説明

高ショ糖耐性酵母の製造方法およびこの方法によって製造された酵母

【課題】高ショ糖耐性を有する酵母、および、そのような酵母を育種する方法、さらに該酵母の食品製造への利用方法を提供する。
【解決手段】リン酸化タンパク質の脱リン酸化を基質とするホスファターゼである、OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子、あるいは、ALD2遺伝子に変異を導入して、高ショ糖耐性変異株を得る方法。また、該方法により、高ショ糖耐性となったパン酵母を用いる、高ショ糖パン生地と、パン、菓子類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母育種の分野に関連する。さらに、本発明は、本発明の方法を用いて育種された酵母を用いる、パン生地、パン、および、菓子類等の製造方法、ならびに、これら製造方法によって生産された製品に関連する。
【背景技術】
【0002】
パンは、その製品の製造過程でパン酵母の発酵による生地膨張を行う必要があるが、一定した品質のパンを提供するためには、パン酵母の発酵を綿密に制御することが重要である。特に、パン生地の種類及び製パン方法により、発酵を阻害する環境ストレスがパン酵母に負荷されることから、環境ストレスに対する高度耐性を有する酵母株の作出技術の確立が望まれている。菓子パン製造に用いられる高ショ糖生地には、30%(小麦粉重量あたり)を超える高い濃度のショ糖が含有され、ショ糖に由来する高浸透圧により酵母の発酵が阻害される。したがって、高糖生地条件におけるパン酵母の発酵の制御及び効率化のため、高ショ糖ストレスに対する耐性酵母の開発が期待されており、本発明はその社会ニーズに応えるものである。
【0003】
(従来技術)
製パン業界及びイースト製造業界では、製パン時にパン酵母に負荷され発酵を阻害する環境ストレスに対する取り組みを行ってきた。特に、冷凍生地製パン法において負荷される冷凍ストレス及び菓子パン製造において負荷される高ショ糖ストレスに対する取り組みが進められた。その多くは、これら環境ストレスに対する耐性を有するパン酵母の作出によって問題解決を試みている。高糖生地製パンに最適な高ショ糖耐性酵母についても、各イーストメーカにより開発及び販売が行われてきた。
【0004】
(従来技術における問題点)
以上の様に、性能の向上した高ショ糖耐性酵母が実用化されるのと平行して、酵母の高ショ糖耐性を如何にして強めるかという研究も近年盛んに行われるようになってきた。その一つに酵母細胞内トレハロース含量の高さが酵母の高ショ糖耐性を高めているという仮説が知られている。実際、酵母のトレハロース分解系酵素を破壊し、細胞内に著量のトレハロースを蓄積するようになった酵母は高ショ糖耐性及び冷凍耐性が高まったという結果が報告されている(特許文献1)。また、細胞内に極性の高いアミノ酸を著量蓄積した酵母はストレス耐性が高まるとの報告がされている(特許文献2)。しかし、十分に高いショ糖耐性を有するパン酵母などの酵母は未だ得られていない。菓子パン製造などにおける酵母発酵の環境ストレスである高ショ糖環境においても十分に発酵力を維持できる酵母、すなわち、十分に高いショ糖耐性を有する酵母が所望されている。また、そのような酵母の育種法の開発も所望されている。
【0005】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【特許文献1】特開平11−169180号公報
【特許文献2】特開2001−238665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上にかんがみて、本発明は、高ショ糖環境においても十分に発酵力を維持できる酵母、すなわち、十分に高いショ糖耐性を有する酵母を提供すること、および、そのような酵母の育種法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、そのような酵母を用いる、パン生地、パン、菓子類の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、リン酸化タンパク質の脱リン酸化を触媒するホスファターゼであるOCA1遺伝子またはOCA2遺伝子を破壊することによって高ショ糖耐性株が得られることを見出すことによって、解決された。
【0008】
従って、本発明は、以下の発明を提供する。
(項目1) 高ショ糖耐性酵母の製造方法であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号3または配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を導入する工程、
を包含する方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、ここで、前記変異導入が、遺伝子破壊である、方法。
(項目3) 項目1に記載の方法であって、さらに、
(b)前記変異型酵母と、配列番号1、配列番号3および配列番号9に変異を有さない酵母とを、ショ糖耐性について比較する工程、
を包含する方法。
(項目4) 項目1に記載の方法であって、さらに、
(c)ショ糖耐性の向上した変異型酵母を選択する工程、
を包含する方法。
(項目5) 項目1に記載の方法であって、前記酵母がパン酵母である、方法。
(項目6) 項目1に記載の方法によって製造された、酵母。
(項目7) 項目1に記載の方法によって製造された酵母を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
(項目8) 項目1に記載の方法によって製造された酵母を用いる、パンの製造方法。
(項目9) 項目1に記載の方法によって製造された酵母を用いる、菓子類の製造方法。
(項目10) 高ショ糖耐性酵母の選抜方法であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号3または配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を選択する工程、
