説明

ウエーハの加工方法

【課題】切削が終了したウエーハの切削状態の検査を行っても生産性が低下することのないウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】第1,第2のチャックテーブルによりチャックテーブルが2個あることを利用して、切削が終了したウエーハの切削溝の幅の状態や欠けの状態等の切削状態を検査する検査工程を他のチャックテーブルに保持されたウエーハが切削されている切削工程の最中に実行させることで、スループットを犠牲にすることなくウエーハの切削状態を検査でき、切削加工されるウエーハの生産性を向上させることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC,LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて形成されたウエーハは、ダイシング装置等の切削装置によって個々のデバイスに分割され、携帯電話、パソコン等の電子機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードが装着された切削手段と、チャックテーブルをX軸方向に加工送りする加工送り手段と、切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送り手段と、複数のウエーハを収容したカセットが載置されるカセットテーブルと、カセットからウエーハを搬出する搬出手段と、搬出されたウエーハを仮置きする仮置きテーブルと、仮置きテーブルに仮置きされたウエーハをチャックテーブルに搬送する搬送手段と、チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像し切削すべき領域を検出するアライメント手段と、を備えて構成されており、ウエーハを効率よく個々のデバイスに分割することができる。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−53804号公報
【特許文献2】特許第3765265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような切削装置では、ウエーハを切削した後、切削溝の幅の状態、欠けの状態等の切削状態を確認するためにチャックテーブルに保持されたウエーハをアライメント手段の直下に位置付けて検査を行うようにしている。この結果、切削済みのウエーハの検査が終了するまでの間、チャックテーブルに新たなウエーハを保持させることができず、スループットが低下し、生産性が悪いという問題がある。
【0006】
ちなみに、特許文献1,2等によれば、2つのチャックテーブルを備え、一方のチャックテーブル上でウエーハに対する切削動作を実行しながら、他方のチャックテーブル上に保持された切削前のウエーハに対してアライメント作業を並行して行えるようにした切削装置が提案されているが、切削が終了したウエーハに対する検査処理の仕方については何ら言及されておらず、上記不具合を解決するものではない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、切削が終了したウエーハの切削状態の検査を行っても生産性が低下することのないウエーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るウエーハの加工方法は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードが装着された切削手段と、前記チャックテーブルをX軸方向に加工送りする加工送り手段と、前記切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送り手段と、複数のウエーハを収容したカセットが載置されるカセットテーブルと、前記カセットからウエーハを搬出する搬出手段と、搬出されたウエーハを仮置きする仮置きテーブルと、該仮置きテーブルに仮置きされたウエーハを前記チャックテーブルに搬送する搬送手段と、前記チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像し切削すべき領域を検出するアライメント手段と、を備え、前記チャックテーブルは、互いに隣接して配設された第1のチャックテーブルと第2のチャックテーブルとからなり、前記加工送り手段は、前記第1のチャックテーブルを加工送りする第1の加工送り手段と前記第2のチャックテーブルを加工送りする第2の加工送り手段とからなる切削装置を用いるウエーハの加工方法であって、前記第1のチャックテーブルおよび前記第2のチャックテーブルに前記カセットから前記仮置きテーブルに搬出されたウエーハを前記搬送手段によって搬送して保持するウエーハ保持工程と、前記第1のチャックテーブルおよび前記第2のチャックテーブルに保持されたウエーハを前記アライメント手段の直下に位置付けて切削すべき領域を検出するアライメント工程と、前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに保持され前記アライメント工程が実行されたウエーハに対して前記切削手段の前記切削ブレードを位置付けてウエーハを切削する第1の切削工程と、該第1の切削工程が終了した後、前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに保持され前記アライメント工程が実行された未切削のウエーハに対して前記切削手段の前記切削ブレードを位置付けてウエーハを切削する第2の切削工程と、前記第1の切削工程が終了した後、前記第2の切削工程の最中に、前記第1の切削工程で切削済みで前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに保持されたウエーハを前記アライメント手段の直下に位置付けて切削状態を検査する検査工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るウエーハの加工方法は、上記発明において、前記検査工程が終了した前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに対する次の前記ウエーハ保持工程および前記アライメント工程は、前記第2の切削工程の最中に実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るウエーハの加工方法によれば、チャックテーブルが2個あることを利用して、切削が終了したウエーハの切削溝の幅の状態や欠けの状態等の切削状態を検査する検査工程を他のチャックテーブルに保持されたウエーハが切削されている最中に実行するので、スループットを犠牲にすることなくウエーハの切削状態を検査でき、よって、切削加工されるウエーハの生産性を向上させることができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係るウエーハの加工方法によれば、検査工程だけでなく、検査工程終了後の次のウエーハ保持工程およびアライメント工程も、他のチャックテーブルに保持されたウエーハが切削されている最中に実行するので、チャックテーブルが2個あることを最大限利用してウエーハの生産性を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態であるウエーハの加工方法について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態のウエーハの加工方法を実施するために用いる切削装置の一部を切り欠いて示す斜視図であり、図2は、図1に示す切削装置の要部を示す斜視図であり、図3は、切削手段周りの構成例を示す斜視図であり、図4は、切削手段周りの構成例を示す側面図である。
【0014】
本実施の形態の切削装置1は、ウエーハWを分割予定ラインに沿って切削するものであり、概略構成として、図1に示すように、カセットテーブル2、搬出手段3、仮置きテーブル4、搬送手段5とともに、モニタ10、チャックテーブル20、切削手段30、加工送り手段40、割り出し送り手段50、切り込み送り手段60、アライメント手段70およびアライメント割り出し送り手段80を備える。
【0015】
カセットテーブル2は、保持テープTを介して円環状のフレームFと一体となった状態の複数のウエーハWを収納したカセット6が載置されてZ軸方向に昇降自在なテーブルであり、装置筐体7の一端に配設されている。ここで、ウエーハWは、表面に格子状に形成された複数の分割予定ライン(ストリート)によって複数の矩形状の領域が形成され、これら複数の矩形状の領域にそれぞれデバイスが形成されたものである。搬出手段3は、カセット6に収容されたウエーハWを搬送手段5が搬送可能な仮置きテーブル4に搬出し、仮置きテーブル4は搬出手段3によって搬出されたウエーハWを仮置きする。搬送手段5は、仮置きテーブル4に搬出されたウエーハWのフレームF部分を把持してチャックテーブル20上に搬送するためのものである。ここで、本実施の形態では、後述するようにチャックテーブル20がY軸方向に互いに隣接して配設された2つのチャックテーブルからなり、搬送手段5の門型支柱構造で形成された搬送レール5a部分は仮置きテーブル4部分から2つのチャックテーブル部分に亘って移動し得る長さに設定されている。また、モニタ10は、ウエーハWの切削状態の検査結果、その他の各種情報をオペレータに対して表示するためのものである。
【0016】
