駆動装置およびそれを搭載する車両、ならびに駆動装置の制御方法
【課題】蓄電装置からの電力を用いて走行が可能な車両において、駆動装置内のコンデンサに蓄えられた残留電荷をできるだけ速やかに放電する。
【解決手段】PCU120は、蓄電装置110からの電力を用いてモータジェネレータ160を駆動する。PCU120は、電力変換装置130,140と、コンデンサC2と、制御部370とを備える。制御部370は、衝突検出部180により衝突が検出された場合に、電力変換装置130,140を駆動してコンデンサC2の残留電荷を放電する。電力変換装置130,140に含まれる複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子Q1〜Q8、および還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子D1〜D8が一体で形成される。制御部370は、車両100の衝突の検出に応じて、第2の半導体素子D1〜D8による還流動作時に、第1の半導体素子Q1〜Q8のゲート端子に印加する電圧を変化させて電力損失を増加させる。
【解決手段】PCU120は、蓄電装置110からの電力を用いてモータジェネレータ160を駆動する。PCU120は、電力変換装置130,140と、コンデンサC2と、制御部370とを備える。制御部370は、衝突検出部180により衝突が検出された場合に、電力変換装置130,140を駆動してコンデンサC2の残留電荷を放電する。電力変換装置130,140に含まれる複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子Q1〜Q8、および還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子D1〜D8が一体で形成される。制御部370は、車両100の衝突の検出に応じて、第2の半導体素子D1〜D8による還流動作時に、第1の半導体素子Q1〜Q8のゲート端子に印加する電圧を変化させて電力損失を増加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置およびそれを搭載する車両、ならびに駆動装置の制御方法に関し、より特定的には、駆動装置内のコンデンサの残留電荷を放電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する電動車両が注目されている。この電動車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。
【0003】
これらの電動車両においては、発進時や加速時に蓄電装置から電力を受けて走行のための駆動力を発生するとともに、制動時に回生制動によって発電を行なって蓄電装置に電気エネルギを蓄えるためのモータジェネレータを備える場合がある。このように、走行状態に応じてモータジェネレータを制御するために、電動車両には、コンバータやインバータなどによって電力を変換する電力変換装置が搭載される。
【0004】
このような電力変換装置には、供給される直流電力を安定化するために大容量の平滑コンデンサが備えられている。そして、電力変換装置の作動中は、平滑コンデンサには印加電圧に応じた電荷が蓄積される。
【0005】
この平滑コンデンサに蓄積される電荷は、たとえば車両の衝突が発生したような場合には、速やかに放電されることが必要とされる。
【0006】
特開2004−201439号公報(特許文献1)は、ハイブリッド自動車または電気自動車において、モータの駆動が停止された場合に、電圧変換システムに含まれるコンデンサの残留電荷を直流電源にチャージバックするとともに、コンデンサの両端の電圧が直流電源の電圧以下となってチャージバックできなくなると、電圧変換システムに含まれるコンバータの昇圧動作および降圧動作を繰り返すことによって、コンデンサの残留電荷をコンバータで放電する構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−201439号公報
【特許文献2】特開2003−348856号公報
【特許文献3】特開2008−061300号公報
【特許文献4】特開2002−323573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2004−201439号公報(特許文献1)に開示された技術によれば、車両の衝突が生じてモータの駆動が停止された場合には、コンデンサに蓄えられた電荷がチャージバックされる、その後残余の電荷がコンバータにより消費されるため、衝突発生時においてコンデンサに蓄えられた高圧電力による周囲への影響を排除することができる。
【0009】
しかしながら、衝突の状態によっては、制御装置への電源供給が時間の経過とともに低下または途絶してしまう可能性があり得る。そうすると、コンバータの駆動指令を出力することができず、適切にコンデンサの残留電荷を放電することができなくなる場合が生じ得る。そのため、たとえば衝突が生じたような場合にコンデンサの残留電荷を放電する際には、コンデンサの残留電荷をできるだけ速やかに放電することが必要とされる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、蓄電装置からの電力を用いて走行が可能な車両において、駆動装置内のコンデンサに蓄えられた残留電荷をできるだけ速やかに放電することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による駆動装置は、蓄電装置からの電力を用いて車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置である。駆動装置は、スイッチング素子を含み、蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、スイッチング素子の制御端子を駆動して、コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備える。電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含む。複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成される。制御装置は、コンデンサの放電動作を行なう際に、第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させる。
【0012】
好ましくは、複数の逆導通型半導体素子の各々は、還流動作時において、第1の半導体素子の制御端子に印加される電圧が大きくなると、それに伴って第2の半導体素子の導通抵抗が大きくなる特性を有する。制御装置は、コンデンサの放電に際し、複数の逆導通型半導体素子のうち、還流動作時の還流経路にある逆導通型半導体素子に含まれる第1の半導体素子の制御端子に印加される電圧を、回転電機を駆動する場合に比べて大きく設定する。
【0013】
好ましくは、電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つを含み、回転電機を駆動するためのインバータである。制御装置は、コンデンサの放電を行なう場合に、インバータと回転電機とを用いてコンデンサの電荷を放電する。
【0014】
好ましくは、制御装置は、回転電機を回転させることなく、回転電機に含まれるコイルによりコンデンサの電荷を消費させることにより放電を行なう。
【0015】
好ましくは、電力変換装置は、チョッパ回路を形成する、複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つおよびリアクトルを含み、蓄電装置から供給される直流電圧を変換するためのコンバータである。制御装置は、コンデンサの放電を行なう場合に、リアクトルによりコンデンサの電荷を放電するようにコンバータを制御する。
【0016】
好ましくは、複数の逆導通型半導体素子の各々は、第1の半導体素子がIGBTで形成され、第2の半導体素子がIGBTに逆並列に接続されたダイオードで形成される。
【0017】
好ましくは、複数の逆導通型半導体素子の各々は、電力用MOSFETで形成され、第2の半導体素子は、電力用MOSFETの寄生ダイオードである。
【0018】
好ましくは、車両は、車両の衝突を検出するための衝突検出部を含む。制御装置は、衝突検出部により車両の衝突が検出された場合に、スイッチング素子の制御端子を駆動して、コンデンサに蓄えられた電荷を放電する。
【0019】
本発明による駆動装置は、蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置である。駆動装置は、回転電機を駆動するためのインバータと、インバータに並列に接続されたコンデンサと、スイッチング素子の制御端子を駆動して、コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備える。インバータは、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成された、少なくとも1つの逆導通型半導体素子を有する。制御装置は、コンデンサの放電動作を行なう際に、第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させる。
【0020】
好ましくは、駆動装置は、逆導通型半導体素子を有し、蓄電装置からの直流電圧を変換するとともに、変換された直流電圧をインバータに供給するためのコンバータをさらに備える。
【0021】
本発明による車両は、蓄電装置と、回転電機と、蓄電装置からの電力を用いて回転電機を駆動して走行駆動力を発生させるための駆動装置とを備える。駆動装置は、スイッチング素子を有し蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、スイッチング素子の制御端子を駆動してコンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを含む。電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含む。複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成される。制御装置は、コンデンサの放電動作を行なう際に、第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させる。
【0022】
本発明による駆動装置の制御方法は、蓄電装置からの電力を用いて車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置についての制御方法である。駆動装置は、スイッチング素子を含み蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、電力変換装置に並列に接続されたコンデンサとを含む。電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含む。複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成される。制御方法は、スイッチング素子の制御端子を駆動してコンデンサに蓄えられた電荷を放電させるステップと、コンデンサの電荷の放電中に第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄電装置からの電力を用いて走行が可能な車両において、駆動装置内のコンデンサに蓄えられた残留電荷をできるだけ速やかに放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に従う駆動装置が搭載される車両の全体ブロック図である。
【図2】IGBTとダイオードで構成される逆導通型半導体素子の一例を説明するための図である。
【図3】電力用MOSFETで構成される逆導通型半導体素子の一例を説明するための図である。
【図4】ゲート電圧を変化させた場合の、還流ダイオードにおける電圧と電流の関係を説明するための図である。
【図5】インバータを用いてコンデンサの残留電荷を放電する場合の電流の流れを説明するための第1の図である。
【図6】インバータを用いてコンデンサの残留電荷を放電する場合の電流の流れを説明するための第2の図である。
【図7】スイッチング素子のスイッチング動作と負荷電流との関係の一例を示す図である。
【図8】スイッチング素子の駆動タイミングの第1の例を説明するための図である。
【図9】スイッチング素子の駆動タイミングの第2の例を説明するための図である。
