説明

靴用中敷き

【課題】 吸着系脱臭剤と光触媒とを担持した脱臭シートを持つ靴用中敷きにおいて、靴内の悪臭除去能力と、その持続能力を高くした靴用中敷きを提供する。
【解決手段】 本発明では、吸着系脱臭剤を通気性シートに担持した中間層を、表面層と、クッション層とでラミネートした三層シートにおいて、中間層の通気性シートに光触媒を担持することを特徴とする靴用中敷きシートを作成することにより、靴内のような高湿度環境下でも悪臭等の有害物質の除去能力が高く、光触媒による持続性能の高い靴の中敷きを得る効果があった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、乃至、織物、編み物、皮革等からなる表面層と、発泡体等からなるクッション層とで、吸着系脱臭剤を通気性シートに担持した中間層をラミネートするとともに、該中間層材料にさらに光触媒含有処理を施した脱臭性能の高い靴用中敷きシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来靴用中敷きは、主に合成高分子の樹脂または樹脂繊維よりなる織物地、編物地もしくは合成皮革等からなる単層体または複層体の製品である。
従来の複層体よりなる靴中敷は、通常、表面層とクッション層とで構成された二層体製品と、それらの間に中間シートとを重ね合わせて作られる積層体製品であって、その周縁部は溶着によって一体化されている。
一般に二層または積層タイプの靴中敷は、通常、高周波加熱による製造装置を使用して、表面層と接着材とクッション層を重ね合わせた積層物に対して、通電を用いた加熱操作により積層物を靴中敷形状に溶断および、その周縁部の接着をするという方法で主に作られる。(例えば、特許文献1参照。)
そのため、各層のシートが密着した形をとる場合が多く、積層体内は外からの空気の移動または侵入が少ない密閉に近い形をとる場合が多くなる。
ところで、靴の中敷きは、使用時の靴臭の拡散を抑える防臭効果をくわえるため、靴中敷内に微生物の繁殖を抑える効果のある抗菌剤や臭気成分を吸着する臭気吸着系脱臭剤の防臭材料の添加を表面層、中間層、クッション層のいずれかのシートに施工する必要がある。
そのため、二層体製品は、クッション層において吸着系脱臭剤である活性炭およびゼオライトを含有した樹脂発泡体で作られ、この仕様により靴中敷の脱臭性能を担っている。(例えば、特許文献2参照。)
また、積層体製品は、中間層に活性炭のような吸着系脱臭剤を含有した木綿織布や防臭性能のある抗菌材料を含有させた織物地、編物地を中間層として使用することで構成され、それぞれ靴の臭気除去をになっており、これにより靴中敷の防臭性能を担っている。(例えば、特許文献3参照。)
【0003】
しかし、前記二層体製品の場合、クッション層の発泡体内の空隙において脱臭剤が入り込んだ状態で構成され、靴の臭気が発泡体空隙内を拡散することで脱臭剤まで到達し、臭気除去するようになっているが、該発泡体の空隙の大きさが小さすぎるため、脱臭剤の発泡体内部にいくほど添加量が少なくなることと、脱臭剤の吸着サイトを発泡体の樹脂が埋めてしまい、脱臭剤の脱臭性能を劣化させる問題が生じることから、該発泡体の外側に近い部分の脱臭剤により初期の脱臭性能がある程度発揮されたとしても、さらに発泡体内部に行くに従って、脱臭剤への臭気拡散が遅くなり、吸着性能も低下するようになる。そのため、脱臭性能が時間とともに急激に低下し、初期の脱臭性能が持続しない弊害が発生した。
また、積層体製品の場合、中間層の織物に活性炭などの脱臭剤を入れ込んでいるだけで特に固定化していないため、使用中に活性炭が中敷きから脱落して、使用者の靴下を黒くするという問題が発生した。また、該中間層が表面層とクッション層とではさみ込まれているため、靴下などの中敷き周辺から発生する臭気の脱臭剤への流入が阻害され、靴の脱臭剤として期待されるだけの初期脱臭性能が得られない問題があった。
【特許文献1】実用新案登録第3054968号公報
【特許文献2】特開平9−234364号公報
【特許文献3】特開2004−41385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、織物、不織布、乃至、皮革等からなる表面層と、発泡体等からなるクッション層とで、吸着系脱臭剤を通気性シートに担持した中間層をラミネートしたシートを靴用中敷きシートとして使用し、それが靴の脱臭剤として期待されるだけの初期の脱臭性能が得られるだけでなく、初期の脱臭性能が持続する持続性能の高い、新規な靴中敷を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、吸着系脱臭剤である活性炭とゼオライトを通気性シートに担持した中間層を、織物、不職布、乃至、合成皮革からなる表面層と、発泡体等からなるクッション層とでラミネートしたシートにおいて、該中間層の通気性シートに光触媒を含有することを特徴とする靴用中敷きシートであることを特徴とする。
