カプセル型内視鏡用撮像光学系
【課題】画角を広くするとともに、画角全域において像面を撮像面付近に揃える。
【解決手段】カプセル型内視鏡10は、凹状半球面の物体面12を撮像する撮像光学系20を備えている。撮像光学系20は−5≦ΔZr/ΔZp≦5を満たしている。ここで、最大半画角をωmaxとしたとき、ΔZrは2ωmaxの光束に対する実像面位置と、ωmaxの光束に対する実像面位置との差を示しており、ΔZpは物体面12と2ωmaxの主光線との交点P1を通り、光軸XPに垂直な平面を仮想物体面24としたときの近軸像面位置と、被写体12とωmaxの主光線との交点P2を通り、光軸Xpに垂直な平面を仮想物体面25としたときの近軸像面位置との差を示している。
【解決手段】カプセル型内視鏡10は、凹状半球面の物体面12を撮像する撮像光学系20を備えている。撮像光学系20は−5≦ΔZr/ΔZp≦5を満たしている。ここで、最大半画角をωmaxとしたとき、ΔZrは2ωmaxの光束に対する実像面位置と、ωmaxの光束に対する実像面位置との差を示しており、ΔZpは物体面12と2ωmaxの主光線との交点P1を通り、光軸XPに垂直な平面を仮想物体面24としたときの近軸像面位置と、被写体12とωmaxの主光線との交点P2を通り、光軸Xpに垂直な平面を仮想物体面25としたときの近軸像面位置との差を示している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に飲み込まれて使用されるカプセル型内視鏡の撮像光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野においては、長い挿入部の先端に撮像装置を設けた挿入型内視鏡のほか、カプセル内に撮像装置を収納したカプセル型内視鏡を利用した診断が行われている。カプセル型内視鏡は、被検者が飲み込むことができるサイズであるため、挿入型内視鏡のように、挿入部を飲み込む際の患者の負担や挿入部を長時間体内に挿入し続けることによる患者の負担が無くなるという利点を有する。
【0003】
カプセル型内視鏡は、体内に飲み込まれた後に管状の経路に沿って進行しやすいように、先頭部分の透明カバーがドーム状に整形され、この透明カバーに円筒状のカプセル本体部が連ねられている。撮像光学系の光軸は透明カバーの中心を通るように設計されるのが通常で、したがって撮像光学系には光軸に近い光束だけでなく透明カバーの周辺部を通して大きな入射角をもった光束も入射する。そして、光軸上では物体(被写体)距離が遠くなり、撮像の画角が大きくなるほど物体距離が近くなる傾向をもつため、平面状の被写体を光軸に垂直な平面状の撮像面に結像させる通常の撮像光学系では良好な結像を得ることができる範囲が非常に限られてしまう。
【0004】
こうした事情から、特許文献1で知られるように広画角の撮像光学系が知られているが、被写体の周辺部分にピントが合うように光学設計すると中心部分が被写界深度の範囲外になってボケてしまい、逆に中心部分を重視してピントを合わせると周辺部分が被写界深度の範囲外になって周辺部分がボケてしまう。この問題に対して、特許文献2及び3に示される撮像光学系は、画面中心及び最大画角において像面を撮像面付近に揃えることによって、被写体の中心部分だけでなく周辺部分を含む被写体全体を被写界深度内に収めるように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−61438号公報
【特許文献2】特許4128504号公報
【特許文献3】特許4128505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カプセル型内視鏡では、必ずしも光軸近傍からの光束だけでなく、透明カバーの周辺部を通して光軸に大きな角度で入射してくる光束も診断上で有益な情報を多く含むことから、撮像光学系には広画角化が要求される。この点、上記特許文献2及び3の撮像光学系は、カプセル型内視鏡に要求される画角と物体距離との関係が最適化されてはいるが、画角が最大でも113.6°と未だ不十分である。また、上記先行文献記載の光学系はフロント絞りを採用しているため、物体側のレンズの外径を小さく抑えるうえでは有利であるが、絞りの厚みによって光線にケラレが生じ、あるいは絞り直後のレンズ面の曲率半径が大きいことから、より広角化した際の光量ロスが大きくなるという欠点がある。
【0007】
撮像光学系に凹面を向けた物体面を光軸に垂直な平面状の撮像面に結像させるには、光学系としては負の像面湾曲を発生させればよい。また、このように像面湾曲をコントロールするには三次収差係数でペッツバール和を正の値で大きくすればよい。こうした負の像面湾曲をもつ光学系を得るには、光学系を構成する正レンズに低屈折率材を用い、負レンズに高屈折率材を用いるのが一般である。しかし、ワンタイムユースを基本とするカプセル型内視鏡の撮像光学系にはローコスト化のためにプラスチックレンズが用いられることを考慮すると、高屈折率材が得にくくなってペッツバール和の調整が難しくなる。なお、レンズ枚数を増やしてペッツバール和の調整に自由度をもたせることは可能であるが、光学系の全長が長くなってカプセルの長大化が避けられず、飲み込み使用されるカプセル型内視鏡には採用し難い。
【0008】
本発明は、以上の背景を考慮してなされたものであり、画角を広くするとともに、画角全域において像面を光軸に垂直な撮像面の近傍に揃えることによって、撮像光学系に向けて凹面状に湾曲した物体面全体をほぼ被写界深度内に収めることができるようにしたカプセル型内視鏡用撮像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撮像光学系は、撮像対象となる物体面を凹面状とし、この物体面に正対させて撮像したとき、−5.0≦ΔZr/ΔZp≦5.0の条件を満たすように構成されている。ただし、前記ΔZrは、最大画角2ωmaxの光束に対する実像面位置と半画角ωmaxの光束に対する実像面位置との差を表し、また前記Zpは、前記物体面と2ωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置と、前記物体面とωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置との差を表すものである。この条件は、好ましくは最大画角2ωmaxを135°以上にした光学系に適している。一方、光学系の最大画角2ωmaxを120°にする場合には、先の条件の上・下限値を−0.5≦ΔZr/ΔZp≦0.5と狭めておくことが望ましい。
【0010】
このようにΔZr/ΔZpの値について条件が変わる理由は以下のとおりである。撮像光学系の被写界深度は一般に錯乱円の径によって定義される。しかし、実際上は遠距離の物体ほど像面上では小サイズの画像となって細かい解像力が要求されるのに対し、近距離の物体ほど像倍率が大きくなるため遠距離側ほどの解像力は要求されない。本発明の撮像光学系は、物体距離が近くなるほど光線の入射角が大きくなり、物体距離が遠くなるほど光線の入射角が小さくなるというカプセル内視鏡特有の使用形態を考慮した設計となっている。したがって、撮影画角が狭くなるほど撮像画面内には遠距離物体が多く含まれ、高い解像力も要求されることになるから、上記ΔZr/ΔZpの条件は狭くしておく必要がある。
【0011】
ディストーションをマイナス側に大きくして光学系の広画角化を図ることは可能であるが、本発明のように画像周辺部の近距離物体を良好に撮像しようとしても、ディストーションにより画像が大きく歪み像倍率も低下してしまうため、入射角が大きい近距離物体からの光束に対する結像性能を充分に高めることが難しくなる。この点、本発明の撮像光学系においては、任意の画角ωに対する像高をY(ω)、画角ωの微小変位量をΔωとしたとき、0.7<(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の関係が満たされるようにしてあるから、ディストーションによる画像の歪みも実用上問題ない程度に抑えられ、良好な結像性能が得られている。
【0012】
本発明の撮像光学系特有の像面湾曲を得るには、最も物体面側に近い位置に物体に凸面を向けた負レンズを用いるのが好ましく、少なくともその物体側の面を非球面にするとともに、最も像面側に近い位置に設けた正レンズの少なくともいずれかの面を非球面にしておくのがコスト面、光学系全長の短縮化の点で有利となる。なお、前記負レンズの物体面側に向けられた凸面としては、必ずしも頂点が最も突出した凸面でなくてもよく、例えば近軸領域では凹面であっても外周側が像面側に近づくように湾曲した非球面であってもよい。
【0013】
最も物体面側にこのような負レンズを用いることによって、周辺から大きな角度で入射した光線も最初の負パワーにより光軸に対して小さな角度で出射して絞りへの入射角も小さくなるから、フロント絞りをもつ光学系と比較して絞りの厚みによる光量ロスも抑えられるようになる。この負レンズの背後には、複数のレンズで構成され全体で正のパワーをもつ正レンズ群が設けられるが、この正レンズ群の中の最も物体側に位置するレンズと最も像面側に位置するレンズとを正レンズで構成して正のパワーを分散させておくと、前記負レンズで発生した収差を補正しながら像面湾曲を容易に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画角を広くするとともに、画角全域において像面を光軸に垂直な撮像面近傍に揃えることによって被写体全体を被写界深度内に収めることができ、病変部が被写体のどの位置にあってもボケがない鮮明な病変部の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のカプセル型内視鏡を示す断面図である。
【図2】図1のカプセル型内視鏡を光軸回りに90度回転させたときの断面図である。
【図3】カプセル内の4個のLEDの配置を示す平面図である。
【図4】[数1]に関する説明図である。
【図5】(A)は凹状半球面の被写体上に付された同心円を、(B)〜(E)は(A)の同心円を撮像したときの画像を表す説明図である。
【図6】実施例1の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図7】実施例1の撮像光学系の収差図である。
【図8】実施例1の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図9】実施例2の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図10】実施例2の撮像光学系の収差図である。
【図11】実施例2の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図12】実施例3の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図13】実施例3の撮像光学系の収差図である。
【図14】実施例3の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図15】実施例4の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図16】実施例4の撮像光学系の収差図である。
【図17】実施例4の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図18】実施例5の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図19】実施例5の撮像光学系の収差図である。
【図20】実施例5の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図21】実施例6の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図22】実施例6の撮像光学系の収差図である。
【図23】実施例6の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図24】実施例7の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図25】実施例7の撮像光学系の収差図である。
【図26】実施例7の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図27】実施例8の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図28】実施例8の撮像光学系の収差図である。
【図29】実施例8の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図30】実施例9の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図31】実施例9の撮像光学系の収差図である。
