説明

非接触給電装置及び非接触給電システム

【課題】異常を好適に検知することができる非接触給電装置及びその非接触給電装置を用いた非接触給電システムを提供すること。
【解決手段】非接触給電装置10は、高周波電力を出力可能な電源主回路12を有する高周波電源11と、1次側コイル13aを有する送電回路13と、電源主回路12と送電回路13とを電気的に接続する配線14と、を備えている。2次側コイル21aを有する車載側機器20が充電可能な位置に配置されている状況において高周波電力が出力されると、送電回路13と受電回路21とが磁場共鳴し、両者の間で電力伝送が行われる。ここで、電源主回路12から出力される出力電圧及び出力電流と、これら出力電圧と出力電流との位相差とを検知する検知ユニット16が設けられており、この検知ユニット16の検知結果に基づいて、非接触給電装置10に異常があるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置及び非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給電対象機器に対して非接触で電力を伝送可能な非接触給電装置として、例えば特許文献1及び非特許文献1に記載されたものが知られている。この非接触給電装置は、高周波電源と、1次側コイル及び1次側コンデンサからなる送電側共振回路とを備えている。この場合、上記送電側共振回路(1次側コイル)と同一の共振周波数の受電側共振回路(2次側コイル)が所定の距離に配置されている状況において、高周波電源から高周波電力が送電側共振回路に入力されると、磁場共鳴によってその高周波電力の一部が受電側共振回路に伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開特許WO/2007/008646 A2
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】NIKKEI ELECTRONICS 2007.12.3 117頁〜128頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、何らかの要因により非接触給電装置にて異常が発生すると、伝送効率の低下が懸念される。このため、非接触給電装置においては、異常を好適に検知することが要求される。なお、この要求は、電磁誘導によって非接触で給電を行うものについても同様である。
【0006】
本発明の目的は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、異常を好適に検知することができる非接触給電装置を提供すること、及びその非接触給電装置を用いた非接触給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、交流電力を出力可能な交流電力出力部と、1次側コイルを有する送電部と、前記交流電力出力部と前記送電部とを電気的に接続する配線と、を備え、前記1次側コイルに対して前記交流電力を出力することによって2次側コイルに対して非接触で電力を伝送することが可能な非接触給電装置において、前記交流電力出力部から出力される出力電圧と出力電流との比率、又は前記出力電圧と前記出力電流との位相差を検知する検知手段と、前記検知手段により検知された前記比率又は前記位相差に基づいて、異常が発生しているか否かの判定を行う判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
かかる発明によれば、交流電力出力部、送電部及び配線を含む交流電力伝送系における抵抗やインダクタンスの変化が、出力電圧と出力電流との比率、又は出力電圧と出力電流との位相差として検知される。そして、検知手段の検知結果に基づいて異常が発生しているか否かを判定することにより、1次側コイルの変形といった送電部の異常、配線の異常又は交流電力出力部の異常等といった交流電力伝送系の異常を検知することができる。特に、出力電圧及び出力電流は比較的容易に検知することができるため、比較的簡素な構成で、非接触給電装置の異常検知を実現することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記1次側コイル及び前記配線は、複数本の導電性ワイヤを束ねたもので構成されており、前記判定手段は、前記検知手段により検知された前記比率又は前記位相差に基づいて、前記1次側コイル及び前記配線の少なくとも一方に部分断線が発生しているか否か、又は前記1次側コイルが変形しているか否かを判定することを特徴とする。かかる発明によれば、1次側コイル及び配線を、複数本の導電性ワイヤで形成することによって、交流電力を用いる場合に生じ得る表皮効果によるエネルギ損失を抑制することができる。この場合、1次側コイル及び配線において複数本の導電性ワイヤのうち一部が断線する部分断線が発生したり、1次側コイルの変形が発生したりする場合がある。特に、1次側コイルと2次側コイルとの距離が変動すると、当該変動に伴って伝送効率が低下し、交流電力が1次側コイル及び配線において熱に変換される。この熱は、上記のような部分断線等の原因となり易い。