【0006】
本発明は、吸着系脱臭剤として粉末活性炭、または/および活性炭繊維を使用することを特徴とする。
【0007】
本発明は、前記クッション層にパンチングを施すことを特徴とする。
【0008】
本発明は、クッション層の開口率を20%以上とすることを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、靴内のような高湿度環境下でも悪臭等の有害物質の除去能力が高く、光触媒による持続性能の高い靴の中敷きを得る効果があった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明では、靴中敷きの中間層の通気性シート内に、靴を履いている使用者の靴内または靴下より発生する臭気の吸着除去を目的として、物理吸着による吸着機構をもつ活性炭とゼオライトの脱臭剤を使用する。また、該通気性シート内では該脱臭剤に吸着された臭気成分を分解し、臭気成分で埋まっていた脱臭剤の吸着サイトを空けることで吸着性能を回復させる目的で光触媒を使用する。さらに、該通気性シートは、中敷きの外から臭気成分が侵入し、拡散して脱臭剤に吸着されやすいように、空隙の多い構造を持った三次元網目構造体をとり、その構造体の骨格分子に該脱臭剤や光触媒がバインダーなどで結合した形態を取る。
【0011】
さらに、足蒸れを防ぐための通気性確保および、足裏が接触した感触の良さの向上を目的とした織物または不織布や、見た目の高級感を出すことを目的とした皮革からなる表面層と、歩行時の足への衝撃吸収や疲れにくさを出すため、ゴム弾性を持つことでクッション性を発揮する発泡体からなるクッション層とで中間層をラミネートした三層シートを使用する。
さらに、該中間層の通気性シート内の吸着系脱臭剤に対して、中敷き外からの靴臭気成分の拡散による到達をしやすくする目的で、該クッション層にそれぞれ一定間隔のパンチングを施し、円形の穴を開けた形態をとる。また、光触媒の光分解性能により該脱臭剤の吸着性能を回復させる操作を行う際、靴の中敷を天日干しまたは陰干しで回復させるが、このパンチングによる穴を通して多くの紫外線を通すようにすることで、該中間層内の光触媒に当たる紫外線強度が向上し、光分解による吸着性能の回復度合を向上させることができる。
【0012】
該中間層に使用する通気性シートとしては、両面に通気性を持っているものでも良いし、また、片面だけに通気性を持っているものであっても良い。光触媒作用を効果的に発揮させるには、シートの片面または両面が光透過性を有するのが好ましいが、通常の通気性シートにおいても、紫外光の透過性はある程度確認されるので、靴用中敷きとして使用は可能となる。このような通気性シートとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムの様な汎用の可撓性プラスチックフィルムや薄板などのシートを挙げることができる。また、通気性を持たせるには、これらのシートに微細な穴をあけてもよい。さらに通気性シートとして、(薄手の)不織布、織物、編み物、紙などを用いれば、通気性とともに一定の光透過性を確保することもできる。
【0013】
前記不織布に使用する繊維としては、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル系、ポリアミド系等を使用することができる。また、必要に応じて、これらの繊維を混合して使用することもできる。繊維の断面形状も特に制限はなく、円形のみならず楕円形、三角形、星形、T型、Y型、葉状等いわゆる異型断面形状のものでも良い。さらに、表面に空隙をもつもの、あるいは枝別れした構造をもつものも使用することができる。
【0014】
該不織布に適度な力学強度を得る目的と吸着系脱臭剤を挿入できる空隙を設けることを目的とする場合、三次元交絡処理を施すのがよい。三次元交絡処理とは、不織布を単層、あるいは、複数積層し、支持体に載せ、不織布に機械的処理を施し、繊維を三次元交絡させる方法である。具体的には、ニードルパンチ法、水流交絡法があげられるが、交絡が均一に行われ、生産速度が速い点から、本発明には水流交絡法が好ましい。水流交絡法とは、不織布上方から水流を噴射し、不織布を構成する繊維を三次元交絡させ、強度を発現させる方法である。
