説明

電磁連結装置

【課題】効果的に衝撃騒音を低減することが可能な電磁連結装置を提供する
【解決手段】電磁連結装置1は、相互に相対的に進退可能に設けられた連結部20、30及び被連結部10と、電磁力を作用させることによって連結部20、30と被連結部30とを、互いに圧接した連結状態と、互いに離間した非連結状態とに切り替える切替手段40と、連結状態または非連結状態と対応して、連結部20、30が被連結部10若しくは被連結部10と異なる他の部材40に当接することで発生する衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収する緩衝手段50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁作用によって、被連結部と連結部とを非連結状態から連結状態に切り替えることで、被連結部の駆動状態を連結部によって制動し、または、伝達させる電磁連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁作用によって被連結部と連結部とを非連結状態と連結状態とに切り替える電磁連結装置としては、連結状態にすることで、被連結部側の回転運動や直線運動を制動する電磁ブレーキや、被連結部側の回転運動や直線運動を連結部側に伝達させる電磁クラッチなどが挙げられる。より具体的には、電磁ブレーキを例とすれば、シャフトと、表面に摩擦係数を増大させたフェーシング材を設けてシャフトとともに回転可能な被連結部であるディスクと、ディスクの両側に設けられた連結部であるプレート及びアーマチュアと、アーマチュアをディスクに押し付けるように付勢するコイルバネと、電磁力を作用させることによってコイルバネの付勢に抗してアーマチュアをディスクから離間させるように吸引する電磁石とで構成されている。このような電磁ブレーキでは、電磁石に電流を供給しない状態では、アーマチュアは、電磁石から釈放され、コイルバネの付勢によってプレートとの間でディスクを挟み込み、これによりディスクとの間で摩擦が生じることとなる。このため、ディスクは、アーマチュア及びプレートとの摩擦によって作用するトルクによって制動されることとなる。一方、電磁石に電流を供給することで、アーマチュアは電磁石に吸引されて、ディスクから離間し、ディスクは、プレートとアーマチュアとの間で自在に回転可能な状態となる。
【0003】
ここで、上記のような電磁連結装置では、電磁石による吸引、釈放動作によって、連結部であるプレートやアーマチュアが、被連結部や電磁石に当接することとなり、その際に大きな衝撃音が発生することとなる。このため、このような衝撃音を低減して、騒音制限のあるような環境下においても使用可能とする技術が提案されている。例えば、連結部であるアーマチュアについて、リング状の平たい鉄板及びケイ素鋼板の積層により構成し、内外周で互いを溶接して一体化したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような連結部を備えた電磁連結装置によれば、電磁石による吸引、釈放動作に際して、連結部が被連結部や電磁石に当接したとしても、その際に発生する衝撃力は、積層構造によるクッション作用によって吸収される。また、連結部の固有振動数は、積層構造によって低減することとなる。このため、連結部が被連結部に圧接する際に発生する衝撃騒音を低減することが可能であるとされている。
【0004】
また、連結部であるアーマチュア及びプレートについて、複数の金属板と、これらの間に配設されたコルク板状緩衝材またはゴム板状緩衝材とで構成し、これらをネジによって締結して一体化したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような連結部を備えた電磁連結装置によれば、連結部に作用する衝撃力は、緩衝材によって吸収されることで、連結部が被連結部に圧接する際に発生する衝撃騒音を低減することが可能であるとされている。
【特許文献1】特開平8−247181号公報
【特許文献2】特開平10−306834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の電磁連結装置では、連結部が被連結部や他の部材と当接する際に生じる衝突エネルギーが変わることは無い。また、特許文献2の電磁連結装置では、緩衝材を設けることで、発生した振動を速やかに減衰させることが可能であるものの、衝突した瞬間に発生する衝突音の音圧レベルを低減することはできない。このため、特許文献1、2の電磁連結装置では、連結部が被連結部や他の部材と当接する際に発生する衝撃騒音を効果的に低減することができなかった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、効果的に衝撃騒音を低減することが可能な電磁連結装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、相互に相対的に進退可能に設けられた連結部及び被連結部と、電磁力を作用させることによって前記連結部と前記被連結部とを、互いに圧接した連結状態と、互いに離間した非連結状態とに切り替える切替手段と、前記連結状態または前記非連結状態と対応して、前記連結部が前記被連結部若しくは該被連結部と異なる他の部材に当接することで発生する衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収する緩衝手段とを備えることを特徴としている。