また、チャックテーブル20はウエーハWを保持し、切削手段30は、チャックテーブル20に保持されたウエーハWを切削する切削ブレード33を備え、加工送り手段40は、チャックテーブル20をX軸方向に加工送りし、割り出し送り手段50は、切削手段30をY軸方向に割り出し送りし、切り込み送り手段60は、切削手段30をZ軸方向に切り込み送りし、アライメント手段70は、チャックテーブル20に保持されたウエーハWを撮像し切削すべき領域を検出し、アライメント割り出し送り手段80は、アライメント手段70をY軸方向に割り出し送りする。
【0017】
ここで、本実施の形態では、チャックテーブル20は、図2に示すように、Y軸方向に隣接するように配設された第1のチャックテーブル20aと第2のチャックテーブル20bとからなる。これに対応して、図2〜図4等に示すように、切削手段30、加工送り手段40、割り出し送り手段50、切り込み送り手段60、アライメント手段70およびアライメント割り出し送り手段80も、それぞれ第1,第2の切削手段30a,30b、第1,第2の加工送り手段40a,40b、第1,第2の割り出し送り手段50a,50b、第1,第2の切り込み送り手段60a,60b、第1,第2のアライメント手段70a,70bおよび第1,第2のアライメント割り出し送り手段80a,80bからなり、これら部材は装置筐体7内に設けられた基台8上に配設されている。以下、これらの構成例を図2〜図4を参照して説明する。
【0018】
第1,第2のチャックテーブル20a,20bは、多孔質セラミックス等の多孔性材料から構成されたもので、図示しない吸引手段に接続されている。したがって、第1,第2のチャックテーブル20a,20bを吸引手段によって吸引源に選択的に連通することにより、載置面上に載置されたウエーハWを吸引保持する。これら第1,第2のチャックテーブル20a,20bは、それぞれ第1,第2の円筒部材21a,21b上に回転可能に配設されて、第1,第2の円筒部材21a,21b内に設けられた図示しないパルスモータ等の駆動源に連結され、適宜回動されるように構成されている。なお、円筒部材21a,21bの上端部には、矩形状の第1,第2のカバー部材22a,22bが配設され、第1,第2のカバー部材22a,22bの上面には、後述する第1,第2の切削ブレードの位置を検出するための第1,第2のブレード検出手段23a,23bが配設されている。また、第1,第2のカバー部材22a,22bのX軸方向両端には、伸縮自在な図示しない蛇腹部材が連結され、第1,第2のチャックテーブル20a,20bが加工送りされて位置変位しても、第1,第2のカバー部材22a,22bとともに第1,第2の加工送り手段40a,40bの上方を常時覆う構造とされている。
【0019】
第1,第2の加工送り手段40a,40bは、第1,第2の円筒部材21a,21bが搭載された第1,第2の支持基台41a,41bをX軸方向に移動させることで、第1,第2のチャックテーブル20a,20bをそれぞれ第1,第2の切削手段30a,30bに対してX軸方向に加工送り(切削送り)するためのものである。これら第1,第2の加工送り手段40a,40bは、X軸方向に配設されたボールねじ42a,42bと、ボールねじ42a,42bの一端に連結されたパルスモータ43a,43bと、ボールねじ42a,42bと平行に基台8上に配設された一対のガイドレール44a,44bとから構成され、ボールねじ42a,42bには、支持基台41a,41bの下部に設けられた図示しないナットが螺合している。ボールねじ42a,42bは正逆転自在なパルスモータ43a,43bに駆動されて回転し、それに伴って支持基台41a,41bがガイドレール44a,44bにガイドされてX軸方向に往復移動する構成となっている。
【0020】
また、本実施の形態の切削装置1は、ガイドレール44a,44bを跨いでX軸方向に直交するように基台8上に配設されて第1,第2のチャックテーブル20a,20bのX軸方向の移動を妨げないように門型形状に形成された支持フレーム9を備え、この支持フレーム9のY軸方向に沿って配設された支持部9aに、第1,第2の切削手段30a,30b、第1,第2の割り出し送り手段50a,50b、第1,第2の切り込み送り手段60a,60b、第1,第2のアライメント手段70a,70bおよび第1,第2のアライメント割り出し送り手段80a,80bが搭載されている。なお、支持フレーム9の両側の支柱9b,9cの一部は幅広に形成され、幅広部分には、第1,第2の切削手段30a,30bのY軸方向の移動を許容する開口9d,9eが形成されている。
【0021】
