説明

面実装インダクタと面実装インダクタの製造方法

【課題】 小型、且つ、左右入れ替えて実装しても発生する磁束方向が一定となる底面電極構造の面実装インダクタを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の面実装インダクタは、平角導線を外外巻きに巻回してなるコイルと、主として磁性粉末と結合剤とからなるコアと、そのコアの1つの表面に形成された外部電極とを有する。そして、コイルの巻軸が外部電極の形成されるコアの表面に対して平行となるようにコイルをコアに内包することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型の面実装インダクタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材を巻回したコイルをコア内に内包する面実装インダクタが広く利用されている。近年の携帯電話などの電子機器の小型化や薄型化に伴い、面実装インダクタのような電子部品も小型化や低背化が要求されている。そこで出願人は、先に出願した特許文献1において、平角導線をその端部の両方が外周に引き出される様に外外巻きに巻回したコイルと予備成形されたタブレットを用いた小型の面実装インダクタとその製造方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−245473
【特許文献2】特開2009−290076
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の面実装インダクタは、平角導線を外外巻きに巻回したコイルをタブレット上に載置した状態で成形金型内にセットし、タブレットの軟化点以上で圧縮成形して成形体を得る。その成形体の両側面からディップなどの方法を用いて外部電極を形成する。そのため、図10に示すように、外部電極103を成形体102の5つの表面にわたって形成していた。したがって、従来の面実装インダクタはコアの上面にも外部電極が形成されることが一般的であった。しかしながら、電子機器の更なる小型化に伴い、このような構造の面実装インダクタでは上面に形成された外部電極がシールド板と接触してショートする可能性が生じる。そのため底面電極構造の面実装インダクタへの要求が高まってきた。
【0005】
従来から底面電極構造の面実装インダクタは特許文献2などに開示されている。特許文献2の底面電極構造の面実装インダクタは、図11に示すように線材を巻回してコイル201を形成し、コイル201の2本のリード端末201aを一の面(電極形成面)から外部に突出した磁性体層202を形成する。このときコイル201は、電極形成面に対してコイル201の巻軸が直交するように封止される。その後、電極形成面の所定の位置に外部電極203を形成して、底面電極構造の面実装インダクタを作製する。この構造の場合では電極形成面に対してコイルの巻軸が直交するようにコイルが配置されるため、コイルの内部構造と外部電極との左右における位置関係が非対称となる。すなわち、回路基板に実装する際に左右を入れ替えて実装してしまうと、コイルの巻始めと巻終わりの位置が反転するため発生する磁束方向が反転し、周辺部品に影響を与えてしまう。
【0006】
そこで本発明では、小型、且つ、左右入れ替えて実装しても発生する磁束方向が一定となる底面電極構造の面実装インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の面実装インダクタは、平角導線を外外巻きに巻回してなるコイルと、主として磁性粉末と結合剤とからなるコアと、そのコアの1つの表面に形成された外部電極とを有する。そして、コイルの巻軸が外部電極の形成されるコアの表面に対して平行となるようにコイルをコアに内包することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の面実装インダクタは、従来の面実装インダクタと比較して実装面以外の電極の厚み分だけコアと巻線の面積を大きくすることができるため、L値、直流抵抗、直流重畳特性などの特性上で有利となる。または、電極の厚み分だけ小型化や低背化が可能である。そして、従来の面実装インダクタと比較して電極面積が小さいので、漏れ磁束による渦電流が発生し難く回路効率上有利となる。
【0009】
