説明

アダプティブアンテナ装置及び無線通信装置

【課題】無線通信装置に搭載され、無線通信装置が使用される環境に関わらず、従来技術に比較して高品質の無線通信を実現するアダプティブアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ素子10aは、互いに異なる位置に給電点Q1−1,Q1−2を有し、第1の無線信号を受信する。アンテナ素子10bは、互いに異なる位置に給電点Q2−1,Q2−2を有し、第2の無線信号を受信する。コントローラ60は、第1の無線信号の復調信号のレベルが実質的に最大になるように上記第1のアンテナ素子の給電点を選択するようにスイッチ21を制御し、かつ、第2の無線信号に関の復調信号のレベルが実質的に最大になるように第2のアンテナ素子の給電点を選択するようにスイッチ22を制御し、スイッチ21及び22からの第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御して、アダプティブ制御後の合成無線信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波帯、準ミリ波帯、又はミリ波帯の無線通信システムに用いられるアダプティブアンテナ装置及び当該アダプティブアンテナ装置を有する無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波帯、準ミリ波帯、又はミリ波帯の無線通信システムにおいては、より高い信号品質及び通信の高速化をはかるために、複数のアンテナ素子により受信された各無線信号のうち、より大きな受信電力を有する無線信号を選択する選択ダイバーシチ処理が行われている。これにより、フェージングの影響を緩和できる。例えば、無線通信回路等を内蔵する下筐体と、液晶ディスプレイ等を備える上筐体とがヒンジ部で開閉可能に連結されてなる従来技術に係る折り畳み型の携帯端末装置においては、上筐体に2つのアンテナ素子を設けることにより携帯端末装置を小型化させ、当該2つのアンテナ素子を用いて選択ダイバーシチ処理が行われている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−274445号公報。
【特許文献2】特開2004−54626号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第4世代の携帯電話機やデジタルテレビジョン放送信号を受信する携帯無線端末装置のように広帯域の無線信号を送受信する携帯無線端末装置においては、より高い信号品質が求められるため、複数のアンテナ素子で受信した受信信号を同相合成する合成ダイバーシチ処理等のアダプティブ制御の使用が有効である。この場合、複数のアンテナ素子の放射効率をすべて高くする必要がある。
【0005】
しかしながら、携帯無線端末装置は人間によって保持されて使用されるため、当該携帯無線端末装置と人体頭部との接触、胴体との距離及び手の位置などによって、アンテナ装置の指向特性及び放射効率は大きく変化する。従来技術に係る折り畳み型携帯端末装置においては、上筐体に設けられる2つのアンテナ素子の給電点はそれぞれヒンジ部近傍に設けられており、人間が当該携帯端末装置を手で保持して使用するときのように給電点が手で覆われるときには、2つのアンテナ素子の放射効率がともに大きく低下し、合成ダイバーシチ処理を行えないという課題があった。また、携帯無線端末装置の小型化に伴い、複数のアンテナ素子間の距離が近くなり、複数のアンテナ素子間で受信された各無線信号間の相関が高くなり、データを受信できなくなるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、無線通信装置に搭載され、無線通信装置が使用される環境に関わらず、従来技術に比較して高品質の無線通信を実現するアダプティブアンテナ装置及び当該アダプティブアンテナ装置を有する無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るアダプティブアンテナ装置は、
互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第1の無線信号を受信する第1のアンテナ素子と、
