説明

LaAlO3セラミックスの製造方法

【課題】 透光性が良好なLaAlO3セラミックスの製造方法を提供する。
【解決手段】 LaAlO3の粉末を40℃/分以上の昇温速度で1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱した後、前記焼結温度に3分以上45分以下の時間保持して焼結する焼結工程をLaAlO3セラミックスの製造方法。LaAlO3の粉末を1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱して焼結して焼結体を得る焼結工程、前記焼結体を900℃以上1300℃以下の温度でアニールするアニール工程を有するLaAlO3セラミックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLaAlO3セラミックスの製造方法に関し、特にレンズ等に使用される高精度な光学素子を形成するLaAlO3結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラを始めとするカメラの生産量が増し、より高性能の光学レンズが要求されている。特にカメラ等の光学性能を向上させるためには、高屈折率低分散の光学材料が必要となってきている。
【0003】
LaAlO3結晶は、従来の光学ガラスには無い高屈折率低分散の光学性能を有しているが、これまでにその特性を利用して光学レンズに適用した例はない。
【0004】
LaAlO3結晶を用いて光学レンズを作製するには2つの構造形体が考えられる。ひとつは単結晶、もうひとつは微細な結晶粒から成る多結晶体(以下、セラミックス)であり、それぞれの特徴がある。まず、単結晶は、高い透過率を有しているが、その作製にあたっては融点以上、LaAlO3の場合であれば2000℃以上の耐熱性を持つ特殊な装置が必要となる。更に装置1台から作製される個数も少ない上、結晶成長に時間を要することでカメラ用レンズに適用するには製造コストの点で難しい。一方、セラミックスは、原料粉末を結合させた構造のため融点よりもかなり低い温度で作製することができるので、装置としては市販の焼結炉で作製できる。また、レンズに近い形状にしてから焼結することが可能なため、単結晶と比較して加工コストを抑えることができる。
【0005】
光学部品材料としての透光性セラミックスとしては、特許文献1に記載されているBa(Mg、Ta)O3系のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−187767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
透光性のLaAlO3セラミックスを作製するには、散乱の原因となる気孔を十分に排除して、粉末充填率を100%に近づける必要がある。焼結過程において原料粒子の成長する速度が気孔の除去速度を上回る場合、気孔はセラミックス内にトラップされる。そのため、粒成長速度の制御が透光性のLaAlO3セラミックスを得るための重要なポイントとなる。
【0008】
特許文献1に記載の焼結と同様の方法を適用してLaAlO3セラミックスの作製を試みたが、透光性を得ることはできなかった。これは焼結過程で生成する中間生成物とその成長速度が材料によって異なるために気孔を排除することができなかったことに起因しており、粒成長を制御するための最適な条件は材料ごとに探索する必要がある。
【0009】
また、LaAlO3セラミックスを光学素子として利用するには、光吸収の少ない無着色にする必要がある。着色の主たる原因は、結晶中に含まれる遷移金属などの不純物である。そのため、一般に無着色結晶を得る場合には、不純物を限りなくゼロに近づけた高純度原料を用いたり、炉材から結晶への不純物の混入を防ぐために耐食性の高い材料で炉を構成する等の対策を講じられていた。しかしながら、原料や装置は高価になり、無着色結晶のコストは高くなる問題があった。
【0010】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、透光性が良好なLaAlO3セラミックスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する本発明の第1のLaAlO3セラミックスの製造方法は、LaAlO3の粉末を40℃/分以上の昇温速度で1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱した後、前記焼結温度に3分以上45分以下の時間保持して焼結する焼結工程を有することを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決する本発明の第2のLaAlO3セラミックスの製造方法は、LaAlO3の粉末を1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱して焼結して焼結体を得る焼結工程、前記焼結体を900℃以上1300℃以下の温度でアニールするアニール工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透光性が良好なLaAlO3セラミックスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1および第2の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態におけるLaAlO3セラミックスの製造方法は、LaAlO3の粉末を40℃/分以上、好ましくは40℃/分以上130℃/分以下の昇温速度で1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱した後、前記焼結温度に3分以上45分以下の時間保持して焼結する焼結工程を有することを特徴とする。
【0016】
前記焼結温度で保持した後に、10℃/分以下、好ましくは4℃/分以上10℃/分以下の降温速度で1600℃以上1800℃以下から1000℃以下に降温することが好ましい。
