説明

ガラス基板用カセット

【課題】大サイズのガラス基板を支承するときに、ガラス基板の撓み変形を防止することができるガラス基板用カセットを提供する。
【解決手段】下面構造体71と、下面構造体71の上方にて下面構造体71に対向して配置された上面構造体72と、両端がそれぞれ下面構造体71と上面構造体72に垂直に固定された一対の側面構造体73と、下面構造体71と上面構造体72に固定され、ガラス基板4を搬入・搬出する際に脱落が生じることを回避する背面支承構造体74と、一対の側面構造体73の内側に平行に固定され、かつ所定の間隔をあけて、それぞれガラス基板4を支承するための複数の支承板75とを具備し、複数の支承板75のそれぞれは、搬送機構5によりガラス基板4が搬入・搬出される際に、ガラス基板4の移動方向に沿って伸びる複数の溝78を有する波形構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板用カセットに関し、特に大サイズのガラス基板を支承するためのガラス基板用カセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタの製造技術が成熟するにつれて、表示装置としてCRTディスプレイの代わりに、液晶表示装置が主流となってくる。液晶表示装置は薄形、軽量、省電力、電磁波放射が発生しないなどの利点を有するので、PDA、ノートパソコン、ディジタルカメラ、テレビ及び携帯電話などの電子製品に広く普及している。
【0003】
液晶表示装置では、主にガラス基板に形成された薄膜トランジスタをスイッチング素子とし、画素の明るさを制御し、画像を表示する。ガラス基板は液晶表示装置の製造にとって重要な部材である。液晶表示装置の製造プロセスにおいて、ガラス基板の収納はカセットにより行う。ガラス基板のサイズが大きいほど、カセットの設計が重要になる。
【0004】
図1.Aは従来のカセット1を示す外観図である。カセット1は矩形の中空容器10であって、前方に搬入出用開口11が設けられ、中空容器10の内部において、両側に複数の支持ロッド12が設けられ、各支持ロッド12の間に複数の支承用スロット13が形成される。搬送アーム5により、ガラス基板4が搬入出用開口11より支承用スロット13の中に搬入され、かつ支持ロッド12の上に載せられる。
【0005】
また、液晶表示装置の技術発展が第6世代に入るにつれて、ガラス基板のサイズも1500mm×1850mmに達している。面積が大きくなるだけでなく、ガラス基板の厚さも薄くなる。このように大きいサイズのガラス基板4がカセット1における支承用スロット13に挿入されたときに、中空容器10内部の両側に設けられた支持ロッド12のみによりガラス基板4を支持すれば、ガラス基板4の中央部分が支持されないので、自重による下方への撓み変形が生じる。図1.Bに示すように、ガラス基板4の撓み変形の程度が大きすぎると、ガラス基板4を搬入・搬出する過程において、搬送アームとガラス基板が衝突し、ガラス基板を破損させるという問題がある。また、撓み変形量が大きすぎると、ガラス基板の表面に形成された素子に損傷を生じさせる虞もある。この問題を解決するために、各支承用スロットの間隔を増大することにより、衝突を回避することができるが、各支承用スロットの間隔を増大すると、カセットの収納能力が悪化することを招く。
【0006】
図2.Aは従来のカセット2を示す外観図である。カセット2の内部側面に、複数の支承ワイヤ21が設けられ、各支承ワイヤ21の間に支承用スロット22が形成され、ガラス基板4が支承用スロット22に挿入され、かつ支承ワイヤ21の上に載せられる。このようなカセット2ではガラス基板4の撓み変形を回避することができないという欠点もあり、かつガラス基板4と支承ワイヤ21とは密着するので、ガラス基板4と支承ワイヤ21との間に搬送アームを挿入することもできず、ガラス基板4を搬入・搬出することができないという問題もある。この問題を解決するために、図2.Bに示すように、搬送ローラー6をカセット2の下方に移載し、搬送ローラー6によりガラス基板4を突き上げ、下から上まで順次にガラス基板4を搬出し、或いは上から下まで順次にガラス基板4を搬入することも考えられる。しかしながら、この搬送方法では、一番上のガラス基板と一番下のガラス基板以外のガラス基板を自由に搬入・搬出することができないという問題がある。
【0007】
図3は従来のカセット3を示す側面図である。カセット3における各支承用スロット31の後側表面32には、後側表面32に固定され、かつ搬入出用開口34に延在するカンチレバー構造の後支承ロッド33が設けられる。ガラス基板4のサイズが大きくなるに伴い、後支承ロッド33の長さも長くなる。その結果、後支承ロッド33の撓み量が大幅に増加して、ガラス基板を搬入・搬出することが困難になる。
【0008】
また、ガラス基板はその両端がカセットの上に載せられる場合には、振動体を構成するので、カセットを搬送するときに生じる振動周波数と、ガラス基板の自然共振周波数とが一致すると、ガラス基板に共振が生じ、ガラス基板を破損させる場合がある。
【0009】
上述した技術は、例えば以下の特許文献1と特許文献2に記載されている。
【特許文献1】米国特許第6,186,344号公報
【特許文献2】米国特許第6,523,701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであり、大サイズのガラス基板を支承するときに、ガラス基板の撓み変形を防止することができ、ガラス基板の表面に応力を生じ、ガラス基板の表面に形成された素子を損傷させることを防止することができるガラス基板用カセットを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は大サイズのガラス基板を支承するときに、支承板同士の間隔を増大することがなく、カセットの内部スペースを省くことができるガラス基板用カセットを提供することを他の目的とする。