互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第2の無線信号を受信する第2のアンテナ素子と、
上記第1のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第1の無線信号を出力する第1のスイッチ手段と、
上記第2のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第2の無線信号を出力する第2のスイッチ手段と、
上記第1の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように上記第1のアンテナ素子の給電点を選択するように上記第1のスイッチ手段を制御し、かつ、上記第2の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように上記第2のアンテナ素子の給電点を選択するように上記第2のスイッチ手段を制御し、上記第1及び第2のスイッチ手段からの第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御して、上記アダプティブ制御後の合成無線信号を出力する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
上記アダプティブアンテナ装置において、上記第1のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の上側縁端部及び下側縁端部にそれぞれ1個の給電点を有し、上記第2のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の上側縁端部及び下側縁端部にそれぞれ1個の給電点を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記アダプティブアンテナ装置において、上記第1のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の一方の縁端部の互いに異なる複数の給電点を有し、上記第2のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の一方の縁端部の互いに異なる複数の給電点を有することを特徴とする。
【0010】
さらに、上記アダプティブアンテナ装置において、上記アダプティブアンテナ装置は、互いに開閉可能に連結された第1及び第2の筐体に収容され、上記第1と第2のアンテナ素子はともに上記第1の筐体に収容されたことを特徴とする。
【0011】
またさらに、上記アダプティブアンテナ装置において、上記評価値は、上記無線信号のレベルと、上記無線信号の復調信号のレベルと、上記無線信号の復調信号の信号品質のうちの1つであることを特徴とする。
【0012】
また、上記アダプティブアンテナ装置において、上記制御手段は、上記合成無線信号の評価値が実質的に最大となるように、上記第1及び第2の無線信号に関する各振幅量と各移相量の少なくとも一方を制御することにより上記第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御することを特徴とする。
【0013】
さらに、上記アダプティブアンテナ装置において、上記合成無線信号の評価値は、上記合成無線信号のレベルと、上記合成無線信号の所望波対雑音及び干渉波電力比とのうちの1つであることを特徴とする。
【0014】
第2の発明に係る無線通信装置は、上記のアダプティブアンテナ装置と、上記各無線信号を復調信号に復調して出力する復調手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアダプティブアンテナ装置又は無線通信装置によれば、互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第1の無線信号を受信する第1のアンテナ素子と、互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第2の無線信号を受信する第2のアンテナ素子と、第1のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第1の無線信号を出力する第1