説明

コヒーレント光源

【課題】量子コヒーレンス状態を安定して持続させることができる共鳴光対を発生させるコヒーレント光源を提供すること。
【解決手段】光発生部10は第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光12を発生させてアルカリ金属原子集団に照射する。光検出部30はアルカリ金属原子集団を透過した光の強度を検出する。制御部40は、検出された光の強度に基づいて第1の光と第2の光との周波数差が第1基底準位と第2基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、第1の光の波長がいずれかの励起準位又はその近傍の準位と第1基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御するとともに第2の光の波長が当該励起準位又はその近傍の準位と第2基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する。光出射部50は複数のコヒーレント光12の一部を取り出してアルカリ金属原子80に出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射するコヒーレント光源に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、アルカリ金属原子は、タームシンボル1/2で表される基底準位と、タームシンボル1/23/2で表される2つの励起準位とを有することが知られている。さらに、1/21/23/2の各準位は、複数のエネルギー準位に分裂した超微細構造を有している。具体的には、1/2はI+1/2とI−1/2の2つの基底準位を持ち、1/2はI+1/2とI−1/2の2つの励起準位を持ち、3/2はI+3/2,I+1/2,I−1/2,I−3/2の4つの励起準位を持っている。ここで、Iは核スピン量子数である。
【0003】
1/2のI−1/2の基底準位にある原子は、D2線を吸収することで、3/2のI+1/2,I−1/2,I−3/2のいずれかの励起準位に遷移することができるが、I+3/2の励起準位に遷移することはできない。1/2のI+1/2の基底準位にある原子は、D2線を吸収することで、3/2のI+3/2,I+1/2,I−1/2のいずれかの励起準位に遷移することができるが、I−3/2の励起準位に遷移することはできない。これらは、電気双極子遷移を仮定した場合の遷移選択則による。逆に、3/2のI+1/2又はI−1/2の励起準位にある原子は、D2線を放出して1/2のI+1/2又はI−1/2の基底準位(元の基底準位又は他方の基底準位のいずれか)に遷移することができる。ここで、1/2のI+1/2,I−1/2の2つの基底準位と3/2のI+1/2又はI−1/2の励起準位からなる3準位(2つの基底準位と1つの励起準位からなる)は、D2線の吸収・発光によるΛ型の遷移が可能であることからΛ型3準位と呼ばれる。これに対して、3/2のI−3/2の励起準位にある原子は、D2線を放出して必ず1/2のI−1/2の基底準位(元の基底準位)に遷移し、同様に、3/2のI+3/2の励起準位にある原子は、D2線を放出して必ず1/2のI+1/2の基底準位(元の基底準位)に遷移する。すなわち、1/2のI+1/2,I−1/2の2つの基底準位と3/2のI−3/2又はI+3/2の励起準位からなる3準位は、D2線の吸収・放出によるΛ型の遷移が不可能であることからΛ型3準位を形成しない。
【0004】
ところで、気体状のアルカリ金属原子に、Λ型3準位を形成する第1の基底準位(1/2のI−1/2の基底準位)と励起準位(例えば、3/2のI+1/2の励起準位)とのエネルギー差に相当する周波数(振動数)を有する共鳴光(共鳴光1とする)と、第2の基底準位(1/2のI+1/2の基底準位)と励起準位とのエネルギー差に相当する周波数(振動数)を有する共鳴光(共鳴光2とする)とを同時に照射すると、2つの基底準位の重ね合わせ状態、即ち量子コヒーレンス状態(暗状態)になり、励起準位への励起が停止する電磁誘起透過(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象(CPT(Coherent Population Trapping)と呼ばれることもある)が起こることが知られている。このEIT現象を起こす共鳴光対(共鳴光1と共鳴光2)の周波数差はアルカリ金属原子の2つの基底準位のエネルギー差ΔE12に相当する周波数と正確に一致する。例えば、セシウム原子は、2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数は9.192631770GHzであるので、セシウム原子に、周波数差が9.192631770GHzの2種類のD1線又はD2線のレーザー光を同時に照射すると、EIT現象が起こる。
【0005】
すなわち、共鳴光対を照射することでアルカリ金属原子に量子コヒーレンス状態を起こさせることができるので、共鳴光対を発生させる光源は、量子コンピューターや量子メモリーなどの量子デバイス用の光源として利用することが期待できる。
【0006】
この共鳴光対は、例えば、単一光源から出射した光を電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)で変調することで発生させることができる。この場合、共鳴光対の差周波数の精度は、電気光学変調器(EOM)を駆動する変調信号源水晶発振器等の周波数安定度で決まる。また、例えば、半導体レーザーのような直流電流駆動の光源に対して、その直流電流に交流を重畳することで電流変調を加えてサイドバンドを立たせて共鳴光対とすることができる。この場合、共鳴光対の差周波数の精度は、重畳する変調信号源水晶発振器等の周波数安定度で決まる。いずれの手法でも、単一光源から共鳴光対を発生させているので、キャリア周波数の揺らぎの影響を受けず、共鳴光対の差周波数は比較的安定しているものの、量子コヒーレンス状態を長時間良好に保てるほど安定しているわけではないので、量子デバイス用の光源として利用するのは難しい。
【0007】
単一光源が出射する光の周波数を安定させる手法は、例えば特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−224319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の手法は、単一波長の光を出射するレーザー光源を対象とした周波数安定化技術であり、2光波の周波数差を安定させるために適用することは困難である。また、量子デバイス用の光源に要求される安定度が確保されている保証はない。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、量子コヒーレンス状態を安定して持続させることができる共鳴光対を発生させるコヒーレント光源を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、ターゲットとなるアルカリ金属原子に電磁誘起透過現象を発生させる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射するコヒーレント光源であって、ターゲットとなるアルカリ金属原子と、前記ターゲットとなるアルカリ金属原子と同じ種類のアルカリ金属原子集団と、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記アルカリ金属原子集団に照射する光発生部と、前記アルカリ金属原子集団を透過した光の強度を検出する光検出部と、前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第1の光と前記第2の光との周波数差が、前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第1の光の波長が前記アルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御するとともに、前記第2の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する制御部と、前記第1の光と前記第2の光を含む複数のコヒーレント光の一部を取り出して前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する光出射部とを含む、コヒーレント光源である。
