説明

カメラ

【課題】光学系の設計の自由度を向上させることができ、また、被写体からの光を劣化させることなく良好に被写体を撮影することができるカメラを提供する。
【解決手段】カメラ10は、被写体からの光を入射するレンズ部20と、レンズ部20から入射された光A1の光路上に設けられ、光A1の少なくとも一部を反射させる割合及び透過させる割合を自在に調節することができる調光ミラー部32と、調光ミラー部32を透過した光A3が到達する位置に設けられたAFセンサ60と、調光ミラー部32により反射した光A4が到達する位置に設けられた撮像素子51とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮影するカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカス機能を有した一眼レフカメラにおいて、被写体からの光の光路を切り替えるミラーの一部にハーフミラーを用い、光の一部を透過して、オートフォーカスに利用する技術が知られている。このような技術は、主に、可動式の切り替えミラーに用いられており、反射した光をファインダーへ入射するとともに、透過した光をオートフォーカスセンサに入射してオートフォーカスを行っており、撮影時に、ミラーが可動して撮像素子に被写体からの光を入射させる構成である。
また、特許文献1のように、全面にハーフミラーを用いた固定式の切り替えミラーで、反射した光をファインダー及びオートフォーカスセンサに入射させ、透過した光を撮像素子に入射させるカメラも提案されている。
しかし、このようなカメラに用いられるハーフミラーは、常に被写体からの光を透過しているので、減光などの光の劣化を伴い、被写体の撮影結果に悪影響を与えることがあった。また、オートフォーカスセンサや撮像素子の配置位置が制限されてしまうので設計の自由度が低くなる問題があった。
【特許文献1】特開2006−197406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、光学系の設計の自由度を向上させることができ、また、被写体からの光を劣化させることなく良好に被写体を撮影することができるカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を括弧内に付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、被写体からの光を入射する入射部(20)と、前記入射部(20)から入射された光(A1)の光路上に設けられ、前記光(A1)の少なくとも一部を反射させる割合及び透過させる割合を自在に調節することができる調光ミラー(32)とを備えるカメラ(10)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のカメラ(10)において、前記調光ミラー(32)を透過した前記光(A3)が到達する位置に、光学素子(60)を備えることを特徴とするカメラ(10)である。
請求項3の発明は、請求項2に記載のカメラ(10)において、前記調光ミラー(32)により反射した前記光(A4)が到達する位置に、撮像素子(51)を備えることを特徴とするカメラ(10)である。
請求項4の発明は、請求項3に記載のカメラ(10)において、前記撮像素子(51)と対向する位置に設けられたファインダー(40)と、前記光(A1)を前記ファインダー(40)方向に反射させるように、前記調光ミラー(32)を回転させる回転機構(33)とを備えることを特徴とするカメラ(10)である。
請求項5の発明は、請求項4に記載のカメラ(10)において、前記回転機構(33)は、前記入射部(20)から入射した前記光(A1)の光路に対して、特定の回転範囲で前記調光ミラー(32)を回転させ、前記光学素子(60)は、前記調光ミラー(32)を1回転させた回転軌跡内の、前記特定の回転範囲外に配置されることを特徴とするカメラ(10)である。
請求項6の発明は、請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載のカメラ(10)において、前記光学素子(60)は、オートフォーカスセンサであることを特徴とするカメラ(10)である。
請求項7の発明は、請求項6に記載のカメラ(10)において、オートフォーカスの動作内容を切り替える動作切り替え部(11)を備え、前記調光ミラー(30)は、前記動作切り替え部(11)に基づいて、前記光(A1)を反射させる割合又は前記光(A1)を透過させる割合に切り替える動作パターンを変更することを特徴とするカメラ(10)である。
請求項8の発明は、請求項7に記載のカメラ(10)において、前記動作切り替え部(11)は、オートフォーカスを実施しないときは、前記調光ミラー(32)を、前記光(A1)を反射させる状態に切り替えることを特徴とするカメラ(10)である。