のスイッチ手段と、第2のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第2の無線信号を出力する第2のスイッチ手段と、制御手段とを備え、当該制御手段は、第1の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように第1のアンテナ素子の給電点を選択するように第1のスイッチ手段を制御し、かつ、第2の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように第2のアンテナ素子の給電点を選択するように第2のスイッチ手段を制御し、第1及び第2のスイッチ手段からの第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御して、アダプティブ制御後の合成無線信号を出力するので、従来技術に比較して、無線通信装置が使用される環境に関わらず、従来技術に比較して高品質の無線通信を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0017】
実施形態.
図1は、本発明の一実施形態に係る折り畳み型携帯電話機1の開状態における、背面から見た一部破断概略斜視図である。図2は、図1の折り畳み型携帯電話機1のアダプティブアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1において、無線通信装置である折り畳み型携帯電話機1は、互いに開閉可能に連結してなる筐体2及び筐体3を備えて構成される。ここで、筐体2の一端に一体的に形成されたヒンジ円筒部4a,4bは、筐体3の一端に一体的に形成されたヒンジ円筒部4c(以下、ヒンジ円筒部4a,4b,4cを併せてヒンジ部4という。)に挟持されて回動可能に軸支される。この構成により折り畳み型携帯電話機1は、開状態(図1参照。)と閉状態とを有する。ここで、実施形態において開状態とは、筐体2と筐体3が直線上に展開した状態であるが、本発明はこれに限らず、筐体2と筐体3とが例えば150度等の所定の角度をなして展開した状態であってもよい。また、実施形態において開状態とは、筐体2と筐体3とが互いに接して閉じた状態である。
【0019】
図1において、筐体2は、前面側に設けられる図示しない液晶ディスプレイと、給電点Q1−1及びQ1−2を有するアンテナ素子10aと、給電点Q2−1及びQ2−2を有するアンテナ素子10bと、給電ケーブル11−1,11−2,12−1,12−2とを備える。また、筐体3は、誘電体基板上に形成された無線通信回路6と、筐体3の広さと同程度の広さ及び平板の形状を有する接地導体5とを備える。さらに、図2において、無線通信回路6は、インピーダンス整合回路61a−1,61a−2,61b−1及び61b−2と、スイッチ21及び22と、無線受信回路62a及び62bと、レベル検出回路63a及び63bと、コントローラ60と、受信アダプティブ制御回路70と、出力端子80とを備えて構成される。ここで、アンテナ素子10a及び10bと、給電ケーブル11−1,11−2,12−1,12−2と、無線通信回路6とは、第1の実施形態に係るアダプティブアンテナ装置を構成する。
【0020】
ここで、図1及び図2において、本実施形態に係るアダプティブアンテナ装置は、互いに異なる位置に給電点Q1−1,Q1−2を有し第1の無線信号を受信するアンテナ素子10aと、互いに異なる位置に給電点Q2−1,Q2−2を有し第2の無線信号を受信するアンテナ素子10bと、アンテナ素子10aの給電点Q1−1,Q1−2の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第1の無線信号を出力するスイッチ21と、アンテナ素子10bの給電点Q2−1,Q2−2の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第2の無線信号を出力するスイッチ22と、第1の無線信号の復調信号のレベルが実質的に最大になるように上記第1のアンテナ素子の給電点を選択するようにスイッチ21を制御し、かつ、第2の無線信号に関の復調信号のレベルが実質的に最大になるように第2のアンテナ素子の給電点を選択するようにスイッチ22を制御し、スイッチ21及び22からの第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御して、アダプティブ制御後の合成無線信号を出力するコントローラ60とを備えたことを特徴とする。
