説明

Al基合金スパッタリングターゲット

【課題】電気抵抗率が低く耐熱性に優れた配線材料として汎用されているAl−Nd/La合金の耐アルカリ腐食性を向上させることが可能なAl基合金スパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】本発明のスパッタリングターゲットは、Ndおよび/またはLaを0.1〜3原子%含有するAl基合金からなり、Al基合金中に含まれるFe量が、Ndおよび/またはLaの合計量の1/76以下に制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルやタッチパネルの配線形成に好ましく用いられるAl基合金スパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスの構造および製造プロセスの多様化に伴い、表示デバイスに用いられる配線材料には、配線抵抗が低いことに加えて、アルカリ溶液や水分などに対する耐食性に優れていることが求められている。例えば特許文献1には、耐食性に優れた表示デバイス用配線材料の形成に用いられるスパッタリングターゲットとして、Moを主体とし、Tiなどの元素を更に含むMo合金スパッタリングターゲットが開示されているが、上記スパッタリングターゲットによって得られるMo合金膜の電気抵抗率は10μΩcm以上と高い。配線材料の電気抵抗率を低減するため、非特許文献1には、配線抵抗が低い純Alの上下に上記Mo合金膜を積層した配線構造が開示されているが、純Alは耐熱性に劣りヒロック発生の問題がある。そこで純Alの代わりに、NdやLaを含有するAl−Nd/La合金が好ましく用いられている。Al−Nd/La合金は耐熱性に優れているため、液晶ディスプレイなどのトランジスタ用配線材料(電極材料を含む)のほか、タッチパネル用配線材料、反射電極用材料などの用途に広く使われている。
【0003】
近年、耐食性の要求は益々増大しており、特に、表示デバイスの製造工程に用いられる、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)などのアルカリ性薬品に暴露されても腐食しない、耐アルカリ腐食性(アルカリ耐性)に優れていることが要求されている。例えば上述したAl材料とMo合金膜との配線構造(Mo−Al−Moの積層構造)の場合、パターニング加工によって積層断面が露出するが、一般にAl材料のアルカリ耐性はMoに比べて劣りエッチング速度の差が生じるため、後工程でTMAHなどのアルカリ性薬品に暴露されると、図1に示すように、配線端部のAlが過剰にエッチングされるようになる。Alが配線端部で過剰にエッチングされると、Alの空洞部分にアルカリ性薬液が侵入した状態で後工程(熱処理)に曝されるため、アルカリ腐食の拡大を招く。更に場合によっては、下層のMoから上層のMoに至るまで連続した配線欠陥が生じ、後工程での薬液侵入経路となるほか外気の侵入経路となるために、腐食が益々深刻化するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−290409号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Thin Solid Films 340巻(1999)、第306〜316頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、電気抵抗率が低く耐熱性に優れた配線材料として汎用されているAl−Nd/La合金の耐アルカリ腐食性を向上させることが可能なAl基合金スパッタリングターゲットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し得る本発明のスパッタリングターゲットは、Ndおよび/またはLaを0.1〜3原子%含有するAl基合金からなり、Al基合金中に含まれるFe量が、Ndおよび/またはLaの合計量の1/76以下であるところに要旨を有するものである。
【0008】
