説明

2段遊星ギヤ式減速機

【課題】2段遊星ギヤ式減速機の組付け作業を容易とするとともに第2サンギヤの加工を容易としつつコンパクト化を可能とし、さらに第1遊星ギヤを支承する支持ピンのギヤケースへの干渉を回避しつつ第1遊星ギヤの回転安定性を確保する。
【解決手段】第1の遊星ギヤ機構61が、入力軸95に設けられた第1サンギヤ63と、ギヤケース60Aに固定されるリングギヤ64と、該リングギヤ64および第1サンギヤ63に噛合する第1遊星ギヤ65を回転自在に支承する支持ピン75の一端部が固定される第1キャリア66とを備え、第1キャリア66の内周に、第2の遊星ギヤ機構62Aが備える第2キャリア69Aが出力軸45に同軸にかつ相対回転不能に連結され、第1遊星ギヤ68の支持孔76に挿通される支持ピン75の他端部に対向する環状凹部91が、ギヤケース60Aの第1遊星ギヤ68に対向する壁面に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1および第2の遊星ギヤ機構が入力軸および出力軸間に設けられて成り、ギヤケースに収容される2段遊星ギヤ式減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータと、ブレーキピストンに連結されるねじ機構との間に、2段遊星ギヤ式減速機が介設された車両用電動ディスクブレーキが、特許文献1によって既に知られており、このものでは、2段遊星ギヤ式減速機が、入力軸に設けられた第1サンギヤと、ギヤケースに回転自在に支承されるリングギヤと、該リングギヤおよび第1サンギヤに噛合する第1遊星ギヤを回転自在に支承して前記ギヤケースに固定される第1キャリアとを備える第1の遊星ギヤ機構と、前記入力軸に設けられた第2サンギヤと、第1の遊星ギヤ機構と共通な前記リングギヤと、該リングギヤおよび第2サンギヤに噛合する第2遊星ギヤを回転自在に支承する第2キャリアとを備える第2の遊星ギヤ機構とから成り、第2キャリアが前記出力軸に同軸にかつ相対回転不能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−183723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示された2段遊星ギヤ式減速機では、第1および第2の遊星ギヤ機構に共通なリングギヤがギヤケースで回転自在に支承されており、リングギヤおよびギヤケース間に比較的大径である一対のボールベアリングが介装され、部品点数が多くなるだけでなく、ギヤケースの大型化を招くことになる。
【0005】
このような課題を解決するためには、第1および第2の遊星ギヤ機構に共通であるリングギヤをギヤケースに固定し、第1の遊星ギヤ機構の出力要素である第1キャリアに、第2の遊星ギヤ機構の入力要素である第2サンギヤを同軸に圧入することが考えられる。しかるに第1キャリアに第2サンギヤを圧入する場合には、トルク保持の観点から圧入長さを充分に確保する必要があることから2段遊星ギヤ式減速機が軸方向に大型化する可能性があり、また圧入工程が必要となって組付け作業が容易ではない。
【0006】
しかも第2サンギヤの外周形状が、第1キャリアへの圧入部分と、第2遊星ギヤへの噛合部分とで異なることになり、第2サンギヤの加工が煩雑となる。そこで第2サンギヤの外周形状を軸方向全長にわたって同一として第2サンギヤの加工を容易とすべく、第1キャリアの内周を第2サンギヤの外周に噛合させることが考えられる。しかるに遊星ギヤ式減速機では、その構成要素の運動を妨げないようにするために各構成要素相互間にそれぞれ隙間が設定されており、上述のように第1キャリアを第2サンギヤに噛合する構成としたときには、制限された範囲で第1キャリアが軸方向に移動することが許容される。そのため第1キャリアに一端部が固定された支持ピンを第1遊星ギヤに設けられた支持孔に挿通せしめるようにしたときには、第1遊星ギヤに対する第1キャリアの軸方向相対移動によって第1遊星ギヤから突出した支持ピンの他端がギヤケースの内面に接触してしまうことがあり、それを防止するために、支持ピンの長さを短く設定してしまうと、第1遊星ギヤへの支持ピンのかかり代が小さくなって第1遊星ギヤの回転安定性が損なわれる可能性がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、組付け作業を容易とするとともに第2サンギヤの加工を容易としつつコンパクト化を可能とし、さらに第1遊星ギヤを支承する支持ピンのギヤケースへの干渉を回避しつつ第1遊星ギヤの回転安定性を確保し得るようにした2段遊星ギヤ式減速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、第1および第2の遊星ギヤ機構が入力軸および出力軸間に設けられて成り、ギヤケースに収容される2段遊星ギヤ式減速機において、第1の遊星ギヤ機構が、前記入力軸に設けられた第1サンギヤと、前記ギヤケースに固定されるリングギヤと、該リングギヤおよび第1サンギヤに噛合する第1遊星ギヤを回転自在に支承する支持ピンの一端部が固定される第1キャリアとを備え、第2の遊星ギヤ機構が、第1キャリアの内周に外周が噛合される第2サンギヤと、第1の遊星ギヤ機構と共通な前記リングギヤと、該リングギヤおよび第2サンギヤに噛合する第2遊星ギヤを回転自在に支承する第2キャリアとを備え、第2キャリアが前記出力軸に同軸にかつ相対回転不能に連結され、第1遊星ギヤに設けられた支持孔に挿通される前記支持ピンの他端部に対向する環状凹部が、前記ギヤケースの第1遊星ギヤに対向する壁面に形成されることを特徴とする。
【0009】
なお実施の形態のねじ軸45が本発明の出力軸に対応し、実施の形態の第1支持ピン75が本発明の支持ピンに対応し、実施の形態の第1支持孔76が本発明の支持孔に対応し、実施の形態のモータ軸95が本発明の入力軸に対応する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記構成によれば、第1および第2の遊星ギヤ機構に共通であるリングギヤがギヤケースに固定されるので、リングギヤおよびギヤケース間に軸受部材を介装する必要がなく、その分だけ、部品点数の低減およびギヤケースの小型化を図ることができる。しかも第2の遊星ギヤ機構の第2サンギヤの外周に、第1の遊星ギヤ機構の第1キャリアの内周が噛合されるので、第1キャリアに第2サンギヤを圧入する場合に必要である圧入長さの確保が不要であり、2段遊星ギヤ式減速機の軸方向への大型化を回避することが可能となるだけでなく、圧入工程が不要となって組付け作業が容易となり、また第2サンギヤおよび第1キャリアの噛合による自動調心作用で回転を安定させることも可能となり、第2サンギヤの外周形状を、第1キャリアへの噛合部分と、第2遊星ギヤへの噛合部分とで同一として、第2サンギヤの加工を容易とすることができる。さらに第1遊星ギヤの支持孔に挿通される支持ピンの他端部に対向する環状凹部がギヤケースの第1遊星ギヤに対向する壁面に形成されるので、第1遊星ギヤに対する第1キャリアの軸方向相対移動によって第1遊星ギヤから突出した支持ピンの他端がギヤケースの内面に接触してしまうことを防止しつつ支持ピンの長さを長く設定することができ、それによって第1遊星ギヤへの支持ピンのかかり代を大きくして第1遊星ギヤの回転安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の2段遊星ギヤ式減速機が用いられた車両用電動ブレーキ装置の実施例1の縦断面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4矢示部拡大図である。
【図5】減速機の分解斜視図である。
【図6】図2の6矢示部拡大図である。
【図7】出力部材への12角ソケットの係合状態を示す断面図である。
【図8】ブラシホルダをモータ室側から見た正面図である。
【図9】ブラシホルダを減速機側から見た背面図である。
【図10】コンデンサ保持部を示すために図8の要部を拡大した正面図である。
【図11】コンデンサ保持部の斜視図である。
【図12】図4の要部拡大図である。
【図13】カプラ部付近での図12に対応した断面図である。
【図14】本発明の2段遊星ギヤ式減速機が用いられた車両用電動ブレーキ装置の実施例2の縦断面図である。