【0021】
図1に示すように、筐体2において、アンテナ素子10a及び10bはそれぞれ、筐体2の長手方向の長さと同程度の長辺及び筐体2の長手方向に直交する方向の長さの半分程度の短辺を有する長方形の平板形状を有し、筐体2の背面側であってそれぞれ図1の左側及び右側に設けられる。アンテナ素子10aの長手方向の右上側縁端部に給電点Q1−1が設けられ、給電点Q1−1は、筐体2、ヒンジ部4及び筐体3に収容される給電ケーブル11−1を介してインピーダンス整合回路61a−1に接続される。また、アンテナ素子10aの長手方向の左下側縁端部に給電点Q1−2が設けられ、給電点Q1−2は、筐体2、ヒンジ部4及び筐体3に収容される給電ケーブル11−2を介してインピーダンス整合回路61a−2に接続される。一方、アンテナ素子10bの長手方向の左上側縁端部に給電点Q2−1が設けられ、給電点Q2−1は、筐体2、ヒンジ部4及び筐体3に収容される給電ケーブル12−1を介してインピーダンス整合回路61b−1に接続される。また、アンテナ素子10bの長手方向の右下側縁端部に給電点Q2−2が設けられ、給電点Q2−2は、筐体2、ヒンジ部4及び筐体3に収容される給電ケーブル12−2を介してインピーダンス整合回路61b−2に接続される。ここで、インピーダンス整合回路61a−1は、アンテナ素子10a及び給電ケーブル11−1のインピーダンスと無線受信回路62aのインピーダンス(50Ωである。)とを整合させるために用いられ、インピーダンス整合回路61a−2は、アンテナ素子10a及び給電ケーブル11−2のインピーダンスと無線受信回路62aのインピーダンスとを整合させるために用いられる。また、インピーダンス整合回路61b−1は、アンテナ素子10b及び給電ケーブル12−1のインピーダンスと無線受信回路62bのインピーダンス(50Ωである。)とを整合させるために用いられ、インピーダンス整合回路61b−2は、アンテナ素子10b及び給電ケーブル12−2のインピーダンスと無線受信回路62bのインピーダンスとを整合させるために用いられる。
【0022】
図2のアダプティブアンテナ装置において、アンテナ素子10aで受信された無線信号は、給電点Q1−1を用いるときは、給電点Q1−1から給電ケーブル11−1、インピーダンス整合回路61a−1及びスイッチ21の接点a側を介して無線受信回路62aに入力され、一方、給電点Q1−2を用いるときは、給電点Q1−2から給電ケーブル11−2、インピーダンス整合回路61a−2及びスイッチ21の接点b側を介して無線受信回路62aに入力される。また、アンテナ素子10bで受信された無線信号は、給電点Q2−1を用いるときは、給電点2−1から給電ケーブル12−1、インピーダンス整合回路61b−1及びスイッチ22の接点a側を介して無線受信回路62bに入力され、一方、給電点Q2−2を用いるときは、給電点2−2から給電ケーブル12−2、インピーダンス整合回路61b−2及びスイッチ22の接点b側を介して無線受信回路62bに入力される。
【0023】
無線受信回路62a及び62bはそれぞれ、無線信号の周波数を分離する高周波フィルタ、無線信号を増幅するための高周波増幅器及び無線信号を所定の中間周波数の中間周波信号に低域周波数変換するための混合器等の高周波回路、中間周波フィルタ及び中間周波アンプ等の中間周波数回路、及び中間周波信号をベースバンド信号に復調する復調回路を含む。無線受信回路62aは、入力される無線信号に対して所定の高周波フィルタ処理及び高周波増幅処理を行い、処理後の無線信号を所定の中間周波数の中間周波信号に低域周波数変換した後、中間周波信号に対して中間周波フィルタ処理を行い、フィルタ後の中間周波信号を、アンテナ素子10aで受信された無線信号の復調信号であるベースバンド信号に復調してレベル検出回路63a及び受信アダプティブ制御回路70に出力する。一方、無線受信回路62bは、入力される無線信号に対して所定の高周波フィルタ処理及び高周波増幅処理を行い、処理後の無線信号を所定の中間周波数の中間周波信号に低域周波数変換した後、中間周波信号に対して中間周波フィルタ処理を行い、フィルタ後の中間周波信号を、アンテナ素子10bで受信された無線信号の復調信号であるベースバンド信号に復調してレベル検出回路63b及び受信アダプティブ制御回路70に出力する。