また前記スパッタリングターゲットは、二次イオン質量分析法で分析したときの143Ndイオンに対する56Feイオンのイオン強度比が、0.021以下であることも好ましい実施態様である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、上記Al基合金スパッタリングターゲットは、液晶パネルまたはタッチパネルの配線形成に用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスパッタリングターゲットを用いれば、耐アルカリ腐食性に優れており、液晶パネルやタッチパネルなどの配線材料として好適に用いられるAl−Nd/La合金膜を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、Al材料とMo膜との積層構造(Mo−Al−Moの三層構造)において、アルカリ腐食により端部のAlが過剰にエッチングされる様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、高耐熱性且つ低電気抵抗の配線材料として汎用されているAl−Nd/La合金について、優れた特性(高い耐熱性と低い電気抵抗)を損なわずにアルカリ性薬液耐性を向上させるため、鋭意検討してきた。その結果、Al−Nd/La合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットの製造過程において、不可避に混入される不純物の鉄(Fe)が、アルカリ耐性の低下に著しい影響を及ぼしていることを突き止めた。この知見に基づき、アルカリ耐性と、Al合金膜中のFe量とNd/Laの量との関係について更に検討を重ねた結果、Al−Nd/La合金スパッタリングターゲット中のFe量を、Ndおよび/またはLaの合計量(これらの元素を単独で含むときは単独の含有量である)の1/76以下に制御すれば、後記する実施例に示すように、表1のNo.1の高純度Alスパッタリングターゲットを用いたときよりも遥かに高いアルカリ耐性を実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
詳細には、Fe量およびNd/Laの量が異なる多数のAl−Nd/La合金スパッタリングターゲットを用いて得られるAl−Nd/La合金膜について、下記実施例に記載のアルカリ耐性評価法(水酸化カリウムに浸漬後の膜消失時間に基づき、エッチング速度を算出して評価)に基づき、スパッタリングターゲット中のFe量およびNd/Laの量がエッチング速度に及ぼす影響を調べた。エッチング速度が大きい程、アルカリ腐食作用が強く、エッチング速度が小さい程、アルカリ耐性に優れることを意味している。その結果、(ア)アルカリ性薬液浸漬後の上記合金膜のエッチング速度は、Fe量と、Nd/Laの量との一次関係式で表わされ、Feはエッチング速度を増大する作用を有し(係数はプラス)、逆にNd/Laはエッチング速度を減少する作用を有する(係数はマイナス)こと、(イ)Feの係数(プラス)とNd/Laの係数(マイナス)を比較すると、Feの係数が圧倒的に大きく、アルカリ耐性の向上には、Feの量を著しく低減する必要があること、(ウ)ただし、Al−Nd/La合金膜に要求される他の特性(高い耐熱性と、低い電気抵抗率)のバランスを考慮すると、Nd/Laの量との関係でFe量を制御する必要があることを突き止めた。上記の基礎実験に基づき、更に多くの実験を重ねた結果、(エ)Al−Nd/La合金スパッタリングターゲット中のFe量が、Ndおよび/またはLaの合計量の1/76以下に制御されたスパッタリングターゲットを用いれば、高い耐熱性と低い電気抵抗率を具備したまま、アルカリ耐性に極めて優れた材料が得られること、(オ)このような関係を満足するスパッタリングターゲットは、基礎実験に用いた水酸化カリウムのほか、他のアルカリ性薬液を用いた場合にも良好なアルカリ耐性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0014】
上述したように本発明のスパッタリングターゲットは、Ndおよび/またはLaを0.1〜3原子%含有するAl基合金(以下、Al−Nd/La合金と呼ぶ場合がある。)からなり、Al基合金中に含まれるFe量が、Ndおよび/またはLaの合計量の1/76以下であるところに特徴がある。
【0015】
このように本発明のAl基合金スパッタリングターゲットは、Ndおよび/またはLaを0.1〜3原子%含有している。NdおよびLaは、ヒロックの生成を防止し、耐熱性向上に有用な元素であり、これらは単独で添加しても良いし、両方を併用しても良い。耐熱性向上作用を有効に発揮させるため、Ndおよび/またはLaの含有量は0.1原子%以上とする。ただし、過剰に添加すると、配線材料の電気抵抗率が上昇するため、Ndおよび/またはLaの含有量の上限を3原子%とする。
