説明

DC/DCコンバータ

【課題】 本発明は、カレントトランスが過度に励磁されることを防ぐ新規なDC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】 同期整流方式のDC/DCコンバータにおいて、カレントトランスCTを設け、カレントトランスCTの二次巻線n2の両端間に負荷Rsと、ダイオードD1とスイッチSとの直列回路とを並列に接続し、前記負荷とカレントトランスの二次巻線の間に、カレントトランスから負荷へ電流が流れ込むように一方向導通素子D2を接続してある電流検出手段を備えてあることを特徴とするDC/DCコンバータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期整流方式のDC/DCコンバータに関するものであり、電流検出手段としてカレントトランスを用いたDC/DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の同期整流方式のDC/DCコンバータにおけるカレントトランスCTによる電流検出回路10cは、図5に示すように、一次・二次間をカレントトランスCTで絶縁し、一次巻線n1に流れる交流電流を電圧波形として検出する為、 カレントトランスCTの二次巻線n2の両端間に負荷Rsを接続し、負荷RsとカレントトランスCTの二次巻線の間に、カレントトランスCTから負荷Rsへ電流が流れ込むようにダイオードD2を接続してある。また、カレントトランスCTの二次巻線n2及び負荷と並列にリセット用の抵抗Rresetを接続してあり、カレントトランスCTの二次巻線n2からダイオードD2を介して抵抗Rsで電流−電圧変換を行っていた。
【0003】
同期整流方式のDC/DCコンバータにカレントトランスCTを使用する場合、DC/DCコンバータの無負荷時において、DC/DCコンバータの主スイッチが導通している期間に負側の電流がカレントトランスCTのリセット用の抵抗Rresetに流れ、抵抗Rresetの両端に発生する電圧によりカレントトランスCTが励磁されてしまうため、図6に示すように、その後励磁されたエネルギーの放出によって流れる電流がダイオードD2を介して抵抗Rsで電圧変換される事で電圧波形が全体的に上昇し、本来の電流波形に比例した検出波形を得られなくなるという課題が生じた。
【0004】
これを解決するために、ダイオードの代わりに、被検出電流が逆方向に流れるときに、一方向導通素子の両端間を短絡するスイッチ素子を用いた同期整流方式が提案された(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−219641公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、被検出電流が逆方向に流れるときに、一方向導通素子の両端間を短絡するスイッチ素子を用いたことにより、抵抗で検出される波形は逆電流を負電位として検出される。そのため、電流検出波形を集積回路等で入力する場合、集積回路の入力は負電位入力まで対応しているものを使用するか、直流電圧の足し込みが必要となってくる課題が生じる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、カレントトランスが過度に励磁されることを防ぐ新規な電流検出手段を備えたDC/DCコンバータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るDC/DCコンバータは、同期整流方式のDC/DCコンバータにおいて、カレントトランスを設け、カレントトランスの二次巻線の両端間に負荷と、ダイオードとスイッチとの直列回路とを並列に接続し、前記負荷とカレントトランスの二次巻線の間に、カレントトランスから負荷へ電流が流れ込むように一方向導通素子を接続してある電流検出手段を備えてあることを特徴とする。
【0008】
前記スイッチSをMOSFETで構成してあることを特徴とする。
前記カレントトランスの二次巻線と前記直列回路との間に前記カレントトランスの二次巻線を流れる電流をリセットするリセット手段を設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同期整流方式のDC/DCコンバータにおける電流検出手段としてカレントトランスを設け、カレントトランスで絶縁している一次側に電流が流れている期間、カレントトランスの二次巻線間に並列に設けたダイオードとスイッチとの直列回路のスイッチを導通させ、一次側の電流が負側に流れる場合にのみダイオードが導通して、ダイオードの順方向電圧で二次巻線間を短絡させることで、カレントトランスが一次電流の導通期間に過度に励磁することを防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明を実施するための最良の形態の回路図を図1に示す。図1図示には本発明に係るDC/DCコンバータにおける電流検出回路の最良の形態を示す。この電流検出回路10aは、一次・二次間をカレントトランスCTで絶縁してある。本実施形態に係る電流検出回路10aは、カレントトランスCTの二次巻線n2の両端間に負荷Rsと、ダイオードD1とスイッチSとの直列回路とを並列に接続して構成してある。本実施形態においてスイッチSはDC/DCコンバータの主スイッチと同様のタイミングでPWM制御されており、PWMオン信号がスイッチSの制御端子に出力されると、スイッチSがオンし、逆にPWMオフ信号が出力されると、スイッチSはオフするよう構成してある。
