説明

コンバインの脱穀部

【課題】湿材収穫時においても扱室下部に配設される受網を乾燥状態に保ち、塵挨が受網の目に詰まることがないコンバインの脱穀部を提供することを目的とする。
【解決手段】エンジン112と、エンジン112の近傍、かつ、脱穀部105前方に配置されるプレファン120と、脱穀部105の扱胴122下方に配設される受網124と、脱穀部105の下方に配設される揺動選別装置106と、を備えるコンバイン101の脱穀部105において、エンジン112とプレファン120の吸入口163bとの間に冷却風導入通路180を形成し、脱穀部105の前壁であって、受網124と揺動選別装置106(前フィードパン127)との間にプレファン120の送風路163aを延設して、プレファン120の吐出口163cより吐き出される風を送る連通路を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、該エンジンの近傍、かつ、脱穀部前方に配置されるプレファンと、前記脱穀部の扱胴下方に配設される受網と、前記脱穀部の下方に配設される揺動選別装置と、を備えるコンバインの脱穀部の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀部において風選別を行なう唐箕ファンの補助ファンとしてプレファンを設けて、収穫物に含まれる塵埃等の穀粒以外の不純物を後方に吹き送ることにより選別精度を上げることとした技術は公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
その他に、プレファンの吸気路を扱室の入口側に設けて扱室の内圧上昇を防ぎ、選別能力を高める技術が公知となっている(特許文献2参照)。
特許文献1に開示された技術は受網の前半部下方に設ける揺動選別盤前部のフィードパン後側に篩線を取り付け、受網前後幅中間下方でグレンシーブ前端よりも前方に篩線を配設させ、プレファンとグレンシーブとの間でこれらの下方に唐箕を設け、1番コンベアの軸に対して高位置に設ける唐箕の軸よりもプレファンの軸をさらに高く位置させ、プレファンの軸と1番コンベアの軸を結ぶ直線状に唐箕を設け、フィードパン前端の間でこれらの下方にプレファンと唐箕を前後に近接させて設けたものである。
特許文献2に開示された技術は扱室の下部に配備した受網と選別部における揺動選別ケースとの間に選別風を送る送風機(いわゆるプレファン)を設けるとともに、この送風機の吸気路を前記扱室の入口側に接続するものである。
【特許文献1】特開2000−201524号公報
【特許文献2】特開平7−115839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1に開示された構成では、プレファンからの送風により扱室から漏下される収穫物に含まれる塵埃を後方に吹き送ることができ、選別能力を高めることができる。
しかし、湿材を収穫する場合等に、扱室の下部に配設される受網において、収穫物に含まれる塵挨等が水分を含んで受網の目に詰まることがあり、穀粒がうまく漏下されないことがあり不利である。
また、特許文献2に開示された構成では、プレファンの吸気を扱室の入口側に接続することで、扱胴の回転に伴う起風によって扱室の内圧が高くなることを防ぎ、穀稈供給口から脱穀処理物や埃が吹き出すのを防ぐことができる。
しかし、前記特許文献1同様、湿材等を収穫する際に受網に塵挨等が詰まり、穀粒がうまく漏下されないことがあり不利である。
【0004】
係る問題点を鑑み、本発明において解決すべき課題は以下のとおりである。
すなわち、湿材収穫時においても扱室下部に配設される受網を乾燥状態に保ち、塵挨が受網の目に詰まることがないコンバインの脱穀部を提供することを目的とし、さらには、湿材収穫時以外においても漏下される収穫物に含まれる塵挨を後方に吹き送ることが可能なコンバインの脱穀部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、エンジンと、該エンジンの近傍、かつ、脱穀部前方に配置されるプレファンと、前記脱穀部の扱胴下方に配設される受網と、前記脱穀部の下方に配設される揺動選別装置と、を備えるコンバインにおいて、前記エンジンとプレファンの吸入側との間に冷却風導入手段を設けるとともに、前記脱穀部の前壁であって、前記受網と揺動選別部との間に、前記プレファンの吐出側との連通路を形成するものである。
【0007】
請求項2においては、前記プレファンの吸入側または吐出側に、風力調節手段を設けるものである。
【0008】
請求項3においては、前記風力調節手段を、プレファンの送風口に設ける開閉弁により構成し、該開閉弁を排藁量検知手段と連係するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1の如く構成したので、エンジンの作動により冷却後の暖まった空気を受網に当てることができて、受網を乾燥状態に保つことができ、湿材が付着することを防止して、該受網の目詰まりを防止して選別効率の低下を防止できる。また、受網から揺動選別装置に落下するときにも温風が当てられて、湿材を乾燥させることができ、該揺動選別装置での詰まりを防止でき、選別効率が上がる。
