説明

コンテナキャリア

【課題】コンテナキャリアの後進時に、左右の油圧シリンダへの圧油の流通を、前進時とは左右逆に切換えるようにし、運転操作の煩わしさとハンドルの切換操作の間違いを解消することのできるコンテナキャリアを提供する。
【解決手段】車両の左右下部フレーム53L、53Rに複数の前方車輪と単数の後方車輪とを配列し、前後逆位相で操舵する油圧シリンダ75、76を設け、ハンドル56の回転軸に設けたステアリングバルブ60と、前後進切換レバー58とを備え、左右の油圧シリンダを第1油圧回路81で、ステアリングバルブと左右の油圧シリンダとを第2油圧回路82で接続し、ステアリングバルブの下流側で左右の油圧シリンダへの圧油の流通を前後進時に切換える切換制御機構31を第2油圧回路82に設け、コンテナキャリアの後進時に、左右の油圧シリンダ75、76への圧油の流通を前進時とは左右逆に切換えるようにしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナヤード内で前後進を繰り返すコンテナキャリア詳しくは、コンテナキャリアの操舵装置の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾などのコンテナヤード内で、コンテナ(海上コンテナなど)を搬送するコンテナキャリア(ストラドルキャリア)50は、例えば、図6に示すような門型構造体の車両51がある。ここで、前方部とはコンテナキャリア50が前進P方向に走行する場合、運転室52が車両51の後方部に位置し、その運転室の反対側の前方位置を云い、また、各構成部材の中で左右一対の左側の部材にはL、右側の部材にはRを付している。
【0003】
車両51は、前進P方向に向かって左側部に下部フレーム53Lと右側部に下部フレーム53Rとをもち、各下部フレームはボックスビームでコンテナキャリア50の前後方向に伸びている。また、左右の後方縦フレーム54の上端部には平面視でほぼU字状の後方張出し部材55を連結し、その上面に運転室52を設けている。運転室52は、図6〜図8に示すようにコンテナキャリア50の後方部で右側に偏心して、ほぼ箱型に形成し前面52aと後面52b並びに、左側面52cと右側面52dにはそれぞれガラス板を適宜分割して設け、後面(後進Q方向に面する)52bには出入口扉52eを備えている。運転室52の内部には、運転操作用のハンドル(ステアリング)56と運転席57(図8では運転席を省略している)、前後進切換レバー58並びに、運転操作用ペダルのアクセルペダル59aとブレーキペダル59bなどを配設している。ハンドル56の回転軸には後述するステアリングバルブ(オービツトロール)60を設け、運転席57は、コンテナキャリア50の前後方向(長手方向)に対して直交する方向で(矢印S方向で運転室の左側面52cに対面して)床面52fに設けている。前後進切換レバー58は前後進切換スイッチ61を組み込み、運転席57の左側に設けている操作パネル62の上面に取付けている。次に、図6、図7に示すように左右の下部フレーム53L、53Rには、複数の前方車輪として例えば、第1車輪63L、63Rと第2車輪64L、64Rと第3車輪65L、65Rを、単数の後方車輪として第3車輪から離れて第4車輪66L、66Rとを配列している。なお、これらの各車輪は左右方向への操向を可能とする操向車輪であり、第3車輪65L、65Rが例えば、駆動輪としている。また、左側の下部フレーム53Lの上面には後方部に動力(エンジン)67、その前方に発電機68などを搭載し、右側の下部フレーム53Rの上面には後方部にインバータ69、その前方に抵抗器70などを搭載している。更に、第3車輪65L、65Rを回転駆動する電動機71を、第3車輪の各車軸の上方部に配置している。なお、各電動機71は、動力伝達機構72を介して第3車輪65L、65Rを駆動している。なお、エンジン67によって駆動される油圧源(油圧ポンプ)73とオイルタンク74(図9)などは、左側下部フレーム53L上面の適宜位置に設けている。そして、上述の第1車輪63L、63Rから第3車輪65L、65Rまでの前方車輪と、第4車輪66L、66Rの後方車輪とを前後逆位相で操舵する左右の油圧シリンダ(ステアリングシリンダ)75、76を左右の下部フレーム53L、53Rの後方下部に配置し、各車輪を懸架するフォーク77との間を後述するリンク機構78によりそれぞれ連結している。
【0004】
次に、左右のステアリングシリンダ75、76に圧油を流通する油圧機器と油圧回路について、図9により説明する。