【0015】
前記通気性シートに光触媒と吸着系脱臭剤を内包又は封入させる方法は種々あるが、光触媒に光が効率的にあたるように、また悪臭などの有害物と十分に接触出来るように工夫する必要がある。
【0016】
前記通気性シートへの光触媒と吸着系脱臭剤を内包又は封入させる方法については、光透過性のある熱可塑性樹脂と光触媒と吸着系脱臭剤とを溶融混練法によって配合・混合し、該通気性シートの基材上に該配合・混合物を押出する押出ラミネート加工により積層シートとする方法が好ましく。その他、該積層シートから基材を剥離除去して単層シートとしてもよい。 また、インフレーション加工、インジェクション加工等の公知の成形法で行なっても良い。
【0017】
本発明に用いられる光触媒とは、酸化チタンの粒径を4〜8nm程度の微粒子とし、単位重量当りの表面積を大きくして反応性を高めたもので、紫外線及び酸素と水の存在下で強い消臭作用、抗菌・殺菌作用をもたらすものである。市販品としては、例えば「STシリーズ」(石原産業株式会社製)等がある。また、この酸化チタン光触媒に金、白金、パラジウム、銅、酸化ニッケル等の金属及び金属酸化物を担持させておき、光触媒機能を促進させてもよい。
【0018】
本発明に用いられる吸着系脱臭剤とは、臭気物質を吸着して脱臭効果を発揮するものを指す。このような吸着系脱臭剤としては、活性炭、ゼオライト(親水性、疎水性)、活性白土、酸性白土、ハイドロタルサイト、セピオライト、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ZnO等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0019】
本発明に用いられる活性炭は、粉末活性炭、または/および活性炭繊維を使用することが好ましい。粉末活性炭の場合、粒径10μm以下の大きさが好ましく、粒径10μm以上の粉末活性炭の場合、粒子内部の空隙の形状がより複雑になるため、臭気物質の細孔内吸着サイトへの到達距離が長くなり、吸着速度が遅くなるだけでなく、該通気性シートに該活性炭を担持させる際、通気性シート内の空隙の大きさによっては、該活性炭が均一に分散しきれない場合があるからである。また、粒径の下限は特にないが、あまり小さすぎると活性炭のブリードアウトの心配があるのでできれば1μm以上が好ましい。また、活性炭繊維の場合、吸着サイトを持つミクロ孔を活性炭繊維表面にもつため、吸着速度が速い特徴があるだけでなく、前記通気性シートとバインダー繊維を介した熱融着で固定することができるので、脱落の心配が少ない特徴がある。
【0020】
本発明に用いられる粉末活性炭は、そのシート内の含有量として、20g/m以上となることが好ましい。それ以下の含有量のシートを使用した場合、光触媒の添加量に関係なく、光触媒への紫外線照射による吸着性能の回復力が低下するからである。
【0021】
前記吸着系脱臭剤は、速効性があり、高濃度の臭気物質をいち速く吸着脱臭するが、吸着容量に限界があるため持続性がない。
【0022】
前記のように光触媒と吸着系脱臭剤とを併用すれば、酸化チタン光触媒は、太陽光や蛍光灯の光により臭気(悪臭)物質を長期に亘って分解消臭化する能力を持つため、近傍にある吸着系脱臭剤に吸着された臭気(悪臭)物質をも分解し、その結果、吸着系脱臭剤の脱臭能力が回復して、長期に亘って、速効性と持続性とを兼ね備えることになる。
【0023】
本発明に用いられる、光透過性のある熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン及びその共重合体等のオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0024】
これらの樹脂は、脱臭・消臭を必要とする臭気物質を透過させ、また配合される光触媒の触媒機能発現に必要な酸素及び光を透過させることができるので、本発明に用いる光触媒、吸着系脱臭剤が、樹脂シートの内部にまで作用することになり、表面のみ有効なコーティング法に比べて効率がよい。かつまた、配合・成形加工法の方がコーティング法に比べて加工効率もよい。
【0025】
