説明

カメラの電池電圧判定装置

【課題】ユーザによる電圧判定閾値の設定をしなくとも電池の種類にかかわらず電池残量を正しく判定することができるカメラの電池電圧判定装置を提供する。
【解決手段】電池の出力電圧を検出するための電圧検出回路によって検出された出力電圧値と第1の閾値とを比較し、電池残量をマイコン2で判定する。マイコン2で判定された判定結果に基づいて表示部15に満残量又は半残量の電池残量を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はカメラの電池電圧判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池電圧を分圧した電圧を検出回路で検出し、この検出された電圧を所定の閾値と比較して電池残量を判定していた。しかし、例えば単三型電池にはアルカリ電池、リチウム電池、ニッケル水素電池、ニッケルマンガン電池、ニッケル電池等があり、これらの電池の開放電圧や内部抵抗はそれぞれ異なるため、電池残量を精度よく判定することは難しいという問題があった。この問題を解決する従来技術として、電池の種類毎にユーザが電圧判定閾値を設定できるようにしたカメラが知られている(下記特許文献参照)。
【特許文献1】特開2005−24452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ユーザの設定ミスや設定し忘れが起こるおそれがある。
【0004】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はユーザによる電圧判定閾値の設定をしなくとも電池の種類にかかわらず電池残量を正しく判定することができるカメラの電池電圧判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、電池の出力電圧を検出するための電池電圧検出手段と、前記電池の残量を表示する表示手段と、前記電池電圧検出手段によって検出された出力電圧値と第1の閾値とを比較し、前記電池残量を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて前記表示手段に前記電池残量を表示させる制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のカメラの電池電圧判定装置において、起動時の前記電池の出力電圧が前記第1の閾値より小さい第2の閾値以上の場合、前記制御手段は前記表示手段に満残量を表示させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載のカメラの電池電圧判定装置において、レリーズ動作前のダミー抵抗起動中の電池の出力電圧が前記第2の閾値より小さい場合、前記制御手段は前記レリーズ動作を中断させることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のカメラの電池電圧判定装置において、前記レリーズ動作が連続的に行われている場合、前記ダミー抵抗起動中の前記電池の出力電圧が前記第2の閾値より小さい第3の閾値未満のとき、前記制御手段は次のレリーズ動作を中断させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ユーザによる電圧判定閾値の設定をしなくとも電池の種類にかかわらず電池残量を正しく判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1はこの発明の第1実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の回路図である。
【0012】
このカメラの電池電圧判定装置は、電池1と、マイコン2と、定電圧回路3と、電源スイッチ4と、トランジスタ5,6と、抵抗7,8,9,10と、駆動回路11,12と、マグネット13と、モータ14と、表示部(表示手段)15と、レリーズスイッチ16とを備えている。
【0013】
電池1としてはアルカリ電池、リチウム電池、ニッケル水素電池等の電池を用いることができる。
駆動回路11,12はそれぞれマグネット13とモータ14とを駆動するための回路である。これらを駆動することによってカメラの所定の動作が行なわれる。マグネット13はシャッタ(図示せず)の開閉等に用いられ、モータ14はミラーのアップ・ダウン駆動に用いられる。
【0014】
表示部は例えば液晶モニタである。
【0015】
マイコン2は例えば1チップマイクロコンピュータであり、定電圧回路3を介して定電圧が印加されている。マイコン2は端子P1〜P9を有している。
【0016】
カメラの電源スイッチ4がオンになると、マイコン2の端子P1の電圧がHからLに変化する。なお、Hは電池1の出力電圧に相当し、電池1の種類や使用状態によって変化する。また、Lはグランドレベルに相当し、電圧値が約0Vであることを表す。
【0017】
端子P1の電圧がHからLに変化すると、マイコンP2の端子2からLレベルの制御信号が出力され、トランジスタ(pnpトランジスタ)5がオンになる。電池1の分圧電圧がマイコン2の端子P3に入力し、分圧電圧に基づいてマイコン2は電池1の電圧レベルを判定する。分圧電圧はトランジスタ5、抵抗7,8で構成される電圧検出回路(電池電圧検出手段)で検出される。なお、抵抗7,8は電池1の無駄な電流消費をさけるため、抵抗値の大きなものが使用される。