第1,第2のアライメント手段70a,70bは、支持フレーム9の支持部9aのX軸方向の片面においてそれぞれ第1,第2のチャックテーブル20a,20bに対応させて配設されたもので、第1,第2の移動ブロック71a,71bと、第1,第2の移動ブロック71a,71bに装着された第1,第2の撮像手段72a,72bとからなる。第1,第2の撮像手段72a,72bは、それぞれCCD等の撮像素子を搭載した電子顕微鏡構造のものであり、第1,第2のチャックテーブル20a,20b上に保持されたウエーハWを上方から撮像可能であり、撮像した画像信号を図示しない制御手段に出力する。これら第1,第2のアライメント手段70a,70bは、アライメント用、カーフチェック用および検査用に共用される。アライメント用の場合であれば、第1,第2の撮像手段72a,72bによって取得したウエーハWの画像情報を基に切削すべき領域部分を検出し、第1,第2の切削手段30a,30bによる切削加工動作の位置付けに供する。カーフチェック用の場合であれば、ウエーハWの切削された切削溝(カーフ)を第1,第2の撮像手段72a,72bの撮像位置に位置付けることで該切削溝を撮像して画像情報を生成し、画像処理による切削溝データ(切削溝の幅の状態、欠けの状態等)の生成に供する。検査用の場合であれば、切削が終了したウエーハWを第1,第2のアライメント手段70a,70bの直下に位置付けて第1,第2の撮像手段72a,72bで撮像して画像情報を生成し、切削された切削溝の切削状態の適否の検査に供する。
【0022】
第1,第2のアライメント割り出し送り手段80a,80bは、第1,第2の撮像手段72a,72bが搭載された第1,第2の移動ブロック71a,71bをY軸方向に移動させることで、第1,第2のアライメント手段70a,70bをそれぞれ第1,第2のチャックテーブル20a,20b上のウエーハWに対してY軸方向に割り出し送りするためのものである。これら第1,第2のアライメント割り出し送り手段80a,80bは、支持部9aの片面でY軸方向に配設されたボールねじ81a,81bと、ボールねじ81a,81bの一端に連結されたパルスモータ82a,82bと、ボールねじ81a,81bと平行に支持部9aの片面に配設された一対の共通なガイドレール83とから構成され、ボールねじ81a,81bには、移動ブロック71a,71b内に設けられた図示しないナットが螺合している。ボールねじ81a,81bは正逆転自在なパルスモータ82a,82bに駆動されて回転し、それに伴って移動ブロック71a,71bがガイドレール83にガイドされてY軸方向に往復移動する構成となっている。
【0023】
第1,第2の切削手段30a,30bは、支持フレーム9の支持部9aの下部に配設されたもので、図3および図4に示すように、スピンドルハウジング31a,31bと、スピンドルハウジング31a,31bに回転可能に支持された回転スピンドル32a,32bと、回転スピンドル32a,32bの一端に交換自在に装着された第1,第2の切削ブレード33a,33bと、第1,第2の切削ブレード33a,33bに切削水を供給する切削水供給ノズル34a,34bと、第1,第2の切削ブレード33a,33bを覆うブレードカバー35a,35bおよび回転スピンドル32a,32bを回転駆動する図示しないサーボモータを備えている。ここで、回転スピンドル32a,32bの軸線方向はY軸方向で示す割り出し方向で一致するように配設され、同一のウエーハWに対する切削を同時に並行して行うデュアルカットのために同一構造からなる第1,第2の切削ブレード33a,33bがY軸方向において対峙するように設定されている。
【0024】
第1,第2の切り込み送り手段60a,60bは、第1,第2の切削手段30a,30bを搭載した第1,第2の切り込み移動基台61a,61bをZ軸方向に移動させることで、第1,第2の切削ブレード33a,33bをチャックテーブル20aまたは20b上のウエーハWに対してZ軸方向に切り込み送りするためのものである。ここで、第1,第2の切り込み移動基台61a,61bは、Y軸方向に見て略L字形状に形成されて第1,第2の切削ブレード33a,33bを内側に位置させてスピンドルハウジング31a,31bが真下に装着されているとともに支持部9aのX軸方向の他面に配設されている。これら第1,第2の切り込み送り手段60a,60bは、Z軸方向に配設されたボールねじ62a,62bと、ボールねじ62a,62bの一端に連結されたパルスモータ63a,63bと、ボールねじ62a,62bと平行に第1,第2の割り出し移動基台51a,51b上に配設された一対のガイドレール64a,64bとから構成され、ボールねじ62a,62bには、切り込み移動基台61a,61b内に設けられた図示しないナットが螺合している。ボールねじ62a,62bは正逆転自在なパルスモータ63a,63bに駆動されて回転し、それに伴って切り込み移動基台61a,61bがガイドレール64a,64bにガイドされてZ軸方向に往復移動する構成となっている。
【0025】