【0012】
本発明によれば、光発生部が発生させてアルカリ金属原子集団を透過したコヒーレント

光の強度に基づいて、光発生部が発生させる第1の光と第2の光がアルカリ金属原子集団にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる条件が満たされるようにフィードバック制御がかかる。このフィードバック制御により、アルカリ金属原子集団のEIT現象が安定して持続する。すなわち、アルカリ金属原子集団の量子コヒーレンス状態を長時間安定して持続させることができる。そして、アルカリ金属原子集団をターゲットのアルカリ金属原子と同じ種類とすることで、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光はターゲットのアルカリ金属原子の量子コヒーレンス状態を安定して長時間持続させることを保証することができる。例えば、アルカリ金属原子集団をセシウム原子の集団とすると、本発明のコヒーレント光源が出射する複数のコヒーレント光をターゲットのセシウム原子に照射すれば、量子コヒーレンス状態を安定して長時間持続させることができる。
【0013】
(2)このコヒーレント光源において、前記光出射部は、前記光発生部が発生させた複数のコヒーレント光が入射し、当該複数のコヒーレント光の一部を取り出して前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射するようにしてもよい。
【0014】
(3)このコヒーレント光源において、前記光出射部は、前記アルカリ金属原子集団を透過した複数のコヒーレント光が入射し、当該複数のコヒーレント光の一部を取り出して前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射するようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、光発生部が発生させた複数のコヒーレント光を光出射部を通過せずにアルカリ金属原子集団に照射することができるので、アルカリ金属原子集団に照射される光の可干渉性(コヒーレント性)の劣化を回避することができる。従って、アルカリ金属原子集団におけるEIT現象の発現効率の劣化を防止し、量子コヒーレンス状態の高い安定性を維持することができる。
【0016】
(4)このコヒーレント光源において、前記光出射部は、入射した複数のコヒーレント光の一部を透過させるとともに、入射した当該複数のコヒーレント光の一部を反射させて前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射するビームスプリッターであってもよい。
【0017】
このようにすれば、簡単な構成でコヒーレント光を取り出すことができる。
【0018】
(5)本発明は、ターゲットとなるアルカリ金属原子に電磁誘起透過現象を発生させる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射するコヒーレント光源であって、ターゲットとなるアルカリ金属原子と、前記ターゲットとなるアルカリ金属原子と同じ種類のアルカリ金属原子集団と、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記アルカリ金属原子集団に照射する第1の光発生部と、前記アルカリ金属原子集団を透過した光の強度を検出する光検出部と、前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第1の光と前記第2の光との周波数差が、前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第1の光の波長が前記アルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御するとともに、前記第2の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する制御部と、第3の光と第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する第2の光発生部とを含み、前記制御部は、前記第3の光の周波数が前記第1の光の周波数と等しく、かつ、前記第4の光の周波数が前記第2の光の周波数と等しくなるように制御する、コヒーレント光源である。
【0019】
本発明によれば、第1の光発生部が発生させてアルカリ金属原子集団を透過したコヒーレント光の強度に基づいて、第1の光発生部が発生させる第1の光と第2の光がアルカリ金属原子集団にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる条件が満たされるようにフィードバック制御がかかる。このフィードバック制御により、アルカリ金属原子集団の量子コヒーレンス状態を長時間安定して持続させることができる。そして、アルカリ金属原子集団をターゲットのアルカリ金属原子と同じ種類とすることで、第1の光と同じ周波数の第3の光と、第2の光と同じ周波数の第4の光を含む複数のコヒーレント光はターゲットのアルカリ金属原子の量子コヒーレンス状態を安定して長時間持続させることを保証することができる。
【0020】
また、第1の光発生部とは別に第2の光発生部を設けることで、第1の発生部が発生させるコヒーレント光の一部を取り出して外部に出射する必要がなくなる。つまり、アルカリ金属原子集団にEIT現象を維持させるフィードバック制御とコヒーレント光の外部への出射とを切り離すことができるので、互いに悪影響を及ぼすことを避けることができる。
【0021】
(6)このコヒーレント光源において、前記第1の光発生部は、所与の中心波長を有する光を所与の変調信号で変調することにより、前記第1の光と前記第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、前記第2の光発生部は、前記中心波長に等しい中心波長を有する光を前記変調信号で変調することにより、前記第3の光と前記第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、前記制御部は、前記中心波長を制御する中心波長制御部と、前記光検出部が検出した光の強度に基づいて前記変調信号を生成する変調制御部と、を含むようにしてもよい。
【0022】
(7)本発明は、ターゲットとなるアルカリ金属原子に電磁誘起透過現象を発生させる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射するコヒーレント光源であって、ターゲットとなるアルカリ金属原子と、アルカリ金属原子集団と、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記アルカリ金属原子集団に照射する第1の光発生部と、前記アルカリ金属原子集団を透過した光の強度を検出する光検出部と、前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第1の光と前記第2の光との周波数差が、前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第1の光の波長が前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するとともに前記第2の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する第1の制御部と、第3の光と第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する第2の光発生部と、前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第3の光と前記第4の光との周波数差が、前記ターゲットとなるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第3の光の波長が前記ターゲットとなるアルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するとともに前記第4の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する第2の制御部と、を含む、コヒーレント光源である。
