電源装置
【課題】大きさやコストの増大を抑制しつつ、昇圧比が小さい場合にも、入力電流の歪みを的確に改善することができる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、三相交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して負荷に印加する主回路2と、直流電圧に応じて主回路を制御する制御装置3とを備える。主回路は、ダイオード整流回路9の出力に接続されたスイッチング素子Tr1を有して整流電圧を上昇させ、直流電圧として出力する昇圧回路8を備える。制御装置は、入力電流を検出し、当該入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、入力電流に含まれる高調波成分に応じ、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させ、且つ、その増減の度合いを制御する。
【解決手段】電源装置1は、三相交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して負荷に印加する主回路2と、直流電圧に応じて主回路を制御する制御装置3とを備える。主回路は、ダイオード整流回路9の出力に接続されたスイッチング素子Tr1を有して整流電圧を上昇させ、直流電圧として出力する昇圧回路8を備える。制御装置は、入力電流を検出し、当該入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、入力電流に含まれる高調波成分に応じ、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させ、且つ、その増減の度合いを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電源を入力として負荷に直流電圧を供給する主回路と、この直流電圧に応じて主回路を制御する制御装置とを備える電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より電気機器の電源に用いられる電源装置は、ダイオード整流回路と昇圧回路から主回路が構成される。ダイオード整流回路は、三相交流電源によって供給される相電圧を整流することにより、整流電圧を出力する。また、昇圧回路は、ダイオード整流回路の出力に接続されたスイッチング素子を有し、整流電圧を上昇させて直流電圧を出力するものである。
【0003】
このような電源装置において、昇圧比(主回路の入力電圧に対する出力電圧の比率)が小さい場合、次のような問題が発生する。即ち、図26に示すように相電圧の正及び負のピーク値付近、即ち、整流電圧の落ち込み部分に対応する期間において入力電流(相電流)が大きく歪み(ピークが落ち込む)、正弦波にならなくなる。この入力電流の歪みは、主に三相交流電源における線間電圧の位相差の影響によって生じる。そして、このような歪みにより、入力電流には大きな高調波成分が含まれることになる。この高調波電流は、電気設備及び機器の焼損、振動、異音の発生などの問題を引き起こすため、例えばIEC61000−3−2などによって規制されている。
【0004】
ここで、家庭用エアコンなどの単相入力機器では、従来より高調波電流を抑制するためにアクティブフィルタが機器一台毎に搭載されている。一方、業務用機器などの三相入力機器では、受電設備内のアクティブフィルタで高調波電流を抑制するため、機器一台毎にアクティブフィルタを搭載することが無かった。この受電設備内に設置するアクティブフィルタでは、6個のスイッチング素子を用いるなどの比較的大型で高コストのものが許容されているが、機器一台毎に組み込むアクティブフィルタは、小型、低コストのものが要求される。そのため、三相入力用のアクティブフィルタを機器一台毎に組み込むためには、スイッチング素子の数を減らした回路構成で高調波電流を規制値以下に抑制できる電源装置の開発が必要となる。
【0005】
従来、スイッチング素子を一個で三相交流電源を昇圧することにより、高調波電流を抑制する回路構成が開発されているが、昇圧比を高くしないと高調波電流の抑制効果が少ないという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、係る回路に共振コンデンサ及び共振リアクトルを設けることにより、昇圧比を低くして高調波電流を抑制する回路構成も開発されているが、共振コンデンサや共振リアクトルとして大電力に対応可能なものが要求されるため、電源装置の大きさやコストが増大する問題があった(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
そこで、昇圧比を高くしないで、高調波電流の抑制効果を発揮させるために、整流電圧の波形が落ち込む部分に対応する期間において、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間の比率を高くして、入力電流の波形を改善する方法が考えられる。例えば、図27の中段に示すように整流電圧の波形と相似で、位相を90°ずらした補正信号をスイッチングの制御を行う電圧に重畳することにより、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間の比率を高くすれば、図27の上段に示すように歪んだ入力電流(相電流)波形の落ち込みを、下段に示すように改善できる。
【0008】
そして、このスイッチング素子のON期間の比率を適切に増加させれば、図28に示すように高調波電流に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分を規制値(図28の(3))以下に抑えることが可能である。ここで、図28の(1)は補正を行わない基本回路の場合であり、(2)は上述のように補正信号を追加した場合を示している。
【特許文献1】特開平02−106171号公報
【特許文献2】特許第3509495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、スイッチング素子のON期間の比率を高くすると、高調波電流のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる(三相交流電源を用いたコンデンサ入力型の整流回路では5次成分と7次成分の高調波電流が大きい)。そして、入力電流の歪みは負荷の状況によって逐次変化する。
【0010】
そのため、図29に示すようにスイッチング素子のON期間を一定の比率で上げて入力電流(相電流)の落ち込み部分を持ち上げる場合、負荷の状況などによっては、5次成分は規制値をクリアするものの、7次成分が規制値を超え、入力電流は逆にピークが突出するかたちで歪んでしまう場合が発生する(図16最上段参照)。逆に、ON期間の比率が足りなければ、図30に示すように5次成分は下がるものの、規制値以下までは低下しない場合も出てくる。
【0011】
また、ON期間比率の変更は高周波電流の次数が低いか高いかによってもその影響の出方が異なるため、例えば、図31に示すように5次成分や7次成分などの低次数の高調波電流は規制値に収まるものの、13次や19次などの高次数の高調波電流は規制値を超えてしまう場合も出てくる。
【0012】
即ち、スイッチング素子のON期間を一定の比率で上げる方法では、規制値を超えた次数の高調波電流を的確に低下させることができなかった。
【0013】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、大きさやコストの増大を抑制しつつ、昇圧比が小さい場合にも、入力電流の歪みを的確に改善することができる電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電源装置は、三相交流電源からの交流電圧を入力し、この交流電圧を直流電圧に変換して負荷に印加する主回路と、直流電圧を検出すると共に、検出した直流電圧に応じて主回路を制御する制御装置とを備えたものであって、主回路は、交流電圧を整流することによって整流電圧を出力するダイオード整流回路と、このダイオード整流回路の出力に接続されたスイッチング素子を有して整流電圧を上昇させ、直流電圧として出力する昇圧回路とを備え、制御装置は、スイッチング素子を所定のスイッチング周期でON/OFFすることにより、直流電圧を目標値に上昇させると共に、入力電流を検出し、当該入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、この入力電流に含まれる高調波成分に応じ、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させ、且つ、その増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明の電源装置は、上記において制御装置は、入力電流の波形の落ち込み部分に対応する期間において、ON期間比率を増加させると共に、入力電流の波形の突出部分に対応する期間において、ON期間比率を減少させることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号を生成すると共に、生成した補正信号を用いてON期間比率を増減させることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、直流電圧と、この直流電圧の目標値との差に応じた誤差信号を出力するエラーアンプと、補正信号を生成する補正信号作成回路と、エラーアンプから出力される誤差信号に対して補正信号を重畳する重畳回路と、この重畳回路の出力信号に応じて、スイッチング素子のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、入力電流に含まれる高調波成分に応じて補正信号のAC/DC比を変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凹み度合いを変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の平滑又は凹み部分の幅を変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0021】
請求項8の発明の電源装置は、請求項1乃至請求項5の何れかの発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度合いを変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0022】
請求項9の発明の電源装置は、請求項1乃至請求項5又は請求項8の何れかの発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度部分の幅を変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば制御装置が、入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させるので、例えば請求項2の如く、入力電流の波形の落ち込み部分に対応する期間において、ON期間比率を増加させると共に、入力電流の波形の突出部分に対応する期間において、ON期間比率を減少させることにより、入力電流の歪みを改善して高調波成分の抑制を図ることが可能となる。このとき、装置の大きさやコストの高騰も抑えることができる。
【0024】
特に、制御装置は、入力電流に含まれる高調波成分に応じてスイッチング素子の前記ON期間比率の増減の度合いを制御するので、高調波成分中の5次成分や7次成分を的確に規制値内に抑えることが可能となる。
【0025】
また、請求項3の発明の如く交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号を生成すると共に、生成した補正信号を用いて前記ON期間比率を増減させるようにすれば、入力電流が歪む期間を正確に検出してON期間比率を適切なタイミングで増減させることができるようになる。
【0026】
また、請求項4の発明の如く制御装置を、直流電圧と、直流電圧の目標値との差に応じた誤差信号を出力するエラーアンプと、前記補正信号を生成する補正信号作成回路と、エラーアンプから出力される前記誤差信号に対して前記補正信号を重畳する重畳回路と、この重畳回路の出力信号に応じて、スイッチング素子のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路とを備えるようにすれば、直流電圧を一定に保つためのフィードバック構成を利用して、入力電流の歪みを改善する制御を実現することが可能となり、制御装置を大幅に変更すること無く、入力電流の歪みを改善することができるようになる。
【0027】
また、請求項5の発明の如く制御装置により、入力電流に含まれる高調波成分に応じて前記補正信号のAC/DC比を変更すれば、前記ON期間比率の増減の度合いを容易に制御することができるようになる。
【0028】
更に、請求項6の発明の如く補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凹み度合いを変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。
【0029】
この場合、請求項7の発明の如く入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の平滑又は凹み部分の幅を変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。即ち、平滑又は凹み部分の幅を狭くすれば、高い次数の高調波成分に有効であり、逆に広くすれば、低い次数の高調波成分に有効となる。
【0030】
更にまた、請求項8の発明の如く補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度合いを変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。
【0031】
この場合、請求項9の発明の如く入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度部分の幅を変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。即ち、凸部分の幅を狭くすれば、高い次数の高調波成分に有効であり、逆に広くすれば、低い次数の高調波成分に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
【0033】
(1)電源装置の構成
図1は、本発明を適用した電源装置1の電気回路のブロック図を示している。実施例の電源装置1は、主回路2と制御装置3とから構成されている。主回路2は三相交流電源4及び負荷6に接続される。制御装置3は主回路2に接続されている。
【0034】
三相交流電源4は、位相がそれぞれ120°異なる相電圧V1〜V3を三相交流電源端子U、V、Wにそれぞれ印加する。この実施例では主回路2への入力電圧(線間電圧)は例えば400Vである。
【0035】
(1−2)主回路の構成
主回路2は、三相交流電源4を入力として、負荷6に直流電圧VOを供給する。実施例では主回路2が出力する直流電圧VOは例えば650Vである。即ち、主回路2においては、入力電圧(線間電圧)が400Vに対して出力電圧(直流電圧VO)が650Vであり、昇圧比は小さい。
【0036】
制御装置3は、直流電圧VOを検出すると共に、検出した直流電圧VOに応じて主回路2を制御する。具体的には、制御装置3は直流電圧VOが予め設定された目標値となるように主回路2を制御する。
【0037】
主回路2は、ローパスフィルタ7、昇圧回路8及びダイオード整流回路9を含む。ローパスフィルタ7は、リアクトルL1〜L3及びコンデンサC1〜C3を含む。リアクトルL1〜L3のそれぞれの一端は三相交流電源端子U、V、Wに接続されている。コンデンサC1〜C3は、リアクトルL1〜L3の他端に接続されている。
【0038】
昇圧回路8は、交流リアクトルL4〜L6、スイッチング素子Tr1、逆流阻止ダイオードD7、及び、平滑コンデンサC4を含む。交流リアクトルL4〜L6の一端は、リアクトルL1〜L3の他端にそれぞれ接続されている。
【0039】
スイッチング素子Tr1は、電源ラインL10、L20間に接続されている。実施例ではスイッチング素子Tr1として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が使用されている。平滑コンデンサC4は、負荷6に並列接続されている。尚、スイッチング素子Tr1は、ONすると導通し、OFFすると遮断(非導通)される。また、スイッチング素子Tr1はIGBTに限らず、電界効果とトランジスタ(FET)などの他のトランジスタでも良い。
【0040】
昇圧回路8は、スイッチング素子Tr1を所定のスイッチング周期でON/OFFさせる。ここで、ON/OFF動作とは、スイッチング素子Tr1がONとOFFとを交互に繰り返すことである。尚、スイッチング素子Tr1のON/OFF動作は制御装置3によって制御される。
【0041】
逆流阻止ダイオードD7は、電源ラインL10上においてスイッチング素子Tr1と平滑コンデンサC4との間に接続される。ダイオード整流回路9は、ダイオードD1〜D6を含む。ダイオードD1及びD2は電源ラインL10、L20間に接続され、ダイオードD1及びD2の間には、交流リアクトルL4の他端が接続されている。ダイオードD3及びD4も電源ラインL10、L20間に接続され、ダイオードD3、D4間には交流リアクトルL5の他端が接続されている。同様に、ダイオードD5及びD6も電源ラインL10、L20間に接続され、ダイオードD5、D6間には交流リアクトルL6の他端が接続されている。
【0042】
ダイオード整流回路9は、三相交流電源4から供給される相電圧V1〜V3を整流することにより、整流電圧VPQを出力する。昇圧回路8は、整流電圧VPQを上昇させ、昇圧された直流電圧VOを出力する。
【0043】
(1−3)制御装置の構成
次に、制御装置3は、補正信号作成回路12と、電圧検出回路13と、目標電圧生成回路14と、エラーアンプ16、乗算器(重畳回路)17及びスイッチング制御回路18とを含む。
【0044】
補正信号作成回路12はマイクロコンピュータ(マイコン制御部)により構成され、交流電源端子U(V又はWでもよい)に接続される。補正信号作成回路12は、先ず、相電圧V1が零となるタイミングを検出し、検出したタイミングに同期した同期信号SYNを生成する。次に、この同期信号SYNを基準として、相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSを生成する。
【0045】
更に、補正信号作成回路12は、電流センサを用いて相電流Iu1(入力電流Iu)の値を検出し、更に、当該相電流Iu1に含まれる高調波電流値を検出する。そして、相電流Iu1に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分を監視し、当該5次成分と7次成分に応じて補正信号CSの形状を変更する。詳細は後述する。
【0046】
電圧検出回路13は、電源ラインL10に接続される。電圧検出回路13は、直流電圧VOを検出して、検出信号DSをエラーアンプ16に入力する。具体的には、電圧検出回路13は、直流電圧VOを抵抗分圧することによって検出信号DSを生成する。
【0047】
目標電圧生成回路14は、検出信号DSの目標値となる目標電圧TVOを生成する。
【0048】
エラーアンプ16は、電圧検出回路13及び目標電圧生成回路14に接続される。エラーアンプ16は、検出信号DSと目標電圧TVOとの差に応じた誤差信号ESを出力する。
【0049】
乗算器17は、補正信号作成回路12及びエラーアンプ16に接続される。乗算器17は、補正信号作成回路12が出力する補正信号CSと、誤差信号ESとを乗算する。
【0050】
スイッチング制御回路18は、乗算器17の出力信号S2に応じてスイッチング素子Tr1のON/OFF動作を制御する。具体的には、スイッチング制御回路18は、ノコギリ波生成回路19及びコンパレータ21を含む。
【0051】
ノコギリ波生成回路19は、相電圧V1〜V3の各周波数と比較して、周波数が高いノコギリ波(又は三角波)S1を生成する。また、ノコギリ波生成回路19によって生成されるのこぎり波S1は、スイッチング素子Tr1のスイッチング周波数を決定する。