【図15】車両用電動ブレーキ装置の要部側面図である。
【図16】図14の16矢示部拡大図である。
【図17】減速機の分解斜視図である。
【図18】図15の18−18線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1について図1〜図13を参照しながら説明すると、先ず図1において、この車両用電動ブレーキ装置は、本発明の2段遊星ギヤ式である減速機23Aが用いられるものであり、ディスクブレーキ21Aと、該ディスクブレーキ21Aのキャリパボディ26に取付けられる正逆回転自在の電動モータ22Aと、該電動モータ22Aに連結される減速機23Aと、減速機23Aから出力される回転運動を軸方向進退運動に変換させるようにして前記ディスクブレーキ21Aのブレーキピストン38および前記減速機23A間に設けられる運動変換機構であるねじ機構24とを備える。
【0014】
ディスクブレーキ21Aは、液圧によるサービスブレーキ状態を得ることを可能とするとともに電動モータ22Aによって作動してパーキングブレーキ状態を得ることを可能としたものであり、図示しない車輪のホイールとともに回転するディスクロータ25Aと、キャリパボディ26と、ディスクロータ25Aの両側面に対向して配置されてディスクロータ25Aおよびキャリパボディ26間に配置される一対の摩擦パッド27,28とを備える。
【0015】
図2を併せて参照して、前記キャリパボディ26は、車体側に取付けられたブラケット29で前記ディスクロータ25Aの軸線に沿う方向に摺動可能に支持されるハウジング部26aと、ハウジング部26aからディスクロータ25Aを跨いで反対側に延びる腕部26bとを備える。
【0016】
前記キャリパボディ26のハウジング部26a側でディスクロータ25Aの一側面に対向する摩擦パッド27は、ディスクロータ25Aに摺接して摩擦力を発揮し得るライニング30が裏金32に設けられて成り、前記キャリパボディ26の腕部26b側でディスクロータ25Aの他側面に対向する摩擦パッド28は、ディスクロータ25Aに摺接して摩擦力を発揮し得るライニング31が裏金33に設けられて成り、両摩擦パッド27,28は、ディスクロータ25Aの軸線に沿う方向に移動することを可能として前記ブラケット29に保持される。
【0017】
キャリパボディ26のハウジング部26aには、前記ディスクロータ25Aの軸線と平行な軸線を有して前記摩擦パッド27側に開放したシリンダ孔34と、前記摩擦パッド27とは反対側に開放した収容凹部35と、シリンダ孔34および収容凹部35間に介在する隔壁36とが設けられる。シリンダ孔34および収容凹部35は同一軸線上で円形断面を有するように形成されるものであり、前記隔壁36の中央部にはシリンダ孔34および収容凹部35を同軸に結ぶ貫通孔37が設けられる。
【0018】
シリンダ孔34には、前端を閉塞した有底円筒状に形成されるとともに前記隔壁36との間に液圧室39を形成するブレーキピストン38が軸方向スライド可能に収容され、該ブレーキピストン38の前端は、前記摩擦パッド27の裏金32に当接するとともにシリンダ孔34内での回転を阻止するために前記裏金32に係合される。
【0019】
またシリンダ孔34の内面には、キャリパボディ26およびブレーキピストン38間に介装される環状のピストンシール40が装着され、シリンダ孔34の開口端部およびブレーキピストン38間には環状のダストブーツ41が設けられ、ハウジング部26aには前記液圧室39に液圧を導く液圧路42が設けられる。
【0020】
ねじ機構24は、シリンダ孔34と同軸のねじ軸45と、相対回転を不能としてブレーキピストン38に係合されるとともに前記ねじ軸45に螺合されるナット46とを備え、ブレーキピストン38の背後に配置されるようにしてキャリパボディ26のハウジング部26a内に収容される。
【0021】
前記ブレーキピストン38とは反対側でねじ軸45の後端には、隔壁36の貫通孔37を回転自在に貫通する連結軸部45aが同軸にかつ一体に連設されるとともに、シリンダ孔34内で前記隔壁36に対向するようにして半径方向外方に張り出すフランジ部45bが一体に設けられ、前記隔壁36および連結軸部45a間にはOリング47が介装される。
【0022】
図3を併せて参照して、前記ねじ軸45は、前記ブレーキピストン38内で該ねじ軸45を囲繞するナット46に螺合される。このナット46は、前記ねじ軸45を同軸に囲繞する円筒部46a(図1参照)と、該円筒部46aの前端から半径方向外方に張り出す係合部46bと、該係合部46bの前端中央部から前方に突出して前記ブレーキピストン38の前端内面に当接する当接突部46cとを一体に有するものであり、前記ねじ軸45を螺合せしめるねじ孔48がナット46の軸方向全長にわたって設けられる。
【0023】
前記係合部46bの外周は、周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば8箇所に配置される突部49,49…を有して花びら状に形成されており、有底円筒状であるブレーキピストン38の前部内周の横断面形状は、2つずつの前記突部49,49…に対応した4つの平面部50…と、それらの平面部50…間を結ぶ4つの彎曲部51…とを有して非円形形状に形成される。これにより裏金32に係合することでシリンダ孔34内での回転を阻止されたブレーキピストン38に前記ナット46を挿入することで、ナット46の係合部46bがブレーキピストン38の前部に相対回転不能に係合されることになる。
【0024】
前記ナット46における係合部46bの外周の前記各突部49…相互間と、ブレーキピストン38の前部内周との間には、ブレーキ液の流通を許容する通路52…がそれぞれ形成され、前記ナット46の前端部の当接突部46cの前端面には、前記ねじ孔48から半径方向外方に延びて十字状に配置される4つの通路溝53…が設けられる。
【0025】
図4を併せて参照して、前記ねじ軸45のフランジ部45bおよび前記キャリパボディ26の隔壁36間には、滑り軸受54と、前記隔壁36および連結軸部45a間に介装されるOリング47の離脱を阻止する押さえ部材としての機能を果たしつつ前記滑り軸受54および隔壁36間に挟まれるワッシャ55とが介装され、滑り軸受54およびワッシャ55は平板のリング状に形成される。
【0026】
前記フランジ部45bの前記隔壁36に対向する面には、前記連結軸部45aの基部外周で内周が規定されるようにしたリング状の嵌合凹部56が形成されており、前記滑り軸受54は嵌合凹部56に嵌合される。而して前記嵌合凹部56の内周は、前記連結軸部45aの基部外周に彎曲面57を介して連なるものであり、前記滑り軸受54の内径は、前記彎曲面57との接触を回避するようにして前記連結軸部45aの基部外径よりも大きく設定される。
【0027】
このようなねじ機構24において、電動モータ22Aからの動力が減速機23Aで減速され、ねじ軸45にその一方向に回転する動力が伝達されると、ブレーキピストン38およびナット46の回転が阻止された状態でブレーキピストン38が軸方向前方にスライドすることによる作用および反作用によってディスクロータ25Aが摩擦パッド27,28で両側から挟圧され、それにより制動力が得られることになる。また前記ねじ軸45がその他方向に回転されることにより、ブレーキピストン38が軸方向後方にスライドして制動状態が解除される。
【0028】
図4に注目して、前記キャリパボディ26のハウジング部26aには、前記電動モータ22Aのモータケース83が、前記収容凹部35の開口端を閉じるようにして取付けられるものであり、前記モータケース83および前記キャリパボディ26で構成されるギヤケース60A内には、収容凹部35で少なくとも一部が形成される減速室59が形成され、この減速室59に前記減速機23Aが収容される。
【0029】
前記減速機23Aは、電動モータ22Aのモータ軸95と、前記ねじ機構24におけるねじ軸45の連結軸部45aとの間に、第1の遊星ギヤ機構61ならびに第2の遊星ギヤ機構62Aが設けられて成るものである。
【0030】