【0017】
前記LaAlO3の粉末を1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加圧下で加熱して焼結することが好ましい。
【0018】
この製造方法によれば、セラミックス内部の残留応力が小さくなり、粒界での亀裂や屈折率分布を抑制することができるため、より散乱の少ない透光性なLaAlO3セラミックスを得ることができる。
【0019】
次に、本発明の第1の実施の形態のLaAlO3セラミックスの製造方法の特徴について説明する。まず、光学グレードの酸化物粉末を用いてプラズマ溶融などの方法により平均粒径が10μm以下の球状のLaAlO3粒子を作製する。次に、この球状粒子を放電プラズマ焼結法により加圧しながら焼結する。得られた焼結体を900℃以上1300℃以下の温度でアニールした後、研削、研磨工程を経て、光学レンズ等の光学素子とする。
【0020】
上記のLaAlO3の焼結過程では、La10Al4O21が部分的に生成し、これが1100℃以下の低温域においてLaAlO3や別の中間生成物であるLa2O3やAl2O3の相より速い速度で粒成長していることが焼結収縮挙動およびX線回折から推測された。そのため、従来の方法のような1時間当たり100℃(1.7℃/分)程度の昇温速度で温度を上げると、最高温度に達するまでにLa10Al4O21粒子が先に成長して、気孔がセラミックス中に多数残存することになる。そこで、本発明は、La10Al4O21以外の相の粒成長速度が大きくなる高温域まで40℃/分以上の昇温速度で高速で温度を上げる焼結温度プロファイルにしたところ、透光性を有するLaAlO3セラミックスが得られるようになった。
【0021】
次に、焼結温度については、表1に示す実験結果より、1600℃より低い温度では粒成長が十分進まず透光性を得ることができない。一方で、1800℃より高い温度では材料の多くが揮発したり、焼結型に融着したりすることがわかった。そのために、本発明は、透光性のLaAlO3多結晶体セラミックスを得るための焼結温度として、1600℃以上1800℃以下を選択したものである。
【0022】
焼結温度に加熱した後、前記焼結温度に保持する保持時間は、表2に示す実験結果(焼結最高温度は1750℃)より、3分より短い時間では粒成長が十分進まず透光性を得ることができない。一方で、60分より長い時間では透光性が劣化したり、焼結型に融着したりすることがわかった。そのために、本発明は、透光性のLaAlO3多結晶体を得るための焼結温度に保持する保持時間として3分以上45分以下を選択したものである。
【0023】
表1と表2に示す実験は、放電プラズマ焼結法で行った。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態におけるLaAlO3セラミックスの製造方法は、LaAlO3の粉末を1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱して焼結して焼結体を得る焼結工程、前記焼結体を900℃以上1300℃以下、好ましくは1000℃以上1100℃以下の温度でアニールするアニール工程を有することを特徴とする。
【0027】
前記LaAlO3の粉末を1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加圧下で加熱して焼結することが好ましい。
【0028】
この製造方法によれば、透光性を有するLaAlO3セラミックスを得ることができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施の形態のLaAlO3セラミックスの製造方法の特徴について説明する。まず、光学グレードの酸化物粉末を用いてプラズマ溶融などの方法により平均粒径が10μm以下の球状のLaAlO3粒子を作製する。次に、この球状粒子を放電プラズマ焼結法により加圧しながら焼結する。得られた焼結体を900℃以上1300℃以下の温度でアニールした後、研削、研磨工程を経て、光学レンズ等のLaAlO3セラミックスとする。
【0030】
原料の前記LaAlO3の粉末が、1ppm以上10ppm以下のCrを不純物として含有していてもよい。結晶中に含まれるCrの含有量は1ppm以上10ppm以下が望ましい。Crの含有量を1ppm未満にすれば無着色の結晶を得ることができるが、前述したように高純度原料を使用しなくてはならないため製品コストは高価になる。一方、含有量が10ppmを超えた場合、Crが凝集したり、焼結時の粒成長制御ができず透光性が得られなかったりといった問題が発生する。
【0031】
焼結後のアニールは焼結体中に存在するCrの価数を5価から3価へと変化させることで着色を改善する効果があり、その温度は900℃以上1300℃以下が望ましい。900℃より低い温度ではCrの価数変化が起きず、1300℃を超える温度では焼結後の高密度状態から更に粒成長が進んでしまうことで気孔が成長し透過率の低下又は失透が起きてしまう。
【0032】
放電プラズマ焼結法などによる焼結温度は1600℃以上1800℃以下が望ましい。1600℃より低い温度では相対密度が上がらず透光性を得ることができず、1800℃より高くなると材料の多くが揮発したり焼結型に融着して破損したりする。
【0033】
本発明の製造方法により得られたLaAlO3セラミックスは、例えば光学系に用いられるレンズ、プリズムなどへの使用が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下の実施例1から7に、本発明の第1の実施の形態の実施例を示す。
【0035】
(実施例1から7)
本発明に係わる焼結法を用いた多結晶のLaAlO3セラミックスの製造方法の実施例を示す。まず、純度99.9%のLaAlO3粉末原料とプラズマ熔融法を用いて平均粒径2μm、3μm、5μmの単分散の球状粒子をそれぞれ作製する。これらの球状粒子をそれぞれ型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1750℃、圧力40MPaで焼結する。この時、最高温度に到達するまでの昇温速度は40℃/分以上130℃/分以下、最高温度から室温に下げる際の降温速度は4℃/分以上20℃/分以下とした。