第1,第2の割り出し送り手段50a,50bは、Z軸方向に移動自在な第1,第2の切り込み移動基台61a,61bを備える第1,第2の割り出し送り移動基台51a,51bをY軸方向に移動させることで、第1,第2の切削ブレード33a,33bをチャックテーブル20aまたは20b上のウエーハWに対してY軸方向に割り出し送りするためのものである。これら第1,第2の割り出し送り手段50a,50bは、Y軸方向に配設されたボールねじ52a,52bと、ボールねじ52a,52bの一端に連結されたパルスモータ53a,53bと、ボールねじ52a,52bと平行に支持部9aのX軸方向多面側に配設された一対の共通なガイドレール54とから構成され、ボールねじ52a,52bには、割り出し移動基台51a,51b内に設けられた図示しないナットが螺合している。ボールねじ52a,52bは正逆転自在なパルスモータ53a,53bに駆動されて回転し、それに伴って割り出し移動基台51a,51bがガイドレール54にガイドされてY軸方向に往復移動する構成となっている。ここで、これら第1,第2の割り出し送り手段50a,50bによる第1,第2の切削ブレード33a,33bの割り出し送り量は、チャックテーブル20a,20b間に跨って移動し得るように設定されている。
【0026】
つづいて、このような切削装置1を用いるウエーハWの加工方法について図5を参照して説明する。図5は、第1,第2のチャックテーブル20a,20bに対応して実行される工程を時系列的に示す説明図である。まず、カセット6から搬出手段3でウエーハWを仮置きテーブル4上に搬出し、仮置きテーブル4に搬出されたウエーハWを搬送手段5によって第1のチャックテーブル20a上に搬送する。このとき、第1のチャックテーブル20aは、図2に示すウエーハ着脱位置に位置付けられている。そして、図示しない吸引手段を作動させることで、ウエーハWを第1のチャックテーブル20a上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。
【0027】
引き続き、ウエーハWを吸引保持した第1のチャックテーブル20aを、第1の加工送り手段40aの作動により、第1のアライメント手段70aのアライメント領域に移動させる。そして、第1のアライメント割り出し送り手段80aを作動させて、第1のアライメント手段70aの第1の撮像手段72aの直下に第1のチャックテーブル20aに保持されたウエーハWが位置付けられるように移動させる。そこで、第1の撮像手段72aによって第1のチャックテーブル20a上のウエーハWの表面を撮像し、ウエーハWの表面に形成された分割予定ラインを検出し、第1,第2の切削ブレード33a,33bによる切削加工動作の位置付けに供する(アライメント工程)。
【0028】
このように第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWに対して第1のアライメント手段70aでアライメント工程を実行している間に、搬送手段5によってウエーハWが図2に示すウエーハ着脱位置に位置付けられている第2のチャックテーブル20b上に搬送される。そして、第2のチャックテーブル20b上に載置されたウエーハWを、図示しない吸引手段を作動させることで、第2のチャックテーブル20b上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。
【0029】
引き続き、ウエーハWを吸引保持した第2のチャックテーブル20aを、第2の加工送り手段40bの作動により、第2のアライメント手段70bのアライメント領域に移動させる。そして、第2のアライメント割り出し送り手段80bを作動させて、第2のアライメント手段70bの第2の撮像手段72bの直下に第2のチャックテーブル20bに保持されたウエーハWが位置付けられるように移動させ、第2の撮像手段72bによって第2のチャックテーブル20b上のウエーハWの表面を撮像し、ウエーハWの表面に形成された分割予定ラインを検出するアライメント工程を実行する。このアライメント工程も、上述のアライメント工程と同様に実行する。
【0030】
一方、前述の第1の撮像手段72aによるアライメント工程が終了したら、第1の切削手段30aの割り出し送り手段50aを作動して第1の切削手段30aの第1の切削ブレード33aを第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWに形成された中央の分割予定ラインと対応する位置に位置付け、さらに、第1の切り込み送り手段60aを作動して第1の切削ブレード33aを下降させて所定の切り込み送り位置に位置付ける。同様に、第2の切削手段30bの割り出し送り手段50bを作動して第2の切削手段30bの第2の切削ブレード33bを第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWに形成された端部の分割予定ラインと対応する位置に位置付け、さらに、第2の切り込み送り手段60bを作動して第2の切削ブレード33bを下降させて所定の切り込み送り位置に位置付ける。そして、第1,第2の切削手段30a,30bの第1,第2の切削ブレード33a,33bを回転させつつ第1の加工送り手段40aを作動させて第1のチャックテーブル20aをX軸方向に加工送りすることで、第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWの所定の分割予定ラインを高速回転する第1,第2の切削ブレード33a,33bによって切削する(切削工程)。すなわち、第1,第2の切削ブレード33a,33bは、図5に示すように、同一のウエーハWに対する切削を同時に並行してデュアルカット方式で実行する。
