説明

コンバインのオーガ構造

【課題】 オーガ組付けの簡素化を図るとともに、刈取り部の剛性を高める。
【解決手段】 両端部に蓋板11が固着されたオーガドラム20を、搬送デッキの左右両端部に立設配備された側板11に亘って回転自在に軸支し、一方の蓋板24の中心に回動可能に貫通される固定支軸35を一方の側板11に連結固定するとともに、他方の蓋板の中心に連結固定した回転支軸を他方の側板に回転自在に貫通支承し、固定支軸35のドラム内方端部に支持ブラケット41を介して偏心支軸44を連結支持し、オーガドラム20に外周から貫通装着した掻込み体22の基端部を偏心支軸44に枢支して、オーガドラム20の回転によって掻込み体22をオーガドラム20から出退作動させるよう構成したコンバインのオーガ構造において、オーガドラム20の一方の蓋板24に、偏心支軸44および支持ブラケット41を挿通し得る形状の組付け孔24aを開口してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通型のコンバインにおける刈取り部に装備されるオーガの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記オーガは、刈取られた作物をオーガドラムの外周に供えたスクリュー羽根で刈幅内の所定箇所に横送りし、横送りした刈取り作物をオーガドラムの外周から突出する棒状あるいは板状の掻込み体で後方に掻き込んで、刈取り部の背部に接続されたフィーダの始端入口に送り込むよう機能するものである。
【0003】
掻込み体は、掻き込んだ作物を持ち回らないように、フィーダの始端に向かう所定の回動位相で退入するよう構成されており、その具体的な構造が、例えば、特許文献1に示されている。すなわち、刈取り部の底面を構成する搬送デッキの左右両端部から縦壁状に左右一対の側板が立設配備され、この側板に亘ってオーガドラムを回転自在に軸支し、オーガドラムに外周から貫通装着した掻き込み体(特許文献1では板状)の基端部を、オーガドラムの内部に回動不能に設置固定された偏心支軸に枢支して、オーガドラムの回転に伴って掻込み体をオーガドラムから出退作動させるよう構成されている。
【特許文献1】特開平10−290617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、上記構成のオーガを刈取り部に組付けるには、刈取り部の枠組みをなす刈取り部フレームに左右の側板の片方、搬送デッキ、背板を取り付け、別工程で組上げたオーガの一端部を、固定された片方の側板に軸支装着した後、他方の側板を刈取り部フレームに連結して、この側板でオーガの他端部を軸支するようにしていた。
【0005】
従って、刈取り部における左右の側板のうち、オーガ組付け後に取り付けられる側板は、多数のボルトを用いて連結することになり、組付け工数が多くなるとともに、ボルト締めによる連結強度の差異によって刈取り部の剛性にバラツキが発生することが考えられる。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、オーガ組付けの簡素化を図るとともに、刈取り部の剛性を高める上で有効となるオーガ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、両端部に蓋板が固着されたオーガドラムを、搬送デッキの左右両端部に立設配備された左右一対の側板に亘って回転自在に軸支し、一方の蓋板の中心に回動可能に貫通される固定支軸を一方の側板に連結固定するとともに、他方の蓋板の中心に連結固定した回転支軸を他方の側板に回転自在に貫通支承し、前記固定支軸のドラム内方端部に支持ブラケットを介して偏心支軸を連結支持し、オーガドラムに外周から貫通装着した掻込み体の基端部を前記偏心支軸に枢支して、オーガドラムの回転によって前記掻込み体をオーガドラムから出退作動させるよう構成したコンバインのオーガ構造であって、
前記オーガドラムの一方の蓋板に、前記偏心支軸および支持ブラケットを挿通し得る形状の組付け孔を開口してあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、先ず、搬送デッキおよび左右の側板を刈取り部フレームに溶接等によって固定して刈取り部の枠組みを組立て、その上で、左右の側板に亘ってオーガを組付ける。この場合、固定支軸および回転支軸を外したオーガドラムを左右の側板の間に挿し入れ、その後、他方の側板に外側から挿通した回転支軸をオーガドラムの他方の蓋板にボルト連結する。