図5をさらに併せて参照して、第1の遊星ギヤ機構61は、前記モータ軸95に設けられた第1サンギヤ63と、前記ギヤケース60Aに固定されるリングギヤ64と、該リングギヤ64および第1サンギヤ63に噛合する複数個たとえば3個の第1遊星ギヤ65…を回転自在に支承する第1キャリア66とを備えており、第2の遊星ギヤ機構62Aは、第1キャリア66の内周に外周が噛合される第2サンギヤ67と、第1の遊星ギヤ機構61と共通な前記リングギヤ64と、該リングギヤ64および第2サンギヤ67に噛合する複数個たとえば3個の第2遊星ギヤ68…を回転自在に支承する第2キャリア69Aと、第2キャリア69Aの内周に外周がセレーション嵌合される平板リング状の出力部材70とを備える。
【0031】
第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Aに共通である前記リングギヤ64は、前記収容凹部35の内径よりもわずかに小さな外径を有する円筒状に形成されて前記減速室59に挿入されるものであり、該リングギヤ64の前記電動モータ22Aとは反対側の端部は、該リングギヤ64の軸線まわりの回動を規制するために、前記キャリパボディ26のうち前記収容凹部35の内端壁を構成する前記隔壁36に凹凸係合される。この凹凸係合のために、この実施の形態では、前記電動モータ22Aとは反対側の前記リングギヤ64の端部の周方向複数箇所たとえば3箇所に前記隔壁36側に開放した係合スリット71…がそれぞれ設けられ、前記隔壁36に設けられてリングギヤ64の軸線と平行に延びる複数個たとえば3個の係合ピン72…が前記係合スリット71…にそれぞれ挿入される。而して前記各係合ピン72…は、前記隔壁36に設けられた有底のピン支持孔73…に一端部を嵌入することで前記隔壁36に設けられ、隔壁36から突出した各係合ピン72…の他端部が前記係合スリット71…に挿入される。
【0032】
しかも図6で明示するように、リングギヤ64の周方向に沿う前記係合スリット71の幅dが、リングギヤ64および係合ピン72間に間隙74が形成されるようにして、前記係合ピン72の外径Dよりもわずかに大きく設定されており、これにより前記リングギヤ64が収容凹部35の内周面に当接するまでの制限された範囲で、減速機23Aの軸線と直交する平面内での前記リングギヤ64の変位が許容されることになる。
【0033】
第1キャリア66は、平板のリング状に形成されるものであり、横断面形状が軸方向全長にわたって同一である第2サンギヤ67の前記電動モータ22A側の半部外周が、第1キャリア66の内周に噛合され、第2サンギヤ67は第1キャリア66とともに回転する。
【0034】
この第1キャリア66において、その軸線を中心とする仮想円上で周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば3箇所には、第1キャリア66と平行な軸線を有する第1支持ピン75…の一端部がたとえば圧入によって固定され、各第1支持ピン75…の他端部は、第1遊星ギヤ65…にそれぞれ設けられた第1支持孔76…に挿通される。
【0035】
しかも第1遊星ギヤ65…には、前記ギヤケース60Aの一部を構成する前記モータケース83における蓋部材88の円板部88bが対向するのであるが、前記蓋部材88の円板部88bには、その一部を減速機23Aと反対側に凹ませるように屈曲成形されて成る環状凹部91が前記各第1支持ピン75…の他端部に対向するようにして形成される。
【0036】
第2遊星ギヤ68…は、前記第2サンギヤ67の前記電動モータ22Aとは反対側の半部外周に噛合するものであり、平板のリング状に形成される第2キャリア69Aの周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば3箇所に一端部が圧入等で固定された第2支持ピン77…の他端部が、第2遊星ギヤ68…の中央部に設けられた第2支持孔78…にそれぞれ挿入される。
【0037】
前記ねじ機構24におけるねじ軸45に同軸かつ一体に連なる連結軸部45aの減速機23A側の端部は、前記減速室59に突入されるものであり、この連結軸部45aの端部が、前記出力部材70の中央部に設けられた圧入孔79に直接圧入される。而して第2の遊星ギヤ機構62Aにおける第2キャリア69Aは、その内周に外周がセレーション嵌合される出力部材70を介して前記ねじ軸45に相対回転不能に連結されることになる。
【0038】
ところで前記電動モータ22Aを前記キャリパボディ26から取外して減速室59を開放した状態では、減速室59の一部を構成するようにしてキャリパボディ26に設けられた収容凹部35が開口された状態となり、この状態では、ねじ機構24のねじ軸45に一体に連なる連結軸部45aが圧入された前記出力部材70を収容凹部35に残して減速機23Aを分解することが可能であり、取り残された前記出力部材70は、図7で示すように、回転操作用工具である12角ソケット80を係合し得るように形成される。すなわち出力部材70の外周は、第2キャリア69Aの内周に、挿脱を可能としつつ相対回転不能としてセレーション嵌合するものであり、そのために出力部材70の外周に形成された複数の歯部81,81…が前記12角ソケット80の内周に相対回転不能に係合するように形成される。
【0039】
電動モータ22Aのモータケース83は、その内部にモータ室84を形成してキャリパボディ26のハウジング部26aに取付けられるものであり、半径方向外方に張り出すフランジ部86aを開口端部に一体に有して有底円筒状に形成される金属製のヨーク86と、前記フランジ部86aに外周部を当接させるようにして前記ヨーク86の開口端を閉じる樹脂製たとえば合成樹脂製のブラシホルダ87と、該ブラシホルダ87を前記ヨーク86との間に挟む金属製の蓋部材88とで構成される。
【0040】
前記ブラシホルダ87の外周部の周方向に間隔をあけた複数箇所たとえば3箇所には、金属によって円筒状に形成されるカラー89…が埋設されており、前記フランジ部86aと、前記ブラシホルダ87の前記カラー89…とに挿通されるボルト90…がキャリパボディ26におけるハウジング部26aに螺合される。すなわち電動モータ22Aのモータケース83は、ボルト90…で前記キャリパボディ26のハウジング部26aに着脱可能に締結される。
【0041】
前記蓋部材88は、金属板の曲げ成形によって形成されるものであり、円筒状の軸受ハウジング部88aと、該軸受ハウジング部88aから外側方に延びる円板部88bと、該円板部88bの外周に直角に連なって前記減速機23A側に延びる円筒部88cとを一体に有し、円筒部88cの一部をブラシホルダ87から減速機23A側に突出させるようにして前記ブラシホルダ87に嵌合され、円筒部88cのうち前記ブラシホルダ87から突出した部分が前記キャリパボディ26のハウジング部26aに嵌合される。
【0042】
而してモータケース83が、キャリパボディ26のハウジング部26aに取付けられた状態で、キャリパボディ26における収容凹部35の開口端は、前記モータケース83の一部を構成する前記蓋部材88で閉じられることになり、減速機23Aにおけるリングギヤ64の軸方向移動は、キャリパボディ26の隔壁36と、前記蓋部材88における円板部88bとで規制されることになり、キャリパボディ26の隔壁36に凹凸係合されることによってリングギヤ64の周方向移動が規制されているので、隔壁36および円板部88bで軸方向移動が規制されることによってリングギヤ64がギヤケース60Aに実質的に固定されることになる。
【0043】
また前記蓋部材88における円筒部88cの外方で、キャリパボディ26のハウジング部26aおよびブラシホルダ87間には、前記収容凹部35の内周よりも大径である環状のシール部材92が介装され、ヨーク86のフランジ部86aおよびブラシホルダ87間には、ボルト90の配置箇所よりも内方に位置する環状のシール部材93が介装されている。
【0044】
前記電動モータ22Aのモータ軸95は前記モータケース83で回転自在に支承されており、該モータ軸95の一端部は前記ヨーク86の閉塞端中央部に設けられる軸受ハウジング86bにボールベアリング96を介して回転自在に支承され、またモータ軸95の他端部は、ブラシホルダ87および蓋部材88を回転自在に貫通して減速室59に突入され、減速室59内でモータ軸95の他端部外周に第1サンギヤ63が刻設される。また蓋部材88の軸受ハウジング部88aおよびモータ軸95間には、減速室59からモータ室84へのグリースの流入を防止するためにシール付きとされたボールベアリング97が介装される。