【0018】
次に、マイコン2の端子P4から所定時間(例えば1ms)だけHレベルのパルス信号をトランジスタ(npnトランジスタ)6へ供給し、トランジスタ6をオンにして抵抗10に電流を流す。マイコン2の端子P3に入力する電源1の分圧電圧に基づいてマイコン2は電池1の電圧レベルを判定する。
【0019】
端子P4からパルス信号が供給される前後の電池1の電圧レベルの判定結果に基づいてマイコン2は端子P5,P6から制御信号を出力し、表示部15に電池残量を表示させる。
【0020】
レリーズスイッチ16がオンになると、マイコン2の端子P7にはLレベルの信号が入力する。マイコン2は端子P8,P9からそれぞれ制御信号を駆動回路12,11へ出力し、モータ14及びマグネット13を駆動させる。
【0021】
図2はこの発明の第1実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の動作を説明するフローチャートである。
【0022】
まず、カメラの電源スイッチをオンにする(S11)。
【0023】
次に、端子P2からLレベルの制御信号を出力し、電圧検出回路を駆動して電池1の分圧電圧を端子P3へ入力させる(S12)。
【0024】
その後、電池電圧が4V(第2の閾値)以上であるか否かを判断する(S13)。
【0025】
電池電圧が4V未満であるとき(NO)、ステップS15へ移行する。
【0026】
電池電圧が4V以上であるとき(YES)、電池が満杯状態(満残量)であることを表示部15に表示させる(S14)。
【0027】
次に、端子P2からLレベルの制御信号を出力させ、電圧検出回路を駆動して電池1の分圧電圧を端子P3へ入力させる(S15)。
【0028】
その後、電池電圧が5V(第1の閾値)以上であるか否かを判断する(S16)。
【0029】
電池電圧が5V未満であるとき(NO)、電池の残量が半分(半残量)であることを表示部15に表示させ(S17)、ステップS19へ移行する。
【0030】
電池電圧が5V以上であるとき(YES)、電池が満杯状態(満残量)であることを表示部15に表示させる(S18)。
【0031】
次に、サンプリング周期50msで電圧検出回路で電圧を検出する(S19)。
【0032】
その後、ステップ15に戻り、ステップ15からステップ19までの動作を所定時間繰り返す。
【0033】
この実施形態によれば、マイコン2が電池電圧を検出して電池の残量を判断するので、ユーザによる電圧判定閾値の設定をしなくとも電池の種類にかかわらず電池残量を正しく判定することができる。その結果、ユーザによる設定ミスや設定の変更し忘れが起こるおそれを防止することができる。
【0034】
また、カメラの電源がオンした直後は、各装置の起動処理等により負荷が大きくかかり一時的に電池電圧が低下することがある。そのため、上述の実施形態では起動直後は電池電圧のチェックを通常のチェック電圧(5V)より低いチェック電圧(4V)で行っている。これにより、カメラの電源をオンした直後に、一時的な電圧降下により電池残量が誤表示されることを防止している。
【0035】
図3はこの発明の第2実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の動作を説明するフローチャートである。
【0036】
まず、カメラの電源スイッチをオンにする(S21)。
【0037】
次に、端子P2からLレベルの制御信号を出力し、電圧検出回路を駆動して電池1の分圧電圧を端子P3へ入力させる(S22)。
【0038】
その後、電池電圧が5V以上であるか否かを判断する(S23)。
【0039】
電池電圧が5V未満であるとき(NO)、電池の残量が半分(半残量)であることを表示部15に表示させ(S24)、ステップS26へ移行する。
【0040】
電池電圧が5V以上であるとき(YES)、電池が満杯状態(満残量)であることを表示部15に表示させる(S25)。
【0041】
次に、サンプリング周期50msで電圧検出回路で電圧を検出する(S26)。
【0042】
その後、ステップ23に戻り、ステップ23からステップ26までの動作を所定時間繰り返す。
【0043】
次に、以下の割り込み処理を行う(S27)。
【0044】
レリーズスイッチ16をオンにし、マイコン2の端子P7にLレベルの信号を入力させる(S28)。
【0045】
次に、マイコン2の端子P4から所定時間(例えば1ms)だけHレベルのパルス信号をトランジスタ6へ供給し、トランジスタ6をオンにして抵抗10に電流を流す(S29)。このようにすれば、レリーズ動作によって撮像素子(図示せず)に負荷を加えるときと同様の負荷を電池1に加えることができる。
【0046】
その後、電池電圧が4V(第2の閾値)以上であるか否かを判断する(S30)。
【0047】
電池電圧が4V以上であるとき(YES)、端子P8からHレベルの制御信号を駆動回路12へ出力し、駆動回路12をオンの状態にする(S31)。
【0048】
その結果、モータ14が駆動し、レリーズ動作が行われる(S32)。
【0049】
電池電圧が5V未満であるとき(NO)、端子P8からLレベルの制御信号を駆動回路12へ出力し、駆動回路12をオフの状態にする(S33)。
【0050】
その結果、モータ14が停止し、レリーズ動作が中断する(S34)。
【0051】
