説明

NOx浄化システム

【課題】 排気ガス中のNOxの浄化のためにNOx吸蔵還元型触媒を用いるNOx浄化システムにおいて、触媒の組成及び配置(レイアウト)を工夫することにより、幅広いNOx活性温度ウィンドウを持つNOx浄化システムを提供する。
【解決手段】 排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、かつ、リッチ状態の場合に吸蔵していたNOxを放出する吸蔵材と触媒金属を備えたNOx吸蔵還元型触媒2、3を備えたNOx浄化システム1において、上流側に高温型触媒2を、下流側に低温型触媒3を直列に配置すると共に、前記高温型触媒2が担持する白金とロジウムのモル比を2:1以上で1:2以下の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの後処理装置に使用されるNOx吸蔵還元型触媒の触媒組成とその配置に関し、特に、低温側の浄化率を高め、広い温度域で高い浄化率が得られるような触媒組成と配置を備えたNOx浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンや一部のガソリンエンジン等の内燃機関や様々な燃焼装置の排気ガス中からNOxを還元除去するためのNOx触媒について種々の研究や提案がなされている。その一つに、ディーゼルエンジン用のNOx低減触媒としてNOx吸蔵還元型触媒があり、有効に排気ガス中のNOxを浄化できる。
【0003】
このNOx吸蔵還元型触媒は、基本的に、アルミナ等の触媒担体上に、酸化・還元反応を促進する白金(Pt),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd)等の貴金属類の触媒金属と、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属やカリウム(K)等のアルカリ金属等で形成されるNOxを吸蔵・放出する機能を有するNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)を担持した触媒である。
【0004】
このNOx吸蔵還元型触媒は、流入する排気ガスの空燃比がリーン(酸素過多)状態であって雰囲気中に酸素(O2 )が存在する場合には、排気ガス中の一酸化窒素(NO)が触媒金属により酸化されて二酸化窒素(NO2 )となり、このNO2 はNOx吸蔵材に硝酸塩(Ba2 NO4 )等として蓄積される。
【0005】
また、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比やリッチ(低酸素濃度)状態になって雰囲気中に酸素濃度が低下すると、Ba等のNOx吸蔵材は一酸化炭素(CO)と結合し、硝酸塩からNO2 が分解放出され、この放出されたNO2 は貴金属類の三元機能により排気ガス中に含まれている未燃炭化水素(HC)やCO等で還元され窒素(N2 )となり、排気ガス中の諸成分は、二酸化炭素(CO2 ),水(H2 O),窒素等の無害な物質として大気中に放出される。
【0006】
そのため、NOx吸蔵還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、NOx吸蔵能力が飽和に近くなると、排気ガスの空燃比をリッチにして、流入する排気ガスの酸素濃度を低下させるNOx吸蔵能力回復用のリッチ制御を行うことにより吸収したNOxを放出させて、この放出されたNOxを貴金属触媒により還元させるNOx再生操作を行っている。
【0007】
しかしながら、このNOx吸蔵還元型触媒においては、触媒の組成により、低温活性が高い低温型NOx吸蔵還元触媒と、高温活性が高い高温型NOx吸蔵還元触媒に分かれるが、図4に示すように、低温型NOx吸蔵還元触媒は、貴金属の活性を阻害しないバリウム(Ba)等アルカリ土類金属を主体にしたNOx吸蔵材を使用しているため、貴金属の活性が阻害されず、低温時のNOx還元性能に優れているが、このアルカリ土類金属は、高温時にNOx吸蔵能力が低下するという問題がある。
【0008】
一方、図4に示すように、高温型NOx吸蔵還元触媒は、吸蔵材にバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属とは逆の特性を持つカリウム(K)等のアルカリ金属を使用しており、このアルカリ金属は、高温時のNOx吸蔵能力は高いが、低温時に貴金属(酸化触媒)の活性を阻害するため、低温域のNOx還元性能が低下するという問題がある。
