駆動するインバータ等の機器を個別に用意し、これらの機器をシステムの仕様に適合するように組み合わせる必要がある。大容量のシステムを構築する場合にも同様に、大容量の二次電池(例えば、数メガワット)と大容量のコンバータとを個別に入手してシステムの仕様に合わせた組み合わせを行う必要がある。
【0005】
以下の特許文献1,2には、大容量のコンバータ及びインバータの一例が開示されている。具体的に、以下の特許文献1には、建設機械等の特殊用途に用いられる大容量の昇降圧コンバータの一例が開示されている。また、以下の特許文献2には、太陽光発電システムで用いられ、太陽電池が発電する直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ(インバータ)の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−27867号公報
【特許文献2】特許第3796460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、二次電池を電源とするシステムを上述した手法で構築する場合には、組み合わせを行う機器が備える主回路の仕様や入出力信号の仕様を詳細に検討する必要がある。例えば、ある機器からどのような信号を出力させ、その信号をどの機器に入力させるか等の信号の取り合いを一つ一つ具体的に検討する必要がある。このため、システム設計に多大な手間及び時間を要するという問題がある。
【0008】
また、組み合わせの対象となる機器は個別に制御装置を備えているため、これらの機器の組み合わせを行うと制御装置の数が多くなる。例えば、二次電池とDC/DCコンバータとを組み合わせる場合には、DC/DCコンバータに設けられた制御装置を二次電池に設けられた制御装置(管理制御装置)に接続し、DC/DCコンバータに設けられた制御装置が二次電池の管理制御装置で求められる電池状態を参照しつつ、DC/DCコンバータの制御を行うことになる。このように、制御装置の数が増大することによってシステム全体でコストの上昇を招いてしまうという問題があった。
【0009】
また、ある大容量のシステムの仕様に合わせて設計された大容量の二次電池は、そのシステムで使用する分には最適の二次電池であると考えられる。しかしながら、仕様が異なる他のシステムに用いることが難しく、汎用性が低いという問題があった。汎用性が低いと、大容量のシステム毎に専用の二次電池を設計する必要があることから、必然的に高コストになるという問題も生ずる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、汎用性が高く低コストであり、システム設計を容易に行うことができる電源装置、電源システム及び電源システム制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の電源装置は、直流電力の充放電が可能な電源装置(1)であって、電池セル(11)と該電池セルの電圧・電流を監視する監視基板(12)とをモジュール化した少なくとも1つの電池モジュール(10)と、電池モジュールに対して充放電される直流電力の電力変換を行う電力変換回路(20)と、電池モジュールに設けられた監視基板の監視結果を参照しつつ、外部から入力される指令信号に応じて電力変換回路で変換される直流電力の電力量を制御する制御部(40)とをユニット化してなることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の電源装置は、制御部が、監視基板の監視結果に加えて、電池モジュールの出力電圧、電池モジュールに流れる電流、及び電力変換回路の出力電圧を参照しつつ、電力変換回路で変換される直流電力の電力量を制御することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の電源装置は、制御部が、監視基板との間でシリアル通信を行って、電池モジュールに設けられた監視基板の監視結果を参照することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の電源装置は、監視基板の監視結果を示す情報と電力変換回路の制御量を示す情報とを含む信号の入出力が可能な信号入出力端(T22)を備えることを特徴としている。
【0015】