この実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、レリーズスイッチ16がオンになると駆動回路12を動作させる前にダミー負荷(抵抗10)で得られた電池電圧に基づいてレリーズ動作を中断させることができるので、レリーズ動作中の急激な電圧降下によって生じる駆動回路12が正常に動作しなくなったり、良好な撮影画像を得られなくなったりするのを防止することができる。
【0052】
図4はこの発明の第3実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の動作を説明するフローチャートである。
【0053】
図4では割り込み処理以前の処理は第2実施形態と同様であるのでその図示は省略されている。
【0054】
レリーズスイッチ16をオンにし、マイコン2の端子P7にLレベルの信号を入力させる(S41)。
【0055】
次に、マイコン2の端子P4から所定時間(例えば1ms)だけHレベルのパルス信号をトランジスタ6へ供給し、トランジスタ6をオンにして抵抗10に電流を流す(S42)。
【0056】
その後、電池電圧が4V以上であるか否かを判断する(S43)。
【0057】
電池電圧が4V以上であるとき(YES)、端子P8からHレベルの制御信号を駆動回路12へ出力し、駆動回路12をオンの状態にする(S44)。
【0058】
その結果、モータ14が駆動し、レリーズ動作が行われる(S45)。
電池電圧が4V未満であるとき(NO)、端子P8からLレベルの制御信号を駆動回路12へ出力し、駆動回路12をオフの状態にする(S46)。
【0059】
その結果、モータ14が停止し、レリーズ動作が中断する(S47)。
ステップ44の後、連写モードであるか否かを判断する(S48)。
連写モードでないとき(NO)、レリーズスイッチ16を0.5秒間隔でオンにするか否かを判断する(S51)。
【0060】
レリーズスイッチ16を0.5秒間隔でオンにするとき(YES)、又は連写モードであるとき(YES)、端子P4から所定時間(例えば1ms)だけHレベルのパルス信号をトランジスタ6へ供給し、トランジスタ6をオンにして抵抗10に電流を流す(S49)。
【0061】
レリーズスイッチ16を0.5秒間隔でオンにしないとき(NO)、ステップ42に戻る。
ステップ49の後、電池電圧が3V(第3の閾値)以上であるか否かを判断する(S50)。
【0062】
電池電圧が3V以上であるとき(YES)、ステップ44に戻る。
【0063】
電池電圧が3V未満であるとき(NO)、ステップ46に戻る。
【0064】
この実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、レリーズ動作中のダミー負荷(抵抗10)で得られた電池電圧に基づいて連続的なレリーズ動作を中断させることができるので、レリーズ動作中の急激な電圧降下によって生じる駆動回路12が正常に動作しなくなったり、良好な撮影画像を得られなくなったりするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の回路図である。
【図2】図2はこの発明の第1実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】図3はこの発明の第2実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】図4はこの発明の第3実施形態に係るカメラの電池電圧判定装置の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
2:マイコン(判定手段、制御手段)、5:トランジスタ、7,8,9,10:抵抗、15:表示部(表示手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の出力電圧を検出するための電池電圧検出手段と、
前記電池の残量を表示する表示手段と、
前記電池電圧検出手段によって検出された出力電圧値と第1の閾値とを比較し、前記電池残量を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記表示手段に前記電池残量を表示させる制御手段とを備えていることを特徴とするカメラの電池電圧判定装置。
【請求項2】
起動時の前記電池の出力電圧が前記第1の閾値より小さい第2の閾値以上の場合、前記制御手段は前記表示手段に満残量を表示させることを特徴とする請求項1記載のカメラの電池電圧判定装置。
【請求項3】
レリーズ動作前のダミー抵抗起動中の電池の出力電圧が前記第2の閾値より小さい場合、前記制御手段は前記レリーズ動作を中断させることを特徴とする請求項1記載のカメラの電池電圧判定装置。
【請求項4】
前記レリーズ動作が連続的に行われている場合、前記ダミー抵抗起動中の前記電池の出力電圧が前記第2の閾値より小さい第3の閾値未満のとき、前記制御手段は次のレリーズ動作を中断させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のカメラの電池電圧判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−14908(P2008−14908A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189250(P2006−189250)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】