【0045】
前記モータ室84内で前記モータ軸95には、コンミテータ98を有するアーマチュア99が設けられ、アーマチュア99に対応する部分で前記ヨーク86の内周には複数のマグネット100,100…が固着される。
【0046】
図8および図9を併せて参照して、ブラシホルダ87の中央部には、前記コンミテータ98の一部を挿入せしめる中央孔101が前記モータ軸95を貫通させるようにして設けられ、ブラシホルダ87の前記モータ室84側に臨む面において前記中央孔101の周囲の相互に間隔をあけた2箇所には、前記コンミテータ98に摺接するブラシ102,102を前記コンミテータ98の半径方向に沿ってスライド可能に嵌合せしめる嵌合保持筒103,103が前記コンミテータ98の半径方向に沿って長く延びるようにして一体に設けられ、各ブラシ102…は、前記嵌合保持筒103…との間に縮設されるばね(図示せず)によってコンミテータ98に摺接する側に付勢されている。
【0047】
前記ブラシホルダ87の前記モータ室84側に臨む面において前記中央孔101の周囲の相互に等間隔をあけた複数箇所たとえば3箇所には、コンデンサ保持部105…が設けられており、それらのコンデンサ保持部105…のうち選択されたコンデンサ保持部105…、この実施の形態では前記ブラシ保持部103…に近接した2つのコンデンサ保持部105…に、ラジオノイズを低減するためのコンデンサ104…が保持される。
【0048】
図10および図11を併せて参照して、前記コンデンサ保持部105は、前記電動モータ22Aの軸線に直交する平面に沿うように形成されるとともに前記コンデンサ104の一面を当接させるようにして前記ブラシホルダ87に形成される支持面106と、前記ブラシホルダ87に一体に形成されて前記支持面106との間に前記コンデンサ104を挟む一対のフック107,108とを有するとともに、前記電動モータ22Aの軸線に直交する平面内での前記コンデンサ104の移動を規制するように構成される。
【0049】
前記支持面106は、前記ブラシホルダ87の前記モータ室84側に臨む面に設けられる矩形状の凹部109の底面として形成されるものであり、前記コンデンサ104のうち前記一面側の略半部が前記凹部109に挿入される。この凹部109への前記コンデンサ104の略半部の挿入によって、電動モータ22Aの軸線に直交する平面内での前記コンデンサ104の移動が規制されることになる。
【0050】
前記両フック107,108は、前記凹部109から前記コンデンサ104が離脱するのを阻止すべく、前記凹部109の開口端側縁から立ち上がるようにして前記ブラシホルダ87に一体に形成されるものであり、これらのフック107,108を形成する型を抜くための型抜き孔110,111が、前記凹部109の底面すなわち前記支持面106に開口するようにして前記ブラシホルダ87に形成される。而して一方のフック107は、前記凹部109へのコンデンサ104の挿入方向119に沿って前記凹部109の中間部一側で該凹部109の開口端側縁から立ち上がるように配置され、他方のフック108は、前記挿入方向119に沿う前記凹部109の前端他側で該凹部109の開口端側縁から立ち上がるように配置される。
【0051】
また前記コンデンサ104から延びる一対の端子104a,104bは、前記フック1108が配置される側とは反対側で前記凹部109に一端が連なるようにして前記ブラシホルダ87に形成される一対の溝112,113に配置され、それらの溝112,113を隔てるようにして前記ブラシホルダ87に設けられる壁114には、前記コンデンサ104の前記凹部109への挿入時に該コンデンサ104をガイドするようにして傾斜したガイド面114aが形成される。
【0052】
前記両溝112,113の他端は、前記ブラシホルダ87の両面間にわたって該ブラシホルダ87に設けられる窓115,116に連なるものであり、それらの窓115,116に一部を臨ませるようにしてバスバー117,118がブラシホルダ87に埋設され、前記コンデンサ104の端子104a,104bは前記窓115,116に臨む部分で前記バスバー117,118にハンダ付け等によって電気的に接続される。
【0053】
ところで電動モータ22Aのモータケース83内に形成されるモータ室84と、減速機23Aを収容する減速室59との間には、図4で示すように、断熱空間121が配置される。而して前記モータケース83の一部を構成するとともに収容凹部35の開口端の周囲でキャリパボディ26に締結されるようにしてモータ室84および減速室59間に介在するブラシホルダ87のモータ室84とは反対側の面には、断熱空間用凹部122が設けられ、この断熱空間用凹部122と、ブラシホルダ87をヨーク86との間に挟む蓋部材88とで、前記断熱空間121が形成される。
【0054】
図12および図13を併せて参照して、モータケース83の外周部には、減速室59およびモータ室84間を結ぶ迷路状の連通路123が形成される。
【0055】
この連通路123は、前記モータケース83の一部を構成する蓋部材88における円板部88bおよび円筒部88cの連設部の周方向複数箇所に設けられて前記減速室59に通じる複数の第1連通孔124…と、前記蓋部材88の前記円板部88bおよびブラシホルダ87間に形成されて第1連通孔124…に通じる環状通路125と、該環状通路125に一端を通じさせるようにしてブラシホルダ87に設けられる第2連通孔126…と、第2連通孔126…および前記モータ室84間を結ぶようにして前記ブラシホルダ87およびヨーク86の開口端部間に形成される環状空隙127とから成る。
【0056】
前記ブラシホルダ87には、ヨーク86の半径方向に沿う嵌合保持筒103…の外方に配置されてヨーク86の開口端部内周に近接対向する円筒部87aが一体に設けられており、ヨーク86の開口端部内周および円筒部87aの外周間に、前記連通路123の一部を構成する前記環状空隙127が形成され、複数個たとえば2個の第2連通孔126…は、環状空隙127および前記環状通路125を直線状に結ぶようにして前記ブラシホルダ87に設けられる。
【0057】
また前記ブラシホルダ87には、電動モータ22Aへの給電用であるカプラ部87bが外側方に突出するようにして一体に設けられており、該カプラ部87b内を介して前記モータ室84内を外部に通じさせる外部連通路128がブラシホルダ87に設けられる。
【0058】
この外部連通路128は、前記カプラ部87bに対応した部分で前記円筒部87aの内方でモータ室84に一端が開口するようにしてブラシホルダ87に設けられる第3連通孔129と、第3連通孔129の他端およびカプラ部87b内を結ぶようにして直線状に延びる第4連通孔130とから成る。
【0059】
次にこの実施例1の作用について説明すると、ディスクブレーキ21Aのキャリパボディ26には、ブレーキピストン38を摺動自在に嵌合せしめるシリンダ孔34と、該シリンダ孔34と同軸の収容凹部35とが、相互間に隔壁36を介在させつつ相互に反対側に開放するように設けられており、収容凹部35に一部が収容される減速機23Aの出力部材70に相対回転不能にかつ同軸に連なって隔壁36を回転自在に貫通するねじ軸45を有するねじ機構24が、該ねじ軸45の回転をブレーキピストン38の軸方向進退作動に変換するようにして減速機23Aおよびブレーキピストン38間に設けられ、減速機23Aに回転動力を入力する電動モータ22Aがキャリパボディ26に取付けられ、シリンダ孔34内でねじ軸45に一体に設けられて隔壁36に対向するフランジ部45bと隔壁36との間には平板のリング状に形成される滑り軸受54が介装されるのであるが、フランジ部45bの隔壁36に対向する面には嵌合凹部56が形成され、前記滑り軸受54が嵌合凹部56に嵌合される。したがって組付けを容易とすべく滑り軸受54をフランジ部45bに装着しておくことができ、しかもねじ軸45のフランジ部45bと、キャリパボディ26の隔壁36との間の距離を短く設定することができ、電動ブレーキ装置の軸長短縮に寄与することができる。
【0060】