【0005】
上述したステアリングバルブ60は、ハンドル56を左側(矢印L)または、右側(矢印R)に回転操作することにより、油圧ポンプ73からの圧油を左側(L)ポートまたは、右側(R)ポートに切換制御するバルブで、Pポートとオイルタンク74とは、油圧ポンプ73を介して圧油供給回路79で、Tポートとオイルタンク74とは、圧油戻し回路80とでそれぞれ接続している。また、左右のステアリングシリンダ75、76の収縮側油室75bと76bとを第1油圧回路81で接続し、左右のステアリングシリンダの伸張側油室75a並びに、76aとステアリングバルブ60のLポート並びに、Rポートとは第2油圧回路82とでそれぞれ接続している。
【0006】
このように構成されたコンテナキャリア50は、コンテナヤード内で図6に示すように前進P方向並びに、後進Q方向とほぼ同じ頻度で前後進を繰り返し走行している。従って、前後進とも運転位置を変えることなく運転視界も損なわないようにするため、図7に示すように運転席57を上述のごとく、コンテナキャリア50の前後方向に対して直交する方向(矢印S方向)に向けて設けている。このような運転席の位置で、ハンドル56の回転操作による各車輪の操向と、コンテナキャリア50の旋回について図7、図9により 以下に説明する。
【0007】
図7(a)に示すように、コンテナキャリア50が前進P方向に走行する場合、運転者は上述の運転席57に座り、体をやや右側に捩り顔を進行方向である運転室の前面52aに向ける。つまり、前進時には前進方向に向く運転姿勢で例えば、ハンドル56を左側(矢印L方向)に回転操作することにより、図9に示すステアリングバルブ60のLポートが開き、左側ステアリングシリンダは伸張側油室75aにLポートからの圧油が流通して伸張し、右側ステアリングシリンダは収縮側油室76bに第1油圧回路81を介して左側ステアリングシリンダの収縮側油室75bからの圧油が流通して収縮し、図7(a)に示すように前進P方向に見て、第1車輪63L、63R、第2車輪64L、64R、並びに、第3車輪65L、65Rなどの前方車輪は左側に、第4車輪66L、66Rなどの後方車輪は右側にそれぞれ向きを換えて、前後逆位相に操舵されるので、コンテナキャリア50は、ハンドル56の回転方向と同じ左側(矢印L’)方向に旋回する。一方、ハンドルを右側に回転操作することにより、各車輪とコンテナキャリア50は、ハンドルを左側に回転操作する場合と逆方向の向きになり、コンテナキャリアはハンドルの回転方向と同じ右側に旋回する。
【0008】
更に、図7(b)に示すように、コンテナキャリア50が後進Q方向に走行する場合、前進時と同じ要領で、運転者は顔を進行方向である運転室の後面52bに向ける。つまり、後進時には後進方向に向く運転姿勢で例えば、ハンドルを左側(矢印L方向)に回転操作することにより、図9に示すステアリングバルブ60のLポートが開き、左側ステアリングシリンダは伸張側油室75aにLポートからの圧油が流通して伸張し、右側ステアリングシリンダは収縮側油室76bに第1油圧回路81を介して左側ステアリングシリンダの収縮側油室75bからの圧油が流通して収縮し、図7(b)に示すように後進Q方向に見て、第1車輪63L、63R、第2車輪64L、64R、並びに、第3車輪65L、65Rなどの前方車輪は左側に、第4車輪66L、66Rなどの後方車輪は右側にそれぞれ向きを換えて、前後逆位相に操舵されるので、コンテナキャリア50は、ハンドル56の回転方向とは異なる右側(矢印R)方向に旋回する。一方、ハンドルを右側に回転操作することにより、各車輪とコンテナキャリア50は、ハンドルを左側に回転操作する場合と逆方向の向きになり、コンテナキャリアはハンドルの回転方向とは異なる左側に旋回する。また、左右方向への旋回以外に、コンテナキャリア50を、前進P方向に直進する場合には運転席から見れば右方向に、後進Q方向に直進する場合には左方向にコンテナキャリア50が進行する。
【0009】