【0016】
そして本発明の特徴部分は、上記Al−Nd/La合金スパッタリングターゲットについて、不純物のFe量が、Ndおよび/またはLaの合計量の1/76以下(≒0.013以下)に抑制されていること、すなわち、Fe/(Nd+La)の比が1/76以下を満足するところに特徴がある。このようにFe量が、Nd量とLa量との関係で著しく低減されたAl基合金スパッタリングターゲットを用いて得られるAl基合金膜は、アルカリ耐性に極めて優れたものである。
【0017】
ここでFe量を、NdおよびLaの含有量との関係で規定したのは、一般にNdやLaなどの希土類材料はFeを不純物として含み、NdやLaの含有量を増加するとFe量も増加する傾向にあるからである。不純物のFe量については、これまで、例えば材料欠陥の少ない純Al材料を提供するとの観点からスパッタリングターゲット中のFe量を低減する技術は開示されているが、本発明のようにNdおよび/またはLaを含有するAl−Nd/La合金のアルカリ耐性向上に不純物のFe量の低減化が有効であるとの知見は開示されておらず、そのため、従来は、本発明のようにFe/(Nd+La)の比を制御することは行われていなかったのが実情である。
【0018】
優れたアルカリ耐性を確保するとの観点からは、Fe/(Nd+La)の比は小さい程良く、例えば0.010以下であることが好ましい。
【0019】
本発明において、Fe/(Nd+La)の比が1/76以下に抑制されたスパッタリングターゲットを作製するためには、(ア)原材料として、Fe量の少ない高純度のNdおよび/またはLaの材料(おおむね、Fe量が0.05〜0.5原子%程度)と、Fe量の少ない高純度のAl材料(おおむね、Fe量が0.0001〜0.001原子%程度)を用いると共に、(イ)スパッタリングターゲットの製造条件に応じて、例えば溶解炉からのFeの混入を極力抑制するために、事前に溶解炉を十分に洗浄するなどして、出来るだけFe量が混入しない条件下にて製造することが推奨される。
【0020】
また前記スパッタリングターゲットは、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)で分析したときの143Ndイオンに対する56Feイオンのイオン強度比が、好ましくは0.021以下、より好ましくは0.013以下であることが優れたアルカリ耐性を確保する観点から好ましい。
本発明において、SIMSの測定条件は、一次イオン種としてOを用い、一次イオンエネルギー(加速電圧)を8keV、一次イオン電流を200nAとし、分析領域φ150μmにおいて、二次イオンとして56Feイオンおよび143Ndイオンを検出するものである。56Feイオン/143Ndイオンの二次イオン強度比を算出する深さには、特に限定はなく、スパッタリングターゲットの厚みに応じて二次イオン強度が安定する深さ領域を適宜決定すればよい。
【0021】
本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法は特に限定されず、汎用の製造条件によって製造することができるため、製造条件に応じて、Fe量が極力混入しない条件に制御すれば良い。例えば、スパッタリングターゲットの製造方法の一例として、スプレーフォーミング法や粉末冶金法などによって所定組成の合金鋳塊を得た後、必要に応じて、熱間で加圧する熱間静水圧加工(HIP:Hot Isostatic Pressing)などの緻密化手段を行ない、次いで、鍛造、熱間圧延、焼鈍を行なう方法が挙げられる。スプレーフォーミング法は本願出願人によって多く開示されており、例えば、特開平9−248665号公報、特開平11−315373号公報、特開2005−82855号公報、特開2007−247006号公報などに記載の方法を参照することができる。
【0022】
或いは、通常の溶解鋳造法によって所定組成の合金鋳塊を得た後、必要に応じて、鍛造、熱間圧延、焼鈍、冷間加工を行なうことによっても本発明のスパッタリングターゲットを製造することができる。
【0023】
本発明のスパッタリングターゲットを用いて得られるAl合金膜は、耐熱性が高く、電気抵抗率が低いことに加えてアルカリ耐性にも優れているため、例えば液晶パネルまたはタッチパネルの配線形成に好ましく用いられる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0025】