【0010】
これに対して、上記発明によれば、異常か否かの判定基準として、出力電圧と出力電流との比率又は出力電圧と出力電流との位相差を採用することにより、部分断線に基づく抵抗変化や1次側コイルの変形に基づくインダクタンスの変化を検知することができる。よって、部分断線や1次側コイルの変形といった異常を好適に検知することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記2次側コイルが前記1次側コイルの給電可能な位置に配置されていない場合に異常判定用の交流電力が出力されるよう前記交流電力出力部を制御する制御手段を備え、前記判定手段は、前記異常判定用の交流電力が出力された場合の前記検知手段の検知結果に基づいて、前記判定を行うものであることを特徴とする。かかる発明によれば、給電が開始される前段階にて、非接触給電装置に異常があるか否かを判定することができる。よって、比較的早期の段階で非接触給電装置の異常を把握することができ、故障修理・交換等の対応を早期に実行することができる。
【0012】
また、2次側コイルが1次側コイルの給電可能な位置に配置されていない場合、1次側コイルと2次側コイルとの相互作用による影響が小さい。このため、異常判定において上記相互作用の影響を考慮する必要がないとともに、2次側コイル側の異常を考慮する必要がない。よって、異常判定の精度の向上を図ることができるとともに、異常判定において異常と判定した場合には、非接触給電装置の異常であると特定することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の非接触給電装置を用いた非接触給電システムであって、当該非接触給電装置を用いて車両に設けられた前記2次側コイルに対して前記交流電力を伝送するとともに、前記2次側コイルにて受電した交流電力を用いて、前記車両に設けられた車両用バッテリを充電することを特徴とする。ここで、車両用バッテリは携帯電話のバッテリと比較して、大きな容量が求められる。このため、車両用バッテリを充電するための非接触給電システムに用いられる車両用の非接触給電装置においては、比較的大きな電力を扱うことが想定される。また、車両の駐車位置に応じて、車両と車両用の非接触給電装置との相対位置が変動するため、1次側コイルと2次側コイルとの距離が変動し易い。このため、1次側コイル及び配線等において、エネルギ損失に伴う熱が発生し易い。さらに、車両用の非接触給電装置の1次側コイルや配線においては、人や、それよりも重い車両が乗ることが想定される。このため、1次側コイル及び配線には、比較的大きな荷重が掛かり易い。以上のことから、車両用の非接触給電装置においては、部分断線や1次側コイルの変形等の異常が発生する場合がある。
【0014】
これに対して、本発明によれば、車両用の非接触給電装置において部分断線や1次側コイルの変形等の異常を、早期の段階で検知することができる。よって、その車両用の非接触給電装置を用いて車両用バッテリを充電することを通じて、好適に異常を検知することができる車両用の非接触給電システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、異常を好適に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る非接触給電装置を用いた非接触給電システムの電気的構成を示すブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図1を用いて説明する。
図1に示すように、非接触で電力伝送(充電)を行う非接触給電システムSは、地上に設けられた非接触給電装置10と車両に搭載された車載側機器20とで構成されている。
【0018】
非接触給電装置10は車載側機器20に対して非接触で電力供給可能に構成されている。詳細には、非接触給電装置10は、商用電源等の外部電源に接続された高周波電源11(交流電源)を備えている。高周波電源11には電源主回路12(交流電力出力部)が設けられている。電源主回路12は、外部電源から入力される電力を所定の周波数の高周波電力に変換し、その変換された高周波電力(交流電力)を出力可能に構成されている。
【0019】
