説明

非水系二次電池

【課題】速い応答性で熱膨張することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを介在させることにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも、セパレータの絶縁性が消失するのを抑止し、爆発、発火等を引き起こす事態を回避できる非水系二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】非水系二次電池を構成する電極群4の少なくともセパレータ9あるいは正極板5または負極板7とセパレータ9との界面に熱膨張性マイクロカプセルを含有させたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池に関し、特に安全性を高めた非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウム二次電池は、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量の二次電池を実現しているが、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、さらなる高容量化が望まれている。これらのリチウム二次電池において、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板とが内部短絡することによる急激な温度上昇を抑止することが極めて重要である。
従来、この対策として一般的には、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のようなオレフィン系ポリマーを用いてセパレータを構成し、これを正極板と負極板との間に介在させることで、二次電池内に過大な電流が流れることで発生する発熱によりセパレータの微多孔を閉鎖する(シャットダウン機能)ことで安全性を確保している。しかしながら、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の融点が120〜170℃のポリマーをセパレータに用いた場合、シャットダウン後も温度上昇が続いてしまうと、セパレータ自体が溶融してしまい、電流遮断機能が消失してしまうという課題がある。
前記課題に対し、電池反応を化学的に抑制する手段として、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の無水塩を耐電解液性のマイクロカプセル内に封入して、電池内に収納することで、金属表面の活性を低下させ発火に対する消火力を持たせることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
次に、別の化学的抑制手段として、水酸基を有する化学物質または重合開始剤である化学物質を放出するマイクロカプセルを電解液あるいはセパレータ内に分散することで、温度上昇時に電解液を固化することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、別の化学的抑制手段として、過充電,過放電,温度上昇のいずれかにより硬化する熱変性高分子または電解重合性モノマーをマイクロカプセルに封入して電解液に添加することで、温度上昇時に電解液を硬化することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
さらに、別の化学的抑制手段として、図5に示すように、正極集電体31に形成した正極活物質層32の表面、または負極集電体34に形成した負極活物質層35の表面の少なくとも一方の面に、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂36と、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂を溶解する溶媒Aと、熱可塑性又は熱硬化性の樹脂を溶解しない溶媒Bと、難燃剤,消炎剤を内包した多孔質マイクロカプセル37とを含む溶液を塗布し乾燥させて多孔質膜を形成したものをセパレータ33として用いることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
一方、異常時に電流遮断する手段として、図6に示すように、熱敏感性抵抗体(図示せず)に120〜170℃の範囲に融点を持つ熱可塑性樹脂の隔壁で形成した中空バルーン表面にニッケルもしくは銅を被覆した導電性マイクロビーズにより構成される熱敏感性抵抗体層43を正極集電体41の表面に成形後、正極活物質層44を成形し、また負極集電体42の表面に熱敏感性抵抗体層43を成形後、負極活物質層45を形成し、それらの間にセパレータ46を介して渦巻状に巻回することで、温度上昇時に抵抗値を増大させることが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
また、別の電流遮断する手段として、図7に示すように、正極活物質(図示せず)からなる正極合剤層56を正極集電体57とセパレータ55と挟み、また負極活物質51からなる負極合剤層52中または負極合剤層52と負極集電体53との界面に熱膨張性マイクロカプセル34を含有させた負極合剤層52を負極集電体53とセパレータ55との間に挟むことで、温度上昇時の急激な抵抗増大により電流を遮断することが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開昭63−86355号公報
【特許文献2】特開平6−283206号公報
【特許文献3】特開平9−45369号公報
【特許文献4】特開2004−119132号公報