【図32】実施例9の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図33】実施例10の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図34】実施例10の撮像光学系の収差図である。
【図35】実施例10の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図36】実施例11の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図37】実施例11の撮像光学系の収差図である。
【図38】実施例11の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図39】実施例12の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図40】実施例12の撮像光学系の収差図である。
【図41】実施例12の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図42】実施例13の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図43】実施例13の撮像光学系の収差図である。
【図44】実施例13の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図45】実施例14の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図46】実施例14の撮像光学系の収差図である。
【図47】実施例14の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図48】実施例15の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図49】実施例15の撮像光学系の収差図である。
【図50】実施例15の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1では先頭部分だけを表しているが、カプセル型内視鏡10は被検者が容易に飲み下すことができるように、直径が10ミリ前後、長さが20数ミリ程度のサイズのカプセル状にまとめられ、被検者が飲み込んでから体外へ排出するまでの間に、胃や腸の内部などを一定の時間毎に撮像する。カプセル型内視鏡10に組み込まれた本発明の撮像光学系は、物体面(被写体面)12が凹状の半球面であることを想定し、その物体面を光軸に垂直な平面に良好に結像させる機能を有している。なお、物体面12は必ずしも正確な凹状の半球面でなくてもよく、その他の凹状の曲面形状であってもよい。
【0017】
図2はカプセル型内視鏡10を中心軸の回りに90°回転させた状態を表す。図1及び図2に示すように、カプセル型内視鏡10は、後端側が塞がれた不透明なカプセル本体22の前端側をドーム状の透明カバー23で塞いだカプセル13が外装となり、その内部にカバーガラス21で前面が覆われたエリア型の撮像素子14と、照明光源となる第1〜第4LED(Light Emitting Diode)15〜18と、撮像光学系20とが組み込まれている。カプセル13内には、さらに撮像素子14を駆動する電池や撮像素子14で得られた画像信号を被検者の周囲に取り付けた受信器に送信するアンテナ(いずれも図示省略)などが収納されている。撮像光学系20は、パワーのない透明カバー23を通して得られた被写体光を撮像素子14の撮像面上に結像させる。
【0018】
カプセル型内視鏡10を透明カバー23を通して正面視した様子を図3に示す。図3に示すように、第1〜第4LED15〜18は撮像光学系20の周りに約90°ピッチで離間して設けられている。第2及び第4LED16,18は、撮像光学系20の光軸XPの方向に関し、第1及び第3LED15,17よりも撮像素子14側にずらされている。第1及び第3LED15,17は、その照明光軸X1,X3が撮像光学系20の光軸XPと平行になるように設けられており、主として被写体12の中心及びその周辺を含む被写体12の中心部分を照明する。また、第2及び第4LED16,18は、その照明光軸X2,X4が撮像光学系20の光軸XPに対して一定の角度で斜めになるように設けられており、主として被写体12の中心部分から端部までを含む被写体12の周辺部分を照明する。これにより、凹状半球面の被写体12のほぼ全体にわたって、照明光をムラなく均一に照射することができる。加えて、カプセル13内で各LED15〜18から光を照射してもフレアが生じることはない。
【0019】
図4に示すように、撮像光学系20は、被写体12側から順に、第1レンズL1、開口絞りS6、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5から構成されている。なお、図4では図面の複雑化を避けるためにLED15〜18については図示を省略し、透明カバー23についてはその表面を二点鎖線で示した。この撮像光学系20は負の像面湾曲を有し、凹面状の物体面12を光軸Xpに垂直な撮像面上に良好に結像させる作用をもつ。このような結像性能を得るために、撮像光学系20は基本的に第一レンズL1が物体面12に凸面を向けた負レンズで構成され、好ましくはこの第一レンズL1の少なくとも物体側の面が非球面として設計され、また第5レンズL5のいずれかの面も非球面となっている。
【0020】
さらに、最大画角(2ωmax)の光束に対する光軸Xp上での実像面位置と、最大半画角(ωmax)の光束に対する光軸Xp上での実像面位置との差が小さいほど結像性能としては好ましく、また物体面12と最大画角2ωmaxの主光線との交点P1を通り光軸Xpに垂直な仮想平面24の近軸結像位置26,27のいずれか一方と、物体面12と最大半画角ωmaxの主光線との交点P2を通り光軸Xpに垂直な仮想平面25の近軸結像位置26,27のいずれか他方との差が小さいほど結像性能として好ましい。特に、撮像光学系20の最大画角(2ωmax)が120°以上であるときには、以下の[数1]を満たすように設計される。
【0021】
【数1】
[数1]式中のΔZr、ΔZpは、撮像光学系20の最大画角を2ωmax、最大半画角をωmaxとしたとき、以下を表す。
ΔZr:2ωmaxの光束に対する実像面位置と、ωmaxの光束に対する実像面位置との差
ΔZp:被写体12と2ωmaxの主光線との交点P1を通り、光軸XPに垂直な平面を仮想物体面24としたときの近軸像面位置と、被写体12とωmaxの主光線との交点P2を通り、光軸XPに垂直な平面を仮想物体面25としたときの近軸像面位置との差
【0022】
撮像光学系20が[数1]式を満たすことにより、像面湾曲が十分に補正されるとともに、凹状半球面の中心部分と周辺部分とを含む物体面12の全体が撮像光学系20の被写界深度内となる。したがって、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像を撮像することができるから、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0023】
ΔZr/ΔZpが−0.5よりも小さくなると、撮像光学系20の像面湾曲の影響により、2ωmaxの光束による実像面位置がωmaxの光束による実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまう。一方、ΔZr/ΔZpが0.5よりも大きくなると、物体面12が凹状の曲面形状である影響により、2ωmaxの光束による実像面位置が、ωmaxの光束による実像面位置よりも物体面と反対側に大きくずれてしまう。いずれの場合も、2ωmaxの光束による実像面と、ωmaxの光束による実像面とが光軸Xp方向に大きくずれてしまうため、その双方を光軸Xpに垂直な撮像平面上に良好に結像させることができなくなるから、最大画角(2ωmax)が120°以上の撮像光学系20では、ABS(ΔZr/ΔZp)≦0.5の条件を満たすようにするのがよい。なお、ABSは( )内の値の絶対値を表す。
【0024】
撮像光学系20の最大画角(2ωmax)をさらに広げ、これを135°以上にする場合には、ABS(ΔZr/ΔZp)の値を緩和することが可能となり、次の数式[数2]を満たす範囲内で設計することもできる。
【0025】
【数2】
なお、上式におけるΔZr,ΔZpが表す意味は、前掲の[数1]と共通である。そして、ΔZr/ΔZpが下限値−5.0よりも小さくなった場合、あるいはΔZr/ΔZpが上限値5.0よりも大きくなった場合には、[数1]におけるΔZr/ΔZpが下限値−0.5よりも小さくなった場合、ΔZr/ΔZpが上限値よりも大きくなった場合とそれぞれ共通の傾向を示すから、最大画角(2ωmax)が135°以上の撮像光学系20では、ABS(ΔZr/ΔZp)≦5.0の条件を満たすようにするのがよい。
【0026】
また、撮像光学系20は、最大画角(2ωmax)が120°以上あるいは135°以上のいずれの場合であっても、画角ωのときの像高をY(ω)としたとき、以下の[数3]式を満たすように設計されている。なお、画角45°以下の条件下で、[数3]を満たすようにしてもよい。
【数3】
【0027】
[数3]の「Y(ω+Δω)−Y(ω)」は、画角をωからΔωだけ微小変化させた画角ω+Δωのときの像高Y(ω+Δω)と、画角ωのときの像高Y(ω)との差分を示している。また、[数3]の「Y(Δω)」は、画角を0°からΔωだけ微小変化させた画角Δωのときの像高Y(Δω)と、画角0°のときの像高Y(0)との差分Y(0+Δω)−Y(0)を示しており、Y(0)=0であることからY(0+Δω)−Y(0)=Y(Δω)となる。したがって、[数3]の「(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)」は、画像の中心部分に対して画像の周辺部分にどの程度の歪曲(ディストーション)を生じさせるか表す。
【0028】
ここで、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)を歪曲指数Qとし、Qの値が「1.0」、「0.7」、「0.5」、「0.3」となるように撮像光学系20を設計した場合に、それぞれの撮像光学系で得られた画像に現れる歪曲の度合を評価する。評価に際しては、図5(A)に示すように、半径が「r」、「2r」、「3r」、「4r」、「5r」の複数の円(同心円)30a〜30eを、その中心が光軸Xpに一致するように物体面12に設定し、これらの同心円をそれぞれの撮像光学系20を通して撮像する。そして、撮像で得られた画像の周辺部分における同心円相互の間隔がどのように変化しているかに基づいて画像の周辺部分の歪曲の程度を評価する。
【0029】
図5(B)は、Q=1.0となるように設計した撮像光学系20で撮像したときの画像を示している。この画像が示すように、被写体12に設けた複数の円30a〜30eの間隔と同様、画像上における各円の間隔は距離rである。このように、画像の中心部分における円の間隔と、画像の周辺部分における円の間隔とが同じであるということは、画像の周辺部分にディストーションが生じていないことを表している。したがって、このような撮像光学系20を組み込んだカプセル型内視鏡10で被検者の体内を撮像すれば、画像の周辺部分に写し出される画像にもほとんど歪曲が現れることがなく、病変部の視認が容易になる。
【0030】
図5(C)の画像は、Q=0.7となるように設計した撮像光学系20で撮像したときの画像を示している。この画像が示すように、画像の中心部分の円の間隔はrよりもわずかに大きく、また画像の周辺部分における円の間隔はrよりもわずかに小さくなっている。ただし、その差はわずかであるため画像としては中心部分と周辺部分とで大きな歪みとして観察されることはなく、この撮像光学系20を用いた場合でも画像診断の上では実用的には満足できる範囲内のものと言うことができる。
【0031】
図5(D)の画像は、Q=0.5で設計した撮像光学系20で撮像したときの画像を示している。この画像からは、円の間隔が中心部分では広く、周辺部分では狭いことが容易に観察できる。この傾向は広画角の撮像光学系がもつ一般的な特徴であるが、この程度まで歪曲が現れると医療診断用の画像としては適切でなく、特に画像の周辺部分では病変部があっても見落とされる可能性も高まる。さらに、Q=0.3の撮像光学系で撮像した画像を図5(E)に示す。この画像では、画像の中心部分での円の間隔が広く、周辺部分では狭くなっていることが顕著に観察され、医療診断には適していないことが明らかで実用にはならない。
【0032】
以上から、最大画角(2ωmax)が120°以上、135°以上のいずれであっても、歪曲指数Qの値、すなわち(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値が0.7を越えるように撮像光学系を設計すれば、画像の周辺部分におけるディストーションを実用上問題にならない程度まで抑えられることがわかる。このようにディストーションを抑えておけば、画像の周辺部分であっても病変部の見落としを確実に防ぐことができ、画像診断の信頼性を高めることが可能となる。なお、歪曲指数Qの値としては、0.7より大きく1.3よりも小さいことが望ましく、0.8<Q<1.2の範囲にすることがより好ましい。
