説明

アクチュエータ及び把持装置

【課題】構造が簡単で製造コストが安価であり、狭い場所にも適用可能な把持装置を提供すること。
【解決手段】1対の把持指の各々について、少なくとも端部が重なるように配置し連結された2枚以上の金属薄板1と、この連結側端部6の反対側端部において金属薄板を金属薄板の長さ方向に対して垂直に往復動させ、把持指の連結側端部を、応力作用により揺動動作させる手段を設けること特徴とする。この揺動動作により、把持対象物を抱き込み、確実に把持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜や果物など表面が柔らかい物体、特に表面が脆弱な物体を確実に把持移送するためのアクチュエータ及びこのアクチュエータを備えた把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や果物など表面が柔らかく傷つきやすい対象物を把持移送するための装置としては、側面より物理的圧力をかけて把持する方法や真空吸着を利用したものなどが知られているが、特にイチゴなどのように表面が非常に脆弱でしかも不定形の物体を把持するための適切な手段は提供されていなかった。
【0003】
例えば特許文献1においては、野菜や果物をその上方から最大径部分の下側まで回りこんで把持する複数の指形成体と、この指形成体に把持された野菜や果物の上面を、吸着保持する吸着ノズルとが支持部材により支持されたロボットハンドが開示されている。この技術においては、実際に物理的に対象物に接触する指形成体は加圧空気により駆動されて、対象物の最大径部分の下側で対象物側に屈曲し、対象物を把持する。しかし、これだけでは把持が十分でないため、対象物上部において吸着ノズルにより対象物を吸着捕捉する。しかしながらこの方法では、指形成体の対象物下部側への回り込みが少ないため、ほとんど側方からの加圧把持にならざるを得ず、特にイチゴなどの脆弱物の把持には不向きである。また、指形成体は加圧空気を利用するため指形成体内に加圧空気通路が必要であり、そのため指形成体の厚さが大きくなってしまうという問題がある。また、上方からの吸着ノズルもイチゴなどの脆弱対象物に対しては傷が付く恐れがあり、適当でない。さらには、指形成体には加圧空気、吸着ノズルには真空系を用いるため、機構が複雑となり製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0004】
別の方法として特許文献2には、クランプすべき品物を取り囲むように円周上に複数本配置された可撓性フィンガと、これら各可撓性フィンガを弾性変形させて拡径するブシュ、およびこのブシュを駆動するアクチュエータを有する把持手段が開示されている。この技術では、複数のフィンガ内側に設けられたブシュの上下動により、フィンガを縮径させる。拡フィンガは垂直方向に対して若干内側に傾斜させて設けられており、可撓性を有するので把持対象物に対してやや斜め下方より加圧把持する形となるが、縮径はフィンガの可撓性のみに依存しているため、可撓性を大きくすると対象物に対する加圧が不十分となり把持力が弱くなってしまう。また逆に、可撓性を弱くすると対象物に対する圧力が強くなりすぎて脆弱物の場合に表面を損傷してしまう恐れが出てくる。
【0005】
さらに、特許文献3においては一対の板バネと、この板バネを開閉するように移動する板バネ保持部とを含む部品把持ハンドが開示されている。この技術は対象物が表面の堅固な電子部品であるため把持の思想が異なるだけでなく、左右からの加圧把持動作だけであるため、果物や野菜などの表面が脆弱な対象物の把持には不適当である。
【0006】
【特許文献1】特開平9−123080号公報
【特許文献2】特許第2716573号公報
【特許文献3】実開平2−15800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような従来技術の問題点に鑑み、本発明による把持装置では、構造が簡単で製造コストが安価であり、狭い場所にも適用可能な把持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明によるアクチュエータは、少なくとも端部が重なるように配置し連結された2枚以上の金属薄板と、前記連結側端部の反対側端部において該金属薄板を該金属薄板の長さ方向に対して垂直に往復動させる揺動手段とからなることを特徴とする。
【0009】
前記金属薄板は2枚からなることが好適である。
【0010】
前記金属薄板は、発条性を備えていることが望ましく、また長さ方向に部分的な狭幅部を設けた構成とすることも好適である。
【0011】
上記アクチュエータを複数設けて、把持装置を構成することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるアクチュエータを備えた把持装置によれば、対象物に対する側面からの加圧は最小限に抑えて、アクチュエータ動作部の変形により対象物を下方より支持できるため、イチゴなどの表面が脆弱でしかも不定形の対象物を傷つけることなく確実に把持移送することができる。また、本発明によるアクチュエータは厚さが薄いため、イチゴなどの果物をパックに詰める作業など、狭い場所での作業にも対応することができる。さらに、構造が簡単であるため製造コストを安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0013】