【図10】本実施の形態において、MG−ECUで実行される残留電荷の放電制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】コンバータを用いてコンデンサの残留電荷を放電する場合の電流の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に従う駆動装置が搭載される車両100の全体ブロック図である。本実施の形態においては、車両100が電気自動車である構成を例として説明するが、車両100の構成はこれに限定されるものではなく、蓄電装置からの電力によって走行可能な車両であれば適用可能である。車両100としては、電気自動車以外にたとえばハイブリッド車両や燃料電池自動車などが含まれる。
【0027】
図1を参照して、車両100は、蓄電装置110と、システムメインリレー(System Main Relay:SMR)115と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ160と、動力伝達ギヤ165と、駆動輪170と、衝突検出部180と、補機バッテリ190と、HV−ECU(Electronic Control Unit)300とを備える。
【0028】
PCU120は、コンバータ130と、インバータ140と、MG−ECU350と、ゲート駆動部360と、コンデンサC1〜C3とを含む。MG−ECU350およびゲート駆動部360によって、PCU120の制御部370が形成される。PCU120内の各機器は、一般的に、同一の筐体内に収納され、ケーブルやバスバーなどによって、PCU120外部のその他の機器と結合される。
【0029】
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0030】
蓄電装置110は、電力線PL1,NL1を介して、PCU120のコンバータ130に接続される。蓄電装置110は、モータジェネレータ160を駆動するための電力をPCU120へ供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ160で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
【0031】
SMR115に含まれるリレーは、蓄電装置110と電力線PL1,NL1とにそれぞれ接続される。そして、SMR115は、HV−ECU300からの制御信号SE1によって制御され、蓄電装置110とコンバータ130との間での電力の供給と遮断とを切換える。
【0032】
コンデンサC1は、電力線PL1と電力線NL1との間に接続される。コンデンサC1は、電力線PL1と電力線NL1との間の電圧変動を低減する。電圧センサ150は、コンデンサC1にかかる電圧を検出し、その検出値VLをMG−ECU350へ出力する。
【0033】
コンバータ130は、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルL1とを含む。
【0034】
スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線PL2,NL1の間に、電力線PL2から電力線NL1に向かう方向を順方向として直列に接続される。なお、本実施の形態において、スイッチング素子として、IGBTを例として説明するが、それ以外の例としては、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることもできる。
【0035】
スイッチング素子Q1,Q2には、逆並列ダイオードD1,D2がそれぞれ接続される。リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと、電力線PL1との間に設けられる。すなわち、コンバータ130はチョッパ回路を形成する。
【0036】
スイッチング素子Q1,Q2は、MG−ECU350からの制御信号PWCに基づいてゲート駆動部360により生成されるゲート電圧信号VGCによって制御され、電力線PL1,NL1と、電力線PL2,NL1との間で電圧変換動作を行なう。
【0037】
コンバータ130は、基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1およびQ2が相補的かつ交互にオン・オフするように制御される。コンバータ130は、昇圧動作時には、蓄電装置110からの直流電圧を昇圧する。この昇圧動作は、スイッチング素子Q2のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q1および逆並列ダイオードD1を介して、電力線PL2へ供給することにより行なわれる。
【0038】
また、コンバータ130は、降圧動作時には、インバータ140からの直流電圧を降圧する。この降圧動作は、スイッチング素子Q1のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q2および逆並列ダイオードD2を介して、電力線NL1へ供給することにより行なわれる。
【0039】
これらの昇圧動作および降圧動作における電圧変換比は、上記スイッチング周期におけるスイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ比)により制御される。なお、昇圧動作および降圧動作が不要の場合には、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ固定するように制御信号PWCを設定することで、電圧変換比=1.0(デューティ比=100%)とすることもできる。
【0040】
なお、本発明においては、コンバータ130は必須ではなく、蓄電装置110からの出力電圧がインバータ140に直接供給される構成であってもよい。
【0041】
コンデンサC2は、コンバータ130とインバータ140とを結ぶ電力線PL2,NL1の間に接続される。コンデンサC2は、電力線PL2と電力線NL1との間の電圧変動を低減する。電圧センサ155は、コンデンサC2にかかる電圧を検出し、その検出値VHをMG−ECU350へ出力する。
【0042】
インバータ140は、電力線PL2,NL1を介して、コンバータ130に接続される。インバータ140は、MG−ECU350からの制御指令PWIに基づいてゲート駆動部360によって生成されるゲート電圧信号VGIにより制御され、コンバータ130から出力される直流電力を、モータジェネレータ160を駆動するための交流電力に電力変換する。
【0043】
インバータ140は、U相アーム141と、V相アーム142と、W相アーム143とを含み、これらによりブリッジ回路が形成される。U相アーム141、V相アーム142およびW相アーム143は、電力線PL2と電力線NL1との間に並列に接続される。
【0044】
U相アーム141は、電力線PL2と電力線NL1との間に直列接続されたスイッチング素子Q3,Q4と、スイッチング素子Q3,Q4にそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはスイッチング素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはスイッチング素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはスイッチング素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはスイッチング素子Q4のエミッタと接続される。
【0045】
V相アーム142は、電力線PL2と電力線NL1との間に直列接続されたスイッチング素子Q5,Q6と、スイッチング素子Q5,Q6にそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはスイッチング素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはスイッチング素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはスイッチング素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはスイッチング素子Q6のエミッタと接続される。
【0046】
W相アーム143は、電力線PL2と電力線NL1との間に直列接続されたスイッチング素子Q7,Q8と、スイッチング素子Q7,Q8にそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはスイッチング素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはスイッチング素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはスイッチング素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはスイッチング素子Q8のエミッタと接続される。
【0047】
モータジェネレータ160は、たとえば、永久磁石が埋設されたロータと中性点でY結線された三相コイルを有するステータとを備える三相交流電動発電機であり、U相,V相,W相の3つのコイルは、各々一方端が中性点に共に接続される。そして、U相コイルの他方端がスイッチング素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がスイッチング素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がスイッチング素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
【0048】
モータジェネレータ160の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ165を介して駆動輪170に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ160は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪170の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、インバータ140によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0049】
また、モータジェネレータ160の他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ160を協調的に動作させることによって、必要な車両駆動力が発生される。この場合、エンジンの回転による発電電力を用いて、蓄電装置110を充電することも可能である。
【0050】
なお、図1においては、モータジェネレータが1つ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータを複数設ける構成としてもよい。たとえば、2つのモータジェネレータを備えるハイブリッド車両の場合には、一方のモータジェネレータを専ら駆動輪170を駆動するための電動機として用い、他方のモータジェネレータを専らエンジンにより駆動される発電機として用いるようにしてもよい。
【0051】
衝突検出部180は、図示しないセンサ(たとえばGセンサ)を含み、車両100が衝突したか否かを検出する。そして、その衝突検出信号COLをHV−ECU300へ出力する。
【0052】
HV−ECU300およびMG−ECU350は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。HV−ECU300は、車両全体の制御を統括する制御装置であり、MG−ECU350は、PCU120内の機器(コンバータ130,インバータ140,ゲート駆動部360など)を制御するための制御装置である。HV−ECU300およびMG−ECU350における制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0053】
なお、図1においては、制御装置としてHV−ECU300およびMG−ECU350が個別に備えられる構成を例として説明するが、制御装置の構成はこれに限定されない。たとえば、HV−ECU300およびMG−ECU350が統合された1つの制御装置としてもよいし、機器ごとや機能ごとに、より多くの制御装置が設けられる構成としてもよい。
【0054】
HV−ECU300は、衝突検出部180からの衝突検出信号COLを受ける。また、HV−ECU300は、MG−ECU350から、電圧センサ150,155で検出された電圧VR,VHを受ける。HV−ECU300は、ユーザによるアクセル操作およびモータジェネレータ160の回転速度などに基づいて、コンバータ130の目標昇圧電圧VR、および目標要求トルクTRを演算する。そして、HV−ECU300は、MG−ECU350へ、目標昇圧電圧VR、目標要求トルクTRおよび衝突検出信号COLをMG−ECU350へ出力する。