【0023】
本発明によれば、第1の光発生部が発生させてアルカリ金属原子集団を透過したコヒーレント光の強度に基づいて、第1の光発生部が発生させる第1の光と第2の光がアルカリ金属原子集団にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる条件が満たされるようにフィードバック制御がかかる。このフィードバック制御により、アルカリ金属原子集団の量子コヒーレンス状態を長時間安定して持続させることができる。そして、量子コヒーレンス状態のアルカリ金属原子集団を透過したコヒーレント光の強度に基づいて第2の光発生部の制御を行うことで、第2の光発生部が発生させる第3の光と第4の光がターゲットのアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる条件を安定して持続させることができる。
【0024】
また、第1の光発生部とは別に第2の光発生部を設けることで、第1の発生部が発生させるコヒーレント光の一部を取り出して外部に出射する必要がなくなる。つまり、アルカリ金属原子集団にEIT現象を維持させるフィードバック制御とコヒーレント光の外部への出射とを切り離すことができるので、互いに悪影響を及ぼすことを避けることができる。
【0025】
また、第2の制御部により、第3の光の周波数と第4の光の周波数を、第1の光の周波数や第2の光周波数とは独立して任意に設定することができるので、アルカリ金属原子集団と異なる種類のアルカリ金属原子に対する共鳴光対も発生させることができる。
【0026】
(8)このコヒーレント光源において、前記第1の光発生部は、第1の中心波長を有する光を第1の変調信号で変調することにより、前記第1の光と前記第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、前記第2の光発生部は、第2の中心波長を有する光を第2の変調信号で変調することにより、前記第3の光と前記第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、前記第1の制御部は、前記第1の中心波長を制御する第1の中心波長制御部と、前記光検出部が検出した光の強度に応じた所与の周波数の発振信号を生成する発振信号生成部と、前記発振信号生成部が生成する前記発振信号の周波数を変換し、前記第1の変調信号を生成する第1の周波数変換部とを含み、前記第2の制御部は、前記第2の中心波長を制御する第2の中心波長制御部と、前記発振信号生成部が生成する前記発振信号の周波数を変換し、前記第2の変調信号を生成する第2の周波数変換部とを含むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態のコヒーレント光源の機能ブロック図の第1の例。
【図2】本実施形態のコヒーレント光源の機能ブロック図の第2の例。
【図3】本実施形態のコヒーレント光源の機能ブロック図の第3の例。
【図4】第1実施形態のコヒーレント光源の構成図。
【図5】半導体レーザーの出射光の周波数スペクトルを示す概略図。
【図6】第2実施形態のコヒーレント光源の構成図。
【図7】第3実施形態のコヒーレント光源の構成図。
【図8】第4実施形態のコヒーレント光源の構成図。
【図9】変形例の半導体レーザーの出射光の周波数スペクトルを示す概略図。
【図10】変形例のコヒーレント光源の構成図。
【図11】アルカリ金属原子のエネルギー準位を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0029】
本実施形態のコヒーレント光源は、ターゲットとなるアルカリ金属原子に電磁誘起透過現象(EIT現象)を発生させる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射する。
【0030】
図1は、本実施形態のコヒーレント光源の機能ブロック図の第1の例である。図1に示すように、本実施形態のコヒーレント光源1は、光発生部10、アルカリ金属原子20の集団、光検出部30、制御部40、光出射部50、アルカリ金属原子80を含んで構成されるようにしてもよい。
【0031】
アルカリ金属原子20(ナトリウム(Na)原子、ルビジウム(Rb)原子、セシウム(Cs)原子等)は、ターゲットとなるアルカリ金属原子80と同じ種類のアルカリ金属原子である。
【0032】
光発生部10は、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光12(例えば、レーザー光)を発生させてアルカリ金属原子20の集団に照射する。例えば、光発生部10は、所与の中心波長を有する光を所与の変調信号で変調することにより、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光12を発生させるようにしてもよい。
【0033】
光検出部30は、アルカリ金属原子20の集団を透過した複数のコヒーレント光22の強度を検出する。
【0034】
ここで、例えば、気体状のアルカリ金属原子20を密閉容器に封入したガスセルを光発生部10と光検出部30の間に配置するような形態でもよい。また、密閉容器内に光発生部10、気体状のアルカリ金属原子20、光検出部30を共に封入し、光発生部10と光検出部30を対向させて配置するような形態でもよい。
【0035】
制御部40は、光検出部30が検出した光の強度に基づいて、第1の光と第2の光との周波数差が、アルカリ金属原子20の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、第1の光の波長がアルカリ金属原子20のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御するとともに、第2の光の波長が当該励起準位又はその近傍の準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する。
【0036】
例えば、制御部40は、複数のコヒーレント光12の中心波長を制御する中心波長制御部42と、光検出部30が検出した光の強度に基づいて光発生部10に供給する変調信号を生成する変調制御部44と、を含むようにしてもよい。
【0037】
光出射部50は、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光の一部を取り出して複数のコヒーレント光52をターゲットとなるアルカリ金属原子80に出射する。例えば、光出射部50は、光発生部10が発生させた複数のコヒーレント光12が入射し、複数のコヒーレント光12の一部を取り出してアルカリ金属原子80に出射するようにしてもよいし、アルカリ金属原子20の集団を透過した複数のコヒーレント光22が入射し、複数のコヒーレント光22の一部を取り出してアルカリ金属原子80に出射するようにしてもよい。
【0038】
図2は、本実施形態のコヒーレント光源の機能ブロック図の第2の例である。図2に示すように、本実施形態のコヒーレント光源1は、第1の光発生部10、アルカリ金属原子20の集団、光検出部30、制御部40、第2の光発生部60、アルカリ金属原子80を含んで構成されるようにしてもよい。
【0039】
第1の光発生部10、アルカリ金属原子20の集団、光検出部30の機能は、それぞれ図1の光発生部10、アルカリ金属原子20の集団、光検出部30の機能と同じである。
【0040】
第2の光発生部60は、第3の光と第4の光を含む複数のコヒーレント光62を発生させてターゲットとなるアルカリ金属原子80に出射する。
【0041】
制御部40は、図1の制御部40と同じく第1の光と第2の光の周波数差とそれぞれの光の波長を制御し、さらに、第3の光の周波数が第1の光の周波数と等しく、かつ、第4の光の周波数が第2の光の周波数と等しくなるように制御する。
【0042】