以下、本発明の好適な実施例について、図面に基づいて説明する。図1は本発明によるアクチュエータの要部を示す正面図である。このアクチュエータは、短冊状に形成した2枚の金属薄板1からなり、動作部5においてカシメ6等により連結されている。2枚の金属薄板1の間にはクリアランス3を設けてある。また、動作端部5に近い位置に狭幅部4を形成してある。このアクチュエータの制御端部2を保持して、図1に示した矢印方向に制御端部2を引き離すように動かす。この動きは、動作端部5に対する同心円方向の応力ではなく、あくまでも金属薄板1の長さ方向に対して垂直に応力を加えるものであるため、制御端部2から動作端部5までの距離が長くなり、この応力により動作端部に歪応力が発生して、図2(b)に示すように動作端部5が金属薄板1の厚さ方向に対して湾曲する。この湾曲動作を利用して、対象物を側面だけでなく下方から支持するのが本発明によるアクチュエータの特徴である。狭幅部4は、歪み応力を動作部に集中させる機能を有するものである。
【0014】
本発明による上述のアクチュエータでは、歪み応力による変形を利用するため、金属薄板1は発条性を有することが望ましく、特にステンレス等が好適であるが、この材質に限定されるものではなく、用途に応じて種々の材質を選択することができる。
【0015】
上記実施例においては2枚の金属薄板1からなるアクチュエータについて説明したが、2枚以上例えば3枚の金属薄板を用いて、動作端部においてカシメ以外の連結手段をとることもできる。
【0016】
図3には、本発明によるアクチュエータ2基を使用した把持装置の実施例を示した。この実施例においては、(b)に示したように1組のアクチュエータ1を水平に併設している。それぞれのアクチュエータ1は保持駆動部11において、支持部12より水平に延設された前後駆動軸13に挿通され、前後駆動軸13に沿って往復動可能に支持されている。また、それぞれの保持駆動部11により図13(a)における左右方向に可動とされていて、アクチュエータ1に歪み応力を付与できるように構成されている。それぞれのアクチュエータ1は、2枚の金属薄板1からなり動作端部5においてカシメ連結されている。
【0017】
この把持装置の動作については、以下の通りである。まず、アクチュエータ1を備えた支持部12が例えばイチゴなどの対象物21の場所まで移動する。この際、保持駆動部11は前後駆動軸13上において拡幅方向に移動されている。次に、アクチュエータ1が対象物21の底部近くまで下降した後、アクチュエータ1が対象物21に接触するまで保持駆動部11が互いに近づく。対象物21を損傷しないように、保持駆動部11はいずれかのアクチュエータ1が対象物21に接触した時点で前後移動を停止する。続いて、保持駆動部11は(図3(a)の)左右方向に開きアクチュエータ1に歪み応力を付与する。これにより、双方のアクチュエータ1が対象物21を包み込むように動作端部5において互いに内側に湾曲することにより対象物21を保持する。この一連の動作により、対象物を圧力を極力加えないようにして把持できるため、対象物を損傷することなく所望位置へ移動させることができる。
【0018】
上記実施例においてはアクチュエータ2基を使用した把持装置について説明したが、把持の安定性を向上させるためにはアクチュエータ3基を120度の角度で配置することもできる。また、本発明の精神を逸脱しない範囲において、その他多くの改変をなし得ることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるアクチュエータ及び把持装置によれば、従来は困難であった野菜は果物等の脆弱な対象物の把持が、対象物を損傷させることなく確実に行うことができ、安価な製造コストでアクチュエータ及び把持装置を提供できるため、農産物処理等の分野において大いに貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるアクチュエータ実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示したアクチュエータの側面図であり、(a)は静止時、(b)は動作時を示す。
【図3】本発明による把持装置の実施例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 金属薄板
2 制御端部
3 クリアランス
4 狭幅部
5 動作端部
6 連結部
11 保持駆動部
12 支持部
13 前後駆動軸
21 把持対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも端部が重なるように配置し連結された2枚以上の金属薄板と、前記連結側端部の反対側端部において該金属薄板を該金属薄板の長さ方向に対して垂直に往復動させる揺動手段とからなることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記金属薄板が少なくとも2枚の薄板からなることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記金属薄板が発条性を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記金属薄板が狭幅部を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのアクチュエータを複数備えたことを特徴とする把持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−36991(P2011−36991A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203089(P2009−203089)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(509162171)坂本電機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】