本発明の電源システムは、直流電力の充放電が可能な電源システム(PS)であって、直流電力の入出力が行われる電源入出力端(T11、T12)が並列接続されるとともに、信号入出力端(T22)が互いに接続された上記の電源装置を複数備えており、電源装置のうちの1つは、外部から入力される指令信号から電源装置の各々に設けられた電力変換回路の制御量を示す情報を求め、当該情報に基づいて自装置が備える電力変換回路を制御するとともに当該情報を含む信号を信号入出力端から出力するマスター電源装置(M)とされ、電源装置のうちの残りは、マスター電源装置から出力されて信号入出力端を介して入力される信号を指令信号として用いて信号に含まれる当該情報に基づいて自装置が備える電力変換回路を制御するスレーブ電源装置(S)とされることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の電源システムは、マスター電源装置が、マスター電源装置及びスレーブ電源装置で充放電される電力量が均等になるように、当該情報を求めることを特徴としている。
【0017】
本発明の電源システム制御方法は、マスター電源装置及びスレーブ電源装置のそれぞれの電流分担は、マスター電源装置及びスレーブ電源装置の電池残量の総和に対する、それぞれのマスター電源装置及びスレーブ電源装置の電池残量の比とすることを特徴としている。
【0018】
本発明の電源システム制御方法は、マスター電源装置及びスレーブ電源装置のそれぞれの電流分担は、マスター電源装置及びスレーブ電源装置の放電深度の総和に対する、それぞれのマスター電源装置及びスレーブ電源装置の放電深度の比とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、汎用性が高く低コストであり、システム設計を容易に行うことができる電源装置、電源システム及び電源システム制御方法を提供することができる。
【0020】
本発明によれば、電池セルと監視基板とをモジュール化した電池モジュールと、電池モジュールに対して充放電される直流電力の電力変換を行う電力変換回路と、監視基板の監視結果を参照しつつ、外部から入力される指令信号に応じて電力変換回路で変換される直流電力の電力量を制御する制御部とがユニット化されているため、汎用性が高く低コストであり、システム設計を容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による電源装置の要部構成を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態による電源システムの要部構成を示す回路図である。
【図3】本発明の一実施形態による電源システムの昇圧(放電)運転時の制御方法を示す概念図である。
【図4】本発明の一実施形態による電源システムの降圧(充電)運転時の制御方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電源装置、電源システム及び電源システム制御方法について詳細に説明する。尚、以下では、まず電源装置について説明し、次いで電源装置を備える電源システム及び電源システム制御方法について説明する。
【0023】
〔電源装置〕
図1は、本発明の一実施形態による電源装置の要部構成を示す回路図である。図1に示す通り、本実施形態の電源装置1は、複数の電池モジュール10、DC/DCコンバータ20(電力変換回路)、電流センサ31、電圧センサ32,33、及びコントローラ40(制御部)をユニット化したものであり、一対の電源入出力端T11,T12を介して直流電力の充放電が可能な電源装置(所謂、バイポーラ電源装置)である。
【0024】
電池モジュール10は、電池セル11と電池監視基板12(監視基板)とをモジュール化したものであり、電源装置1内において直列接続されている。尚、電池モジュール10の数(直列接続数)は、電源装置1の出力電圧や容量等の仕様に応じて適宜設定される。ここで、電池セル11は、リチウムイオン二次電池セル等の単電池セルを複数積層したものである。また、電池監視基板12は、電池セル11の電圧・電流等を監視する基板であり、電池セル11毎に設けられる。
【0025】
DC/DCコンバータ20は、直列接続された電池モジュール10と一対の電源入出力端T11,T12との間に設けられており、コントローラ40の制御の下で、電池モジュール10から放電される直流電力、或いは電池モジュール10に充電される直流電力(一対の電源入出力端T11,T12を介して入力される直流電力)の電力変換を行う。このDC/DCコンバータ20は、コンデンサ21、チョークコイル22、トランジスタ23a,23b、ダイオード24a,24b、スナバ回路25a,25b、及びコンデンサ26を備える。
【0026】
コンデンサ21は、直列接続された電池モジュール10のうちの一方の端部に位置する電池モジュール10の正電極と他方の端部に位置する電池モジュール10の負電極との間に接続されている。尚、電池モジュール10の負電極は、電源入出力端T12に接続されている。このコンデンサ21は、電源装置1の充電時(電池モジュール10の充電時)に、電池モジュール10に供給される電力を平滑化して直流電流にするために設けられる。