を包含する方法。
(項目11) 項目10に記載の方法であって、さらに、
(b)該変異型酵母と、配列番号1、配列番号3および配列番号9に変異を有さない酵母とを、ショ糖耐性について比較する工程、
を包含する方法。
(項目12) 項目10に記載の方法であって、さらに、
(c)ショ糖耐性の向上した変異型酵母を選択する工程、
を包含する方法。
(項目13) 配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する、二倍体高ショ糖耐性酵母。
(項目14) 配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する、二倍体高ショ糖耐性酵母。
(項目15) 配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する、二倍体高ショ糖耐性酵母。
(項目16) 項目13、項目14または項目15に記載の二倍体高ショ糖耐性酵母を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
(項目17) 項目13、項目14または項目15に記載の二倍体高ショ糖耐性酵母を用いる、パンの製造方法。
(項目18) 項目13、項目14または項目15に記載の二倍体高ショ糖耐性酵母を用いる、菓子類の製造方法。
(項目19) 高ショ糖条件下でパン製造のための発酵を行うための組成物であって、配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を含有する、組成物。
(項目20) 前記酵母が配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する二倍体酵母である、項目19に記載の組成物。
(項目21) 前記酵母が配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズする第一の対立遺伝子に第一の変異を有し、第二の対立遺伝子に第二の変異を有する二倍体酵母である、項目19に記載の組成物。
(項目22) 項目19〜21いずれか一項に記載の組成物を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
(項目23) 項目19〜21いずれか一項に記載の組成物を用いる、パンの製造方法。
(項目24) 項目19〜21いずれか一項に記載の組成物を用いる、菓子類の製造方法。
(項目25) 高ショ糖条件下でパン製造のための発酵を行うための組成物であって、配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を含有する、組成物。
(項目26) 前記酵母が配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する二倍体酵母である、項目25に記載の組成物。
(項目27) 前記酵母が配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズする第一の対立遺伝子に第一の変異を有し、第二の対立遺伝子に第二の変異を有する二倍体酵母である、項目25に記載の組成物。
(項目28) 項目25〜27いずれか一項に記載の組成物を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
(項目29) 項目25〜27いずれか一項に記載の組成物を用いる、パンの製造方法。
(項目30) 項目25〜27いずれか一項に記載の組成物を用いる、菓子類の製造方法。
(項目31) 高ショ糖条件下でパン製造のための発酵を行うための組成物であって、配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を含有する、組成物。
(項目32) 前記酵母が配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する二倍体酵母である、項目31に記載の組成物。
(項目33) 前記酵母が配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズする第一の対立遺伝子に第一の変異を有し、第二の対立遺伝子に第二の変異を有する二倍体酵母である、項目31に記載の組成物。
(項目34) 項目31〜33いずれか一項に記載の組成物を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
(項目35) 項目31〜33いずれか一項に記載の組成物を用いる、パンの製造方法。
(項目36) 項目31〜33いずれか一項に記載の組成物を用いる、菓子類の製造方法。
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、高ショ糖耐性を有する酵母株を容易に得ることが可能となった。さらに、本発明によって、所定の酵母株を簡便に高ショ糖耐性株とすることも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0013】
本明細書において「酵母」とは、大部分の生活環を単細胞で経過する菌類をいう。代表的な酵母としては、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属に属する酵母、特にSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces ludwigii、およびSchizosaccharomyces pombeが挙げられる。
【0014】
本明細書において「パン酵母」とは、パンの製造に使用される、Saccharomyces cerevisiaeに属し、パンの製造に使用される酵母をいう。
【0015】
本明細書において使用する場合、用語「ショ糖濃度(%)」とは、特に単位を記載しない限り、発酵する材料中の小麦粉に対するショ糖の相対濃度をいい、より具体的には、小麦粉100gに対して添加されるショ糖のグラム数をいう。