本発明に使用する表面層としては、織物地、編物地もしくは合成皮革がよく。靴中敷向けシートの生地としてふさわしいものであれば、いかなる種類の生地も適用することができ、例えば、羊毛、木綿、麻等の天然繊維、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の再成・半合成繊維もしくはこれらの混紡材よりなる織物地もしくは編物地などが適用されうる。
また、合成皮革としては、従来汎用の合成皮革の他、プロテインレザー(特に靴用のもの)等も使用されうる。また、これら生地に使用される織物地の織り方、また編物地の編み方は、特に限定されるものでなく、例えば、平織り、蜂巣織り等の織物地、ダブルラッシェル編み、トリコット編み、メッシュ編みなどの編物地が利用されうる。
【0026】
本発明に使用するクッション層としては、樹脂発泡体に用いる樹脂の素材であるポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリルシリコン、天然ゴム、アクリロニトリル、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンラバー等が好ましい。また、スパンボンド、メルトブロー、エアーレイ、カード法等の不織布、織布等を用いることも好ましい。目付は50〜500g/mが一般的に使用されるが、100〜400g/mが履き心地や強度の点で好ましい。
【0027】
本発明の織布は、麻や綿などの天然繊維、羊毛等の動物性繊維、ナイロン、ビニロン、ポリエステルやアクリルなどの合成繊維、レーヨンなどの再生繊維を織り合わせた布であり、目付は50〜600g/mが一般的であり、100〜500g/mが履き心地には好ましい。織布の繊維量と透湿性の関係は、繊維が疎水性であれば湿気は繊維間を移行するので見かけ密度は一般的には0.6以下が好ましいが、親水性繊維で湿気は繊維内部を移行するので密になっても良好である。ここでいう見かけ密度とは織布の全体積中繊維の占める割合を表すが、織布の厚さの影響も大きく、その厚さも1000μm以上1500μm以下が好ましい。
【0028】
本発明における不織布としては、植物繊維、動物繊維、再成繊維、半合成繊維、及び合成繊維から選ばれる繊維を単独あるいは混合したものが使用される。
【0029】
植物繊維としては、綿、麻(亜麻、ラミー)が、動物繊維としては、絹、羊毛などの繊維が挙げられる。
【0030】
再成繊維としては、レーヨン、キュプラが、半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、合成繊維としては、ナイロン、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられる。
【0031】
なお、本発明においては、上記の繊維の他に、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプなどの木本類、草本類を含むものとする。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維も含まれる。
【0032】
本発明における各種繊維を単独または複合することで、混抄して使用する場合、必要に応じて、各種のバインダー繊維を用いることができる。
【0033】
本発明に用いられるバインダー繊維は、芯鞘タイプ(コアシェルタイプ)、並列タイプ(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。例えば、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ(大和紡績社製、ダイワボウ、NBF−H)、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ(大和紡績社製、ダイワボウ、NBF−E)、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ(チッソ社製、チッソESC)、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ(ユニチカ社製、メルテイ4080)などが挙げられる。また、ビニロンバインダー繊維(クラレ社製、VPB107×1)などの熱水溶融タイプなども使用できる。
【0034】
前記不織布は、各種短繊維を水中に分散した後、紙と同様の抄紙機で抄造、乾燥され、シート化され、その製造は、丸網抄紙機、長網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機等により、単層か多層で抄造される。