非接触給電装置10は、車載側機器20に対して非接触で電力を伝送するための送電回路13(送電部)を備えている。送電回路13は、複数本の導電性ワイヤ(例えば銅線)を束ねてなる所謂リッツ線を用いて形成された配線14を介して、電源主回路12と電気的に接続されている。送電回路13は、複数本の導電性ワイヤを束ねてなる所謂リッツ線を用いて形成された1次側コイル13aと、1次側コイル13aと並列に接続された1次側コンデンサ13bとから構成されており、高周波電力が入力された場合に共振する。
【0020】
車載側機器20は受電回路21(受電部)を備えている。受電回路21は送電回路13と磁場共鳴可能に構成されている。詳細には、受電回路21は、送電回路13と同様に、互いに並列接続された2次側コイル21a及び2次側コンデンサ21bで構成されている。受電回路21の共振周波数と送電回路13の共振周波数とは同一に設定されている。このため、送電回路13に高周波電力が入力されると、送電回路13と受電回路21とで磁場共鳴して、送電回路13(1次側コイル13a)から受電回路21(2次側コイル21a)への電力伝送が行われる。
【0021】
また、車載側機器20は、整流器22及び車両用バッテリ23を備えている。整流器22は、受電回路21にて受電した高周波電力を直流電力に整流する。車両用バッテリ23は整流器22に電気的に接続されている。整流器22によって整流された直流電力は車両用バッテリ23に入力される。これにより、車両用バッテリ23の充電が行われる。
【0022】
非接触給電装置10は、電源主回路12の制御を行う制御手段としての電源側コントローラ15を備えている。また、車載側機器20は、車両用バッテリ23の充電制御を行う車両側コントローラ24を備えている。車両側コントローラ24は、車両用バッテリ23の蓄電状況を把握可能に構成されている。各コントローラ15,24は無線通信可能に構成されており、両者の間で情報のやり取りが可能となっている。
【0023】
車両側コントローラ24は、車両が充電(給電)可能な位置、詳細には送電回路13(1次側コイル13a)と受電回路21(2次側コイル21a)とが磁場共鳴可能な位置に配置された場合に、電源側コントローラ15に対して充電可能信号を送信する。電源側コントローラ15は、その充電可能信号を受信した場合に、電源主回路12から高周波電力が出力されるよう制御する。すなわち、電源側コントローラ15は、車両側コントローラ24と信号のやり取りを行うことによって、送電回路13と受電回路21とが電力伝送可能な位置にあるか否か、換言すれば車両が存在するのか否かを判定し、その判定結果に基づいて電源主回路12の制御を行う。
【0024】
そして、車両用バッテリ23の充電が完了(終了)した場合には、車両側コントローラ24は電源側コントローラ15に充電完了信号(充電終了信号)を送信する。電源側コントローラ15は、充電完了信号を受信したことに基づいて、高周波電力の出力を停止するよう電源主回路12を制御する。
【0025】
ここで、非接触給電装置10の1次側コイル13a等に異常が発生している場合、車両用バッテリ23への充電効率が低下する。すると、充電に要する時間が長くなったり、無駄な電力消費が発生したりする。
【0026】
これに対して、非接触給電装置10は、異常を定期的に検知するための構成を備えている。当該構成について以下に説明する。
非接触給電装置10は検知ユニット16を備えている。検知ユニット16は、電源主回路12から出力される出力電圧(送電回路13に付与される電圧)、電源主回路12から出力される出力電流(送電回路13を流れる電流)、及びこれら出力電圧と出力電流との位相差を検知する。そして、検知ユニット16は、その検知結果を電源側コントローラ15に対して出力する。
【0027】
電源側コントローラ15は、検知ユニット16の検知結果に基づいて、送電回路13又は配線14に異常が発生しているか否かを定期的に判定する。具体的には、まず、電源側コントローラ15は、予め定められた周期で車両側コントローラ24と通信可能か否かを判定する。
【0028】
ちなみに、各コントローラ15,24間で通信可能な最大距離は予め定められている。当該最大距離は、車両が充電可能な位置に配置されている場合、詳細には各コイル13a,21aが磁場共鳴可能な位置に配置されている場合の各コントローラ15,24間の距離よりも大きい距離である。このため、車両側コントローラ24と通信可能か否かの判定は、車両が充電可能な位置にあるか否か、詳細には2次側コイル21a(受電回路21)が1次側コイル13a(送電回路13)の給電可能な位置にあるか否かの判定であるとも言える。
【0029】