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載のカメラ(10)において、前記被写体の撮影を指示する操作部(13)を備え、前記動作切り替え部(11)は、前記調光ミラー(32)を、前記光(A1)を透過させる状態に切り替えて、前記光(A3)を前記オートフォーカスセンサ(60)により合焦させて、その合焦点を維持し、前記調光ミラー(32)を、前記光(A1)を反射させる状態に切り替えて、前記操作部(13)の指示に応じて前記被写体を、維持された前記合焦点で撮影することを特徴とするカメラ(10)である。
請求項10の発明は、請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のカメラ(10)において、前記被写体の撮影を指示する操作部(13)を備え、前記動作切り替え部(11)は、前記調光ミラー(32)を、前記光(A1)を透過させる状態に切り替えて、前記光(A3)を前記オートフォーカスセンサ(60)により継続的に合焦させ、前記操作部(13)で前記被写体の撮影を指示されたときに、前記調光ミラー(32)を、前記光(A1)を反射させる状態に切り替えて、前記被写体を撮影することを特徴とするカメラ(10)である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、カメラは、被写体から入射された光の光路上に、光の少なくとも一部を反射させる割合及び透過させる割合を自在に調節することができる調光ミラーを備えているので、カメラの設計の自由度を向上させることができ、また、被写体からの光を劣化させることなく、良好に被写体を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明によるカメラの実施形態を示す模式図であり、図1(a)に、カメラの全体構成を示し、図1(b)に、カメラの制御ブロック図を示す。
なお、説明を明確にするために、図1(a)の左側をカメラの前部、右側を後部、上側を上部、下側を下部、紙面の手前側を左部、紙面の裏側を右部として説明する。
【0007】
カメラ10は、図1(a)に示すように、制御部11、画像表示部12、操作部13、レンズ部20、ミラーユニット部30、ファインダー部40、シャッター部50、撮像素子51及びAFセンサ60を有し、オートフォーカス(AF)機能を備えた一眼レフのデジタルカメラである。カメラ10は、2種類の撮影方法を有しており、その一つは、ファインダー部40に表示される被写体像に基づいて撮影するファインダー撮影であり、もう一つは、画像表示部12に表示される被写体像に基づいて撮影する表示部撮影である。
【0008】
制御部11は、図1(a)及び(b)に示すように、カメラ10の内部に設けられ、カメラ10の各部を統括して制御するCPUである。また、制御部11は、カメラ10の3種類の撮影モード:シングルモード、コンティニュアスモード及びAF−OFFモードに対して、カメラ10の各部を適切に制御する(動作切り換え部)。
ここで、シングルモードとは、オートフォーカス機能で被写体像を適切な点で合焦し、その合焦点を記憶して、シャッター部50が開かれたときに、記憶した合焦点で被写体を撮影するモードであり、主に静止した被写体の撮影などに用いられる。
また、コンティニュアスモードは、オートフォーカス機能における被写体像の合焦を、シャッター部50が開かれるまで、継続的に行っており、後述の操作部13の撮影の指示が出た時点の合焦点で被写体を撮影するモードであり、主に動いている被写体の撮影などに用いられる。
さらに、AF−OFFモードは、オートフォーカスを使用しないモードであり、撮影者が自らの操作により焦点を合わせたいときなどに用いられる。
【0009】
画像表示部12は、カメラ10の後部に設けられ、被写体像や、操作に関連した情報、撮影した被写体像などを表示する液晶ディスプレイである。また、上述の表示部撮影のときは、シャッター部50が開かれるまで、常に被写体像が表示される。
操作部13は、カメラ10の上部に設けられ、画像表示部12又はファインダー部40に表示された被写体像の撮影を実行するレリーズスイッチである。本実施例では、このレリーズスイッチを半押しすることでオートフォーカス機能が作動し、全押しすると後述のシャッター部50が作動し、被写体を撮影する。
レンズ部20は、カメラ10の前部に設けられ、被写体の光A1を入射し、撮影目的に応じて被写体像を拡大又は縮小して、ミラーユニット部30へと射出するズーム機能を有したレンズ郡である。
【0010】