例えば、第1の光発生部10は、所与の中心波長を有する光を所与の変調信号で変調することにより、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光12を発生させ、第2の光発生部60は、第1の光発生部10と同じ中心波長を有する光を、第1の光発生部10と同じ変調信号で変調することにより、第3の光と第4の光を含む複数のコヒーレント光62を発生させるようにしてもよい。この場合、制御部40は、当該中心波長を制御する中心波長制御部42と、光検出部30が検出した光の強度に基づいて当該変調信号を生成する変調制御部44と、を含んで構成してもよい。
【0043】
図3は、本実施形態のコヒーレント光源の機能ブロック図の第3の例である。図3に示すように、本実施形態のコヒーレント光源1は、第1の光発生部10、アルカリ金属原子20の集団、光検出部30、第1の制御部40、第2の光発生部60、第2の制御部70、アルカリ金属原子80を含んで構成されるようにしてもよい。
【0044】
第1の光発生部10、光検出部30、第1の制御部40、第2の光発生部60の機能は、それぞれ図2の第1の光発生部10、光検出部30、制御部40、第2の光発生部60の機能と同じである。
【0045】
アルカリ金属原子20は、任意の種類のアルカリ金属原子であり、ターゲットとなるアルカリ金属原子80と異なる種類のアルカリ金属原子であってもよいし同じ種類のアルカリ金属原子であってもよい。
【0046】
第2の制御部70は、光検出部30が検出した光の強度に基づいて、第2の光発生部60が発生させる複数のコヒーレント光に含まれる第3の光と第4の光との周波数差が、ターゲットとなるアルカリ金属原子80の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、第3の光の波長がターゲットとなるアルカリ金属原子80のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するとともに第4の光の波長が励起準位又はその近傍の準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する。
【0047】
例えば、第1の光発生部10は、第1の中心波長を有する光を第1の変調信号で変調することにより、第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光12を発生させ、第2の光発生部60は、第2の中心波長を有する光を第2の変調信号で変調することにより、第3の光と第4の光を含む複数のコヒーレント光62を発生させるようにしてもよい。この場合、第1の制御部40は、第1の中心波長を制御する第1の中心波長制御部42と、光検出部30が検出した光の強度に基づいて第1の変調信号を生成する変調制御部44と、を含んで構成してもよい。この変調制御部44は、例えば、光検出部30が検出した光の強度に応じた所与の周波数の発振信号を生成する発振信号生成部48と、発振信号生成部48が生成する発振信号の周波数を変換し、第1の変調信号を生成する第1の周波数変換部46とを含むように構成してもよい。また、第2の制御部70は、第2の中心波長を制御する第2の中心波長制御部72と、発振信号生成部48が生成する発振信号の周波数を変換し、第2の変調信号を生成する第2の周波数変換部76とを含むように構成してもよい。
【0048】
以下、本実施形態のコヒーレント光源の具体的な構成について説明する。
【0049】
[第1実施形態]
図4は、第1実施形態のコヒーレント光源の構成図である。
【0050】
図4に示すように、第1実施形態のコヒーレント光源100Aは、アルカリ金属原子80の集団、半導体レーザー110、ガスセル120、光検出器130、検波回路140、電流駆動回路150、低周波発振器160、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)180、変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210、ビームスプリッター220を含んで構成されている。
【0051】
ガスセル120は、容器中に気体状のアルカリ金属原子が封入されたものである。
【0052】
半導体レーザー110は、波長(周波数)の異なる複数のコヒーレント光112を発生させる。具体的には、電流駆動回路150が出力する駆動電流によって、半導体レーザー110の出射光の中心波長λ(中心周波数f)が制御される。そして、半導体レーザー110は、周波数変換回路210の出力信号を変調信号(変調周波数f)として変調がかけられる。すなわち、電流駆動回路150による駆動電流に、周波数変換回路210の出力信号(変調信号)を重畳することにより変調がかかり、半導体レーザー110は、中心波長λ(中心周波数f)のコヒーレント光や変調成分の各々に相当する複数のコヒーレント光112を発生させる。このような半導体レーザー110は、例えば、端面発光レーザー(Edge Emitting Laser)や、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の面発光レーザーなどで実現することができる。
【0053】
ビームスプリッター220は、半導体レーザー110が出射する複数のコヒーレント光112の各々を、その一部を透過させるとともに残りを反射させることで分離する。ビームスプリッター220は、1:1に分離するハーフミラーとして実現してもよい。また、ビームスプリッター220は、偏光成分を分離する偏光ビームスプリッターであってもよい。また、半導体レーザー110が出射する複数のコヒーレント光112を全反射ミラーのエッジにあてて分離するようにしてもよい。
【0054】
ビームスプリッター220を透過した複数のコヒーレント光222は、ガスセル120に入射する。一方、ビームスプリッター220で反射して分離された複数のコヒーレント光224は、ターゲットとなるアルカリ金属原子80に出射される。
【0055】
光検出器130は、ガスセル120を透過した光を検出し、光の強度に応じた検出信号(EIT信号)を出力する。前述したように、周波数差がΔE12に相当する周波数と一致する2種類のコヒーレント光をアルカリ金属原子に照射するとEIT現象を起こす。このEIT現象を起こすアルカリ金属原子の数が多いほどガスセル120を透過する光の強度が増大し、光検出器130の出力信号(EIT信号)の電圧レベルが高くなる。
【0056】
光検出器130の出力信号は検波回路140に入力される。検波回路140は、数Hz〜数百Hz程度の低い周波数で発振する低周波発振器160の発振信号を用いて光検出器130の出力信号を同期検波する。
【0057】
電流駆動回路150は、検波回路140の出力信号に応じた大きさの駆動電流を発生して半導体レーザー110に供給し、半導体レーザー110の出射光の中心波長λ(中心周波数f)を制御する。具体的には、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子の3/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)、3/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)としたとき、中心波長λが(λ+λ)/2に一致する(中心周波数fが(f+f)/2に一致する)ように制御される。あるいは、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子の1/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)、1/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)としたとき、中心波長λが(λ+λ)/2に一致する(中心周波数fが(f+f)/2に一致する)ように制御される。ただし、中心波長λは必ずしも(λ+λ)/2と正確に一致させる必要はなく、(λ+λ)/2を中心とする所定範囲の波長であってもよい。なお、検波回路140による同期検波を可能とするために、電流駆動回路150が発生する駆動電流には低周波発振器160の発振信号(検波回路140に供給される発振信号と同じ信号)が重畳される。
【0058】
半導体レーザー110、ガスセル120、光検出器130、検波回路140、電流駆動回路150を通るフィードバックループにより、半導体レーザー110が発生させるコヒーレント光の中心波長λ(中心周波数f)が微調整される。
【0059】