【0016】
本明細書において使用する場合、用語「高ショ糖耐性」とは、ショ糖濃度が高い環境下において、野生型酵母と比較してより高い発酵力を示す酵母の特性をいう。代表的には、変異型酵母が「高ショ糖耐性」を有するか否かについては、50%ショ糖濃度下における発酵力を炭酸ガス発生量を指標として決定する。
【0017】
本明細書において、「発酵力」とは、酵母を培養した場合に、糖質を無酸素的に分解した代謝産物を生じる能力をいう。酵母の発酵には、代表的には、アルコール発酵、グリセロール発酵などが挙げられるが、これらに限定されない。発酵力を示す指標としては、例えば、パン生地から生じる炭酸ガスを測定して、パン生地の発酵力を測定するファーモグラフという方法が使用可能である。その単位としては、例えば、OD600が100である酵母が発生するガス量としてのml/100 OD600を用いることができるが、これに限定されない。上記以外の指標としては、例えば、低糖条件における発酵力(F10)、高糖状態における発酵力(F40)、およびマルトース発酵力(Fm)などが挙げられるが、これらに限定されない(これらの発酵力の指標は、酵母の流加培養によって測定される)。
【0018】
本明細書において使用する場合、用語「生地」とは、パン類の発酵に供される材料のみならず、パン類の生地に添加される「種生地」をも含む。本明細書において使用する場合、用語「種生地」とは、パン生地の発酵を行うために添加される種(スタータ)であって、発酵に必要な菌および配合原材料の少なくとも一部を含む生地をいう。
【0019】
本明細書において使用する場合、用語「発酵」とは、配合原材料中の物質の少なくとも一部が、菌によって分解される現象をいう。
【0020】
本明細書において使用する場合、用語「高ショ糖パン生地」とは、ショ糖を高濃度(限定されることはないが、例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、および、60%)で含有するパン生地をいう。
【0021】
本明細書において使用する場合、用語「菓子類」とは、小麦粉を主体として、ショ糖を含み、発酵過程を経て製造される食品をいう。
【0022】
本明細書において使用する場合、用語「対立遺伝子」とは、特定の染色体上の同一の座を占める2つ以上の一連の異なった遺伝子のうちの1つをいう。同じ対立遺伝子が両方の座を占める場合を「ホモ接合型」といい、異なる対立遺伝子が両方の座を占める場合を「ヘテロ接合型」という。
【0023】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0024】
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrooket al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(ColdSpring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practicalapproach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
【0025】
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
【0026】
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015Mナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
【0027】
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
【0028】
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1MNaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
【0029】
配列番号2、4または10に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1、3または9の核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。配列番号2、4または10のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1または3に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
【0030】
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
【0031】
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
【0032】
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington: National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。
【0033】
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
【0034】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。
【0035】
(基本技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、微生物学、発酵工学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
【0036】
本明細書において使用される代表的な基本技術を以下に説明するが、これらはあくまで例示であり、本発明が以下の説明に限定されることは意図しない。