【0024】
レベル検出回路63a及び63bはそれぞれ、入力されるベースバンド信号の電力レベルを検出し、検出した電力レベルを示す検出信号を発生して、コントローラ60に出力する。
【0025】
受信アダプティブ制御回路70は、2個の可変利得増幅器71a及び71と、2個の移相器72a及び72bと、加算器である信号合成器73を備えて構成され、可変利得増幅器71a及び71の各可変振幅量及び移相器72a及び72bの各移相量はコントローラ60によって詳細後述するように制御される。無線受信回路62aからのベースバンド信号は、可変利得増幅器71a及び移相器72aを介して信号合成器73に出力され、無線受信回路62bからのベースバンド信号は、可変利得増幅器71b及び移相器72bを介して信号合成器73に出力される。信号合成器73は、入力される2個のベースバンド信号を加算することにより合成して、合成後のベースバンド信号をコントローラ60及び出力端子80に出力する。
【0026】
コントローラ60は、受信アダプティブ制御回路70から出力される合成後のベースバンド信号のレベルが実質的に最大になるように、受信アダプティブ制御回路70内の可変利得増幅器71a及び71の各可変振幅量及び移相器72a及び72bの各移相量を制御する。また、コントローラ60は、スイッチ21を接点a側に切り換えたときのレベル検出回路63aからの検出信号及びスイッチ21を接点b側に切り換えたときのレベル検出回路63aからの検出信号に基づいて、無線受信回路62aからのベースバンド信号の電力レベルが大きくなるように給電点Q1−1又はQ1−2を選択するように、スイッチ21を切り換える。さらに、コントローラ60は、スイッチ22を接点a側に切り換えたときのレベル検出回路63bからの検出信号及びスイッチ22を接点b側に切り換えたときのレベル検出回路63bからの検出信号に基づいて、無線受信回路62bからのベースバンド信号の電力レベルが大きくなるように給電点Q2−1又はQ2−2を選択するように、スイッチ22を切り換える。
【0027】
一般に、図1の折り畳み型携帯電話機1のような携帯型の無線端末装置は、人間が手で保持した状態で使用される。従って、折り畳み型携帯電話機1が人間の手によってヒンジ部4で保持される場合、アンテナ素子10a及び10bの一部が覆われてしまい、ヒンジ部4が手で覆われていない場合に比較して、アンテナ素子10a及び10bのアンテナの放射効率(VSWRに反比例する値)が大きく低下し、通信品質が低下し、最悪の場合は無線通信が不可能になる。一般に、アンテナ素子において電界分布は給電点に集中するので、特に、給電点が覆われたときにアンテナ素子の放射効率は低下する。図2のアダプティブアンテナ装置によれば、アンテナ素子10aの互いに異なる位置に2個の給電点Q1−1及びQ1−2を設け、アンテナ素子10bの互いに異なる位置に給電点Q2−1及びQ2−2を設け、各アンテナ素子で受信される無線信号をベースバンド信号にそれぞれ復調し、ベースバンド信号の電力レベルが大きくなる方の給電点を選択するようにスイッチ21及び22を制御するので、2つのアンテナ素子10a及び10bの放射効率を高い状態に保ち、通信品質を高い状態に保つことができる。また、複数の異なるアンテナ素子を設ける必要がないので、従来技術に比較して無線端末装置を小型化できる。
【0028】
以上の実施形態において、コントローラ60は、受信アダプティブ制御回路70から出力される合成後のベースバンド信号のレベルが実質的に最大になるように、受信アダプティブ制御回路70内の可変利得増幅器71a及び71の各可変振幅量及び移相器72a及び72bの各移相量を制御したが、本発明はこれに限られない。各アンテナ素子10a及び10bにより受信された無線信号には、通常、所望波信号とともに熱雑音成分が受信される。さらに、隣接基地局からの同一周波数の同一チャンネル干渉波や、所望波であるが大きな経路を経由して到来したために時間的な遅れを生じる遅延波も受信される場合がある。遅延波は、テレビジョン放送やラジオ放送等のアナログ無線通信システムにおいて、例えばテレビジョン受像機で表示されるゴーストとして画面表示の品質を劣化させる。