通信不能であると判定した場合、車両が充電可能な位置に存在しないことを意味する。この場合、電源側コントローラ15は、充電を行う場合の高周波電力よりも小さい異常判定用の高周波電力が所定期間に亘って出力されるよう電源主回路12を制御する。そして、検知ユニット16は、異常判定用の高周波電力が出力されている場合の出力電圧、出力電流及びこれらの位相差を検知し、その検知結果を電源側コントローラ15に出力する。
【0030】
なお、異常判定用の高周波電力は充電に係る高周波電力と周波数が同一であれば、その大きさは任意であり、例えば充電に係る高周波電力と同一の大きさでもよい。
電源側コントローラ15は、上記検知結果に基づいて、異常が発生しているか否かを判定する。詳細には、電源側コントローラ15は、出力電圧に対する出力電流の比率を算出し、算出された比率が、「0」ではなく、且つ、予め定められた閾値よりも小さいか否かを判定する。この閾値は、送電回路13及び配線14に異常がなく(初期状態)、且つ送電回路13の周囲に当該送電回路13と磁気的に結合するもの(例えば金属)が存在しない状態で異常判定用の高周波電力を出力した場合の出力電圧に対する出力電流の比率よりも、予め定められた分だけ低い比率である。つまり、閾値は、正常動作とみなす範囲の下限値である。
【0031】
そして、電源側コントローラ15は、算出された比率が「0」ではなく且つ閾値よりも小さい場合には、電源側コントローラ15に接続された報知装置17を用いて、異常である旨の報知を行う。報知装置17は、例えば発光部で構成されており、発光部が発光することで異常を知らせる。但し、報知装置17は、異常である旨の報知ができれば、その具体的な報知態様は任意であり、例えば音を発生させる構成や、文字等を表示する表示装置を用いて異常である旨の表示を行う構成としてもよい。
【0032】
また、電源側コントローラ15は、出力電圧と出力電流との位相差が予め定められた特定範囲内にあるか否かを判定する。そして、電源側コントローラ15は、検知された位相差が特定範囲外にあると判定した場合には、報知装置17を用いて、異常である旨の報知を行う。特定範囲は、送電回路13及び配線14に異常がなく、且つ送電回路13の周囲に当該送電回路13と磁気的に結合するものが存在しない状態で異常判定用の高周波電力を出力した場合の位相差を含むものである。
【0033】
なお、検知ユニット16において出力電圧及び出力電流を検知する機能、及び電源側コントローラ15にて上記比率を算出する機能が、検知手段における交流電力出力部から出力される出力電圧と出力電流との比率を検知する機能に対応する。
【0034】
次に、本実施形態における非接触給電装置10の作用について説明する。
1次側コイル13a又は配線14等に部分断線が発生した場合、その部分断線の箇所の抵抗が大きくなることが想定される。また、1次側コイル13aが変形した場合、その変形形態によっては1次側コイル13aの抵抗が大きくなる場合がある。このため、上記部分断線や1次側コイル13aの変形が発生した場合には、高周波電源11から見た抵抗(負荷)が大きくなり易い。抵抗が大きくなると、出力電圧に対する出力電流の比率が小さくなる。このため、上記比率と閾値との比較判定は、1次側コイル13a若しくは配線14等に部分断線が発生しているか否か、又は1次側コイル13aが変形しているか否かの異常判定を意味する。
【0035】
ちなみに、部分断線とは、電気的接続がなされているものの、一部については断線していることにより、その部分の抵抗が高くなる状態を言う。具体的には、複数本の導電性ワイヤを束ねてなる配線14及び1次側コイル13aにおいて、複数本の導電性ワイヤのうち一部のワイヤが断線している状態を言う。
【0036】
ここで、算出した比率が「0」である場合、部分断線ではなく完全断線、すなわち電気的接続がなされていない蓋然性が高い。このため、上記比率を用いた異常判定においては、算出した比率が「0」でないことを条件とすることにより、完全断線と部分断線とを区別して検知している。
【0037】
また、1次側コイル13aが変形した場合には、1次側コイル13aのインダクタンスが変化することが想定される。このインダクタンスが変化すると、出力電圧と出力電流との位相差が変化する。このため、上記位相差が特定範囲内にあるか否かの判定は、1次側コイル13aが変形しているか否かの異常判定を意味する。
【0038】
ここで、電源側コントローラ15は、車両が充電可能な位置にいない場合に上記異常判定を行うよう構成されている。これにより、車両の充電を開始する前段階にて、非接触給電装置10の異常判定を行うことを通じて、非接触給電装置10に異常がある状態で充電が開始されないようになっている。
【0039】