【0037】
(流加培養)
流加培養の条件は、当該分野において周知である。代表的な流加培養を以下に例示するが、流加培養の条件は、これに限定されない。流加培養条件を適宜変化させることは、当業者が容易になし得ることである。
【0038】
例えば、代表的な流加培養は、YMPD培地(0.3% イーストエキス、0.3% マルトエキス、0.5% ペプトン、3% グルコース)で培養した酵母菌体1.2gを種酵母として、所定の培地に播種した後、糖蜜溶液(260g/Lの糖に相当する廃糖蜜に19.49g/Lの尿素、および52g/LのKHPOを添加した溶液)を用いて30℃で連続流加することによって行われる。
【0039】
流加培養の条件は当該分野において周知であり、当業者は、流加培養条件を適宜選択・改変し得る。
【0040】
(本明細書において用いられる一般的技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、糖鎖科学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al. eds,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0041】
(遺伝子工学)
本発明において用いられ得る酵母に対する「組み換えベクター」としては、YEp、YCp、YIpなどが挙げられるが、これに限定されない。なお、E.coliに使用されるベクターとしては、例えば、pGEM−T、pUC、pBluescriptなどが例示される。
【0042】
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
【0043】
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法、およびパーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法などが例示される。
【0044】
(好ましい実施形態の説明)
(1.OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子の一倍体変異株の作製)
OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子の一倍体変異株を作製する方法としては、例えば、(1)ランダムな変異誘発を行い、多数の候補変異株からOCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子変異株を単離する方法、および、(2)OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子を標的とする変異誘発を行う方法、が挙げられるが、これに限定されない。 OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子の変異遺伝子は、野生型遺伝子の酵素活性を、全く有さないタンパク質、10%以下有するタンパク質、20%以下有するタンパク質、30%以下有するタンパク質、40%以下有するタンパク質、50%以下有するタンパク質、60%以下有するタンパク質、70%以下有するタンパク質、または、80%以下有するタンパク質をコードする遺伝子である。OCA1タンパク質、OCA2タンパク質およびALD2タンパク質の酵素活性の測定法は、周知である。
【0045】
(1.1.ランダムな変異誘発を用いる方法)
ランダムな変異誘発法としては、例えば、変異誘発剤(例えば、ニトロソグアニジンが挙げられるが、これに限定されない)を用いる方法、紫外線・γ線照射を用いる方法、および、トランスポゾンによるランダムな挿入変異を誘発する方法、が挙げられるが、これに限定されない。これらランダムな変異誘発の後に、OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子に変異を含み、その結果、これら遺伝子の遺伝子産物の量が減少するか、および/または、遺伝子産物の活性が低下した変異株を単離する。
【0046】
これら遺伝子の遺伝子産物の定量法としては、これら遺伝子から発現したmRNAをノザンハイブリダイゼーションで測定する方法、これら遺伝子から発現したタンパク質を抗OCA1抗体、抗ALD2抗体または抗OCA2抗体で測定する方法、および、これら遺伝子から発現したタンパク質のホスファターゼ活性を測定する方法が挙げられるが、これに限定されない。また、トランスポゾンを用いた場合、目的の変異株は、OCA1遺伝子内部、OCA2遺伝子内部またはALD2遺伝子内部にトランスポゾンを含むため、OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子の両端からこれら遺伝子を増幅するPCRプライマーを用いてOCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子を増幅し、その遺伝子内にトランスポゾン配列が含まれるか否かを指標として、目的の変異株単離の指標とすることが可能である。
【0047】
OCA1タンパク質およびOCA2タンパク質のホスファターゼ活性の基質は、チロンシン基リン酸化タンパク質であるので、そのホスファターゼ活性の測定を行い、目的の変異株単離の指標とすることが可能である。ホスファターゼ活性の測定は、例えば、アイソトープ標識されたプロテインチロシンフォスファターゼ基質からのアイソトープの遊離を測定することによって、可能である。また、ALD2タンパク質であるアルデヒドデヒドロゲナーゼは、アルデヒドを酸化してカルボン酸にする反応を触媒する酵素であることから、そのデヒドロゲナーゼ活性の測定を行い、目的の変異株単離の指標とすることが可能である。アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、例えば、50mM Na−ピロリン酸緩衝液(pH 9.0)中、1mM NADおよび5mM プロピオンアルデニドを基質としてNADHの生成をA340の増加で測定する。粗酵素サンプルの場合は、ピラゾール1mMを添加して測定する。