上述した従来の技術の他に、向き変更自在な運転座席を備えた自動変速式の車両において、運転座席の向きを切換えた時、いきなり車両が勝手に走行してしまう操作ミスを防止するためのものがある。すなわち、運転座席を前方向へ切換えて一方の近接スイッチがオンした状態で、他方の変速レバーがニュートラル位置Nにある場合、一方の変速レバーからの切換信号が変速制御部へ送信され、また、他方の変速レバーがニュートラルN以外の切換位置にある場合、一方の警告ブザーが作動する。運転座席を後方向へ切換えて他方の近接スイッチがオンした状態で、一方の変速レバーがニュートラル位置Nにある場合、他方の変速レバーからの切換信号が変速制御部へ送信され、また、一方の変速レバーがニュートラルN以外の切換位置にある場合、他方の警告ブザーが作動するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002ー321544号公報(明細書の要約並びに、解決手段、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図7(a)に示すようにコンテナキャリア50の前進P方向への走行では、ハンドル56の左側への回転方向(矢印L方向)と,コンテナキャリア50の左側への旋回方向(矢印L’方向)とが同一であるが、図7(b)に示すように後進Q方向への走行では、ハンドル56の左側への回転方向(矢印L方向)と、コンテナキャリア50の右側への旋回方向(矢印R方向)とが異なる。
【0011】
つまり、図9に示すように第2油圧回路82は、前進時、後進時ともステアリングバルブ60の左側(L)ポートと左側ステアリングシリンダの伸張側油室75aとの間及び、右側(R)ポートと右側ステアリングシリンダの伸張側油室76aとの間が、それぞれ流通する油圧回路としている。したがって、前進時と後進時とは、第2油圧回路が同じであるので、左右のステアリングシリンダ75、76への圧油の流通も同じとなり、図7に示すように、後進時においてハンドルを左右方向に回転操作することによる前方車輪と後方車輪の逆位相による操舵(各車輪の向き)は、前進時においてハンドルを左右方向に回転操作することによる前方車輪と後方車輪の逆位相による操舵と同じになり、後進時においてはハンドルの回転方向とコンテナキャリアの旋回方向とが異なる。そのため、後進Q方向への走行においては、コンテナキャリアが旋回しようとする方向と反対側にハンドルを回転操作しなければならないので、不慣れな運転者ではコンテナキャリアの後進時に運転操作が煩わしく、ハンドルの切換操作を間違うおそれがある。
【0012】
また、特許文献1に記載の車両では、運転座席が車両の前後方向に向きを換えられるもので、その油圧回路において、運転座席の向きを検出する近接スイッチからの発信信号により、制御弁が作動しステアリング(ハンドル)の回転操作に応じてステアリングバルブが作動し、方向転換用シリンダ装置によって各車輪が方向転換するものであり、後進時に前後進切換レバーからの発信信号により方向転換用シリンダへの圧油の流通を切換制御するものではない。また、後進時におけるハンドルの回転方向と車両の旋回方向については記載されていない。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、コンテナキャリアの後進時に、左右の油圧シリンダ(ステアリングシリンダ)への圧油の流通を、前進時とは左右逆に切換えるようにし、運転室より後進方向に見てハンドルの回転方向と同一方向にコンテナキャリアの旋回を可能とすることにより、運転操作の煩わしさとハンドルの切換操作の間違いを解消することのできるコンテナキャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、車両の左右側部に下部フレームをもち、前記左右の下部フレームには、複数の前方車輪と単数の後方車輪とを配列し、前記前方車輪と後方車輪とをリンク機構を介して前後逆位相で操舵する油圧シリンダを設け、前記左右の油圧シリンダは第1油圧回路で接続し、前記車両の後方部に運転操作用のハンドルと前後進切換レバーとを備えた運転室を配設し、前記ハンドルの回転軸には左側ポートと右側ポートをもつステアリングバルブを設け、そのステアリングバルブと前記左右の油圧シリンダとの間を第2油圧回路で接続し、コンテナヤード内で前後進を繰り返すコンテナキャリアにおいて、前記ステアリングバルブの下流側で、前記左右の油圧シリンダへの圧油の流通を前後進時に切換える切換制御機構を前記第2油圧回路に設け、前記コンテナキャリアの後進時に、前記前後進切換レバーを後進位置に切換えることにより、前記左右の油圧シリンダへの圧油の流通を前進時とは左右逆に切換えるようにしたことである。
【0015】