【0027】
チョークコイル22は、一端がコンデンサ21の一方の電極(電池モジュール10の正電極に接続された電極)に接続されており、他端がトランジスタ23aのコレクタ電極とトランジスタ23bのエミッタ電極との接続点に接続されている。トランジスタ23a,23bは、バイポーラトランジスタであり、コントローラ40によってオン状態及びオフ状態が制御される。尚、トランジスタ23a,23bとしてFETトランジスタ(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を用いることも可能である。
【0028】
トランジスタ23aは、コレクタ電極がトランジスタ23bのエミッタ電極及びチョークコイル22の他端に接続されており、エミッタ電極がコンデンサ21の他方の電極(電池モジュール10の負電極及び電源入出力端T12に接続された電極)に接続されている。また、トランジスタ23bは、エミッタ電極がトランジスタ23aのコレクタ電極及びチョークコイル22の他端に接続されており、コレクタ電極がコンデンサ26の一方の電極及び電源入出力端T11に接続されている。これらトランジスタ23a,23bのベース電極はコントローラ40に接続されている。
【0029】
ダイオード24a,24bは、トランジスタ23a,23bのコレクタ・エミッタ間にそれぞれ接続されている。具体的に、ダイオード24aは、アノード電極がトランジスタ23aのエミッタ電極に接続され、カソード電極がトランジスタ23aのコレクタ電極に接続されている。また、ダイオード24bは、アノード電極がトランジスタ23bのエミッタ電極に接続され、カソード電極がトランジスタ23bのコレクタ電極に接続されている。
【0030】
スナバ回路25a,25bは、コンデンサと抵抗とを直列接続したスパイク・ノイズを吸収する回路であり、トランジスタ23a,23bのコレクタ・エミッタ間にそれぞれ接続されている。コンデンサ26は、一対の電源入出力端T11,T12の間に接続されている。このコンデンサ26は、電源装置1の放電時に、電源入出力端T11,T12から外部に出力される電力を平滑化して直流電流にするために設けられる。
【0031】
電流センサ31は、電池モジュール10の正電極とDC/DCコンバータ20とを接続する電流路に取り付けられており、電池モジュール10から流出する電流(放電電流)、及び電池モジュール10に流入する電流(充電電流)を検出する。電圧センサ32は、コンデンサ21に対して並列に取り付けられており、コンデンサ21の電位差(直列接続された電池モジュール10の両端に現れる電圧)を検出する。電圧センサ33は、コンデンサ26に対して並列に取り付けられており、コンデンサ26の電位差(電源入出力端T11,T12間に現れる電圧)を検出する。これら電流センサ31及び電圧センサ32,33の検出結果を示す検出信号はコントローラ40に出力される。
【0032】
コントローラ40は、電池モジュール10の各々に設けられた電池監視基板12の監視結果を参照しつつ、信号入出力端T21から入力される指令信号に応じて、DC/DCコンバータ20で変換される直流電力の電力量を制御する。このように、電池モジュール10の状態の管理(参照)とDC/DCコンバータ20の制御とを一括して行うコントローラ40を設けるのは、コントローラの総数を減らしてコストの低減を図るためである。
【0033】
具体的に、コントローラ40は、電池監視基板12の監視結果に加えて電流センサ31及び電圧センサ32,33の検出結果を示す検出信号を参照し、これらの信号と信号入出力端T21を介して入力される指令信号(電圧指令信号又は電流指令信号)との差を示す誤差を求める。そして、誤差信号が零となるように、DC/DCコンバータ20に設けられたトランジスタ23a,23bのスイッチング動作(PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)スイッチング動作)を制御する。
【0034】
コントローラ40が、トランジスタ23bをオフ状態にし、トランジスタ23aをスイッチング動作させると、DC/DCコンバータ40は非絶縁型昇圧チョークコンバータとして動作する。このため、電池モジュール10から放電された直流電力は、電圧が昇圧されて電源入出力端T11,T12を介して外部に出力される。尚、かかる動作は、電源装置1(電池モジュール10)から直流電力を放電させる場合に行われる。
【0035】
これに対し、トランジスタ23aをオフ状態にし、トランジスタ23bをスイッチング動作させると、DC/DCコンバータ40は、非絶縁型降圧チョークコンバータとして動作する。このため、外部から電源入出力端T11,T12を介して入力された直流電力は、電圧が降圧されて直列接続された電池モジュール10に供給される。尚、かかる動作は、電源装置1(電子モジュール10)を充電する場合に行われる。