ミラーユニット部30は、レンズ部20の後部から射出される光A1を入射する位置に設けられ、光A1をファインダー部40、撮像素子51及びAFセンサ60へ、適切に入射させるミラー機構である。図2は、カメラのミラーユニット部30の詳細を示す図である。ミラーユニット部30は、反射ミラー部31、調光ミラー部32及び回転機構部33を有している。
反射ミラー部31は、図2(a)に示すように、調光ミラー部32の周囲に設けられ、光A1を反射するミラーである。
調光ミラー部32は、光A1の中心を含む特定の領域を入射する矩形状のミラーであり、電圧の印加により可逆的に透過率を変動させることができるエレクトロクロミック方式の調光ミラーである(例えば、特許出願公開番号:特開2006−335553)。本実施例では、印加する電圧を変化させることにより、調光ミラー部32を、入射した光A1の略全てを反射させるミラー反射状態(光を反射させる状態)と、光A1を透過させるミラー半透過状態(光を透過させる状態)とに切り替えることができる。
回転機構部33は、反射ミラー部31の左右方向の両端部に設けられた回転機構及びそれを駆動する回転モータで構成されており、光A1の反射される方向をファインダー部40方向又は撮像素子51方向に切り替えることができるように、ミラーユニット部30を特定の回転角度に回転させる。本実施例では、光A1に対して45度傾斜した状態から、135度傾斜した状態へと回転する。
なお、ミラーユニット部30に入射される光A1は、図1(a)に示すように、ファインダー部40へ反射されることで光A2となり、撮像素子51へ反射されることで光A4となり、AFセンサ60へ透過されることで光A3となる。
【0011】
ファインダー部40は、図1(a)に示すように、ペンタダハプリズム40−1及び接眼部40−2を有している。
ペンタダハプリズム40−1は、ミラーユニット部30が45度傾斜したときに反射する光A2を入射する位置に配置され、入射した光A2を接眼部40−2へと射出する多角形のプリズムである。
接眼部40−2は、ペンタダハプリズム40−1から射出された光A2を入射する位置に配置され、入射した光A2を拡大して写し出すレンズを内蔵した光学系である。
シャッター部50は、ミラーユニット部30が135度傾斜したときに反射する光A4を入射する位置に配置され、入射した光A4の撮像素子51への入射を規制する。シャッター部50は、ファインダー撮影のときは、常時、閉じた状態であり、操作部13が全押しされたときにのみ開き、光A4を撮像素子51に入射する。また、表示部撮影のときは、常時、開いた状態であり、操作部13が全押しされたときに、一時的に閉じて、再び開くことで撮像素子に光A4を入射する。
撮像素子51は、シャッター部50の下部に設けられたCCD(Charge−Coupled Device)であり、シャッター部50を介して入射した光A4を露光し、電気的な画像信号に変換して画像表示部12に出力する。
AFセンサ60は、ミラーユニット部30を透過した光A3を入射する位置に配置され、調光ミラー部32がミラー半透過状態になったときに光A3を入射して、合焦動作に利用されるオートフォーカス用のセンサである。また、AFセンサ60は、ミラーユニット部30を1回転させた回転軌跡内の、ミラーユニット部30の回転範囲(光A1に対して45度〜135度)以外に配置されている。
【0012】
図3は、カメラのミラーユニット部で反射及び透過する被写体の光の動向を説明する図である。
ミラーユニット部30は、撮影方法がファインダー撮影のときは、図2(a)に示すように、回転機構部33により、レンズ部20から入射される被写体の光A1に対して45度傾斜した姿勢になり、操作部13が全押しされたときには、図2(b)に示すように、光A1に対して135度傾斜した姿勢となる(矢印B)。また、表示部撮影のときは、図2(b)に示すように、光A1に対して135度傾斜した姿勢を常に維持する。
ミラーユニット部30に入射される光A1は、図3(a)に示すように、ミラーユニット部30が45度傾斜した姿勢で、ミラー反射状態の調光ミラー部32に、被写体の光A1が入射された場合、光A1と直交する上方に曲げられて、光A2となる。ミラー半透過状態の調光ミラー部32に光A1が入射されたときは、図3(b)に示すように、光A1の一部が反射されずに調光ミラー部32を透過して光A3となる。
一方、図3(c)に示すように、ミラーユニット部30が135度傾斜した姿勢で、ミラー反射状態の調光ミラー部32に、被写体からの光A1が入射された場合は、光A1は、光A1と直交する下方に曲げられて、光A4となる。ミラー半透過状態の調光ミラー部32に光A1が入射されたときは、図3(d)に示すように、光A1の一部が反射されずに調光ミラー部32を透過して光A3となる。
【0013】