【0009】
偏心支軸の端部を予め支持ブラケットを介して固定支軸に片持ち状に連結しておき、次に、一方の側板に形成されている組付け孔、および、オーガドラムにおける一方の蓋板に形成されている組付け孔を通して、偏心支軸を支持ブラケットと共にオーガドラム内に挿入する。
【0010】
その後、偏心支軸の挿入端部を、回転支軸の内方端部に回動可能に装着してある支持アームの遊端部に連結することで、偏心支軸をドラム回転軸心から偏心した所定位置に両端支持状態で固定配備することができる。次に、オーガドラムの外周に貫通装着した掻込み体の内方端を偏心支軸に回動可能に連結する。なお、偏心支軸を支持ブラケットに連結する操作、および、掻込み体を偏心支軸に枢支連結する操作は、オーガドラムの外周に開閉自在に形成してある組付け孔から行うことになる。
【0011】
従って、第1の発明によると、刈取り部における搬送デッキと左右の側板とを予め溶接、等によって一体化した上でオーガを左右の側板間に亘って軸支装着することが可能となり、片方の側板を後付け装着することで左右の側板間にオーガを軸支する従来の形態に比べて組付け工数が少なくなるとともに、刈取り部の剛性に係わる側板の取り付け強度にバラツキが少なくなり、品質の安定化に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、本発明に係る普通型のコンバインの全体側面が、また、図2に、その全体平面がそれぞれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2に、軸流型の脱穀装置3と袋詰め式の穀粒回収部4が左右に並列して配備されるとともに、穀粒回収部4の前方に運転部5が配備されている。脱穀装置3の前部に支点P周りに上下揺動自在に刈取り穀稈物搬送用のフィーダ6が連結され、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取り部7が連結されている。
【0013】
図3,4に示すように、刈取り部7は、角パイプやL形材を連結してなる刈取り部フレーム8に、背面をなす背板9、底面をなす搬送デッキ10、左右側面をなす左右一対の側板11,12をスポット溶接、等によって取付け固定した枠組み構造となっており、搬送デッキ10の前端に沿って亘ってバリカン型の刈取り装置13が配備されるとともに、左右の側板11,12に亘って、刈り取った作物を刈り幅中間に横送りするオーガ14が架設されている。
【0014】
フィーダ6は、角筒状に形成された搬送ケース15の内部に掻上げコンベア16を装備して構成されている。掻上げコンベア16は、縦回し巻回された左右一対のチェーン16aに亘って搬送バー16bを横架連結して構成されており、オーガ14で横送りされた作物が搬送ケース15の底面に沿って掻き上げ搬送されて脱穀装置3の前端に投入されるようになっている。
【0015】
走行機体2における主フレーム17の前部とフィーダ6の下部との間に油圧シリンダ18が架設され、この油圧シリンダ18の伸縮作動によって刈取り部7がフィーダ6と一体に前記支点P周りに揺動昇降されるようになっている。刈取り部7の前部上方には、植立した作物を後方に掻き込んで刈取り装置13に送り込む掻込みリール19が装備されている。
【0016】
図2,4に示すように、オーガ14は、大径のオーガドラム20の外周に、前方回転に伴って前記フィーダ6の前端部に向けて横送り機能を発揮する左右一対のスクリュー羽根21が備えられるとともに、フィーダ6の前端入口aに臨む横幅域でオーガドラム20から出退する棒状の掻込み体(掻込みフィンガー)22が周方向4箇所に左右2本づつ備えられ、更に、右側横送り域の途中箇所においてオーガドラム20から出退す1本の補助掻込み体23が備えられた構造となっている。
【0017】
オ−ガドラム20の左右両端近傍における内部には蓋板24,25が固設されるとともに、オ−ガドラム20の右寄り箇所の内部には中間支持板26が固設されている。右側の蓋板25と中間支持板26のそれぞれの中心に亘って回転支軸27が貫通され、回転支軸27にキー連結した連結フランジ27aが右側の蓋板25にボルト連結され、もって、回転支軸27がオ−ガドラム20の中心(オーガ軸心)xに一体連結されている。
【0018】