なお、前記被連結部と異なる他の部材とは、切替手段を電磁石とした時のヨークなど、連結状態及び非連結状態に切り替わる際にいずれかの状態で前記連結部が当接するものである。
【0008】
この構成によれば、切替手段によって、被連結部と連結部とを、非連結状態から連結状態へ、または、連結状態から非連結状態へ切り替える際に、連結部と被連結部とは相互に相対的に進退し、連結部は被連結部若しくは他の部材に当接することとなる。この際、連結部と、被連結部もしくは他の部材との間で発生する衝突エネルギーは、緩衝手段によってその一部が吸収されることとなる。このため、連結部は、衝突エネルギーを減じた状態で被連結部若しくは他の部材に当接することとなり、これにより当接することで生ずる衝撃騒音の低減を図ることができる。
【0009】
また、前記緩衝手段は、前記連結部、または、前記被連結部若しくは前記他の部材の少なくとも一方に設けられ、前記連結部が前記被連結部若しくは前記他の部材に当接するよりも先に他方に当接して弾性的に収縮する弾性変形部を有することが好ましい。
この構成によれば、連結部と、被連結部若しくは他の部材とが当接する際にして、先に、一方に設けられた弾性変形部が他方に当接して弾性的に収縮することとなる。このため、連結部と被連結部若しくは他の部材との間で発生する衝突エネルギーの少なくとも一部は弾性変形部に吸収されることとなり、これにより衝撃騒音の低減を図ることができる。
【0010】
また、前記被連結部が、前記連結部と対向して設けられた本体部材と、該本体部材の前記連結部と面する側に該連結部と圧接可能に突出して設けられたフェーシング部材とを有するとともに、前記弾性変形部は、前記フェーシング部材を形成する材質よりも小さい弾性率の弾性体を有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、連結部と被連結部のフェーシング部材とが圧接するに際して、先に、一方に設けられた弾性変形部が他方に当接して弾性的に収縮することになるが、弾性変形部の弾性体がフェーシング部材よりも小さい弾性率であることで、より柔軟に弾性変形して衝突エネルギーを好適に吸収することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電磁連結装置によれば、緩衝手段を備えることで、連結部と被連結部若しくは他の部材が当接する際に発生する衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収して効果的に衝撃騒音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、この発明に係る第1の実施形態を示していて、電磁連結装置の一例として、無励磁作動型の電磁ブレーキを示している。図1に示すように、この実施形態の電磁ブレーキ1は、回転駆動するシャフト2に同軸上で回転可能に取り付けられた被連結部であるディスク10と、ディスク10に対してシャフト2の回転軸L方向一方側に設けられたプレート20と、他方側に設けられた連結部であるアーマチュア30と、電磁力を作用させることによってアーマチュア30がディスク10に圧接した連結状態と離間した非連結状態とに切り替える切替手段40と、連結状態及び非連結状態と対応してディスク10がアーマチュア30及びプレート20と圧接する際に発生する衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収する緩衝手段50とを備える。
【0014】
ディスク10は、シャフト2に外嵌され固定された略筒状の固定部材11と、固定部材11に外装された略環状の本体部材12と、本体部材12の両面に設けられたフェーシング部材13とを有する。固定部材11は、図示しないキーによってシャフト2に固定されている。また、固定部材11の外周面には、回転軸L方向に沿って複数の歯11aが形成されている。一方、本体部材12の内周面には固定部材11の歯11aと対応して回転軸L方向に沿って形成された溝部12aが設けられ、固定部材11の歯11aに回転軸L方向に摺動可能に噛合されている。このため、本体部材12は、固定部材11とともにシャフト2の回転軸L回りに回転可能であるとともに、シャフト2及び固定部材11に対して回転軸L方向に進退可能とされている。
【0015】
また、フェーシング部材13は、略ドーナツ状で、プレート20またはアーマチュア30に圧接可能に本体部材12の両面からそれぞれに向かって突出して設けられている。フェーシング部材13は、例えば、ゴムや様々な樹脂などの材質が選択される。また、フェーシング部材13は、一般的に、プレート20やアーマチュア30より剛性の低いものを用いている。また、プレート20やアーマチュア30との間で摩擦を生じさせて、回転軸Lと直交する方向及び回転軸L回りに互いを拘束することが可能な程度の摩擦係数の大きいものであることが好ましい。