また減速機23Aは、前記ねじ軸45と同軸の出力部材70を備え、ねじ軸45が一体にかつ同軸に有する連結軸部45aの端部が前記出力部材70に同軸にかつ直接に圧入されるので、出力部材70に対するねじ軸45の軸ずれを防止することができ、ねじ軸45の端部外周すなわち連結軸部45aの外周を横断面非円形に形成する必要もないので加工工数を低減することができる。
【0061】
また減速機23Aが、出力部材70と、該出力部材70を同軸に囲繞する第2キャリア69Aとを備え、出力部材70の外周が第2キャリア69Aの内周にセレーション嵌合されるので、ねじ軸45の軸線が出力部材70に対して多少傾いたとしても第2キャリア69Aの自動調心が可能となり、減速機23Aの構成要素の回転が安定する。
【0062】
ところで減速機23Aは、電動モータ22Aのモータ軸95と前記ねじ機構24のねじ軸45との間に、第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Aが設けられて成る2段遊星ギヤ式減速機であり、ギヤケース60Aに収容されるのであるが、第1の遊星ギヤ機構61が、前記モータ軸95に設けられる第1サンギヤ63と、前記ギヤケース60Aに固定されるリングギヤ64と、該リングギヤ64および第1サンギヤ63に噛合する複数の第1遊星ギヤ65…を回転自在に支承する第1キャリア66とを備え、第2の遊星ギヤ機構62Aが、第1キャリア66の内周に外周が噛合される第2サンギヤ67と、第1の遊星ギヤ機構61と共通なリングギヤ64と、該リングギヤ64および第2サンギヤ67に噛合する複数の第2遊星ギヤ68…を回転自在に支承する第2キャリア69Aと、前記出力部材70とを備えるものである。
【0063】
このような減速機23Aによれば、第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Aに共通であるリングギヤ64がギヤケース60Aに固定されるので、リングギヤ64およびギヤケース60A間に軸受部材を介装する必要がなく、その分だけ、部品点数の低減およびギヤケース60Aの小型化を図ることができる。しかも第2の遊星ギヤ機構62Aにおける第2サンギヤ67の外周に、第1の遊星ギヤ機構61の第1キャリア66の内周が噛合されるので、第1キャリア66に第2サンギヤ67を圧入する場合に必要である圧入長さの確保が不要であり、2段遊星ギヤ式である減速機23Aの軸方向の大型化を回避することが可能となるだけでなく、圧入工程が不要となって組付け作業が容易となり、また第2サンギヤ67および第1キャリア66の噛合による自動調心作用で回転を安定させることも可能となる。さらに第2サンギヤ67の外周形状を、第1キャリア66への噛合部分と、第2遊星ギヤ68…への噛合部分とで同一として、第2サンギヤ67の加工を容易とすることができる。
【0064】
ところでディスクブレーキ21Aのキャリパボディ26に設けられる収容凹部35を閉じるようにして前記キャリパボディ26に取付けられる電動モータ22Aのモータケース83と、該モータケース83とともにギヤケース60Aを構成する前記キャリパボディ26との間に、前記収容凹部35で一部が構成される減速室59が減速機23Aを収容するようにして形成され、リングギヤ64が、前記モータケース83の一部を構成する蓋部材88の円板部88bおよびキャリパボディ26で軸方向移動が阻止されるようにして減速室59に挿入され、リングギヤ64の前記電動モータ22Aとは反対側の端部が該リングギヤ64の軸線まわりの回動を規制するようにしてキャリパボディ26に凹凸係合されるので、第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Aに共通であるリングギヤ64をギヤケース60Aの一部を構成するキャリパボディ26に実質的に固定することができる。
【0065】
しかもリングギヤ64の前記電動モータ22Aとは反対側の端部の周方向複数箇所に係合スリット71…が設けられ、それらの係合スリット71…にそれぞれ挿入される係合ピン72…がキャリパボディ26の隔壁36に設けられるので、リングギヤ64をキャリパボディ26に実質的に固定するための部品点数を少なくすることができ、またリングギヤ64を減速室59に挿入するだけで係合スリット71…に係合ピン72…が挿入されるのでリングギヤ64の組付けが容易となる。
【0066】
またリングギヤ64の周方向に沿う前記係合スリット71…の幅dおよび前記係合ピン72…の外径Dが、減速機23Aの軸線と直交する平面内で前記リングギヤ64が制限された範囲で変位することを許容するように設定されるので、係合スリット71…および係合ピン72…間に生じる間隙74…分だけリングギヤ64が軸に直交する平面内で移動することを可能とし、第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Aの軸ずれを吸収することができ、減速機23Aでの滑らかな回転動力伝達が可能となる。
【0067】
また前記モータケース83の一部を構成するブラシホルダ87と、キャリパボディ26との間に、収容凹部35の内周よりも大径である環状のシール部材92が介装されるので、最小限のシール部材92で減速室59内およびモータケース83内への水等の浸入を防止することができる。
【0068】
ところで第1の遊星ギヤ機構61において、第1キャリア66には複数の第1支持ピン75…の一端部が固定され、第1遊星ギヤ68…に設けられた第1支持孔76…に第1支持ピン75…の他端部が挿通されるのであるが、各第1支持ピン75…の他端部に対向する環状凹部91が、ギヤケース60Aの第1遊星ギヤ68…に対向する壁面、この実施例1では、キャリパボディ26とともにギヤケース60Aを構成するモータケース83の一部である蓋部材88の平板部88bに形成されるので、第1遊星ギヤ68…に対する第1キャリア66の軸方向相対移動によって第1遊星ギヤ68…から突出した第1支持ピン75…の他端がギヤケース60Aの内面に接触してしまうことを防止しつつ第1支持ピン75…の長さを長く設定することができ、それによって第1遊星ギヤ68…への第1支持ピン75…のかかり代を大きくして第1遊星ギヤ68…の回転安定性を確保することができる。
【0069】
またキャリパボディ26に設けられる収容凹部35は、電動モータ22Aのキャリパボディ26への取り付け時には閉じられて減速室59の一部を構成し、電動モータ22Aのキャリパボディ26からの取り外し時には開放されるのであるが、減速機23Aは、12角ソケット80を係合することを可能としてねじ軸45に固着される出力部材70を有するとともに、減速室59の開放時には出力部材70を該収容凹部35内に残して分解することを可能として減速室59に収容されるので、電動モータ22Aを取り外すとともに減速機23Aの大部分を取り外した状態で、出力部材70に12角ソケット80を係合して回転操作することによってパーキングブレーキ状態を解除することが可能であり、ねじ機構24のねじ軸45に減速機23Aを介すことなく手動操作力を及ぼすことができるので、比較的小さな手動操作量でパーキングブレーキ状態を解除することができる。
【0070】
電動モータ22Aが備える樹脂製のブラシホルダ87には、ラジオノイズを低減するためのコンデンサ104…を保持するコンデンサ保持部105…が設けられている。したがってコンデンサ保持部105…でコンデンサ104…が保持されることになり、コンデンサ104…が振動によって振れてしまうことを抑制し、コンデンサ104…の電気的接続が解除されたり、コンデンサ104…の端子104a…,104b…が折れたりすることを防止することができる。またコンデンサ保持部105…でコンデンサ104…を保持することができるので、コンデンサ104…の端子104a…,104b…の電気的接続時にコンデンサ104…を押さえることが不要となり、組み付け作業性を高めることができ、コンデンサ104…をブラシホルダ87に保持するにあたって接着剤等が不要であり、コストダウンを図ることができる。
【0071】