【0052】
コンパレータ21は、のこぎり波S1と、乗算器17の出力信号S2との比較結果に応じて、スイッチング制御信号(PWM信号)G1を出力する。スイッチング制御信号G1は、スイッチング素子Tr1のゲートに入力される。
【0053】
具体的には、出力信号S2がのこぎり波S1よりも大きい期間で、コンパレータ21はHレベルのスイッチング制御信号G1を出力し、スイッチング素子Tr1がONする。一方、出力信号S2がのこぎり波S1よりも小さい期間では、Lレベルのスイッチング制御信号G1が出力され、スイッチング素子Tr1がOFFする。
【0054】
このようなフィードバック構成により、スイッチング素子Tr1のONデューティ(スイッチング周期に対するON期間比率(ON期間の比率))が変化し、直流電圧VOが一定値となるように制御される。
【0055】
(2)電源装置の動作
次に、実施例の電源装置1の動作を説明する。
【0056】
(2−1)主回路の動作
スイッチング素子Tr1は、スイッチング制御信号G1がHレベルである期間においてONする。スイッチング素子Tr1がONすると、三相交流電源4が交流リアクトルL4〜L6を介して短絡される。これにより、交流リアクトルL4〜L6に流れる電流、即ち、相電流Iu1〜Iu3が急激に増加する。また、スイッチング素子Tr1がONすると、交流リアクトルL4〜L6には、相電圧V1〜V3に比例したエネルギーが蓄えられる。
【0057】
スイッチング素子Tr1は、スイッチング制御信号G1がLレベルである期間においてOFFする。スイッチング素子Tr1がOFFすると、交流リアクトルL4〜L6に蓄えられたエネルギーは、ダイオード整流回路9及び逆流阻止ダイオードD7を介して平滑コンデンサC4に移動する。これにより、平滑コンデンサC4が充電される。
【0058】
平滑コンデンサC4が充電される期間がスイッチング素子Tr1のON/OFF動作によって制御されるので、平滑コンデンサC4の電圧、即ち、直流電圧VOもスイッチング素子Tr1で制御されることになる。尚、ローパスフィルタ7はスイッチング素子Tr1のON/OFF動作に伴う高調波を除去する。
【0059】
(2−2)制御装置の動作
ここで、入力電流Iu(相電流Iu1)には図2の最上段に示すように、整流電圧VPQの落ち込み部分に対応する期間において歪みが生じる。
【0060】
制御装置3の補正信号作成回路12は、図2の上から三段目に示す補正信号CSを生成する。補正信号CSの波形は図4に示すようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となる。この補正信号CSがピーク値となるタイミングは、整流電圧VPQが落ち込むタイミングに同期している。
【0061】
補正信号CSは乗算器17にてエラーアンプ16から出力される誤差信号ESに乗算される。この結果、乗算器17の出力信号S2は図3の上段に示すようにエラーアンプ16からの誤差信号ESに補正信号CSが重畳された波形となる。即ち、エラーアンプ16からの誤差信号ESが補正信号CSにより変調される。
【0062】
この乗算器17の出力信号S2は、コンパレータ21においてのこぎり波S1と比較される。コンパレータ21は、乗算器17の出力信号S2がのこぎり波S1よりも大きい場合にHレベルのスイッチング制御信号G1を出力する(図3下段)。
【0063】
図3からも明らかな如く、補正信号CSの電圧が高い程、スイッチング制御信号G1のONデューティ(スイッチング周期に対するON期間比率(ON期間の比率))が増加する。これにより、整流電圧VPQが落ち込む部分に対応する期間(入力電流Iu(相電流Iu1)のピーク値付近)において落ち込む入力電流Iu(図2最上段)を持ち上げ、図2最下段に示すように、その歪みを低減することができるようになる。逆に、補正信号C2の電圧が低い程、スイッチング制御信号G1のONデューティが減少する。これにより、入力電流Iuがそのピーク値付近で逆に突出する場合に、その部分の入力電流Iuを引き下げることもできるようになる。
【0064】
(2−2−1)補正信号の形状変更手法1
次に、図2〜図5を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の一実施例を説明する。前述した如く、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形は図4に示すようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となる。この補正信号CSがピーク値となるタイミングは、整流電圧VPQが落ち込むタイミング、即ち、入力電流Iuが歪むタイミングに同期している。
【0065】
更に、補正信号作成回路12は、補正信号CSのAC/DC比を変更する。このAC/DC比は、補正信号CSのDC成分に対するAC成分の比率のことであり、この比率が高くなる程(図4のAC/DC=0.52)、図4の半波の山の高さが高くなり、比率が低くなる程(図4のAC/DC=0.15)、図4の半波の山の高さは低くなる。図4ではAC/DC比を0.15、0.20、0.30、0.52と変化させたときの波形の様子を上から順に重ねて示している。AC/DC比を変更する方法は、先ず補正信号からDC成分を除去し、次にAC/DC比を大きくする場合はAC成分に1より大きい値をかける。逆にAC/DC比を小さくする場合はAC成分に1より小さい値をかける。次に、AC成分の増減分を考慮したDC成分を加算するものである。
【0066】
この補正信号CSのAC/DC比が大きいと、乗算器17の出力信号S2の波形は図3の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図2の最下段)。尚、入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピーク値とピーク値の間の部分ではON期間比率が減少し、その減少度合いも高くなる。
【0067】
逆に、補正信号CSのAC/DC比が小さいと、乗算器17の出力信号S2の波形は図3の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは、低下する。同様に補正信号CSのピーク値とピーク値の間の部分ではON期間比率が減少するが、その減少度合いは低くなる。
【0068】
即ち、制御装置3は補正信号CSのAC/DC比を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分に基づき、補正信号CSのAC/DC比を変更する。前述した如く、スイッチング素子Tr1のON期間比率を高くすると、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる。また、ON期間比率が低くなると、7次成分は下がるものの、5次成分は上がる傾向となる。そして、入力電流Iuの歪みは負荷の状況によって逐次変化するが、5次成分と7次成分を監視して補正信号CSのAC/DC比を調整することで、図5に示すように5次成分と7次成分の双方を規制値内に納めることが可能となる。図5の例ではAC/DC比=0.25(図5の(3))で規制値をクリアできていることが分かる。
【0069】
(2−2−2)補正信号の形状変更手法2
次に、図6〜図9を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の他の実施例を説明する。前述した如く、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形は、本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるが、この場合、補正信号作成回路12は、この補正信号CSの波形のピーク(頂上)に相当する箇所を凹ませる。補正信号のピークに相当する箇所を凹ませる方法は、AC成分のピーク部分を「−」方向に折り返すものである。
【0070】
図8は補正信号CSのAC成分を凹ませる度合いを変化させたときの様子を示している。この場合、AC/DC比率は0.30一定で、凹AC成分が20%の場合、40%の場合、60%の場合を重ねて示している。
【0071】
この補正信号CSの凹み度合いが小さい(凹AC成分の%が小さい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図6の最下段)。尚、入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピークの凹み部分の前後の部分ではON期間比率が増加し、その増加の度合いも小さくなる。
【0072】
逆に、補正信号CSの凹み度合いが大きい(凹AC成分の%が大きい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、ON期間比率は減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは、低くなる。
【0073】
即ち、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凹み度合い(ピーク凹%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分に基づき、補正信号CSの波形の凹み度合いを変更する。前述した如く、スイッチング素子Tr1のON期間比率を高くすると、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる。また、ON期間比率が低くなると、7次成分は下がるものの、5次成分は上がる傾向となる。そして、入力電流Iuの歪みは負荷の状況によって逐次変化するが、5次成分と7次成分を監視して補正信号CSの波形の凹み度合いを調整することで、図9に示すように5次成分と7次成分の双方を規制値内に納めることが可能となる。図9の例では補正信号ピーク凹20%(図9の(2))で規制値をクリアできていることが分かる。
【0074】
(2−2−3)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御1
次に、図10を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の一実施例を説明する。図10はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0075】
前述した如く補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図10のステップS11で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS12で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、AC/DC比を所定の割合(或いは値)α1だけ上げる。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS11〜S12を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0076】
次に、ステップS11で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS13に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS14で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、AC/DC比を所定の割合(或いは値)α2だけ下げる。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS11、ステップS13、S14を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0077】
そして、ステップS13で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS15に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0078】
次に、補正信号作成回路12はステップS16に進み、ステップS15で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS17に進んでAC/DC比を所定の割合(或いは値)β2だけ下げる(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS16で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS18に進んでAC/DC比を所定の割合(或いは値)β1だけ上げる(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0079】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0080】
(2−2−4)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御2
次に、図11を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の他の実施例を説明する。この場合、負荷6の状態に応じて、高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方がそれぞれの規制値Ir5、Ir7以下に収まる補正信号CSのAC/DC比を予め実験により把握しておき、補正信号作成回路12に保持させておく。
【0081】
図11は負荷6がモータ(例えば冷凍サイクルのコンプレッサモータ)を駆動するインバータである場合を示しており、インバータの周波数と出力をパラメータとし、それぞれの値に対して5次成分I5と7次成分I7の双方が規制値Ir5、Ir7内に収まるAC/DC比の値(a1〜an、b1〜bn・・・x1〜xn)のマトリックスが構成され、このデータテーブルが補正信号作成回路12に予め記憶される。
【0082】
そして、制御装置3の補正信号作成回路12は、負荷6(この場合インバータ)の周波数と出力を監視し、それらの値から図11のマトリックス中のAC/DC比の値を選択して補正信号CSの形状を変更し、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0083】
以上のように、制御装置3の補正信号作成回路12が整流電圧VPQの波形の落ち込みにより入力電流Iuが歪む部分に相当する期間において、スイッチング素子Tr1のスイッチング周期に対するON期間比率を増減させ、入力電流Iuを増減させるので、入力電流Iuの歪みを改善して高調波成分の抑制を図ることが可能となる。このとき、装置の大きさやコストの高騰も抑えることができる。特に、制御装置3は、入力電流Iuに含まれる高調波成分に応じてスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御するので、高調波成分中の5次成分や7次成分を的確に規制値内に抑えることが可能となる。
【0084】
また、交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号CSを生成すると共に、生成した補正信号CSを用いてON期間比率を増減させるようにしているので、入力電流Iuが歪む期間を正確に検出してON期間比率を適切なタイミングで増減させることができるようになる。
【0085】
また、制御装置3を、直流電圧VOとその目標値(目標電圧TVO)との差に応じた誤差信号ESを出力するエラーアンプ16と、エラーアンプ16から出力される誤差信号ESに対して補正信号CSを重畳する乗算器17と、この乗算器17の出力信号S2に応じて、スイッチング素子Tr1のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路18とを備えているので、直流電圧VOを一定に保つためのフィードバック構成を利用して、入力電流Iuの歪みを改善する制御を実現することが可能となり、制御装置3を大幅に変更すること無く、入力電流Iuの歪みを改善することができるようになる。
【0086】
特に、制御1や制御2の実施例のように入力電流Iuに含まれる高調波成分の5次成分及び7次成分に応じて補正信号CSのAC/DC比を変更するようにすれば、ON期間比率の増減の度合いを容易に制御することができるようになる。
【0087】
尚、実施例では三相交流電源を用いたコンデンサ入力型の整流回路で特に大きくなる5次成分と7次成分に着目して制御したが、他の奇数次成分を監視し、それらの性状(ON期間比率の増加で高くなるか低くなるか)に基づいて補正信号CSの形状を変化させてもよい(以下、同じ)。
【0088】
(2−2−5)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御3
次に、図12を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更に他の実施例を説明する。図12はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0089】
前述同様に補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図12のステップS21で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS22で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α1だけ小さくする。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS21〜S22を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0090】
次に、ステップS21で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS23に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS24で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α2だけ大きくする。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS21、ステップS23、S24を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0091】
そして、ステップS23で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS25に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0092】
次に、補正信号作成回路12はステップS26に進み、ステップS25で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS27に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β2だけ大きくする(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS26で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS28に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β1だけ小さくする(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0093】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0094】
(2−2−6)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御4
尚、図11に示した増減の度合い制御2のように、負荷6の状態に応じて、高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方がそれぞれの規制値Ir5、Ir7以下に収まる補正信号CSのAC/DC比を予め実験により把握しておき、補正信号作成回路12に保持させておいて適切な凹み度合いを選択することで、ON期間比率の増減の度合いを制御するようにしてもよい。