【0031】
第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWの所定の分割予定ラインに沿って切削が行われると、第1,第2の切削手段30a,30bの第1,第2の割り出し送り手段50a,50bを分割予定ラインの間隔分だけY軸方向に割り出し送りし、再び上述の切削工程を実行する。このようにして、割り出し送りを繰り返しながら切削工程をその都度実行することにより、ウエーハWは所定方向に形成された全ての分割予定ラインに沿って切削される。所定方向に形成された全ての分割予定ラインに沿ってウエーハWを切削したら、ウエーハWを保持した第1のチャックテーブル20aを90度回転させる。そして、第1のチャックテーブル20aに保持されたウエーハWに対して、上述の割り出し送りを伴う切削工程を繰り返し実行することで、ウエーハWは格子状に形成された全ての分割予定ラインに沿って切削され、個々のデバイスチップに分割される。なお、ウエーハWは、個々のデバイスチップに分割されても、環状のフレームFに装着された保持テープTに貼着されているので、ばらばらにはならずウエーハの形態が維持される。
【0032】
このような切削工程の最中には、切削中のウエーハWを保持した第1のチャックテーブル20aに対応する第1のアライメント手段70aの第1の撮像手段72aを用いて、予め設定された所定タイミングでウエーハWの切削状況を監視するためのカーフチェックを実行する。すなわち、第1,第2の切削ブレード33a,33bで切削された切削溝(カーフ)を第1の撮像手段72aで撮像し、撮像された画像情報を画像処理してカーフ位置の計測値を割り出し、予め設定されている基準位置(ヘアライン)とずれている場合には、自動で補正する(ヘアライン合わせ)を行う。このカーフチェック時にも、カーフ幅やチッピングの大きさも計測され、モニタ10の画面上には、必要に応じてカーフ位置と基準値のずれ量(オフセンタ量)、カーフ幅、チッピングサイズ等の情報が表示される。
【0033】
このような第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWに対する切削工程が終了したら、第2のチャックテーブル20b上に保持されてアライメント工程実行済みで未切削のウエーハWに対して、第1,第2の切削ブレード33a,33bによる切削工程を上述の場合と同様にデュアルカット方式で実行する。この切削工程の最中には、切削中のウエーハWを保持した第2のチャックテーブル20bに対応する第2のアライメント手段70bの第2の撮像手段72bを用いて、予め設定された所定タイミングでウエーハWの切削状況を監視するためのカーフチェックを上述のカーフチェックの場合と同様に実行する。
【0034】
一方、第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWに対する切削工程が終了した後、第2のチャックテーブル20b上に保持されたウエーハWに対する切削工程の最中には、図6に示すように、切削済みで第1のチャックテーブル20aに保持されたウエーハWを第1のアライメント手段70aの第1の撮像手段72aの直下に位置付けて切削状態を検査する(検査工程)。すなわち、切削中のカーフチェック動作と同様に、第1,第2の切削ブレード33a,33bで切削された切削溝を第1の撮像手段72aで撮像し、撮像された画像情報を画像処理して、切削溝の幅の状態、欠けの状態等の切削状態の検査を行う。モニタ10の画面上には、図6に例示するように、必要に応じて、例えば切削溝Kの切削状態が表示される。
【0035】
検査工程が終了すると、検査が終了したウエーハWを保持した第1のチャックテーブル20aは切削領域からウエーハ着脱位置に向けて第1の加工送り手段40aによって移動し、このウエーハ着脱位置でウエーハWに対する吸引保持が解除される。そして、検査済みで個々のデバイスチップに分割されたウエーハWは、搬送手段5によって次工程に搬送される。分割済みのウエーハWの次工程への搬送が終了すると、第1のチャックテーブル20a上に次のウエーハWを搬送して保持するウエーハ保持工程、並びに、保持されたウエーハWに対するアライメント工程を第2のチャックテーブル20bに保持されたウエーハWに対する切削工程の最中に順次実行する。検査工程、ウエーハ保持工程並びにアライメント工程は、研削工程に比して短時間で完了するので、他方のチャックテーブル20b上での切削工程の最中に一方のチャックテーブル20aに対するこれら検査工程、ウエーハ保持工程並びにアライメント工程の実行は十分に可能である。