このようにすることにより、コンテナキャリアの後進時に、前後進切換レバーを後進位置に切換えることにより、その前後進切換レバーと一体の切換スイッチがオンとなり、電気信号が切換制御機構に入力される。切換制御機構は前進時における左右の油圧シリンダへの圧油の流通位置から後進時における圧油の流通位置に切換わる。それとともに、ステアリングバルブから左右の油圧シリンダへ流通する第2油圧回路も、前進時とは左右逆に切換えられる。しかるに、ハンドルを左右方向に回転操作することにより、ステアリングバルブから左右の油圧シリンダへ流れる圧油は、後進時には前進時と左右異なる油圧シリンダに流通することになる。そのため、後進時においてハンドルを左右方向に回転操作することによる前方車輪と後方車輪の逆位相による操舵(各車輪の向き)は、前進時においてハンドルを左右方向に回転操作することによる前方車輪と後方車輪の逆位相による操舵と逆になり、後進時においては、ハンドルの回転方向とコンテナキャリアの旋回方向が同一となる。したがって、運転操作の煩わしさとハンドルの切換操作の間違いを解消することができる。
【0016】
請求項2の記載では、前記切換制御機構は4ポート2位置の電磁式切換制御弁であり、前記コンテナキャリアの後進時に、前記前後進切換レバーを後進位置に切換えることにより、前記レバーに設けた前後進切換スイッチから発信する信号が前記電磁式切換制御弁に入力され、前記電磁式切換制御弁は後進時における圧油の流通位置に切換わるとともに、前記第2油圧回路は、前記左側ポートと前記右側油圧シリンダの伸張側油室との間及び、前記右側ポートと前記左側油圧シリンダの伸張側油室との間が、それぞれ流通する油圧回路に切換わり、前記ハンドルを左側に回転操作することにより、前記右側油圧シリンダは伸張側油室に圧油が流通して伸張し、前記左側油圧シリンダは前記第1油圧回路を介して収縮側油室に圧油が流通して収縮し、前記前方車輪は右側に向きを換え、前記後方車輪は左側に向きを換え、または、前記ハンドルを右側に回転操作することにより、前記左側油圧シリンダは伸張側油室に圧油が流通して伸張し、前記右側油圧シリンダは前記第1油圧回路を介して収縮側油室に圧油が流通して収縮し、前記前方車輪は左側に向きを換え、前記後方車輪は右側に向きを換え、前記運転室より後進方向に見て前記ハンドルの回転方向と同一方向に前記コンテナキャリアの旋回を可能とすることが望ましい。
【0017】
このようにすることにより、コンテナキャリアの後進時に、前後進切換レバーを後進位置に切換えることにより前後進切換スイッチの後進側がオンとなり、電気信号が電磁式切換制御弁に入力され、電磁式切換制御弁は前進時の位置から後進時における圧油の流通位置に切換わるとともに、第2油圧回路は、ステアリングバルブの左側ポートと右側油圧シリンダの伸張側油室との間及び、右側ポートと左側油圧シリンダの伸張側油室との間が、それぞれ流通する油圧回路に切換わる。続いて、ハンドルを左側に回転操作することによりステアリングバルブの左側ポートが開き、圧油源からの圧油が、ステアリングバルブと電磁式切換制御弁とを流通して右側油圧シリンダの伸張側油室に流通する。そのことにより、右側の油圧シリンダが伸張する。一方、左側の油圧シリンダの収縮側油室には、第1油圧回路を介して右側の油圧シリンダの収縮側油室から圧油が流通し、左側の油圧シリンダが収縮する。したがって、左右の複数の前方車輪は、後進方向に見て右側に向きを換え、左右の単数の後方車輪は後進方向に見て左側に向きを換えて前後逆位相に操舵され、コンテナキャリアはハンドルの回転方向と同一の左側方向に旋回する。また、ハンドルを右側に回転操作することによりステアリングバルブの右側ポートが開き、油圧源からの圧油が、ステアリングバルブと電磁式切換制御弁とを流通して左側の油圧シリンダの伸張側油室に流通する。そのことにより、左側の油圧シリンダが伸張する。一方、右側の油圧シリンダの収縮側油室には、左側の油圧シリンダの収縮側油室から圧油が流通し右側の油圧シリンダが収縮する。したがって、左右の複数の前方車輪は、後進方向に見て左側に向きを換え、左右の単数の後方車輪は後進方向に見て右側に向きを換えて前後逆位相に操舵され、コンテナキャリアはハンドルの回転方向と同一の右側方向に旋回する。したがって、運転操作の煩わしさとハンドルの切換操作の間違いを解消することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、コンテナキャリアの後進時に、左右の油圧シリンダへの圧油の流通を前進時とは左右逆に切換えるようにしたので、後進時の前方車輪と後方車輪の逆位相による操舵は、前進時における場合と逆の操舵となり、後進時においては、ハンドルの回転方向とコンテナキャリアの旋回方向が同一となる。したがって、運転操作の煩わしさとハンドルの切換操作の間違いを解消することができ、コンテナキャリアの運転効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に沿って説明する。ここで、図1〜図5に示す構成において従来技術で説明した図6〜図9と同一のものについては同一の符号を付し、重複説明を避ける。