【0036】
ここで、コントローラ40と各電池モジュール10とは、例えばCAN(Controller Area Network)バス等のシリアルバスによって接続されており、コントローラ40は、このシリアルバスを介して各電池モジュール10に設けられた電池監視基板12とシリアル通信を行って監視結果を参照する。尚、コントローラ40は、電池監視基板12の監視結果を示す情報、及びDC/DCコンバータ20の制御量(例えば、電流指令値)を示す情報を含む信号を、信号入出力端T22を介して入出力することが可能である。このような信号の入出力は、例えば電源装置1の外部に設けられたCANバス等のシリアルバスに信号入出力端T22を接続することで可能になる。
【0037】
コントローラ40は、ハードウェアにより実現されていても良く、ソフトウェアにより実現されていても良い。ソフトウェアにより実現する場合には、コントローラ40をCPU(中央処理装置)、ROM(Read Only Memory )、RAM(Random Access Memory)等を用いて構成し、上述したコントローラ40の機能を実現するプログラムをCPUに読み込ませて実行させることにより実現される。尚、コントローラ40の機能を実現するプログラムは、ROMに記憶させておいても良く、或いは、信号入出力端T22を介した通信を行ってコントローラ40に入力させるようにしても良い。
【0038】
次に、上記構成における電源装置1の動作について説明する。電源装置1の動作は、電源入出力端T11,T12を介して外部に直流電力を放電する放電動作と、外部から電源入出力端T11,T12を介して入力される直流電力を用いて電池モジュール10を充電する充電動作とに大別される。以下、各々の動作について順に説明する。
【0039】
[放電動作]
直流電力を放電させるべき旨を示す指令信号(例えば、電圧指令信号)が信号入出力端T21を介して入力されると、コントローラ40は、まず入力された電圧指令信号と電圧センサ33の検出結果との差分を電圧誤差信号として算出し、この電圧誤差信号を零にする制御信号(電圧制御を行うための制御信号)を求める。次に、コントローラ40は、電池モジュール10に設けられた電池監視基板12の監視結果を参照しつつ、求めた制御信号に基づいて電流指令値を求める。この電流指令値は、DC/DCコンバータ20で変換させる直流電力の電力量を指示する指令値である。
【0040】
次いで、コントローラ40は、求めた電流指令値と電流センサ31の検出結果との差分を電流誤差信号として算出し、この電流誤差信号を零にする制御信号(電流制御を行うための制御信号)を求める。そして、コントローラ40は、トランジスタ23bをオフ状態にするとともに、上記の制御信号に基づいてトランジスタ23aをスイッチング動作させる。すると、電池モジュール10から放電された直流電力は、DC/DCコンバータ20で電圧が昇圧されて電源入出力端T11,T12を介して外部に出力される。このようにして電源装置1の放電動作が行われる。
【0041】
[充電動作]
直流電力を充電させるべき旨を示す指令信号(例えば、電圧指令信号)が信号入出力端T21を介して入力されると、コントローラ40は、上述した放電動作と同様に、まず入力された電圧指令信号と電圧センサ33の検出結果との差分を電圧誤差信号として算出し、この電圧誤差信号を零にする制御信号(電圧制御を行うための制御信号)を求める。次に、コントローラ40は、電池モジュール10に設けられた電池監視基板12の監視結果を参照しつつ、求めた制御信号に基づいてDC/DCコンバータ20で変換させる直流電力の電力量を指示する指令値である電流指令値を求める。
【0042】
次いで、コントローラ40は、求めた電流指令値と電流センサ31の検出結果との差分を電流誤差信号として算出し、この電流誤差信号を零にする制御信号(電流制御を行うための制御信号)を求める。そして、コントローラ40は、トランジスタ23aをオフ状態にするとともに、上記の制御信号に基づいてトランジスタ23bをスイッチング動作させる。すると、外部からT11,T12を介して入力された直流電力は、DC/DCコンバータ20で電圧が高圧されて直列接続された電池モジュール10に供給される。このようにして電源装置1の充電動作が行われる。
【0043】
以上の通り、本実施形態の電源装置1は、電池セル11と電池監視基板12とをモジュール化した電池モジュール10と、DC/DCコンバータ20と、電池監視基板12の監視結果を参照しつつ、DC/DCコンバータ20で変換される直流電力の電力量を制御するコントローラ40とをユニット化したものである。このため、二次電池を電源とするシステムを構築する場合に従来は必要であった信号の取り合い等を検討する必要が無く、容易且つ短時間でシステム設計を行うことができる。