光検出器130の出力信号は検波回路170にも入力される。検波回路170は、数Hz〜数百Hz程度の低い周波数で発振する低周波発振器200の発振信号を用いて光検出器130の出力信号を同期検波する。そして、検波回路170の出力信号の大きさに応じて、電圧制御水晶発振器(VCXO)180の発振周波数が微調整される。電圧制御水晶発振器(VCXO)180は、例えば、数MHz〜数10MHz程度で発振するようにしてもよい。
【0060】
変調回路190は、検波回路170による同期検波を可能とするために、低周波発振器200の発振信号(検波回路170に供給される発振信号と同じ)を変調信号として電圧制御水晶発振器(VCXO)180の出力信号を変調する。変調回路190は、周波数混合器(ミキサー)、周波数変調(FM:Frequency Modulation)回路、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)回路等により実現することができる。
【0061】
周波数変換回路210は、変調回路190の出力信号を、ΔE12に相当する周波数の1/2の周波数の信号に変換する。周波数変換回路210は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路により実現することができる。
【0062】
半導体レーザー110、ガスセル120、光検出器130、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、変調回路190、周波数変換回路210を通るフィードバックループにより、周波数変換回路210の出力信号の周波数がΔE12に相当する周波数の1/2の周波数と正確に一致するように微調整される。例えば、アルカリ金属原子がセシウム原子であれば、ΔE12に相当する周波数が9.192631770GHzなので、周波数変換回路210の出力信号の周波数は4.596315885GHzになる。
【0063】
そして、前述したように、周波数変換回路210の出力信号が変調信号(変調周波数f)となり、半導体レーザー110が共鳴光対を含む複数のコヒーレント光112を発生させ、ビームスプリッター220を透過した共鳴光対を含む複数のコヒーレント光222がガスセルに入射するとともに、ビームスプリッター220で分離された共鳴光対を含む複数のコヒーレント光224がアルカリ金属原子80に出射する。
【0064】
図5は、半導体レーザー110の出射光の周波数スペクトルを示す概略図である。図5において、横軸は光の周波数であり、縦軸は光の強度である。
【0065】
図5に示すように、半導体レーザー110の出射光には、中心周波数f(=v/λ:vは光の速度、λは中心波長)を有するコヒーレント光と、その両サイドに変調周波数fずつ周波数が異なる複数のコヒーレント光が含まれている。変調周波数fはΔE12に相当する周波数の1/2に等しいので、周波数f(=f+f)のコヒーレント光と周波数f(=f−f)のコヒーレント光は、その差f−f(=2f)がΔE12に等しく、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる。
【0066】
このような構成のコヒーレント光源100Aでは、2つのコヒーレント光の周波数差がΔE12に相当する周波数と正確に一致しなければガスセル120に封入されたアルカリ金属原子がEIT現象を起こさないため、その周波数差に対して光検出器150の検出量は極めて敏感に変化する。そのため、周波数変換回路210の出力信号の周波数(変調周波数f)がΔE12の1/2の周波数に極めて正確に一致するようにフィードバック制御がかかる。その結果、半導体レーザー110は、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子に量子コヒーレンス状態を維持させることができるほど周波数安定度が極めて高い共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射することになる。
【0067】
本実施形態のコヒーレント光源100Aは、ビームスプリッター220によりこの複数のコヒーレント光の一部を分離することで、アルカリ金属原子80に量子コヒーレンス状態を維持させることができるほど極めて高い周波数安定度が確保された共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射させることができる。
【0068】
なお、図4の半導体レーザー110、ガスセル120に含まれるアルカリ金属原子、光検出器130、ビームスプリッター220は、それぞれ図1の光発生部10、アルカリ金属原子20、光検出部30、光出射部50に対応する。また、検波回路140、電流駆動回路150、低周波発振器160、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210による構成は、図1の制御部40に対応する。また、検波回路140、電流駆動回路150、低周波発振器160による構成は、図1の中心波長制御部42に対応する。また、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210による構成は、図1の変調制御部44に対応する。
【0069】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態のコヒーレント光源の構成図である。図6において、図4と同じ構成には同じ符号を付している。
【0070】
第2実施形態のコヒーレント光源100Bは、第1実施形態のコヒーレント光源100Aに対して、ビームスプリッター220がガスセル120と光検出器130の間に配置されている点が異なる。
【0071】
第2実施形態の光源100Bでは、半導体レーザー110が出射する複数のコヒーレント光112は、直接ガスセル120に入射する。
【0072】
ビームスプリッター220は、ガスセル120を透過した複数のコヒーレント光122の各々を、その一部を透過させるとともに残りを反射させることで分離する。
【0073】
ビームスプリッター220を透過した複数のコヒーレント光222は、光検出器130に入射する。一方、ビームスプリッター220で反射して分離された複数のコヒーレント光224は、ターゲットとなるアルカリ金属原子80に出射される。
【0074】
コヒーレント光源100Bのその他の構成は、図4に示した第1実施形態のコヒーレント光源100Aと同じであるため、その説明を省略する。
【0075】
第2実施形態のコヒーレント光源100Bも、第1実施形態と同様のフィードバック制御により、アルカリ金属原子80に量子コヒーレンス状態を維持させることができるほど極めて高い周波数安定度が確保された共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射することができる。
【0076】
ところで、第1実施形態のコヒーレント光源100Aでは、ビームスプリッター220が半導体レーザー110とガスセル120の間に配置されているため、ビームスプリッター220を透過したコヒーレント光の可干渉性(コヒーレント性)が若干劣化する可能性がある。そして、共鳴光対となる2種類のコヒーレント光の可干渉性(コヒーレント性)が劣化すると、ガスセル120の内部でEIT現象を起こすアルカリ金属原子の数が減少する。そのため、ガスセル120を透過する光の強度が減少し、光検出器130の出力信号(EIT信号)の電圧レベルが低くなる。その結果、フィードバックループの安定性が低下し、共鳴光対の周波数安定度が若干劣化する可能性がある。
【0077】
これに対して、第2実施形態のコヒーレント光源100Bでは、ビームスプリッター220がガスセル120と光検出器130の間に配置されているため、半導体レーザー110から出射した共鳴光対は、可干渉性(コヒーレント性)が劣化せずにガスセル120に入射する。従って、第2実施形態のコヒーレント光源によれば、第1実施形態よりもさらに周波数安定度が高い共鳴光対を含む複数のコヒーレント光をアルカリ金属原子80に出射させることが期待できる。
【0078】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態のコヒーレント光源の構成図である。図7において、図4と同じ構成には同じ符号を付している。