また、車両が充電可能な位置にいない場合とは、車載側機器20と非接触給電装置10との間で電力伝送を行うことができない程度まで両者が離間している場合、より詳細には、1次側コイル13aと2次側コイル21aとの磁場共鳴がほとんど行われない距離だけ両者が離間している場合を意味する。このため、1次側コイル13aと2次側コイル21aとの間の距離の変動等によるインダクタンスの変化や抵抗の変化といった1次側(非接触給電装置10)と2次側(車載側機器20)との相互作用に起因する要因を考慮する必要がない。
【0040】
なお、部分断線によって抵抗は変化する一方、インダクタンスは変化しにくい。このため、出力電圧に対する出力電流の比率が閾値よりも低い状況において、位相差が特定範囲内である場合には、1次側コイル13aの変形よりも部分断線である蓋然性が高い。一方、出力電圧に対する出力電流の比率が閾値よりも高い状況において、位相差が特定範囲外である場合には、部分断線よりも1次側コイル13aの変形である蓋然性が高い。すなわち、上記比率に基づく異常判定結果と、位相差に基づく異常判定結果とを組み合わせることにより、ある程度の異常原因の絞り込みを行うことができる。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)電源主回路12と送電回路13とを配線14を介して電気的に接続した構成において、電源主回路12から出力される出力電圧、電源主回路12から出力される出力電流、及びこれら出力電圧と出力電流との位相差を検知する検知ユニット16を設けた。そして、検知ユニット16の検知結果に基づいて、送電回路13及び配線14の少なくとも一方に異常が発生しているか否かの異常判定を行う構成とした。これにより、送電回路13及び配線14における抵抗やインダクタンスの変化を、出力電圧と出力電流との比率、又は出力電圧と出力電流との位相差として検知することができる。そして、その検知結果に基づいて異常判定を行うことにより、1次側コイル13aの変形といった送電回路13の異常や、配線14の異常といった非接触給電装置10の異常を好適に検知することができる。特に、出力電圧、出力電流、及び位相差を検知する検知ユニット16は、インピーダンスを検知するものよりも簡素である。よって、比較的簡素な構成で、非接触給電装置10の異常を好適に検知することができる。
【0042】
(2)磁場共鳴による非接触給電を行う特性上、1次側コイル13a及び配線14には高周波電力を供給する必要があるため、表皮効果によるエネルギ損失の増大化が懸念される。これに対して、本実施形態によれば、配線14及び1次側コイル13aを、複数本の導電性ワイヤを束ねて形成することにより、表面積の向上を図り、エネルギ損失の増大化を抑制することができる。この場合、1次側コイル13a又は配線14において複数本の導電性ワイヤのうち一部が断線する部分断線が発生したり、1次側コイル13aの変形が発生したりする場合がある。特に、車両用バッテリ23を充電する非接触給電システムSに用いられる車両用の非接触給電装置10は、携帯電話の給電装置等と比較して、大きな電力を取り扱う。また、1次側コイル13aと2次側コイル21aとの距離が変動し易く、その距離の変動に伴い伝送効率が低下し易い。この場合、電源主回路12からの高周波電力が1次側コイル13a及び配線14において熱に変換され易い。さらに、車両用の非接触給電装置10の1次側コイル13aや配線14においては、人や、それよりも重い車両が乗ることが想定される。このため、1次側コイル13a及び配線14には、比較的大きな荷重が掛かり易い。以上のことから、車両用の非接触給電装置10においては、熱や荷重によって部分断線や1次側コイル13aの変形が発生し易い。
【0043】
これに対して、本実施形態によれば、車両用の非接触給電装置10において特に問題となり易い部分断線及び1次側コイル13aの変形を、早期の段階で検知することができる。よって、好適な異常検知を行うことができる車両用の非接触給電装置10を提供することができ、当該非接触給電装置10を用いて車両用バッテリ23を充電することにより、好適な異常検知を行うことができる非接触給電システムS(非接触充電装置)を提供することができる。
【0044】
(3)車両が充電可能な位置にいない場合、詳細には2次側コイル21aが1次側コイル13aの給電可能な位置に配置されていない場合に異常判定を行う構成とした。これにより、充電が開始される前段階にて、非接触給電装置10に異常があるか否かを判定することができる。よって、比較的早期の段階で非接触給電装置10の異常を把握することができ、故障修理・交換等の対応を早期に実行することができる。
【0045】