一方、ディジタル無線通信システムでは、熱雑音、同一チャンネル干渉波や遅延波は、いずれもビット誤りとして影響を及ぼし、直接的に信号品質を劣化させる。ここで、所望波電力をSとし、熱雑音電力をNとし、同一チャンネル干渉波と遅延波を含む干渉波電力をIとすると、コントローラ60は、信号品質を改善させるために、所望波対雑音及び干渉波電力比S/(N+I)が実質的に最大になるようにアダプティブ制御してもよい。具体的には、コントローラ60は、所望波対雑音及び干渉波電力比S/(N+I)を実質的に最大にするために、受信アダプティブ制御回路70Aから出力される信号のビットエラーレート(Bit Error Rate;以下、BERという。)又はパケットエラーレート(Packet Error Rate;以下、PERという。)が実質的に最小になるように、受信アダプティブ制御回路70内の可変利得増幅器71a及び71の各可変振幅量及び移相器72a及び72bの各移相量を制御してもよい。もしくは、コントローラ60は、所望波のレプリカ信号と受信アダプティブ制御回路70Aから出力される信号との差が実質的に最小となるように、MMSE(Minimum Mean Square Error;実質的に最小自乗誤差)法によって可変利得増幅器71a及び71の各可変振幅量及び移相器72a及び72bの各移相量を制御してもよい。また、コントローラ60は、受信アダプティブ制御回路70内の可変利得増幅器71a及び71の各可変振幅量及び移相器72a及び72bの各移相量を制御したが、本発明はこれに限られず、当該各移相量及び当該可変振幅量の一方のみを制御してもよい。
【0029】
また、コントローラ60は、給電点Q1−1乃至Q2−2のいずれを選択しても、レベル検出回路63a及び63bにおいて、所定のしきい値以上の電力レベルが検出されたと判断したとき、給電点Q1−1及びQ2−2又は給電点Q1−2及びQ2−1を選択するように、スイッチ21及び22を切り換えてもよい。このように切り換えることにより、アンテナ素子10aとアンテナ素子10bとの間隔は、給電点Q1−1及びQ2−1又は給電点Q1−2及びQ2−2を選択する場合に比較して広くなり、アンテナ素子10a及び10bで受信される無線信号間の相関は小さくなるので、受信アダプティブ制御回路70からの出力信号から取り出したデータのエラー率を小さくできる。従って、従来技術に比較して、折り畳み型携帯電話機1を小型化しかつ信号品質を向上できる。なお、給電点Q1−1及びQ2−2の組み合わせ又は給電点Q1−2及びQ2−1の組み合わせのうちいずれの組み合わせを選択するかは、無線信号の電波環境や折り畳み型携帯電話機1と手の位置関係などに基づいて決定すればよい。
【0030】
さらに、コントローラ60は、受信アダプティブ制御回路70からの信号に基づいてBER、PER又はスループットを算出し、算出されたBER又はPERが所定のしきい値以上又はスループットが所定のしきい値以下であると判断したときに、スイッチ21及び22を切り換えてもよい。
【0031】
またさらに、上記の実施形態において、受信アダプティブ制御回路70はインピーダンス整合回路61a−1,61a−2,61b−1及び61b−2を備えたが、本発明はこれに限らず、アンテナ素子10aのインピーダンスと無線受信回路62aのインピーダンスとが整合し、アンテナ素子10bのインピーダンスと無線受信回路62bのインピーダンスとが整合しているときは、これらのインピーダンス整合回路を備えなくてもよい。この場合、スイッチ21及び22を筐体2に設けてもよい。
【0032】
また、上記の実施形態において、コントローラ60は、各アンテナ素子で受信される無線信号をベースバンド信号にそれぞれ復調した後のベースバンド信号の電力レベルが大きくなるように各アンテナ素子で給電点を選択するように、スイッチ21及び22を制御したが、本発明はこれに限られず、各アンテナ素子で受信される無線信号の中間周波信号のレベルに基づいてRSSI(Received Signal Strength Indicator;受信信号強度表示。以下、RSSIという。)値を算出し、RSSI値が大きくなるように各アンテナ素子で給電点を選択するように、スイッチ21及び22を制御してもよい。
【0033】
第1の変形例.