【0009】
これに対し、様々な排ガス規制モードに対するためには温度ウィンドウの拡大の必要が求められている。例えば、図4に示すように、例えば、JE05モードでは、最も低い温度で100℃付近で、最も厳しいD13モードの11モード点では530℃になる。アメリカ合衆国の排ガスモードでは全負荷点もモードに入っており、最高で600℃程度に達する。これに対し、現在の低温型NOx吸蔵還元触媒では150℃〜400℃、高温型NOx吸蔵還元触媒では300℃〜650℃の範囲しかカバーできないという問題がある。
【0010】
このNOx吸蔵還元触媒の温度ウィンドウを広げる試みとして、上流側の高温型NOx吸蔵還元触媒と下流側の低温型NOx吸蔵還元触媒を排ガス中に配置した排気ガス浄化システムや排ガス浄化装置が提案されたり、リーン雰囲気でのNOx活性温度範囲の異なる複数の触媒を直列に近接配置し、NOx活性温度範囲の高いものほど、触媒容量の配分を大きく設定し、また、上流側に配置する内燃機関の排気浄化用触媒装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0011】
また、その一方、このNOx吸蔵還元型触媒においては、熱劣化(主に、シンタリング)によるNOx浄化率の低下という問題もあり、図5〜図7の模擬ガスによる経時劣化(エージング)実験結果で示すように、低温型NOx吸蔵還元触媒においては、熱劣化による低温域(200℃付近)のNOx浄化率の低下は非常に少ないが、高温域(500℃付近)のNOx浄化率は徐々に低下している。この理由は、低温域はNOx吸着性能を有効に利用しているので、貴金属劣化によるNO→NO2 の活性の低下に伴う吸蔵効率の低下の影響を受け難いためと考えられる。また、高温型NOx吸蔵還元触媒においては、反対に、熱劣化による高温域(500℃付近)のNOx浄化率の低下は非常に少ないが、低温域(200℃付近)のNOx浄化率は急激に低下している。
【0012】
これらの熱劣化の特性を考慮しながら、システム全体として、低温域から高温域まで熱劣化の影響が少ないNOx浄化システムとする必要がある。
【特許文献1】特開平10−47042号公報
【特許文献2】特開2000−167356号公報
【特許文献3】特開平10−205326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、排気ガス中のNOxの浄化のためにNOx吸蔵還元型触媒を用いるNOx浄化システムにおいて、触媒の組成及び配置(レイアウト)を工夫することにより、幅広いNOx活性温度ウィンドウを持つNOx浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上のような目的を達成するためのNOx浄化システムは、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、かつ、リッチ状態の場合に吸蔵していたNOxを放出する吸蔵材と触媒金属を備えたNOx吸蔵還元型触媒を備えたNOx浄化システムにおいて、上流側に高温型NOx吸蔵還元触媒を、下流側に低温型NOx吸蔵還元触媒を直列に配置すると共に、前記高温型NOx吸蔵還元触媒が担持する白金とロジウムのモル比を2:1以上で1:2以下の範囲とするように構成される。
【0015】
即ち、本発明では、前段(上流側)に設置する高温型NOx吸蔵還元触媒において触媒金属の担持割合を変える。つまり、低温型NOx吸蔵還元触媒が触媒金属に例えば白金(Pt)のみを使用して低温活性を向上させているのに対して、高温型NOx吸蔵還元触媒では吸蔵材にカリウム(K)等のアルカリ金属を使用して、高温活性を向上させているが、このアルカリ金属が白金のNOx浄化活性を抑制するため、白金の担持量を減らして、ロジウム(Rh)を担持量を増量する。
【0016】
また、この白金とロジウムの担持割合は、白金の担持量とロジウムの担持量の和に対するRhの担持量の割合を1/3〜2/3、即ち、Pt:Rh=2:1〜1:2(Pt/Rh=2〜0.5)の範囲とする。この範囲は、高温型NOx吸蔵還元触媒においてロジウムの割合を変化させて、NOx浄化率を計測した図3の、NOx浄化率の高い領域Bの範囲に対応する範囲となる。