しかもコンデンサ保持部105は、電動モータ22Aの軸線に直交する平面に沿うように形成されるとともに前記コンデンサ104の一面を当接させるようにしてブラシホルダ87に形成される支持面106と、ブラシホルダ87に一体に形成されて前記支持面106との間に前記コンデンサ104を挟むフック107,108とを有するとともに、電動モータ22Aの軸線に直交する平面内での前記コンデンサ104の移動を規制するように構成される簡単な構造のものであり、簡単な構造でコンデンサ104…をブラシホルダ87に保持することができる。
【0072】
また電動モータ22Aのモータケース83内に形成されるモータ室84と、キャリパボディ26に少なくとも一部が形成されるようにして減速機23Aを収容する減速室59間に、断熱空間121が配置されるので、電動モータ22Aから減速機23A側への熱伝達を抑えることができ、減速機23Aを構成する部品が合成樹脂製であっても、その熱変形や強度低下を抑制することができる。
【0073】
またモータケース83の一部を構成するとともに収容凹部35の開口端の周囲でキャリパボディ26に締結されるようにして前記モータ室84および前記減速室59間に介在するブラシホルダ87に、前記断熱空間121を形成するための断熱空間用凹部122が設けられるので、断熱空間121を形成しつつブラシホルダ87ひいてはモータケース83の軽量化を図ることが可能となるとともに、材料削減による一層のコストダウンを図ることができる。
【0074】
また電動モータ22Aにおけるモータケース83の一部を構成する蓋部材88と、モータ軸95との間には、減速室59からモータ室84へのグリースの流入を防止するためのシール付きのボールベアリング97が介装されるのであるが、モータケース83の外周部に、減速室59およびモータ室84間を結ぶ連通路123が形成されるので、減速室59およびモータ室84間に圧力差が生じることはなく、モータ軸95および蓋部材88間に介装されるシール付きのボールベアリング97の近傍でシール精度を高める加工が必要となったり、他のシール部品を追加する必要となることはなく、モータケース83の外周部に連通路123を形成するだけのコストアップを回避した簡単な構造で、グリースのモータ室84への流入を防止することができる。しかも連通路123が迷路状であるので、連通路123を介してモータ室84にグリースが流入することも防止することができる。
【0075】
またブラシホルダ87には、モータ軸95に設けられるコンミテータ98に摺接するブラシ102…を摺動自在に保持する嵌合保持筒103…がモータ室84に臨んで設けられるとともに、モータケース83におけるヨーク86の半径方向に沿う嵌合保持筒103…の外方に配置されてヨーク86の開口端部内周に近接対向する円筒部87aが一体に設けられ、ヨーク86の開口端部内周および円筒部87aの外周間に、連通路123の一部を構成する環状空隙127が形成されるので、連通路123にグリースが万が一流入したとしても、コンミテータ98へのブラシ102…の摺接部までグリースが達することはなく、コンミテータ98へのブラシ102…の摺接部にグリースによる影響が及ぶことはない。
【0076】
さらにブラシホルダ87には、電動モータ22Aへの給電用であるカプラ部87bが外側方に突出するようにして一体に設けられ、該カプラ部87b内を介して前記モータ室84内を外部に通じさせる外部連通路128がブラシホルダ87に設けられるので、モータ室84および減速室59を外気圧と同じ圧力とするようにしてグリースの移動を防止することができる。しかもカプラ部87bには外部コネクタが接続されるので、外部連通路128からモータ室84内に水や塵埃等が侵入することはない。
【実施例2】
【0077】
本発明の実施例2について図14〜図18を参照しながら説明するが、実施例1に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0078】
先ず図14および図15において、この車両用電動ブレーキ装置は、本発明の2段遊星ギヤ式である減速機23Bが用いられるものであり、ディスクブレーキ21Bと、該ディスクブレーキ21Bのキャリパボディ26に取付けられる正逆回転自在の電動モータ22Bと、該電動モータ22Bに連結される減速機23Bと、減速機23Bから出力される回転運動を軸方向進退運動に変換させるようにしてディスクブレーキ21Bのブレーキピストン38および前記減速機23B間に設けられるねじ機構24とを備える。
【0079】
ディスクブレーキ21Bは、ディスクロータ25Bと、該ディスクロータ25Bの両側面に対向して配置されてディスクロータ25Bおよびキャリパボディ26間に配置される一対の摩擦パッド27,28とを備える。
【0080】
キャリパボディ26のハウジング部26aには、前記電動モータ22Bのモータケース137が収容凹部35の開口端を閉じるようにして取付けられるものであり、前記モータケース137および前記キャリパボディ26で構成されるギヤケース60B内には、収容凹部35で少なくとも一部が形成される減速室133が形成され、この減速室133に前記減速機23Bが収容される。
【0081】
前記ねじ機構24のねじ軸45は、実施例1と同様に、キャリパボディ26の隔壁36に対向するフランジ部45bを一体に備え、このフランジ部45bに設けられた嵌合凹部56に平板リング状の滑り軸受54が嵌合され、該滑り軸受54および隔壁36間にワッシャ55が介装される。
【0082】
前記減速機23Bは、電動モータ22Bのモータ軸95と、前記ねじ機構24におけるねじ軸45の連結軸部45aとの間に、第1の遊星ギヤ機構61ならびに第2の遊星ギヤ機構62Bが設けられて成るものである。
【0083】
図16および図17を併せて参照して、第1の遊星ギヤ機構61は、前記モータ軸95に設けられた第1サンギヤ63と、前記ギヤケース60Bに固定されるリングギヤ64と、該リングギヤ64および第1サンギヤ63に噛合する複数個たとえば3個の第1遊星ギヤ65…を回転自在に支承する第1キャリア66とを備え、第2の遊星ギヤ機構62Bは、第1キャリア66の内周に外周が噛合される第2サンギヤ67と、第1の遊星ギヤ機構61と共通な前記リングギヤ64と、該リングギヤ64および第2サンギヤ67に噛合する複数個たとえば3個の第2遊星ギヤ68…を回転自在に支承する第2キャリア69Bとを備える。
【0084】
第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Bに共通である前記リングギヤ64は、実施例1と同様の構造でギヤケース60Bに固定される。すなわち前記電動モータ22Bとは反対側の端部に複数の係合スリット71…を有するリングギヤ64は、前記電動モータ22Bのモータケース137の一部を構成する蓋部材141と、キャリパボディ26の隔壁36とで軸方向移動が規制されるようにして前記減速室133に挿入され、リングギヤ64の電動モータ22Bとは反対側の端部は、隔壁36に設けられる係合ピン72…が前記係合スリット71…に挿入されることで、キャリパボディ26の隔壁36に凹凸係合される。
【0085】
而してモータケース137が、キャリパボディ26のハウジング部26aに取付けられた状態で、キャリパボディ26における収容凹部35の開口端は、前記モータケース137の一部を構成する前記蓋部材141で閉じられることになり、減速機23Bにおけるリングギヤ64は、キャリパボディ26の隔壁36に凹凸係合されることによって周方向の移動が規制されているので、隔壁36および蓋部材141で軸方向移動が規制されることによってギヤケース60Bに実質的に固定されることになる。
【0086】
第1の遊星ギヤ機構61において第1キャリア66に一端部が固定された第1支持ピン75…の他端部は、第1遊星ギヤ65…にそれぞれ設けられた第1支持孔76…に挿通される。しかも第1遊星ギヤ65…には、前記ギヤケース60Bの一部を構成する前記モータケース137における蓋部材141が対向するのであるが、該蓋部材141には、環状凹部134が前記各第1支持ピン75…の他端部に対向するようにして形成される。
【0087】
第2遊星ギヤ68…は、前記第2サンギヤ67の前記電動モータ22Bとは反対側の半部外周に噛合するものであり、平板のリング状に形成される第2キャリア69Bの周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば3箇所に一端部が圧入等で固定された第2支持ピン77…の他端部が、第2遊星ギヤ68…の中央部に設けられた第2支持孔78…にそれぞれ挿入される。