【0095】
この制御3、制御4の実施例のように、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凹み部分を形成し、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5及び7次成分I7に応じて、補正信号CSの凹み度合いを変更することでもON期間比率の増減の度合いを容易に制御して高調波成分を規制値内に納めることができる。
【0096】
(2−2−7)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御5
次に、図13を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更に他の実施例を説明する。図13はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0097】
前述同様に補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図13のステップS31で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS32で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)α1だけ上げる。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS31〜S32を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0098】
次に、ステップS31で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS33に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS34で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α2だけ大きくする。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS31、ステップS33、S34を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0099】
そして、ステップS33で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS35に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0100】
次に、補正信号作成回路12はステップS36に進み、ステップS35で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS37に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β2だけ大きくする(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS36で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS38に進んで補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)β1だけ上げる(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0101】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0102】
(2−2−8)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御6
次に、図14を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更にもう一つの他の実施例を説明する。図14はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0103】
前述同様に補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図14のステップS41で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS42で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α1だけ小さくする。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS41〜S42を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0104】
次に、ステップS41で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS43に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS44で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)α2だけ下げる。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS41、ステップS43、S44を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0105】
そして、ステップS43で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS45に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0106】
次に、補正信号作成回路12はステップS46に進み、ステップS45で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS47に進んで補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)β2だけ下げる(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS46で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS48に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β1だけ小さくする(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0107】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。上記制御5や制御6の実施例のように、制御手法1と2を組み合わせて高調波成分を規制値内に納めてもよい。
【0108】
(2−2−9)補正信号の形状変更手法3
次に、図15〜図21を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法のもう一つの他の実施例を説明する。図15に示すこの場合の電源装置1の電気回路のブロック図は図1と同一であるが、補正信号作成回路12における制御方式のみが異なる。
【0109】
図8に示した形状変更手法2では、前述した如く制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形(本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるもの)のピーク(頂上)に相当する箇所を凹ませ(AC成分のピーク部分を「−」方向に折り返す)、且つ、この凹ませる度合いを変化させることによって、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを調整したが、この場合の形状変更手法3では、この凹み部分の幅を変化させる。尚、この手法は単独で、或いは、前記形状変更手法2と組み合わせて実行する。
【0110】
図18は補正信号CSのAC成分の凹み部分の幅を狭くし、その状態で、当該凹み部分を凹ませる度合いを変化させたときの様子を示している。また、図20は補正信号CSのAC成分の凹み部分の幅を広くし、その状態で、当該凹み部分を凹ませる度合いを変化させたときの様子を示している。各図において、AC/DC比率は前述同様に0.30一定で、凹AC成分が5%の場合、10%の場合、20%の場合、40%の場合を重ねて示している。
【0111】
前述した形状変更手法2で説明した如く、補正信号CSの凹み度合いが小さい(凹AC成分の%が小さい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図6の最下段)。尚、前述同様に入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピークの凹み部分の前後の部分ではON期間比率が増加し、その増加の度合いも小さくなる。
【0112】
逆に、補正信号CSの凹み度合いが大きい(凹AC成分の%が大きい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、ON期間比率は減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは、低くなる。
【0113】
特に、入力電流Iuに含まれる7次成分や13次成分が高い場合、入力電流Iuの波形のピークに相当する箇所は、図16の最上限に示すように逆に突出するかたちで歪むようになる。この突出部分に対応する期間において、スイッチング素子Tr1のON期間比率を減少させれば、入力電流Iuの突出部分を引き下げることができる。
【0114】
即ち、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凹み度合い(ピーク凹%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分に基づき、補正信号CSの波形の凹み度合いを変更する。前述した如く、スイッチング素子Tr1のON期間比率を高くすると、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる。逆に、ON期間比率を低くすると、7次成分は下がるものの、5次成分は上がる傾向となる。そして、入力電流Iuの歪みは負荷の状況によって逐次変化するが、5次成分と7次成分を監視して補正信号CSの波形の凹み度合いを調整することで、図9に示すように5次成分と7次成分の双方を規制値内に納めることが可能となる。図9の例では補正信号ピーク凹20%(図9の(2))で規制値をクリアできていることは前述した。
【0115】
ここでは更に、入力電流Iuに含まれる高調波成分の次数にも着目する。補正信号CSの凹み部分の幅が狭い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図17の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔(整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなり、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなって、入力電流Iuのピークが、より上がることになるパルスの間隔)が狭くなる(図16の最下段実線で示す)。
【0116】
逆に、補正信号CSの凹み部分の幅が広い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図17の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔が広くなる(図16の最下段破線で示す)。
【0117】
ここで、5次や7次などの低次数の高調波成分は周期が大きいため、補正信号CSの凹み部分の幅を広くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔が広い方が、補正の影響がより大きくでる。一方、11次、13次、19次などの高次数の高調波成分は周期が小さいため、補正信号CSの凹み部分の幅を狭くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔が狭い方が、補正の影響がより大きくでる。
【0118】
このことは、制御装置3によって補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凹み部分の幅を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減度合いの制御をより強く影響させる高調波成分の次数を制御できることを意味している。即ち、制御装置3の補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分の次数に基づき、当該高調波成分のうちの低い次数(5次、7次など)の高調波成分を抑えたいときには凹み部分の幅を広くし、高い次数(11次、13次、19次など)の高調波成分を抑えたいときには凹み部分の幅を狭くする方向で変更する。
【0119】
図19は図18の如く凹み部分の幅を狭くして凹ませる度合いを変化(5%、10%、20%、40%)させた場合の各高調波成分の変化の様子を示しているが、この図からも明らかな如く、11次、13次、17次、19次などの高い次数の高調波成分がより大きく変化し、限界値((1)で示す前述した規制値)をクリア(11次は全て、13次は(2)、(3)で示す5%、10%、17次は全て、19次は(2)で示す5%)できることが分かる。
【0120】
他方、図21は図20の如く凹み部分の幅を広くして凹ませる度合いを変化(5%、10%、20%、40%)させた場合の各高調波成分の変化の様子を示しているが、この図からも明らかな如く、5次、7次などの低い次数の高調波成分がより大きく変化し、限界値((1)で示す前述した規制値)をクリア(5次は(6)で示す5%、7次は全て)できることが分かる。
【0121】
(2−2−10)補正信号の形状変更手法4
次に、図22、図23を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の更にもう一つの他の実施例を説明する。前述した如く、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形は、本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるが、この場合、補正信号作成回路12は、この補正信号CSの波形のピーク(頂上)に相当する箇所に凸部分を形成する。
【0122】
この補正信号CSの凸部分の凸度合いが大きい(凸AC成分の%が大きい)と、乗算器17の出力信号S2の波形において、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図22の最下段)。尚、前述同様に入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピーク値とピーク値の間の部分ではON期間比率が減少し、その減少度合いも高くなる。
【0123】
逆に、補正信号CSの凸度合いが小さい(凸AC成分の%が小さい)と、乗算器17の出力信号S2の波形において、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは低下する。
【0124】
即ち、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凸部分の凸度合い(ピーク凸%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分に基づき、補正信号CSの波形の凸度合いを変更する。
【0125】
ここで、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうち、5次、11次、17次成分が大きい場合、入力電流Iuの歪みは図22の最上段に示すような凹形状(落ち込み部分)となる。そのため、5次成分などを抑える場合には当該5次成分を監視して、補正信号CSの波形の凸度合いを調整することで、5次成分を規制値(限界値)内に納める易くなる(この形状変更手法4及び後述する形状変更手法5)。
【0126】
逆に、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうち、7次、13次、19次成分が大きい場合、入力電流Iuの歪みは図16の最上段に示すような凸形状(突出部分)となる。そのため、7次成分などを抑える場合には当該7次成分を監視して、補正信号CSの波形の凹み度合いを調整することで、7次成分を規制値(限界値)内に納め易くなる(前述した形状変更手法2及び形状変更手法3)。
【0127】
(2−2−11)補正信号の形状変更手法5
次に、同じく図22、図23を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の更にもう一つの他の実施例を説明する。上述した形状変更手法4では、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形(本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるもの)のピーク(頂上)に相当する箇所に凸部分を形成し、且つ、この凸度合いを変化させることによって、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを調整したが、この場合の形状変更手法5では、この凸部分の幅を変化させる。尚、この手法は単独で、或いは、前記形状変更手法4と組み合わせて実行する。
【0128】
前述した形状変更手法4で説明した如く、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凸度合い(ピーク凸%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、ここでは更に、入力電流Iuに含まれる高調波成分の次数にも着目する。補正信号CSの凸部分の幅が狭い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図23の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲(整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなり、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなって、入力電流Iuのピークが、より上がることになるパルスが存在する範囲)が狭くなる(図22の最下段実線で示す)。
【0129】
逆に、補正信号CSの凸部分の幅が広い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図23の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲が広くなる(図22の最下段破線で示す)。
【0130】
ここで、5次などの低次数の高調波成分は周期が大きいため、補正信号CSの凸部分の幅を広くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲が広い方が、補正の影響がより大きくでる。一方、11次、17次などの高次数の高調波成分は周期が小さいため、補正信号CSの凸部分の幅を狭くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲が狭い方が、補正の影響がより大きくでる。
【0131】
このことは、制御装置3によって補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凸部分の幅を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いの制御をより強く影響させる高調波成分の次数を制御できることを意味している。即ち、制御装置3の補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分の次数に基づき、当該高調波成分のうちの低い次数(5次など)の高調波成分を抑えたいときには凸部分の幅を広くし、高い次数(11次、17次など)の高調波成分を抑えたいときには取る部分の幅を狭くする方向で変更する。