【0017】
そして、この高温型NOx吸蔵還元触媒を低温型NOx吸蔵還元触媒の前段(上流側)に配置すると、ロジウムは炭化水素(HC)酸化活性が高いため、極低温時でも一酸化炭素(CO)を主成分とする炭化水素の部分酸化物を生成する。この一酸化炭素を主成分とする炭化水素の部分酸化物は良好なNOx浄化用還元剤であるため、後段の低温型NOx吸蔵還元触媒の極低温性能が大きく向上する。なお、この部分酸化物には、一酸化炭素の他にも、酸、ケトン、アルデヒド等の含酸素炭化水素があり、部分酸化されない炭化水素に比べて、NOxとの反応活性が強く、NOxをより選択的に還元する。
【0018】
更に、上記のNOx浄化システムにおいて、前記高温型NOx吸蔵還元触媒の白金の担持量とロジウムの担持量の和を0.5g/L以上で5.0g/L以下とすると共に、白金の担持量を0.1g/L以上で3.0g/L以下とするように構成する。
【0019】
白金の担持量とロジウムの担持量の和が、0.5g/Lより小さいと浄化活性が不足し、5.0g/Lより大きいとこの効果が飽和し、効果の割にコスト高となる。また、白金の担持量が、0.1g/Lより小さいと浄化活性が不足し、3.0g/Lを超えるとアルカリ金属が白金のNOx浄化活性を抑制するため、効果の割にコスト高となる。
【0020】
そして、上記のNOx浄化システムにおいて、前記NOx吸蔵材をカリウムで形成する。NOxの吸着量は、モル当たりで分子量の多い方が多くなるが、しかし重量が大きくなるので、重量当たりに換算すると少なくなる。カリウムは分子量がアルカリ金属の中で中位であるので、モル当たり、重量当たりのバランスを勘案すると、カリウムが適当となる。このカリウムを使用することにより、高温型NOx吸蔵還元触媒のNOx吸蔵における高温活性を向上できる。
【0021】
その上、上記のNOx浄化システムにおいて、前記高温型NOx吸蔵還元触媒に、セリウムを担持させると共に、該セリウムの担持量を0.1g/L以上で2.0g/L以下とする。この酸素の吸収及び放出を行う酸素吸収剤となるセリウム(Ce)の担持により、この酸素吸収剤はリッチ時に酸素(O2 )を供給して、還元剤の部分酸化を促進するので、低温活性が向上する。そして、このセリウムの担持量が0.1g/Lより少ないと、酸素の吸蔵及び放出効果が少なく、2.0g/Lより多くても、量の割に効果が少なく、コスト高となる。
【0022】
これらの作用効果により、それぞれの触媒を単独で使用する場合よりも、温度に関する浄化ウィンドウを低温から高温まで広い範囲で拡大できるようになり、多様な試験モードにも対応できる幅広いNOx活性温度ウィンドウを持つNOx浄化システムを提供できるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るNOx浄化システムによれば、吸蔵材にアルカリ金属を使用して、高温活性を向上させている高温型NOx吸蔵還元触媒において、このアルカリ金属によってNOx浄化活性が抑制される白金の担持量を減らして、ロジウムを担持し、白金とロジウムの担持割合を最適な範囲としたので、高いNOx浄化性能を得ることができる。
【0024】
そして、この前段の高温型NOx吸蔵還元触媒では、酸化活性が高いロジウムのため、低温での一酸化窒素から二酸化窒素への反応に対する活性が促進され、吸蔵能力が向上する。また、酸化活性が高いロジウムのため、極低温時でも炭化水素の部分酸化が促進され、この部分酸化で発生した良好なNOx浄化用還元剤となる部分酸化物により、後段の低温型NOx吸蔵還元触媒の極低温性能が大きく向上する。更に、前段の高温型NOx吸蔵還元触媒における排ガス温度の昇温により後段の低温型NOx吸蔵還元触媒の温度が昇温するので、浄化性能が向上する。
【0025】
従って、低温域から高温域まで幅広いNOx活性温度ウィンドウを持つNOx浄化システムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態のNOx吸蔵還元型触媒について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでいう排気ガスの空燃比状態とは、必ずしもシリンダ内における空燃比の状態を意味するものではなく、NOx吸蔵還元型触媒に流入する排気ガス中に供給した空気量と燃料量(シリンダ内で燃焼した分も含めて)との比のことをいう。