【0011】
さらに、本発明によれば、従来技術と同様に受網から揺動選別装置へと漏下される塵埃が該揺動選別装置後方に吹き送られて、選別能力を上げる効果を期待できる点でも優れている。
【0012】
請求項2の如く構成したので、収穫量や収穫対象の湿り具合等に応じて風力を調節することで、受網への詰まりを効率的に回避することができる。
【0013】
請求項3の如く構成したので、排藁量と、扱胴に送り込まれる穀稈量と、の相関を関係付けることにより、受網を乾燥させるための風力を排藁量に基づいて自動的に調節することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
先ず、コンバイン101の全体構成について説明する。図1及び図2に示す如く、コンバイン101は、クローラ式走行装置102上に機体103が配設されている。機体103の前部には、刈取部104が配設されている。機体103上の左側には、揺動選別装置106、フィードチェーン108、扱胴122等を備える脱穀部105が配設されている。脱穀部105において、揺動選別装置106の前下方に、唐箕ファン119が配設され、揺動選別装置106の前方、つまり脱穀部105の前方には、プレファン120が配設されている。また、このプレファン120は、図4に示す如く、エンジン112近傍に配置されている。
【0016】
機体103上の前部右側には、運転席110及びステアリングハンドル111を備える運転部109が配設されている。運転部109の下方であって、機体103上の前部右側には、エンジン112が配設されており、運転部109の後方であって、機体103上の後部右側には、グレンタンク113が配設されている。グレンタンク113の底部には、排出コンベア114が前後方向に配設されており、グレンタンク113の後部には、排出オーガ115の縦送りオーガ115aが立設されている。グレンタンク113に貯溜された穀粒は、排出コンベア114により後方に搬送され、排出オーガ115先端部の排出口からトラック等へ排出される。
【0017】
フィードチェーン108の後端には、排藁チェーン116が配設されており、この排藁チェーン116後部下方には、排藁カッター118、拡散コンベア等からなる排藁処理部117が配設されており、排藁が切断されて藁片にされた後、拡散されながら圃場に均一に放出される。
【0018】
次に、脱穀部105について説明する。図3及び図4に示す如く、脱穀部105は、扱室121内に、扱胴122が機体の前後方向に横架されており、扱胴122の下方には、扱胴122の下部周囲を覆うように受網124が設けられている。そして、扱胴122の後方であって、グレンタンク113側の処理室125内に、処理胴123が扱胴122と平行に機体の前後方向に横架されている。
【0019】
脱穀部105において、フィードチェーン108により、株元部が拘束されて、機体後方に搬送された穀稈は、先端部が扱胴122の下方に挿入されて、扱胴122の回転により脱穀されて、籾等が受網124を通過して下方へ落下される。扱胴122で処理できなかった枝梗付着粒等の未処理物は、送塵口(不図示)より処理室125内に搬送されて、処理胴123の回転により、藁屑に絡まった籾が分離されて下方に落下されて、藁屑等が機外に排出される。
【0020】
そして、脱穀部105は、揺動選別装置106による揺動選別と、唐箕ファン119及びプレファン120による風選別とが行われ、一番物と二番物と藁屑等に分別されるように構成されている。
【0021】
具体的には、揺動選別装置106は、機枠126内であって、扱胴122及び処理胴123の下方に配設されている。揺動選別装置106の前後方向の長さは、扱胴122の前端から処理胴123の後端までの長さと略一致するように構成されている。そして、揺動選別装置106の前下部は、前後摺動自在に支持されているとともに、揺動選別装置106の後下部には揺動軸106a(図7参照)が設けられている。揺動軸106aが返信駆動されることで揺動駆動機構が構成され、この揺動駆動機構によって、揺動選別装置106が機枠126に対して揺動されるように構成されている。
【0022】
揺動選別装置106の前部には、前フィードパン127が設けられており、前フィードパン127の後下方には、後フィードパン128が設けられている。前後フィードパン127・128は、波形に成形された板状部材で構成されており、受網124を通過した籾等は、前後フィードパン127・128上に落下し、揺動選別装置106の揺動により後方に搬送される。
【0023】