また、2次側コイル21aが1次側コイル13aの給電可能な位置に配置されていない場合、1次側コイル13aと2次側コイル21aとの相互作用を無視することができる。このため、異常判定において上記相互作用を考慮する必要がないとともに、車載側機器20内の異常を考慮する必要がない。よって、異常判定の精度の向上を図ることができるとともに、異常判定において異常と判定した場合には、非接触給電装置10の異常であると特定することができる。
【0046】
(4)さらに、上記異常判定は、ユーザの操作を要することなく、車両がいない場合に定期的に実行される。これにより、簡易且つ早期に異常を検知することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0047】
○ 実施形態では、磁場共鳴型の非接触給電について説明したが、これに限られず、例えば電磁誘導型の非接触給電に対して本発明を適用してもよい。
○ 実施形態では、電源主回路12と送電回路13とを配線14を用いて接続したが、これに限られず、例えば配線14を用いて電源主回路12と結合用コイルとを接続し、その結合用コイルと送電回路13とを、電磁誘導で結合する構成としてもよい。この場合、異常判定を行うことによって、配線14、結合用コイル又は送電回路13の異常を検知することができる。なお、上記構成では、結合用コイル及び送電回路13が送電部に対応する。
【0048】
○ 実施形態では、1次側コンデンサ13b及び2次側コンデンサ21bを設けたが、これらを省略してもよい。この場合、1次側コイル13a及び2次側コイル21aの寄生容量で磁場共鳴を行う構成とするとよい。
【0049】
○ また、磁場共鳴の共鳴周波数は適宜設定すればよく、それ合わせて高周波電源11から出力される高周波電力の周波数を設定すればよい。つまり、高周波電力に限られず、所定の周波数(例えば10kHz〜10MHz)の交流電力であればよい。
【0050】
○ 実施形態では、電源側コントローラ15は、車両側コントローラ24と通信可能か否かに基づいて、2次側コイル21aが1次側コイル13aの給電可能な位置に配置されているのか否かを判定していたが、当該判定を行う構成はこれに限られない。例えば、非接触給電装置10に、車両が充電可能な位置にあるのか否かを検知するためのイメージセンサ等の各種センサを別途設け、そのセンサの検知結果に基づいて、上記判定を行う構成としてもよい。この場合、通信可能な距離内にあるにも関わらず、各コントローラ15,24間で通信ができない場合であっても、非接触給電装置10が車両の存在を把握することができる。
【0051】
○ 実施形態では、出力電圧に対する出力電流の比率を用いた異常判定と、位相差を用いた異常判定とを行う構成としたが、これに限られず、いずれか一方の異常判定のみを行う構成としてもよい。但し、異常の原因を絞り込める点に着目すれば、両方の異常判定を行う方がよい。
【0052】
○ 実施形態では、検知ユニット16は、出力電圧及び出力電流を検知するとともに、これらの位相差を検知する構成としたが、位相差を検知することなく、出力電圧及び出力電流(又はその比率)の大きさのみを検知する構成としてもよい。
【0053】
○ 実施形態では、電源側コントローラ15が、出力電圧に対する出力電流の比率を算出する構成であったが、これに限られず、例えば検知ユニット16において上記比率を算出し、その算出結果を電源側コントローラ15に対して出力する構成としてもよい。要は、上記比率が検知(把握)できれば、その具体的な構成は任意である。
【0054】
○ 実施形態では、報知装置17を用いて異常である旨の報知を行う構成としたが、これに限られず、例えば車両側にて報知させる構成としてもよい。この場合、電源側コントローラ15は、車両側コントローラ24と通信可能状態となった場合に、その車両側コントローラ24に対して異常である旨の信号を送信する。車両側コントローラ24は、その信号を受信した場合に、所定の報知装置を用いて異常である旨の報知を行う。この所定の報知装置としては、別途新たに設けてもよいし、既存の装置、例えばカーナビゲーション装置の表示画面等に表示させる構成としてもよい。
【0055】
○ 実施形態では、1次側コイル13aは、複数本の導電性ワイヤを束ねてなるリッツ線で構成されていが、これに限られず、例えば1の導電性ワイヤで構成してもよい。この場合、1の導電性ワイヤの一部が欠けた場合、その欠けた部分の抵抗が大きくなることが想定される。但し、表皮効果によるエネルギ損失の増大化を抑制する観点に着目すれば、リッツ線で構成する方が好ましい。
【0056】
○ 実施形態では、出力電圧と出力電流との位相差が特定範囲から外れることに基づいて、1次側コイル13aの変形と判定したが、これに限られず、1次側コンデンサ13bの異常と判定してもよい。
【0057】