【0016】
プレート20は、中央に形成された貫通孔20aをシャフト2が貫通した略円板状の部材で、磁性体または金属で形成されている。
また、アーマチュア30は、中央に形成された貫通孔30aをシャフト2が貫通した略円板状の部材で、鉄などの磁性体で形成されている。
【0017】
切替手段40は、アーマチュア30に対してディスク10と反対側に設けられた電磁石41と、電磁石41側からディスク10に向かって回転軸L方向にアーマチュア30を付勢するコイルバネ42とを有する。電磁石41は、中央に形成された貫通孔43aをシャフト2が貫通した略円筒状のヨーク43と、ヨーク43のアーマチュア30と対向する側に形成された略円環状の溝に収容されたコイル44とを有する。
【0018】
ヨーク43の外周側には、固定用孔43bが設けられていて、回転軸Lと略平行に略軸状の案内部材45が固定されている。案内部材45は、その先端部がヨーク43からプレート20側に向かって突出していて、アーマチュア30及びプレート20のそれぞれに形成された案内孔31c、20bに挿通されている。また、案内部材45の先端側は、段部45aを有して縮径し、さらに先端側には、雄ネジが形成されてナット45bが螺合されている。案内部材45において、段部45aとナット45bとの間には、バネ部材46が外装されていて、プレート20は、バネ部材46とナット45bとの間で、バネ部材46の付勢によって弾性的に挟み込まれている。このため、プレート20は、ヨーク43と略一定間隔に保持されている一方、アーマチュア30は、案内部材45に沿って回転軸L方向に進退可能とされている。なお、図1においては、案内部材45は、一つ設けられているように図示されているが、平面的には、周方向に複数設けられている。
【0019】
また、コイルバネ42は、ヨーク43の端面43cに形成された収容穴43dに一端側が収容され、他端側がアーマチュア30に当接しディスク10側に向かって付勢している。なお、図1においては、コイルバネ42は、一つ設けられているように図示されているが、平面的には周方向に複数設けられている。そして、図1に示すように、電磁石41のコイル44に電流を流して励磁した状態では、アーマチュア30は、電磁力が作用してコイルバネ42の付勢に抗して吸引されて回転軸L方向に移動することとなり、ディスク10のフェーシング部材13から離間させてヨーク43と当接した状態とすることが可能となっている。一方、電磁石41のコイル44に電流を流さず無励磁の状態では、図2に示すように、アーマチュア30は、電磁力が作用せず、コイルバネ42による付勢力によってディスク10のフェーシング部材13に圧接した状態とすることが可能となっている。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、緩衝手段50は、アーマチュア30においてディスク10と対向する面に突出して設けられた第一の弾性変形部51と、プレート20においてディスク10と対向する面に突出して設けられた第二の弾性変形部52とを有する。第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52は、フェーシング部材13を形成する材質よりも小さい弾性率を有したゴムなどの弾性体からなり、フェーシング部材13と回転軸L方向に重ならない位置で略円環状に形成されている。そして、第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52は、電磁石41を無励磁状態として非連結状態から連結状態に切り替えた場合において、プレート20及びアーマチュア30が第一のフェーシング部材13に圧接するよりも先にディスク10の本体部材12に当接可能に突出して設けられている。
【0021】
次に、この実施形態の作用について、図1及び図2に基づいて説明する。図1に示すように、切替手段40の電磁石41が励磁されている状態では、電磁石41により磁界が発生している。このため、磁性体で形成されているアーマチュア30には電磁力が作用しており、アーマチュア30は、コイルバネ42に抗してヨーク42側に吸引され、ヨーク43の端面43cに当接した状態にある。このため、ディスク10は、アーマチュア30とプレート10との間で隙間を有した非連結状態となっていて、シャフト2の回転に応じて回転可能な状態となっている。
【0022】
一方、シャフト2及びディスク10の回転を制動する場合には、切替手段40において、電磁石41のコイル44に供給する電流を停止し、無励磁の状態にする。すなわち、アーマチュア30には電磁力が作用しなくなり、これによりアーマチュア30は、コイルバネ42による付勢によって回転軸L方向にディスク10に向かって移動することとなる。このため、ディスク10は、フェーシング部材13がプレート20及びアーマチュア30に圧接し、挟み込まれて連結状態となる。このため、シャフト2及びディスク10の回転は、フェーシング部材13の材質に応じて生じる摩擦によってプレート20及びアーマチュア30に拘束されて、制動されることとなる。