【特許文献5】特開平10−50294号公報
【特許文献6】特開2001−332245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電池反応を化学的に抑制したり、異常時に電流遮断する上述した従来技術においては、内部短絡等による電池の温度上昇時に、速い応答速度で温度上昇に対応し電池反応の熱暴走を効果的に抑止することが困難であるという課題を有していた。
【0008】
さらに詳しくは、上述した特許文献1〜4における電池反応を化学的に抑制する従来技術では、内部短絡等による電池の温度上昇時に、マイクロカプセルの内包物質が効果的に放出されなかったり、または内包物質の放出が電池の温度上昇に追いつかなかったり、あるいは仮に内包物質が放出されても、これが作用して起きる電池反応抑制効果を急激に発揮させることも困難であるため、電池反応の熱暴走を効果的に抑止することは難しい。
【0009】
また、上述した特許文献5〜6における電池内での導電状態の阻害を物理的に行う従来技術では、充放電反応を繰り返すうちに電極板における活物質合剤と集電体との密着性を低下させたり、あるいは活物質合剤中の導電性を低下させる懸念があり、結果としてサイクル特性等の電池特性を劣化させてしまうことになる。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたもので、セパレータ、または電極板とセパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを介在させることにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも、このマイクロカプセルが発熱に対して速い応答性で熱膨張することが可能であり、セパレータの絶縁性が消失するのを抑止し、爆発、発火等を引き起こす事態を回避でき、安全性に優れた非水系二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために本発明の非水系二次電池は、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板と、少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板と、セパレータと、非水溶媒からなる電解液により構成される非水系二次電池であって、少なくともセパレータあるいは正極板または負極板とセパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを含有したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非水系二次電池によると、セパレータまたは電極板とセパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを介在させることにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起
こった場合でも、このマイクロカプセルが発熱に対して速い応答性で熱膨張することが可能となり、セパレータの絶縁性が消失するのを抑止し、爆発、発火等を引き起こす事態を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板と、少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板と、セパレータと、非水溶媒からなる電解液により構成される非水系二次電池であって、少なくともセパレータあるいは正極板または負極板とセパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを含有させることで、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも、このマイクロカプセルが発熱に対して速い応答性で熱膨張することが可能となり、セパレータの絶縁性が消失するのを抑止し、爆発、発火等を引き起こす事態を回避することが可能である。
【0014】
本発明の第2の発明においては、セパレータ中に熱膨張性マイクロカプセルを含有させる手段として、耐熱性有機繊維に熱膨張性マイクロカプセルを分散含有させて不織布としたことにより、セパレータ中のマイクロカプセルが発熱に対して、速い応答性で熱膨張するため発熱によるセパレータ自体の絶縁性が消失するのを抑止することが可能である。
【0015】
本発明の第3の発明においては、耐熱性有機繊維を全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエーテルアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾールの群より選ばれる、少なくとも一種類以上の樹脂により構成したことにより、耐熱性有機繊維に熱膨張性マイクロカプセルを分散含有させた不織布のセパレータ自体の耐熱性をさらに高めることができ、発熱によるセパレータ自体の絶縁性が消失するのを、より有効に抑止することが可能である。
【0016】
本発明の第4の発明においては、正極板または負極板とセパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを含有させる手段として、少なくとも熱膨張性マイクロカプセルとバインダーよりなる絶縁体層を正極板または負極板の表面に塗布形成することで、絶縁体層中のマイクロカプセルが発熱に対して速い応答性で熱膨張するため、発熱によるセパレータ自体の絶縁性が消失するのを抑止することが可能である。