【0079】
第3実施形態のコヒーレント光源100Cは、第1実施形態のコヒーレント光源100Aに対して、ビームスプリッター220が削除されるとともに半導体レーザー230が追加されている点が異なる。
【0080】
第3実施形態の光源100Cでは、半導体レーザー110が出射する複数のコヒーレント光112は、直接ガスセル120に入射する。そして、ガスセル120を透過した複数のコヒーレント光222は、光検出器130に入射する。
【0081】
半導体レーザー230は、電流駆動回路150が出力する駆動電流(半導体レーザー110と同じ駆動電流)によって、出射光の中心波長λ(中心周波数f)が制御される。そして、半導体レーザー230は、周波数変換回路210の出力信号を変調信号(変調周波数f)として変調がかけられる。すなわち、電流駆動回路150による駆動電流に、周波数変換回路210の出力信号(変調信号)を重畳することにより変調がかかり、半導体レーザー230は、中心波長λ(中心周波数f)のコヒーレント光や変調成分の各々に相当する複数のコヒーレント光232を発生させる。この複数のコヒーレント光232がターゲットとなるアルカリ金属原子80に出射される。半導体レーザー230は、例えば、端面発光レーザーや、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の面発光レーザーなどで実現することができる。
【0082】
コヒーレント光源100Cのその他の構成は、図4に示した第1実施形態のコヒーレント光源100Aと同じであるため、その説明を省略する。
【0083】
このような構成のコヒーレント光源100Cでは、半導体レーザー230に、半導体レーザー110に供給される駆動電流と変調信号と同じ駆動電流と変調信号が供給される。そのため、半導体レーザー230は、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子と同じ種類のアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光232を発生させることができる。
【0084】
すなわち、第3実施形態のコヒーレント光源100Cによれば、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子と同じ種類のアルカリ金属原子80をターゲットとして、量子コヒーレンス状態を維持させることができるほど極めて高い周波数安定度が確保された共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射することができる。
【0085】
また、第3実施形態のコヒーレント光源100Cによれば、第2実施形態と同様に、半導体レーザー110から出射した共鳴光対は、可干渉性(コヒーレント性)が劣化させずにガスセル120に入射するので、第1実施形態よりもさらに周波数安定度が高い共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射させることが期待できる。
【0086】
なお、図7の半導体レーザー110、ガスセル120に含まれるアルカリ金属原子、光検出器130、半導体レーザー230は、それぞれ図2の第1の光発生部10、アルカリ金属原子20、光検出部30、第2の光発生部60に対応する。また、検波回路140、電流駆動回路150、低周波発振器160、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210による構成は、図2の制御部40に対応する。また、検波回路140、電流駆動回路150、低周波発振器160による構成は、図2の中心波長制御部42に対応する。また、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210による構成は、図2の変調制御部44に対応する。
【0087】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態のコヒーレント光源の構成図である。図8において、図4と同じ構成には同じ符号を付している。
【0088】
第4実施形態のコヒーレント光源100Dは、第1実施形態のコヒーレント光源100Aに対して、ビームスプリッター220が削除されるとともに、周波数変換回路240、電流駆動回路250、半導体レーザー260が追加されている点が異なる。
【0089】
周波数変換回路240は、電圧制御水晶発振器(VCXO)180の出力信号を、設定された比率で周波数変換し、ターゲットとなるアルカリ金属原子80の第1の基底準位(1/2のI−1/2の基底準位)と第2の基底準位(1/2のI+1/2の基底準位)とのエネルギー差ΔE12に相当する周波数の1/2の周波数の信号を生成する。このターゲットとなるアルカリ金属原子80は、ガスセル120に封入されているアルカリ金属原子と同じ種類のものでなくてもよい。例えば、ガスセル120にセシウム原子が封入されている場合に、周波数変換回路240は、ルビジウム原子の2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数の1/2の周波数の信号を生成するようにしてもよい。周波数変換回路240は、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路により実現することができる。
【0090】
電流駆動回路250は、ターゲットとなるアルカリ金属原子80に応じた大きさの駆動電流を発生して半導体レーザー260に供給し、半導体レーザー260の出射光の中心波長λ(中心周波数f)を制御する。具体的には、ターゲットとなるアルカリ金属原子80の3/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)、3/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)としたとき、中心波長λが(λ+λ)/2に一致する(中心周波数fが(f+f)/2に一致する)ように制御される。あるいは、ターゲットとなるアルカリ金属原子80の1/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)、1/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長をλ(周波数f)としたとき、中心波長λが(λ+λ)/2に一致する(中心周波数fが(f+f)/2に一致する)ように制御される。ただし、中心波長λは必ずしも(λ+λ)/2と正確に一致させる必要はなく、(λ+λ)/2を中心とする所定範囲の波長であってもよい。
【0091】
半導体レーザー260は、電流駆動回路250が出力する駆動電流によって、出射光の中心波長λ(中心周波数f)が制御されるとともに、周波数変換回路250の出力信号を変調信号(変調周波数f)として変調がかけられる。すなわち、電流駆動回路250による駆動電流に、周波数変換回路250の出力信号(変調信号)を重畳することにより変調がかかり、半導体レーザー260は、中心波長λ(中心周波数f)のコヒーレント光や変調成分の各々に相当する複数のコヒーレント光262を発生させる。この複数のコヒーレント光262がターゲットとなるアルカリ金属原子80に出射される。半導体レーザー260は、例えば、端面発光レーザーや、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の面発光レーザーなどで実現することができる。
【0092】
コヒーレント光源100Dのその他の構成は、図4に示した第1実施形態のコヒーレント光源100Aと同じであるため、その説明を省略する。
【0093】
このような構成のコヒーレント光源100Dでは、周波数変換回路210の出力信号の周波数(変調周波数f)がガスセル120に封入されたアルカリ金属原子の2つの基底準位のエネルギー差ΔE12の1/2の周波数に極めて正確に一致するようにフィードバック制御がかかり、このフィードバックループ内に配置されている電圧制御水晶発振器(VCXO)180も極めて高い周波数安定度で発振する。従って、周波数変換回路240により、電圧制御水晶発振器(VCXO)180の出力信号を、ターゲットとなるアルカリ金属原子80の2つの基底準位のエネルギー差ΔE12に相当する周波数の1/2の周波数と極めて正確に一致する周波数の信号に変換することができる。従って、半導体レーザー260は、ターゲットとなるアルカリ金属原子80にEIT現象を起こさせる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光262を出射することができる。