【0023】
ここで、切替手段40によって非連結状態から連結状態に切り替える際に、プレート20及びアーマチュア30とディスク10の各フェーシング部材13とが圧接するよりも先に、緩衝手段50の第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52がディスク10の本体部材12に当接し、弾性的に収縮することとなる。このため、プレート20及びアーマチュア30とディスク10の各フェーシング部材13とが圧接する際に発生する衝突エネルギーの一部は、第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部に吸収されることとなり、これにより衝撃騒音は低減されることとなる。また、第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52を構成する弾性体がフェーシング部材13の材質よりも小さい弾性率を有していることから、第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52がより柔軟に弾性変形して衝突エネルギーを吸収することとなり、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
【0024】
なお、再び非連結状態に戻して、シャフト2及びディスク10を回転可能な状態とするには、電磁石41に電流を供給し、励磁された状態にする。すなわち、アーマチュア40には電磁力が作用し、これによりアーマチュア30は、コイルバネ42による付勢に抗して、回転軸L方向にヨーク43に向かって移動することとなる。このため、ディスク10は、プレート20及びアーマチュア30から離間して非連結状態となり、回転可能な状態となる。
【0025】
以上のように、本実施形態の電磁ブレーキ1では、緩衝手段50の第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52によって、ディスク10とアーマチュア30及びプレート20とが圧接する際に生じる衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収して効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、緩衝手段50の第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52は、円環状に形成されているものとしたが、これに限るものでは無く、フェーシング部材13と回転軸L方向に重ならない位置で、様々な形状で設けることが可能である。また、緩衝手段50の第一の弾性変形部51及び第二の弾性変形部52は、プレート20及びアーマチュア30に設けられているものとしたが、これに限るものでは無い。図3に示す第1の変形例の電磁ブレーキ60のように、緩衝手段61を構成する第一の弾性変形部62及び第二の弾性変形部63がディスク10の本体部材12に設けられ、対向するプレート20及びアーマチュア30に当接するようにしても良い。また、プレート20及びアーマチュア30の両方に対応して弾性変形部が設けられるものとしたが、これに限るものでは無く、いずれか一方としても良い。
【0027】
また、本実施形態では、緩衝手段50の各弾性変形部は、ディスク10がプレート20及びアーマチュア30と圧接する場合に衝突エネルギーを吸収するように設けられているが、これに限るものでは無い。アーマチュア30が電磁石41のヨーク43など、被連結部以外の他の部材に当接する場合に衝突エネルギーを吸収するように設けられているものとしても良い。図4は、この実施形態における第2の変形例を示している。図4に示すように、この変形例の電磁ブレーキ70では、緩衝手段71として、弾性変形部72がヨーク43の端面43cに設けられている。より詳しくは、弾性変形部72は、回転軸Lを中心とする円周上に複数設けられていて、それぞれと対応してヨーク43の端面43cに形成されている凹部43dに収容された弾性体であるバネ部材72aと、バネ部材72aの先端に設けられ、端面43cから突出した当接部材72bとを有する。ここで、アーマチュア30とディスク10とが連結状態である場合において、当接部材72bは、アーマチュア30との間に隙間を有するように配設されている。
【0028】
この変形例の電磁ブレーキ70では、切替手段40によって連結状態から非連結状態に切り替えると、アーマチュア30は電磁石41に吸引されることとなるが、その際に、アーマチュア30は、弾性変形部72の当接部材72bに当接し、バネ部材72aを弾性的に収縮させた後にヨーク43に当接することとなる。このため、バネ部材72aの弾性変形によってアーマチュア30が電磁石41のヨーク43に当接する際に発生する衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収することができ、衝撃騒音を低減させることができる。なお、本変形例では、弾性変形部をバネ部材と当接部材とで構成するものとしたが、上記のように弾性体のみで構成するものとしても良い。