図5に示すように、オ−ガドラム20の右端から突出された前記回転支軸27は、右側の側板12に取り付けた軸受けブラケット28にベアリング29を介して回動自在に支持され、中間支持板26の支持孔26aに回転自在に支持されている。図8に示すように、側板12には、前記連結フランジ27aおよび前記軸受けブラケット28を挿通し得る径の組付け孔12aが形成されるとともに、組付け孔12aを閉塞するように矩形のカバー板30が側板12に外側からボルト連結され、このカバー板30に軸受けブラケット28がボルト連結されている。側板12の内側には、オ−ガドラム20の右端に形成された凹入空間に入り込む縁付き円板状の巻付き防止板31が、前記カバー板30と共締めでボルト連結固定されている。
【0019】
回転支軸27の外端部には入力スプロケット32がキー連結されて回転駆動力を受ける。この入力スプロケット32には掻込みリール18への動力伝達を行う出力スプロケット33が一体形成されている。
【0020】
図6に示すように、左側の側板11には、固定支軸35が連結フランジ35aを介して前記オーガ軸心xと同心に連結固定されるとともに、オーガドラム20における左側の蓋板24に取り付けられた軸受けブラケット36にベアリング37を介して回動自在に貫通支持されている。図7に示すように、側板11には、前記連結フランジ35aおよび前記軸受けブラケット36を挿通し得る径の組付け孔11aが形成されるとともに、組付け孔11aを閉塞するように矩形のカバー板38が側板11に外側からボルト連結され、このカバー板38に軸受けブラケット36がボルト連結されている。側板11の内側には、オ−ガドラム20の左端に形成された凹入空間に入り込む縁付き円板状の巻付き防止板39が、前記カバー板38と共締めでボルト連結固定されている。
【0021】
固定支軸35の内端部には支持ブラケット41がキー連結によって固定され、他方、前記回転支軸27の内端側には支持ブラケット42がベアリング43を介してオーガ軸心x周りに回動自在に遊嵌装着されている。これら左右の支持ブラケット41,42の先端部に亘って偏心支軸44がオーガ軸心xと平行に支架されている。支持ブラケット41,42は前方下方に向かう所定姿勢に固定され、図3に示すように、両支持ブラケット41,42間に連結支架された偏心支軸44の軸心yはオーガ軸心xに対して前方下方に偏った位置に設定される。
【0022】
偏心支軸44には、掻込み体22および補助掻込み体23の装着位置に対応して9個の取付けボス45が遊嵌されており、各取付けボス45に掻き込み体22および補助掻き込み体23の内方端部が差し込まれてねじ止め連結されている。各取付けボス45を介して偏心支軸44に回動自在に装着された掻込み体22および補助掻込み体23は、オーガドラム20の外周所定位置に取り付けられた樹脂製のスライドブッシュ46に貫通支持されている。なお、オーガドラム20における外周の左右適所には組込み孔20aが形成されて脱着自在なカバー47で閉塞されるようになっており、スライドブッシュ46はこのカバー47に装着されている。
【0023】
オーガ14は上記のように構成されて左右の側板11,12の間に支架されており、回転支軸27が駆動回転されてオーガドラム20が前方に回転すると、各掻込み体22および補助掻込み体23は追従して偏心支軸44の軸心y周りに回動し、この時、偏芯支軸44と各スライドブッシュ46との距離が回動位相によって変化することになり、相対的に各掻込み体22および補助掻込み体23はオーガドラム20から出退することになる。
【0024】
この場合、オーガ軸心xと偏心支軸44の軸心yとを結ぶ前方への延長線上において掻込み体突出量が最大になり、その逆位相において掻込み体突出量が最小となる。従って、スクリュー羽根21で横送りされてきた作物は大きく突出した掻込み体22および補助掻込み体23によって後方に掻き込れ、オーガドラム20を潜るように搬送デッキ10に沿って後方に送られてフィーダ6の前端入口aに送り込まれることになる。
【0025】
上記オーガ14を左右の側板11,12の間に亘って組付ける手順を以下に説明する。
【0026】
組付けに際しては、予め、回転支軸27に連結フランジ27aをキー連結しておく。他方、固定支軸35にはベアリング37を介して軸受けブラケット36を装着するとともに、支持ブラケット41をキー連結しておく。更に、取付けボス45を外嵌装着した偏心支軸44の左端を支持ブラケット41の遊端部に連結固定するとともに、偏心支軸44の右端に、ベアリング43が装着された支持ブラケット42を連結しておく。