【0036】
なお、LaAlO3の融点(2100℃)より十分低い1000℃以下の降温速度を20℃/分に上げて焼結したところ、透光性の劣化はわずかなものであった。製造コストと仕様を鑑みて、1000℃以下の低温域では必ずしも降温速度を4℃/分以上10℃/分以下にする必要はない。焼結手段については上記条件で焼結できる方式であれば何を用いても構わないが、今回の実験では放電プラズマ焼結を用いた。
【0037】
次に、得られた焼結体を研削し、必要に応じて残留応力緩和などの目的でアニールを施した後、研磨して厚さ3mmの試料とした。
【0038】
得られた試料の全てが透光性を示し、ジェー・エー・ウーラム社製エリプソメーターM−2000を用いて測定波長190から1000nmの範囲で屈折率を測定した。d線(587.6nm)の屈折率は2.0であった。また、(nd−1)/(nF−nC)より求めたアッベ数は42であった。nd、nF、nCは、それぞれd線、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率である。
【0039】
表3に焼結条件と透光性の関係を示す。透光性の欄に「高い」と追記している試料はd線における厚さ0.5mm当たりの内部透過率が40%を超えている透光性の高いものである。なお、d線における内部透過率は、バリアン社製分光光度計CARY4Gを用いて測定した直線透過率を2nd/(nd+1)で求めた理論透過率で除することにより算出した。
【0040】
(比較例1、2)
昇温速度を40℃/分より下げて、実施例1と同様の方法で試料を作製した。得られた試料は透光性のない黄白色のセラミックスであった。表3に焼結条件と透光性の関係を示す。
【0041】
【表3】

【0042】
以下の実施例8から13に、本発明の第2の実施の形態の実施例を示す。
【0043】
(実施例8)
以下、表4に示す条件で製造したセラミックスの実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【0044】
純度99.9%以上のLa2O3とAl2O3の酸化物原料を用意し、LaAlO3の比率になるように原料を調整、混合する。混合原料のCrの含有量は4.5ppmであった。この混合原料を反応させるため1500℃で4時間処理した後、ボールミルで粉砕する。粉砕した粉末を熱プラズマ中に導入し、加熱、溶融した後に冷却して平均粒径が2μmの球状粒子に加工する。
【0045】
球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1750℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させる。この時、最高温度に到達するまでの昇温速度は40℃/分以上、最高温度での保持時間は3分以上60分以下とした。焼結手段については上記条件で焼結できる方式であれば何を用いても構わないが、今回の実験では放電プラズマ焼結を用いた。
【0046】
得られた焼結体は緑に着色しているが、焼結体に900℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨することで厚さ1mmの無色透明のLaAlO3セラミックスを得た。
【0047】
LaAlO3セラミックスの屈折率およびアッべ数は、それぞれ2.0と42であった。また、LaAlO3セラミックスに含まれるCrの量は4.5ppmであった。結果を表4に示す。
【0048】
<測定方法>
(1)屈折率
屈折率は、エリプソメーター(商品名「M−2000」、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社)を用いて波長587nmで測定して求めた値(nd)を示す。
(2)アッべ数
アッべ数は、エリプソメーターを用いて、波長587nm、486nm、656nmの屈折率nd,nF,nCを求め、アッべ数νdをνd=(nd−1)/(nF−nC)の式で求めた値を示す。
(3)Cr含有量
光学素子に含まれるCrの量は、ICP質量分析装置(商品名「Agilent4500」、アジレント・テクノロジー株式会社)で測定して求めた値を示す。
【0049】
(実施例9)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1750℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた透光性の焼結体に1100℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨して厚さ1mmのLaAlO3セラミックスとした。
【0050】
得られたLaAlO3セラミックスは無色透明で、その屈折率、アッべ数、Cr含有量は実施例8と同様であった。結果を表4に示す。
【0051】
(実施例10)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1750℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた透光性の焼結体に1300℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨して厚さ1mmのLaAlO3セラミックスとした。得られたLaAlO3セラミックスは無色透明で、その屈折率、アッべ数、Cr含有量は実施例1と同様であった。結果を表4に示す。
【0052】