前フィードパン127の後部には、第一選別部であるチャフシーブ129が配設されており、チャフシーブ129の下方であって、後フィードパン128の後部には、第二選別部である網状のグレンシーブ130が配設されており、チャフシーブ129の後方には、ストローラック131が配設されている。チャフシーブ129は、チャフシーブ129の開度を調節するチャフレバー(不図示)が、ワイヤー等を介して、排藁チェーン116のチェーンガイド165と連結されており(図8参照)、排藁量に応じてチャフシーブ129の開度が調節されるように構成されている。
【0024】
そして、揺動選別装置106の前下方には、唐箕ファン119が配設されており、揺動選別装置106の前方には、プレファン120が配設されており、詳しくは後述するが、チャフシーブ129及びグレンシーブ130に選別風を送風するように構成されている。
【0025】
また、揺動選別装置106の後部上方には、吸引ファン132が揺動選別装置106の全幅(左右方向)に横設されており、唐箕ファン119及びプレファン120からの選別風に乗ってきた塵埃が吸引されて機外に排出される。
【0026】
そして、揺動選別装置106下方の前後中途部であって、唐箕ファン119の後方には、一番コンベア133が左右方向に横設されており、この一番コンベア133の後方には、二番コンベア134が左右方向に横設されている。一番コンベア133は、唐箕ファンケース142の後端から流穀板を介して連設されている凹状の一番回収樋136内に横設されており、二番コンベア134は、この一番回収樋136の後端に連設されている凹状の二番回収樋137内に横設されている。
【0027】
一番コンベア133には、搬送方向が略上下方向とされる揚穀コンベア135が連結されており、この揚穀コンベア135の上端は、グレンタンク113内と連通されている。二番コンベア134には、搬送方向が略前後方向とされる二番還元コンベア138が連結されている。二番還元コンベア138の前端には、枝梗処理胴139が連結されて、前フィードパン127上に処理後の二番物が放出されるように構成されている。
【0028】
このような構成により、チャフシーブ129の隙間を通過した籾や細かい藁屑等は、グレンシーブ130上に落下される。一方、チャフシーブ129の隙間を通過しなかった藁屑等は、揺動選別装置106の揺動により後方に搬送されて、ストローラック131を経て機外に排出される。そして、グレンシーブ130上に落下した穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒及び細かい藁屑等の内、穀粒、未熟穀粒、細かい藁屑等は、グレンシーブ130を通過して下方に落下される。その際、チャフシーブ129及びグレンシーブ130には、唐箕ファン119及びプレファン120から選別風が送風されており、細かい藁屑の一部は、後方に吹き飛ばされて穀粒と分離される。
【0029】
ここで、重量が大きい穀粒は、前記選別風により後方に吹き飛ばされずに、手前側の一番回収樋136に回収され、一番コンベア133、揚穀コンベア135を経て、グレンタンク113に搬送される。一方、未熟穀粒や未処理粒等は、前記選別風により後方に吹き飛ばされて、奥側の二番回収樋137に回収されるとともに、チャフシーブ129の隙間を通過した枝梗付着粒等も二番回収樋137に回収され、二番コンベア134、二番還元コンベア138を経て、枝梗処理胴139に搬送され、枝梗処理胴139により枝梗が除去された後、前フィードパン127上に放出される。
【0030】
次に、脱穀部105の駆動構成の一例について説明する。図7に示す如く、エンジン112には、出力軸112aが左右方向に突設されており、この出力軸112aの左軸上には、第一出力プーリ112b、右軸上には、第二出力プーリ112c、ファン出力プーリ112dが固設されている。エンジン112より右側に取付ステー等を介してファン出力軸112eが突設されている。このファン出力軸112eの中途部にはプーリ112fが固設されており、右端には、ラジエータファン112gが固設される。ファン出力プーリ112dと、プーリ112fとには、ベルトが巻回されている。
【0031】
唐箕ファン119の唐箕軸140の右軸上には、プーリ140a、140b、左軸上には、プーリ140c、140dが固設されている。プーリ140aと、前記第一出力プーリ112bとには、ベルトが巻回されて、テンションクラッチが配設されている。
【0032】
第一フィードチェーン軸108a上の左端には、プーリ108dが固設され、右端には、ギア108eが固設され、中途部上には、ウォーム108fが固設されている。プーリ108dと前記プーリ140dとの間には、ベルトが巻回されて、テンションクラッチが配設されている。第二フィードチェーン軸108b上の前端には、ウォームホィール108hが固設されており、このウォームホィール108hは、ウォーム108fと噛合されている。フィードチェーン108を駆動するための第三フィードチェーン軸108cの右端からは、ベベルギア108gを介して、第二フィードチェーン軸108bと動力伝達可能とされている。ギア108eは、カウンターギア108iと噛合する。カウンターギア108iはカウンター軸108jの左端に固設され、カウンター軸108jの右端には、プーリ108kが固設される。