【0055】
MG−ECU350は、HV−ECU300からの目標昇圧電圧VRおよび目標要求トルクTRと、電圧センサ150,155の検出値VL,VHおよびモータジェネレータ160の電流,回転速度などに基づいて、コンバータ130およびインバータ140を駆動するための制御信号PWC,PWIをそれぞれ生成する。MG−ECU350は、これらの制御信号PWC,PWIをゲート駆動部360へ出力する。
【0056】
ゲート駆動部360は、制御信号PWC,PWIに基づいて、コンバータ130およびインバータ140に含まれる各スイッチング素子のゲートを駆動するためのゲート電圧信号VGC,VGIをそれぞれ生成し、コンバータ130およびインバータ140に出力する。
【0057】
また、MG−ECU350は、HV−ECU300から、車両100の衝突検出信号COLを受ける。MG−ECU160は、衝突検出信号COLを受信した場合は、コンデンサC2に蓄えられた残留電荷をモータジェネレータ160および/またはコンバータ130を用いて放電するような制御信号PWC,PWIを生成する。
【0058】
補機バッテリ190は、各ECUなどの制御装置および図示しない補機装置のような車両100の低圧系の機器に対して電源電圧を供給するための電圧源である。補機バッテリ190は代表的には鉛蓄電池により構成され、その出力電圧は、たとえば12V程度である。
【0059】
補機バッテリ190は、電力線PL3を介して、HV−ECU300、MG−ECU350、およびゲート駆動部360に接続され、これらの機器へ電源電圧を供給する。
【0060】
PCU120内において、電力線PL3と接地との間に、コンデンサC3が設けられる。コンデンサC3は、補機バッテリ190からPCU120への電源電圧が途絶した場合に、MG−ECU350およびゲート駆動部360をしばらくの期間動作させるためのバックアップコンデンサであり、補機バッテリ190からの電圧によって電力が蓄えられる。これによって、衝突などによって、補機バッテリ190からPCU120への電源電圧が途絶した場合でも、しばらくの期間は、コンデンサC3に蓄えられた電力によってMG−ECU350およびゲート駆動部360を動作させることができる。
【0061】
上記のような構成の車両100においては、車両100がモータジェネレータ160からの駆動力を用いて走行している場合には、PCU120内のコンデンサC1,C2には、電荷が蓄えられた状態となっている。このような状態において、衝突が生じたような場合には、短絡や地絡等による機器の破損や周囲への影響を抑制するために、コンデンサC1,C2に蓄えられた残留電荷をできるだけ迅速に放電することが望ましい。
【0062】
このような放電として、インバータ140を駆動してモータジェネレータ160にd軸電流を流すことによって、モータジェネレータ160の回転させることなく、モータジェネレータ160内のコイルによって電荷を消費させたり、コンバータ130により、昇圧動作と降圧動作とを繰り返して、コンバータ130に含まれるリアクトルL1により電荷を消費させたりする場合がある。
【0063】
この場合、コンバータ130およびインバータ140を駆動させるために、MG−ECU350およびゲート駆動部360を動作させることが必要となるが、たとえば、衝突によって、補機バッテリ190からPCU120への電源電圧の供給が途絶してしまった場合には、コンデンサC3に蓄えられた電力では放電動作が完了できない可能性が生じ得る。そして、これに対処するためにコンデンサC3の容量を大きくすると、かえってコストの増加となってしまう。
【0064】
そのため、コンデンサC3の容量を大きくすることなく、衝突発生時に補機バッテリ190からPCU120への電源電圧が途絶した場合であっても確実に放電動作を完了させることが必要とされる。
【0065】
ここで、PCU120のコンバータ130およびインバータ140においては、スイッチング素子とスイッチング素子に逆並列に接続された還流ダイオード(Free Wheeling Diode:FWD)とが一体で形成された、いわゆる逆導通型半導体素子が用いられる場合がある。
【0066】
この逆導通型半導体素子は、後述するように、還流ダイオードに電流が流れている場合に、対応するスイッチング素子のゲート電圧を増加させると、還流ダイオードの導通抵抗が増加するという特性を有する。
【0067】
そこで、本実施の形態においては、コンバータ130およびインバータ140などの電力変換装置に、このような逆導通型半導体素子が含まれる場合に、上記のような特性を利用して放電時間を短縮させる。
【0068】
図2は、逆導通型半導体素子200の断面構造の例の概略図である。図2の逆導通型半導体素子は、IGBTとダイオードで構成されており、RC−IGBT(Reverse Conducting-IGBT)とも称される。
【0069】
図2を参照して、逆導通型半導体素子200の表面はいわゆるトレンチゲート型の構造を有している。一方、裏面は、IGBT領域となるコレクタ層(P+層)210と、FWD領域となるカソード層(N+層)220とで形成される。このような構成とすることによって、IGBT領域においては、コレクタ210側の電位がエミッタ260側の電位よりも高い場合には、トレンチゲート230にゲート電圧を印加することによって、コレクタ210からPベース層240を通ってエミッタ260へ電流が流れる。また、エミッタ260側の電位がコレクタ210側の電位よりも高い場合には、FWD領域において、アノードからカソード220へ電流が流れる。なお、図2においては、トレンチゲート型のIGBTを例としたが、プレーナゲート型のIGBTとしてもよい。
【0070】
また、図3は、電力用MOSFETにより構成される逆導通型半導体素子400の断面構造の例を示す。電力用MOSFETは、寄生ダイオードが備わっているため、アノード420の電位がカソード410の電位よりも高い場合には、この寄生ダイオードによって、アノード420からカソード410へ電流が流れる。一方、ドレイン410の電位がソース420の電位よりも高い場合には、トレンチゲート430にゲート電圧を印加することによって、ドレイン410からソース420に電流が流れる。
【0071】
このような逆導通型半導体素子においては、逆導通型半導体素子がダイオードとして動作しているときにゲート電圧を高くすると、ダイオードの順方向特性が低下し、導通抵抗が増加することが知られている。これは、ゲート電圧を高くすることで、Pベース層においてチャネル領域が拡大して、図2におけるPベース層240とN−層250との間の電位差が低下するためである。
【0072】
図4は、ゲート電圧を変化させたときの、逆導通型半導体素子のダイオードとしての順方向特性の一例を示す図である。図4においては、横軸に逆導通型半導体素子のダイオードの順方向電圧Vfが示され、縦軸は逆導通型半導体素子に流れる電流Ifが示される。
【0073】
図4を参照して、ゲート電圧を高くしていくにしたがって、順方向特性の曲線は、曲線W10から曲線W13へと変化する。そのため、同じ大きさの電流を流す場合に、ゲート電圧を高くすると、たとえば、図4の点P1から点P2へと動作点が変化し、逆導通型半導体素子における電圧降下が大きくなる。すなわち、逆導通型半導体素子における導通損失が大きくなる。
【0074】
本実施の形態においては、PCUにおいて逆導通型半導体素子を含むインバータ、コンバータなどの電力変換装置が用いられる場合に、上述のような逆導通型半導体素子の特性を利用して、PCU内のコンデンサの残留電荷を短時間で放電させる。図5から図7を用いて、コンデンサの残留電荷の放電動作について説明する。
【0075】
図5を参照して、たとえば、ゲート駆動部360からのゲート電圧信号VGIによって、インバータ140のU相アーム141における上アームのスイッチング素子Q3およびV相アーム142の下アームのスイッチング素子Q6が導通状態とされる。これにより、コンデンサC2から図5中の矢印AR1のように電流が流れて、モータジェネレータ160のU相およびV相のコイルにエネルギが蓄えられる。
【0076】
その後、図5の状態から、図6のように、U相アーム141の上アームのスイッチング素子Q3が非導通状態とされると、U相およびV相のコイルに蓄えられたエネルギによって、図6中の矢印AR2のように、スイッチング素子Q6およびダイオードD4を通って電流が還流する。このとき、U相およびV相のコイルおよび各素子を電流が流れる際の導通損失により放電が行なわれる。その後、スイッチング素子Q3が再び導通状態とされると、コンデンサC2から再び電流がU相およびV相のコイルに流れる。
【0077】
このように、スイッチング素子Q3について、導通状態と非導通状態とを適切なデューティで切換えることによって、図7のように、時間とともにコンデンサC2の残留電荷が徐々に放電される。なお、図7における曲線W20は、上記のU相およびV相のコイルのような負荷に流れる電流が示されており、矢印AR10は図5の状態における電流が示され、矢印AR20は図6の状態における電流が示されている。また、破線の曲線W21は、平均の負荷電流である。
【0078】
このような放電動作においては、スイッチング素子Q4のゲート電圧の印加の有無に関らず、還流ダイオードとして動作するダイオードD4は導通状態となる。しかしながら、スイッチング素子Q4とダイオードD4とが、上述のような逆導通型半導体素子で構成されている場合には、ゲート電圧を高くすることによってダイオードD4の導通損失を大きくすることができる。これによって、還流動作における消費電力が増大し、放電時間を短縮することができる。
【0079】
なお、図5および図6においては、U相アーム141のスイッチング素子を切換えることによって、U相およびV相のコイルで残留電荷を放電する場合を説明したが、スイッチング素子Q6に加えてV相アーム143のスイッチング素子Q8を導通状態として、W相コイルをさらに用いて放電動作を行なってもよい。また、U相アーム141に代えて、またはそれに加えてV相アーム142,W相アーム143のスイッチング素子を切換えて放電動作を行なってもよい。
【0080】
図8は、本実施の形態における、上述した放電動作を行なう場合の、ゲート電圧を示すタイムチャートである。図8においては、横軸には時間が示され、縦軸にはスイッチング素子Q3,Q4のゲート電圧信号が示される。
【0081】
図8を参照して、モータジェネレータを駆動して車両を走行させる際に、PWM制御において、上アームのスイッチング素子にゲート電圧信号を印加して導通状態とし、モータジェネレータのコイルに正側の交流電圧を供給する場合、上アームのスイッチング素子が非導通状態(ゲート電圧信号オフ)で下アームのダイオードにより還流しているときには、一般的には、不要な損失が生じないように下アームのスイッチング素子のゲート電圧信号は印加されない。
【0082】
ところが、衝突が生じた場合には、下アームのダイオードによる導通損失を増加させるために、上アームのスイッチング素子が非導通状態の期間に、下アームのスイッチング素子にゲート電圧信号が印加される。図3で説明したように、ゲート電圧が大きいほど、ダイオードでの導通損失が大きくなるので、印加されるゲート電圧は、車両走行の際の通常駆動に用いるゲート電圧VGI−1よりも高い電圧VGI−2に設定することがより好ましい。さらに理想的には、ゲートに印加可能な最大定格電圧とすることが望ましい。なお、このとき、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とが同時に導通状態となって短絡を生じることを防止するために、上アームのスイッチング素子に印加されるゲート電圧と、下アームのスイッチング素子に印加されるゲート電圧との間には、一般的にデッドタイムΔtが設けられる。
【0083】
また、図9のように、車両を走行させる通常駆動の場合においても、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とに、相補的に交互にゲート電圧を印加するように制御される場合がある(図9中の破線W30)。このような場合においても、下アームのダイオードにより還流している場合には、図9中の実線W31のように、下アームのスイッチング素子に通常駆動のときよりも高いゲート電圧を印加することによって、下アームのダイオードの導通損失を増加させることができる。
【0084】
図10は、本実施の形態において、MG−ECU350において実行される、車両衝突時の残留電荷の放電制御処理を説明するためのフローチャートである。図10に示すフローチャート中の各ステップについては、MG−ECU350に予め格納されたプログラムが所定周期でメインルーチンから呼び出されて実行されることによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0085】