【0035】
本発明の靴中敷は、靴中敷の製造装置で適用される水準の高周波電流の通電によって、そのまま靴中敷形状に溶断し、その周縁部を接着する方法によって製造できる。
本発明の靴中敷の代表的な製造工程を以下に示すものである。
1) クッション層の上に、ホットメルト不織布を重ね、活性炭他含有シートより選択された、中間層シート、さらに2枚目のホットメルト不織布を重ね、最後に表面層を順に重ね合わせて、積層体を形成する。
2) 靴中敷の製造装置(高周波ウェルダー装置)を使用して、前記積層体を平面盤状の下部電極の上に載せる。
3) 続いて、その上に、靴中敷形の型で外周縁を尖らせた上部電極を押し当て、そして加圧しながら、高周波電流を上部電極と下部電極の間に通電し、上下部の電極の間の積層体を加熱することにより、その積層体を靴中敷形状に溶断し、同時にその周縁部を接着する。
高周波ウェルダー装置による加熱温度はおよそ180℃〜230℃、好ましくは200〜220℃である。
【0036】
上述のように、表面層、クッション層および中間層シートのみからなる積層体を、直接高周波電流により溶断し、同時にその周縁部を接着する方法の他、各材料層間に、前記のホットメルト不織布の他、ホットメルト粉末を介在させることにより、高周波電流の通電によって靴中敷を作成することもできる。この方法は、特に、表面層、クッション層および中間層シートの材料の一部にポリプロピレン、ポリエステル等の高周波電流の通電による接着性の悪い材料を使用する場合に有効である。
使用するホットメルト不織布は、ポリアミド系成分を主成分とするホットメルト不織布が好ましく、ポリアミド ホットメルト不織布、ポリアミド/ポリオレフィン ホットメルト不織布、さらにはポリ乳酸不織布などが好適である。例えば、蜘蛛の巣状スパンボンドのポリアミド/ポリオレフィン ホットメルト不織布製品 商標名ダイナックB−1030(東洋紡績株式会社より市販されている)が代表的に適用されうる。このホットメルト不織布製品は、その上、通気性が良好で、柔軟性が高く、上述のホットメルト不織布等を使用しない条件と同様に高周波ウェルダー(加熱温度150℃〜180℃、好ましくは165℃〜175℃)による接着性能が大変良好であるという利点をも有する。
ホットメルト粉末は前記不織布と同様の成分、例えばポリアミド系成分の粉末等が使用できる。
【0037】
本発明の靴中敷は、前記クッション層それぞれに一定間隔のパンチングを施すことを特徴とする。ここでいうパンチングとは、クッション層や中間層に円形または楕円形の開口部をくり抜く操作をすることを言い、通常1〜3mmの円形の開口部を開口の中心から3〜10mmの間隔を隔てて、縦横両方向に施すことを言う。そして、このようなパンチングを施すことが無い場合、該中間層内の吸着系脱臭剤に対して、靴下など中敷き周辺から発生する臭気が流入する際、該中間層への流入出口が、表面層の職布または不職布などの開口部のみからであった。それに対して、このようにパンチングすることは、そのパンチングの開口部から直接中間層への臭気の流入が可能となり、臭気の脱臭剤への到達時間が短縮され、脱臭速度および脱臭性能が大幅に向上する効果がある。
【0038】
本発明の靴中敷において、前記クッション層のシート上において、一定間隔のパンチングを施すことで得られた開口部の各層の全面積を100%とした場合、その開口の大きさの割合、つまり開口率は、20%以上の開口率にすることが好ましい。
該開口率を20%未満した時の問題点としては、該中間層内光触媒への紫外線照射の照射割合が小さくなり、光触媒の吸着臭気成分分解による吸着性能の回復能力が低下するからである。
また、上限としては、靴の耐久性が持続する限り特に制限されることは無いが、通常50%未満のところが上限と考えられる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
ポリエステル繊維製不織布を表面層用シートとして作成し、ポリエステル繊維製不織布内に光触媒として、酸化チタン10重量部、吸着系脱臭剤として、粉末活性炭25重量部、ゼオライト25重量部を含浸塗工させ、中間層用シートを得て、さらに、ウレタンフォームのクッション層シートを作製した。このシートには、口径5mmの円形孔を縦横等間隔(孔の中心から1cm間隔)ごとにパンチングで孔を開けた。そして、前記クッション層用シートの未処理面上にポリエチレン系接着剤を散布し、130℃で加熱直後に中間層用シートを重ね、さらに、その中間層用シート面上に前記ポリエチレン系接着剤を散布し、130℃で加熱直後に、表面層用シートを重ね、クッション層用シートと中間層用シートと表面層用シート厚さの合計量の約50%のギャップの金属ロール間を通して加圧、積層して実施例1の中敷きシートを得た。