次に、カメラ10の動作について説明する。図4は、カメラのファインダー部40で撮影するときのオートフォーカスの動作フローである。
まず、カメラ10の制御部11は、被写体を撮影するときに、撮影者により上述した撮影方法(ファインダー撮影又は表示部撮影)及び撮影モード(シングルモード、コンティニュアスモード又はAF−OFFモード)を選択させる。
【0014】
撮影者によりファインダー撮影のシングルモードが選択され、図4(a)に示すように、撮影を開始するときは(S101)、制御部11は、ミラーユニット部30を、図3(a)に示すように、光A1に対して45度傾斜した状態にし、また、調光ミラー部32をミラー反射状態にする(S102)。このとき、光A1は、ミラーユニット部30により光A1と直交する上方に曲げられて光A2となり、ペンタダハプリズム40−1を介して接眼部40−2に被写体像を観察可能にする。次に、接眼部40−2を覗いた撮影者により、操作部13が半押しされたら(S103:Yes)、図3(b)に示すように、調光ミラー部32がミラー半透過状態に切り替わる(S104)。このとき、レンズ部20から入射した光A1の一部は、調光ミラー部32を透過して光A3となり、ミラーユニット部30の後部に設けられたAFセンサ60に入射し、残りの光A1は反射して光A2となり、ファインダー部40へと入射する。
【0015】
AFセンサ60が光A3を入射したら、制御部11は、レンズ部20のAF駆動部(不図示)及びAFセンサ60により合焦させ(S105)、その合焦点を記憶させ、調光ミラー部32をミラー反射状態に切り替える(S106)。
続いて、撮影者により操作部13が全押しされたら(S107:Yes)、制御部11は、ミラーユニット部30を回転機構部33で回転させ、図3(c)に示すように、光A1に対して135度傾斜した状態にして(S108)、シャッター部50を開く(S109)。このとき、レンズ部20を介して入射した被写体の光A1は、135度傾斜したミラーユニット部30により、光A1と直交する下方に曲げられて光A4となり、開いたシャッター部50を介して撮像素子51に入射され、被写体像を露光する(S110)。
仮に、合焦点を記憶してから操作部13が全押しされなかったら(S107:No)、操作部13の半押しが継続しているか否かを確認する(S111)。継続して半押しされている場合(S111:Yes)、制御部11は、操作部13が全押しされるまで待機する。操作部13を放すなどして半押し状態が解除された場合は(S111:No)、再び、操作部13の半押し(S103)される前の状態となる。
【0016】
撮影者によりファインダー撮影のコンティニュアスモードが選択され、図4(b)に示すように、撮影を開始するときは(S201)、制御部11は、ミラーユニット部30を、図3(b)に示すように、光A1に対して45度傾斜した状態にし、また、調光ミラー部32をミラー半透過状態にする(S202)。このとき、レンズ部20を介して入射された光A1のうち反射ミラー部31に入射する光A1は、ミラーユニット部30の傾きにより、光A1と直交する上方に曲げられて光A2となり、ペンタダハプリズム40−1を介して接眼部40−2に被写体像を観察可能にする。レンズ部20を介して入射された光A1のうち、調光ミラー部32に入射する光A1は、調光ミラー部32がミラー半透過状態であるので、その一部が透過して光A3となり、ミラーユニット部30の後部にあるAFセンサ60へと入射し、残りの光A1は反射して光A2となり、ファインダー部40のペンタダハプリズム40−1へと入射する。
【0017】
次に、接眼部40−2を覗いた撮影者により、操作部13が半押しされたら(S203:Yes)、制御部11は、レンズ部20のAF駆動部(不図示)及びAFセンサ60により、継続的に合焦させる(S204)。
続いて、撮影者により操作部13が全押しされたら(S205:Yes)、制御部11は、全押しされた時点の合焦点を維持して、調光ミラー部32をミラー反射状態にする(S206)。それから、図3(c)に示すように、ミラーユニット部30を回転機構部33で回転させて、光A1に対して135度傾斜した状態にし(S207)、シャッター部50を開く(S208)。このとき、レンズ部20を介して入射した被写体の光A1は、135度傾斜したミラーユニット部30により、光A1と直交する下方に曲げられて光A4となり、開かれたシャッター部50を介して撮像素子51に入射され、被写体像が露光される(S209)。
仮に、操作部13が全押しされなかったら(S205:No)、再び、操作部13の半押し(S203)される前の状態となる。
【0018】
図5は、カメラの画像表示部で撮影するときのオートフォーカスの動作フローである。