図1および図10を参照して、MG−ECU350は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、HV−ECU300からの衝突検出信号COLに基づいて、車両100の衝突が検出されたか否かを判定する。なお、衝突またはそれ以外の要因によって、HV−ECU300とMG−ECU350との間の通信が途絶して、衝突検出信号COLが受信できない状態となった場合にも、MG−ECU350は、衝突の可能性があるとして、衝突が検出されたと判定するようにしてもよい。
【0086】
衝突が検出されなかった場合(S100にてNO)は、当該処理は不要であるので、MG−ECU350は、以降の処理をスキップして処理を終了する。
【0087】
衝突が検出された場合(S100にてYES)は、処理がS110に進められて、MG−ECU350は、還流側のスイッチング素子のゲート電圧を、車両走行時の通常動作の場合よりも高く設定する。
【0088】
そして、MG−ECU350は、S120にて、上述のようにインバータ140のスイッチング素子を駆動してコンデンサC2の残留電荷の放電動作を実行する。
【0089】
その後、S130にて、MG−ECU350は、コンデンサC2にかかる電圧VHが、所定のしきい値αを下回ったか否かを判定する。このしきい値αは、たとえば、60Vとされ得る。
【0090】
電圧VHがしきい値α以上の場合(S130にてNO)には、放電動作が完了していないため、処理がS120に戻されて、MG−ECU350は、電圧VHがしきい値αを下回るまで放電動作を継続する。
【0091】
電圧VHがしきい値αを下回った場合(S130にてYES)には、MG−ECU350は、コンデンサC2の残留電荷の放電が完了したものと判断して、放電動作を終了する。
【0092】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、車両の衝突が発生した場合に、PCUに含まれるコンデンサの残留電荷の放電時間を短縮することが可能となる。これにより、補機バッテリからPCUへの電源電圧供給が途絶した場合においても、大容量のバックアップコンデンサを用いることなく、放電動作を完了させることができるので、コストアップを防止することができる。
【0093】
(変形例)
上述の実施の形態においては、インバータを駆動してモータジェネレータによって残留電荷を放電する構成について説明した。図1のように、蓄電装置からの直流電圧をコンバータで昇圧してインバータに供給する構成においては、上記のインバータおよびモータジェネレータを用いた放電動作に代えて、あるいはそれに加えて、コンバータを動作させることによってコンデンサの残留電荷を放電させるようにしてもよい。
【0094】
図11は、図1におけるコンバータ130を用いたコンデンサC2の残留電荷の放電動作を説明するための図である。
【0095】
図1および図11を参照して、通常の走行中は、蓄電装置110からの直流電圧がコンバータ130によって昇圧されるため、コンデンサC2にかかる電圧は、一般的にコンデンサC1にかかる電圧よりも高い。
【0096】
そして、衝突が発生すると、コンデンサC2の残留電荷を放電するために、スイッチング素子Q1にゲート電圧が印加されてスイッチング素子Q1が導通状態とされ、矢印AR3のように、電流がコンデンサC2からスイッチング素子Q1およびリアクトルL1を通ってコンデンサC1へと流れる。このとき、リアクトルL1にエネルギが蓄えられる。
【0097】
その後、スイッチング素子Q1が非導通状態とされ、スイッチング素子Q2にゲート電圧が印加されると、リアクトルL1に蓄えられたエネルギがコンデンサC1に放出される間、破線の矢印AR4のような還流経路で電流が流れる。このとき、スイッチング素子Q1,Q2が逆導通型半導体素子である場合には、上述のインバータでの例で説明したように、スイッチング素子Q2に印加されるゲート電圧を大きくすることで、ダイオードD2の導通抵抗を増加して、ダイオードD2における導通損失を増加させることができる。
【0098】
このように、図1に示すような、逆導通型半導体素子を含むコンバータを有する構成の場合には、上述のインバータおよびモータジェネレータを用いた放電動作に加えてコンバータを用いた放電動作を行ない、かつコンバータにおいても還流経路のスイッチング素子のゲート電圧を大きくしてダイオードの導通損失を増加させることで、残留電荷の放電時間をよりいっそう短縮することが可能となる。
【0099】
また、コンバータによる放電動作は、モータジェネレータ等のPCU外部の機器を用いることなく、PCU内部において動作可能である。そのため、たとえば、衝突の発生によって、モータジェネレータとPCUとの間のケーブルなどの導電経路が切断されたような場合であっても、コンバータによってPCU単体で残留電荷の放電を行なうことができる。その際に、コンバータにおける還流経路のスイッチング素子のゲート電圧を大きくしてダイオードの導通損失を増加させることで、コンバータによる放電時間を短縮することができるという利点がある。
【0100】
なお、上述の実施の形態においては、理解を容易にするために、車両の衝突が発生した場合にコンデンサの残留電荷を放電する場合を例として説明したが、上述の制御は、車両の衝突以外の場合において、コンデンサの残留電荷を放電することが必要なときにも適用することが可能である。
【0101】
なお、本実施の形態における「制御部370」は、本発明の「制御装置」に対応する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
100 車両、110 蓄電装置、115 SMR、120 PCU、130 コンバータ、140 インバータ、141 U相アーム、142 V相アーム、143 W相アーム、150,155 電圧センサ、160 モータジェネレータ、165 動力伝達ギヤ、170 駆動輪、180 衝突検出部、190 補機バッテリ、200,400 逆導通型半導体素子、210 コレクタ、220 カソード、230,430 トレンチゲート、240,440 Pベース層、250 N−層、300 HV−ECU、350 MG−ECU、360 ゲート駆動部、410 N+層、C1〜C3 コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、NL1,PL1〜PL3 電力線、Q1〜Q8 スイッチング素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置およびそれを搭載する車両、ならびに駆動装置の制御方法に関し、より特定的には、駆動装置内のコンデンサの残留電荷を放電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する電動車両が注目されている。この電動車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。
【0003】
これらの電動車両においては、発進時や加速時に蓄電装置から電力を受けて走行のための駆動力を発生するとともに、制動時に回生制動によって発電を行なって蓄電装置に電気エネルギを蓄えるためのモータジェネレータを備える場合がある。このように、走行状態に応じてモータジェネレータを制御するために、電動車両には、コンバータやインバータなどによって電力を変換する電力変換装置が搭載される。
【0004】
このような電力変換装置には、供給される直流電力を安定化するために大容量の平滑コンデンサが備えられている。そして、電力変換装置の作動中は、平滑コンデンサには印加電圧に応じた電荷が蓄積される。
【0005】
この平滑コンデンサに蓄積される電荷は、たとえば車両の衝突が発生したような場合には、速やかに放電されることが必要とされる。
【0006】
特開2004−201439号公報(特許文献1)は、ハイブリッド自動車または電気自動車において、モータの駆動が停止された場合に、電圧変換システムに含まれるコンデンサの残留電荷を直流電源にチャージバックするとともに、コンデンサの両端の電圧が直流電源の電圧以下となってチャージバックできなくなると、電圧変換システムに含まれるコンバータの昇圧動作および降圧動作を繰り返すことによって、コンデンサの残留電荷をコンバータで放電する構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−201439号公報
【特許文献2】特開2003−348856号公報
【特許文献3】特開2008−061300号公報
【特許文献4】特開2002−323573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2004−201439号公報(特許文献1)に開示された技術によれば、車両の衝突が生じてモータの駆動が停止された場合には、コンデンサに蓄えられた電荷がチャージバックされる、その後残余の電荷がコンバータにより消費されるため、衝突発生時においてコンデンサに蓄えられた高圧電力による周囲への影響を排除することができる。
【0009】
しかしながら、衝突の状態によっては、制御装置への電源供給が時間の経過とともに低下または途絶してしまう可能性があり得る。そうすると、コンバータの駆動指令を出力することができず、適切にコンデンサの残留電荷を放電することができなくなる場合が生じ得る。そのため、たとえば衝突が生じたような場合にコンデンサの残留電荷を放電する際には、コンデンサの残留電荷をできるだけ速やかに放電することが必要とされる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、蓄電装置からの電力を用いて走行が可能な車両において、駆動装置内のコンデンサに蓄えられた残留電荷をできるだけ速やかに放電することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による駆動装置は、蓄電装置からの電力を用いて車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置である。駆動装置は、スイッチング素子を含み、蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、スイッチング素子の制御端子を駆動して、コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備える。電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含む。複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成される。制御装置は、コンデンサの放電動作を行なう際に、第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させる。
【0012】
好ましくは、複数の逆導通型半導体素子の各々は、還流動作時において、第1の半導体素子の制御端子に印加される電圧が大きくなると、それに伴って第2の半導体素子の導通抵抗が大きくなる特性を有する。制御装置は、コンデンサの放電に際し、複数の逆導通型半導体素子のうち、還流動作時の還流経路にある逆導通型半導体素子に含まれる第1の半導体素子の制御端子に印加される電圧を、回転電機を駆動する場合に比べて大きく設定する。
【0013】
好ましくは、電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つを含み、回転電機を駆動するためのインバータである。制御装置は、コンデンサの放電を行なう場合に、インバータと回転電機とを用いてコンデンサの電荷を放電する。
【0014】
好ましくは、制御装置は、回転電機を回転させることなく、回転電機に含まれるコイルによりコンデンサの電荷を消費させることにより放電を行なう。
【0015】
好ましくは、電力変換装置は、チョッパ回路を形成する、複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つおよびリアクトルを含み、蓄電装置から供給される直流電圧を変換するためのコンバータである。制御装置は、コンデンサの放電を行なう場合に、リアクトルによりコンデンサの電荷を放電するようにコンバータを制御する。
【0016】
好ましくは、複数の逆導通型半導体素子の各々は、第1の半導体素子がIGBTで形成され、第2の半導体素子がIGBTに逆並列に接続されたダイオードで形成される。
【0017】
好ましくは、複数の逆導通型半導体素子の各々は、電力用MOSFETで形成され、第2の半導体素子は、電力用MOSFETの寄生ダイオードである。
【0018】
好ましくは、車両は、車両の衝突を検出するための衝突検出部を含む。制御装置は、衝突検出部により車両の衝突が検出された場合に、スイッチング素子の制御端子を駆動して、コンデンサに蓄えられた電荷を放電する。
【0019】