実施例1
本実施例では、FeおよびNd(又はLa)の含有量が異なる種々のAl基合金スパッタリングターゲット(表1のNo.6〜15)と、比較のためFe量が異なる種々の純Alスパッタリングターゲット(表1のNo.1〜5)を用い、スパッタリング法によって得られた約300nmのAl薄膜について、アルカリ性薬液(ここでは1%の水酸化カリウム)に対するアルカリ耐性を調べた。
【0026】
はじめに、表1のNo.6〜15に記載のAl基合金スパッタリングターゲットの製造方法について説明する。
【0027】
原材料として以下のAlとNd又はLaの各材料を用意する。
(1)Al材料:純度99.999原子%のAl、Fe量は0.0005原子%、Nd、Laは検出限界以下(0.0001原子%未満)
(2)Nd材料:純度99.5原子%のNd、Fe量は0.26原子%
(3)La材料:Nd同様、高純度のLa
【0028】
また溶解炉からのFeの混入を極力抑制するため、原材料と同純度のAl原料を用いて、溶解炉を2回洗浄した。その後、上記材料を用い、DC鋳造法によって厚み100mmの鋳塊を造塊した後、熱間圧延を行ない、焼鈍した。詳細には、熱間圧延は、加熱温度400℃、圧下率85%の条件で行い、焼鈍は、加熱温度300℃、加熱時間2時間の条件で行なった。
【0029】
次いで、機械加工(丸抜き加工および旋盤加工)を行なって、FeおよびNd(又はLa)の含有量が異なる円板状のAl−Nd合金スパッタリングターゲット(サイズ:直径101.6mm×厚さ5.0mm)を製造した。Al−La合金スパッタリングターゲットも同様に製造した。このようにして得られたスパッタリングターゲット中のFe量およびNd量(又はLa量)を、グロー放電質量分析(GD−MS)によって分析した。これらの結果を表1のNo.6〜15に記載する。
【0030】
比較のため、Nd、Laを含有せず(検出限界以下)、Fe量が異なる種々のAl材料を用いたこと以外は上記と同様にして、表1のNo.1〜5の純Alスパッタリングターゲットを製造した。各スパッタリングターゲットの作製に用いたAl材料の組成は以下のとおりである。このようにして得られたスパッタリングターゲット中のFe量およびNd量を、上記と同様にして算出した。これらの結果を表1のNo.1〜5に記載する。
(No.1について)純度99.999原子%のAl、Fe量は0.00012原子%
(No.2について)純度99.999原子%のAl、Fe量は0.021原子%
(No.3について)純度99.999原子%のAl、Fe量は0.029原子%
(No.4について)純度99.999原子%のAl、Fe量は0.038原子%
(No.5について)純度99.998原子%のAl、Fe量は0.150原子%
【0031】
次に、上記の各スパッタリングターゲットを用い、以下の条件でスパッタリングを行なった。
【0032】
詳細には、ガラス基板(サイズ:直径100.0mm×厚さ0.50mm)に対し、株式会社島津製作所製「スパッタリングシステムHSR−542S」のスパッタリング装置を用いてDCマグネトロンスパッタリングを行い、膜厚が約300nmのAl合金膜または純Al膜(以下、これらをまとめてAl系膜と呼ぶ場合がある。)を得た。スパッタリング条件は、以下の通りである。
背圧:3.0×10-6Torr以下
Arガス圧:2.25×10-3Torr
Arガス流量:30sccm、スパッタリングパワー:811W
極間距離:51.6mm
基板温度:室温
スパッタリング時間:81秒間
【0033】
このようにして得られた各Al系膜について、以下のようにしてウェットエッチングを行い、Al系膜のエッチング速度に基づき、アルカリ耐性を評価した。本実施例に用いたエッチング用アルカリ性薬液(水酸化カリウム溶液)は、500gの純水に5.0gのKOH顆粒を添加し、攪拌してpH13.08に調整したものである。
【0034】
詳細には、Al系膜の一部をカプトンテープ(住友3M製5412で)でマスキングして保護した後、液温が22.0℃の1%水酸化カリウム水溶液に浸漬し、Al系膜面を上にして静置した。浸漬開始後、マスキング部以外のAl系膜がすべて消失した時点で、水酸化カリウム水溶液から取り出し後、純水で洗浄した。Al系膜がすべて消失するまでの浸漬時間(膜消失時間)を表1に併記する。
【0035】