【0029】
なお、上記実施形態及びその変形例では、電磁連結装置として、無励磁作動型の電磁ブレーキを例に挙げたがこれに限るものでは無い。電磁石を励磁した際に連結部と被連結部とを連結状態にさせる励磁作動型の電磁ブレーキにも適用可能である。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5及び図6は、本発明の第2の実施形態を示したものであり、電磁連結装置の一例として、励磁作動型の電磁クラッチを示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
図5に示すように、この実施形態の電磁クラッチ100は、被連結部であるディスク110と、ディスク110と対向配置されたハブ120と、ディスク110とハブ120との間に介装された連結部であるアーマチュア130と、アーマチュア130がディスク110に圧接した連結状態と離間した非連結状態とに切り替える切替手段140と、アーマチュア130とディスク110とが圧接する際に発生する衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収する緩衝手段150とを備える。ディスク110は、主動側に接続されて回転駆動する第一のシャフト101に取り付けられた略筒状で、フランジ部111aを有する本体部材111と、フランジ部111aのハブ120と対向する面に取り付けられたフェーシング部材112とを有する。ディスク110は、本体部材111においてフランジ部111aから突出する筒部111bが第一のシャフト101に外嵌して固定されており、これにより第一のシャフト101の回転軸Lと同軸上で回転することが可能となっている。なお、フェーシング部材112の材質や形状などは、第1の実施形態のフェーシング部材と同様であるので説明を省略する。
【0032】
また、ハブ120は、従動側に接続されて回転軸Lと同軸で回転可能な第二のシャフト102に取り付けられた略筒状の部材で、アーマチュア130と対向してフランジ部120aを有している。また、アーマチュア130は、略円板状の部材で、磁性体で形成されている。
【0033】
切替手段140は、アーマチュア130に対してディスク110のフランジ部111aの反対側に設けられた電磁石141と、アーマチュア130とハブ120との間に設けられた付勢部材である板バネ142とを有する。電磁石141は、略円筒状のヨーク143と、コイル144とを有し、軸受145によって、ディスク110の筒部111bに対して回転軸L回りに回転可能に外装されている。また、板バネ142は、回転軸Lを中心として放射状に複数設けられている。各板バネ142は、一端がリベット142aによってハブ120に固定されているとともに、他端がリベット142bによってアーマチュア130に固定されている。そして、板バネ142は、ハブ120に対してアーマチュア130を引き付けるように付勢している。このため、アーマチュア130は、電磁石141のコイル144に電流を流さず無励磁の状態では、電磁力が作用せず、板バネ142による付勢力によってハブ120のフランジ120aに当接した状態となっている。
【0034】
また、緩衝手段150は、アーマチュア130においてディスク110と対向する面に突出して設けられた弾性変形部151を有する。弾性変形部151は、フェーシング部材112を形成する材質よりも小さい弾性率を有したゴムなどの弾性体からなり、フェーシング部材112と回転軸L方向に重ならない位置で略円環状に形成されている。そして、弾性変形部151は、電磁石141を励磁状態として非連結状態から連結状態に切り替えた場合において、アーマチュア130がディスク110のフェーシング部材112に圧接するよりも先に、ディスク110の本体部材111に当接可能に突出して設けられている。
【0035】
次に、この実施形態の作用について、図5及び図6に基づいて説明する。図5に示すように、切替手段140の電磁石141が無励磁の状態では、アーマチュア130は、板バネ142の付勢によりハブ120に当接した状態にあり、すなわち、ディスク110と離間して非連結状態となっている。このため、第一のシャフト101及びディスク110の回転は、アーマチュア130、ハブ120、及び、第二のシャフト102に伝達されない。
【0036】
一方、第一のシャフト101の回転を第二のシャフト102に伝達させるには、切替手段140において、電磁石141のコイル144に電流を流して励磁させる。これにより磁界が発生し、磁性体で形成されたアーマチュア130に電磁力が作用して、図6に示すように、アーマチュア130は、板バネ142に抗してヨーク143側に吸引されて、ディスク110のフェーシング部材112に圧接して連結状態となる。このため、第一のシャフト101の回転は、ディスク110からアーマチュア130、ハブ120を介して第二のシャフト102に伝達され、第二のシャフト102は回転軸L回りに回転することとなる。