【0033】
また、撮像光学系20を第1〜第5レンズの5枚で構成しておくことにより、中心部分と周辺部分を含む物体面12の全体が撮像光学系20の被写界深度内に収められる。したがって、中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が得られ、また画像の周辺部分におけるディストーションもほとんど問題にならない。なお、このような撮像光学系20は、必ずしも5枚構成に限られず、第1〜第4レンズの4枚で構成した場合でもほぼ同様の効果を得ることが可能である。さらに本発明の撮像光学系は、体腔内に飲み込まれた後に、外部からの制御信号に応じて体腔内の位置や撮影の姿勢を制御できるようにしたカプセル型内視鏡用の撮像光学系にも用いることができる。
【実施例】
【0034】
カプセル型内視鏡に搭載した撮像光学系について、以下の実施例1〜15及び比較例1〜6において具体的な数値を示すことによって、本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
[実施例1]
図6に示すように、実施例1の撮像光学系20は5枚の第1〜第5レンズL1〜L5と開口絞りS6とを備え、カプセル13内において、凹状半球面の物体面12側から、第1レンズL1、開口絞りS6、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5の順に配置されている。第3レンズL3と第4レンズL4とは貼り合わせレンズとなっている。
【0036】
物体面をS1とし、透明カバー23も含めた上で像面側に向かって面番号Siを付して撮像光学系20の各面を表すと、透明カバー23の表面がS2、その裏面がS3となる。以後、第1レンズL1〜第5レンズL5の表裏面、カバーガラス21の裏面S15まで順に面番号Siを割り当てる。なお、第3レンズL3の裏面と第4レンズL4の表面とは接合面S10で共通となり、カバーガラス21の裏面S15は撮像素子14の撮像面と一致する。また、撮像光学系20の光軸方向に対する面Siと面Si+1との間隔(面間隔)は、Diとして表され、面S1と面S2との面間隔はD1、面S2と面S3との面間隔はD2、そして面S14と面S15との面間隔D14まで同様に表される。
【0037】
撮像光学系20は、以下の表1に示すレンズデータに基づいて設計される。
【0038】
【表1】
表1において、「OBJ」は凹状半球面の物体面12を、「絞り」は開口絞りS6を、「IMG」は撮像素子14の撮像面を、「曲率半径」は各面Siの曲率半径(mm)を、「面間隔」は各面間隔Di(mm)を、「Nd」はd線(波長587.6nm)に対する屈折率を、「νd」はアッベ数を、「f」は撮像光学系20全体としての焦点距離を、「Fno」は撮像光学系20のF値Fを、「2ωmax」は最大画角を表している。
【0039】
また、表1の面番号欄に*で示すように、第1レンズの両面S4,S5、第2レンズの両面S7,S8、第5レンズの両面S12,S13は非球面となっている。これら非球面形状は、曲率(近軸曲率半径Rの逆数)c、円錐定数K、光軸からの距離ρ(ρ2=x2+y2)、i次の非球面次数を用いて、以下の[数4]の式で数値的に表される。面S4、S5、S7、S8、S12、S13の円錐定数K及び非球面定数Aiを表2に示す。なお、後述する実施例2〜15においても、レンズデータの表記や、非球面の形状を決める[数4]の式は共通に用いられる。
【0040】
【数4】
【0041】
【表2】
【0042】
図7は、この撮像光学系20により、透明カバー23及び撮像素子前面のカバーガラス21を通して物体面12を撮像面に結像させたときの球面収差、非点収差、倍率色収差を示している。球面収差はd線(波長587.6nm)のものを実線で、F線(波長486.13nm)のものを第1破線で、C線(波長656.27nm)のものを、各線の長さが第1破線よりも大きい第2破線で示している。また、非点収差はサジタル方向のものを実線で、タンジェンシャル方向のものを第1破線で示している。また、倍率色収差は、F線のものを第1破線で、C線のものを、各線の長さが第1破線よりも大きい第2破線で示している。なお、透明カバー23及びカバーガラス21を通して物体面12を撮像面に結像させること、そのときの球面収差、非点収差、倍率色収差を同様に表記することは、後述する実施例2〜15においても共通である。
【0043】
実施例1の撮像光学系20では、ΔZrは−0.001であり、ΔZpは0.020でる。したがって、最大画角2ωmaxが120°であるこの撮像光学系20は、ΔZr/ΔZpが[数2]はもとより[数1]の範囲内でもあるから、像面湾曲が十分に補正されるとともに、中心部分と周辺部分とを含む物体面12の全体が撮像光学系20の被写界深度内に収められる。これにより、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0044】
図8に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、半画角ωの全範囲で0.7よりも大きくなっている。したがって、この撮像光学系20は[数3]式を満たし、画像の周辺部分におけるディストーションを抑えることができる。したがって、画像の周辺部分に病変部が写し出されたとしても、病変部は見落としする程歪曲しないため、病変部を確実に発見することができる。
【0045】
[実施例2]
図9に示すように、実施例2の撮像光学系30は4枚の第1〜第4レンズL1〜L4と開口絞りS8とを備え、カプセル13内において、凹状半球面の物体面12側から、第1レンズL1、第2レンズL2、開口絞りS8、第3レンズL3、第4レンズL4の順に配置されている。この撮像光学系30は、以下の[表3]に示すレンズデータとなっている。
【0046】
【表3】
表3の面番号欄に*で示すように、第1レンズの両面S4,S5、第2レンズの両面S6,S7、第3レンズの両面S9,S10、第4レンズの両面S11,S12は非球面となっている。これら面S4,S5,S6,S7,S9,S10,S11,S12の円錐定数K及び非球面定数Aiを表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
図10に撮像光学系の球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。実施例2の撮像光学系30の最大画角は130°であり、ΔZrは−0.005であり、ΔZpは0.028である。したがって、ΔZr/ΔZpは−0.167で、[数2]はもとより[数1]の範囲内に収まっている。そのため、像面湾曲が十分に補正されるとともに、中心部分と周辺部分とを含む物体面12の全体が撮像光学系30の被写界深度内に収められる。これにより、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0049】
図11に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、半画角ωの全範囲で0.7よりも大きくなっている。したがって、撮像光学系30は[数3]式の範囲内であり、画像の周辺部分におけるディストーションを抑えることができる。したがって、画像の周辺部分に病変部が写し出されたとしても、病変部は見落としする程歪曲しないため、病変部を確実に発見することができる。
【0050】
[実施例3]
図12に示すように、実施例3の撮像光学系40は5枚の第1〜第5レンズL1〜L5と開口絞りS6とを備え、カプセル13内において、凹状半球面の被写体12側から、第1レンズL1、開口絞りS6、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5の順に配置されている。この撮像光学系40のレンズデータは次の表5のとおりである。
【0051】
【表5】
表5の面番号欄に*で示すように、第1レンズL1の両面S4,S5、第5レンズL5の両面S13,S14は非球面となっている。これら面S4,S5,S13,S14の円錐定数K及び非球面定数Aiを表6に示す。
【0052】
【表6】
【0053】
図13は、同様にして撮像光学系40の球面収差、非点収差、倍率色収差を示すもので、ΔZrは0.003、ΔZpは0.036である。したがって、最大画角2ωmaxが130°のこの撮像光学系40のΔZr/ΔZpの値は0.081となり、[数2]の範囲はもとより[数1]の範囲内でもある。そのため、像面湾曲が十分に補正されるとともに、被写体12の中心部分と周辺部分とを含む被写体12の全体が撮像レンズ40の被写界深度内に収められる。また、図14に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、半画角ωの領域のうちのほとんどで0.7よりも大きく、ディストーションを抑えることができるから、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0054】
[実施例4]
実施例4の撮像光学系50は図15に示すとおりで、物体面12から順に、第1レンズL1、第2レンズL2、開口絞りS8、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5と配置され、第3レンズL3と第4レンズL4とは貼り合わせレンズとなっている。これまでの実施例と同様に、表7にレンズデータ、表8に面番号欄に*が付されたそれぞれの非球面のデータを示す。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
この撮像光学系50の最大画角は125°で、その球面収差、非点収差、倍率色収差を図16に示す。ΔZrは−0.005、ΔZpは0.018で、ΔZr/ΔZpは−0.279となるから、[数2]の範囲を満たすだけでなく[数1]の範囲をも満たしている。そのため、像面湾曲が十分に補正されるとともに、被写体12の中心部分と周辺部分とを含む被写体12の全体が撮像レンズ50の被写界深度内に収められる。これにより、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。また図17に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きくなっている。したがって、撮像レンズ50は[数3]式の範囲内であり、画像の周辺部分におけるディストーションも良好に抑えられるようになる。
【0058】
[実施例5]
実施例5の撮像光学系60の構成を図18に示す。上記実施例と同様に、表9にレンズデータ、表10に面番号S4,S5,S11,S12で用いられている非球面のデータ、図19に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
実施例5の撮像光学系60は最大画角が170°であり、ΔZrが−0.018、ΔZpが0.202である。そして、ΔZr/ΔZpは−0.088となるから[数2]はもとより[数1]の範囲内でもある。また、図20に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系60においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0062】
[実施例6]
実施例6の撮像光学系70の構成を図21に示す。上記実施例と同様に、表11にレンズデータ、表12に非球面のデータ、図22に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0063】
【表11】
【0064】
【表12】
【0065】
最大画角170°のこの撮像光学系70では、ΔZrが−0.015、ΔZpが0.186であり、ΔZr/ΔZpは−0.080となるから[数2]はもとより[数1]も満たしている。また、図23に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系70においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0066】
[実施例7]
実施例7の撮像光学系80の構成を図24に示す。上記実施例と同様に、表13にレンズデータ、表14に非球面のデータ、図25に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0067】
【表13】
【0068】
【表14】
【0069】
最大画角150°のこの撮像光学系80では、ΔZrが0.010、ΔZpが0.075であり、ΔZr/ΔZpは0.128となるから[数1],[数2]の範囲内である。また、図26に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0070】