【0044】
また、電池モジュール10の状態の管理(参照)とDC/DCコンバータ20の制御とを一括して行うコントローラ40を設けているため、コントローラの総数を減らすことができ、この結果としてコストの低減を図ることができる。また、電源装置1はDC/DCコンバータ20を備えているため、直流電源を用意するだけで充電が可能である。更に、電源装置1はユニット化されたものであり、必要に応じて複数を直列接続或いは並列接続することができるため、汎用性を高めることができ、コスト低減を図ることができる。
【0045】
〔電源システム〕
図2は、本発明の一実施形態による電源システムの要部構成を示す回路図である。図2に示す通り、本実施形態の電源システムPSは、電源入出力端T11,T12が並列接続されるとともに信号入出力端T22が互いに接続された複数の電源装置1を備えており、直流電力の充放電が可能である。複数の電源装置1が並列接続されていることにより、容量を増大させることができる。この電源システムPSは、例えば直流電力を交流電力に変換するインバータINVに接続される。
【0046】
これら複数の電源装置1のうちの1つがマスター電源装置Mとされ、残りがスレーブ電源装置Sとされている。尚、図2においては、図示を簡略化するために、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sが備える電圧センサ32と、スレーブ電源装置Sが備える電圧センサ33との図示を省略している。また、DC/DCコンバータ20に設けられるスナバ回路25a,25bの図示も省略している。
【0047】
ここで、マスター電源装置Mは、充放電すべき直流電力の電力量を示す指令信号Cが入力されて、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々で充放電すべき直流電力の電力量を統括制御する電源装置である。また、スレーブ電源装置Sは、マスター電源装置Mの制御の下で、直流電力の充放電を行う電源装置である。
【0048】
具体的に、マスター電源装置Mは、外部から入力される指令信号Cから、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sが備えるDC/DCコンバータ20の制御量を示す情報(例えば、電流指令値)を求める。そして、この情報に基づいて自ら備えるDC/DCコンバータ20を制御するとともに、この情報を含む信号を信号入出力端T22を介してスレーブ電源装置Sに出力する。スレーブ電源装置Sは、マスター電源装置Mから出力されて信号入出力端T22を介して入力される信号に含まれる情報に基づいて自ら備えるDC/DCコンバータ20を制御する。
【0049】
マスター電源装置Mとスレーブ電源装置Sの基本的な構成は同じであり、設定によってマスター電源装置Mとされるのか、スレーブ電源装置Sとされるのかが決定される。例えば、電源装置1の各々を識別するために割り当てられる識別番号が「0」である場合にはマスター電源装置Mとされ、「0」以外である場合にはスレーブ電源Sとされる。また、コントローラ40で用いるプログラムの種類に応じてマスター電源装置Mとされるのか、スレーブ電源装置Sとされるのかを決定しても良い。
【0050】
図2に示す例では、マスター電源装置Mに設けられるコントローラ40は、演算器41、自動電圧制御器(AVR:Automatic Voltage Regulator)42、電流指令値生成部43、演算器44、自動電流制御器(ACR:Automatic Current Regulator)45、及びPWM制御器46を備える。尚、これらは、例えばコントローラ40の機能を実現するプログラムとCPU等のハードウェア資源とが協働することにより実現される。
【0051】
演算器41は、外部から入力される指令信号C(例えば、電圧指令信号)から、電圧センサ33の検出結果を減算することにより、これらの差を示す電圧誤差信号を求める。自動電圧制御器42は、演算器41から出力される電圧誤差信号を零とする制御信号を出力する。電流指令値生成部43は、電池モジュール10の監視結果を参照しつつ、自動電圧制御器42からの制御信号に基づいて、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sが備えるDC/DCコンバータ20の各々で変換させる直流電力の電力量を指示する指令値である電流指令値を求める。具体的に、電流指令値生成部43は、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々で充放電される電力量が均等になるように電流指令値を求める。尚、スレーブ電源装置Sに対する電流指令値は、信号入出力端T22を介してスレーブ電源装置Sに出力される。