【0011】
負荷RsとカレントトランスCTの二次巻線の間に、カレントトランスCTから負荷Rsへ電流が流れ込むようにダイオードで構成した一方向導通素子D2を接続してある。また、カレントトランスCTの二次巻線n2及びダイオードD1とスイッチSとの直列回路と並列に、カレントトランスCTの励磁エネルギーを放出する為のリセット用の抵抗Rresetを接続してある。
【0012】
以上のように構成してあるDC/DCコンバータに係る電流検出回路は以下のような作用をする。先ず、オン期間に一次側に正側の電流が流れる場合は電流検出回路10aの二次側には正電流が流れるため、ダイオードD2の正方向に電流が流れ、カレントトランスCTの二次巻線n2からダイオードD2へ、さらに負荷Rsへ流れて一周する。この場合、電流の向きがダイオードD1の逆方向になるため、スイッチSとダイオードD1との直列回路には流れない。
【0013】
続いて、オフ期間になると、カレントトランスCTに励磁されたエネルギーはリセット用抵抗Rresetにより消費され、カレントトランスCTは初期状態に戻る。また、一次側に負側の電流が流れる場合は、 電流検出回路10aの二次側には負電流が流れるため、ダイオードD2には電流が流れず、負荷Rsの両端に電圧は発生しない。 本実施形態においては、オン期間になると同時に前記直列回路を構成するスイッチSがオンすることにより、カレントトランスCTの二次巻線n2からスイッチSへ、さらにダイオードD1へ電流が流れ、二次巻線n2間を短絡することでカレントトランスCTが一次電流の導通期間に過度に励磁することを防止する。これにより、図2に示すように負荷Rsにより電流−電圧変換されて検出される波形は、電流波形の正側のみ表れる。従って、検出された波形のピーク電圧に着目すると、 一次巻線n1に流れる電流のピークレベルに比例することになる。これは、電流のピーク値を検出して制御するピーク電流制御方式等において無負荷から全負荷まで安定した制御を行う為の有効な手段となる。 また、電圧変換された検出波形は正側のみの波形となるため、集積回路等へ入力する場合においても負電圧を考慮しなくてよい。
【実施例1】
【0014】
続いて、前記実施形態の変形例を実施例1として図3に示し、これについて説明する。図3図示の本実施例に係るDC/DCコンバータの電流検出回路10bは、一次・二次間をカレントトランスCTで絶縁してある。本実施例に係る電流検出回路10bは、カレントトランスCTの二次巻線n2の両端間に負荷Rsと、ダイオードD1とスイッチSとの直列回路とを並列に接続して構成してある。本実施例においてスイッチSはDC/DCコンバータの主スイッチと同様のタイミングでPWM制御されており、PWMオン信号がスイッチSの制御端子に出力されると、スイッチSがオンし、逆にPWMオフ信号が出力されると、スイッチSはオフするよう構成してある。
【0015】
負荷RsとカレントトランスCTの二次巻線の間に、カレントトランスCTから負荷Rsへ電流が流れ込むようにダイオードで構成した一方向導通素子D2を接続してある。また、スイッチSと並列に、カレントトランスCTの二次巻線n2を流れる電流をリセットするリセット用の定電圧ダイオードDZを接続してある。この定電圧ダイオードDZはスイッチSとともに直列回路を構成するダイオードD1とは逆方向に接続してある。
【0016】
以上のように構成してあるDC/DCコンバータに係る電流検出回路は以下のような作用をする。先ず、オン期間に一次側に正側の電流が流れる場合は電流検出回路10bの二次側には正電流が流れるため、ダイオードD2の正方向に電流が流れ、カレントトランスCTの二次巻線n2からダイオードD2へ、さらに負荷Rsへ流れて一周する。この場合、電流の向きがダイオードD1の逆方向になるため、スイッチSとダイオードD1との直列回路には流れない。
【0017】
続いて、オフ期間になると、カレントトランスCTに励磁されたエネルギーはリセット用の定電圧ダイオードDZで消費され、カレントトランスCTは初期状態に戻る。また、一次側に負側の電流が流れる場合は、 電流検出回路10bの二次側には負電流が流れるため、ダイオードD2には電流が流れず、負荷Rsの両端に電圧は発生しない。 本実施例においては、オン期間になると同時に前記直列回路を構成するスイッチSがオンすることにより、カレントトランスCTの二次巻線n2からスイッチSへ、さらにダイオードD1へ電流が流れ、二次巻線n2間を短絡することでカレントトランスCTが一次電流の導通期間に過度に励磁することを防止する。これにより、図2に示すように、負荷Rsにより電流−電圧変換されて検出される波形は、電流波形が正側のみ表れる。従って、検出された波形のピーク電圧に着目すると、 一次巻線n1に流れる電流のピークレベルに比例することになる。これは、電流のピーク値を検出して制御するピーク電流制御方式等において無負荷から全負荷まで安定した制御を行う為の有効な手段となる。 また、電圧変換された検出波形は正側のみの波形となるため、集積回路等へ入力する場合においても負電圧を考慮しなくてよい。
【実施例2】
【0018】
続いて、図1図示電流検出回路を備えたDC/DCコンバータの一実施例を図4に示す。図4図示のDC/DCコンバータは、同期整流方式のDC/DCコンバータであり、一次・二次間をトランスTで絶縁してある。DC/DCコンバータの二次側の入力側に整流スイッチS3と転流スイッチS4を設け、出力側に出力チョークL、平滑コンデンサC2及び負荷Rを設けてある。また、DC/DCコンバータの一次側には主電源Vin、平滑コンデンサC1及び主スイッチS2を備え、主電源Vinの正側とトランスTの一端との間には、一次・二次間とを絶縁するカレントトランスCTの一次巻線n1を接続してある。