○ 実施形態では、検知ユニット16の検知結果に基づいて、配線14及び送電回路13の異常を判定する構成としたが、これに限られず、上記検知結果に基づいて電源主回路12の異常を判定する構成としてもよい。
【0058】
○ 実施形態では、閾値及び特定範囲は予め定められた固定値となっていたが、これに限られず、例えば経年劣化や外気の温度等に応じて、閾値及び特定範囲を変更してもよい。これにより、上記要因によって、車両が充電可能な位置に配置されていない状況において異常判定用の高周波電力を出力した場合の出力電圧及び出力電流が変動する場合であっても、その変動に好適に対応することができる。
【0059】
○ 実施形態では、車載側機器20に車両用バッテリ23が設けられ、電源主回路12から非接触で伝送された電力は、車両用バッテリ23を充電するのに用いられたが、これに限られず、例えば車両側コントローラ24等の他の電子機器を動作させるのに用いてもよい。
【0060】
○ 実施形態では、非接触で電力伝送を行うのに用いられる2次側コイル21aを有する受電回路21は車両に搭載されていたが、これに限られず、例えば携帯電話等に搭載する構成でもよい。要は、電力伝送の対象となる機器は任意である。
【0061】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術思想について以下に記載する。
(イ)前記判定手段は、前記出力電圧に対する前記出力電流の比率が0でなく、且つ予め定められた閾値よりも低い場合に、前記1次側コイル及び前記配線の少なくとも一方に部分断線が発生している、又は前記1次側コイルが変形していると判定することを特徴とする請求項2に記載の非接触給電装置。
【0062】
(ロ)前記判定手段は、前記位相差が予め定められた特定範囲から外れた場合に、前記1次側コイルが変形していると判定するものである請求項1〜3及び技術思想(イ)のうちいずれか1に記載の非接触給電装置。
【符号の説明】
【0063】
10…非接触給電装置、11…高周波電源、12…電源主回路、13…送電回路、13a…1次側コイル、13b…1次側コンデンサ、14…配線、15…電源側コントローラ、16…検知ユニット、17…報知装置、20…車載側機器、21…受電回路、21a…2次側コイル、23…車両用バッテリ、24…車両側コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を出力可能な交流電力出力部と、
1次側コイルを有する送電部と、
前記交流電力出力部と前記送電部とを電気的に接続する配線と、
を備え、
前記1次側コイルに対して前記交流電力を出力することによって2次側コイルに対して非接触で電力を伝送することが可能な非接触給電装置において、
前記交流電力出力部から出力される出力電圧と出力電流との比率、又は前記出力電圧と前記出力電流との位相差を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記比率又は前記位相差に基づいて、異常が発生しているか否かの判定を行う判定手段と、
を備えていることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
前記1次側コイル及び前記配線は、複数本の導電性ワイヤを束ねたもので構成されており、
前記判定手段は、前記検知手段により検知された前記比率又は前記位相差に基づいて、前記1次側コイル及び前記配線の少なくとも一方に部分断線が発生しているか否か、又は前記1次側コイルが変形しているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記2次側コイルが前記1次側コイルの給電可能な位置に配置されていない場合に異常判定用の交流電力が出力されるよう前記交流電力出力部を制御する制御手段を備え、
前記判定手段は、前記異常判定用の交流電力が出力された場合の前記検知手段の検知結果に基づいて、前記判定を行うものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の非接触給電装置を用いて、車両に設けられた前記2次側コイルに対して前記交流電力を伝送するとともに、前記2次側コイルにて受電した交流電力を用いて、前記車両に設けられた車両用バッテリを充電することを特徴とする非接触給電システム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−115833(P2013−115833A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256734(P2011−256734)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】