【0052】
演算器44は、電流指令値生成部43で生成された電流指令値から、電流センサ31の検出結果を減算することにより、これらの差を示す電流誤差信号を求める。自動電流制御器45は、演算器34から出力される電流誤差信号を零とする制御信号を生成して出力する。PWM制御器46は、自動電流制御器45からの制御信号に基づいて、DC/DCコンバータ20に設けられたトランジスタ23a,23bをスイッチング動作(PWMスイッチング動作)させる。
【0053】
また、図2に示す例ではスレーブ電源装置Sに設けられるコントローラ40は、電流指令値生成部50、演算器44、自動電流制御器45、及びPWM制御器46を備える。尚、演算器44〜PWM制御器46は、マスター電源装置Mに設けられたものと同様のものである。電流指令生成部50は、電池モジュール10の監視結果を参照しつつ、マスター電源装置Mから出力されて信号入出力端T22を介して入力される電流指令値から、自らが用いる電流指令値を生成する。例えば、電池モジュール10の残容量が少なく、マスター電源装置Mからの電流指令値で示される電流を放電することができない場合には、放電量を制限する電流指令値を生成する(リミッタ処理)。
【0054】
上記構成における電源システムPSの動作は、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々から電源入出力端T11,T12を介して外部に直流電力を放電する放電動作と、外部から電源入出力端T11,T12を介して入力される直流電力を用いてマスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々に設けられた電池モジュール10を充電する充電動作とに大別される。但し、スレーブ電源装置Sに対する電流指令値がマスター電源装置Mで生成され、この電流指令値に基づいてスレーブ電源装置Sで充放電が行われる点を除いて、電源システムPSの放電動作及び充電動作は、前述した電源装置1の放電動作及び充電動作と同様である。このため、電源システムPSの動作の詳細については説明を省略する。
【0055】
本実施形態の電源システムPSは、電池モジュール10、DC/DCコンバータ20、及びコントローラ40等がユニット化された電源装置1を並列接続してなるものである。このため、電源装置1の並列接続数を変えるだけで容易に電源システムPSの容量を増減させることができ、汎用性を高めることができる。しかも、電源システムPSの運転中に、電源システムPSを停止させることなく電源装置1の並列接続数を変えることができる。また、本実施形態の電源システムPSは、電源装置1を並列接続してなるものであるため、容易且つ短時間で大容量のシステム設計を行うことができ、コントローラの総数を減らすこともでき、コスト低減を図ることもできる。
【0056】
〔電源システム制御方法〕
図3は、本発明の一実施形態による電源システムの昇圧(放電)運転時の制御方法を示す概念図である。図3に示す概念図では、電源システムは、電池モジュール10、DC/DCコンバータ20、及びコントローラ40等がユニット化された電源装置1(ユニット)が並列に接続されている。各ユニットは、それぞれ出力する電流を分担することとなっており、その電流分担の制御方法について説明する。
【0057】
各ユニットは、それぞれの電池残量(SOC)をユニット間の通信バス(図示せず)に送信する。昇圧(放電)運転時の各ユニットは、通信バスに送信されたそれぞれの電池残量(SOC)を基に分担する電力量を決定する。
【0058】
まず、マスター電源装置(マスターユニット)Mに備えられている演算器41は、外部から入力される指令信号(例えば、出力電圧指令値)から、電圧センサの検出結果(例えば、出力電圧検出値)を減算することにより、これらの差を示す電圧誤差信号を求める。そして、マスター電源装置Mに備えられている自動電圧制御器42は、演算器41から出力される電圧誤差信号を零とする制御信号(例えば、電流指令値(AVR出力))を出力する。マスター電源装置Mは、電圧制御を行い、電流指令値を各スレーブ電源装置(スレーブユニット)Sに通信バスを介して送信する。
【0059】
そして、マスター電源装置M及び各スレーブ電源装置Sの電流指令値生成部43,50は、電流指令値に対する自ユニットの電流分担を演算する。具体的には、自ユニットの電流分担は、全ユニットの電池残量(SOC)の総和に対する自ユニットの電池残量(SOC)の比とする。各ユニットは、演算された電流分担に基づいて、電流制御(ACR)を行う。このとき、電流指令値生成部43,50は、電池モジュール10の残容量が少なく、マスター電源装置Mからの電流指令値で示される電流を放電することができない場合には、放電量を制限する電流指令値を生成する(リミッタ処理)。