【0037】
ここで、切替手段140によって非連結状態から連結状態に切り替える際に、アーマチュア30とディスク110のフェーシング部材112とが圧接するよりも先に、緩衝手段150の弾性変形部151がディスク110の本体部材111に当接し、弾性的に収縮することとなる。このため、アーマチュア130とディスク11のフェーシング部材112とが圧接する際に発生する衝突エネルギーの少なくとも一部は、弾性変形部151に吸収されることとなり、これにより衝撃騒音を低減することができる。そして、弾性変形部151を構成する弾性体がフェーシング部材112の材質よりも小さい弾性率を有していることから、より柔軟に弾性変形して、より効果的に衝撃騒音を低減させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、アーマチュア130とディスク110との間に緩衝手段150を設けるものとしたが、アーマチュア130とハブ120との間に設けて、連結状態から非連結状態になる際にアーマチュア130とハブ120とが当接する際に発生する衝突エネルギーを吸収するものとしても良い。また、本実施形態では、電磁連結装置の一例として、励磁作動型の電磁クラッチを例に挙げたが、無励磁作動型の電磁クラッチにも適用可能である。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0040】
なお、上記各実施形態では、アーマチュアやプレートは、一枚の板状の部材であるものとしたが、複数の薄い板を積層した構造とするものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の第1の実施形態の電磁ブレーキの連結状態における断面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の電磁ブレーキの非連結状態における断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の第1の変形例の電磁ブレーキの非連結状態における断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の第2の変形例の電磁ブレーキの連結状態における断面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態の電磁クラッチの非連結状態における断面図である。
【図6】この発明の第2の実施形態の電磁クラッチの連結状態における断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1、60、70 電磁ブレーキ(電磁連結装置)
10 ディスク(被連結部)
30 アーマチュア(連結部)
40 切替手段
50、61、71 緩衝手段
51、62 第一の弾性変形部(弾性変形部)
52、63 第二の弾性変形部(弾性変形部)
72 弾性変形部
72b バネ部材(弾性体)
100 電磁クラッチ(電磁連結装置)
110 ディスク(被連結部)
130 アーマチュア(連結部)
140 切替手段
150 緩衝手段
151 弾性変形部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に相対的に進退可能に設けられた連結部及び被連結部と、
電磁力を作用させることによって前記連結部と前記被連結部とを、互いに圧接した連結状態と、互いに離間した非連結状態とに切り替える切替手段と、
前記連結状態または前記非連結状態と対応して、前記連結部が前記被連結部若しくは該被連結部と異なる他の部材に当接することで発生する衝突エネルギーの少なくとも一部を吸収する緩衝手段とを備えることを特徴とする電磁連結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁連結装置において、
前記緩衝手段は、前記連結部、または、前記被連結部若しくは前記他の部材の少なくとも一方に設けられ、前記連結部が前記被連結部若しくは前記他の部材に当接するよりも先に他方に当接して弾性的に収縮する弾性変形部を有することを特徴とする電磁連結装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁連結装置において、
前記被連結部が、前記連結部と対向して設けられた本体部材と、該本体部材の前記連結部と面する側に該連結部と圧接可能に突出して設けられたフェーシング部材とを有するとともに、
前記弾性変形部は、前記フェーシング部材を形成する材質よりも小さい弾性率の弾性体を有することを特徴とする電磁連結装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−14139(P2010−14139A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172256(P2008−172256)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】