(比較例3)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1750℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた透光性の焼結体に800℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨して厚さ1mmのLaAlO3セラミックスとした。得られたLaAlO3セラミックスは緑のままで、光学素子としての使用には不適切であった。結果を表4に示す。
【0053】
(比較例4)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1750℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた透光性の焼結体に1400℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨して厚さ1mmのLaAlO3セラミックス子とした。得られたLaAlO3セラミックスは透光性が大きく劣化し光学素子としての使用には不適切であった。結果を表4に示す。
【0054】
(実施例11)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1600℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた透光性の焼結体に1000℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨して厚さ1mmのLaAlO3セラミックスとした。得られたLaAlO3セラミックスは無色透明で、その屈折率、アッべ数、Cr含有量は実施例8と同様であった。
【0055】
(実施例12)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1700℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた透光性の焼結体に1000℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨して厚さ1mmのLaAlO3セラミックスとした。得られたLaAlO3セラミックスは無色透明で、その屈折率、アッべ数、Cr含有量は実施例8と同様であった。
【0056】
(実施例13)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1800℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた透光性の焼結体に1000℃、1時間以上のアニールを施した後、研削、研磨して厚さ1mmのLaAlO3セラミックスとした。得られたLaAlO3セラミックスは無色透明で、その屈折率、アッべ数、Cr含有量は実施例8と同様であった。
【0057】
(比較例5)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1500℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた焼結体は焼結温度が低いため気孔が多数残存し、光学素子としての使用には不適切であった。結果を表4に示す。
【0058】
(比較例6)
実施例8と同様の方法で、LaAlO3の球状粒子を作製する。球状粒子を型に充填し、真空または窒素雰囲気の下、最高温度1850℃、圧力40MPa以上の圧力で焼結させた。得られた焼結体は焼結温度が高いため型に融着して破損してしまい、光学素子としての使用には不適切であった。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
(注1)着色は緑に着色しているかどうかを示す。無は焼結体が緑に着色していないことを示す。有は焼結体が緑に着色していることを示す。
(注2)融着・破損は焼結体に割れや欠けがあるかどうかを示す。無は割れや欠けがないことを示す。有は割れや欠けがあることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造方法により得られたLaAlO3セラミックスは、光学系に用いられるレンズ、プリズムなどに利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LaAlO3の粉末を40℃/分以上の昇温速度で1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱した後、前記焼結温度に3分以上45分以下の時間保持して焼結する焼結工程を有することを特徴とするLaAlO3セラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記焼結温度で保持した後に、10℃/分以下の降温速度で1600℃以上1800℃以下から1000℃以下に降温することを特徴とする請求項1に記載のLaAlO3セラミックスの製造方法。
【請求項3】
LaAlO3の粉末を1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加熱して焼結して焼結体を得る焼結工程、前記焼結体を900℃以上1300℃以下の温度でアニールするアニール工程を有することを特徴とするLaAlO3セラミックスの製造方法。
【請求項4】
前記LaAlO3の粉末が、1ppm以上10ppm以下のCrを不純物として含有することを特徴とする請求項3に記載のLaAlO3セラミックスの製造方法。
【請求項5】
前記LaAlO3の粉末を1600℃以上1800℃以下の焼結温度に加圧下で加熱して焼結することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のLaAlO3セラミックスの製造方法。

【公開番号】特開2012−218973(P2012−218973A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86141(P2011−86141)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】