【0020】
図1は本発明の実施に係るコンテナキャリア1の右側側面図、図2は図1のA−A方向矢視図で一部断面を含むサスペンションを示し、図3は図1のB−B方向矢視図で、後進時にハンドルを右側に回転操作した場合の各車輪の操向状態を示している。なお、リンク機構を2点鎖線で示す。
【0021】
図1に示すように門型構造体の車両51は、左右下部フレーム53L、53Rの上面に、前方部に左右一対の縦フレーム2aと左右の縦フレームを上端部で連結する横渡部材2bで形成する前方門型体2と、中央部に前方門型体と同じ要領で形成された中央門型体3とを設けている。これらの前方門型体2と中央門型体3との間を、左右一対の上方側部材4と下方側部材5並びに、交差状に設けた左右一対の上方緊張財6と下方緊張財7などで連結して、門型構造体を構成している。
【0022】
また、2点鎖線で示すように、後方張り出し部材55の周囲には手摺り部材8を取付け、運転室52への昇降用梯子として中央門型体3の左側部に沿って垂直方向に第1梯子9と、その第1梯子の上端部と手摺り部材8の前端部との間に手摺り付き第2梯子10とを設けている。
【0023】
更に、前方門型体2並びに、中央門型体3の内側空間部には、コンテナKを昇降可能に吊り上げるスプレッダ11を配設しており、1点鎖線で示すコンテナKは、40フィートコンテナを地上に3段積み重ね、4段目のコンテナKをスプレッダ11によって吊り上げている状態を示している。
【0024】
次に、左右の下部フレーム53L、53Rに配列している第1車輪63L、63Rから第3車輪65L、65Rまでの前方車輪と、第4車輪66L、66Rである後方車輪の各サスペンション12と、前後逆位相による操舵装置24の構成について説明する。ここで、各車輪のサスペンションは、各車輪とも同じ要領であるので、右側の第1車輪63Rについてのみ説明し、他の車輪のサスペンションについては説明を省略する。
【0025】
図2に示すように、サスペンション12は、第1車輪63Rを支持する車軸13と、その車軸の上方部に設けた弾性体(ラバー)14などから構成している。車軸13は第1車輪63Rを水平旋回自在に支持し、上方部が下部フレーム53Rの上下方向に貫通している。すなわち、車軸13はフォークシャフト13aとそのフォークシャフトを支持するフォーク77とから構成し、フォークシャフト13aの下端部をボルトによってフォーク77と締結している。フォーク77にはホイールハブ15、ブレーキ装置16、スピンドル17などを介して第1車輪63Rを懸架している。フォークシャフト13aは、その上方部にはアッパーブッシュ18、下方部にはロアーブッシュ19を取付け上下動および回転可能に内装しており、円筒状部材20を介して下部フレーム53Rを支持している。また、フォークシャフト13aの上端部にはスラストベアリング21を設け、そのスラストベアリングを介して軸端カバー22に内装しているラバー14が、第1車輪63Rから下部フレーム53Rに伝わる衝撃を吸収している。なお、後述する操舵装置のリンク機構78を連結ピン23aを介して連結するフォークアーム23を、フォークシャフト13aの下端部とともに、フォーク77の上端部にボルトによって締結している。
【0026】
操舵装置24は、図2、図3に示すように、各フォーク77に固定しているフォークアーム23と、各フォークアームを連結するリンク機構78と、左右の下部フレーム53L、53Rのほぼ中央部でリンク機構78と連結する左右のセンタアーム25L、25R並びに、前方車輪と後方車輪を操舵する左右の油圧シリンダ(ステアリングシリンダ)75、76などから構成している。リンク機構78は、左右にリンク機構78L、78Rをもち、第1車輪63L、63Rと第2車輪64L、64Rとの一方側に設けられた各フォークアーム23とを連結する第1リンクロッド26L、26Rと、第2車輪64L、64Rの他方側に設けられた各フォークアーム23aとセンタアーム25L、25Rとを連結する第2リンクロッド27L、27Rと、第3車輪65L、65Rの各フォークアーム23とセンタアーム25L、25Rとを連結する第3リンクロッド28L、28Rと、センタアーム25L、25Rと第4車輪66L、66Rの各フォ−クアーム23とを連結する第4リンクロッド29L、29Rなどから構成している。センタアーム25L、25Rは、平板で上述の第2〜第4リンクロッドの一方側端部並びに、左右のステアリングシリンダのロッド側端部75c、76cとをそれぞれ連結可能に形成し、中央部に軸30L、30Rを取付け、下部フレーム53L、53Rの下面に適宜ブラケットを介して水平回転可能に設けている。