【0048】
(1.2.OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子を標的とする変異誘発を行う方法)
酵母は高い確率で相同組換えを起こす生物種であるため、その相同組換えを利用して、目的の遺伝子を標的とする変異誘発を行うことが可能である。例えば、目的とする遺伝子(OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子、あるいは、これらのホモログ)の両端((a)5’非翻訳領域および/または読み取り枠のアミノ末端領域、ならびに、(b)3’非翻訳領域および/または読み取り枠のカルボキシル末端領域)の配列が、OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子とは異なる遺伝子(例えば、URA3遺伝子)を挟むように連結して、遺伝子破壊ベクターを構築する。このベクターから、上記に示した、〔目的遺伝子の両端+その両端に挟まれた異なる遺伝子〕というDNA断片を増幅し、宿主酵母を形質転換する。宿主酵母においては、導入されたDNA断片が相同組換えによってゲノムDNAの配列と置き換わる株が生じる。その変異株は、ゲノム中に、標的遺伝子とは異なる遺伝子を有するため、その標的遺伝子とは異なる遺伝子により生じる表現型の変化(例えば、ウラシル要求性からウラシル非要求性への変化)を指標として、目的の相同組換えが生じた株を単離する。さらに、単離された株が実際に、目的の相同組換えを生じた株であることを、PCRによって確認する。その結果、ゲノムDNA中の目的遺伝子(OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子)が破壊された株が単離される。
【0049】
以上の操作によって、OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子を標的とする変異誘発が可能である。
【0050】
(2.OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子の二倍体変異株の作製)
OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子の二倍体ホモ接合型変異株を作製する方法としては、例えば、(1)OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子の一倍体変異株を異なる接合型の一倍体より作製し、それらの一倍体変異株を交雑して二倍体変異株を作製する方法、および、(2)異なる2つの選択マーカーを用い、第一の選択マーカーを用いて第一の対立遺伝子に変異を導入し、その後、その変異株を用いて、第二の選択マーカーを用いて第二の対立遺伝子に変異を導入する方法、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
(3.OCA1遺伝子、OCA2遺伝子またはALD2遺伝子以外の遺伝子に変異を有する高ショ糖耐性変異株の改変)
高ショ糖耐性を付与する変異として、トレハロース分解酵素であるNTH1及びATH1への変異が公知である。これら変異株を親株として、OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子に変異を導入し、さらに、高いショ糖耐性を有する変異株を単離することが可能である。
【0052】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0053】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1:高ショ糖耐性関連遺伝子および変異株の同定)
約5,000株の非必須遺伝子破壊株から構成される酵母遺伝子破壊株セットは、EUROSCARF(European Saccharomyces cerevisiae archive for functional analysis)から頒布を受けた。これを用いて、酵母の高ショ糖耐性に関与する遺伝子に関する遺伝子機能の網羅的な検索を行った。高ショ糖耐性変異株は、30%のショ糖を含有する培地(30%ショ糖、5%マルトース、0.25%硫酸アンモニウム、0.5%尿素、1.6%リン酸二水素カリウム、0.5%リン酸一水素ナトリウム12水和物、0.06%硫酸マグネシウム、0.00225%ニコチン酸、0.0005%パントテン酸、0.00025%チアミン、0.000125%ピリドキシン、0.0001%リボフラビン、0.00005%葉酸、0.003%イソロイシン、0.015%バリン、0.002%アデニンヘミスルフェイト塩、0.002%塩酸アルギニン、0.002%ヒスチジン塩酸一水和物、0.01%ロイシン、0.003%塩酸リジン、0.002%メチオニン、0.005%フェニルアラニン、0.02%トレオニン、0.002%トリプトファン、0.003%チロシン、0.002%ウラシル)を用いる高ショ糖環境で野生型および各種変異型酵母を培養し、ファーモグラフ法によって生成された炭酸ガスを測定して発酵力を決定して、野生型株よりも発酵力が高い株を選択することによって行った。
【0056】
その結果、実験室酵母であるBY4743株において、OCA1遺伝子(読み取り枠の核酸配列を配列番号1、アミノ酸配列を配列番号2として示す)及びOCA2遺伝子(読み取り枠の核酸配列を配列番号3、アミノ酸配列を配列番号4として示す)の遺伝子破壊により高ショ糖耐性が著しく向上する可能性が示唆された。
【0057】
OCA1およびOCA2は細胞周期の制御に関連するプロテインホスファターゼであることは公知であるが、ショ糖耐性との関連については、教示も示唆もされていない。
【0058】