外外巻きに巻回したコイルをコア内に電極形成面に対して巻軸が平行になるように内包するので、内部のコイル構造と外部電極との位置関係が対称性を有する。すなわち、回路基板に対してコイルの巻き周回方向が左右どちらでも同じとなる。その結果、本発明の面実装インダクタは左右が入れ替わって回路基板に実装されても、発生する磁束方向が一定となるので、実装時に方向性を考慮する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例の面実装インダクタで用いる空心コイルの斜視図。
【図2】本発明の第1実施例の面実装インダクタの予備成形体の斜視図。
【図3】本発明の第1実施例の面実装インダクタの製造工程を説明する図。
【図4】本発明の第1実施例の面実装インダクタのコイルの封止構造を示す透視図。
【図5】本発明の第1実施例の面実装インダクタの製造工程を説明する図。
【図6】本発明の第1実施例の面実装インダクタの斜視図。
【図7】本発明の第2実施例の面実装インダクタで用いる空心コイルの斜視図。
【図8】本発明の第2実施例の面実装インダクタの製造工程を説明する図。
【図9】本発明の第2実施例の面実装インダクタの斜視図。
【図10】従来の面実装インダクタを説明する斜視図。
【図11】従来の底面電極構造の面実装インダクタを説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施例)
図1〜図6を参照しながら、本発明の面実装インダクタの第1実施例を説明する。図1に本発明の第1実施例の面実装インダクタで用いる空心コイルの斜視図を示す。図2に本発明の面実装インダクタで用いる予備成形体の斜視図を示す。図3および図5に本発明の第1実施例の面実装インダクタの製造工程を示す。図4に本発明の第1実施例の面実装インダクタのコイルの封止構造を示す。図6に本発明の第1実施例の面実装インダクタの斜視図を示す。
【0012】
まず図1に示すように、断面形状が長円状の巻き芯を用いて、自己融着性の皮膜を有する平角導線を2段の外外巻きに巻回して空心コイル1を得た。このとき、空心コイル1の両端部1aが同じ側面側に引き出されるようにする。
【0013】
次に、鉄系金属磁性粉末とエポキシ樹脂を混合して得た封止材を予備成形して図2に示すような凸部2aとガイド部2bを設けた予備成形体2を形成する。図3に示すように、予備成形体2の凸部2aと空心コイルの中空部と嵌合するように空心コイル1を予備成形体2上に載置する。その上からもう一つの予備成形体2を被せる。このとき、空心コイル1の端部1aが予備成形体2のガイド部2bに沿うように引き出す。この状態で成形金型のキャビティにセットして150℃で圧縮成形して図4に示すようなコア3を得る。図4に示すように、空心コイル1はコア3内において、空心コイル1の巻軸に対して平行となるコア3の表面にコイル1の両端部1aが露出するように内包される。この両端部1aが露出する表面がコア3の電極形成面(面実装インダクタの底面部)となる。
【0014】
次に図5に示すように、サンドブラスト処理を行いバリ取りと露出する両端部1aの表面の皮膜を除去した後、コア3の電極形成面に導電ペースト4を転写塗布し硬化させる。これにより導電ペースト4と内部の空心コイル1は導通する。最後に、めっき処理を行い導体ペースト4の表面上に外部電極5を形成し、図6に示すような面実装インダクタを得る。なお、めっき処理によって形成される電極は、Ni、Sn、Cu、Au、Pdなどから1つもしくは複数を適宜選択して形成すれば良い。
【0015】
(第2実施例)
図7〜図9を参照しながら、本発明の面実装インダクタの第2実施例を説明する。図7に本発明の第2実施例の面実装インダクタで用いる空心コイルの斜視図を示す。図8に本発明の第2実施例の面実装インダクタの製造工程を示す。図9に本発明の第2実施例の面実装インダクタの斜視図を示す。なお、第1実施例と重複する部分の説明は割愛する。
【0016】
まず図7に示すように、四角柱状の巻き芯を用いて、絶縁皮膜を有する自己融着性の皮膜を有する平角導線を2段の外外巻きに巻回して空心コイル6を得た。このとき、空心コイル6の両端部6aが同側面側に引き出されるようにした。
【0017】
次に、第1実施例と同様の方法で圧縮成形して空心コイル6が内包したコア7を得る。このとき、空心コイル6の巻軸に対して平行なコア7の表面にコイルの両端部6aが露出するようにする。この両端部6aが露出する面がコア7の電極形成面となる。サンドブラスト処理を行い、バリ取りと露出する両端部6aの表面の皮膜を除去し、図8に示すように電極形成面上に導電ペースト8を転写塗布して内部の空心コイル6と導通させる。