【0027】
オーガドラム20の左右両端部の凹入空間に巻付き防止板31,39を仮り組み挿入した状態で、オーガドラム20を左右の側板11,12の間に挿し入れる。
【0028】
次に、上記のように先組みした回転支軸27を側板12の組付け孔12aを通してオーガドラム20に挿入し、右側の蓋板25および中間支持板26の支持孔26aに挿通する。次に、組付け孔12aからボックスレンチなどの工具を差し込んで連結フランジ27aを蓋板25にボルト連結する。次に、予めカバー板30を取付けた軸受けブラケット28をベアリング29を介して回転支軸27に外嵌装着し、カバー板30を側板12に外側方からボルト連結して組付け孔12aを塞ぐ。また、カバー板30を側板12にボルト連結する際に、巻付き防止板31を側板12に共締め固定する。その後、回転支軸27の突出部に入力スプロケット32および出力スプロケット33を取付ける。
【0029】
次に、上記のように偏心支軸44および支持ブラケット41,42、等を先組みした固定支軸35を左側の側板11の組付け孔11aを通してオーガドラム20に挿入する。この場合、左側の蓋板24には支持ブラケット41,42を挿通し得る形状の組付け孔24aが形成されているので、この組付け孔24aを通して支持ブラケット41,42および偏心支軸44を蓋板24と中間支持板26との間に差し入れる。
【0030】
次に、組付け孔11aからボックスレンチなどの工具を差し込んで軸受けブラケット36を蓋板24にボルト連結した後、連結フランジ35aにカバー板38を取付け、カバー板38を側板11に外側方からボルト連結することで固定支軸35を側板11に固定するとともに組付け孔12aを塞ぐ。また、カバー板38を側板11にボルト連結する際に、巻付き防止板39を側板11に共締め固定する。
【0031】
偏心支軸44の右端に連結されている支持ブラケット42は、ベアリング43を介して回転支軸27の内端部に遊嵌装着する。この組付け操作は、オーガドラム20の右側の組付け孔20aを介して行う。
【0032】
次に、開放されている各組付け孔20aから工具を差し入れ、偏心支軸44に外嵌装着されている取付けボス45に掻込み体22および補助掻込み体23の内端部を差込み連結する。その後、掻込み体22および補助掻込み体23をスライドブッシュ46に挿通した状態で各カバー47をオーガドラム20に連結して各組込み孔20aを塞ぐ。
【0033】
以上で、オーガドラム20の組付けが完了する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】オーガの縦断左側面図
【図4】オーガの横断平面図
【図5】オーガの右端部付近を示す横断平面図
【図6】オーガの左半部を示す横断平面図
【図7】左側の側板の要部を示す側面図
【図8】右側の側板の要部を示す側面図
【図9】オーガの分解図
【符号の説明】
【0035】
10 搬送デッキ
11 側板
12 側板
20 オーガドラム
22 掻込み体
24 蓋板
25 蓋板
27 回転支軸
35 固定支軸
41 支持ブラケット
44 偏心支軸
24a 組付け孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に蓋板が固着されたオーガドラムを、搬送デッキの左右両端部に立設配備された左右一対の側板に亘って回転自在に軸支し、一方の蓋板の中心に回動可能に貫通される固定支軸を一方の側板に連結固定するとともに、他方の蓋板の中心に連結固定した回転支軸を他方の側板に回転自在に貫通支承し、前記固定支軸のドラム内方端部に支持ブラケットを介して偏心支軸を連結支持し、オーガドラムに外周から貫通装着した掻込み体の基端部を前記偏心支軸に枢支して、オーガドラムの回転によって前記掻込み体をオーガドラムから出退作動させるよう構成したコンバインのオーガ構造であって、
前記オーガドラムの一方の蓋板に、前記偏心支軸および支持ブラケットを挿通し得る形状の組付け孔を開口してあることを特徴とするコンバインのオーガ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−215453(P2007−215453A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38175(P2006−38175)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】