【0060】
スレーブ電源装置Sである各ユニットは、ユニット交換等の何らかの理由で停止させる場合に、自ユニットの電池残量(SOC)を零であるとして、通信バスに送信する。電池残量が零である場合には、電流分担も零となり、電流を放電しない状態になる。
【0061】
そして、演算器44は、電流指令値生成部43,50で生成された自ユニットの電流分担である電流指令値から、電流センサ31の検出結果を減算することにより、これらの差を示す電流誤差信号を求める。自動電流制御器45は、演算器34から出力される電流誤差信号を零とする制御信号を生成して出力する。PWM制御器46は、自動電流制御器45からの制御信号に基づいて、DC/DCコンバータ20に設けられたトランジスタ23a,23bをスイッチング動作(PWMスイッチング動作)させる。
【0062】
図4は、本発明の一実施形態による電源システムの降圧(充電)運転時の制御方法を示す概念図である。図4に示す概念図では、ユニットが並列に接続されている。各ユニットは、それぞれ出力する電流を分担することとなっており、その電流分担の制御方法について説明する。
【0063】
各ユニットは、それぞれの電池残量(SOC)をユニット間の通信バス(図示せず)に送信する。放電深度(DOD)は、電池残量(SOC)から算出できる。具体的には、DOD=100−SOC・・・・・(1)で算出することができる。降圧(充電)運転時の各ユニットは、算出された放電深度(DOD)を基に分担する電力量を決定する。
【0064】
まず、電流指令値生成部43,50は、外部から入力される指令信号(例えば、充電電力指令値)を受信する。そして、電流指令値生成部43,50は、電流指令値に対する自ユニットの電流分担を演算する。具体的には、自ユニットの電流分担は、全ユニットの放電深度(DOD)の総和に対する自ユニットの放電深度(DOD)の比とする。各ユニットは、演算された電流分担に基づいて、電流制御(ACR)を行う。このとき、電流指令値生成部43,50は、電池モジュール10の残容量が少なく、マスター電源装置Mからの電流指令値で示される電流を放電することができない場合には、放電量を制限する電流指令値を生成する(リミッタ処理)。
【0065】
スレーブ電源装置Sである各ユニットは、ユニット交換等の何らかの理由で停止させる場合に、自ユニットの放電深度(DOD)を零であるとして、通信バスに送信する。放電深度が零である場合には、電流分担も零となり、電流を放電しない状態になる。
【0066】
そして、演算器44は、電流指令値生成部43,50で生成された自ユニットの電流分担である電流指令値から、電流センサ31の検出結果を減算することにより、これらの差を示す電流誤差信号を求める。自動電流制御器45は、演算器34から出力される電流誤差信号を零とする制御信号を生成して出力する。PWM制御器46は、自動電流制御器45からの制御信号に基づいて、DC/DCコンバータ20に設けられたトランジスタ23a,23bをスイッチング動作(PWMスイッチング動作)させる。
【0067】
本発明の一実施形態に係る電源システム制御方法によれば、放電時は電池残量(SOC)に応じて電流を分担するため、各ユニット間の電池残量を均等にすることができる。つまり、電池残量(SOC)が多いユニットは多くの電流を分担し、電池残量(SOC)が少ないユニットは少ない電流を分担することになる。
【0068】
更に、本発明の一実施形態に係る電源システム制御方法によれば、充電時は放電深度(DOD)に応じて電流を分担するため、各ユニット間の電池残量(DOD)を均等にすることができる。
【0069】
更に、本発明の一実施形態に係る電源システム制御方法によれば、一部のユニット(電池)が停止しても、運転を継続させながら、停止ユニット(電池)分の電流を他ユニット(電池)に速やかに分担させることができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態による電源装置、電源システム、及び電源システム制御方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態で説明した電源システムでは、マスター電源装置Mに設けられたコントローラ40の電流指令値生成部43が、マスター電源装置M及びスレーブ電源装置Sの各々で充放電される電力量が均等になるような電流指令値を求める例について説明した。しかしながら、例えばマスター電源装置Mとスレーブ電源装置Sとの間で各々に設けられた電池モジュールの残容量を授受し、残容量に応じた電流指令値を求めるようにしても良い。
【0071】