【0027】
左右のステアリングシリンダはヘッド側端部75d、76dを、下部フレーム53L、53Rの下面に適宜ブラケットを介して回転自在に取付け、ロッド側端部75c、76cは上述のセンタアーム25L、25Rに回転自在に取付けている。
【0028】
このように構成された操舵装置24によれば、左右のステアリングシリンダ75、76のいづれかのステアリングシリンダの伸縮(シリンダのロッドの伸縮)によって、第1車輪63L、63Rから第3車輪65L、65Rまでの前方車輪と、第4車輪66L、66Rである後方車輪とに左右方向への舵角が与えられ、前方車輪と後方車輪とが逆方向に向きを換える前後逆位相による操舵ができる。
【0029】
次に、上述した操舵装置24により、後進時にハンドルの回転方向と同一方向にコンテナキャリア1を旋回するための油圧回路の構成について、図4により説明する。
【0030】
図4に示すように、従来の図9で説明したステアリングバルブ(ステアリングバルブ)60の下流側で、左右の油圧シリンダ(ステアリングシリンダ)75、76への圧油の流通を、前後進時に切換える切換制御機構31を第2油圧回路82に設けている。切換制御機構31は、4ポート2位置の電磁式切換制御弁32であり、図8に示す運転室の床面52fの外側に取付けている。また、シーケンス回路Eにおいて、前後進切換スイッチ61の後進用スイッチ61Rと後進用電磁弁33Rとの電気回路E1から分岐して、電気回路E2を設け電磁式切換制御弁32と接続している。電磁式切換制御弁32は、前後進切換レバー58を後進位置58Rに切換えることにより、前後進切換スイッチ61の後進用スイッチ61Rがオンに切換わり電気信号が入力され、後進時における圧油の流通位置32aに切換わる。そのことにより、第2油圧回路82は、ステアリングバルブ60の左側ポート(Lポート)と右側のステアリングシリンダ76の伸張側油室76aとの間及び、右側ポート(Rポート)と左側のステアリングシリンダ75の伸張側油室75aとの間が、それぞれ流通する油圧回路に切換わる。
【0031】
一方、前後進切換レバー58を前進位置58Fに切換えることにより、前後進切換スイッチ61の後進用スイッチ61Rがオフに切換り電気信号が停止され、電磁式切換制御弁32は前進時における圧油の流通位置32bに切換わる。そのことにより、第2油圧回路82は、ステアリングバルブ60のLポートと左側のステアリングシリンダ75の伸張側油室75aとの間及び、Rポートは右側のステアリングシリンダ76の伸張側油室76aとの間を、それぞれ圧油が流通する油圧回路に切換わる。なお、前後進切換レバー58を中立位置58Nに切換わることによっても、前後進用スイッチ61F、61Rはオフの状態となる。また、シーケンス回路に示す前後進用電磁弁33F、33Rは、トランスミッション(不図示)に取付いており、前後進切換レバー58の操作位置により前後進用スイッチ61F、61Rが連動してトランスミッションの前後進切換制御を行う。
【0032】
続いて、上述のように構成されたコンテナキャリア1の、後進時におけるハンドルの回転操作とコンテナキャリアの旋回について図3〜図5により説明する。図5は図1のB−B方向矢視図で、後進時にハンドルを左側に回転操作した場合の各車輪の操向状態を示している。なお、リンク機構78を2点鎖線で示す。運転者が運転室の左側面52cに対面して運転席57に座り、後進Q方向への走行時に、図4に示す前後進切換レバー58を後進位置58Rに切換えることにより、上述のごとく、前後進切換スイッチ61の後進用スイッチ61Rがオンに切換わり、電気信号が入力される電磁式切換制御弁32は、後進時における圧油の流通位置32aに切換わる。そのことにより、第2油圧回路82は、ステアリングバルブ60のLポートと右側のステアリングシリンダ76の伸張側油室76aとの間及び、Rポートと左側のステアリングシリンダ75の伸張油室75aとの間が、それぞれ流通する油圧回路に切換わる。
【0033】