【0036】
引き続き、第2のチャックテーブル20b上に保持されたウエーハWに対する切削工程が終了したら、第1のチャックテーブル20a上に保持されてアライメント工程実行済みで未切削のウエーハWに対して、第1,第2の切削ブレード33a,33bによる切削工程を上述の場合と同様にデュアルカット方式で実行する。この切削工程の最中には、切削中のウエーハWを保持した第1のチャックテーブル20aに対応する第1のアライメント手段70aの第1の撮像手段72aを用いて、予め設定された所定タイミングでウエーハWの切削状況を監視するためのカーフチェックを上述のカーフチェックの場合と同様に実行する。
【0037】
また、第2のチャックテーブル20b上に保持されたウエーハWに対する切削工程が終了した後、第1のチャックテーブル20a上に保持されたウエーハWに対する切削工程の最中には、切削済みで第2のチャックテーブル20bに保持されたウエーハWを第2のアライメント手段70bの第2の撮像手段72bの直下に位置付けて切削状態を検査する(検査工程)。すなわち、切削中のカーフチェック動作と同様に、第1,第2の切削ブレード33a,33bで切削された切削溝を第2の撮像手段72bで撮像し、撮像された画像情報を画像処理して、切削溝の幅の状態、欠けの状態等の切削状態の検査を行う。モニタ10の画面上には、必要に応じて、例えば切削溝の切削状態が表示される。
【0038】
検査工程が終了すると、検査が終了したウエーハWを保持した第2のチャックテーブル20bは切削領域からウエーハ着脱位置に向けて第2の加工送り手段40bによって移動し、このウエーハ着脱位置でウエーハWに対する吸引保持が解除される。そして、検査済みで個々のデバイスチップに分割されたウエーハWは、搬送手段5によって次工程に搬送される。分割済みのウエーハWの次工程への搬送が終了すると、第2のチャックテーブル20b上に次のウエーハWを搬送して保持するウエーハ保持工程、並びに、保持されたウエーハWに対するアライメント工程を第1のチャックテーブル20aに保持されたウエーハWに対する切削工程の最中に順次実行する。
【0039】
以下、第1,第2のチャックテーブル20a,20bを並行して利用することで、ウエーハ保持工程、アライメント工程、切削工程および検査工程を同様に繰り返す。ここで、このように第1,第2のチャックテーブル20a,20bを利用して相前後して交互に実行される2つの切削工程のうち、先行する切削工程が本発明の第1の切削工程を意味し、後続の切削工程が本発明の第2の切削工程を意味する。
【0040】
このような本実施の形態に係るウエーハの加工方法によれば、チャックテーブル20a,20bが2個あることを利用して、切削が終了したウエーハWの切削溝の幅の状態や欠けの状態等の切削状態を検査する検査工程を他のチャックテーブル20aまたは20bに保持されたウエーハWが切削されている最中に実行するので、スループットを犠牲にすることなくウエーハWの切削状態を検査でき、よって、切削加工されるウエーハWの生産性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態に係るウエーハの加工方法によれば、検査工程だけでなく、検査工程終了後の次のウエーハ保持工程およびアライメント工程も、他のチャックテーブル20aまたは20bに保持されたウエーハWが切削されている最中に実行するので、チャックテーブル20a,20bが2個あることを最大限利用してウエーハWの生産性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施の形態に係るウエーハの加工方法によれば、2つのチャックテーブル20a,20bに対応させてアライメント手段70a,70bも2つ用いるものとし、ウエーハWの切削工程の最中には対応するアライメント手段70aまたは70bを用いてウエーハWの切削状況を監視するためのカーフチェックを実行するので、他方のチャックテーブル20aまたは20bにおける検査工程やアライメント工程による制約を受けることなく、切削中のウエーハWに対するカーフチェックを適正に行って自動でヘアライン合わせ等の補正を行わせることができ、よって、切削性能が向上し、ウエーハの生産性を向上させることができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、同一構造の第1,第2の切削ブレード33a,33bを対峙させて備え、同一のウエーハWに対する切削を同時に並行して行うデュアルカット方式の切削手段30の例で説明したが、ウエーハWに対する切削深さの異なる第1,第2の切削ブレードを有する第1,第2の切削手段を備え、同一の分割予定ラインを第1,第2の切削ブレードで2段階に順次切削するステップカット方式の場合であっても適用可能であり、さらには、一つの切削ブレードのみを有する切削手段を用いてウエーハWを切削する場合であっても適用可能である。