【0132】
(2−2−12)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御7
次に、図24を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更にもう一つの他の実施例を説明する。図24はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0133】
この場合のON期間比率の増減の度合い制御は、前述した補正信号CSの凹み部分の幅の変更に関する形状変更手法3と、補正信号CSの凸部分の幅の変更に関する形状変更手法5を組み合わせて実行する例である。但し、後述するステップS57、ステップS63では、前述した如く補正信号CSの凹み部分の凹み度合い変更に関する形状変更手法2、凸部分の凸度合い変更に関する形状変更手法4を組み合わせて実行すれば更に効果的であることは云うまでもない。
【0134】
以下、図24に沿って説明する。この場合の補正信号作成回路12(図15)は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの全ての次数を監視することになる。即ち、補正信号作成回路12は、図24のステップS51で補正信号作成回路12はNに1を足す(インクリメント)。尚、Nは0及び正の整数である(0,1,2,3・・・)。次に、ステップS52で監視する高調波成分の次数n=6N−1を計算する。制御スタート当初のステップS51ではNは1となるので、ステップS52では高調波成分nの次数は5となる。即ち、スタートして最初は5次の高調波成分を監視することになる。
【0135】
次に、補正信号作成回路12はステップS53で前述した補正信号CSの凹み部分及び凸部分の幅W=t/nを計算する。この場合のtは所定の常数であり、これを次数nで除するため、次数nが小さい、即ち、低い次数の高調波成分を監視する場合ほど、幅Wは広くなり、高い次数の場合ほど、幅Wは狭くなることになる。
【0136】
次に、補正信号作成回路12はステップS54で高調波成分のうちの5次成分Inが、当該5次成分の規制値(限界値)Irnより大きいか否か判断し、大きい場合には補正信号作成回路12はステップS55に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度Mnは、(Irn−In)/Inで算出される。即ち、現在の5次成分Inに対する規制値Irnと現在の5次成分Inとの差の比率が5次成分の余裕度Mnとなり、現在の7次成分In+2に対する規制値Irn+2と現在の7次成分In+2との差の比率が7次成分の余裕度Mn+2となる。
【0137】
次に、補正信号作成回路12はステップS56に進み、ステップS55で算出した余裕度MnとMn+2を比較する。そして、5次成分の余裕度Mnの方が7次成分の余裕度Mn+2より大きかった場合にはステップS57に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凸度合いが所定の割合(或いは値)αの凸部を形成する。
【0138】
前述した如く高調波成分のうちの5次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成することが効果的であり、且つ、この凸部分の幅Wは広いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって5次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0139】
一方、ステップS54で高調波成分のうちの5次成分Inが、当該5次成分の規制値(限界値)Irn以下であった場合、ステップS58に進んで監視する高調波成分の次数n=6N+1を計算する。この場合Nは1なので次数nは7となる。即ち、5次成分が規制値内にある場合には、今度は7次成分の高調波を監視することになる。次に、補正信号作成回路12はステップS59で同様に補正信号CSの凹み部分及び凸部分の幅W=t/nを計算し直す。この場合のnは7であるので、ステップS53におけるnが5の場合の次に広い幅Wが算出されることになる。
【0140】
次に、補正信号作成回路12はステップS60で高調波成分のうちの7次成分Inが、当該7次成分の規制値(限界値)Irnより大きいか否か判断し、大きい場合には補正信号作成回路12はステップS61に進んで7次成分と5次成分の余裕度を算出する。この場合、7次成分の余裕度Mnは、(Irn−In)/Inで算出される。即ち、現在の7次成分Inに対する規制値Irnと現在の7次成分Inとの差の比率が7次成分の余裕度Mnとなり、現在の5次成分In-2に対する規制値Irn-2と現在の5次成分In-2との差の比率が5次成分の余裕度Mn-2となる。
【0141】
次に、補正信号作成回路12はステップS62に進み、ステップS61で算出した余裕度MnとMn-2を比較する。そして、7次成分の余裕度Mnの方が5次成分の余裕度Mn-2より大きかった場合にはステップS63に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凹み度合いが所定の割合(或いは値)βの凹みを形成する。
【0142】
前述した如く高調波成分のうちの7次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凹みを形成することが効果的であり、且つ、この凹み部分の幅Wは広いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって7次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0143】
ここで、ステップS56において余裕度Mn+2(この場合の7次成分の余裕度)がMn(この場合の5次成分の余裕度)以上であった場合、補正信号作成回路12はステップS64に進んで変化幅W=t/n+2を算出した後、ステップS63に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凹み度合いが所定の割合βの凹みを形成する。これによって、余裕度の小さい7次成分の高調波を低下させる。
【0144】
また、ステップS62において余裕度Mn-2(この場合の5次成分の余裕度)がMn(この場合の7次成分の余裕度)以上であった場合、補正信号作成回路12はステップS65に進んで変化幅W=t/n-2を算出した後、ステップS57に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凸度合いが所定の割合αの凸部を形成する。これによって、余裕度の小さい5次成分の高調波を低下させる。
【0145】
即ち、この場合の補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分を一つのセットとして規制値以下に維持する制御を実行する。
【0146】
このように5次と7次について監視した後、補正信号作成回路12は次にステップS51に戻り、Nを2とする(インクリメント)。これにより、ステップS52において監視する高調波成分は11次成分となり、ステップS58で監視する高調波成分は13次成分となって前述した制御が実行される。この場合、ステップS53やステップS59において決定される変化幅Wにおいてはnが11や13と、前述した5や7より大きくなるため、変化幅Wは5次成分や7次成分の場合よりも狭くなる。また、11次成分ではステップS57で補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に狭い幅Wであって凸度合いが所定の割合αの凸部が形成されることになる。
【0147】
前述した如く高調波成分のうちの11次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成することが効果的であり、且つ、この凸部分の幅Wは狭いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって11次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0148】
一方、13次成分ではステップS63で補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に狭い幅Wであって凹み度合いが所定の割合βの凹み部を形成されることになる。前述した如く高調波成分のうちの13次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凹み部分を形成することが効果的であり、且つ、この凹み部分の幅Wは狭いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって13次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0149】
即ち、この場合も補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの11次成分と13次成分を一つのセットとして規制値以下に維持する制御を実行する。
【0150】
これが終了した後、補正信号作成回路12はステップS51に戻り、Nをインクリメントして3とし、今度は17次成分(より狭い幅Wの凸部を形成)と19次成分(より狭い幅Wの凹みを形成)を一つのセットとして規制値以下に維持する制御を実行し、以後これを繰り返していくものである。
【0151】
(2−2−13)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御8
次に、図25を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更にもう一つの他の実施例を説明する。この場合は図11の場合と同様に、負荷6の状態に応じて、高調波成分のうちの各次数の成分についてそれらが規制値以下に収まる補正信号CSの例えば形状変化幅Wを予め実験により把握しておき、補正信号作成回路12に保持させておく。凸或いは凹み度合いについても同様である。
【0152】
図25は同様に負荷6がモータ(例えば冷凍サイクルのコンプレッサモータ)を駆動するインバータである場合を示し、インバータの周波数と出力をパラメータとし、それぞれの値に対して各次数の成分について当該次数の成分が規制値内に収まる変化幅Wの値(a1〜an、b1〜bn・・・x1〜xn)のマトリックスが構成され、このデータテーブルが補正信号作成回路12に予め記憶される。
【0153】
そして、制御装置3の補正信号作成回路12は、負荷6(この場合インバータ)の周波数と出力を監視し、それらの値から図25のマトリックス中の変化幅Wの値を選択して補正信号CSの形状を変更し、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分の各次数成分をそれぞれ規制値以下に維持するものである。
【0154】
尚、上記実施例では交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号CSを生成したが、それに限らず、整流電圧のリプル成分に基づいて補正信号を生成するようにしてもよい。
【0155】
また、実施例では冷凍サイクルのコンプレッサモータを負荷とする例を述べたが、本発明は電源装置は他のあらゆる電気機器に適用可能であることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明を適用した実施例としての電源装置の電気回路のブロック図である。
【図2】図1の電源装置の制御装置の動作を説明するための波形図である(手法1)。
【図3】図2の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するための波形図である(手法1)。
【図4】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1を説明するための波形図である。
【図5】図4の手法によって高調波成分のうちの5次成分と7次成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図6】図1の電源装置の制御装置の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法2)。
【図7】図1の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法2)。
【図8】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2を説明するための波形図である。
【図9】図8の手法によって高調波成分のうちの5次成分と7次成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図10】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御1を説明するためのフローチャートである。
【図11】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御2を説明するための図である。
【図12】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御3を説明するためのフローチャートである。
【図13】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1と2を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御5を説明するためのフローチャートである。
【図14】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1と2を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御6を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明を適用した実施例としての電源装置の電気回路のもう一つのブロック図である。
【図16】図15の電源装置の制御装置の動作を説明するための波形図である(手法3)。
【図17】図15の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するための波形図である(手法3)。
【図18】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法3を説明するための波形図である。
【図19】図18の手法によって高い次数の高調波成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図20】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法3を説明するためのもう一つの波形図である。
【図21】図20の手法によって低い次数の高調波成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図22】図15の電源装置の制御装置の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法4、手法5)。
【図23】図15の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法4、手法5)。
【図24】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2乃至5を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御7を説明するためのフローチャートである。
【図25】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2乃至5を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御8を説明するための図である。
【図26】本発明の背景を説明するための波形図である。
【図27】スイッチング素子のON期間比率を増加させた場合を説明するための波形図である。
【図28】図27の制御で変化する高調波成分のうちの5次成分と7次成分の様子を説明する図である。
【図29】スイッチング素子のON期間比率を増加させた場合に生ずる問題を説明するための波形図である。
【図30】図29の制御で変化する高調波成分のうちの5次成分と7次成分の様子を説明する図である。
【図31】図29の制御で変化する高調波成分のうちの各次数成分の様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0157】
1 電源装置
2 主回路
3 制御装置
4 三相交流電源
6 負荷
8 昇圧回路
9 ダイオード整流回路
12 補正信号作成回路
13 電圧検出回路
14 目標電圧生成回路
16 エラーアンプ
17 乗算器
18 スイッチング制御回路
19 のこぎり波生成回路
C4 平滑コンデンサ
L1〜L3 リアクトル
L4〜L6 交流リアクトル
Tr1 スイッチング素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電源を入力として負荷に直流電圧を供給する主回路と、この直流電圧に応じて主回路を制御する制御装置とを備える電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より電気機器の電源に用いられる電源装置は、ダイオード整流回路と昇圧回路から主回路が構成される。ダイオード整流回路は、三相交流電源によって供給される相電圧を整流することにより、整流電圧を出力する。また、昇圧回路は、ダイオード整流回路の出力に接続されたスイッチング素子を有し、整流電圧を上昇させて直流電圧を出力するものである。
【0003】
このような電源装置において、昇圧比(主回路の入力電圧に対する出力電圧の比率)が小さい場合、次のような問題が発生する。即ち、図26に示すように相電圧の正及び負のピーク値付近、即ち、整流電圧の落ち込み部分に対応する期間において入力電流(相電流)が大きく歪み(ピークが落ち込む)、正弦波にならなくなる。この入力電流の歪みは、主に三相交流電源における線間電圧の位相差の影響によって生じる。そして、このような歪みにより、入力電流には大きな高調波成分が含まれることになる。この高調波電流は、電気設備及び機器の焼損、振動、異音の発生などの問題を引き起こすため、例えばIEC61000−3−2などによって規制されている。
【0004】
ここで、家庭用エアコンなどの単相入力機器では、従来より高調波電流を抑制するためにアクティブフィルタが機器一台毎に搭載されている。一方、業務用機器などの三相入力機器では、受電設備内のアクティブフィルタで高調波電流を抑制するため、機器一台毎にアクティブフィルタを搭載することが無かった。この受電設備内に設置するアクティブフィルタでは、6個のスイッチング素子を用いるなどの比較的大型で高コストのものが許容されているが、機器一台毎に組み込むアクティブフィルタは、小型、低コストのものが要求される。そのため、三相入力用のアクティブフィルタを機器一台毎に組み込むためには、スイッチング素子の数を減らした回路構成で高調波電流を規制値以下に抑制できる電源装置の開発が必要となる。
【0005】
従来、スイッチング素子を一個で三相交流電源を昇圧することにより、高調波電流を抑制する回路構成が開発されているが、昇圧比を高くしないと高調波電流の抑制効果が少ないという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、係る回路に共振コンデンサ及び共振リアクトルを設けることにより、昇圧比を低くして高調波電流を抑制する回路構成も開発されているが、共振コンデンサや共振リアクトルとして大電力に対応可能なものが要求されるため、電源装置の大きさやコストが増大する問題があった(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