エッチング後、マスキングに用いたテープを剥がし、エッチングされなかったAl系膜(残部)と、エッチングにより基板のガラス面がむき出しとなった部分との段差を、KLA TENCOR製の表面形状測定装置にて測定し、これをエッチング前のAl系膜厚とした。表1に上記の膜厚を記載する。
【0036】
このようにして得られたAl系膜厚(nm)と膜消失時間(秒)に基づき、エッチング速度(nm/分)を算出した。これらの結果を表1に記載する。エッチング速度が小さい程、アルカリ耐性に優れていることを意味する。表1には、Al系スパッタリングターゲット中のFe量とNd量(又はLa量)の比(Fe/Ndの比、又はFe/Laの比)も併記した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1より、Fe/Nd(又はFe/La)の比が本発明の要件(1/76以下≒0.013以下)を満足するNo.7〜11、13〜15は、Nd量(又はLa量)にかかわらずエッチング速度が非常に小さく、その程度は、純度の最も高いNo.1の高純度Alにおけるエッチング速度よりも小さく、アルカリ耐性に極めて優れていることが分かった。なお、これらは、本発明で規定するNd量、またはLa量を含有するため、耐熱性に優れ、電気抵抗も低いことを確認している(表には示さず)。
【0039】
これに対し、Fe/Ndの比が本発明の要件を超えるNo.6、12は、Nd量にかかわらず、エッチング速度が大きくなり、高純度AlのNo.1とほぼ同程度であった。
【0040】
また、Ndを含まない純Alの例(No.1〜5)について検討すると、純Al中のFe量が多くなる程、エッチング速度が増加し、アルカリ耐性が低下する傾向が見られた。
【0041】
表1には、Nd、またはLaを含むAl合金スパッタリングターゲットを用いたときの結果を示しているが、NdおよびLaを用いたときも、上記と同様の結果が得られることを実験により確認している。
【0042】
実施例2
本実施例では、上記実施例1のスパッタリングターゲットを二次イオン質量分析装置で分析したときの143Ndイオンに対する56Feイオンのイオン強度比と耐アルカリ性の関係について調べた。
【0043】
上記実施例1で用いた一部のスパッタリングターゲット(表1記載のNo.1、5〜7、10〜13)から試験片(5mm×5mm×5mm)の小片を切り出した後、湿式研磨によって表面を1mm除去し、該研磨面を二次イオン質量分析装置(CAMECA ims5f)にてSIMS分析法で分析した。SIMS分析条件は以下の通りである。
1次イオン:O
加速電圧:8keV
イオン電流:200nA
分析エリア:φ150μm
分析対象イオン:56Feイオン、143Ndイオン
【0044】
SIMS分析によって得られた56Feイオン強度と143Ndイオン強度を表1に記載すると共に、143Ndイオンに対する56Feイオンのイオン強度比(56Feイオン/143Ndイオン)を表1に示す。
【0045】
上記表1より、56Feイオン/143Ndイオン強度比が0.021以下であるNo.7、10、11、13は、エッチング速度が非常に小さく、その程度は純度の最も高いNo.1の高純度Alにおけるエッチング速度よりも小さく、アルカリ耐性に極めて優れていることがわかった。
【0046】
これに対し、56Feイオン/143Ndイオン強度比が0.021を超えているNo.5、6、12は、エッチング速度が大きくなり、No.1と同程か、それよりもはるかに高いものであり、十分なアルカリ耐性が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ndおよび/またはLaを0.1〜3原子%含有するAl基合金からなり、
Al基合金中に含まれるFe量が、Ndおよび/またはLaの合計量の1/76以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記スパッタリングターゲットは、二次イオン質量分析法で分析したときの143Ndイオンに対する56Feイオンのイオン強度比が、0.021以下である請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
液晶パネルまたはタッチパネルの配線形成に用いられる請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。

【図1】
image rotate