説明

駆動装置

【課題】駆動部材にねじ、溝等の加工を施すことなく駆動部材を支持部材に容易に固定でき、且つ信頼性が高く、駆動特性にも悪影響を与えない駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置のベースとなる支持部材12であって、穴12aを有する支持部材と、一端に圧電素子13が結合され、その他の少なくとも1箇所が支持部材の穴に隙間を持って嵌合して支持される棒状の駆動部材11と、駆動部材に摩擦係合されるとともに、圧電素子の振動による駆動部材の振動により駆動部材に沿って移動する被駆動部材14と、駆動部材の、穴に嵌合された部分の少なくとも1箇所を、穴の内面に向けて押圧する押圧部材15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を利用した駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電素子を用いた駆動装置の内、圧電素子は支持部材に固定せず、圧電素子に固定された駆動部材の部分を支持部材に固定する方式のものでは、駆動部材を支持部材、つまり本体に固定する方法として様々な方法が提案されている。その一つとして接着剤を使用して固着する方法があるが、これは接着強度や硬化するまでに時間がかかることなど多くの問題がある。このため、他の方法として、図6のような駆動装置が特許文献1に記載されている。
【0003】
図6に示す構造では、一端に圧電素子3が接合され、他端が支持部材2に固定された駆動部材1と、この駆動部材1に摩擦接合された被駆動部材4とを備え、圧電素子3の振動により駆動部材1に振動を起こし、被駆動部材4を駆動部材1に沿って移動させる。この構造では、駆動部材1に加工を施し、駆動部材1の固定端に雌ねじ部材1aがインサートされている。駆動部材1は、支持部材2の貫通穴2aに挿通される雄ねじ部材5により、支持部材2に引きつけて強固に固定されている。
【特許文献1】特開2002−300789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの圧電素子等の電気・機械変換素子を用いた駆動装置では、圧電素子等が、質量が大きく剛性の高い支持部材に強固に固定された駆動部材に取り付けられているため、圧電素子等が駆動部材に加える振動が支持部材に抑制される。そのため必要とする駆動特性を得るためには振動発生力の大きな圧電素子等の電気・機械変換素子を備える必要が生ずる。
【0005】
また、いずれの方法も接着、ねじ切り、溝切り等の加工が必要となり、生産性を悪化させる。
【0006】
従って、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動部材にねじ、溝等の加工を施すことなく駆動部材を支持部材に容易に固定でき、且つ信頼性が高く、駆動特性にも悪影響を与えない駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる駆動装置は、駆動装置のベースとなる支持部材であって、穴を有する支持部材と、一端に圧電素子が結合され、その他の少なくとも1箇所が前記支持部材の前記穴に隙間を持って嵌合して支持される棒状の駆動部材と、前記駆動部材に摩擦係合されるとともに、前記圧電素子の振動による前記駆動部材の振動により前記駆動部材に沿って移動する被駆動部材と、前記駆動部材の、前記穴に嵌合された部分の少なくとも1箇所を、前記穴の内面に向けて押圧する押圧部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、この発明に係わる駆動装置において、前記押圧部材は、前記駆動部材に接触する先端に向かって先細形状の止め雄ねじであることを特徴とする。
【0009】
また、この発明に係わる駆動装置において、前記支持部材の前記穴は、丸穴状であることを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係わる駆動装置において、前記支持部材の前記穴は、前記押圧部材の先端に対向する位置にV字形状の面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動部材にねじ、溝等の加工を施すことなく駆動部材を支持部材に容易に固定でき、且つ信頼性が高く、駆動特性にも悪影響を与えない駆動装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【0014】
図1において、円柱状(棒状)の駆動部材11の一端には圧電素子13が接着剤等により接合(結合)されており、被駆動部材14が加圧部材14aによって加圧されて駆動部材11に摩擦係合されている。支持部材(ベース)12には、駆動部材11がすきまばめの状態で挿入される穴(丸穴状)12aが設けられている。穴12aの深さ方向の略中央に、先細形状の細い先端15aを穴12aの内側に向けた状態で、穴12aの中心を向いた止め雄ねじ15が備えられている。この止め雄ねじ15の少なくとも先端部は駆動部材11よりも硬い材質で形成されている。この構成により、駆動部材11の他端(1箇所)11aは支持部材12に設けられた穴12aに挿通され止め雄ねじ15により穴12aの内壁(内面)に押圧・圧接されるとともに、ねじの細い先端15aが駆動部材11に食い込んだ状態で取り付けられる。そして、駆動部材11は支持部材12に対し倒れたり抜けたりしないように固定される。