(実施例2:実用酵母を用いる、OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子に変異を有する高ショ糖耐性変異株の作製)
実用酵母Y244株において、OCA1遺伝子及びOCA2遺伝子の遺伝子破壊を行い、遺伝子破壊株を取得した。
【0059】
OCA1遺伝子破壊株の作製法を図1に示す。OCA1増幅のために、正方向プライマーとして核酸配列(TTGATGAGCTTATGACTTAC:配列番号5)を有するOCA1forプライマー、および、逆方向プライマーとして核酸配列(ATGATGACGTGGATGAGTCG:配列番号6)を有するOCA1revプライマーを用いた。S.cerevisiaeのS288C株の染色体DNAを鋳型としてこれらプライマー対を用いて、OCA1遺伝子を増幅した。増幅断片をpGEM−Tベクターに連結したベクターを調製後、さらにそのベクターからHindIII断片を切除し、YEp24のHindIII断片(URA3遺伝子の読み取り枠を含む)を連結した。OCA1forプライマーおよびOCA1revプライマーを用いて、OCA1遺伝子とURA3遺伝子との融合遺伝子であるOCA1::URA3をPCR増幅し、その増幅断片をY244株のウラシル要求性突然変異株に形質転換し、OCA1遺伝子破壊株を、ウラシル非要求性を指標に単離した。OCA1遺伝子破壊株が作製されたことを、OCA1forプライマーおよびOCA1revプライマーを用いるPCRによって確認した。結果を図2に示す。OCA1遺伝子破壊株からは、約3.2kbの断片が増幅された。
【0060】
OCA2遺伝子破壊株の作製法を図3および図4に示す。OCA2増幅のために、正方向プライマーとして核酸配列(GTTCCATTTGGTTTATCAGC:配列番号7)を有するOCA2forプライマー、および、逆方向プライマーとして核酸配列(GATATCAGCGCCGGTTCCAT:配列番号8)を有するOCA2revプライマーを用いた。S.cerevisiaeのS288C株の染色体DNAを鋳型としてこれらプライマー対を用いて、OCA2遺伝子を増幅した。増幅断片をpGEM−Tベクターに連結したベクターを調製後、さらにそのベクターからHindIII断片を切除し、YEp24のHindIII断片(URA3遺伝子の読み取り枠を含む)を連結した。OCA2forプライマーおよびOCA2revプライマーを用いて、OCA2遺伝子とURA3遺伝子との融合遺伝子であるOCA2::URA3をPCR増幅し、その増幅断片をY244株のウラシル要求性突然変異株に形質転換し、OCA2遺伝子破壊株を、ウラシル非要求性を指標に単離した。OCA2遺伝子破壊株が作製されたことを、OCA2forプライマーおよびOCA2revプライマーを用いるPCRによって確認した。結果を図5に示す。OCA2遺伝子破壊株からは、約3.1kbの断片が増幅された。
【0061】
これら酵母株、Y244株、Y244株のOCA1遺伝子破壊株であるY312株、および、Y244株のOCA2遺伝子破壊株であるY313株を、独立行政法人 製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターに寄託した。それぞれの寄託番号は、NITE AP−274、NITE AP−275、およびNITE AP−276である。
【0062】
(実施例3:実用酵母から作製した、OCA1遺伝子またはOCA2遺伝子に変異を有する高ショ糖耐性変異株の特徴付け)
実施例2において作製した変異株の特徴付けを行った。野生株、OCA1破壊株、および、OCA2破壊株を、5%ショ糖濃度を含む培地を用いる非ストレス条件下(5%ショ糖、5%マルトース、0.25%硫酸アンモニウム、0.5%尿素、1.6%リン酸二水素カリウム、0.5%リン酸一水素ナトリウム12水和物、0.06%硫酸マグネシウム、0.00225%ニコチン酸、0.0005%パントテン酸、0.00025%チアミン、0.000125%ピリドキシン、0.0001%リボフラビン、0.00005%葉酸)、および、50%ショ糖濃度を含む培地を用いるストレス条件下(50%ショ糖、5%マルトース、0.25%硫酸アンモニウム、0.5%尿素、1.6%リン酸二水素カリウム、0.5%リン酸一水素ナトリウム12水和物、0.06%硫酸マグネシウム、0.00225%ニコチン酸、0.0005%パントテン酸、0.00025%チアミン、0.000125%ピリドキシン、0.0001%リボフラビン、0.00005%葉酸)にて30℃、120分間、90rpmで振盪培養し、炭酸ガス発生量をファーモグラフ法にて測定した。結果を図6および図7に示す。
【0063】
その結果、実用酵母に由来するOCA1遺伝子破壊株及びOCA2遺伝子破壊株は、野生型の酵母と比較して、著しく高い(約1.5倍)高ショ糖耐性を示した。また、通常のパン生地発酵力も高く維持していたことから、OCA1遺伝子破壊及びOCA2遺伝子破壊は高ショ糖耐性実用酵母の作成に適する方法であることが示された。
【0064】
(実施例4:実用酵母を用いる、ALD2遺伝子に変異を有する高ショ糖耐性変異株の作製)
非必須遺伝子の遺伝子破壊株セットを用いたストレス耐性株のスクリーニングにより、実験室株において、ALD2遺伝子破壊株が、乾燥および高ショ糖ストレスに対して、著しい耐性を示すことが示唆された。そのため、実用酵母Y244株においてALD2遺伝子を破壊し、ストレス耐性が向上するかどうか検討した。遺伝子破壊は以下のように行った。
【0065】
まず、プラスミドベクターYEp24のURA3配列を鋳型に、ALD2-URA3 FORプライマー(5'-TATCGAAATCCCACAATTGAAAATCTCTTTAAAGCAACCGTTCAATTCAATTCATCA-3')およびALD2-URA3REVプライマー(5'-TATGTGAACTGCTTTTGTTTGAAGATAGGTATCAACACCACGTCATTATAAAAATCAT-3')を用いて、URA3断片の増幅を行った。これらのプライマーは、URA3相同配列の5’側にALD2周辺領域と相同な40bの配列を付加してある。この増幅断片を用いて、Y244株のウラシル要求性突然変異株を形質転換し、ウラシル非要求性を指標にしてALD2遺伝子破壊株を単離した。その概要を、図8に示した。