そこで、昇圧比を高くしないで、高調波電流の抑制効果を発揮させるために、整流電圧の波形が落ち込む部分に対応する期間において、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間の比率を高くして、入力電流の波形を改善する方法が考えられる。例えば、図27の中段に示すように整流電圧の波形と相似で、位相を90°ずらした補正信号をスイッチングの制御を行う電圧に重畳することにより、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間の比率を高くすれば、図27の上段に示すように歪んだ入力電流(相電流)波形の落ち込みを、下段に示すように改善できる。
【0008】
そして、このスイッチング素子のON期間の比率を適切に増加させれば、図28に示すように高調波電流に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分を規制値(図28の(3))以下に抑えることが可能である。ここで、図28の(1)は補正を行わない基本回路の場合であり、(2)は上述のように補正信号を追加した場合を示している。
【特許文献1】特開平02−106171号公報
【特許文献2】特許第3509495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、スイッチング素子のON期間の比率を高くすると、高調波電流のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる(三相交流電源を用いたコンデンサ入力型の整流回路では5次成分と7次成分の高調波電流が大きい)。そして、入力電流の歪みは負荷の状況によって逐次変化する。
【0010】
そのため、図29に示すようにスイッチング素子のON期間を一定の比率で上げて入力電流(相電流)の落ち込み部分を持ち上げる場合、負荷の状況などによっては、5次成分は規制値をクリアするものの、7次成分が規制値を超え、入力電流は逆にピークが突出するかたちで歪んでしまう場合が発生する(図16最上段参照)。逆に、ON期間の比率が足りなければ、図30に示すように5次成分は下がるものの、規制値以下までは低下しない場合も出てくる。
【0011】
また、ON期間比率の変更は高周波電流の次数が低いか高いかによってもその影響の出方が異なるため、例えば、図31に示すように5次成分や7次成分などの低次数の高調波電流は規制値に収まるものの、13次や19次などの高次数の高調波電流は規制値を超えてしまう場合も出てくる。
【0012】
即ち、スイッチング素子のON期間を一定の比率で上げる方法では、規制値を超えた次数の高調波電流を的確に低下させることができなかった。
【0013】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、大きさやコストの増大を抑制しつつ、昇圧比が小さい場合にも、入力電流の歪みを的確に改善することができる電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電源装置は、三相交流電源からの交流電圧を入力し、この交流電圧を直流電圧に変換して負荷に印加する主回路と、直流電圧を検出すると共に、検出した直流電圧に応じて主回路を制御する制御装置とを備えたものであって、主回路は、交流電圧を整流することによって整流電圧を出力するダイオード整流回路と、このダイオード整流回路の出力に接続されたスイッチング素子を有して整流電圧を上昇させ、直流電圧として出力する昇圧回路とを備え、制御装置は、スイッチング素子を所定のスイッチング周期でON/OFFすることにより、直流電圧を目標値に上昇させると共に、入力電流を検出し、当該入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、この入力電流に含まれる高調波成分に応じ、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させ、且つ、その増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明の電源装置は、上記において制御装置は、入力電流の波形の落ち込み部分に対応する期間において、ON期間比率を増加させると共に、入力電流の波形の突出部分に対応する期間において、ON期間比率を減少させることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号を生成すると共に、生成した補正信号を用いてON期間比率を増減させることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、直流電圧と、この直流電圧の目標値との差に応じた誤差信号を出力するエラーアンプと、補正信号を生成する補正信号作成回路と、エラーアンプから出力される誤差信号に対して補正信号を重畳する重畳回路と、この重畳回路の出力信号に応じて、スイッチング素子のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、入力電流に含まれる高調波成分に応じて補正信号のAC/DC比を変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凹み度合いを変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明の電源装置は、上記各発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の平滑又は凹み部分の幅を変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0021】
請求項8の発明の電源装置は、請求項1乃至請求項5の何れかの発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度合いを変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【0022】
請求項9の発明の電源装置は、請求項1乃至請求項5又は請求項8の何れかの発明において制御装置は、補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度部分の幅を変更することにより、ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば制御装置が、入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させるので、例えば請求項2の如く、入力電流の波形の落ち込み部分に対応する期間において、ON期間比率を増加させると共に、入力電流の波形の突出部分に対応する期間において、ON期間比率を減少させることにより、入力電流の歪みを改善して高調波成分の抑制を図ることが可能となる。このとき、装置の大きさやコストの高騰も抑えることができる。
【0024】
特に、制御装置は、入力電流に含まれる高調波成分に応じてスイッチング素子の前記ON期間比率の増減の度合いを制御するので、高調波成分中の5次成分や7次成分を的確に規制値内に抑えることが可能となる。
【0025】
また、請求項3の発明の如く交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号を生成すると共に、生成した補正信号を用いて前記ON期間比率を増減させるようにすれば、入力電流が歪む期間を正確に検出してON期間比率を適切なタイミングで増減させることができるようになる。
【0026】
また、請求項4の発明の如く制御装置を、直流電圧と、直流電圧の目標値との差に応じた誤差信号を出力するエラーアンプと、前記補正信号を生成する補正信号作成回路と、エラーアンプから出力される前記誤差信号に対して前記補正信号を重畳する重畳回路と、この重畳回路の出力信号に応じて、スイッチング素子のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路とを備えるようにすれば、直流電圧を一定に保つためのフィードバック構成を利用して、入力電流の歪みを改善する制御を実現することが可能となり、制御装置を大幅に変更すること無く、入力電流の歪みを改善することができるようになる。
【0027】
また、請求項5の発明の如く制御装置により、入力電流に含まれる高調波成分に応じて前記補正信号のAC/DC比を変更すれば、前記ON期間比率の増減の度合いを容易に制御することができるようになる。
【0028】
更に、請求項6の発明の如く補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凹み度合いを変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。
【0029】
この場合、請求項7の発明の如く入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の平滑又は凹み部分の幅を変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。即ち、平滑又は凹み部分の幅を狭くすれば、高い次数の高調波成分に有効であり、逆に広くすれば、低い次数の高調波成分に有効となる。
【0030】
更にまた、請求項8の発明の如く補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度合いを変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。
【0031】
この場合、請求項9の発明の如く入力電流に含まれる高調波成分に応じて、補正信号の凸度部分の幅を変更することでも前記ON期間比率の増減の度合いを制御することが可能である。即ち、凸部分の幅を狭くすれば、高い次数の高調波成分に有効であり、逆に広くすれば、低い次数の高調波成分に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
【0033】
(1)電源装置の構成
図1は、本発明を適用した電源装置1の電気回路のブロック図を示している。実施例の電源装置1は、主回路2と制御装置3とから構成されている。主回路2は三相交流電源4及び負荷6に接続される。制御装置3は主回路2に接続されている。
【0034】
三相交流電源4は、位相がそれぞれ120°異なる相電圧V1〜V3を三相交流電源端子U、V、Wにそれぞれ印加する。この実施例では主回路2への入力電圧(線間電圧)は例えば400Vである。
【0035】
(1−2)主回路の構成
主回路2は、三相交流電源4を入力として、負荷6に直流電圧VOを供給する。実施例では主回路2が出力する直流電圧VOは例えば650Vである。即ち、主回路2においては、入力電圧(線間電圧)が400Vに対して出力電圧(直流電圧VO)が650Vであり、昇圧比は小さい。
【0036】
制御装置3は、直流電圧VOを検出すると共に、検出した直流電圧VOに応じて主回路2を制御する。具体的には、制御装置3は直流電圧VOが予め設定された目標値となるように主回路2を制御する。
【0037】
主回路2は、ローパスフィルタ7、昇圧回路8及びダイオード整流回路9を含む。ローパスフィルタ7は、リアクトルL1〜L3及びコンデンサC1〜C3を含む。リアクトルL1〜L3のそれぞれの一端は三相交流電源端子U、V、Wに接続されている。コンデンサC1〜C3は、リアクトルL1〜L3の他端に接続されている。
【0038】
昇圧回路8は、交流リアクトルL4〜L6、スイッチング素子Tr1、逆流阻止ダイオードD7、及び、平滑コンデンサC4を含む。交流リアクトルL4〜L6の一端は、リアクトルL1〜L3の他端にそれぞれ接続されている。
【0039】
スイッチング素子Tr1は、電源ラインL10、L20間に接続されている。実施例ではスイッチング素子Tr1として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が使用されている。平滑コンデンサC4は、負荷6に並列接続されている。尚、スイッチング素子Tr1は、ONすると導通し、OFFすると遮断(非導通)される。また、スイッチング素子Tr1はIGBTに限らず、電界効果とトランジスタ(FET)などの他のトランジスタでも良い。
【0040】
昇圧回路8は、スイッチング素子Tr1を所定のスイッチング周期でON/OFFさせる。ここで、ON/OFF動作とは、スイッチング素子Tr1がONとOFFとを交互に繰り返すことである。尚、スイッチング素子Tr1のON/OFF動作は制御装置3によって制御される。
【0041】
逆流阻止ダイオードD7は、電源ラインL10上においてスイッチング素子Tr1と平滑コンデンサC4との間に接続される。ダイオード整流回路9は、ダイオードD1〜D6を含む。ダイオードD1及びD2は電源ラインL10、L20間に接続され、ダイオードD1及びD2の間には、交流リアクトルL4の他端が接続されている。ダイオードD3及びD4も電源ラインL10、L20間に接続され、ダイオードD3、D4間には交流リアクトルL5の他端が接続されている。同様に、ダイオードD5及びD6も電源ラインL10、L20間に接続され、ダイオードD5、D6間には交流リアクトルL6の他端が接続されている。
【0042】
ダイオード整流回路9は、三相交流電源4から供給される相電圧V1〜V3を整流することにより、整流電圧VPQを出力する。昇圧回路8は、整流電圧VPQを上昇させ、昇圧された直流電圧VOを出力する。
【0043】
(1−3)制御装置の構成
次に、制御装置3は、補正信号作成回路12と、電圧検出回路13と、目標電圧生成回路14と、エラーアンプ16、乗算器(重畳回路)17及びスイッチング制御回路18とを含む。
【0044】
補正信号作成回路12はマイクロコンピュータ(マイコン制御部)により構成され、交流電源端子U(V又はWでもよい)に接続される。補正信号作成回路12は、先ず、相電圧V1が零となるタイミングを検出し、検出したタイミングに同期した同期信号SYNを生成する。次に、この同期信号SYNを基準として、相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSを生成する。
【0045】
更に、補正信号作成回路12は、電流センサを用いて相電流Iu1(入力電流Iu)の値を検出し、更に、当該相電流Iu1に含まれる高調波電流値を検出する。そして、相電流Iu1に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分を監視し、当該5次成分と7次成分に応じて補正信号CSの形状を変更する。詳細は後述する。
【0046】
電圧検出回路13は、電源ラインL10に接続される。電圧検出回路13は、直流電圧VOを検出して、検出信号DSをエラーアンプ16に入力する。具体的には、電圧検出回路13は、直流電圧VOを抵抗分圧することによって検出信号DSを生成する。
【0047】
目標電圧生成回路14は、検出信号DSの目標値となる目標電圧TVOを生成する。
【0048】
エラーアンプ16は、電圧検出回路13及び目標電圧生成回路14に接続される。エラーアンプ16は、検出信号DSと目標電圧TVOとの差に応じた誤差信号ESを出力する。
【0049】
乗算器17は、補正信号作成回路12及びエラーアンプ16に接続される。乗算器17は、補正信号作成回路12が出力する補正信号CSと、誤差信号ESとを乗算する。
【0050】
スイッチング制御回路18は、乗算器17の出力信号S2に応じてスイッチング素子Tr1のON/OFF動作を制御する。具体的には、スイッチング制御回路18は、ノコギリ波生成回路19及びコンパレータ21を含む。
【0051】
ノコギリ波生成回路19は、相電圧V1〜V3の各周波数と比較して、周波数が高いノコギリ波(又は三角波)S1を生成する。また、ノコギリ波生成回路19によって生成されるのこぎり波S1は、スイッチング素子Tr1のスイッチング周波数を決定する。
【0052】
コンパレータ21は、のこぎり波S1と、乗算器17の出力信号S2との比較結果に応じて、スイッチング制御信号(PWM信号)G1を出力する。スイッチング制御信号G1は、スイッチング素子Tr1のゲートに入力される。
【0053】
具体的には、出力信号S2がのこぎり波S1よりも大きい期間で、コンパレータ21はHレベルのスイッチング制御信号G1を出力し、スイッチング素子Tr1がONする。一方、出力信号S2がのこぎり波S1よりも小さい期間では、Lレベルのスイッチング制御信号G1が出力され、スイッチング素子Tr1がOFFする。
【0054】
このようなフィードバック構成により、スイッチング素子Tr1のONデューティ(スイッチング周期に対するON期間比率(ON期間の比率))が変化し、直流電圧VOが一定値となるように制御される。
【0055】
(2)電源装置の動作
次に、実施例の電源装置1の動作を説明する。
【0056】
(2−1)主回路の動作
スイッチング素子Tr1は、スイッチング制御信号G1がHレベルである期間においてONする。スイッチング素子Tr1がONすると、三相交流電源4が交流リアクトルL4〜L6を介して短絡される。これにより、交流リアクトルL4〜L6に流れる電流、即ち、相電流Iu1〜Iu3が急激に増加する。また、スイッチング素子Tr1がONすると、交流リアクトルL4〜L6には、相電圧V1〜V3に比例したエネルギーが蓄えられる。
【0057】
スイッチング素子Tr1は、スイッチング制御信号G1がLレベルである期間においてOFFする。スイッチング素子Tr1がOFFすると、交流リアクトルL4〜L6に蓄えられたエネルギーは、ダイオード整流回路9及び逆流阻止ダイオードD7を介して平滑コンデンサC4に移動する。これにより、平滑コンデンサC4が充電される。
【0058】
平滑コンデンサC4が充電される期間がスイッチング素子Tr1のON/OFF動作によって制御されるので、平滑コンデンサC4の電圧、即ち、直流電圧VOもスイッチング素子Tr1で制御されることになる。尚、ローパスフィルタ7はスイッチング素子Tr1のON/OFF動作に伴う高調波を除去する。
【0059】
(2−2)制御装置の動作
ここで、入力電流Iu(相電流Iu1)には図2の最上段に示すように、整流電圧VPQの落ち込み部分に対応する期間において歪みが生じる。
【0060】
制御装置3の補正信号作成回路12は、図2の上から三段目に示す補正信号CSを生成する。補正信号CSの波形は図4に示すようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となる。この補正信号CSがピーク値となるタイミングは、整流電圧VPQが落ち込むタイミングに同期している。
【0061】
補正信号CSは乗算器17にてエラーアンプ16から出力される誤差信号ESに乗算される。この結果、乗算器17の出力信号S2は図3の上段に示すようにエラーアンプ16からの誤差信号ESに補正信号CSが重畳された波形となる。即ち、エラーアンプ16からの誤差信号ESが補正信号CSにより変調される。
【0062】
この乗算器17の出力信号S2は、コンパレータ21においてのこぎり波S1と比較される。コンパレータ21は、乗算器17の出力信号S2がのこぎり波S1よりも大きい場合にHレベルのスイッチング制御信号G1を出力する(図3下段)。
【0063】
図3からも明らかな如く、補正信号CSの電圧が高い程、スイッチング制御信号G1のONデューティ(スイッチング周期に対するON期間比率(ON期間の比率))が増加する。これにより、整流電圧VPQが落ち込む部分に対応する期間(入力電流Iu(相電流Iu1)のピーク値付近)において落ち込む入力電流Iu(図2最上段)を持ち上げ、図2最下段に示すように、その歪みを低減することができるようになる。逆に、補正信号C2の電圧が低い程、スイッチング制御信号G1のONデューティが減少する。これにより、入力電流Iuがそのピーク値付近で逆に突出する場合に、その部分の入力電流Iuを引き下げることもできるようになる。
【0064】
(2−2−1)補正信号の形状変更手法1
次に、図2〜図5を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の一実施例を説明する。前述した如く、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形は図4に示すようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となる。この補正信号CSがピーク値となるタイミングは、整流電圧VPQが落ち込むタイミング、即ち、入力電流Iuが歪むタイミングに同期している。