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。例えば、図1に示されるように本発明の非水系二次電池では、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板5とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板7とをセパレータ9を介して渦巻状に巻回した電極群4を作製した後、この電極群4を有底円筒形の電池ケース1の内部に絶縁板15と共に収容し、電極群4の下部より導出した負極リード8を電池ケース1の底部に接続し、次いで電極群4の上部より導出した正極リード6を封口板2に接続し、電池ケース1に所定量の非水溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース1の開口部に封口ガスケット3を周縁に取り付けた封口板2を挿入し、電池ケース1の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口している。
【0018】
図2に示されるように本発明のセパレータ25では、対極する正極集電体21a上に形成した正極活物質層21bからなる正極板21と負極集電体22a上に形成した負極活物質層22bからなる負極板22との内部短絡を抑止するために、セパレータ25中に熱膨張性マイクロカプセル23を含有させた構成としてとしており、このセパレータ25は耐熱性有機繊維24と熱膨張性マイクロカプセル23および必要に応じて熱溶融性樹脂(図示せず)とを含む濃度0.01〜0.5重量%の希薄水性スラリーを調整し、このスラリ
ーを湿式抄造して得られたウエブを単独または積層して乾燥した後、加熱プレスすることで作製できる。
【0019】
また、図3および図4に示されるように、正極板21または負極板22とセパレータ25との界面に熱膨張性マイクロカプセル23を含有させる手段としては、図3に示したように、正極活物質層21bの表面に熱膨張性マイクロカプセル23を含有したバインダー26からなる絶縁体層27を形成するか、図4に示したように、負極活物質層22bの表面に熱膨張性マイクロカプセル23を含有したバインダー26からなる絶縁体層27を塗布形成することで作製できる。
【0020】
ここで上記熱膨張性マイクロカプセル23は、その内部に膨張剤を内包した熱可塑性樹脂からなる外殻より構成されるものである。この熱膨張性マイクロカプセル23は、何らかの理由により電池内部の温度上昇が起こり、その温度が外殻の軟化温度(以下、殻壁軟化点と称する)に達すると急激に熱膨張し、体積が数十倍に増大するものである。
【0021】
次に、上記正極板21、負極板22の作製方法について、具体的に説明する。まず、正極板21については特に限定されないが、アルミニウムやアルミニウム合金製の箔やラス加工もしくはエッチング処理された厚み5μm〜30μmの正極集電体21aの片面または両面に、正極活物質、導電材、結着材とを分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させた正極合剤塗料を塗布、乾燥、圧延して正極活物質層21bを形成することにより作製される。
【0022】
正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0023】
このときの導電材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独あるいは組み合わせて用いても良い。
【0024】
このときの正極用結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着剤等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着剤中に混入させることも可能である。
【0025】
一方、負極板22については特に限定されないが、圧延銅箔、電解銅箔、ラス加工もしくはエッチング処理された銅箔からなる厚み5μm〜25μmの負極集電体22aの片面または両面に、負極活物質,結着材、必要に応じて導電材、増粘剤とを分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させた負極合剤22bを塗布、乾燥、圧延して負極活物質層を形成することにより作製される。
【0026】
負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料および各種合金組成材料を用いることができる。
このときの負極用結着材としてはPVDFおよびその変性体をはじめ各種バインダーを用いることができるが、リチウムイオン受入れ性向上の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体等を用いることもできる。
増粘剤としては、ポリエチレンオキシド(PEO)やポリビニルアルコール(PVA)などの水溶液として粘性を有する材料であれば特に限定されないが、カルボキシメチルセル
ロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂およびその変性体が、合剤塗料の分散性,増粘性の観点から好ましい。
【0027】
さらに、電解液については、電解質塩としてLiPF6およびLIBF4などの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正負極板上に良好な皮膜を形成させたり、過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびその変性体を用いることも好ましい。