【0094】
すなわち、第4実施形態のコヒーレント光源100Dによれば、ターゲットのアルカリ金属原子80に量子コヒーレンス状態を維持させることができるほど極めて高い周波数安定度が確保された共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射することができる。
【0095】
また、第4実施形態のコヒーレント光源100Dによれば、周波数変換回路240の周波数変換比率と電流駆動回路250の駆動電流を適切な値に設定することで、ターゲットの任意のアルカリ金属原子80に対する共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射することができる。
【0096】
なお、図8の半導体レーザー110、ガスセル120に含まれるアルカリ金属原子、光検出器130、半導体レーザー260は、それぞれ図3の第1の光発生部10、アルカリ金属原子20、光検出部30、第2の光発生部60に対応する。また、検波回路140、電流駆動回路150、低周波発振器160、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210による構成は、図3の第1の制御部40に対応する。また、検波回路140、電流駆動回路150、低周波発振器160による構成は、図3の第1の中心波長制御部42に対応する。また、検波回路170、電圧制御水晶発振器(VCXO)180、変調回路190、低周波発振器200、周波数変換回路210による構成は、図3の変調制御部44に対応する。また、電圧制御水晶発振器(VCXO)180と周波数変換回路210は、それぞれ図3の発振信号生成部48と第1の周波数変換部46に対応する。また、周波数変換回路240と電流駆動回路250による構成は、図3の第2の制御部に対応し、周波数変換回路240と電流駆動回路250は、それぞれ図3の第2の周波数変換部76と第2の中心波長制御部72に対応する。
【0097】
以上に説明した第1実施形態〜第4実施形態のコヒーレント光源は、例えば、量子発振器、量子暗号、量子シミュレーション、量子コンピューター等、量子コヒーレンス状態の制御、保持を必要とする量子デバイスの光源として利用することができる。
【0098】
[変形例]
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0099】
例えば、本実施形態のコヒーレント光源において、半導体レーザー110の中心波長λ(中心周波数f)が、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子の1/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI+1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ(周波数f)に一致するように電流駆動回路150による駆動電流を制御するとともに、周波数変換回路210が変調回路190の出力信号をΔE12に相当する周波数に等しい周波数の信号に変換するように変形してもよい。また、本実施形態のコヒーレント光源100Aにおいて、半導体レーザー110の中心波長λ(中心周波数f)が、ガスセル120に封入されたアルカリ金属原子の1/2のI−1/2の励起準位(I+1/2の励起準位でもよい)と1/2のI−1/2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長λ(周波数f)に一致するように電流駆動回路150による駆動電流を制御するとともに、周波数変換回路210が変調回路190の出力信号をΔE12に相当する周波数に等しい周波数の信号に変換するように変形してもよい。前者のケースでは中心波長λがλに一致する(中心周波数fがfに一致する)ように制御され、後者のケースでは中心波長λがλに一致する(中心周波数fがfに一致する)ように制御される。
【0100】
図9(A)は、前者のケースの半導体レーザー110の出射光の周波数スペクトルを示す概略図であり、図9(B)は、後者のケースの半導体レーザー110の出射光の周波数スペクトルを示す概略図である。図9(A)及び図9(B)において、横軸は光の周波数であり、縦軸は光の強度である。図9(A)の場合は、fとfの差f−fがΔE12に相当する周波数に等しいので、周波数fのコヒーレント光と中心周波数fのコヒーレント光がガスセル120に封入されたアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる。一方、図9(B)の場合は、fとfの差f−fがΔE12に相当する周波数に等しいので、中心周波数fのコヒーレント光と周波数fのコヒーレント光がガスセル120に封入されたアルカリ金属原子にEIT現象を起こさせる共鳴光対となる。
【0101】
また、同様に、図8に示した第4実施形態のコヒーレント光源100Dにおいて、半導体レーザー260に、図9(A)や図9(B)に示すような周波数スペクトルを有するコヒーレント光を発生させるようにしてもよい。
【0102】
また、例えば、図10に示すように、図4に示した第1実施形態のコヒーレント光源100Aを電気光学変調器(EOM)を用いた構成に変形してもよい。図10において、図4と同じ構成には同じ符号を付しており、その説明を省略する。
【0103】
図10に示すコヒーレント光源100Eでは、半導体レーザー110は、周波数変換回路210の出力信号(変調信号)による変調がかけられず、単一周波数fの光を発生させる。この周波数fの光は、電気光学変調器(EOM)270に入射し、周波数変換回路210の出力信号(変調信号)によって変調がかけられる。その結果、図5と同様の周波数スペクトルを有する光を発生させることができる。コヒーレント光源100Eでは、半導体レーザー110と電気光学変調器(EOM)270による構成が図1の光発生部10に対応する。なお、電気光学変調器(EOM)270の代わりに、音響光学変調器(AOM:Acousto-Optic Modulator)を用いてもよい。
【0104】
同様に、第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態のコヒーレント光源を電気光学変調器(EOM)や音響光学変調器(AOM)を用いた構成に変形してもよい。
【0105】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0106】
1 コヒーレント光源、10 光発生部(第1の光発生部)、12 コヒーレント光、20 アルカリ金属原子、22 コヒーレント光、30 光検出部、40 制御部(第1の制御部)、42 中心波長制御部(第1の中心波長制御部)、44 変調制御部、46 第1の周波数変換部、48 発振信号生成部、50 光出射部、52 コヒーレント光、60 第2の光発生部、62 コヒーレント光、70 第2の制御部、72 第2の中心波長制御部、76 第1の周波数変換部、80 アルカリ金属原子、100A,100B,100C,100D,10E コヒーレント光源、110 半導体レーザー、120 ガスセル、130 光検出器、140 検波回路、150 電流駆動回路、160 低周波発振器、170 検波回路、180 電圧制御水晶発振器(VCXO)、190 変調回路、200 低周波発振器、210 周波数変換回路、220 ビームスプリッター、222,224 コヒーレント光、230 半導体レーザー、232 コヒーレント光、240 周波数変換回路、250 電流駆動回路、260 半導体レーザー、262 コヒーレント光、270 電気光学変調器(EOM)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットとなるアルカリ金属原子に電磁誘起透過現象を発生させる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射するコヒーレント光源であって、