【0065】
更に、補正信号作成回路12は、補正信号CSのAC/DC比を変更する。このAC/DC比は、補正信号CSのDC成分に対するAC成分の比率のことであり、この比率が高くなる程(図4のAC/DC=0.52)、図4の半波の山の高さが高くなり、比率が低くなる程(図4のAC/DC=0.15)、図4の半波の山の高さは低くなる。図4ではAC/DC比を0.15、0.20、0.30、0.52と変化させたときの波形の様子を上から順に重ねて示している。AC/DC比を変更する方法は、先ず補正信号からDC成分を除去し、次にAC/DC比を大きくする場合はAC成分に1より大きい値をかける。逆にAC/DC比を小さくする場合はAC成分に1より小さい値をかける。次に、AC成分の増減分を考慮したDC成分を加算するものである。
【0066】
この補正信号CSのAC/DC比が大きいと、乗算器17の出力信号S2の波形は図3の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図2の最下段)。尚、入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピーク値とピーク値の間の部分ではON期間比率が減少し、その減少度合いも高くなる。
【0067】
逆に、補正信号CSのAC/DC比が小さいと、乗算器17の出力信号S2の波形は図3の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは、低下する。同様に補正信号CSのピーク値とピーク値の間の部分ではON期間比率が減少するが、その減少度合いは低くなる。
【0068】
即ち、制御装置3は補正信号CSのAC/DC比を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分に基づき、補正信号CSのAC/DC比を変更する。前述した如く、スイッチング素子Tr1のON期間比率を高くすると、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる。また、ON期間比率が低くなると、7次成分は下がるものの、5次成分は上がる傾向となる。そして、入力電流Iuの歪みは負荷の状況によって逐次変化するが、5次成分と7次成分を監視して補正信号CSのAC/DC比を調整することで、図5に示すように5次成分と7次成分の双方を規制値内に納めることが可能となる。図5の例ではAC/DC比=0.25(図5の(3))で規制値をクリアできていることが分かる。
【0069】
(2−2−2)補正信号の形状変更手法2
次に、図6〜図9を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の他の実施例を説明する。前述した如く、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形は、本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるが、この場合、補正信号作成回路12は、この補正信号CSの波形のピーク(頂上)に相当する箇所を凹ませる。補正信号のピークに相当する箇所を凹ませる方法は、AC成分のピーク部分を「−」方向に折り返すものである。
【0070】
図8は補正信号CSのAC成分を凹ませる度合いを変化させたときの様子を示している。この場合、AC/DC比率は0.30一定で、凹AC成分が20%の場合、40%の場合、60%の場合を重ねて示している。
【0071】
この補正信号CSの凹み度合いが小さい(凹AC成分の%が小さい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図6の最下段)。尚、入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピークの凹み部分の前後の部分ではON期間比率が増加し、その増加の度合いも小さくなる。
【0072】
逆に、補正信号CSの凹み度合いが大きい(凹AC成分の%が大きい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、ON期間比率は減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは、低くなる。
【0073】
即ち、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凹み度合い(ピーク凹%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分に基づき、補正信号CSの波形の凹み度合いを変更する。前述した如く、スイッチング素子Tr1のON期間比率を高くすると、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる。また、ON期間比率が低くなると、7次成分は下がるものの、5次成分は上がる傾向となる。そして、入力電流Iuの歪みは負荷の状況によって逐次変化するが、5次成分と7次成分を監視して補正信号CSの波形の凹み度合いを調整することで、図9に示すように5次成分と7次成分の双方を規制値内に納めることが可能となる。図9の例では補正信号ピーク凹20%(図9の(2))で規制値をクリアできていることが分かる。
【0074】
(2−2−3)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御1
次に、図10を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の一実施例を説明する。図10はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0075】
前述した如く補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図10のステップS11で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS12で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、AC/DC比を所定の割合(或いは値)α1だけ上げる。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS11〜S12を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0076】
次に、ステップS11で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS13に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS14で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、AC/DC比を所定の割合(或いは値)α2だけ下げる。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS11、ステップS13、S14を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0077】
そして、ステップS13で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS15に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0078】
次に、補正信号作成回路12はステップS16に進み、ステップS15で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS17に進んでAC/DC比を所定の割合(或いは値)β2だけ下げる(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS16で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS18に進んでAC/DC比を所定の割合(或いは値)β1だけ上げる(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0079】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0080】
(2−2−4)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御2
次に、図11を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の他の実施例を説明する。この場合、負荷6の状態に応じて、高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方がそれぞれの規制値Ir5、Ir7以下に収まる補正信号CSのAC/DC比を予め実験により把握しておき、補正信号作成回路12に保持させておく。
【0081】
図11は負荷6がモータ(例えば冷凍サイクルのコンプレッサモータ)を駆動するインバータである場合を示しており、インバータの周波数と出力をパラメータとし、それぞれの値に対して5次成分I5と7次成分I7の双方が規制値Ir5、Ir7内に収まるAC/DC比の値(a1〜an、b1〜bn・・・x1〜xn)のマトリックスが構成され、このデータテーブルが補正信号作成回路12に予め記憶される。
【0082】
そして、制御装置3の補正信号作成回路12は、負荷6(この場合インバータ)の周波数と出力を監視し、それらの値から図11のマトリックス中のAC/DC比の値を選択して補正信号CSの形状を変更し、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0083】
以上のように、制御装置3の補正信号作成回路12が整流電圧VPQの波形の落ち込みにより入力電流Iuが歪む部分に相当する期間において、スイッチング素子Tr1のスイッチング周期に対するON期間比率を増減させ、入力電流Iuを増減させるので、入力電流Iuの歪みを改善して高調波成分の抑制を図ることが可能となる。このとき、装置の大きさやコストの高騰も抑えることができる。特に、制御装置3は、入力電流Iuに含まれる高調波成分に応じてスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御するので、高調波成分中の5次成分や7次成分を的確に規制値内に抑えることが可能となる。
【0084】
また、交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号CSを生成すると共に、生成した補正信号CSを用いてON期間比率を増減させるようにしているので、入力電流Iuが歪む期間を正確に検出してON期間比率を適切なタイミングで増減させることができるようになる。
【0085】
また、制御装置3を、直流電圧VOとその目標値(目標電圧TVO)との差に応じた誤差信号ESを出力するエラーアンプ16と、エラーアンプ16から出力される誤差信号ESに対して補正信号CSを重畳する乗算器17と、この乗算器17の出力信号S2に応じて、スイッチング素子Tr1のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路18とを備えているので、直流電圧VOを一定に保つためのフィードバック構成を利用して、入力電流Iuの歪みを改善する制御を実現することが可能となり、制御装置3を大幅に変更すること無く、入力電流Iuの歪みを改善することができるようになる。
【0086】
特に、制御1や制御2の実施例のように入力電流Iuに含まれる高調波成分の5次成分及び7次成分に応じて補正信号CSのAC/DC比を変更するようにすれば、ON期間比率の増減の度合いを容易に制御することができるようになる。
【0087】
尚、実施例では三相交流電源を用いたコンデンサ入力型の整流回路で特に大きくなる5次成分と7次成分に着目して制御したが、他の奇数次成分を監視し、それらの性状(ON期間比率の増加で高くなるか低くなるか)に基づいて補正信号CSの形状を変化させてもよい(以下、同じ)。
【0088】
(2−2−5)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御3
次に、図12を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更に他の実施例を説明する。図12はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0089】
前述同様に補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図12のステップS21で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS22で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α1だけ小さくする。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS21〜S22を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0090】
次に、ステップS21で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS23に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS24で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α2だけ大きくする。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS21、ステップS23、S24を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0091】
そして、ステップS23で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS25に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0092】
次に、補正信号作成回路12はステップS26に進み、ステップS25で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS27に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β2だけ大きくする(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS26で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS28に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β1だけ小さくする(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0093】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0094】
(2−2−6)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御4
尚、図11に示した増減の度合い制御2のように、負荷6の状態に応じて、高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方がそれぞれの規制値Ir5、Ir7以下に収まる補正信号CSのAC/DC比を予め実験により把握しておき、補正信号作成回路12に保持させておいて適切な凹み度合いを選択することで、ON期間比率の増減の度合いを制御するようにしてもよい。
【0095】
この制御3、制御4の実施例のように、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凹み部分を形成し、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5及び7次成分I7に応じて、補正信号CSの凹み度合いを変更することでもON期間比率の増減の度合いを容易に制御して高調波成分を規制値内に納めることができる。
【0096】
(2−2−7)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御5
次に、図13を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更に他の実施例を説明する。図13はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0097】
前述同様に補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図13のステップS31で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS32で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)α1だけ上げる。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS31〜S32を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0098】
次に、ステップS31で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS33に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS34で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α2だけ大きくする。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS31、ステップS33、S34を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0099】
そして、ステップS33で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS35に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0100】
次に、補正信号作成回路12はステップS36に進み、ステップS35で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS37に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β2だけ大きくする(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS36で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS38に進んで補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)β1だけ上げる(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0101】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。
【0102】
(2−2−8)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御6
次に、図14を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更にもう一つの他の実施例を説明する。図14はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0103】