本発明の一実施例について図面および表を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0028】
まず、正極活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電剤としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0029】
次いで、図2に示したように、この塗料を15μm厚のアルミニウム箔の集電体21aに塗布し、乾燥後に片面合剤厚みが100μmとなる正極板21を作製した。さらに、この正極板21を総厚が165μmとなるようにプレスすることで、合剤片面厚みが75μmとなるように、アルミニウム箔の集電体21a上に正極活物質層21bを形成した後、図1に示した円筒型電池の規定されている幅にスリッタ加工し、正極板21を作製した。
【0030】
一方、負極活物質として人造黒鉛を100重量部、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着剤の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0031】
次いで、図2に示したように、この塗料を10μm厚の銅箔の集電体22aに塗布し、乾燥後に片面合剤厚みが110μmとなる負極板22を作製した。さらに、この負極板22を総厚が180μmとなるようにプレスすることで、合剤片面厚みが85μmとなるように、銅箔の集電体22a上に負極活物質層22bを形成した後、図1に示した円筒形のリチウム二次電池の規定されている幅にスリッタ加工し、負極板22を作製した。
【0032】
さらに、図2に示したように、耐熱性有機繊維24としてパルプ形状を有するパラ系全芳香族ポリアミド繊維を90重量、熱溶融性樹脂(図示せず)として高密度ポリエチレンパルプを9.5重量部、殻壁軟化点が135〜140℃の熱膨張性マイクロカプセル23を0.5重量の割合で混合し、濃度0.01〜0.5重量%の希薄水性スラリーを調整し、セパレータ合剤塗料を作製した。
【0033】
次いで、このセパレータ合剤塗料を湿式抄造して得られたウエブを、単独または積層して乾燥した後、殻壁軟化点に達しない温度にて加熱プレスすることで厚さ20μmに形成した後、図1に示した円筒形のリチウム二次電池の規定されている幅にスリッタ加工し、セパレータ25を作製した。
【0034】
これらの正極板21、負極板22およびセパレータ25を巻回構成し、所定の長さで切断して電池ケース内に挿入し、EC・DMC・MEC混合溶媒にLiPF6を1MとVCを3重量部溶解させた電解液を、添加して封口し、図1に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0035】
上記リチウム二次電池において、電池の異常発熱時には、まずポリエリレンの溶融温度でセパレータ25のシャットダウン機能が働き、次いでそれ以上の温度になると、セパレータ25中の熱膨張性マイクロカプセル23が殻壁軟化点にて急激に膨張し、かつセパレータ25中の耐熱性有機繊維24で構造保持しているため、正極板21と負極板22との間は絶縁状態に保持することが可能であり、発熱以降に電極板間が短絡するという熱暴走反応は抑止されることになる。また、上記耐熱性有機繊維24としては、温度上昇時の構造保持機能を高めるために、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエーテルアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾールの群より選ばれる、少なくとも一種類以上の樹脂により構成されることがさらに好ましい。
【実施例2】
【0036】
まず、実施例1と同様の正極合剤塗料を用い、実施例1と同様の方法により、アルミニウム箔の集電体21a上に正極活物質層21bを形成し正極板21を作製した。
【0037】
次いで、図3に示したように、絶縁体層27として、平均粒径1.0μmのシリカ粉末(図示せず)を100重量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)26をシリカ粉末100重量部に対し10重量部、殻壁軟化点が135〜140℃の熱膨張性マイクロカプセル23をシリカ粉末100重量部に対し1重量部を適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで絶縁体層合剤塗料を作製した。さらに、この絶縁体層合剤塗料をプレスまで行った正極板21の表面に塗布乾燥することで、正極板21の表面に厚さ6μmの絶縁体層27を形成した。
【0038】
一方、実施例1と同様の負極合剤塗料を用い、実施例1と同様の方法により銅箔の集電体22a上に負極活物質層22bを形成し負極板22を作製した。ここで、セパレータ28としては、厚さ15μmのポリエチレン(PE)多孔質フィルムを用いた。これらの絶縁体層27を形成した正極板21、負極板22およびセパレータ28を巻回構成し、実施例1と同様にして、図1に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0039】
上記リチウム二次電池において、電池の異常発熱時には、まずポリエリレンの溶融温度でセパレータ28のシャットダウン機能が働き、次いでそれ以上の温度になると、絶縁体層27中の熱膨張性マイクロカプセル23が殻壁軟化点にて急激に膨張し、かつ絶縁体層27中のシリカ粉末で構造保持しているため、正極板21と負極板22との間は絶縁状態に保持することが可能であり、発熱以降に電極板間が短絡するという熱暴走反応は抑止されることになる。
【実施例3】
【0040】