本発明による駆動装置は、蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置である。駆動装置は、回転電機を駆動するためのインバータと、インバータに並列に接続されたコンデンサと、スイッチング素子の制御端子を駆動して、コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備える。インバータは、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成された、少なくとも1つの逆導通型半導体素子を有する。制御装置は、コンデンサの放電動作を行なう際に、第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させる。
【0020】
好ましくは、駆動装置は、逆導通型半導体素子を有し、蓄電装置からの直流電圧を変換するとともに、変換された直流電圧をインバータに供給するためのコンバータをさらに備える。
【0021】
本発明による車両は、蓄電装置と、回転電機と、蓄電装置からの電力を用いて回転電機を駆動して走行駆動力を発生させるための駆動装置とを備える。駆動装置は、スイッチング素子を有し蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、スイッチング素子の制御端子を駆動してコンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを含む。電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含む。複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成される。制御装置は、コンデンサの放電動作を行なう際に、第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させる。
【0022】
本発明による駆動装置の制御方法は、蓄電装置からの電力を用いて車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置についての制御方法である。駆動装置は、スイッチング素子を含み蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、電力変換装置に並列に接続されたコンデンサとを含む。電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含む。複数の逆導通型半導体素子の各々は、スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成される。制御方法は、スイッチング素子の制御端子を駆動してコンデンサに蓄えられた電荷を放電させるステップと、コンデンサの電荷の放電中に第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの第1の半導体素子の制御端子に印加する電圧を変化させて、第2の半導体素子による電力損失を増加させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄電装置からの電力を用いて走行が可能な車両において、駆動装置内のコンデンサに蓄えられた残留電荷をできるだけ速やかに放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に従う駆動装置が搭載される車両の全体ブロック図である。
【図2】IGBTとダイオードで構成される逆導通型半導体素子の一例を説明するための図である。
【図3】電力用MOSFETで構成される逆導通型半導体素子の一例を説明するための図である。
【図4】ゲート電圧を変化させた場合の、還流ダイオードにおける電圧と電流の関係を説明するための図である。
【図5】インバータを用いてコンデンサの残留電荷を放電する場合の電流の流れを説明するための第1の図である。
【図6】インバータを用いてコンデンサの残留電荷を放電する場合の電流の流れを説明するための第2の図である。
【図7】スイッチング素子のスイッチング動作と負荷電流との関係の一例を示す図である。
【図8】スイッチング素子の駆動タイミングの第1の例を説明するための図である。
【図9】スイッチング素子の駆動タイミングの第2の例を説明するための図である。
【図10】本実施の形態において、MG−ECUで実行される残留電荷の放電制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】コンバータを用いてコンデンサの残留電荷を放電する場合の電流の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に従う駆動装置が搭載される車両100の全体ブロック図である。本実施の形態においては、車両100が電気自動車である構成を例として説明するが、車両100の構成はこれに限定されるものではなく、蓄電装置からの電力によって走行可能な車両であれば適用可能である。車両100としては、電気自動車以外にたとえばハイブリッド車両や燃料電池自動車などが含まれる。
【0027】
図1を参照して、車両100は、蓄電装置110と、システムメインリレー(System Main Relay:SMR)115と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ160と、動力伝達ギヤ165と、駆動輪170と、衝突検出部180と、補機バッテリ190と、HV−ECU(Electronic Control Unit)300とを備える。
【0028】
PCU120は、コンバータ130と、インバータ140と、MG−ECU350と、ゲート駆動部360と、コンデンサC1〜C3とを含む。MG−ECU350およびゲート駆動部360によって、PCU120の制御部370が形成される。PCU120内の各機器は、一般的に、同一の筐体内に収納され、ケーブルやバスバーなどによって、PCU120外部のその他の機器と結合される。
【0029】
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池あるいは鉛蓄電池などの二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
【0030】
蓄電装置110は、電力線PL1,NL1を介して、PCU120のコンバータ130に接続される。蓄電装置110は、モータジェネレータ160を駆動するための電力をPCU120へ供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ160で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
【0031】
SMR115に含まれるリレーは、蓄電装置110と電力線PL1,NL1とにそれぞれ接続される。そして、SMR115は、HV−ECU300からの制御信号SE1によって制御され、蓄電装置110とコンバータ130との間での電力の供給と遮断とを切換える。
【0032】
コンデンサC1は、電力線PL1と電力線NL1との間に接続される。コンデンサC1は、電力線PL1と電力線NL1との間の電圧変動を低減する。電圧センサ150は、コンデンサC1にかかる電圧を検出し、その検出値VLをMG−ECU350へ出力する。
【0033】
コンバータ130は、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルL1とを含む。
【0034】
スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線PL2,NL1の間に、電力線PL2から電力線NL1に向かう方向を順方向として直列に接続される。なお、本実施の形態において、スイッチング素子として、IGBTを例として説明するが、それ以外の例としては、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることもできる。
【0035】
スイッチング素子Q1,Q2には、逆並列ダイオードD1,D2がそれぞれ接続される。リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと、電力線PL1との間に設けられる。すなわち、コンバータ130はチョッパ回路を形成する。
【0036】
スイッチング素子Q1,Q2は、MG−ECU350からの制御信号PWCに基づいてゲート駆動部360により生成されるゲート電圧信号VGCによって制御され、電力線PL1,NL1と、電力線PL2,NL1との間で電圧変換動作を行なう。
【0037】
コンバータ130は、基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1およびQ2が相補的かつ交互にオン・オフするように制御される。コンバータ130は、昇圧動作時には、蓄電装置110からの直流電圧を昇圧する。この昇圧動作は、スイッチング素子Q2のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q1および逆並列ダイオードD1を介して、電力線PL2へ供給することにより行なわれる。
【0038】
また、コンバータ130は、降圧動作時には、インバータ140からの直流電圧を降圧する。この降圧動作は、スイッチング素子Q1のオン期間にリアクトルL1に蓄積された電磁エネルギを、スイッチング素子Q2および逆並列ダイオードD2を介して、電力線NL1へ供給することにより行なわれる。
【0039】
これらの昇圧動作および降圧動作における電圧変換比は、上記スイッチング周期におけるスイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ比)により制御される。なお、昇圧動作および降圧動作が不要の場合には、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ固定するように制御信号PWCを設定することで、電圧変換比=1.0(デューティ比=100%)とすることもできる。
【0040】
なお、本発明においては、コンバータ130は必須ではなく、蓄電装置110からの出力電圧がインバータ140に直接供給される構成であってもよい。
【0041】
コンデンサC2は、コンバータ130とインバータ140とを結ぶ電力線PL2,NL1の間に接続される。コンデンサC2は、電力線PL2と電力線NL1との間の電圧変動を低減する。電圧センサ155は、コンデンサC2にかかる電圧を検出し、その検出値VHをMG−ECU350へ出力する。
【0042】
インバータ140は、電力線PL2,NL1を介して、コンバータ130に接続される。インバータ140は、MG−ECU350からの制御指令PWIに基づいてゲート駆動部360によって生成されるゲート電圧信号VGIにより制御され、コンバータ130から出力される直流電力を、モータジェネレータ160を駆動するための交流電力に電力変換する。
【0043】
インバータ140は、U相アーム141と、V相アーム142と、W相アーム143とを含み、これらによりブリッジ回路が形成される。U相アーム141、V相アーム142およびW相アーム143は、電力線PL2と電力線NL1との間に並列に接続される。
【0044】
U相アーム141は、電力線PL2と電力線NL1との間に直列接続されたスイッチング素子Q3,Q4と、スイッチング素子Q3,Q4にそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはスイッチング素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはスイッチング素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはスイッチング素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはスイッチング素子Q4のエミッタと接続される。
【0045】
V相アーム142は、電力線PL2と電力線NL1との間に直列接続されたスイッチング素子Q5,Q6と、スイッチング素子Q5,Q6にそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはスイッチング素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはスイッチング素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはスイッチング素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはスイッチング素子Q6のエミッタと接続される。
【0046】