前述同様に補正信号作成回路12は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7を監視している。そして、補正信号作成回路12は、図14のステップS41で5次成分I5が、当該5次成分の規制値Ir5より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS42で前述した補正信号CSの形状変更手法2を用い、補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)α1だけ小さくする。これにより、5次成分I5は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS41〜S42を繰り返して5次成分I5を規制値Ir5以下まで低下させる。
【0104】
次に、ステップS41で5次成分I5が規制値Ir5以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS43に進んで今度は7次成分I7が、当該7次成分の規制値Ir7より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップS44で前述した補正信号CSの形状変更手法1を用い、補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)α2だけ下げる。これにより、7次成分I7は下がる。補正信号作成回路12はこのステップS41、ステップS43、S44を繰り返して7次成分I7を規制値Ir7以下まで低下させる。
【0105】
そして、ステップS43で7次成分が規制値Ir7以下であった場合、補正信号作成回路12はステップS45に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度M5は、(Ir5−I5)/I5で算出される。即ち、現在の5次成分I5に対する規制値Ir5と現在の5次成分I5との差の比率が5次成分の余裕度M5となり、現在の7次成分I7に対する規制値Ir7と現在の7次成分I7との差の比率が7次成分の余裕度M7となる。
【0106】
次に、補正信号作成回路12はステップS46に進み、ステップS45で算出した余裕度M5とM7を比較する。そして、5次成分の余裕度M5の方が7次成分の余裕度M7より大きかった場合にはステップS47に進んで補正信号CSのAC/DC比を所定の割合(或いは値)β2だけ下げる(β2はα2より小さい)。これにより、7次成分の余裕度M7を大きくする。一方、ステップS46で5次成分の余裕度M5が7次成分の余裕度M7以下であった場合にはステップS48に進んで補正信号CSの波形の凹み度合いを所定の割合(或いは値)β1だけ小さくする(β1はα1より小さい)。これにより、5次成分の余裕度M5を大きくする。
【0107】
このようにして、補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分I5と7次成分I7の双方を規制値Ir5、Ir7以下に維持するものである。上記制御5や制御6の実施例のように、制御手法1と2を組み合わせて高調波成分を規制値内に納めてもよい。
【0108】
(2−2−9)補正信号の形状変更手法3
次に、図15〜図21を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法のもう一つの他の実施例を説明する。図15に示すこの場合の電源装置1の電気回路のブロック図は図1と同一であるが、補正信号作成回路12における制御方式のみが異なる。
【0109】
図8に示した形状変更手法2では、前述した如く制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形(本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるもの)のピーク(頂上)に相当する箇所を凹ませ(AC成分のピーク部分を「−」方向に折り返す)、且つ、この凹ませる度合いを変化させることによって、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを調整したが、この場合の形状変更手法3では、この凹み部分の幅を変化させる。尚、この手法は単独で、或いは、前記形状変更手法2と組み合わせて実行する。
【0110】
図18は補正信号CSのAC成分の凹み部分の幅を狭くし、その状態で、当該凹み部分を凹ませる度合いを変化させたときの様子を示している。また、図20は補正信号CSのAC成分の凹み部分の幅を広くし、その状態で、当該凹み部分を凹ませる度合いを変化させたときの様子を示している。各図において、AC/DC比率は前述同様に0.30一定で、凹AC成分が5%の場合、10%の場合、20%の場合、40%の場合を重ねて示している。
【0111】
前述した形状変更手法2で説明した如く、補正信号CSの凹み度合いが小さい(凹AC成分の%が小さい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図6の最下段)。尚、前述同様に入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピークの凹み部分の前後の部分ではON期間比率が増加し、その増加の度合いも小さくなる。
【0112】
逆に、補正信号CSの凹み度合いが大きい(凹AC成分の%が大きい)と、乗算器17の出力信号S2の波形は図7の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、ON期間比率は減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは、低くなる。
【0113】
特に、入力電流Iuに含まれる7次成分や13次成分が高い場合、入力電流Iuの波形のピークに相当する箇所は、図16の最上限に示すように逆に突出するかたちで歪むようになる。この突出部分に対応する期間において、スイッチング素子Tr1のON期間比率を減少させれば、入力電流Iuの突出部分を引き下げることができる。
【0114】
即ち、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凹み度合い(ピーク凹%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分に基づき、補正信号CSの波形の凹み度合いを変更する。前述した如く、スイッチング素子Tr1のON期間比率を高くすると、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうちの5次成分は下がるものの、7次成分は上がる傾向となる。逆に、ON期間比率を低くすると、7次成分は下がるものの、5次成分は上がる傾向となる。そして、入力電流Iuの歪みは負荷の状況によって逐次変化するが、5次成分と7次成分を監視して補正信号CSの波形の凹み度合いを調整することで、図9に示すように5次成分と7次成分の双方を規制値内に納めることが可能となる。図9の例では補正信号ピーク凹20%(図9の(2))で規制値をクリアできていることは前述した。
【0115】
ここでは更に、入力電流Iuに含まれる高調波成分の次数にも着目する。補正信号CSの凹み部分の幅が狭い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図17の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔(整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなり、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなって、入力電流Iuのピークが、より上がることになるパルスの間隔)が狭くなる(図16の最下段実線で示す)。
【0116】
逆に、補正信号CSの凹み部分の幅が広い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図17の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔が広くなる(図16の最下段破線で示す)。
【0117】
ここで、5次や7次などの低次数の高調波成分は周期が大きいため、補正信号CSの凹み部分の幅を広くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔が広い方が、補正の影響がより大きくでる。一方、11次、13次、19次などの高次数の高調波成分は周期が小さいため、補正信号CSの凹み部分の幅を狭くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスの間隔が狭い方が、補正の影響がより大きくでる。
【0118】
このことは、制御装置3によって補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凹み部分の幅を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減度合いの制御をより強く影響させる高調波成分の次数を制御できることを意味している。即ち、制御装置3の補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分の次数に基づき、当該高調波成分のうちの低い次数(5次、7次など)の高調波成分を抑えたいときには凹み部分の幅を広くし、高い次数(11次、13次、19次など)の高調波成分を抑えたいときには凹み部分の幅を狭くする方向で変更する。
【0119】
図19は図18の如く凹み部分の幅を狭くして凹ませる度合いを変化(5%、10%、20%、40%)させた場合の各高調波成分の変化の様子を示しているが、この図からも明らかな如く、11次、13次、17次、19次などの高い次数の高調波成分がより大きく変化し、限界値((1)で示す前述した規制値)をクリア(11次は全て、13次は(2)、(3)で示す5%、10%、17次は全て、19次は(2)で示す5%)できることが分かる。
【0120】
他方、図21は図20の如く凹み部分の幅を広くして凹ませる度合いを変化(5%、10%、20%、40%)させた場合の各高調波成分の変化の様子を示しているが、この図からも明らかな如く、5次、7次などの低い次数の高調波成分がより大きく変化し、限界値((1)で示す前述した規制値)をクリア(5次は(6)で示す5%、7次は全て)できることが分かる。
【0121】
(2−2−10)補正信号の形状変更手法4
次に、図22、図23を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の更にもう一つの他の実施例を説明する。前述した如く、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形は、本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるが、この場合、補正信号作成回路12は、この補正信号CSの波形のピーク(頂上)に相当する箇所に凸部分を形成する。
【0122】
この補正信号CSの凸部分の凸度合いが大きい(凸AC成分の%が大きい)と、乗算器17の出力信号S2の波形において、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなる。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなることに伴い、入力電流Iuのピークは、より上がることになる(図22の最下段)。尚、前述同様に入力電流Iuの実効値は変化しないので、補正信号CSのピーク値とピーク値の間の部分ではON期間比率が減少し、その減少度合いも高くなる。
【0123】
逆に、補正信号CSの凸度合いが小さい(凸AC成分の%が小さい)と、乗算器17の出力信号S2の波形において、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が短くなって整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは、減少する。スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが低くなり、或いは減少することに伴い、入力電流Iuのピークは、余り上がらなくなり、或いは低下する。
【0124】
即ち、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凸部分の凸度合い(ピーク凸%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分に基づき、補正信号CSの波形の凸度合いを変更する。
【0125】
ここで、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうち、5次、11次、17次成分が大きい場合、入力電流Iuの歪みは図22の最上段に示すような凹形状(落ち込み部分)となる。そのため、5次成分などを抑える場合には当該5次成分を監視して、補正信号CSの波形の凸度合いを調整することで、5次成分を規制値(限界値)内に納める易くなる(この形状変更手法4及び後述する形状変更手法5)。
【0126】
逆に、入力電流Iuに含まれる高調波成分のうち、7次、13次、19次成分が大きい場合、入力電流Iuの歪みは図16の最上段に示すような凸形状(突出部分)となる。そのため、7次成分などを抑える場合には当該7次成分を監視して、補正信号CSの波形の凹み度合いを調整することで、7次成分を規制値(限界値)内に納め易くなる(前述した形状変更手法2及び形状変更手法3)。
【0127】
(2−2−11)補正信号の形状変更手法5
次に、同じく図22、図23を参照して、制御装置3の補正信号作成回路12による補正信号CSの形状を変更する手法の更にもう一つの他の実施例を説明する。上述した形状変更手法4では、制御装置3の補正信号作成回路12が生成する相電圧V1の6倍の周波数成分(6次高調波)を有する補正信号CSの波形(本来図4に示したようなDC成分とAC成分から成る正弦半波となるもの)のピーク(頂上)に相当する箇所に凸部分を形成し、且つ、この凸度合いを変化させることによって、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを調整したが、この場合の形状変更手法5では、この凸部分の幅を変化させる。尚、この手法は単独で、或いは、前記形状変更手法4と組み合わせて実行する。
【0128】
前述した形状変更手法4で説明した如く、制御装置3は補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凸度合い(ピーク凸%)を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いを制御できる。そして、ここでは更に、入力電流Iuに含まれる高調波成分の次数にも着目する。補正信号CSの凸部分の幅が狭い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図23の実線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲(整流電圧VPQの波形の落ち込み部分に対応する期間におけるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなり、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増加度合いが高くなって、入力電流Iuのピークが、より上がることになるパルスが存在する範囲)が狭くなる(図22の最下段実線で示す)。
【0129】
逆に、補正信号CSの凸部分の幅が広い場合、乗算器17の出力信号S2の波形は図23の破線で示すものとなり、入力電流Iuのピーク時のスイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲が広くなる(図22の最下段破線で示す)。
【0130】
ここで、5次などの低次数の高調波成分は周期が大きいため、補正信号CSの凸部分の幅を広くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲が広い方が、補正の影響がより大きくでる。一方、11次、17次などの高次数の高調波成分は周期が小さいため、補正信号CSの凸部分の幅を狭くし、スイッチング素子Tr1のON時間が長くなるパルスが存在する範囲が狭い方が、補正の影響がより大きくでる。
【0131】
このことは、制御装置3によって補正信号CSの波形のピークに相当する箇所の凸部分の幅を変更することにより、スイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合いの制御をより強く影響させる高調波成分の次数を制御できることを意味している。即ち、制御装置3の補正信号作成回路12は、相電流Iu1(入力電流Iu)に含まれる高調波成分の次数に基づき、当該高調波成分のうちの低い次数(5次など)の高調波成分を抑えたいときには凸部分の幅を広くし、高い次数(11次、17次など)の高調波成分を抑えたいときには取る部分の幅を狭くする方向で変更する。
【0132】
(2−2−12)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御7
次に、図24を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更にもう一つの他の実施例を説明する。図24はマイクロコンピュータにより構成される補正信号作成回路12の動作を示すフローチャートである。
【0133】
この場合のON期間比率の増減の度合い制御は、前述した補正信号CSの凹み部分の幅の変更に関する形状変更手法3と、補正信号CSの凸部分の幅の変更に関する形状変更手法5を組み合わせて実行する例である。但し、後述するステップS57、ステップS63では、前述した如く補正信号CSの凹み部分の凹み度合い変更に関する形状変更手法2、凸部分の凸度合い変更に関する形状変更手法4を組み合わせて実行すれば更に効果的であることは云うまでもない。
【0134】
以下、図24に沿って説明する。この場合の補正信号作成回路12(図15)は、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの全ての次数を監視することになる。即ち、補正信号作成回路12は、図24のステップS51で補正信号作成回路12はNに1を足す(インクリメント)。尚、Nは0及び正の整数である(0,1,2,3・・・)。次に、ステップS52で監視する高調波成分の次数n=6N−1を計算する。制御スタート当初のステップS51ではNは1となるので、ステップS52では高調波成分nの次数は5となる。即ち、スタートして最初は5次の高調波成分を監視することになる。
【0135】
次に、補正信号作成回路12はステップS53で前述した補正信号CSの凹み部分及び凸部分の幅W=t/nを計算する。この場合のtは所定の常数であり、これを次数nで除するため、次数nが小さい、即ち、低い次数の高調波成分を監視する場合ほど、幅Wは広くなり、高い次数の場合ほど、幅Wは狭くなることになる。
【0136】
次に、補正信号作成回路12はステップS54で高調波成分のうちの5次成分Inが、当該5次成分の規制値(限界値)Irnより大きいか否か判断し、大きい場合には補正信号作成回路12はステップS55に進んで5次成分と7次成分の余裕度を算出する。この場合、5次成分の余裕度Mnは、(Irn−In)/Inで算出される。即ち、現在の5次成分Inに対する規制値Irnと現在の5次成分Inとの差の比率が5次成分の余裕度Mnとなり、現在の7次成分In+2に対する規制値Irn+2と現在の7次成分In+2との差の比率が7次成分の余裕度Mn+2となる。
【0137】
次に、補正信号作成回路12はステップS56に進み、ステップS55で算出した余裕度MnとMn+2を比較する。そして、5次成分の余裕度Mnの方が7次成分の余裕度Mn+2より大きかった場合にはステップS57に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凸度合いが所定の割合(或いは値)αの凸部を形成する。
【0138】
前述した如く高調波成分のうちの5次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成することが効果的であり、且つ、この凸部分の幅Wは広いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって5次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0139】