【0041】
[比較例1]
小林製薬製オドイーター(ゼオライト&活性炭含有)
【0042】
[評価]
<脱臭性1>
実施例1、比較例1で得られた靴中敷きシートを2cm角に切り、各1枚を縦2cm横2cm高さ5cmの長方形ケースに入れて密閉し、さらに8時間使用した縦3cm横2cmの靴下をそれぞれのケースに入れ、3時間後に7人に臭いを嗅いでもらい、臭いの強さを比較した。そして、臭いの評価は以下のような2段階で行なった。
○:やっと感知できるにおい ×:何のにおいであるかわかる弱いにおい
【0043】
<脱臭性2>
実施例1、比較例1で得られた中敷きシートを2cm×5cmに切り、切り口部分をセロハンテープ(積水化学株式会社製、セキスイテープ)で覆い、各1枚を5リットルのPVF袋(アズワン株式会社製、テドラーバッグ、1−6664−04)にそれぞれ入れて密閉し、80ppmトリメチルアミン(相対湿度:30%)のガスを注入し、1時間後に光音響マルチガスモニター(松下インターテクノ製、光音響マルチガスモニター)による濃度測定を実施した。
臭いの評価は以下のような2段階で行なった。
○:臭気除去率50%以上、×:臭気除去率50%未満
【0044】
<脱臭性3>
実施例1、比較例1で得られた中敷きシートを2cm×5cmに切り、切り口部分をセロハンテープ(積水化学株式会社製、セキスイテープ)で覆い、各1枚を5リットルのPVF袋(アズワン株式会社製、テドラーバッグ、1−6664−04)にそれぞれ入れて密閉し、120ppmメチルメルカプタン(相対湿度:30%)のガスを注入し、0.5時間後に光音響マルチガスモニター(松下インターテクノ製、光音響マルチガスモニター)による濃度測定を実施した。
臭いの評価は以下のような2段階で行なった。
○:臭気除去率50%以上、×:臭気除去率50%未満
【0045】
<持続性1>
実施例1で得られた開口率20%となる中敷きシートを1cm角に切り、0.7Lガラスセル内にそれを置き、密封した後、ガラスセル内のメチルメルカプタン濃度が120ppmになるように、メチルメルカプタンをマイクロシリンジでガラスセル内に打ち込む。そして、メチルメルカプタン濃度が低下した後、再度シリンジでメチルメルカプタンを打ち込む操作を繰り返す。メチルメルカプタン濃度の時間変化が自然減衰曲線と同じになったら、吸着飽和したとみなし、飽和吸着操作を終了する。そして、この操作を第1回飽和吸着操作Aとする。さらに、同じ操作を他に1つ実施し、第1回飽和吸着操作Bとする。その後、第1回飽和吸着操作Aは、ガラスの上からBLBランプを0.5mW/cmの照度で3時間UV照射する。第1回飽和吸着操作BはUV照射を実施しない。その後、第1回飽和吸着操作A、第1回飽和吸着操作Bともに、2回目の飽和吸着操作である第2回飽和吸着操作A、第2回飽和吸着操作Bをそれぞれおこなった。
持続性の評価は以下の2段階で行った。
○ :第2回飽和吸着操作Aのメチルメルカプタン吸着量が第2回飽和吸着操作Bより大きい場合
×:第2回飽和吸着操作Aのメチルメルカプタン吸着量が第2回飽和吸着操作Bと同じ場合
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、吸着系脱臭剤を通気性シートに担持した中間層と、クッション層とを備えたラミネートシートであって、中間層の通気性シートに光触媒を含有することを特徴とする靴用中敷きシート。
【請求項2】
前記吸着系脱臭剤として粉末活性炭、または/および活性炭繊維を使用することを特徴とする請求項1に記載の靴用中敷きシート。
【請求項3】
前記クッション層にパンチングを施すことを特徴とする請求項1乃至2に記載の靴用中敷きシート。
【請求項4】
前記クッション層の開口率を20%以上とすることを特徴とする請求項1乃至3に記載の靴用中敷きシート。


【公開番号】特開2007−136033(P2007−136033A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336805(P2005−336805)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】