【0088】
前記ねじ機構24におけるねじ軸45に同軸かつ一体に連なる連結軸部45aの減速機23B側の端部は、前記減速室133に突入されるものであり、この連結軸部45aの端部が、第2キャリア69Bの中央部に設けられた圧入孔135に直接かつ同軸に圧入される。
【0089】
ところで前記電動モータ22Bを前記キャリパボディ26から取外して減速室133を開放した状態では、減速室133の少なくとも一部を構成するようにしてキャリパボディ26に設けられた収容凹部35が開口された状態となり、この状態では、ねじ機構24のねじ軸45に一体に連なる連結軸部45aが圧入された第2キャリア69Bを収容凹部35に残して減速機23Bを分解することが可能であり、取り残された第2キャリア69Bには、回転操作用工具を係合可能として横断面非円形に形成される複数の係合孔136…が設けられる。
【0090】
電動モータ22Bのモータケース137は、その内部にモータ室138を形成してキャリパボディ26のハウジング部26aに取付けられるものであり、半径方向外方に張り出すフランジ部139aを開口端部に一体に有して有底円筒状に形成される金属製のヨーク139と、該ヨーク139の開口端に配置される金属製の軸受ホルダ140と、前記フランジ部139aに外周部を当接させるようにして前記ヨーク139の開口端を閉じる合成樹脂製の蓋部材141とで構成される。
【0091】
前記軸受ホルダ140は、金属板の曲げ成形によって形成されるものであり、円筒状の軸受ハウジング部140aと、該軸受ハウジング部140aから外側方に延びる円板部140bとを有し、円板部140bの外周部の複数箇所が、前記ヨーク139の開口端内周部にかしめ結合される。
【0092】
図18を併せて参照して、前記蓋部材141は、キャリパボディ26に設けられた収容凹部35を閉じ得るようにして円板状に形成されるとともにその外周の周方向に間隔をあけた複数箇所に凹部142…が形成される蓋部材主部141aと、電動モータ22Bへの給電用として前記蓋部材主部141aから外側方に突出するカプラ部141bを一体に有して合成樹脂によって形成されるものであり、キャリパボディ26との間に減速室133を形成して前記キャリパボディ26および前記フランジ部139aとの間に挟まれ、複数のボルト143…による共締めで前記フランジ部139aおよび前記蓋部材141が前記キャリパボディ26に締結される。
【0093】
しかも前記蓋部材主部141aの外周面には、前記ボルト143…を挿通させる円筒状のカラー144…が埋設される複数のボス部141c…と、それらのボス部141c…間にそれぞれ配置される前記凹部142…とが形成され、前記蓋部材主部141aの半径方向に沿う前記ボス部141c…の内端部には、それらのボス部141a…の両側の前記凹部142…を相互に連通させる肉抜き連通孔145…が形成される。
【0094】
また蓋部材主部141aの前記電動モータ22B側の面および前記減速機23B側の面のいずれか,この実施例2では蓋部材主部141aの電動モータ22B側の面に断熱空間用凹部147が設けられ、前記蓋部材主部141aの断熱空間用凹部147と、該断熱空間用凹部147を覆うようにしてヨーク139の開口端に配置される金属製の軸受ホルダ140とで、前記モータケース137内に形成されるモータ室138および前記減速室133間に介在する断熱空間146が形成される。
【0095】
また前記蓋部材主部141aの外周には、前記凹部142…に複数ずつ配置されるリブ148…が一体に設けられる。
【0096】
前記電動モータ22Bのモータ軸95は前記モータケース137で回転自在に支承されており、該モータ軸95の一端部は前記ヨーク139の閉塞端中央部に設けられる軸受ハウジング139bにボールベアリング96を介して回転自在に支承され、またモータ軸95の他端部は、軸受ホルダ140および蓋部材141を回転自在に貫通して減速室133に突入され、減速室133内でモータ軸95の他端部外周に第1サンギヤ63が刻設され、軸受ホルダ140の軸受ハウジング部140aおよびモータ軸95間にシール付きのボールベアリング97が介装される。
【0097】
前記モータ室138内で前記モータ軸95には、コンミテータ98を有するアーマチュア99が設けられ、アーマチュア99に対応する部分で前記ヨーク139の内周には複数のマグネット100,100…が固着される。
【0098】
また前記軸受ホルダ140の内面側にはブラシホルダ152が固定的に支持され、該ブラシホルダ152でスライド可能に支持されるブラシ(図示せず)が前記コンミテータ98に摺接する。
【0099】
またキャリパボディ26のハウジング部26aおよび前記蓋部材141間には、前記収容凹部35の内周よりも大径である環状のシール部材92が介装され、ヨーク139のフランジ部139aおよび蓋部材141間には、ボルト143…の配置箇所よりも内方に位置する環状のシール部材93が介装されている。
【0100】
この実施例2によれば、実施例1と同様に、ねじ軸45のフランジ部45bの隔壁36に対向する面に嵌合凹部56が形成され、平板リング状の滑り軸受54が嵌合凹部56に嵌合されるので、組付けを容易とすべく滑り軸受54をフランジ部45bに装着しておくことができ、しかもねじ軸45のフランジ部45bと、キャリパボディ26の隔壁36との間の距離を短く設定することができ、電動ブレーキ装置の軸長短縮に寄与することができる。
【0101】
また減速機23Bは、前記ねじ軸45と同軸の第2キャリア69Bを備え、第2キャリア69Bにねじ軸45が一体にかつ同軸に有する連結軸部45aの端部が同軸にかつ直接に圧入されるので、第2キャリア69Bに対するねじ軸45の軸ずれを防止することができ、ねじ軸45の端部外周すなわち連結軸部45aの外周を横断面非円形に形成する必要もないので加工工数を低減することができる。
【0102】
減速機23Bは、電動モータ22Bのモータ軸95と前記ねじ機構24のねじ軸45との間に、第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Bが設けられて成る2段遊星ギヤ式減速機であり、ギヤケース60Bに収容されるのであるが、第1の遊星ギヤ機構61が、前記モータ軸95に設けられる第1サンギヤ63と、前記ギヤケース60Bに固定されるリングギヤ64と、該リングギヤ64および第1サンギヤ63に噛合する複数の第1遊星ギヤ65…を回転自在に支承する第1キャリア66とを備え、第2の遊星ギヤ機構62Bが、第1キャリア66の内周に外周が噛合される第2サンギヤ67と、第1の遊星ギヤ機構61と共通なリングギヤ64と、該リングギヤ64および第2サンギヤ67に噛合する複数の第2遊星ギヤ68…を回転自在に支承する第2キャリア69Bを備える。
【0103】
このような減速機23Bによれば、第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Bに共通であるリングギヤ64がギヤケース60Bに固定されるので、リングギヤ64およびギヤケース60B間に軸受部材を介装する必要がなく、その分だけ、部品点数の低減およびギヤケース60Bの小型化を図ることができる。しかも第2の遊星ギヤ機構62Bにおける第2サンギヤ67の外周に、第1の遊星ギヤ機構61の第1キャリア66の内周が噛合されるので、第1キャリア66に第2サンギヤ67を圧入する場合に必要である圧入長さの確保が不要であり、2段遊星ギヤ式減速機23Bの軸方向の大型化を回避することが可能となるだけでなく、圧入工程が不要となって組付け作業が容易となり、また第2サンギヤ67および第1キャリア66の噛合による自動調心作用で回転を安定させることも可能となる。さらに第2サンギヤ67の外周形状を、第1キャリア66への噛合部分と、第2遊星ギヤ68…への噛合部分とで同一として、第2サンギヤ67の加工を容易とすることができる。
【0104】