【0018】
次に、金属フレームを加工した外部電極9を導電ペースト8によって貼り付けて導電ペースト8を硬化させて図9に示す面実装インダクタを得る。
【0019】
上記実施例では、封止材として磁性粉末に鉄系金属磁性粉末、結合材にエポキシ樹脂を用いた。鉄系金属磁性粉末を用いることで直流重畳特性の優れた表面実装インダクタを作製することができる。しかしながら、これに限らず例えば、磁性粉末としてフェライト系磁性粉末などや、絶縁皮膜形成や表面酸化などの表面改質を行った磁性粉末を用いても良い。また、ガラス粉末などの無機物を加えても良い。そして、結合材としてポリイミド樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂やポリエチレン樹脂やポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂や無機結合材などを用いても良い。
【0020】
上記実施例では、長円形と長方形の外外巻きの空心コイルを作成したが、これに限らず、定幅図形を除く形状、例えば楕円状や扇形、半円状、台形や多角形状、若しくはそれらを組み合わせた形状の外外巻きの空心コイルを用いてもよい。これより、成形時に空心コイルの回転を防止する。さらに作製した面実装インダクタにおいて実装時に構造的な安定性を与えるとともに低背化を実現する。また、空心コイルではなく磁心を有していても良い。
【0021】
上記実施例では、プラスチック成形法の一つである圧縮成形法を用いてコアを作成したが、これに限らず例えば圧粉成形法などの成形法を用いてコアを作成してもよい。コアの寸法において、高さ寸法(電極形成面からそれに対向する面へ向かう方向)が、長さ寸法や幅寸法と同じか若しくはそれ以下に形成すると、実装した際の安定性が良い。
【0022】
上記実施例では、導電ペーストを塗布する方法として転写法を採用したが、これに限らずディスペンサーによる塗布やディップ方式などの方法を用いても可能である。そして、上記実施例では、コイルの端部表面の皮膜を剥離する方法としてサンドブラストを用いたが、これに限らず機械剥離等の方法を用いても可能である。また、コアを形成する前に予め端部の皮膜を剥離してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1…空心コイル、1a…端部、2…予備成形体、2a…凸部、2b…ガイド部、3…コア、4…導電ペースト、5…外部電極(めっき電極)、6…空心コイル、6a…端部、7…コア、8…導電ペースト、9…外部電極(金属フレーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角導線を外外巻きに巻回してなるコイルと、
主として磁性粉末と結合材とからなるコアと、
該コアの1つの表面に形成された外部電極と、を有し、
該コイルの巻軸が該外部電極の形成されるコアの表面に対して平行となるように該コイルを該コアに内包する
ことを特徴とする面実装インダクタ。
【請求項2】
前記コイルの形状が定幅図形を除く形状であることを特徴とする請求項1記載の面実装インダクタ。
【請求項3】
前記コイルの形状が長円、楕円、長方形のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の面実装インダクタ。
【請求項4】
平角導線を外外巻きに巻回してコイルを作成し、
主として磁性粉末と結合材とからなる封止材で該コイルを封止してコアを形成し、なお、該コイルの両端部が該コアの1つの表面上に露出し、且つ、該端部が露出する表面に対して該コイルの巻軸が平行となるように封止する、
該端部の露出する該コアの表面に外部電極を形成する
ことを特徴とする面実装インダクタの製造方法。
【請求項5】
前記コアの形成において、
前記封止材を用いて予備成形体を形成し、
該予備成形体と前記コイルとを圧縮成形によって一体化させる
ことを特徴とする請求項5に記載の面実装インダクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−160507(P2012−160507A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17581(P2011−17581)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】