【0027】
図1に、本発明の実施の形態のNOx吸蔵還元型触媒1の構成を示す。このNOx吸蔵還元型触媒1は、高温型NOx吸蔵還元型触媒(以下、高温型触媒という)2と低温型NOx吸蔵還元型触媒(以下、低温型触媒という)3の少なくとも2つのタイプの触媒からなり、ケース4に上流側に高温型触媒2を、下流側に低温型触媒3を直列に配置する。なお、高温型触媒2と低温型触媒3は、当接した状態でも、間に間隔を設けた状態でもよいが、間隔が大きすぎると、この間で排ガスが冷却されるので好ましくなく、低温型触媒3への排ガスの均等流入という面から多少間隔を開けるのが好ましい。
【0028】
この高温型触媒2は、モノリス触媒(ハニカム触媒)で形成され、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、ゼオライト等の担持体に触媒コート層を設け、この触媒コート層に、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、かつ、リッチ状態の場合に吸蔵していたNOxを放出する吸蔵材と、触媒金属を担持させて構成する。
【0029】
このNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)としては、高温時にNOx吸蔵能力が低下しない、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)等のアルカリ金属を用いるが、NOxの吸着量は、モル当たりで分子量の多い方が多くなるが、しかし重量が大きくなるので、重量当たりに換算すると少なくなる。カリウムは分子量がアルカリ金属の中で中位であるので、モル当たり、重量当たりのバランスを勘案すると、カリウムを用いるのが好ましい。
【0030】
また、触媒金属としては、通常は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)等の白金族元素(その酸化物を含む)を使用するが、本発明では、白金とロジウムを使用し、この担持する白金とロジウムのモル比を2:1以上で1:2以下の範囲とする。即ち、白金とロジウムの担持割合を、図3のNOx浄化率が高い最適な範囲(領域B)とする。これにより、吸蔵材に使用されているカリウムあるいは他のアルカリ金属によって、NOx浄化活性が抑制される白金の担持量を減らして、ロジウムを担持する。この構成により、高いNOx浄化性能を得ることができる。
【0031】
なお、この図3は白金とロジウムの担持割合を変化させた時のNOx浄化率の変化を示す実験結果(排ガス温度200℃)である。この図3から分かるように、ロジウムの担持割合が小さく、白金の占める割合が大きい領域Aでは、白金のカリウム被毒の影響により、NOx活性が低くなる。また、ロジウムの担持割合が大きく、白金の占める割合が小さい領域Cでは、ロジウムは低温活性が低いので、白金が少ないとNOx活性が低くなる。
【0032】
更に、この高温型触媒2の白金の担持量とロジウムの担持量の和を0.5g/L以上で5.0g/L以下とすると共に、白金の担持量を0.1g/L以上で3.0g/L以下とする。
【0033】
白金の担持量とロジウムの担持量の和が、0.5g/Lより小さいと浄化活性が不足し、5.0g/Lより大きいと効果が飽和し、効果の割にコスト高となる。また、白金の担持量が、0.1g/Lより小さいと浄化活性が不足し、3.0g/Lを超えると効果の割にコスト高となる。
【0034】
更に、高温型触媒2にセリウム(Ce)を担持させると共に、このセリウムの担持量を0.1g/L以上で2.0g/L以下とする。
【0035】
このセリウムを担持する構成により、酸素を吸蔵及び放出できるようになるので、リーン状態とストイキ又はリッチ状態との間の酸素濃度差が縮小し、三元活性が発現し易くなり浄化性能が向上する。図3に示すように、セリウムを担持した場合には、担持しない場合よりも、NOx浄化率が高くなっていることが分かる。
【0036】
なお、セリウムの担持量が、0.1g/Lより小さいと、酸素の吸蔵・放出効果が少なく、2.0g/Lを超えると、リッチ深さが阻害されるためである。
【0037】