一方、ステップS54で高調波成分のうちの5次成分Inが、当該5次成分の規制値(限界値)Irn以下であった場合、ステップS58に進んで監視する高調波成分の次数n=6N+1を計算する。この場合Nは1なので次数nは7となる。即ち、5次成分が規制値内にある場合には、今度は7次成分の高調波を監視することになる。次に、補正信号作成回路12はステップS59で同様に補正信号CSの凹み部分及び凸部分の幅W=t/nを計算し直す。この場合のnは7であるので、ステップS53におけるnが5の場合の次に広い幅Wが算出されることになる。
【0140】
次に、補正信号作成回路12はステップS60で高調波成分のうちの7次成分Inが、当該7次成分の規制値(限界値)Irnより大きいか否か判断し、大きい場合には補正信号作成回路12はステップS61に進んで7次成分と5次成分の余裕度を算出する。この場合、7次成分の余裕度Mnは、(Irn−In)/Inで算出される。即ち、現在の7次成分Inに対する規制値Irnと現在の7次成分Inとの差の比率が7次成分の余裕度Mnとなり、現在の5次成分In-2に対する規制値Irn-2と現在の5次成分In-2との差の比率が5次成分の余裕度Mn-2となる。
【0141】
次に、補正信号作成回路12はステップS62に進み、ステップS61で算出した余裕度MnとMn-2を比較する。そして、7次成分の余裕度Mnの方が5次成分の余裕度Mn-2より大きかった場合にはステップS63に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凹み度合いが所定の割合(或いは値)βの凹みを形成する。
【0142】
前述した如く高調波成分のうちの7次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凹みを形成することが効果的であり、且つ、この凹み部分の幅Wは広いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって7次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0143】
ここで、ステップS56において余裕度Mn+2(この場合の7次成分の余裕度)がMn(この場合の5次成分の余裕度)以上であった場合、補正信号作成回路12はステップS64に進んで変化幅W=t/n+2を算出した後、ステップS63に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凹み度合いが所定の割合βの凹みを形成する。これによって、余裕度の小さい7次成分の高調波を低下させる。
【0144】
また、ステップS62において余裕度Mn-2(この場合の5次成分の余裕度)がMn(この場合の7次成分の余裕度)以上であった場合、補正信号作成回路12はステップS65に進んで変化幅W=t/n-2を算出した後、ステップS57に進んで補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に幅Wであって凸度合いが所定の割合αの凸部を形成する。これによって、余裕度の小さい5次成分の高調波を低下させる。
【0145】
即ち、この場合の補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの5次成分と7次成分を一つのセットとして規制値以下に維持する制御を実行する。
【0146】
このように5次と7次について監視した後、補正信号作成回路12は次にステップS51に戻り、Nを2とする(インクリメント)。これにより、ステップS52において監視する高調波成分は11次成分となり、ステップS58で監視する高調波成分は13次成分となって前述した制御が実行される。この場合、ステップS53やステップS59において決定される変化幅Wにおいてはnが11や13と、前述した5や7より大きくなるため、変化幅Wは5次成分や7次成分の場合よりも狭くなる。また、11次成分ではステップS57で補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に狭い幅Wであって凸度合いが所定の割合αの凸部が形成されることになる。
【0147】
前述した如く高調波成分のうちの11次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成することが効果的であり、且つ、この凸部分の幅Wは狭いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって11次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0148】
一方、13次成分ではステップS63で補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に狭い幅Wであって凹み度合いが所定の割合βの凹み部を形成されることになる。前述した如く高調波成分のうちの13次成分を抑制する場合、補正信号CSの波形のピークに相当する箇所に凹み部分を形成することが効果的であり、且つ、この凹み部分の幅Wは狭いほうが補正の影響が出やすくなるので、係る補正信号CSの形状変更によって13次成分を効果的に規制値以下に低下させることができるようになる。
【0149】
即ち、この場合も補正信号作成回路12は入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分のうちの11次成分と13次成分を一つのセットとして規制値以下に維持する制御を実行する。
【0150】
これが終了した後、補正信号作成回路12はステップS51に戻り、Nをインクリメントして3とし、今度は17次成分(より狭い幅Wの凸部を形成)と19次成分(より狭い幅Wの凹みを形成)を一つのセットとして規制値以下に維持する制御を実行し、以後これを繰り返していくものである。
【0151】
(2−2−13)スイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御8
次に、図25を参照して、制御装置3によるスイッチング素子Tr1のON期間比率の増減の度合い制御の更にもう一つの他の実施例を説明する。この場合は図11の場合と同様に、負荷6の状態に応じて、高調波成分のうちの各次数の成分についてそれらが規制値以下に収まる補正信号CSの例えば形状変化幅Wを予め実験により把握しておき、補正信号作成回路12に保持させておく。凸或いは凹み度合いについても同様である。
【0152】
図25は同様に負荷6がモータ(例えば冷凍サイクルのコンプレッサモータ)を駆動するインバータである場合を示し、インバータの周波数と出力をパラメータとし、それぞれの値に対して各次数の成分について当該次数の成分が規制値内に収まる変化幅Wの値(a1〜an、b1〜bn・・・x1〜xn)のマトリックスが構成され、このデータテーブルが補正信号作成回路12に予め記憶される。
【0153】
そして、制御装置3の補正信号作成回路12は、負荷6(この場合インバータ)の周波数と出力を監視し、それらの値から図25のマトリックス中の変化幅Wの値を選択して補正信号CSの形状を変更し、入力電流Iu(相電流Iu1)に含まれる高調波成分の各次数成分をそれぞれ規制値以下に維持するものである。
【0154】
尚、上記実施例では交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号CSを生成したが、それに限らず、整流電圧のリプル成分に基づいて補正信号を生成するようにしてもよい。
【0155】
また、実施例では冷凍サイクルのコンプレッサモータを負荷とする例を述べたが、本発明は電源装置は他のあらゆる電気機器に適用可能であることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明を適用した実施例としての電源装置の電気回路のブロック図である。
【図2】図1の電源装置の制御装置の動作を説明するための波形図である(手法1)。
【図3】図2の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するための波形図である(手法1)。
【図4】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1を説明するための波形図である。
【図5】図4の手法によって高調波成分のうちの5次成分と7次成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図6】図1の電源装置の制御装置の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法2)。
【図7】図1の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法2)。
【図8】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2を説明するための波形図である。
【図9】図8の手法によって高調波成分のうちの5次成分と7次成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図10】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御1を説明するためのフローチャートである。
【図11】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御2を説明するための図である。
【図12】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御3を説明するためのフローチャートである。
【図13】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1と2を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御5を説明するためのフローチャートである。
【図14】図1の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法1と2を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御6を説明するためのフローチャートである。
【図15】本発明を適用した実施例としての電源装置の電気回路のもう一つのブロック図である。
【図16】図15の電源装置の制御装置の動作を説明するための波形図である(手法3)。
【図17】図15の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するための波形図である(手法3)。
【図18】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法3を説明するための波形図である。
【図19】図18の手法によって高い次数の高調波成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図20】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法3を説明するためのもう一つの波形図である。
【図21】図20の手法によって低い次数の高調波成分が抑制される様子を説明するための図である。
【図22】図15の電源装置の制御装置の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法4、手法5)。
【図23】図15の乗算器とスイッチング制御回路の動作を説明するためのもう一つの波形図である(手法4、手法5)。
【図24】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2乃至5を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御7を説明するためのフローチャートである。
【図25】図15の補正信号作成回路による補正信号の形状変更手法2乃至5を用いたスイッチング素子のON期間比率の増減の度合い制御8を説明するための図である。
【図26】本発明の背景を説明するための波形図である。
【図27】スイッチング素子のON期間比率を増加させた場合を説明するための波形図である。
【図28】図27の制御で変化する高調波成分のうちの5次成分と7次成分の様子を説明する図である。
【図29】スイッチング素子のON期間比率を増加させた場合に生ずる問題を説明するための波形図である。
【図30】図29の制御で変化する高調波成分のうちの5次成分と7次成分の様子を説明する図である。
【図31】図29の制御で変化する高調波成分のうちの各次数成分の様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0157】
1 電源装置
2 主回路
3 制御装置
4 三相交流電源
6 負荷
8 昇圧回路
9 ダイオード整流回路
12 補正信号作成回路
13 電圧検出回路
14 目標電圧生成回路
16 エラーアンプ
17 乗算器
18 スイッチング制御回路
19 のこぎり波生成回路
C4 平滑コンデンサ
L1〜L3 リアクトル
L4〜L6 交流リアクトル
Tr1 スイッチング素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源からの交流電圧を入力し、該交流電圧を直流電圧に変換して負荷に印加する主回路と、前記直流電圧を検出すると共に、検出した直流電圧に応じて前記主回路を制御する制御装置とを備えた電源装置であって、
前記主回路は、前記交流電圧を整流することによって整流電圧を出力するダイオード整流回路と、該ダイオード整流回路の出力に接続されたスイッチング素子を有して前記整流電圧を上昇させ、前記直流電圧として出力する昇圧回路とを備え、
前記制御装置は、前記スイッチング素子を所定のスイッチング周期でON/OFFすることにより、前記直流電圧を目標値に上昇させると共に、
入力電流を検出し、当該入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、該入力電流に含まれる高調波成分に応じ、前記スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させ、且つ、その増減の度合いを制御することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記入力電流の波形の落ち込み部分に対応する期間において、前記ON期間比率を増加させると共に、前記入力電流の波形の突出部分に対応する期間において、前記ON期間比率を減少させることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号を生成すると共に、生成した補正信号を用いて前記ON期間比率を増減させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記直流電圧と、該直流電圧の前記目標値との差に応じた誤差信号を出力するエラーアンプと、前記補正信号を生成する補正信号作成回路と、前記エラーアンプから出力される前記誤差信号に対して前記補正信号を重畳する重畳回路と、該重畳回路の出力信号に応じて、前記スイッチング素子のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて前記補正信号のAC/DC比を変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凹み度合いを変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の平滑又は凹み部分の幅を変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の電源装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凸度合いを変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電源装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凸度部分の幅を変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5又は請求項8の何れかに記載の電源装置。
【請求項1】
三相交流電源からの交流電圧を入力し、該交流電圧を直流電圧に変換して負荷に印加する主回路と、前記直流電圧を検出すると共に、検出した直流電圧に応じて前記主回路を制御する制御装置とを備えた電源装置であって、
前記主回路は、前記交流電圧を整流することによって整流電圧を出力するダイオード整流回路と、該ダイオード整流回路の出力に接続されたスイッチング素子を有して前記整流電圧を上昇させ、前記直流電圧として出力する昇圧回路とを備え、
前記制御装置は、前記スイッチング素子を所定のスイッチング周期でON/OFFすることにより、前記直流電圧を目標値に上昇させると共に、
入力電流を検出し、当該入力電流の波形が歪む部分に対応する期間において、該入力電流に含まれる高調波成分に応じ、前記スイッチング素子のスイッチング周期に対するON期間比率を増加、若しくは、減少させ、且つ、その増減の度合いを制御することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記入力電流の波形の落ち込み部分に対応する期間において、前記ON期間比率を増加させると共に、前記入力電流の波形の突出部分に対応する期間において、前記ON期間比率を減少させることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記交流電圧の6倍の周波数成分を有する補正信号を生成すると共に、生成した補正信号を用いて前記ON期間比率を増減させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記直流電圧と、該直流電圧の前記目標値との差に応じた誤差信号を出力するエラーアンプと、前記補正信号を生成する補正信号作成回路と、前記エラーアンプから出力される前記誤差信号に対して前記補正信号を重畳する重畳回路と、該重畳回路の出力信号に応じて、前記スイッチング素子のON/OFF動作を制御するスイッチング制御回路とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて前記補正信号のAC/DC比を変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凹み度合いを変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に平滑又は凹み部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の平滑又は凹み部分の幅を変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の電源装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凸度合いを変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の電源装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記補正信号の波形のピークに相当する箇所に凸部分を形成し、前記入力電流に含まれる高調波成分に応じて、前記補正信号の凸度部分の幅を変更することにより、前記ON期間比率の増減の度合いを制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5又は請求項8の何れかに記載の電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2009−95217(P2009−95217A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329928(P2007−329928)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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