W相アーム143は、電力線PL2と電力線NL1との間に直列接続されたスイッチング素子Q7,Q8と、スイッチング素子Q7,Q8にそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはスイッチング素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはスイッチング素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはスイッチング素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはスイッチング素子Q8のエミッタと接続される。
【0047】
モータジェネレータ160は、たとえば、永久磁石が埋設されたロータと中性点でY結線された三相コイルを有するステータとを備える三相交流電動発電機であり、U相,V相,W相の3つのコイルは、各々一方端が中性点に共に接続される。そして、U相コイルの他方端がスイッチング素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がスイッチング素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がスイッチング素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
【0048】
モータジェネレータ160の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される動力伝達ギヤ165を介して駆動輪170に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ160は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪170の回転力によって発電することができる。そして、その発電電力は、インバータ140によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
【0049】
また、モータジェネレータ160の他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよびモータジェネレータ160を協調的に動作させることによって、必要な車両駆動力が発生される。この場合、エンジンの回転による発電電力を用いて、蓄電装置110を充電することも可能である。
【0050】
なお、図1においては、モータジェネレータが1つ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータを複数設ける構成としてもよい。たとえば、2つのモータジェネレータを備えるハイブリッド車両の場合には、一方のモータジェネレータを専ら駆動輪170を駆動するための電動機として用い、他方のモータジェネレータを専らエンジンにより駆動される発電機として用いるようにしてもよい。
【0051】
衝突検出部180は、図示しないセンサ(たとえばGセンサ)を含み、車両100が衝突したか否かを検出する。そして、その衝突検出信号COLをHV−ECU300へ出力する。
【0052】
HV−ECU300およびMG−ECU350は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、車両100および各機器の制御を行なう。HV−ECU300は、車両全体の制御を統括する制御装置であり、MG−ECU350は、PCU120内の機器(コンバータ130,インバータ140,ゲート駆動部360など)を制御するための制御装置である。HV−ECU300およびMG−ECU350における制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0053】
なお、図1においては、制御装置としてHV−ECU300およびMG−ECU350が個別に備えられる構成を例として説明するが、制御装置の構成はこれに限定されない。たとえば、HV−ECU300およびMG−ECU350が統合された1つの制御装置としてもよいし、機器ごとや機能ごとに、より多くの制御装置が設けられる構成としてもよい。
【0054】
HV−ECU300は、衝突検出部180からの衝突検出信号COLを受ける。また、HV−ECU300は、MG−ECU350から、電圧センサ150,155で検出された電圧VR,VHを受ける。HV−ECU300は、ユーザによるアクセル操作およびモータジェネレータ160の回転速度などに基づいて、コンバータ130の目標昇圧電圧VR、および目標要求トルクTRを演算する。そして、HV−ECU300は、MG−ECU350へ、目標昇圧電圧VR、目標要求トルクTRおよび衝突検出信号COLをMG−ECU350へ出力する。
【0055】
MG−ECU350は、HV−ECU300からの目標昇圧電圧VRおよび目標要求トルクTRと、電圧センサ150,155の検出値VL,VHおよびモータジェネレータ160の電流,回転速度などに基づいて、コンバータ130およびインバータ140を駆動するための制御信号PWC,PWIをそれぞれ生成する。MG−ECU350は、これらの制御信号PWC,PWIをゲート駆動部360へ出力する。
【0056】
ゲート駆動部360は、制御信号PWC,PWIに基づいて、コンバータ130およびインバータ140に含まれる各スイッチング素子のゲートを駆動するためのゲート電圧信号VGC,VGIをそれぞれ生成し、コンバータ130およびインバータ140に出力する。
【0057】
また、MG−ECU350は、HV−ECU300から、車両100の衝突検出信号COLを受ける。MG−ECU160は、衝突検出信号COLを受信した場合は、コンデンサC2に蓄えられた残留電荷をモータジェネレータ160および/またはコンバータ130を用いて放電するような制御信号PWC,PWIを生成する。
【0058】
補機バッテリ190は、各ECUなどの制御装置および図示しない補機装置のような車両100の低圧系の機器に対して電源電圧を供給するための電圧源である。補機バッテリ190は代表的には鉛蓄電池により構成され、その出力電圧は、たとえば12V程度である。
【0059】
補機バッテリ190は、電力線PL3を介して、HV−ECU300、MG−ECU350、およびゲート駆動部360に接続され、これらの機器へ電源電圧を供給する。
【0060】
PCU120内において、電力線PL3と接地との間に、コンデンサC3が設けられる。コンデンサC3は、補機バッテリ190からPCU120への電源電圧が途絶した場合に、MG−ECU350およびゲート駆動部360をしばらくの期間動作させるためのバックアップコンデンサであり、補機バッテリ190からの電圧によって電力が蓄えられる。これによって、衝突などによって、補機バッテリ190からPCU120への電源電圧が途絶した場合でも、しばらくの期間は、コンデンサC3に蓄えられた電力によってMG−ECU350およびゲート駆動部360を動作させることができる。
【0061】
上記のような構成の車両100においては、車両100がモータジェネレータ160からの駆動力を用いて走行している場合には、PCU120内のコンデンサC1,C2には、電荷が蓄えられた状態となっている。このような状態において、衝突が生じたような場合には、短絡や地絡等による機器の破損や周囲への影響を抑制するために、コンデンサC1,C2に蓄えられた残留電荷をできるだけ迅速に放電することが望ましい。
【0062】
このような放電として、インバータ140を駆動してモータジェネレータ160にd軸電流を流すことによって、モータジェネレータ160の回転させることなく、モータジェネレータ160内のコイルによって電荷を消費させたり、コンバータ130により、昇圧動作と降圧動作とを繰り返して、コンバータ130に含まれるリアクトルL1により電荷を消費させたりする場合がある。
【0063】
この場合、コンバータ130およびインバータ140を駆動させるために、MG−ECU350およびゲート駆動部360を動作させることが必要となるが、たとえば、衝突によって、補機バッテリ190からPCU120への電源電圧の供給が途絶してしまった場合には、コンデンサC3に蓄えられた電力では放電動作が完了できない可能性が生じ得る。そして、これに対処するためにコンデンサC3の容量を大きくすると、かえってコストの増加となってしまう。
【0064】
そのため、コンデンサC3の容量を大きくすることなく、衝突発生時に補機バッテリ190からPCU120への電源電圧が途絶した場合であっても確実に放電動作を完了させることが必要とされる。
【0065】
ここで、PCU120のコンバータ130およびインバータ140においては、スイッチング素子とスイッチング素子に逆並列に接続された還流ダイオード(Free Wheeling Diode:FWD)とが一体で形成された、いわゆる逆導通型半導体素子が用いられる場合がある。
【0066】
この逆導通型半導体素子は、後述するように、還流ダイオードに電流が流れている場合に、対応するスイッチング素子のゲート電圧を増加させると、還流ダイオードの導通抵抗が増加するという特性を有する。
【0067】
そこで、本実施の形態においては、コンバータ130およびインバータ140などの電力変換装置に、このような逆導通型半導体素子が含まれる場合に、上記のような特性を利用して放電時間を短縮させる。
【0068】
図2は、逆導通型半導体素子200の断面構造の例の概略図である。図2の逆導通型半導体素子は、IGBTとダイオードで構成されており、RC−IGBT(Reverse Conducting-IGBT)とも称される。
【0069】
図2を参照して、逆導通型半導体素子200の表面はいわゆるトレンチゲート型の構造を有している。一方、裏面は、IGBT領域となるコレクタ層(P+層)210と、FWD領域となるカソード層(N+層)220とで形成される。このような構成とすることによって、IGBT領域においては、コレクタ210側の電位がエミッタ260側の電位よりも高い場合には、トレンチゲート230にゲート電圧を印加することによって、コレクタ210からPベース層240を通ってエミッタ260へ電流が流れる。また、エミッタ260側の電位がコレクタ210側の電位よりも高い場合には、FWD領域において、アノードからカソード220へ電流が流れる。なお、図2においては、トレンチゲート型のIGBTを例としたが、プレーナゲート型のIGBTとしてもよい。
【0070】
また、図3は、電力用MOSFETにより構成される逆導通型半導体素子400の断面構造の例を示す。電力用MOSFETは、寄生ダイオードが備わっているため、アノード420の電位がカソード410の電位よりも高い場合には、この寄生ダイオードによって、アノード420からカソード410へ電流が流れる。一方、ドレイン410の電位がソース420の電位よりも高い場合には、トレンチゲート430にゲート電圧を印加することによって、ドレイン410からソース420に電流が流れる。
【0071】
このような逆導通型半導体素子においては、逆導通型半導体素子がダイオードとして動作しているときにゲート電圧を高くすると、ダイオードの順方向特性が低下し、導通抵抗が増加することが知られている。これは、ゲート電圧を高くすることで、Pベース層においてチャネル領域が拡大して、図2におけるPベース層240とN−層250との間の電位差が低下するためである。
【0072】
図4は、ゲート電圧を変化させたときの、逆導通型半導体素子のダイオードとしての順方向特性の一例を示す図である。図4においては、横軸に逆導通型半導体素子のダイオードの順方向電圧Vfが示され、縦軸は逆導通型半導体素子に流れる電流Ifが示される。
【0073】
図4を参照して、ゲート電圧を高くしていくにしたがって、順方向特性の曲線は、曲線W10から曲線W13へと変化する。そのため、同じ大きさの電流を流す場合に、ゲート電圧を高くすると、たとえば、図4の点P1から点P2へと動作点が変化し、逆導通型半導体素子における電圧降下が大きくなる。すなわち、逆導通型半導体素子における導通損失が大きくなる。
【0074】
本実施の形態においては、PCUにおいて逆導通型半導体素子を含むインバータ、コンバータなどの電力変換装置が用いられる場合に、上述のような逆導通型半導体素子の特性を利用して、PCU内のコンデンサの残留電荷を短時間で放電させる。図5から図7を用いて、コンデンサの残留電荷の放電動作について説明する。
【0075】
図5を参照して、たとえば、ゲート駆動部360からのゲート電圧信号VGIによって、インバータ140のU相アーム141における上アームのスイッチング素子Q3およびV相アーム142の下アームのスイッチング素子Q6が導通状態とされる。これにより、コンデンサC2から図5中の矢印AR1のように電流が流れて、モータジェネレータ160のU相およびV相のコイルにエネルギが蓄えられる。
【0076】