次に、低温型触媒3について説明する。この低温型触媒3は、高温型触媒2と同様に、触媒モノリス触媒で形成され、酸化アルミニウム、酸化チタン等の担持体に触媒コート層を設け、この触媒コート層に、排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、かつ、リッチ状態の場合に吸蔵していたNOxを放出する吸蔵材と、触媒金属を担持させて構成する。
【0038】
このNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)としては、高温型触媒2とは異なり、低温時にNOx吸蔵能力が低下しないバリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を用いるのが好ましい。 また、触媒金属としては、高温型触媒2とは異なり、アルカリ金属によって、NOx浄化活性が抑制されることが無いので、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)等の白金族元素(その酸化物を含む)を使用することができる。
【0039】
上記の構成により、高温型触媒2において、吸蔵材にアルカリ金属を使用して、高温活性を向上させると共に、このアルカリ金属によってNOx浄化活性が抑制される白金の担持量を減らして、ロジウムを担持し、白金とロジウムの担持割合を最適な範囲としたので、高いNOx浄化性能を得ることができる。
【0040】
更に、この前段の高温型触媒2では、酸化活性が高いロジウムのため、低温での一酸化窒素から二酸化窒素への反応に対する活性が促進され、吸蔵能力が向上する。また、酸化活性が高いロジウムのため、極低温時でも炭化水素の部分酸化が促進され、この部分酸化で発生した良好なNOx浄化用還元剤となる部分酸化物により、後段の低温型触媒3の極低温性能が大きく向上する。更に、前段の高温型触媒2における排ガス温度の昇温により後段の低温型触媒3の温度が昇温するので、浄化性能が向上する。
【0041】
従って、図2に示すように、本発明の高温型触媒2を前段に低温型触媒3を後段にしたNOx浄化システム(高温型触媒+低温型触媒)1は、幅広いNOx活性温度ウィンドウを持つNOx浄化システムとなる。また、図2から、150℃の低温域でも浄化率が向上がしていることが分かる。この低温時における浄化性能向上の理由としては、前段の高温型触媒2による低温でのNO→NO2 反応の活性の促進による吸蔵能力の向上、前段の高温型触媒2による低温でのHC→CO反応による還元剤の部分酸化効果による還元性能の向上、前段の高温型触媒2における排ガス温度の昇温により後段の低温型触媒3の温度が昇温することによる浄化性能の向上等により、後段の低温型触媒3の性能向上の促進が考えられる。
【0042】
また、高温時は、実験時に前段の高温型触媒2の後のNOxセンサの検出値で確認されたように、略前段の高温型触媒2の機能だけで排ガスが浄化される。そのため、特に、前段の高温型触媒2の特性が重要となる。
【0043】
なお、図2に、低温型触媒を前段に高温型触媒を後段にした場合(低温型触媒+高温型触媒)も示すが、これよりも本発明の構成のNOx浄化システムの方が、低温域でも高温域でも優れたNOx浄化率を示していることが分かる。
【0044】
ちなみに、本発明の配置を入れ替えて、前段に低温型触媒、後段に高温型触媒を配置すると、低高温における性能が低下する。その理由は、低温域では、上記した低温型触媒の上流側の効果が無くなり、高温域では、前段の低温型触媒により還元剤が消費されてしまうため、後段の高温型触媒の還元機能が低下し、また、排ガス温度が上昇して後段の高温型触媒の吸蔵機能が低下するためと推測される。
【実施例】
【0045】
本発明の前段の高温型触媒2と後段の低温型触媒3を設けた実施例1のNOx浄化システム1では、目標の浄化率(530℃で70%)を達成できたが、前段の高温型触媒2のサイズを実施例1の前段の高温型触媒2の半分のサイズとし、実施例1と同じサイズの後段の低温型触媒3を設けた実施例2のNOx浄化システム1Aでは、NOx浄化率は向上したが、目標の浄化率(530℃で70%)を達成できなかったが、2/3以上であれば実施例1と同様の効果が認められた。また、従来の高温型触媒を前段に、低温型触媒を後段に設けた従来例では、高温域のNOx浄化率が不足した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る実施の形態のNOx浄化システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のNOx浄化システムの700℃の空気を100時間通過させた後の触媒入口排気温度とNOx浄化率との関係を示す図である。