[実施例8]
実施例8の撮像光学系90の構成を図27に示す。上記実施例と同様に、表15にレンズデータ、表16に非球面のデータ、図28に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0071】
【表15】
【0072】
【表16】
【0073】
この撮像光学系90は最大画角が170°で、ΔZrが−0.031、ΔZpが0.133である。ΔZr/ΔZpは−0.235となるから[数2]および[数1]の範囲内である。また、図29に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0074】
[実施例9]
実施例9の撮像光学系100の構成を図30に示す。上記実施例と同様に、表17にレンズデータ、表18に非球面のデータ、図31に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0075】
【表17】
【0076】
【表18】
【0077】
この撮像光学系90は最大画角が170°で、ΔZrが0.036、ΔZpが0.168であり、ΔZr/ΔZpは0.215となるから[数2]はもとより[数1]の範囲内でもある。また、図32に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0078】
[実施例10]
実施例10の撮像光学系110の構成を図33に示す。上記実施例と同様に、表19にレンズデータ、表20に非球面のデータ、図34に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0079】
【表19】
【0080】
【表20】
【0081】
この撮像光学系110は最大画角が155°で、ΔZrが−0.020、ΔZpが0.069である。そして、ΔZr/ΔZpは−0.295となるから[数2]はもとより[数1]の範囲内でもある。また、図35に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、ディストーションについても抑えることができ、良好な結像性能が得られる。
【0082】
[実施例11]
実施例11の撮像光学系120の構成を図36に示す。上記実施例と同様に、表21にレンズデータ、表22に非球面のデータ、図37に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図38に示す。
【0083】
【表21】
【0084】
【表22】
【0085】
この最大画角160°のこの撮像光学系120では、ΔZrが0.117、ΔZpが0.119であり、ΔZr/ΔZpは0.981となって[数1]の範囲外になる。しかし、撮像光学系120の最大画角(2ωmax)は135°以上であるから、[数2]の範囲内であれば物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図38に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、ディストーションについても問題ない程度まで抑えることが可能となる。
【0086】
[実施例12]
実施例12の撮像光学系130の構成を図39に示す。上記実施例と同様に、表23にレンズデータ、表24に非球面のデータ、図40に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図41に示す。
【0087】
【表23】
【0088】
【表24】
【0089】
この撮像光学系130の最大画角は150°で、ΔZrが0.078、ΔZpが0.069であり、ΔZr/ΔZpは1.120となる。撮像光学系130の最大画角は135°以上であるから、[数2]を満たしていれば充分である。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図41に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく、[数3]の条件を満たしているから、ディストーションについても問題ない程度まで抑えることができる。
【0090】
[実施例13]
実施例13の撮像光学系140の構成を図42に示す。上記実施例と同様に、表25にレンズデータ、表26に非球面のデータ、図43に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図44に示す。
【0091】
【表25】
【0092】
【表26】
【0093】
この撮像光学系140では、ΔZrが−0.036、ΔZpが0.034であり、ΔZr/ΔZpは−1.048となる。撮像光学系140の最大画角(2ωmax)は140°であるから、[数2]を満たしていればよい。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図44に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく[数3]の条件を満たしているから、周辺部分に生じやすいディストーションを問題ない程度まで抑えることができる。
【0094】
[実施例14]
実施例14の撮像光学系150の構成を図45に示す。上記実施例と同様に、表27にレンズデータ、表28に非球面のデータ、図46に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図47に示す。
【0095】
【表27】
【0096】
【表28】
【0097】
この撮像光学系150では、ΔZrが−0.034、ΔZpが0.060であり、ΔZr/ΔZpは−0.566となる。撮像光学系150の最大画角(2ωmax)は150°であるから、[数2]を満たしていれば充分である。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図47に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく[数3]の条件を満たしているから、周辺部分に生じやすいディストーションを問題ない程度まで抑えることができる。
【0098】
[実施例15]
実施例15の撮像光学系160の構成を図48に示す。上記実施例と同様に、表29にレンズデータ、表30に非球面のデータ、図49に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図50に示す。
【0099】
【表29】
【0100】
【表30】
【0101】
この撮像光学系160では、ΔZrが−0.018、ΔZpが0.202であり、ΔZr/ΔZpは−0.088となる。撮像光学系160の最大画角(2ωmax)は170°であるが、[数1]及び[数2]のいずれをも満たしている。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図50に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく[数3]の条件を満たしているから、周辺部分に生じやすいディストーションを問題ない程度まで抑えることができる。
【0102】
[比較例1]
特許文献2の「添付光学系データ1」に示される撮像光学系で、光学的なパワーを持たない透明カバーを通して、撮像レンズの入射瞳位置を中心とした球面状の物体面を撮像すると、ΔZrは−0.109となり、ΔZpは0.016となる。したがって、この撮像光学系では最大画角が120°未満であるにもかかわらず、ΔZr/ΔZpは−6.683となって[数1]の範囲外となる。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまい、撮像により得られる画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0103】
[比較例2]
同様に、特許文献2の「添付光学系データ2」に示される撮像光学系で、光学的なパワーを持たない透明カバーを通して、撮像レンズの入射瞳位置を中心とした球面状の物体面を撮像すると、ΔZrは−0.010、ΔZpは0.017となる。したがって、最大画角が120°未満であるのにΔZr/ΔZpは−0.594となって、やはり[数1]の範囲外となる。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまい、撮像により得られる画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0104】
[比較例3]
同様に、特許文献2の「添付光学系データ3」に示される撮像光学系で、光学的なパワーを持たない透明カバーを通して、撮像レンズの入射瞳位置を中心とした球面状の物体面を撮像すると、ΔZrは−0.158、ΔZpは0.015となる。したがって、最大画角が120°未満であるのにΔZr/ΔZpは−10.849となって[数1]の範囲外である。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまい、撮像により得られる画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0105】
[比較例4]
同様にして特許文献2の「添付光学系データ4」に示される撮像光学系を用いた場合でも、ΔZrは−0.024、ΔZpは0.035であり、ΔZr/ΔZpは−0.687となる。最大画角が120°未満であっても[数1]の範囲外になり、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまう。この結果、画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0106】
[比較例5]
特許文献3の「添付光学系データ1」に示される撮像光学系を同様にして用いた場合には、ΔZrは−0.021、ΔZpは0.031となるから、ΔZr/ΔZpは−0.691となる。やはり最大画角120°未満であるにもかかわらず[数1]の範囲外となり、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれ、良好な結像性能を得ることはできない。
【0107】
[比較例6]
特許文献3の「添付光学系データ2」に示される撮像光学系を用いた場合も同様で、ΔZrは−0.024、ΔZpは0.036となるから、最大画角が120°未満であるにもかかわらずΔZr/ΔZpは−0.666となって[数1]の範囲外である。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれ、良好な結像性能を得ることはできない。
【符号の説明】
【0108】
10 カプセル型内視鏡
20 撮像レンズ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に飲み込まれて使用されるカプセル型内視鏡の撮像光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野においては、長い挿入部の先端に撮像装置を設けた挿入型内視鏡のほか、カプセル内に撮像装置を収納したカプセル型内視鏡を利用した診断が行われている。カプセル型内視鏡は、被検者が飲み込むことができるサイズであるため、挿入型内視鏡のように、挿入部を飲み込む際の患者の負担や挿入部を長時間体内に挿入し続けることによる患者の負担が無くなるという利点を有する。
【0003】
カプセル型内視鏡は、体内に飲み込まれた後に管状の経路に沿って進行しやすいように、先頭部分の透明カバーがドーム状に整形され、この透明カバーに円筒状のカプセル本体部が連ねられている。撮像光学系の光軸は透明カバーの中心を通るように設計されるのが通常で、したがって撮像光学系には光軸に近い光束だけでなく透明カバーの周辺部を通して大きな入射角をもった光束も入射する。そして、光軸上では物体(被写体)距離が遠くなり、撮像の画角が大きくなるほど物体距離が近くなる傾向をもつため、平面状の被写体を光軸に垂直な平面状の撮像面に結像させる通常の撮像光学系では良好な結像を得ることができる範囲が非常に限られてしまう。
【0004】
こうした事情から、特許文献1で知られるように広画角の撮像光学系が知られているが、被写体の周辺部分にピントが合うように光学設計すると中心部分が被写界深度の範囲外になってボケてしまい、逆に中心部分を重視してピントを合わせると周辺部分が被写界深度の範囲外になって周辺部分がボケてしまう。この問題に対して、特許文献2及び3に示される撮像光学系は、画面中心及び最大画角において像面を撮像面付近に揃えることによって、被写体の中心部分だけでなく周辺部分を含む被写体全体を被写界深度内に収めるように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−61438号公報
【特許文献2】特許4128504号公報