その後、図5の状態から、図6のように、U相アーム141の上アームのスイッチング素子Q3が非導通状態とされると、U相およびV相のコイルに蓄えられたエネルギによって、図6中の矢印AR2のように、スイッチング素子Q6およびダイオードD4を通って電流が還流する。このとき、U相およびV相のコイルおよび各素子を電流が流れる際の導通損失により放電が行なわれる。その後、スイッチング素子Q3が再び導通状態とされると、コンデンサC2から再び電流がU相およびV相のコイルに流れる。
【0077】
このように、スイッチング素子Q3について、導通状態と非導通状態とを適切なデューティで切換えることによって、図7のように、時間とともにコンデンサC2の残留電荷が徐々に放電される。なお、図7における曲線W20は、上記のU相およびV相のコイルのような負荷に流れる電流が示されており、矢印AR10は図5の状態における電流が示され、矢印AR20は図6の状態における電流が示されている。また、破線の曲線W21は、平均の負荷電流である。
【0078】
このような放電動作においては、スイッチング素子Q4のゲート電圧の印加の有無に関らず、還流ダイオードとして動作するダイオードD4は導通状態となる。しかしながら、スイッチング素子Q4とダイオードD4とが、上述のような逆導通型半導体素子で構成されている場合には、ゲート電圧を高くすることによってダイオードD4の導通損失を大きくすることができる。これによって、還流動作における消費電力が増大し、放電時間を短縮することができる。
【0079】
なお、図5および図6においては、U相アーム141のスイッチング素子を切換えることによって、U相およびV相のコイルで残留電荷を放電する場合を説明したが、スイッチング素子Q6に加えてV相アーム143のスイッチング素子Q8を導通状態として、W相コイルをさらに用いて放電動作を行なってもよい。また、U相アーム141に代えて、またはそれに加えてV相アーム142,W相アーム143のスイッチング素子を切換えて放電動作を行なってもよい。
【0080】
図8は、本実施の形態における、上述した放電動作を行なう場合の、ゲート電圧を示すタイムチャートである。図8においては、横軸には時間が示され、縦軸にはスイッチング素子Q3,Q4のゲート電圧信号が示される。
【0081】
図8を参照して、モータジェネレータを駆動して車両を走行させる際に、PWM制御において、上アームのスイッチング素子にゲート電圧信号を印加して導通状態とし、モータジェネレータのコイルに正側の交流電圧を供給する場合、上アームのスイッチング素子が非導通状態(ゲート電圧信号オフ)で下アームのダイオードにより還流しているときには、一般的には、不要な損失が生じないように下アームのスイッチング素子のゲート電圧信号は印加されない。
【0082】
ところが、衝突が生じた場合には、下アームのダイオードによる導通損失を増加させるために、上アームのスイッチング素子が非導通状態の期間に、下アームのスイッチング素子にゲート電圧信号が印加される。図3で説明したように、ゲート電圧が大きいほど、ダイオードでの導通損失が大きくなるので、印加されるゲート電圧は、車両走行の際の通常駆動に用いるゲート電圧VGI−1よりも高い電圧VGI−2に設定することがより好ましい。さらに理想的には、ゲートに印加可能な最大定格電圧とすることが望ましい。なお、このとき、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とが同時に導通状態となって短絡を生じることを防止するために、上アームのスイッチング素子に印加されるゲート電圧と、下アームのスイッチング素子に印加されるゲート電圧との間には、一般的にデッドタイムΔtが設けられる。
【0083】
また、図9のように、車両を走行させる通常駆動の場合においても、上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子とに、相補的に交互にゲート電圧を印加するように制御される場合がある(図9中の破線W30)。このような場合においても、下アームのダイオードにより還流している場合には、図9中の実線W31のように、下アームのスイッチング素子に通常駆動のときよりも高いゲート電圧を印加することによって、下アームのダイオードの導通損失を増加させることができる。
【0084】
図10は、本実施の形態において、MG−ECU350において実行される、車両衝突時の残留電荷の放電制御処理を説明するためのフローチャートである。図10に示すフローチャート中の各ステップについては、MG−ECU350に予め格納されたプログラムが所定周期でメインルーチンから呼び出されて実行されることによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0085】
図1および図10を参照して、MG−ECU350は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、HV−ECU300からの衝突検出信号COLに基づいて、車両100の衝突が検出されたか否かを判定する。なお、衝突またはそれ以外の要因によって、HV−ECU300とMG−ECU350との間の通信が途絶して、衝突検出信号COLが受信できない状態となった場合にも、MG−ECU350は、衝突の可能性があるとして、衝突が検出されたと判定するようにしてもよい。
【0086】
衝突が検出されなかった場合(S100にてNO)は、当該処理は不要であるので、MG−ECU350は、以降の処理をスキップして処理を終了する。
【0087】
衝突が検出された場合(S100にてYES)は、処理がS110に進められて、MG−ECU350は、還流側のスイッチング素子のゲート電圧を、車両走行時の通常動作の場合よりも高く設定する。
【0088】
そして、MG−ECU350は、S120にて、上述のようにインバータ140のスイッチング素子を駆動してコンデンサC2の残留電荷の放電動作を実行する。
【0089】
その後、S130にて、MG−ECU350は、コンデンサC2にかかる電圧VHが、所定のしきい値αを下回ったか否かを判定する。このしきい値αは、たとえば、60Vとされ得る。
【0090】
電圧VHがしきい値α以上の場合(S130にてNO)には、放電動作が完了していないため、処理がS120に戻されて、MG−ECU350は、電圧VHがしきい値αを下回るまで放電動作を継続する。
【0091】
電圧VHがしきい値αを下回った場合(S130にてYES)には、MG−ECU350は、コンデンサC2の残留電荷の放電が完了したものと判断して、放電動作を終了する。
【0092】
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、車両の衝突が発生した場合に、PCUに含まれるコンデンサの残留電荷の放電時間を短縮することが可能となる。これにより、補機バッテリからPCUへの電源電圧供給が途絶した場合においても、大容量のバックアップコンデンサを用いることなく、放電動作を完了させることができるので、コストアップを防止することができる。
【0093】
(変形例)
上述の実施の形態においては、インバータを駆動してモータジェネレータによって残留電荷を放電する構成について説明した。図1のように、蓄電装置からの直流電圧をコンバータで昇圧してインバータに供給する構成においては、上記のインバータおよびモータジェネレータを用いた放電動作に代えて、あるいはそれに加えて、コンバータを動作させることによってコンデンサの残留電荷を放電させるようにしてもよい。
【0094】
図11は、図1におけるコンバータ130を用いたコンデンサC2の残留電荷の放電動作を説明するための図である。
【0095】
図1および図11を参照して、通常の走行中は、蓄電装置110からの直流電圧がコンバータ130によって昇圧されるため、コンデンサC2にかかる電圧は、一般的にコンデンサC1にかかる電圧よりも高い。
【0096】
そして、衝突が発生すると、コンデンサC2の残留電荷を放電するために、スイッチング素子Q1にゲート電圧が印加されてスイッチング素子Q1が導通状態とされ、矢印AR3のように、電流がコンデンサC2からスイッチング素子Q1およびリアクトルL1を通ってコンデンサC1へと流れる。このとき、リアクトルL1にエネルギが蓄えられる。
【0097】
その後、スイッチング素子Q1が非導通状態とされ、スイッチング素子Q2にゲート電圧が印加されると、リアクトルL1に蓄えられたエネルギがコンデンサC1に放出される間、破線の矢印AR4のような還流経路で電流が流れる。このとき、スイッチング素子Q1,Q2が逆導通型半導体素子である場合には、上述のインバータでの例で説明したように、スイッチング素子Q2に印加されるゲート電圧を大きくすることで、ダイオードD2の導通抵抗を増加して、ダイオードD2における導通損失を増加させることができる。
【0098】
このように、図1に示すような、逆導通型半導体素子を含むコンバータを有する構成の場合には、上述のインバータおよびモータジェネレータを用いた放電動作に加えてコンバータを用いた放電動作を行ない、かつコンバータにおいても還流経路のスイッチング素子のゲート電圧を大きくしてダイオードの導通損失を増加させることで、残留電荷の放電時間をよりいっそう短縮することが可能となる。
【0099】
また、コンバータによる放電動作は、モータジェネレータ等のPCU外部の機器を用いることなく、PCU内部において動作可能である。そのため、たとえば、衝突の発生によって、モータジェネレータとPCUとの間のケーブルなどの導電経路が切断されたような場合であっても、コンバータによってPCU単体で残留電荷の放電を行なうことができる。その際に、コンバータにおける還流経路のスイッチング素子のゲート電圧を大きくしてダイオードの導通損失を増加させることで、コンバータによる放電時間を短縮することができるという利点がある。
【0100】
なお、上述の実施の形態においては、理解を容易にするために、車両の衝突が発生した場合にコンデンサの残留電荷を放電する場合を例として説明したが、上述の制御は、車両の衝突以外の場合において、コンデンサの残留電荷を放電することが必要なときにも適用することが可能である。
【0101】
なお、本実施の形態における「制御部370」は、本発明の「制御装置」に対応する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
100 車両、110 蓄電装置、115 SMR、120 PCU、130 コンバータ、140 インバータ、141 U相アーム、142 V相アーム、143 W相アーム、150,155 電圧センサ、160 モータジェネレータ、165 動力伝達ギヤ、170 駆動輪、180 衝突検出部、190 補機バッテリ、200,400 逆導通型半導体素子、210 コレクタ、220 カソード、230,430 トレンチゲート、240,440 Pベース層、250 N−層、300 HV−ECU、350 MG−ECU、360 ゲート駆動部、410 N+層、C1〜C3 コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、NL1,PL1〜PL3 電力線、Q1〜Q8 スイッチング素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置であって、
前記駆動装置は、
スイッチング素子を含み、前記蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、
前記電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備え、
前記電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含み、
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成され、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電動作を行なう際に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させる、駆動装置。
【請求項2】