ターゲットとなるアルカリ金属原子と、
前記ターゲットとなるアルカリ金属原子と同じ種類のアルカリ金属原子集団と、
第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記アルカリ金属原子集団に照射する光発生部と、
前記アルカリ金属原子集団を透過した光の強度を検出する光検出部と、
前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第1の光と前記第2の光との周波数差が、前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第1の光の波長が前記アルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御するとともに、前記第2の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する制御部と、
前記第1の光と前記第2の光を含む複数のコヒーレント光の一部を取り出して前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する光出射部とを含む、コヒーレント光源。
【請求項2】
請求項1において、
前記光出射部は、
前記光発生部が発生させた複数のコヒーレント光が入射し、当該複数のコヒーレント光の一部を取り出して前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する、コヒーレント光源。
【請求項3】
請求項1において、
前記光出射部は、
前記アルカリ金属原子集団を透過した複数のコヒーレント光が入射し、当該複数のコヒーレント光の一部を取り出して前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する、コヒーレント光源。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記光出射部は、
入射した複数のコヒーレント光の一部を透過させるとともに、入射した当該複数のコヒーレント光の一部を反射させて前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射するビームスプリッターである、コヒーレント光源。
【請求項5】
ターゲットとなるアルカリ金属原子に電磁誘起透過現象を発生させる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射するコヒーレント光源であって、
ターゲットとなるアルカリ金属原子と、
前記ターゲットとなるアルカリ金属原子と同じ種類のアルカリ金属原子集団と、
第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記アルカリ金属原子集団に照射する第1の光発生部と、
前記アルカリ金属原子集団を透過した光の強度を検出する光検出部と、
前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第1の光と前記第2の光との周波数差が、前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第1の光の波長が前記アルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御するとともに、前記第2の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する制御部と、
第3の光と第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する第2の光発生部とを含み、
前記制御部は、
前記第3の光の周波数が前記第1の光の周波数と等しく、かつ、前記第4の光の周波数が前記第2の光の周波数と等しくなるように制御する、コヒーレント光源。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1の光発生部は、
所与の中心波長を有する光を所与の変調信号で変調することにより、前記第1の光と前記第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、
前記第2の光発生部は、
前記中心波長に等しい中心波長を有する光を前記変調信号で変調することにより、前記第3の光と前記第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、
前記制御部は、
前記中心波長を制御する中心波長制御部と、前記光検出部が検出した光の強度に基づいて前記変調信号を生成する変調制御部と、を含む、コヒーレント光源。
【請求項7】
ターゲットとなるアルカリ金属原子に電磁誘起透過現象を発生させる共鳴光対を含む複数のコヒーレント光を出射するコヒーレント光源であって、
ターゲットとなるアルカリ金属原子と、
アルカリ金属原子集団と、
第1の光と第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記アルカリ金属原子集団に照射する第1の光発生部と、
前記アルカリ金属原子集団を透過した光の強度を検出する光検出部と、
前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第1の光と前記第2の光との周波数差が、前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第1の光の波長が前記アルカリ金属原子集団に含まれるアルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するとともに前記第2の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する第1の制御部と、
第3の光と第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させて前記ターゲットとなるアルカリ金属原子に出射する第2の光発生部と、
前記光検出部が検出した光の強度に基づいて、前記第3の光と前記第4の光との周波数差が、前記ターゲットとなるアルカリ金属原子の第1の基底準位と第2の基底準位とのエネルギー差に相当する周波数にそれぞれ一致するように制御し、かつ、前記第3の光の波長が前記ターゲットとなるアルカリ金属原子のいずれかの励起準位又はその近傍の準位と前記第1の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するとともに前記第4の光の波長が前記励起準位又はその近傍の準位と前記第2の基底準位とのエネルギー差に相当する波長と一致するように制御する第2の制御部と、を含む、コヒーレント光源。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1の光発生部は、
第1の中心波長を有する光を第1の変調信号で変調することにより、前記第1の光と前記第2の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、
前記第2の光発生部は、
第2の中心波長を有する光を第2の変調信号で変調することにより、前記第3の光と前記第4の光を含む複数のコヒーレント光を発生させ、
前記第1の制御部は、
前記第1の中心波長を制御する第1の中心波長制御部と、前記光検出部が検出した光の強度に応じた所与の周波数の発振信号を生成する発振信号生成部と、前記発振信号生成部が生成する前記発振信号の周波数を変換し、前記第1の変調信号を生成する第1の周波数変換部とを含み、
前記第2の制御部は、
前記第2の中心波長を制御する第2の中心波長制御部と、前記発振信号生成部が生成する前記発振信号の周波数を変換し、前記第2の変調信号を生成する第2の周波数変換部とを含む、コヒーレント光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−190916(P2012−190916A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51748(P2011−51748)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】