図3は、本発明の第1の変形例に係るアダプティブアンテナ装置の構成を示すブロック図である。図3のアダプティブアンテナ装置は、図2のアダプティブアンテナ装置に比較して、無線通信回路6に代えて無線通信回路6Aを備える。無線通信回路6Aは、無線通信回路6に比較して、レベル検出回路63a,63b及びコントローラ60に代えて、信号品質測定器64a,64b及びコントローラ60Aを備える。ここで、図3のアダプティブアンテナ装置は、アンテナ素子10aで受信される無線信号を復調したベースバンド信号の信号品質が高くなるように給電点Q1−1又はQ1−2を選択するように、スイッチ21を切り換えかつ、アンテナ素子10bで受信される無線信号を復調したベースバンド信号の信号品質が高くなるように給電点Q2−1又はQ2−2を選択するようにスイッチ22を切り換えたことを特徴とする。
【0034】
図3において、信号品質測定器64a及び64bはそれぞれ、入力されるベースバンド信号の信号品質であるBERを検出し、検出したBERを示す検出信号を発生して、コントローラ60Aに出力する。コントローラ60Aは、スイッチ21を接点a側に切り換えたときの信号品質測定器64aからの検出信号及びスイッチ21を接点b側に切り換えたときの信号品質測定器64aからの検出信号に基づいて、無線受信回路62aからのベースバンド信号のBERが大きくなるように給電点Q1−1又はQ1−2を選択するように、スイッチ21を切り換える。さらに、コントローラ60Aは、スイッチ22を接点a側に切り換えたときの信号品質測定器64bからの検出信号及びスイッチ22を接点b側に切り換えたときの信号品質測定器64bからの検出信号に基づいて、無線受信回路62bからのベースバンド信号のBERが大きくなるように給電点Q2−1又はQ2−2を選択するように、スイッチ22を切り換える。
【0035】
第1の変形例に係るアダプティブアンテナ装置は、実施形態に係るアダプティブアンテナ装置と同様の効果を奏する。
【0036】
なお、信号品質測定器64a及び64bはそれぞれ、入力されるベースバンド信号のPERを検出し、検出したPERを示す検出信号を発生して、コントローラ60Aに出力してもよい。
【0037】
第2の変形例.
図4は、本発明の第2の変形例に係る折り畳み型携帯電話機1Aの開状態における、背面から見た一部破断概略斜視図である。図4の折り畳み型携帯電話機1Aは、図1の折り畳み型携帯電話機1に比較して、アンテナ素子10aの給電点Q1−1に代えてアンテナ素子10aの右下縁端部に給電点Q1−3を設け、アンテナ素子10bの給電点Q2−1に代えてアンテナ素子10bの左下縁端部に給電点Q2−3を設けたことを特徴とする。
【0038】
一般に、折り畳み型携帯電話機は細長い形状を有する。従って、図1に示すように、アンテナ素子10a及び10bの長手方向のできるだけ離れた位置に給電点Q1−1,Q1−2,Q2−1,Q2−2を設けた方が、図4に示すように、アンテナ素子10a及び10bのそれぞれの一端の異なる位置に給電点Q1−2,Q1−3,Q2−2及びQ2−3を設ける場合に比較して、各給電点が手で覆われて通信品質が低下する可能性が小さい。しかしながら、図4の折り畳み型携帯電話機1Aによれば、図1の折り畳み型携帯電話機1に比較して、給電ケーブル11−1及び12−1の長さを短くできるので、給電ケーブル11−1及び12−1での伝搬損失を低減しかつ、筐体2内の構成を簡略化できる。
【0039】
上記実施形態及び各変形例において、アンテナ素子の数は2つであったが、本発明はこれに限られず、3つ以上であってもよい。また、上記実施形態及び各変形例において、各アンテナ素子に設けられる給電点の数は2個であったが、本発明はこれに限られず、3個以上の給電点を設けてもよい。この場合、各アンテナ素子において、無線信号のレベルと、無線信号の復調信号のレベルと、無線信号の復調信号の信号品質の内の1つが実質的に最大になるように給電点を選択する。
【0040】
上記実施形態及び各変形例において、アンテナ素子10a及び10bは筐体2に設けられた平面アンテナであったが、本発明はこれに限らず、筐体2に設けられる板状導体と筐体3内の接地導体とを備えて構成されるダイポールアンテナであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上詳述したように、本発明に係るアダプティブアンテナ装置又は無線通信装置によれば、互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第1の無線信号を受信する第1のアンテナ素子と、互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第2の無線信号を受信する第2のアンテナ素子と、第1のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第1の無線信号を出力する第1のスイッチ手段と、第2のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第2の無線信号を出力する第2のスイッチ手段と、制御手段とを備え、当該制御手段は、第1の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように第1のアンテナ素子の給電点を選択するように第1のスイッチ手段を制御し、かつ、第2の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように第2のアンテナ素子の給電点を選択するように第2のスイッチ手段を制御し、第1及び第2のスイッチ手段からの第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御して、アダプティブ制御後の合成無線信号を出力するので、従来技術に比較して、無線通信装置が使用される環境に関わらず、従来技術に比較して高品質の無線通信を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る折り畳み型携帯電話機1の開状態における、背面から見た一部破断概略斜視図である。