【0019】
カレントトランスCTの二次巻線n2の両端間に負荷Rsと、ダイオードD1とFETで構成したスイッチS1との直列回路とを並列に接続して構成してある。また、負荷Rsの一端を主スイッチS2のソース端子に接続してある。負荷RsとカレントトランスCTの二次巻線の間に、カレントトランスCTから負荷Rsへ電流が流れ込むようにダイオードD2を接続してある。また、カレントトランスCTの二次巻線n2及びダイオードD1とスイッチSとの直列回路と並列に、カレントトランスCTの二次巻線n2を流れる電流をリセットするリセット用の抵抗Rresetを接続してある。
【0020】
このDC/DCコンバータの出力部には、出力電圧を検出し、その信号を誤差増幅する出力電圧誤差増幅回路1と接続し、この出力電圧誤差増幅回路1の信号はフォトカプラQを介して、PWM制御回路2に出力され、このPWM制御回路2からDC/DCコンバータの一次側のスイッチS1,S2の制御端子にPWM信号が出力されるように構成してある。また、PWM制御回路2は電流検出部3に接続し、この電流検出部3はカレントトランスCTを備えた電流検出回路10の負荷Rsの端子間に発生する電圧変換された電流波形を検出する。以上の構成より、カレントトランスCTの二次巻線n2に接続するスイッチS1はPWM制御されており、PWM制御回路2からPWMオン信号がスイッチS1のゲート端子に出力されると、スイッチS1がオンし、逆にPWMオフ信号が出力されると、スイッチS1はオフするようしてある。但し、スイッチS1をオンさせるPWM信号レベルは、負荷Rsの端子間に発生する電圧レベルに対して十分高いものとする。
【0021】
以上のように構成してあるDC/DCコンバータは、同期整流方式のDC/DCコンバータであるため、主スイッチS2のオン期間に平滑コンデンサC2に充電された電荷がDC/DCコンバータを構成するトランスTの二次巻線n4に向けて逆電流が流れる場合があるが、電流検出回路10を設けたことにより、被検出電流が正負いずれの方向に電流が流れていても、電流検出回路10を構成する負荷Rsから取り出される電流検出波形のピークレベルは連続して被検出電流に比例したものとなり、DC/DCコンバータは全負荷から無負荷まで線形で安定した制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、同期整流方式のDC/DCコンバータにおける電流検出手段としてカレントトランスを設け、カレントトランスで絶縁している一次側に電流が流れている期間、カレントトランスの二次巻線間に並列に設けたダイオードとスイッチとの直列回路のスイッチを導通させ、一次側の電流が負側に流れる場合にのみダイオードが導通して、ダイオードの順方向電圧で二次巻線間を短絡させることで、カレントトランスが一次電流の導通期間に過度に励磁することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るDC/DCコンバータを構成する電流検出回路における発明を実施するための最良の形態の回路図である。
【図2】図1図示実施形態における動作波形図である。
【図3】図1とは別の実施例を示した回路図である。
【図4】本発明に係るDC/DCコンバータの一実施例を示す回路図である。
【図5】従来におけるDC/DCコンバータに係る電流検出回路の回路図である。
【図6】図5図示従来例における動作波形図である。
【符号の説明】
【0024】
CT カレントトランス
T トランス
n1,n2,n3,n4 巻線
Rs 負荷
Rreset リセット用の抵抗
S,S1,S2,S3,S4 スイッチ
D1,D2 ダイオード
DZ 定電圧ダイオード
C1,C2 平滑コンデンサ
L 出力チョーク
Vin 主電源
Q フォトカプラ
1 出力電圧誤差増幅回路
2 PWM制御回路
3 電流検出部
10,10a,10b,10c 電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期整流方式のDC/DCコンバータにおいて、カレントトランスを設け、カレントトランスの二次巻線の両端間に負荷と、ダイオードとスイッチとの直列回路とを並列に接続し、前記負荷とカレントトランスの二次巻線の間に、カレントトランスから負荷へ電流が流れ込むように一方向導通素子を接続してある電流検出手段を備えてあることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記スイッチをMOSFETで構成してあることを特徴とする請求項1記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記カレントトランスの二次巻線と前記直列回路との間に前記カレントトランスの二次巻線を流れる電流をリセットするリセット手段を設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載のDC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−149009(P2006−149009A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332534(P2004−332534)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】