まず、実施例1と同様の正極合剤塗料を用い、実施例1と同様の方法により、アルミニウム箔の集電体21a上に正極活物質層21bを形成し正極板21を作製した。一方、実施例1と同様の負極合剤塗料を用い、実施例1と同様の方法により、銅箔集電体22a上に負極活物質層22bを形成し負極板22を作製した。
【0041】
次いで、図3に示したように、絶縁体層27として平均粒径1.0μmのアルミナ粉末(図示せず)を100重量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)26をアルミナ粉末100重量部に対し10重量部、殻壁軟化点が140〜145℃の熱膨張性マイクロカプセル23をアルミナ粉末100重量部に対し1重量部を適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで絶縁体層合剤塗料を作製した。さらに、この絶縁体層合剤塗料をプレスまで行った負極板22の表面に塗布乾燥することで、負極板22の表面に厚さ6μmの絶縁体層27を形成した。ここで、セパレータ28としては、厚さ15μmのポリプロピレン(PP)多孔質フィルムを用いた。
【0042】
これらの正極板21、絶縁体層27を形成した負極板22およびセパレータ28を巻回構成し、実施例1と同様にして図1に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0043】
上記リチウム二次電池において、電池の異常発熱時には、まずポリプロピレンの溶融温度でセパレータ28のシャットダウン機能が働き、次いでそれ以上の温度になると絶縁体層27中の熱膨張性マイクロカプセル23が殻壁軟化点にて急激に膨張し、かつ絶縁体層27中のアルミナ粉末で構造保持しているため、正極板21と負極板22との間は絶縁状態に保持することが可能であり、発熱以降に電極板間が短絡するという熱暴走反応は抑止されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る非水系二次電池は、セパレータまたは電極板とセパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを介在させることにより、内部短絡等による急激な発熱反応が起こった場合でも、この熱膨張性マイクロカプセルが発熱に対して、速い応答性で熱膨張することが可能であり、セパレータの絶縁性が消失するのを抑止し、爆発、発火等を引き起こす事態を回避でき、安全性に優れているので、電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る円筒型二次電池の分解断面図
【図2】本発明の一実施形態における電極板を示す部分断面図
【図3】本発明の別の一実施形態における電極板を示す部分断面図
【図4】本発明の別の一実施形態における電極板を示す部分断面図
【図5】従来例における電極板を示す部分断面図
【図6】従来例における電極群を示す分解断面図
【図7】従来例における電極板を示す部分断面図
【符号の説明】
【0046】
1 電池ケース
2 封口板
3 ガスケット
4 電極群
5 正極板
6 正極リード
7 負極板
8 負極リード
9 セパレータ
15 絶縁板
21 正極板
21a 正極集電体
21b 正極活物質層
22 負極板
22a 負極集電体
22b 負極活物質層
23 熱膨張性マイクロカプセル
24 耐熱性有機繊維
25 セパレータ
26 バインダー
27 絶縁体層
28 セパレータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体上に塗布して構成される正極板と、少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および非水溶性高分子の結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体上に塗布して構成される負極板と、セパレータと、非水溶媒からなる電解液により構成される非水系二次電池であって、少なくとも前記セパレータあるいは前記正極板または前記負極板と前記セパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを含有させたことを特徴とする非水系二次電池。
【請求項2】
セパレータ中に熱膨張性マイクロカプセルを含有させる手段として、耐熱性有機繊維に熱膨張性マイクロカプセルを分散含有させて不織布としたことを特徴とする請求項1記載の非水系二次電池。
【請求項3】
耐熱性有機繊維を全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、芳香族ポリエーテルアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾールの群より選ばれる少なくとも一種類以上の樹脂により構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項4】
正極板または負極板とセパレータとの界面に熱膨張性マイクロカプセルを含有させる手段として、少なくとも熱膨張性マイクロカプセルとバインダーよりなる絶縁体層を前記正極板または前記負極板の表面に塗布形成したことを特徴とする請求項1記載の非水系二次電池。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−273127(P2007−273127A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94008(P2006−94008)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】