【0066】
(実施例5:実用酵母から作製した、ALD2遺伝子に変異を有する高ショ糖耐性変異株の特徴付け)
実施例4において作製した変異株の特徴付けを行った。野生株、ALD2破壊株に対して、以下の手順で乾燥ストレスを負荷した: 1)細胞を400mLのYPD培地(200mL×2)中、30℃で24時間培養した;2)培養した細胞を、磁器乾燥版(ニッカトー株式会社)を使用して、含水量が68%になるまで脱水した(市販の圧縮酵母と同様になる); 3)細胞を、通風乾燥機(エスベック)を使用し、37℃、24時間風乾して、含水量を5%にした(乾燥酵母製品と同様になる);4)液体発酵(LF)培地(パン生地と類似する培地)中でのガス産生を、ファーモグラフII(ATTO株式会社)を使用して、測定した。
【0067】
次に、50%ショ糖濃度を含む培地を用いるストレス条件下(50%ショ糖、5%マルトース、0.25%硫酸アンモニウム、0.5%尿素、1.6%リン酸二水素カリウム、0.5%リン酸一水素ナトリウム12水和物、0.06%硫酸マグネシウム、0.00225%ニコチン酸、0.0005%パントテン酸、0.00025%チアミン、0.000125%ピリドキシン、0.0001%リボフラビン、0.00005%葉酸)にて30℃、120分間、90rpmで振盪培養し、炭酸ガス発生量をファーモグラフ法にて測定した。結果を図9に示す。
【0068】
その結果、ALD2破壊株は極めて優れた乾燥ストレス耐性および高ショ糖ストレス耐性を有することが明らかとなった。
【0069】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特 許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本 明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の酵母を用いることによって、高ショ糖環境であっても高い発酵力を発揮する酵母を単離することが可能となる。そのような酵母を用いることによっ て、従来、十分な発酵を行うことが困難であった菓子類製造などにおける高ショ糖環境での発酵の効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、OCA1遺伝子破壊株の作製法を示す図である。
【図2】図2は、OCA1遺伝子破壊株作製を確認する実験結果を示す図である。
【図3】図3は、OCA2遺伝子破壊株の作製法を示す図である。
【図4】図4は、OCA2遺伝子破壊株の作製法を示す図である。
【図5】図5は、OCA2遺伝子破壊株作製を確認する実験結果を示す図である。
【図6】図6は、非ストレス条件(5%ショ糖濃度)における発酵力を比較した結果を示す図である。
【図7】図7は、ストレス条件(50%ショ糖濃度)における発酵力を比較した結果を示す図である。
【図8】図8は、ALD2遺伝子破壊株の作製法を示す図である。
【図9】図9は、ALD2株と野生型株のストレス条件(50%ショ糖濃度)における発酵力を比較した結果を示す図である。
【配列表フリーテキスト】
【0072】
配列番号1 OCA1遺伝子の核酸配列
配列番号2 OCA1遺伝子のアミノ酸配列
配列番号3 OCA2遺伝子の核酸配列
配列番号4 OCA2遺伝子のアミノ酸配列
配列番号5 OCA1forプライマー
配列番号6 OCA1revプライマー
配列番号7 OCA2forプライマー
配列番号8 OCA2revプライマー
配列番号9 ALD2遺伝子の核酸配列
配列番号10 ALD2遺伝子のアミノ酸配列
配列番号11 ALD2−URA3 FORプライマー
配列番号12 ALD2−URA3 REVプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高ショ糖耐性酵母の製造方法であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号3または配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を導入する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記変異導入が、遺伝子破壊である、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
(b)前記変異型酵母と、配列番号1、配列番号3および配列番号9に変異を有さない酵母とを、ショ糖耐性について比較する工程、
を包含する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
(c)ショ糖耐性の向上した変異型酵母を選択する工程、
を包含する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記酵母がパン酵母である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって製造された、酵母。
【請求項7】
請求項1に記載の方法によって製造された酵母を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって製造された酵母を用いる、パンの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって製造された酵母を用いる、菓子類の製造方法。
【請求項10】
高ショ糖耐性酵母の選抜方法であって、以下:
(a)配列番号1、配列番号3または配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を選択する工程、
を包含する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、さらに、