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記還流動作時において、前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加される電圧が大きくなると、それに伴って前記第2の半導体素子の導通抵抗が大きくなる特性を有し、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電に際し、前記複数の逆導通型半導体素子のうち、前記還流動作時の還流経路にある逆導通型半導体素子に含まれる前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加される電圧を、前記回転電機を駆動する場合に比べて大きく設定する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記電力変換装置は、前記複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つを含み、前記回転電機を駆動するためのインバータであり、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電を行なう場合に、前記インバータと前記回転電機とを用いて、前記コンデンサの電荷を放電する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回転電機を回転させることなく、前記回転電機に含まれるコイルにより前記コンデンサの電荷を消費させることにより放電を行なう、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記電力変換装置は、チョッパ回路を形成する、前記複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つおよびリアクトルを含み、前記蓄電装置から供給される直流電圧を変換するためのコンバータであり、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電を行なう場合に、前記リアクトルにより前記コンデンサの電荷を放電するように前記コンバータを制御する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記第1の半導体素子がIGBTで形成され、前記第2の半導体素子が前記IGBTに逆並列に接続されたダイオードで形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、電力用MOSFETで形成され、
前記第2の半導体素子は、前記電力用MOSFETの寄生ダイオードである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記車両は、前記車両の衝突を検出するための衝突検出部を含み、
前記制御装置は、前記衝突検出部により前記車両の衝突が検出された場合に、前記スイッチング素子の前記制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置であって、
スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成された、少なくとも1つの逆導通型半導体素子を有し、前記回転電機を駆動するためのインバータと、
前記インバータに並列に接続されたコンデンサと、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電動作を行なう際に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させる、駆動装置。
【請求項10】
前記逆導通型半導体素子を有し、前記蓄電装置からの直流電圧を変換するとともに、変換された前記直流電圧を前記インバータに供給するためのコンバータをさらに備える、請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
車両であって、
蓄電装置と、
回転電機と、
前記蓄電装置からの電力を用いて前記回転電機を駆動して走行駆動力を発生させるための駆動装置とを備え、
前記駆動装置は、
スイッチング素子を有し、前記蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、
前記電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを含み、
前記電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含み、
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成され、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電動作を行なう際に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させる、車両。
【請求項12】
蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置の制御方法であって、
前記駆動装置は、
スイッチング素子を含み、前記蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、
前記電力変換装置に並列に接続されたコンデンサとを含み、
前記電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含み、
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成され、
前記制御方法は、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電させるステップと、
前記コンデンサの電荷の放電中に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させるステップとを備える、駆動装置の制御方法。
【請求項1】
蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置であって、
前記駆動装置は、
スイッチング素子を含み、前記蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、
前記電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備え、
前記電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含み、
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成され、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電動作を行なう際に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させる、駆動装置。
【請求項2】
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記還流動作時において、前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加される電圧が大きくなると、それに伴って前記第2の半導体素子の導通抵抗が大きくなる特性を有し、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電に際し、前記複数の逆導通型半導体素子のうち、前記還流動作時の還流経路にある逆導通型半導体素子に含まれる前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加される電圧を、前記回転電機を駆動する場合に比べて大きく設定する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記電力変換装置は、前記複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つを含み、前記回転電機を駆動するためのインバータであり、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電を行なう場合に、前記インバータと前記回転電機とを用いて、前記コンデンサの電荷を放電する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記回転電機を回転させることなく、前記回転電機に含まれるコイルにより前記コンデンサの電荷を消費させることにより放電を行なう、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記電力変換装置は、チョッパ回路を形成する、前記複数の逆導通型半導体素子のうちの少なくとも1つおよびリアクトルを含み、前記蓄電装置から供給される直流電圧を変換するためのコンバータであり、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電を行なう場合に、前記リアクトルにより前記コンデンサの電荷を放電するように前記コンバータを制御する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記第1の半導体素子がIGBTで形成され、前記第2の半導体素子が前記IGBTに逆並列に接続されたダイオードで形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、電力用MOSFETで形成され、
前記第2の半導体素子は、前記電力用MOSFETの寄生ダイオードである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記車両は、前記車両の衝突を検出するための衝突検出部を含み、
前記制御装置は、前記衝突検出部により前記車両の衝突が検出された場合に、前記スイッチング素子の前記制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置であって、
スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成された、少なくとも1つの逆導通型半導体素子を有し、前記回転電機を駆動するためのインバータと、
前記インバータに並列に接続されたコンデンサと、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電動作を行なう際に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させる、駆動装置。
【請求項10】
前記逆導通型半導体素子を有し、前記蓄電装置からの直流電圧を変換するとともに、変換された前記直流電圧を前記インバータに供給するためのコンバータをさらに備える、請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
車両であって、
蓄電装置と、
回転電機と、
前記蓄電装置からの電力を用いて前記回転電機を駆動して走行駆動力を発生させるための駆動装置とを備え、
前記駆動装置は、
スイッチング素子を有し、前記蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、
前記電力変換装置に並列に接続されたコンデンサと、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電するための制御装置とを含み、
前記電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含み、
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成され、
前記制御装置は、前記コンデンサの放電動作を行なう際に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させる、車両。
【請求項12】
蓄電装置からの電力を用いて、車両に搭載された回転電機を駆動するための駆動装置の制御方法であって、
前記駆動装置は、
スイッチング素子を含み、前記蓄電装置からの電力を変換するための電力変換装置と、
前記電力変換装置に並列に接続されたコンデンサとを含み、
前記電力変換装置は、複数の逆導通型半導体素子を含み、
前記複数の逆導通型半導体素子の各々は、前記スイッチング素子として動作する第1の半導体素子、および前記第1の半導体素子に並列に接続され還流ダイオードとして動作する第2の半導体素子が一体で形成され、
前記制御方法は、
前記スイッチング素子の制御端子を駆動して、前記コンデンサに蓄えられた電荷を放電させるステップと、
前記コンデンサの電荷の放電中に、前記第2の半導体素子によって還流動作が行なわれているときの前記第1の半導体素子の前記制御端子に印加する電圧を変化させて、前記第2の半導体素子による電力損失を増加させるステップとを備える、駆動装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−21890(P2013−21890A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155505(P2011−155505)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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