キャリパボディ26に設けられる収容凹部35を閉じるようにして前記キャリパボディ26に取付けられる電動モータ22Bのモータケース137と、前記キャリパボディ26との間に、減速機23Bを収容する減速室133が形成され、リングギヤ64が、前記モータケース137の一部を構成する蓋部材141およびキャリパボディ26で軸方向移動が阻止されるようにして減速室133に挿入され、リングギヤ64の前記電動モータ22Bとは反対側の端部が該リングギヤ64の軸線まわりの回動を規制するようにしてキャリパボディ26に凹凸係合されるので、第1および第2の遊星ギヤ機構61,62Bに共通であるリングギヤ64をキャリパボディ26に実質的に固定することができる。
【0105】
しかもリングギヤ64の前記電動モータ22Bとは反対側の端部の周方向複数箇所に係合スリット71…が設けられ、それらの係合スリット71…にそれぞれ挿入される係合ピン72…がキャリパボディ26の隔壁36に設けられるので、リングギヤ64をキャリパボディ26に実質的に固定するための部品点数を少なくすることができ、またリングギヤ64を減速室59に挿入するだけで係合スリット71…に係合ピン72…が挿入されるのでリングギヤ64の組付けが容易となる。
【0106】
また前記モータケース137の一部を構成する蓋部材141と、キャリパボディ26との間に、収容凹部35の内周よりも大径である環状のシール部材92が介装されるので、最小限のシール部材92で減速室133内およびモータケース137内への水等の浸入を防止することができる。
【0107】
ところで第1の遊星ギヤ機構61において、第1キャリア66には複数の第1支持ピン75…の一端部が固定され、第1遊星ギヤ68…に設けられた第1支持孔76…に第1支持ピン75…の他端部が挿通されるのであるが、各第1支持ピン75…の他端部に対向する環状凹部134が、ギヤケース60Bの第1遊星ギヤ68…に対向する壁面、この実施例2では、キャリパボディ26とともにギヤケース60Bを構成するモータケース137の一部を構成する蓋部材141に形成されるので、第1遊星ギヤ68…に対する第1キャリア66の軸方向相対移動によって第1遊星ギヤ68…から突出した第1支持ピン75…の他端がギヤケース60Bの内面に接触してしまうことを防止しつつ第1支持ピン75…の長さを長く設定することができ、それによって第1遊星ギヤ68…への第1支持ピン75…のかかり代を大きくして第1遊星ギヤ68…の回転安定性を確保することができる。
【0108】
またキャリパボディ26に設けられる収容凹部35は、電動モータ22Bのキャリパボディ26への取り付け時には閉じられて減速室133の一部を構成し、電動モータ22Bのキャリパボディ26からの取り外し時には開放されるのであるが、減速機23Bは、回転操作用工具を係合可能な複数の係合孔136…が設けられるようにしてねじ軸45に固着される第2キャリア69Bを有するとともに、減速室133の開放時には第2キャリア69Bを該収容凹部35内に残して分解することを可能として減速室133に収容されるので、電動モータ22Bを取り外すとともに減速機23Bの大部分を取り外した状態で、第2キャリア69Bに回転操作用工具を係合して回転操作することによってパーキングブレーキ状態を解除することが可能であり、ねじ機構24のねじ軸45に減速機23Bを介すことなく手動操作力を及ぼすことができるので、パーキングブレーキ状態を比較的小さな手動操作量で解除することができる。
【0109】
また電動モータ22Bのモータケース137内に形成されるモータ室138と、キャリパボディ26に少なくとも一部が形成されるようにして減速機23Bを収容する減速室133との間に、断熱空間146が配置されるので、電動モータ22Bから減速機23B側への熱伝達を抑えることができ、減速機23Bを構成する部品が合成樹脂製であっても、その熱変形や強度低下を抑制することができる。
【0110】
またモータケース137の一部を構成するとともに収容凹部35の開口端の周囲でキャリパボディ26に締結されるようにして前記モータ室138および前記減速室133間に介在する蓋部材141に、前記断熱空間146を形成するための断熱空間用凹部147が設けられるので、断熱空間146を形成しつつ蓋部材141ひいてはモータケース137の軽量化を図ることが可能となるとともに、材料削減による一層のコストダウンを図ることができる。
【0111】
さらに蓋部材141は、キャリパボディ26に設けられた収容凹部35を閉じ得るようにして円板状に形成される蓋部材主部141aと、電動モータ22Bへの給電用として前記蓋部材主部141aから外側方に突出するカプラ部141bを一体に有して合成樹脂により形成され、蓋部材主部141aの外周面には、ボルト143…を挿通させる円筒状のカラー144…が埋設される複数のボス部141c…と、それらのボス部141c…間にそれぞれ配置される凹部142…とが形成され、前記蓋部材主部141aの半径方向に沿う前記ボス部141c…の内端部には、それらのボス部141c…の両側の前記凹部142…を相互に連通させる肉抜き連通孔145…が形成されるので、蓋部材141の軽量化および材料削減によるコストダウンを図ることができる。しかも車両搭載時に上方位置となった凹部142…に外部からの水が入っても肉抜き連通孔145を介して下方の凹部142側に水を流すことができ、凹部142に水が溜まることを防止して、周囲の部品の錆発生の原因となることを回避することができるとともに蓋部材141の耐久性低下を防止することができる。
【0112】
しかも蓋部材主部141aの外周に、前記凹部142…に複数ずつ配置されるリブ148…が一体に設けられるので、凹部142…が形成されることによる蓋部材141の強度低下を防止することができる。
【0113】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0114】
たとえば上記実施の形態では、車両用電動ブレーキ装置に用いられる2段遊星ギヤ式の減速機23A,23Bについて説明したが、本発明は、車両用電動ブレーキ装置のみに限定されるものではなく、2段遊星ギヤ式減速機に関連して広く実施することができる。
【符号の説明】
【0115】
23A,23B・・・減速機
45・・・出力軸であるねじ軸
60A,60B・・・ギヤケース
61・・・第1の遊星ギヤ機構
62A,62B・・・第2の遊星ギヤ機構
63・・・第1サンギヤ
64・・・リングギヤ
65・・・第1遊星ギヤ
66・・・第1キャリア
67・・・第2サンギヤ
68・・・第2遊星ギヤ
69A,69B・・・第2キャリア
75・・・支持ピンである第1支持ピン
76・・・支持孔である第1支持孔
95・・・入力軸であるモータ軸
91,134・・・環状凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の遊星ギヤ機構(61,62A;61,62B)が入力軸(95)および出力軸(45)間に設けられて成り、ギヤケース(60A,60B)に収容される2段遊星ギヤ式減速機において、第1の遊星ギヤ機構(61)が、前記入力軸(95)に設けられた第1サンギヤ(63)と、前記ギヤケース(60A,60B)に固定されるリングギヤ(64)と、該リングギヤ(64)および第1サンギヤ(63)に噛合する第1遊星ギヤ(65)を回転自在に支承する支持ピン(75)の一端部が固定される第1キャリア(66)とを備え、第2の遊星ギヤ機構(62A,62B)が、第1キャリア(66)の内周に外周が噛合される第2サンギヤ(67)と、第1の遊星ギヤ機構(61)と共通な前記リングギヤ(64)と、該リングギヤ(64)および第2サンギヤ(67)に噛合する第2遊星ギヤ(68)を回転自在に支承する第2キャリア(69A,69B)とを備え、第2キャリア(69A,69B)が前記出力軸(45)に同軸にかつ相対回転不能に連結され、第1遊星ギヤ(68)に設けられた支持孔(76)に挿通される前記支持ピン(75)の他端部に対向する環状凹部(91,134)が、前記ギヤケース(60A,60B)の第1遊星ギヤ(68)に対向する壁面に形成されることを特徴とする2段遊星ギヤ式減速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−179653(P2011−179653A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46602(P2010−46602)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】