【0015】
支持部材12の穴はU字状の溝などでも良い。この場合はU字の開口部方向に直交する方向にねじにより押圧する。また押圧手段は複数でも良く、この場合支持部材と押圧手段の接触部分は、押圧手段の数だけの点接触部分と、その押圧の合成力方向の線接触部分を持つこととなる。
【0016】
上記のように構成される駆動装置では、不図示の駆動回路により鋸歯状あるいは矩形などの適切な波形の電圧を圧電素子13に印加して圧電素子13を振動させ、接合されている駆動部材11を長手方向に振動させ、被駆動部材14を駆動部材11に沿って移動させる。
【0017】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【0018】
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した支持部材に設けられた穴12aの形状を変更したものである。
【0019】
支持部材22にはV字形状のV溝22bを有する穴22aが駆動部材11と隙間を有する大きさで設けられている。穴22aの深さ方向の略中央に、V溝22bに対向した位置に細い先端15aをV溝22bに向けて止め雄ねじ15が備えられている。この構成により、駆動部材11の他端11aは支持部材22に設けられた穴22aに挿通され止め雄ねじ15によりV溝22bのV面に圧接されるとともに、ねじの細い先端15aが駆動部材11に食い込んだ状態で取り付けられる。そして、駆動部材11は支持部材22に対し倒れたり抜けたりしないように固定される。
【0020】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【0021】
第3の実施形態は、第1及び第2の実施形態の変形例である。
【0022】
駆動部材11は、一端に接合された圧電素子13と摩擦係合された被駆動部材14の間の位置で支持部材12に固定されている。
【0023】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【0024】
第4の実施形態は、第1及び第2の実施形態の変形例である。図4では第1の実施形態の変形例を説明する。
【0025】
支持部材12の他に、被駆動部材14と圧電素子13の間に支持部材42を備え、支持部材42に駆動部材11が挿通し可動できる穴42aを設け、駆動部材11を両持支持する。
【0026】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【0027】
第5の実施形態は、第3の実施形態の変形例である。
【0028】
支持部材32の他に、被駆動部材14を間にして駆動部材11の他端11aを支持する支持部材52を備え、支持部材52に駆動部材11が挿通し可動できる穴52aを設け、駆動部材11を両持支持する。
【0029】
以上説明したように、上記の第1乃至第5の実施形態によれば、支持部材と駆動部材の嵌合が線及び点接触となるため、駆動部材の振動が抑制されることが少なく、小さい出力の圧電素子で被駆動部材を効率良く駆動することができる。また駆動部材を支持部材の穴などに通し、ねじなどの押圧部材で押圧して固定するので、容易に組立てることができる。さらに接着などによる固着で固定するのではないので、振動による剥がれなどが無く、信頼性の高い駆動装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施形態の駆動装置の構成を示す図である。
【図6】従来の圧電素子を用いた駆動装置を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
11 駆動部材
11a 端部
12 支持部材
12a 穴
13 圧電素子
14 被駆動部材
14a 加圧部材
15 止め雄ねじ
15a ねじ先端
22 支持部材
22a 穴
22b V溝
42 支持部材
42a 穴
52 支持部材
52a 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置のベースとなる支持部材であって、穴を有する支持部材と、
一端に圧電素子が結合され、その他の少なくとも1箇所が前記支持部材の前記穴に隙間を持って嵌合して支持される棒状の駆動部材と、
前記駆動部材に摩擦係合されるとともに、前記圧電素子の振動による前記駆動部材の振動により前記駆動部材に沿って移動する被駆動部材と、
前記駆動部材の、前記穴に嵌合された部分の少なくとも1箇所を、前記穴の内面に向けて押圧する押圧部材と、
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記駆動部材に接触する先端に向かって先細形状の止め雄ねじであることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記支持部材の前記穴は、丸穴状であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記支持部材の前記穴は、前記押圧部材の先端に対向する位置にV字形状の面を有することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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