【特許文献3】特許4128505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カプセル型内視鏡では、必ずしも光軸近傍からの光束だけでなく、透明カバーの周辺部を通して光軸に大きな角度で入射してくる光束も診断上で有益な情報を多く含むことから、撮像光学系には広画角化が要求される。この点、上記特許文献2及び3の撮像光学系は、カプセル型内視鏡に要求される画角と物体距離との関係が最適化されてはいるが、画角が最大でも113.6°と未だ不十分である。また、上記先行文献記載の光学系はフロント絞りを採用しているため、物体側のレンズの外径を小さく抑えるうえでは有利であるが、絞りの厚みによって光線にケラレが生じ、あるいは絞り直後のレンズ面の曲率半径が大きいことから、より広角化した際の光量ロスが大きくなるという欠点がある。
【0007】
撮像光学系に凹面を向けた物体面を光軸に垂直な平面状の撮像面に結像させるには、光学系としては負の像面湾曲を発生させればよい。また、このように像面湾曲をコントロールするには三次収差係数でペッツバール和を正の値で大きくすればよい。こうした負の像面湾曲をもつ光学系を得るには、光学系を構成する正レンズに低屈折率材を用い、負レンズに高屈折率材を用いるのが一般である。しかし、ワンタイムユースを基本とするカプセル型内視鏡の撮像光学系にはローコスト化のためにプラスチックレンズが用いられることを考慮すると、高屈折率材が得にくくなってペッツバール和の調整が難しくなる。なお、レンズ枚数を増やしてペッツバール和の調整に自由度をもたせることは可能であるが、光学系の全長が長くなってカプセルの長大化が避けられず、飲み込み使用されるカプセル型内視鏡には採用し難い。
【0008】
本発明は、以上の背景を考慮してなされたものであり、画角を広くするとともに、画角全域において像面を光軸に垂直な撮像面の近傍に揃えることによって、撮像光学系に向けて凹面状に湾曲した物体面全体をほぼ被写界深度内に収めることができるようにしたカプセル型内視鏡用撮像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の撮像光学系は、撮像対象となる物体面を凹面状とし、この物体面に正対させて撮像したとき、−5.0≦ΔZr/ΔZp≦5.0の条件を満たすように構成されている。ただし、前記ΔZrは、最大画角2ωmaxの光束に対する実像面位置と半画角ωmaxの光束に対する実像面位置との差を表し、また前記Zpは、前記物体面と2ωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置と、前記物体面とωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置との差を表すものである。この条件は、好ましくは最大画角2ωmaxを135°以上にした光学系に適している。一方、光学系の最大画角2ωmaxを120°にする場合には、先の条件の上・下限値を−0.5≦ΔZr/ΔZp≦0.5と狭めておくことが望ましい。
【0010】
このようにΔZr/ΔZpの値について条件が変わる理由は以下のとおりである。撮像光学系の被写界深度は一般に錯乱円の径によって定義される。しかし、実際上は遠距離の物体ほど像面上では小サイズの画像となって細かい解像力が要求されるのに対し、近距離の物体ほど像倍率が大きくなるため遠距離側ほどの解像力は要求されない。本発明の撮像光学系は、物体距離が近くなるほど光線の入射角が大きくなり、物体距離が遠くなるほど光線の入射角が小さくなるというカプセル内視鏡特有の使用形態を考慮した設計となっている。したがって、撮影画角が狭くなるほど撮像画面内には遠距離物体が多く含まれ、高い解像力も要求されることになるから、上記ΔZr/ΔZpの条件は狭くしておく必要がある。
【0011】
ディストーションをマイナス側に大きくして光学系の広画角化を図ることは可能であるが、本発明のように画像周辺部の近距離物体を良好に撮像しようとしても、ディストーションにより画像が大きく歪み像倍率も低下してしまうため、入射角が大きい近距離物体からの光束に対する結像性能を充分に高めることが難しくなる。この点、本発明の撮像光学系においては、任意の画角ωに対する像高をY(ω)、画角ωの微小変位量をΔωとしたとき、0.7<(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の関係が満たされるようにしてあるから、ディストーションによる画像の歪みも実用上問題ない程度に抑えられ、良好な結像性能が得られている。
【0012】
本発明の撮像光学系特有の像面湾曲を得るには、最も物体面側に近い位置に物体に凸面を向けた負レンズを用いるのが好ましく、少なくともその物体側の面を非球面にするとともに、最も像面側に近い位置に設けた正レンズの少なくともいずれかの面を非球面にしておくのがコスト面、光学系全長の短縮化の点で有利となる。なお、前記負レンズの物体面側に向けられた凸面としては、必ずしも頂点が最も突出した凸面でなくてもよく、例えば近軸領域では凹面であっても外周側が像面側に近づくように湾曲した非球面であってもよい。
【0013】
最も物体面側にこのような負レンズを用いることによって、周辺から大きな角度で入射した光線も最初の負パワーにより光軸に対して小さな角度で出射して絞りへの入射角も小さくなるから、フロント絞りをもつ光学系と比較して絞りの厚みによる光量ロスも抑えられるようになる。この負レンズの背後には、複数のレンズで構成され全体で正のパワーをもつ正レンズ群が設けられるが、この正レンズ群の中の最も物体側に位置するレンズと最も像面側に位置するレンズとを正レンズで構成して正のパワーを分散させておくと、前記負レンズで発生した収差を補正しながら像面湾曲を容易に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画角を広くするとともに、画角全域において像面を光軸に垂直な撮像面近傍に揃えることによって被写体全体を被写界深度内に収めることができ、病変部が被写体のどの位置にあってもボケがない鮮明な病変部の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のカプセル型内視鏡を示す断面図である。
【図2】図1のカプセル型内視鏡を光軸回りに90度回転させたときの断面図である。
【図3】カプセル内の4個のLEDの配置を示す平面図である。
【図4】[数1]に関する説明図である。
【図5】(A)は凹状半球面の被写体上に付された同心円を、(B)〜(E)は(A)の同心円を撮像したときの画像を表す説明図である。
【図6】実施例1の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図7】実施例1の撮像光学系の収差図である。
【図8】実施例1の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図9】実施例2の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図10】実施例2の撮像光学系の収差図である。
【図11】実施例2の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図12】実施例3の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図13】実施例3の撮像光学系の収差図である。
【図14】実施例3の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図15】実施例4の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図16】実施例4の撮像光学系の収差図である。
【図17】実施例4の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図18】実施例5の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図19】実施例5の撮像光学系の収差図である。
【図20】実施例5の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図21】実施例6の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図22】実施例6の撮像光学系の収差図である。
【図23】実施例6の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図24】実施例7の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図25】実施例7の撮像光学系の収差図である。
【図26】実施例7の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図27】実施例8の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図28】実施例8の撮像光学系の収差図である。
【図29】実施例8の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図30】実施例9の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図31】実施例9の撮像光学系の収差図である。
【図32】実施例9の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図33】実施例10の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図34】実施例10の撮像光学系の収差図である。
【図35】実施例10の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図36】実施例11の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図37】実施例11の撮像光学系の収差図である。
【図38】実施例11の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図39】実施例12の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図40】実施例12の撮像光学系の収差図である。
【図41】実施例12の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図42】実施例13の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図43】実施例13の撮像光学系の収差図である。
【図44】実施例13の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図45】実施例14の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図46】実施例14の撮像光学系の収差図である。
【図47】実施例14の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【図48】実施例15の撮像光学系を示すレンズ構成図である。
【図49】実施例15の撮像光学系の収差図である。
【図50】実施例15の撮像光学系のディストーションを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1では先頭部分だけを表しているが、カプセル型内視鏡10は被検者が容易に飲み下すことができるように、直径が10ミリ前後、長さが20数ミリ程度のサイズのカプセル状にまとめられ、被検者が飲み込んでから体外へ排出するまでの間に、胃や腸の内部などを一定の時間毎に撮像する。カプセル型内視鏡10に組み込まれた本発明の撮像光学系は、物体面(被写体面)12が凹状の半球面であることを想定し、その物体面を光軸に垂直な平面に良好に結像させる機能を有している。なお、物体面12は必ずしも正確な凹状の半球面でなくてもよく、その他の凹状の曲面形状であってもよい。
【0017】
図2はカプセル型内視鏡10を中心軸の回りに90°回転させた状態を表す。図1及び図2に示すように、カプセル型内視鏡10は、後端側が塞がれた不透明なカプセル本体22の前端側をドーム状の透明カバー23で塞いだカプセル13が外装となり、その内部にカバーガラス21で前面が覆われたエリア型の撮像素子14と、照明光源となる第1〜第4LED(Light Emitting Diode)15〜18と、撮像光学系20とが組み込まれている。カプセル13内には、さらに撮像素子14を駆動する電池や撮像素子14で得られた画像信号を被検者の周囲に取り付けた受信器に送信するアンテナ(いずれも図示省略)などが収納されている。撮像光学系20は、パワーのない透明カバー23を通して得られた被写体光を撮像素子14の撮像面上に結像させる。