【図3】高温型触媒の白金の担持量とロジウムの担持量の合計量に占めるロジウムの担持量の割合とNOx浄化率(%)との関係を示す実験結果の図である。
【図4】従来技術の高温型触媒と低温型触媒における、触媒ベッド温度とNOx浄化率との関係を示す図である。
【図5】従来技術の高温型触媒と低温型触媒における700℃ガス100時間後の触媒入口排気温度とNOx浄化率との関係を示す図である。
【図6】従来技術の低温型触媒における、経過時間とNOx浄化率との関係を示す図である。
【図7】従来技術の高温型触媒における、経過時間とNOx浄化率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 NOx浄化システム
2 高温型NOx吸蔵還元型触媒(高温型触媒)
3 低温型NOx吸蔵還元型触媒(低温型触媒)
4 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、かつ、リッチ状態の場合に吸蔵していたNOxを放出する吸蔵材と触媒金属を備えたNOx吸蔵還元型触媒を備えたNOx浄化システムにおいて、上流側に高温型NOx吸蔵還元型触媒を、下流側に低温型NOx吸蔵還元型触媒を直列に配置すると共に、前記高温型NOx吸蔵還元型触媒が担持する白金とロジウムのモル比を2:1以上で1:2以下の範囲とすることを特徴とするNOx浄化システム。
【請求項2】
前記高温型NOx吸蔵還元型触媒の白金の担持量とロジウムの担持量の和を0.5g/L以上で5.0g/L以下とすると共に、白金の担持量を0.1g/L以上で3.0g/L以下とすることを特徴とする請求項1記載のNOx浄化システム。
【請求項3】
前記NOx吸蔵材をカリウムで形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のNOx浄化システム。
【請求項4】
前記高温型NOx吸蔵還元型触媒に、セリウムを担持させると共に、該セリウムの担持量を0.1g/L以上で2.0g/L以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のNOx浄化システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの空燃比が、リーン状態の場合にNOxを吸蔵し、かつ、リッチ状態の場合に吸蔵していたNOxを放出するNOx吸蔵材と触媒金属を備えたNOx吸蔵還元型触媒を備えたNOx浄化システムにおいて、上流側にアルカリ金属を使用した高温型NOx吸蔵還元触媒を、下流側にアルカリ土類金属を使用した低温型NOx吸蔵還元触媒を直列に配置すると共に、前記高温型NOx吸蔵還元触媒が担持する白金とロジウムのモル比を2:1以上で1:2以下の範囲とすることを特徴とするNOx浄化システム。
【請求項2】
前記高温型NOx吸蔵還元触媒の白金の担持量とロジウムの担持量の和を0.5g/L以上で5.0g/L以下とすると共に、白金の担持量を0.1g/L以上で3.0g/L以下とすることを特徴とする請求項1記載のNOx浄化システム。
【請求項3】
前記高温型NOx吸蔵還元触媒のNOx吸蔵材をカリウムで形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のNOx浄化システム。
【請求項4】
前記高温型NOx吸蔵還元触媒に、セリウムを担持させると共に、該セリウムの担持量を0.1g/L以上で2.0g/L以下とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のNOx浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−150258(P2006−150258A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345785(P2004−345785)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】