次に図5に示すように、運転者が体をやや左に捩り顔を進行方向である運転室の後面52bに向け、その運転姿勢で、ハンドル56を左側(矢印L)方向に回転操作することにより、図4に示すステアリングバルブ60のLポートが開き、油圧ポンプ73からの圧油が、Lポートから電磁式切換制御弁32を経て右側のステアリングシリンダの伸張側油室76aに流通して、右側のステアリングシリンダ76が伸張し、左側のステアリングシリンダ75は、収縮側油室75bに第1油圧回路81を介して右側のステアリングシリンダの収縮側油室76bからの圧油が流通して収縮する。つまり、図5に示す右側のステアリングシリンダ76が伸張(ロッドが伸張)することにより、右側センタアーム25Rは軸30Rを中心にして時計方向(右方向)に水平回転する。それとともに、第1リンクロッド26Rから第4リンクロッド29Rまでの右側リンク機構78Rは連動して、右側の前方車輪である第1車輪63R、第2車輪64R、第3車輪65Rは後進Q方向に見て右側に向きを換え、右側の後方車輪である第4車輪は左側に向きを換える。一方、左側のステアリングシリンダ75が収縮(ロッドが収縮)することにより、左側センタアーム25Lは軸30Lを中心にして時計方向(右方向)に水平回転する。それとともに、第1リンクロッド26Lから第4リンクロッド29Lまでの左側リンク機構78Lは連動して、左側の前方車輪である第1車輪63L、第2車輪64L、第3車輪65Lは後進Q方向に見て右側に向きを換え、左側の後方車輪である第4車輪66Lは左側に向きを換える。すなわち、左右の前方車輪が右側に向きを変え、左右の後方車輪が左側に向きを変える前後逆位相の操舵によりコンテナキャリア1は、ハンドル56の回転方向と同一の左側(矢印L’)に旋回することができる。
【0034】
次に、運転者が図4に示すハンドル56を右側(矢印R)方向に回転操作することにより、ステアリングバルブ60のRポートが開き、油圧ポンプ73からの圧油が、Rポートから電磁式切換制御弁32を経て左側のステアリングシリンダの伸張側油室75aに流通して、左側のステアリングシリンダ75が伸張し、右側のステアリングシリンダ76は、収縮側油室76bに第1油圧回路81を介して左側のステアリングシリンダの収縮側油室75bからの圧油が流通して収縮する。つまり、図3に示すように、左側のステアリングシリンダ75が伸張することにより、左側センタアーム25Lは軸30Lを中心にして反時計方向(左方向)に水平回転する。それとともに、第1リンクロッド26Lから第4リンクロッド29Lまでの左側リンク機構78Lは連動して、左側の前方車輪である第1車輪63L、第2車輪64L、第3車輪65Lは後進Q方向に見て左側に向きを換え、左側の後方車輪である第4車輪66Lは右側に向きを換える。一方、右側のステアリングシリンダ76が収縮することにより、右側センタアーム25Rは軸30Rを中心にして反時計方向(左方向)に水平回転する。それとともに、第1リンクロッド26Rから第4リンクロッド29Rまでの右側リンク機構78Rは連動して、右側の前方車輪である第1車輪63R、第2車輪64R、第3車輪65Rは後進Q方向に見て左側に向きを換え、右側の後方車輪である第4車輪66Rは右側に向きを換える。すなわち、左右の前方車輪が左側に向きを変え、左右の後方車輪が右側に向きを変える前後逆位相の操舵によりコンテナキャリア1は、ハンドル56の回転方向と同一の右側(矢印R’)に旋回することができる。
【0035】
また、運転者が図4に示す前後進切換レバー58を前進位置58Fに切換えることにより、後進用スイッチ61Rがオフに切換わり、電磁式切換制御弁32への通電が停止され、電磁式切換制御弁は前進時における圧油の流通位置32bに切換わる。そのことにより、第2油圧回路82は、ステアリングバルブ60のLポートと左側のステアリングシリンダ75の伸張側油室75aとの間及び、Rポートと右側のステアリングシリンダ76の伸張側油室76aとの間が、それぞれ流通する油圧回路に切換わる。つまり、前進P方向への走行時においては、従来の図7(a)で説明したように、ハンドルの回転方向とコンテナキャリア1の旋回方向とが同一となる。したがって、コンテナキャリア1は前進時と後進時ともに、運転室より進行方向に見てハンドルの回転方向と同一方向にコンテナキャリアの旋回を可能としたので、運転操作の煩わしさとハンドルの切換操作の間違いとが解消され、コンテナキャリアの運転効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施に係るコンテナキャリアの右側側面図を示す。