【0018】
カプセル型内視鏡10を透明カバー23を通して正面視した様子を図3に示す。図3に示すように、第1〜第4LED15〜18は撮像光学系20の周りに約90°ピッチで離間して設けられている。第2及び第4LED16,18は、撮像光学系20の光軸XPの方向に関し、第1及び第3LED15,17よりも撮像素子14側にずらされている。第1及び第3LED15,17は、その照明光軸X1,X3が撮像光学系20の光軸XPと平行になるように設けられており、主として被写体12の中心及びその周辺を含む被写体12の中心部分を照明する。また、第2及び第4LED16,18は、その照明光軸X2,X4が撮像光学系20の光軸XPに対して一定の角度で斜めになるように設けられており、主として被写体12の中心部分から端部までを含む被写体12の周辺部分を照明する。これにより、凹状半球面の被写体12のほぼ全体にわたって、照明光をムラなく均一に照射することができる。加えて、カプセル13内で各LED15〜18から光を照射してもフレアが生じることはない。
【0019】
図4に示すように、撮像光学系20は、被写体12側から順に、第1レンズL1、開口絞りS6、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5から構成されている。なお、図4では図面の複雑化を避けるためにLED15〜18については図示を省略し、透明カバー23についてはその表面を二点鎖線で示した。この撮像光学系20は負の像面湾曲を有し、凹面状の物体面12を光軸Xpに垂直な撮像面上に良好に結像させる作用をもつ。このような結像性能を得るために、撮像光学系20は基本的に第一レンズL1が物体面12に凸面を向けた負レンズで構成され、好ましくはこの第一レンズL1の少なくとも物体側の面が非球面として設計され、また第5レンズL5のいずれかの面も非球面となっている。
【0020】
さらに、最大画角(2ωmax)の光束に対する光軸Xp上での実像面位置と、最大半画角(ωmax)の光束に対する光軸Xp上での実像面位置との差が小さいほど結像性能としては好ましく、また物体面12と最大画角2ωmaxの主光線との交点P1を通り光軸Xpに垂直な仮想平面24の近軸結像位置26,27のいずれか一方と、物体面12と最大半画角ωmaxの主光線との交点P2を通り光軸Xpに垂直な仮想平面25の近軸結像位置26,27のいずれか他方との差が小さいほど結像性能として好ましい。特に、撮像光学系20の最大画角(2ωmax)が120°以上であるときには、以下の[数1]を満たすように設計される。
【0021】
【数1】
[数1]式中のΔZr、ΔZpは、撮像光学系20の最大画角を2ωmax、最大半画角をωmaxとしたとき、以下を表す。
ΔZr:2ωmaxの光束に対する実像面位置と、ωmaxの光束に対する実像面位置との差
ΔZp:被写体12と2ωmaxの主光線との交点P1を通り、光軸XPに垂直な平面を仮想物体面24としたときの近軸像面位置と、被写体12とωmaxの主光線との交点P2を通り、光軸XPに垂直な平面を仮想物体面25としたときの近軸像面位置との差
【0022】
撮像光学系20が[数1]式を満たすことにより、像面湾曲が十分に補正されるとともに、凹状半球面の中心部分と周辺部分とを含む物体面12の全体が撮像光学系20の被写界深度内となる。したがって、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像を撮像することができるから、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0023】
ΔZr/ΔZpが−0.5よりも小さくなると、撮像光学系20の像面湾曲の影響により、2ωmaxの光束による実像面位置がωmaxの光束による実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまう。一方、ΔZr/ΔZpが0.5よりも大きくなると、物体面12が凹状の曲面形状である影響により、2ωmaxの光束による実像面位置が、ωmaxの光束による実像面位置よりも物体面と反対側に大きくずれてしまう。いずれの場合も、2ωmaxの光束による実像面と、ωmaxの光束による実像面とが光軸Xp方向に大きくずれてしまうため、その双方を光軸Xpに垂直な撮像平面上に良好に結像させることができなくなるから、最大画角(2ωmax)が120°以上の撮像光学系20では、ABS(ΔZr/ΔZp)≦0.5の条件を満たすようにするのがよい。なお、ABSは( )内の値の絶対値を表す。
【0024】
撮像光学系20の最大画角(2ωmax)をさらに広げ、これを135°以上にする場合には、ABS(ΔZr/ΔZp)の値を緩和することが可能となり、次の数式[数2]を満たす範囲内で設計することもできる。
【0025】
【数2】
なお、上式におけるΔZr,ΔZpが表す意味は、前掲の[数1]と共通である。そして、ΔZr/ΔZpが下限値−5.0よりも小さくなった場合、あるいはΔZr/ΔZpが上限値5.0よりも大きくなった場合には、[数1]におけるΔZr/ΔZpが下限値−0.5よりも小さくなった場合、ΔZr/ΔZpが上限値よりも大きくなった場合とそれぞれ共通の傾向を示すから、最大画角(2ωmax)が135°以上の撮像光学系20では、ABS(ΔZr/ΔZp)≦5.0の条件を満たすようにするのがよい。
【0026】
また、撮像光学系20は、最大画角(2ωmax)が120°以上あるいは135°以上のいずれの場合であっても、画角ωのときの像高をY(ω)としたとき、以下の[数3]式を満たすように設計されている。なお、画角45°以下の条件下で、[数3]を満たすようにしてもよい。
【数3】
【0027】
[数3]の「Y(ω+Δω)−Y(ω)」は、画角をωからΔωだけ微小変化させた画角ω+Δωのときの像高Y(ω+Δω)と、画角ωのときの像高Y(ω)との差分を示している。また、[数3]の「Y(Δω)」は、画角を0°からΔωだけ微小変化させた画角Δωのときの像高Y(Δω)と、画角0°のときの像高Y(0)との差分Y(0+Δω)−Y(0)を示しており、Y(0)=0であることからY(0+Δω)−Y(0)=Y(Δω)となる。したがって、[数3]の「(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)」は、画像の中心部分に対して画像の周辺部分にどの程度の歪曲(ディストーション)を生じさせるか表す。
【0028】
ここで、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)を歪曲指数Qとし、Qの値が「1.0」、「0.7」、「0.5」、「0.3」となるように撮像光学系20を設計した場合に、それぞれの撮像光学系で得られた画像に現れる歪曲の度合を評価する。評価に際しては、図5(A)に示すように、半径が「r」、「2r」、「3r」、「4r」、「5r」の複数の円(同心円)30a〜30eを、その中心が光軸Xpに一致するように物体面12に設定し、これらの同心円をそれぞれの撮像光学系20を通して撮像する。そして、撮像で得られた画像の周辺部分における同心円相互の間隔がどのように変化しているかに基づいて画像の周辺部分の歪曲の程度を評価する。
【0029】
図5(B)は、Q=1.0となるように設計した撮像光学系20で撮像したときの画像を示している。この画像が示すように、被写体12に設けた複数の円30a〜30eの間隔と同様、画像上における各円の間隔は距離rである。このように、画像の中心部分における円の間隔と、画像の周辺部分における円の間隔とが同じであるということは、画像の周辺部分にディストーションが生じていないことを表している。したがって、このような撮像光学系20を組み込んだカプセル型内視鏡10で被検者の体内を撮像すれば、画像の周辺部分に写し出される画像にもほとんど歪曲が現れることがなく、病変部の視認が容易になる。
【0030】
図5(C)の画像は、Q=0.7となるように設計した撮像光学系20で撮像したときの画像を示している。この画像が示すように、画像の中心部分の円の間隔はrよりもわずかに大きく、また画像の周辺部分における円の間隔はrよりもわずかに小さくなっている。ただし、その差はわずかであるため画像としては中心部分と周辺部分とで大きな歪みとして観察されることはなく、この撮像光学系20を用いた場合でも画像診断の上では実用的には満足できる範囲内のものと言うことができる。
【0031】
図5(D)の画像は、Q=0.5で設計した撮像光学系20で撮像したときの画像を示している。この画像からは、円の間隔が中心部分では広く、周辺部分では狭いことが容易に観察できる。この傾向は広画角の撮像光学系がもつ一般的な特徴であるが、この程度まで歪曲が現れると医療診断用の画像としては適切でなく、特に画像の周辺部分では病変部があっても見落とされる可能性も高まる。さらに、Q=0.3の撮像光学系で撮像した画像を図5(E)に示す。この画像では、画像の中心部分での円の間隔が広く、周辺部分では狭くなっていることが顕著に観察され、医療診断には適していないことが明らかで実用にはならない。
【0032】
以上から、最大画角(2ωmax)が120°以上、135°以上のいずれであっても、歪曲指数Qの値、すなわち(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値が0.7を越えるように撮像光学系を設計すれば、画像の周辺部分におけるディストーションを実用上問題にならない程度まで抑えられることがわかる。このようにディストーションを抑えておけば、画像の周辺部分であっても病変部の見落としを確実に防ぐことができ、画像診断の信頼性を高めることが可能となる。なお、歪曲指数Qの値としては、0.7より大きく1.3よりも小さいことが望ましく、0.8<Q<1.2の範囲にすることがより好ましい。
【0033】
また、撮像光学系20を第1〜第5レンズの5枚で構成しておくことにより、中心部分と周辺部分を含む物体面12の全体が撮像光学系20の被写界深度内に収められる。したがって、中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が得られ、また画像の周辺部分におけるディストーションもほとんど問題にならない。なお、このような撮像光学系20は、必ずしも5枚構成に限られず、第1〜第4レンズの4枚で構成した場合でもほぼ同様の効果を得ることが可能である。さらに本発明の撮像光学系は、体腔内に飲み込まれた後に、外部からの制御信号に応じて体腔内の位置や撮影の姿勢を制御できるようにしたカプセル型内視鏡用の撮像光学系にも用いることができる。
【実施例】
【0034】
カプセル型内視鏡に搭載した撮像光学系について、以下の実施例1〜15及び比較例1〜6において具体的な数値を示すことによって、本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
[実施例1]
図6に示すように、実施例1の撮像光学系20は5枚の第1〜第5レンズL1〜L5と開口絞りS6とを備え、カプセル13内において、凹状半球面の物体面12側から、第1レンズL1、開口絞りS6、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5の順に配置されている。第3レンズL3と第4レンズL4とは貼り合わせレンズとなっている。
【0036】
物体面をS1とし、透明カバー23も含めた上で像面側に向かって面番号Siを付して撮像光学系20の各面を表すと、透明カバー23の表面がS2、その裏面がS3となる。以後、第1レンズL1〜第5レンズL5の表裏面、カバーガラス21の裏面S15まで順に面番号Siを割り当てる。なお、第3レンズL3の裏面と第4レンズL4の表面とは接合面S10で共通となり、カバーガラス21の裏面S15は撮像素子14の撮像面と一致する。また、撮像光学系20の光軸方向に対する面Siと面Si+1との間隔(面間隔)は、Diとして表され、面S1と面S2との面間隔はD1、面S2と面S3との面間隔はD2、そして面S14と面S15との面間隔D14まで同様に表される。
【0037】
撮像光学系20は、以下の表1に示すレンズデータに基づいて設計される。
【0038】
【表1】
表1において、「OBJ」は凹状半球面の物体面12を、「絞り」は開口絞りS6を、「IMG」は撮像素子14の撮像面を、「曲率半径」は各面Siの曲率半径(mm)を、「面間隔」は各面間隔Di(mm)を、「Nd」はd線(波長587.6nm)に対する屈折率を、「νd」はアッベ数を、「f」は撮像光学系20全体としての焦点距離を、「Fno」は撮像光学系20のF値Fを、「2ωmax」は最大画角を表している。
【0039】
また、表1の面番号欄に*で示すように、第1レンズの両面S4,S5、第2レンズの両面S7,S8、第5レンズの両面S12,S13は非球面となっている。これら非球面形状は、曲率(近軸曲率半径Rの逆数)c、円錐定数K、光軸からの距離ρ(ρ2=x2+y2)、i次の非球面次数を用いて、以下の[数4]の式で数値的に表される。面S4、S5、S7、S8、S12、S13の円錐定数K及び非球面定数Aiを表2に示す。なお、後述する実施例2〜15においても、レンズデータの表記や、非球面の形状を決める[数4]の式は共通に用いられる。