例えば、電源システムPSから直流電力を放電させる場合には、残容量の多い電池モジュールを備えるスレーブ電源装置Sに対しては、より多くの直流電力を放電させる電流指令値を求め、残容量の少ない電池モジュールを備えるスレーブ電源装置Sに対しては放電させる直流電力指令値を求める。また、電源システムPSを充電する場合には、残容量の多い電池モジュールを備えるスレーブ電源装置Sに対しては充電電流を抑える電流指令値を求め、残容量の少ない電池モジュールを備えるスレーブ電源装置Sに対しては充電源流を増大させる電流指令値を求める、といった具合である。
【符号の説明】
【0072】
1…電源装置
10…電池モジュール
11…電池セル
12…電池監視基板
20…DC/DCコンバータ
40…コントローラ
41,44…演算器
42…自動電圧制御器
43,50…電流指令値生成部
45…自動電流制御器
46…PWM制御器
M…マスター電源装置
PS…電源システム
S…スレーブ電源装置
T11,T12…電源入出力端
T22…信号入出力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力の充放電が可能な電源装置であって、
電池セルと該電池セルの電圧・電流を監視する監視基板とをモジュール化した少なくとも1つの電池モジュールと、
前記電池モジュールに対して充放電される直流電力の電力変換を行う電力変換回路と、
前記電池モジュールに設けられた前記監視基板の監視結果を参照しつつ、外部から入力される指令信号に応じて前記電力変換回路で変換される直流電力の電力量を制御する制御部と
をユニット化してなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記監視基板の監視結果に加えて、前記電池モジュールの出力電圧、前記電池モジュールに流れる電流、及び前記電力変換回路の出力電圧を参照しつつ、前記電力変換回路で変換される直流電力の電力量を制御することを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記監視基板との間でシリアル通信を行って、前記電池モジュールに設けられた前記監視基板の監視結果を参照することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記監視基板の監視結果を示す情報と前記電力変換回路の制御量を示す情報とを含む信号の入出力が可能な信号入出力端を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
直流電力の充放電が可能な電源システムであって、
直流電力の入出力が行われる電源入出力端が並列接続されるとともに、前記信号入出力端が互いに接続された請求項4記載の電源装置を複数備えており、
前記電源装置のうちの1つは、外部から入力される指令信号から前記電源装置の各々に設けられた前記電力変換回路の制御量を示す情報を求め、当該情報に基づいて自装置が備える前記電力変換回路を制御するとともに当該情報を含む信号を前記信号入出力端から出力するマスター電源装置とされ、
前記電源装置のうちの残りは、前記マスター電源装置から出力されて前記信号入出力端を介して入力される信号を前記指令信号として用いて前記信号に含まれる当該情報に基づいて自装置が備える前記電力変換回路を制御するスレーブ電源装置とされる
ことを特徴とする電源システム。
【請求項6】
前記マスター電源装置は、前記マスター電源装置及び前記スレーブ電源装置で充放電される電力量が均等になるように、当該情報を求めることを特徴とする請求項5記載の電源システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電源システムを制御する電源システム制御方法であって、
マスター電源装置及びスレーブ電源装置のそれぞれの電流分担は、前記マスター電源装置及び前記スレーブ電源装置の電池残量の総和に対する、それぞれの前記マスター電源装置及び前記スレーブ電源装置の電池残量の比とすることを特徴とする電源システム制御方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の電源システムを制御する電源システム制御方法であって、
マスター電源装置及びスレーブ電源装置のそれぞれの電流分担は、前記マスター電源装置及び前記スレーブ電源装置の放電深度の総和に対する、それぞれの前記マスター電源装置及び前記スレーブ電源装置の放電深度の比とすることを特徴とする電源システム制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−65534(P2012−65534A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9946(P2011−9946)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】