【0012】
また、本発明は洗浄しやすいだけでなく、重さも軽減され、かつガラス基板に共振が生じなく、ガラス基板を破損させることを防止することができるガラス基板用カセットを提供することを更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明のガラス基板用カセットは、下面構造体と、前記下面構造体の上方にて前記下面構造体に対向して配置された上面構造体と、両端がそれぞれ前記下面構造体と前記上面構造体に垂直に固定された一対の側面構造体と、前記下面構造体と前記上面構造体に固定され、ガラス基板を搬入・搬出する際に脱落が生じることを回避する背面支承構造体と、前記一対の側面構造体の内側に平行に固定され、かつ所定の間隔をあけて、それぞれガラス基板を支承するための複数の支承板とを具備し、前記複数の支承板のそれぞれは、搬送機構によりガラス基板が搬入・搬出される際に、前記ガラス基板の移動方向に沿って伸びる複数の溝を有する波形構造を有する。
【0014】
また、前記搬送機構は搬送アームであることが望ましい。
【0015】
また、前記複数の支承板と前記一対の側面構造体はネジで固定されていることが望ましい。
【0016】
また、前記複数の支承板の表面に複数のスルーホールが形成されていることが望ましい。
【0017】
また、前記複数の支承板は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、強化ガラス繊維、強化炭素繊維のいずれかを主体とする材質からなることが望ましい。
【0018】
また、前記複数の支承板のそれぞれは薄肉構造を有することが望ましい。
【0019】
これにより、ガラス基板の全面が支承板により支承されることにより、ガラス基板の撓み変形を防止することができ、ガラス基板の表面に形成された素子を損傷させることを防止することができる。さらに、支承板に溝が形成された波形構造を設けることにより、支承板の支承強度を向上することにより、支承板同士の間隔を増大することがなく、カセットの内部スペースを省くことができる。さらに、各支承板の表面に複数のスルーホールが形成されることにより、ガラス基板に共振が生じなく、ガラス基板を破損させることを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明のガラス基板用カセットによれば、ガラス基板の撓み変形を防止することができ、ガラス基板の表面に応力を生じ、ガラス基板の表面に形成された素子を損傷させることを防止することができる。
【0021】
また、本発明のガラス基板用カセットによれば、支承板同士の間隔を増大することがなく、カセットの内部スペースを省くことができる。
【0022】
また、本発明のガラス基板用カセットによれば、複数の支承板が洗浄されやすく、カセット全体の重さが軽減され、かつガラス基板に共振が生じなく、ガラス基板を破損させることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態では、あくまでも本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【0024】
<実施の形態1>
図4は本発明の実施の形態1に係るガラス基板用カセットを示す外観図である。カセット7は、下面構造体71と、下面構造体71の上方にて下面構造体71に対向して配置された上面構造体72と、両端がそれぞれ下面構造体71と上面構造体72に垂直に固定された一対の側面構造体73と、下面構造体と上面構造体に固定され、ガラス基板を搬入・搬出する際に脱落が生じることを回避する背面支承構造体74と、一対の側面構造体の内側に平行に固定され、かつ所定の間隔をあけて、それぞれガラス基板を支承するための薄肉構造の複数の支承板75と、背面支承構造体74に対向して形成された、ガラス基板を搬入・搬出するための搬入出用開口76とを具備している。下面構造体71と上面構造体72と一対の側面構造体73とはそれぞれ中空フレーム状で、背面支承構造体74は支柱状である。
【0025】
また、各支承板75の表面に、搬送アーム5によりガラス基板4が搬入・搬出される際に、ガラス基板4の移動方向に沿って伸びる搬送アーム5を収容するための複数の溝78を有する波形構造(corrugated structure)77が設けられている。波形構造77は方形波であることが好ましい。搬送アーム5は溝78を介して、ガラス基板4の搬入・搬出を行う。また、各支承板75における複数の溝78は折り曲げ加工により形成されている。また、ガラス基板のサイズが次第に大きくなり、重さが次第に重くなるにつれて、カセット全体の重さも次第に重くなるが、本発明に係るカセットにおける各支承板75は薄肉の波形構造に形成されていることにより、支承板75の支承力を向上させることができるとともに、カセットの重さを軽減することもできる。材料力学の薄肉シェル理論(Theory of Thin Shells & Plates)による薄肉構造は軽量、高支承力、大スパンなどの利点があると考えられる。
【0026】