【0040】
【数4】
【0041】
【表2】
【0042】
図7は、この撮像光学系20により、透明カバー23及び撮像素子前面のカバーガラス21を通して物体面12を撮像面に結像させたときの球面収差、非点収差、倍率色収差を示している。球面収差はd線(波長587.6nm)のものを実線で、F線(波長486.13nm)のものを第1破線で、C線(波長656.27nm)のものを、各線の長さが第1破線よりも大きい第2破線で示している。また、非点収差はサジタル方向のものを実線で、タンジェンシャル方向のものを第1破線で示している。また、倍率色収差は、F線のものを第1破線で、C線のものを、各線の長さが第1破線よりも大きい第2破線で示している。なお、透明カバー23及びカバーガラス21を通して物体面12を撮像面に結像させること、そのときの球面収差、非点収差、倍率色収差を同様に表記することは、後述する実施例2〜15においても共通である。
【0043】
実施例1の撮像光学系20では、ΔZrは−0.001であり、ΔZpは0.020でる。したがって、最大画角2ωmaxが120°であるこの撮像光学系20は、ΔZr/ΔZpが[数2]はもとより[数1]の範囲内でもあるから、像面湾曲が十分に補正されるとともに、中心部分と周辺部分とを含む物体面12の全体が撮像光学系20の被写界深度内に収められる。これにより、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0044】
図8に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、半画角ωの全範囲で0.7よりも大きくなっている。したがって、この撮像光学系20は[数3]式を満たし、画像の周辺部分におけるディストーションを抑えることができる。したがって、画像の周辺部分に病変部が写し出されたとしても、病変部は見落としする程歪曲しないため、病変部を確実に発見することができる。
【0045】
[実施例2]
図9に示すように、実施例2の撮像光学系30は4枚の第1〜第4レンズL1〜L4と開口絞りS8とを備え、カプセル13内において、凹状半球面の物体面12側から、第1レンズL1、第2レンズL2、開口絞りS8、第3レンズL3、第4レンズL4の順に配置されている。この撮像光学系30は、以下の[表3]に示すレンズデータとなっている。
【0046】
【表3】
表3の面番号欄に*で示すように、第1レンズの両面S4,S5、第2レンズの両面S6,S7、第3レンズの両面S9,S10、第4レンズの両面S11,S12は非球面となっている。これら面S4,S5,S6,S7,S9,S10,S11,S12の円錐定数K及び非球面定数Aiを表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
図10に撮像光学系の球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。実施例2の撮像光学系30の最大画角は130°であり、ΔZrは−0.005であり、ΔZpは0.028である。したがって、ΔZr/ΔZpは−0.167で、[数2]はもとより[数1]の範囲内に収まっている。そのため、像面湾曲が十分に補正されるとともに、中心部分と周辺部分とを含む物体面12の全体が撮像光学系30の被写界深度内に収められる。これにより、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0049】
図11に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、半画角ωの全範囲で0.7よりも大きくなっている。したがって、撮像光学系30は[数3]式の範囲内であり、画像の周辺部分におけるディストーションを抑えることができる。したがって、画像の周辺部分に病変部が写し出されたとしても、病変部は見落としする程歪曲しないため、病変部を確実に発見することができる。
【0050】
[実施例3]
図12に示すように、実施例3の撮像光学系40は5枚の第1〜第5レンズL1〜L5と開口絞りS6とを備え、カプセル13内において、凹状半球面の被写体12側から、第1レンズL1、開口絞りS6、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5の順に配置されている。この撮像光学系40のレンズデータは次の表5のとおりである。
【0051】
【表5】
表5の面番号欄に*で示すように、第1レンズL1の両面S4,S5、第5レンズL5の両面S13,S14は非球面となっている。これら面S4,S5,S13,S14の円錐定数K及び非球面定数Aiを表6に示す。
【0052】
【表6】
【0053】
図13は、同様にして撮像光学系40の球面収差、非点収差、倍率色収差を示すもので、ΔZrは0.003、ΔZpは0.036である。したがって、最大画角2ωmaxが130°のこの撮像光学系40のΔZr/ΔZpの値は0.081となり、[数2]の範囲はもとより[数1]の範囲内でもある。そのため、像面湾曲が十分に補正されるとともに、被写体12の中心部分と周辺部分とを含む被写体12の全体が撮像レンズ40の被写界深度内に収められる。また、図14に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、半画角ωの領域のうちのほとんどで0.7よりも大きく、ディストーションを抑えることができるから、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。
【0054】
[実施例4]
実施例4の撮像光学系50は図15に示すとおりで、物体面12から順に、第1レンズL1、第2レンズL2、開口絞りS8、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5と配置され、第3レンズL3と第4レンズL4とは貼り合わせレンズとなっている。これまでの実施例と同様に、表7にレンズデータ、表8に面番号欄に*が付されたそれぞれの非球面のデータを示す。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
この撮像光学系50の最大画角は125°で、その球面収差、非点収差、倍率色収差を図16に示す。ΔZrは−0.005、ΔZpは0.018で、ΔZr/ΔZpは−0.279となるから、[数2]の範囲を満たすだけでなく[数1]の範囲をも満たしている。そのため、像面湾曲が十分に補正されるとともに、被写体12の中心部分と周辺部分とを含む被写体12の全体が撮像レンズ50の被写界深度内に収められる。これにより、画像の中心部分及び周辺部分ともにピントが合った鮮明な画像が写し出され、画像の周辺部分に病変部があったとしても、病変部を確実に発見することができる。また図17に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きくなっている。したがって、撮像レンズ50は[数3]式の範囲内であり、画像の周辺部分におけるディストーションも良好に抑えられるようになる。
【0058】
[実施例5]
実施例5の撮像光学系60の構成を図18に示す。上記実施例と同様に、表9にレンズデータ、表10に面番号S4,S5,S11,S12で用いられている非球面のデータ、図19に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
実施例5の撮像光学系60は最大画角が170°であり、ΔZrが−0.018、ΔZpが0.202である。そして、ΔZr/ΔZpは−0.088となるから[数2]はもとより[数1]の範囲内でもある。また、図20に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系60においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0062】
[実施例6]
実施例6の撮像光学系70の構成を図21に示す。上記実施例と同様に、表11にレンズデータ、表12に非球面のデータ、図22に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0063】
【表11】
【0064】
【表12】
【0065】
最大画角170°のこの撮像光学系70では、ΔZrが−0.015、ΔZpが0.186であり、ΔZr/ΔZpは−0.080となるから[数2]はもとより[数1]も満たしている。また、図23に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系70においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0066】
[実施例7]
実施例7の撮像光学系80の構成を図24に示す。上記実施例と同様に、表13にレンズデータ、表14に非球面のデータ、図25に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0067】
【表13】
【0068】
【表14】
【0069】
最大画角150°のこの撮像光学系80では、ΔZrが0.010、ΔZpが0.075であり、ΔZr/ΔZpは0.128となるから[数1],[数2]の範囲内である。また、図26に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0070】
[実施例8]
実施例8の撮像光学系90の構成を図27に示す。上記実施例と同様に、表15にレンズデータ、表16に非球面のデータ、図28に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0071】
【表15】
【0072】
【表16】
【0073】
この撮像光学系90は最大画角が170°で、ΔZrが−0.031、ΔZpが0.133である。ΔZr/ΔZpは−0.235となるから[数2]および[数1]の範囲内である。また、図29に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0074】
[実施例9]
実施例9の撮像光学系100の構成を図30に示す。上記実施例と同様に、表17にレンズデータ、表18に非球面のデータ、図31に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0075】
【表17】
【0076】
【表18】
【0077】
この撮像光学系90は最大画角が170°で、ΔZrが0.036、ΔZpが0.168であり、ΔZr/ΔZpは0.215となるから[数2]はもとより[数1]の範囲内でもある。また、図32に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、周辺部分も大きく歪ませることなく良好な結像が得られる。
【0078】
[実施例10]
実施例10の撮像光学系110の構成を図33に示す。上記実施例と同様に、表19にレンズデータ、表20に非球面のデータ、図34に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。
【0079】
【表19】
【0080】
【表20】
【0081】
この撮像光学系110は最大画角が155°で、ΔZrが−0.020、ΔZpが0.069である。そして、ΔZr/ΔZpは−0.295となるから[数2]はもとより[数1]の範囲内でもある。また、図35に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、中心部分及び周辺部分を含め、物体面12の像を良好に被写界深度内に収めることができ、ディストーションについても抑えることができ、良好な結像性能が得られる。
【0082】
[実施例11]
実施例11の撮像光学系120の構成を図36に示す。上記実施例と同様に、表21にレンズデータ、表22に非球面のデータ、図37に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図38に示す。
【0083】
【表21】
【0084】
【表22】
【0085】
この最大画角160°のこの撮像光学系120では、ΔZrが0.117、ΔZpが0.119であり、ΔZr/ΔZpは0.981となって[数1]の範囲外になる。しかし、撮像光学系120の最大画角(2ωmax)は135°以上であるから、[数2]の範囲内であれば物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図38に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きい。したがって、この撮像光学系80においても[数3]の条件が満たされ、ディストーションについても問題ない程度まで抑えることが可能となる。