【図2】図1の折り畳み型携帯電話機1のアダプティブアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の変形例に係るアダプティブアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の変形例に係る折り畳み型携帯電話機1Aの開状態における、背面から見た一部破断概略斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1,1A…折り畳み型携帯電話機、
2,3…筐体、
4a,4b,4c…ヒンジ円筒部、
4…ヒンジ部、
5…接地導体、
6,6A…無線通信回路、
10a,10b…アンテナ素子、
11−1,11−2,12−1,12−2…給電ケーブル、
21,22…スイッチ、
60,60A…コントローラ、
61a−1,61a−2,61b−1,61b−2…インピーダンス整合回路、
62a,62b…無線受信回路、
63a,63b…レベル検出回路、
64a,64b…信号品質測定器、
70…受信アダプティブ制御回路、
71a,71b…可変利得増幅器、
72a,72b…移相器、
73…信号合成器、
Q1−1,Q1−2,Q1−3,Q2−1,Q2−2,Q2−3…給電点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第1の無線信号を受信する第1のアンテナ素子と、
互いに異なる位置に複数の給電点を有し、第2の無線信号を受信する第2のアンテナ素子と、
上記第1のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第1の無線信号を出力する第1のスイッチ手段と、
上記第2のアンテナ素子の複数の給電点の中から1つの給電点を選択し、選択した給電点からの第2の無線信号を出力する第2のスイッチ手段と、
上記第1の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように上記第1のアンテナ素子の給電点を選択するように上記第1のスイッチ手段を制御し、かつ、上記第2の無線信号に関する評価値が実質的に最大になるように上記第2のアンテナ素子の給電点を選択するように上記第2のスイッチ手段を制御し、上記第1及び第2のスイッチ手段からの第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御して、上記アダプティブ制御後の合成無線信号を出力する制御手段とを備えたことを特徴とするアダプティブアンテナ装置。
【請求項2】
上記第1のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の上側縁端部及び下側縁端部にそれぞれ1個の給電点を有し、
上記第2のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の上側縁端部及び下側縁端部にそれぞれ1個の給電点を有することを特徴とする請求項1記載のアダプティブアンテナ装置。
【請求項3】
上記第1のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の一方の縁端部の互いに異なる複数の給電点を有し、
上記第2のアンテナ素子は矩形形状を有し、当該矩形形状の長手方向の一方の縁端部の互いに異なる複数の給電点を有することを特徴とする請求項1記載のアダプティブアンテナ装置。
【請求項4】
上記アダプティブアンテナ装置は、互いに開閉可能に連結された第1及び第2の筐体に収容され、
上記第1と第2のアンテナ素子はともに上記第1の筐体に収容されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のアダプティブアンテナ装置。
【請求項5】
上記評価値は、上記無線信号のレベルと、上記無線信号の復調信号のレベルと、上記無線信号の復調信号の信号品質のうちの1つであることを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載のアダプティブアンテナ装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記合成無線信号の評価値が実質的に最大となるように、上記第1及び第2の無線信号に関する各振幅量と各移相量の少なくとも一方を制御することにより上記第1及び第2の無線信号に対してアダプティブ制御することを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載のアダプティブアンテナ装置。
【請求項7】
上記合成無線信号の評価値は、上記合成無線信号のレベルと、上記合成無線信号の所望波対雑音及び干渉波電力比とのうちの1つであることを特徴とする請求項6記載のアダプティブアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載のアダプティブアンテナ装置と、
上記各無線信号を復調信号に復調して出力する復調手段とを備えたことを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−60907(P2008−60907A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235391(P2006−235391)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】