また、本実施の形態では、第1のチャックテーブル20a側から切削工程等を行うようにしたが、第2のチャックテーブル20b側から切削工程等を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態のウエーハの加工方法を実施するために用いる切削装置の一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1に示す切削装置の要部を示す斜視図である。
【図3】切削手段周りの構成例を示す斜視図である。
【図4】切削手段周りの構成例を示す側面図である。
【図5】第1,第2のチャックテーブルに対応して実行される工程を時系列的に示す説明図である。
【図6】切削工程中に検査工程が実行される様子を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
2 カセットテーブル
3 搬出手段
4 仮置きテーブル
5 搬送手段
6 カセット
20 チャックテーブル
20a 第1のチャックテーブル
20b 第2のチャックテーブル
30 切削手段
33 切削ブレード
40 加工送り手段
40a 第1の加工送り手段
40b 第2の加工送り手段
50 割り出し送り手段
70 アライメント手段
70a 第1のアライメント手段
70b 第2のアライメント手段
W ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードが装着された切削手段と、前記チャックテーブルをX軸方向に加工送りする加工送り手段と、前記切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送り手段と、複数のウエーハを収容したカセットが載置されるカセットテーブルと、前記カセットからウエーハを搬出する搬出手段と、搬出されたウエーハを仮置きする仮置きテーブルと、該仮置きテーブルに仮置きされたウエーハを前記チャックテーブルに搬送する搬送手段と、前記チャックテーブルに保持されたウエーハを撮像し切削すべき領域を検出するアライメント手段と、を備え、前記チャックテーブルは、互いに隣接して配設された第1のチャックテーブルと第2のチャックテーブルとからなり、前記加工送り手段は、前記第1のチャックテーブルを加工送りする第1の加工送り手段と前記第2のチャックテーブルを加工送りする第2の加工送り手段とからなる切削装置を用いるウエーハの加工方法であって、
前記第1のチャックテーブルおよび前記第2のチャックテーブルに前記カセットから前記仮置きテーブルに搬出されたウエーハを前記搬送手段によって搬送して保持するウエーハ保持工程と、
前記第1のチャックテーブルおよび前記第2のチャックテーブルに保持されたウエーハを前記アライメント手段の直下に位置付けて切削すべき領域を検出するアライメント工程と、
前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに保持され前記アライメント工程が実行されたウエーハに対して前記切削手段の前記切削ブレードを位置付けてウエーハを切削する第1の切削工程と、
該第1の切削工程が終了した後、前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに保持され前記アライメント工程が実行された未切削のウエーハに対して前記切削手段の前記切削ブレードを位置付けてウエーハを切削する第2の切削工程と、
前記第1の切削工程が終了した後、前記第2の切削工程の最中に、前記第1の切削工程で切削済みで前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに保持されたウエーハを前記アライメント手段の直下に位置付けて切削状態を検査する検査工程と、
を備えることを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
前記検査工程が終了した前記第1のチャックテーブルまたは前記第2のチャックテーブルに対する次の前記ウエーハ保持工程および前記アライメント工程は、前記第2の切削工程の最中に実行することを特徴とする請求項1に記載のウエーハの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−112884(P2008−112884A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295293(P2006−295293)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】