撮影者により表示部撮影のシングルモードが選択され、図5(a)に示すように、撮影を開始するときは(S301)、制御部11は、調光ミラー部32をミラー反射状態にする(S302)。また、ミラーユニット部30を、図3(c)に示すように、光A1に対して135度傾斜した状態にし(S303)、シャッター部50を開く(S304)。このとき、光A1は、ミラーユニット部30により光A1と直交する下方に曲げられて光A4となり、開いたシャッター部50を介して撮像素子51に入射し、画像表示部12に被写体像を観察可能にする。
次に、画像表示部12を見ながら被写体を撮影する撮影者により、操作部13が半押しされたら(S305:Yes)、図3(d)に示すように、調光ミラー部32がミラー半透過状態に切り替わる(S306)。調光ミラー部32がミラー半透過状態になるので、レンズ部20から入射した光A1の一部は、調光ミラー部32を透過して光A3となり、ミラーユニット部30の後部に設けられたAFセンサ60に入射し、残りの光A1は反射して光A4となり、シャッター部50を介して撮像素子51へと入射する。
【0019】
AFセンサ60が光A3を入射したら、制御部11は、レンズ部20のAF駆動部(不図示)及びAFセンサ60により合焦させ(S307)、その合焦点を記憶させ、図3(c)に示すように、調光ミラー部32をミラー反射状態に切り替える(S308)。
続いて、撮影者により操作部13が全押しされたら(S309:Yes)、制御部11は、シャッター部50を閉じて(S310)、再び開き(S311)、開いたシャッター部50を介して光A3が撮像素子51に入射され、被写体像を露光する(S312)。
仮に、合焦点を記憶してから操作部13が全押しされなかったら(S309:No)、操作部13の半押しが継続しているか否かを確認する(S313)。継続して半押しされている場合(S313:Yes)、制御部11は、操作部13が全押しされるまで待機する。操作部13を放すなどして半押し状態が解除された場合は(S313:No)、再び、操作部13の半押し(S305)される前の状態となる。
【0020】
撮影者によりファインダー撮影のコンティニュアスモードが選択され、図5(b)に示すように、撮影を開始するときは(S401)、制御部11は、調光ミラー部32をミラー半透過状態にする(S402)。また、ミラーユニット部30を、図3(d)に示すように、光A1に対して135度傾斜した状態にし(S403)、シャッター部50を開く(S404)。このとき、レンズ部20を介して入射された光A1のうち、反射ミラー部31に入射する光A1は、ミラーユニット部30により光A1と直交する下方に曲げられて光A4となり、開いたシャッター部50を介して撮像素子51に入射し、画像表示部12に被写体像を観察可能にする。また、レンズ部20を介して入射された光A1のうち、調光ミラー部32に入射する光A1は、調光ミラー部32がミラー半透過状態であるので、その一部が透過して光A3となり、ミラーユニット部30の後部にあるAFセンサ60へと入射し、残りの光A1は反射して光A4となり、シャッター部50を介して撮像素子51へと入射する。
【0021】
次に、画像表示部12を見ながら被写体を撮影する撮影者により、操作部13が半押しされたら(S405:Yes)、制御部11は、レンズ部20のAF駆動部(不図示)及びAFセンサ60により、継続的に合焦させる(S406)。
続いて、撮影者により操作部13が全押しされたら(S407:Yes)、制御部11は、全押しされた時点の合焦点を維持して、図3(c)に示すように、調光ミラー部32をミラー反射状態にし(S408)、シャッター部50を閉じて(S409)、再び開く(S410)。このとき、開いたシャッター部50を介して光A3が撮像素子51に入射され、被写体像が露光される(S411)。
仮に、操作部13が全押しされなかったら(S407:No)、再び、操作部13の半押し(S405)される前の状態となる。
【0022】
なお、撮影者によりAF−OFFモードが選択されたときは、撮影方法に関係なく調光ミラー部32は、常時、ミラー反射状態となる。ミラーユニット部30を含むカメラ10の各部は、操作部13に基づいたシャッター部50の動作に応じて、上述のファインダー撮影及び表示部撮影のときと同様の動作を行い、被写体を撮影する。
【0023】
以上より、本実施形態のカメラには以下のような効果がある。
(1)カメラ10は、被写体から入射された光A1の光路上に、光A1の少なくとも一部を反射させるミラー反射状態及び透過させるミラー半透過状態を切り替えることができる調光ミラー部32を備えているので、撮像素子51やAFセンサ60を多彩に配置することができ、カメラ10の設計の自由度を向上させることができる。また、被写体からの光A1を劣化させることなく、良好に被写体を撮影することができる。