【図2】図1のA−A方向矢視図で一部断面を含むサスペンションを示す。
【図3】図1のB−B方向矢視図で後進時にハンドルを右側に回転操作した場合の各車輪の操向状態を示す。
【図4】本発明の実施に係る油圧回路図を示す。
【図5】図5は図1のB−B方向矢視図で後進時にハンドルを左側に回転操作した場合の各車輪の操向状態を示す。
【図6】図6(a)は従来のコンテナキャリアの右側側面図を示す。図6(b)は図6(a)のC−C方向矢視図を示す。
【図7】図7(a)は図6(a)のD−D方向矢視で、前進時にハンドルを左側に回転操作した場合の各車輪の操向状態を示し、図7(b)は後進時にハンドルを左側に回転操作した場合の各車輪の操向状態を示す。
【図8】図7(a)のE−E方向矢視で運転席を省略した運転室の略示図を示す。
【図9】従来の油圧回路図を示す。
【符号の説明】
【0037】
1 コンテナキャリア
31 切換制御機構 32 電磁式切換制御弁
32a 電磁式切換制御弁の後進時における圧油の流通位置
52 運転室
53L、53R 左右の下部フレーム
56 ハンドル
58 前後進切換レバー
58R 前後進切換レバーの後進位置
60 ステアリングバルブ(ステアリングバルブ)
61 前後進切換スイッチ
63L、63R、64L、64R、65L、65R 前方車輪
66L、66R 後方車輪
67 動力(エンジン)
73 油圧源(油圧ポンプ)
75、76 左右の油圧シリンダ(ステアリングバルブ)
75a、76a 左右の油圧シリンダの伸張側油室
75b、76b 左右の油圧シリンダの伸縮側油室
81 第1油圧回路
82 第2油圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右側部に下部フレームをもち、前記左右の下部フレームには、複数の前方車輪と単数の後方車輪とを配列し、前記前方車輪と後方車輪とをリンク機構を介して前後逆位相で操舵する油圧シリンダを設け、前記左右の油圧シリンダは第1油圧回路で接続し、前記車両の後方部に運転操作用のハンドルと前後進切換レバーとを備えた運転室を配設し、前記ハンドルの回転軸には左側ポートと右側ポートをもつステアリングバルブを設け、そのステアリングバルブと前記左右の油圧シリンダとの間を第2油圧回路で接続し、コンテナヤード内で前後進を繰り返すコンテナキャリアにおいて、
前記ステアリングバルブの下流側で、前記左右の油圧シリンダへの圧油の流通を前後進時に切換える切換制御機構を前記第2油圧回路に設け、前記コンテナキャリアの後進時に、前記前後進切換レバーを後進位置に切換えることにより、前記左右の油圧シリンダへの圧油の流通を前進時とは左右逆に切換えるようにしたことを特徴とするコンテナキャリア。
【請求項2】
前記切換制御機構は4ポート2位置の電磁式切換制御弁であり、前記コンテナキャリアの後進時に、前記前後進切換レバーを後進位置に切換えることにより、前記レバーに設けた前後進切換スイッチから発信する信号が前記電磁式切換制御弁に入力され、前記電磁式切換制御弁は後進時における圧油の流通位置に切換わるとともに、前記第2油圧回路は、前記左側ポートと前記右側油圧シリンダの伸張側油室との間及び、前記右側ポートと前記左側油圧シリンダの伸張側油室との間が、それぞれ流通する油圧回路に切換わり、前記ハンドルを左側に回転操作することにより、前記右側油圧シリンダは伸張側油室に圧油が流通して伸張し、前記左側油圧シリンダは前記第1油圧回路を介して収縮側油室に圧油が流通して収縮し、前記前方車輪は右側に向きを換え、前記後方車輪は左側に向きを換え、または、前記ハンドルを右側に回転操作することにより、前記左側油圧シリンダは伸張側油室に圧油が流通して伸張し、前記右側油圧シリンダは前記第1油圧回路を介して収縮側油室に圧油が流通して収縮し、前記前方車輪は左側に向きを換え、前記後方車輪は右側に向きを換え、前記運転室より後進方向に見て前記ハンドルの回転方向と同一方向に前記コンテナキャリアの旋回を可能としたことを特徴とする請求項1記載のコンテナキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−1376(P2006−1376A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178737(P2004−178737)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】