また、本発明の各支承板75の材質は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、強化ガラス繊維(reinforced fiberglass)、強化炭素繊維(reinforce carbon fiber)を挙げることができる。図5に示すように、各支承板75の両端にフランジ79が形成され、ネジ80でフランジ79を側面構造体73に螺着する。また、他の固定装置、例えばボルトでフランジ79を側面構造体73に固定してもよい。
【0027】
次に、図6に示すように、支承板75を洗浄する際に排水しやすいように、支承板75の表面に複数のスルーホール81が形成される。また、スルーホール81の形成により、各支承板75の重さが軽減され、延いてはカセット7全体の重さも軽減される。さらに、スルーホール81の形成位置を変更することにより、ガラス基板4を搬送するときに、カセット7の振動周波数とガラス基板4の自然共振周波数とが一致することに起因してガラス基板4を破損させることを回避することができる。
【0028】
<実施の形態2>
図7は本発明の実施の形態2に係るガラス基板用カセットを示す外観図である。本実施形態と実施の形態1との相違点は下面構造体71、上面構造体72、一対の側面構造体73、背面支承構造体74のいずれもがプレート状であることであり、他の構成は図4と同じであるので、説明は省略する。
【0029】
以上、本発明に係るガラス基板用カセットの実施の形態を詳述したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨と特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1.A】従来のガラス基板用カセットを示す外観図である。
【図1.B】従来のガラス基板用カセットを示す正面図である。
【図2.A】従来のガラス基板用カセットを示す正面図である。
【図2.B】従来の搬送ローラーにより、ガラス基板を搬出する態様を示す図である。
【図3】従来のガラス基板用カセットを示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るガラス基板用カセットを示す外観図である。
【図5】ネジで支承板と側面構造体を固定する本発明の態様を示す外観図である。
【図6】本発明の支承板を示す外観図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るガラス基板用カセットを示す外観図である。
【符号の説明】
【0031】
4 ガラス基板
5 搬送アーム
7 カセット
71 下面構造体
72 上面構造体
73 側面構造体
74 背面支承構造体
75 支承板
76 搬入出用開口
77 波形構造
78 溝
80 ネジ
81 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面構造体と、
前記下面構造体の上方にて前記下面構造体に対向して配置された上面構造体と、
両端がそれぞれ前記下面構造体と前記上面構造体に垂直に固定された一対の側面構造体と、
前記下面構造体と前記上面構造体に固定され、ガラス基板を搬入・搬出する際に脱落が生じることを回避する背面支承構造体と、
前記一対の側面構造体の内側に平行に固定され、かつ所定の間隔をあけて、それぞれガラス基板を支承するための複数の支承板とを具備し、
前記複数の支承板のそれぞれは、搬送機構によりガラス基板が搬入・搬出される際に、前記ガラス基板の移動方向に沿って伸びる複数の溝を有する波形構造を有することを特徴とするガラス基板用カセット。
【請求項2】
前記搬送機構は搬送アームであることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板用カセット。
【請求項3】
前記複数の支承板と前記一対の側面構造体はネジで固定されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板用カセット。
【請求項4】
前記複数の支承板の表面に複数のスルーホールが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板用カセット。
【請求項5】
前記複数の支承板は、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、強化ガラス繊維、強化炭素繊維のいずれかを主体とする材質からなることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板用カセット。
【請求項6】
前記複数の支承板のそれぞれは薄肉構造を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス基板用カセット。

【図1.A】
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【図1.B】
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【図2.A】
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【図2.B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−54429(P2006−54429A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175698(P2005−175698)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(501358079)友達光電股▼ふん▲有限公司 (220)
【Fターム(参考)】