(2)ミラーユニット部30は、撮像素子51の対向する位置に設けられたペンタダハプリズム40−1及び接眼部40−2を備え、ミラーユニット部30を回転させ、光A1の光路を屈曲させて光A2とし、光A2を、ペンタダハプリズム40−1を介して接眼部40−2に入射させる回転機構部33とを備えているので、カメラ10の動作に応じて、容易に、被写体の光A1を、接眼部40−2又は撮像素子51へ入射することができる。
(3)AFセンサ60は、ミラーユニット部30を1回転させた回転軌跡内の、ミラーユニット部30の回転範囲外に配置されているので、カメラ10内のスペースを有効に活用でき、また、カメラ10の前後方向の厚みを薄くして、カメラ10を小型化することができる。
(4)制御部11は、オートフォーカスの動作内容に応じて撮影モードを切り替え、その切り替えた撮影モードに基づいて、調光ミラー部32を、ミラー反射状態又はミラー半透過状態の切り替えの動作パターンを変更しているので、撮影の目的に応じて、被写体から入射した光A1の反射及び透過を自在に変更することができ、多種多様な撮影を設定することができる。
(5)制御部11は、オートフォーカスを実施しないAF−OFFモードのときは、調光ミラー部32を、ミラー反射状態に切り替えるので、ミラーユニット部30は、被写体の光A1を減光させることなく接眼部40−2又は撮像素子51に入射することができる。
(6)カメラ10は、被写体の撮影を指示する操作部13を備え、制御部11は、調光ミラー部32を、ミラー半透過状態に切り替えて、レンズ部20のAF駆動部(不図示)及びAFセンサ60により合焦させ、その合焦点を維持し、調光ミラー部32を、ミラー反射状態に切り替えて、操作部13が全押しされるのに応じて、被写体を維持された合焦点で撮影するシングルモードを備えているので、撮影前に、接眼部40−2又は画像表示部12に写し出される被写体像の明るさを暗くすることなく、鮮明に写し出すことができる。
(7)カメラ10は、被写体の撮影を指示する操作部13を備え、制御部11は、調光ミラー部32を、ミラー半透過状態に切り替えて、光A3をAFセンサ60により合焦させ、操作部13が全押しされたときに、全押しされたときの合焦点で、調光ミラー部32を、ミラー反射状態に切り替えて、被写体を撮影するコンティニュアスモードを備えているので、調光ミラー部32の切り替えの回数を最小限にすることができ、カメラ10の応答時間を向上させることができる。また、カメラ10は、操作部13が全押しされるまで、継続的に被写体像の合焦点を求めているので、動いている被写体を鮮明に撮影することができる。
【0024】
(変形例)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)本実施形態では、ミラーユニット部30は、反射ミラー部31及び調光ミラー部32の2種類のミラーを用いたが、ミラー全面に調光ミラーを用い、被写体からの光A1を全て、反射又は透過させてもよい。調光ミラー部32が光A1の全てを入射することで、被写体からの光A1全てに対して、オートフォーカスを行うことができ、より鮮明な撮影を行うことができる。
(2)本実施形態では、撮影モードのコンティニュアスモードは、操作部13が半押しされる前(オートフォーカス作動前)においても調光ミラー部32が、ミラー半透過状態であったが、ミラー半透過状態とミラー反射状態とを高速に、連続で切り替えてもよい。高速に連続で切り替えることで、接眼部40−2又は画像表示部12に写し出される被写体像を、明るく見えるようにできる。ここで、高速とは、人間の目でその切り替えが判別できない程度の速さをいい、例えば、50Hz程度の切り替え周期である。
(3)本実施形態では、調光ミラー部32は、電圧の印加により可逆的に透過率を変動させるエレクトロクロミック方式を用いたが、その他の方式、例えば、雰囲気ガスの変化により透過率を変動させるガスクロミック方式や、温度変化に応じて透過率を変動させるサーモクロミック方式を用いてもよい。
(4)本実施形態では、ミラーユニット部30の後部に、AFセンサ60を配置したが、それ以外の光学素子、例えば、AE(自動露光)センサなどを配置させてもよい。
(5)本実施形態では、調光ミラー部32は、ミラー反射状態とミラー半透過状態とを切り替えたが、ミラー半透過状態の透過率を撮影条件に応じて調節することができるようにしてもよい。これにより、常に、AFセンサ60に最適な状態でオートフォーカスを行わせることができる。
(6)ミラーユニット部30に、回転機構部33とは別にアクチュエータを設け、撮影者の手振れなどによる被写体の像ブレを補正するブレ補正機構を設けてもよい。