【0086】
[実施例12]
実施例12の撮像光学系130の構成を図39に示す。上記実施例と同様に、表23にレンズデータ、表24に非球面のデータ、図40に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図41に示す。
【0087】
【表23】
【0088】
【表24】
【0089】
この撮像光学系130の最大画角は150°で、ΔZrが0.078、ΔZpが0.069であり、ΔZr/ΔZpは1.120となる。撮像光学系130の最大画角は135°以上であるから、[数2]を満たしていれば充分である。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図41に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく、[数3]の条件を満たしているから、ディストーションについても問題ない程度まで抑えることができる。
【0090】
[実施例13]
実施例13の撮像光学系140の構成を図42に示す。上記実施例と同様に、表25にレンズデータ、表26に非球面のデータ、図43に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図44に示す。
【0091】
【表25】
【0092】
【表26】
【0093】
この撮像光学系140では、ΔZrが−0.036、ΔZpが0.034であり、ΔZr/ΔZpは−1.048となる。撮像光学系140の最大画角(2ωmax)は140°であるから、[数2]を満たしていればよい。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図44に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく[数3]の条件を満たしているから、周辺部分に生じやすいディストーションを問題ない程度まで抑えることができる。
【0094】
[実施例14]
実施例14の撮像光学系150の構成を図45に示す。上記実施例と同様に、表27にレンズデータ、表28に非球面のデータ、図46に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図47に示す。
【0095】
【表27】
【0096】
【表28】
【0097】
この撮像光学系150では、ΔZrが−0.034、ΔZpが0.060であり、ΔZr/ΔZpは−0.566となる。撮像光学系150の最大画角(2ωmax)は150°であるから、[数2]を満たしていれば充分である。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図47に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく[数3]の条件を満たしているから、周辺部分に生じやすいディストーションを問題ない程度まで抑えることができる。
【0098】
[実施例15]
実施例15の撮像光学系160の構成を図48に示す。上記実施例と同様に、表29にレンズデータ、表30に非球面のデータ、図49に球面収差、非点収差、倍率色収差を示す。また、同様に(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)の値に基づくディストーションの程度を表すグラフを図50に示す。
【0099】
【表29】
【0100】
【表30】
【0101】
この撮像光学系160では、ΔZrが−0.018、ΔZpが0.202であり、ΔZr/ΔZpは−0.088となる。撮像光学系160の最大画角(2ωmax)は170°であるが、[数1]及び[数2]のいずれをも満たしている。したがって、物体面12の画像を中央部分,周辺部分とも被写界深度内に収めることができる。また、図50に示すように、(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)は、0.7よりも大きく[数3]の条件を満たしているから、周辺部分に生じやすいディストーションを問題ない程度まで抑えることができる。
【0102】
[比較例1]
特許文献2の「添付光学系データ1」に示される撮像光学系で、光学的なパワーを持たない透明カバーを通して、撮像レンズの入射瞳位置を中心とした球面状の物体面を撮像すると、ΔZrは−0.109となり、ΔZpは0.016となる。したがって、この撮像光学系では最大画角が120°未満であるにもかかわらず、ΔZr/ΔZpは−6.683となって[数1]の範囲外となる。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまい、撮像により得られる画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0103】
[比較例2]
同様に、特許文献2の「添付光学系データ2」に示される撮像光学系で、光学的なパワーを持たない透明カバーを通して、撮像レンズの入射瞳位置を中心とした球面状の物体面を撮像すると、ΔZrは−0.010、ΔZpは0.017となる。したがって、最大画角が120°未満であるのにΔZr/ΔZpは−0.594となって、やはり[数1]の範囲外となる。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまい、撮像により得られる画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0104】
[比較例3]
同様に、特許文献2の「添付光学系データ3」に示される撮像光学系で、光学的なパワーを持たない透明カバーを通して、撮像レンズの入射瞳位置を中心とした球面状の物体面を撮像すると、ΔZrは−0.158、ΔZpは0.015となる。したがって、最大画角が120°未満であるのにΔZr/ΔZpは−10.849となって[数1]の範囲外である。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまい、撮像により得られる画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0105】
[比較例4]
同様にして特許文献2の「添付光学系データ4」に示される撮像光学系を用いた場合でも、ΔZrは−0.024、ΔZpは0.035であり、ΔZr/ΔZpは−0.687となる。最大画角が120°未満であっても[数1]の範囲外になり、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれてしまう。この結果、画像の一部が被写界深度外となって良好な結像を得ることができない。
【0106】
[比較例5]
特許文献3の「添付光学系データ1」に示される撮像光学系を同様にして用いた場合には、ΔZrは−0.021、ΔZpは0.031となるから、ΔZr/ΔZpは−0.691となる。やはり最大画角120°未満であるにもかかわらず[数1]の範囲外となり、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれ、良好な結像性能を得ることはできない。
【0107】
[比較例6]
特許文献3の「添付光学系データ2」に示される撮像光学系を用いた場合も同様で、ΔZrは−0.024、ΔZpは0.036となるから、最大画角が120°未満であるにもかかわらずΔZr/ΔZpは−0.666となって[数1]の範囲外である。そのため、2ωmaxの光束に対する実像面位置が、ωmaxの光束に対する実像面位置よりも物体側に大きくずれ、良好な結像性能を得ることはできない。
【符号の説明】
【0108】
10 カプセル型内視鏡
20 撮像レンズ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に飲み込まれるカプセルの内部に収容され、前記カプセルの一部を構成する球面状の透明カバーを通して体腔内部の撮像に用いるカプセル型内視鏡用撮像光学系において、
凹状の曲面形状の物体面に正対させて撮像したとき、
−5.0≦ΔZr/ΔZp≦5.0
を満たすことを特徴とするカプセル型内視鏡用撮像光学系。
ただし、前記ΔZrは最大画角2ωmaxの光束に対する実像面位置と半画角ωmaxの光束に対する実像面位置との差を表し、前記ΔZpは前記物体面と2ωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置と、前記物体面とωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置との差を表す。
【請求項2】
最大画角2ωmaxが135°以上であることを特徴とする請求項1記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項3】
最大画角2ωmaxが120°以上であり、かつ−0.5≦ΔZr/ΔZp≦0.5であることを特徴とする請求項1記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項4】
任意の画角ωに対する像高をY(ω)、任意の画角ωの微小変化量をΔωとするとき、
0.7<(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)
を満たすことを特徴とする請求項2または3記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項5】
前記物体面に最も近い位置に物体面に凸面を向けた負レンズ、像面側に最も近い位置に正レンズを有し、前記負レンズの少なくとも像面側の面と、前記正レンズのいずれか一方の面とが非球面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項6】
前記負レンズよりも像面側に、複数のレンズで構成され全体として正の正レンズ群を有し、前記正レンズ群の中で、最も物体面側に位置するレンズと最も像面側に位置するレンズとが正レンズであることを特徴とする請求項5記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項1】
体内に飲み込まれるカプセルの内部に収容され、前記カプセルの一部を構成する球面状の透明カバーを通して体腔内部の撮像に用いるカプセル型内視鏡用撮像光学系において、
凹状の曲面形状の物体面に正対させて撮像したとき、
−5.0≦ΔZr/ΔZp≦5.0
を満たすことを特徴とするカプセル型内視鏡用撮像光学系。
ただし、前記ΔZrは最大画角2ωmaxの光束に対する実像面位置と半画角ωmaxの光束に対する実像面位置との差を表し、前記ΔZpは前記物体面と2ωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置と、前記物体面とωmaxの主光線との交点を通り光軸に垂直な平面を仮想物体面としたときの近軸結像位置との差を表す。
【請求項2】
最大画角2ωmaxが135°以上であることを特徴とする請求項1記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項3】
最大画角2ωmaxが120°以上であり、かつ−0.5≦ΔZr/ΔZp≦0.5であることを特徴とする請求項1記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項4】
任意の画角ωに対する像高をY(ω)、任意の画角ωの微小変化量をΔωとするとき、
0.7<(Y(ω+Δω)−Y(ω))/Y(Δω)
を満たすことを特徴とする請求項2または3記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項5】
前記物体面に最も近い位置に物体面に凸面を向けた負レンズ、像面側に最も近い位置に正レンズを有し、前記負レンズの少なくとも像面側の面と、前記正レンズのいずれか一方の面とが非球面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【請求項6】
前記負レンズよりも像面側に、複数のレンズで構成され全体として正の正レンズ群を有し、前記正レンズ群の中で、最も物体面側に位置するレンズと最も像面側に位置するレンズとが正レンズであることを特徴とする請求項5記載のカプセル型内視鏡用撮像光学系。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【公開番号】特開2010−246906(P2010−246906A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68737(P2010−68737)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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