(b)該変異型酵母と、配列番号1、配列番号3および配列番号9に変異を有さない酵母とを、ショ糖耐性について比較する工程、
を包含する方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、さらに、
(c)ショ糖耐性の向上した変異型酵母を選択する工程、
を包含する方法。
【請求項13】
配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する、二倍体高ショ糖耐性酵母。
【請求項14】
配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する、二倍体高ショ糖耐性酵母。
【請求項15】
配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する、二倍体高ショ糖耐性酵母。
【請求項16】
請求項13、請求項14または請求項15に記載の二倍体高ショ糖耐性酵母を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
【請求項17】
請求項13、請求項14または請求項15に記載の二倍体高ショ糖耐性酵母を用いる、パンの製造方法。
【請求項18】
請求項13、請求項14または請求項15に記載の二倍体高ショ糖耐性酵母を用いる、菓子類の製造方法。
【請求項19】
高ショ糖条件下でパン製造のための発酵を行うための組成物であって、配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を含有する、組成物。
【請求項20】
前記酵母が配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する二倍体酵母である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記酵母が配列番号1に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズする第一の対立遺伝子に第一の変異を有し、第二の対立遺伝子に第二の変異を有する二倍体酵母である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
請求項19〜21いずれか一項に記載の組成物を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
【請求項23】
請求項19〜21いずれか一項に記載の組成物を用いる、パンの製造方法。
【請求項24】
請求項19〜21いずれか一項に記載の組成物を用いる、菓子類の製造方法。
【請求項25】
高ショ糖条件下でパン製造のための発酵を行うための組成物であって、配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を含有する、組成物。
【請求項26】
前記酵母が配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する二倍体酵母である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記酵母が配列番号3に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズする第一の対立遺伝子に第一の変異を有し、第二の対立遺伝子に第二の変異を有する二倍体酵母である、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
請求項25〜27いずれか一項に記載の組成物を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
【請求項29】
請求項25〜27いずれか一項に記載の組成物を用いる、パンの製造方法。
【請求項30】
請求項25〜27いずれか一項に記載の組成物を用いる、菓子類の製造方法。
【請求項31】
高ショ糖条件下でパン製造のための発酵を行うための組成物であって、配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子に変異を有する酵母を含有する、組成物。
【請求項32】
前記酵母が配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズするゲノム遺伝子にホモ接合型変異を有する二倍体酵母である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記酵母が配列番号9に記載の配列を有する核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズする第一の対立遺伝子に第一の変異を有し、第二の対立遺伝子に第二の変異を有する二倍体酵母である、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
請求項31〜33いずれか一項に記載の組成物を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。
【請求項35】
請求項31〜33いずれか一項に記載の組成物を用いる、パンの製造方法。
【請求項36】
請求項31〜33いずれか一項に記載の組成物を用いる、菓子類の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−148688(P2008−148688A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261417(P2007−261417)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター委託研究による成果、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)」
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】