(7)本実施形態では、コンティニュアスモードは、操作部13が全押しされた時点の合焦点で被写体を撮影したが、それ以外の時点、例えば、操作部13が全押しされ、シャッター部50が開いた時点の合焦点で撮影させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるカメラの実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明によるカメラのミラーユニット部の詳細を示す図である。
【図3】本発明によるカメラのミラーユニット部で反射及び透過する被写体の光の動向を説明する図である。
【図4】本発明によるカメラのファインダー部で撮影するときのオートフォーカスの動作フローである。
【図5】本発明によるカメラの画像表示部で撮影するときのオートフォーカスの動作フローである。
【符号の説明】
【0026】
10:カメラ、11:制御部、12:画像表示部、13:操作部、20:レンズ部、30:ミラーユニット部、31:反射ミラー部、32:調光ミラー部、33:回転機構部、40:ファインダー部、40−1:ペンタダハプリズム、40−2:接眼部、50:シャッター部、51、撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を入射する入射部と、
前記入射部から入射された光の光路上に設けられ、前記光の少なくとも一部を反射させる割合及び透過させる割合を自在に調節することができる調光ミラーと、
を備えるカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記調光ミラーを透過した前記光が到達する位置に、光学素子を備えること、
を特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラにおいて、
前記調光ミラーにより反射した前記光が到達する位置に、撮像素子を備えること、
を特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラにおいて、
前記撮像素子と対向する位置に設けられたファインダーと、
前記光を前記ファインダー方向に反射させるように、前記調光ミラーを回転させる回転機構とを備えること、
を特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項4に記載のカメラにおいて、
前記回転機構は、前記入射部から入射した前記光の光路に対して、特定の回転範囲で前記調光ミラーを回転させ、
前記光学素子は、前記調光ミラーを1回転させた回転軌跡内の、前記特定の回転範囲外に配置されること、
を特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記光学素子は、オートフォーカスセンサであること、
を特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラにおいて、
オートフォーカスの動作内容を切り替える動作切り替え部を備え、
前記調光ミラーは、前記動作切り替え部に基づいて、前記光を反射させる割合又は前記光を透過させる割合に切り替える動作パターンを変更すること、
を特徴とするカメラ。
【請求項8】
請求項7に記載のカメラにおいて、
前記動作切り替え部は、オートフォーカスを実施しないときは、前記調光ミラーを、前記光を反射させる状態に切り替えること、
を特徴とするカメラ。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載のカメラにおいて、
前記被写体の撮影を指示する操作部を備え、
前記動作切り替え部は、前記調光ミラーを、前記光を透過させる状態に切り替えて、前記光を前記オートフォーカスセンサにより合焦させて、その合焦点を維持し、
前記調光ミラーを、前記光を反射させる状態に切り替えて、前記操作部の指示に応じて前記被写体を、維持された前記合焦点で撮影すること、
を特徴とするカメラ。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記被写体の撮影を指示する操作部を備え、
前記動作切り替え部は、前記調光ミラーを、前記光を透過させる状態に切り替えて、前記光を前記オートフォーカスセンサにより継続的に合焦させ、
前記操作部で前記被写体の撮影を指示されたときに、前記調光ミラーを、前記光を反射させる状態に切り替えて、前記被写体を撮影すること、
を特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−199269(P2008−199269A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31855(P2007−31855)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】