【0033】
プレファン120のプレファン軸120a上の左端には、プーリ120bが固設されている。プーリ120bと、前記プーリ108kとには、ベルトが巻回されている。
【0034】
一番コンベア133の一番コンベア軸133a上の左端には、プーリ133bが固設されている。一番コンベア軸133aの右端からは、ベベルギア150を介して、揚穀コンベア135の揚穀コンベア軸135aと動力伝達可能とされている。
【0035】
二番コンベア134の二番コンベア軸134a上の左端には、プーリ134bが固設されている。二番コンベア軸134aの右端からは、ベベルギア151を介して、二番還元コンベア138の二番還元コンベア軸138aと動力伝達可能とされている。
【0036】
揺動選別装置106の振動軸106a上の左端には、プーリ106bが固設されている。振動駆動軸107上の左端には、プーリ107aが固設され、右端には、プーリ107bが固設されている。プーリ107bと、プーリ106bとには、ベルトが巻回されている。
【0037】
吸引ファン132の吸引軸132aは、ギア等を介して、プーリ132bと動力伝達可能とされている。カウンター軸152上の右端には、プーリ152aが固設され、左端には、プーリ152b(152c)が固設されている。プーリ152b(152c)と、プーリ132bとには、ベルトが巻回されている。
【0038】
また、前記プーリ140cと、プーリ133bと、プーリ134bと、プーリ107aと、プーリ152aとには、ベルトが巻回されている。
【0039】
扱胴122の扱胴軸122aの前端からは、ベベルギア147を介して、扱胴入力軸122bと動力伝達可能とされている。扱胴入力軸122b上の右端には、プーリ122cが固設され、このプーリ122cの左方には、プーリ122dが固設されている。プーリ122dと、前記プーリ140bとには、ベルトが巻回されている。また、扱胴軸122a上の後端には、プーリ122eが固設されている。
【0040】
排藁チェーン116の第二排藁軸116bの右端からは、ベベルギア148を介して、第一排藁軸116aと動力伝達可能とされている。第一排藁軸116a上の前端には、プーリ116cが固設されている。プーリ116cと、前記プーリ122eとには、ベルトが巻回されている。
【0041】
処理胴123の処理胴軸123aの前端からは、ベベルギア149を介して、処理胴入力軸123bと動力伝達可能とされている。処理胴入力軸123b上の右端には、プーリ123dが固設され、中途部には、プーリ123cが固設されている。プーリ123cと、前記プーリ122cとには、ベルトが巻回されている。枝梗処理胴139の枝梗処理胴軸139a上の右端には、プーリ139bが固設されている。プーリ139bと、プーリ123dとには、ベルトが巻回されている。
【0042】
排出コンベア114のコンベア軸114a上の前端には、プーリ114bが固設されている。第二グレン入力軸154上の後端には、プーリ154aが固設されている。プーリ154aと、プーリ114bとには、ベルトが巻回されて、テンションクラッチが配設されている。そして、第二グレン入力軸154の前端からは、ベベルギア155を介して、第一グレン入力軸153と動力伝達可能とされている。第一グレン入力軸153上の右端には、プーリ153aが固設されている。プーリ153aと、前記第二出力プーリ112cとには、ベルトが巻回されている。
【0043】
縦送りオーガ115aの縦コンベア軸115bの左端からは、ベベルギア156を介して、排出コンベア114のコンベア軸114aと動力伝達可能とされている。縦コンベア軸115bの右端からは、ベベルギア157、受継コンベア軸158、ベベルギア159を介して、排出オーガ115の排出コンベア軸115cと動力伝達可能とされている。
【0044】
このような構成により、エンジン112の駆動力は、出力軸112a、ファン出力軸112d、プーリ112f、ファン出力軸112eを経て、ラジエータファン112gに伝達される。
【0045】
また、エンジン112の駆動力は、出力軸112a、第一出力プーリ112b、プーリ140a、唐箕軸140を経て、唐箕ファン119に伝達される。
【0046】
そして、唐箕軸140に伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ140d、プーリ108d、第一フィードチェーン軸108a、ウォーム108f、ウォームホィール108h、第二フィードチェーン軸108b、ベベルギア108g、第三フィードチェーン軸108cを経て、フィードチェーン108に伝達される。
【0047】
そして、第一フィードチェーン軸108aに伝達されたエンジン112の駆動力は、ギア108e、カウンターギア108i、カウンター軸108j、プーリ108k、プーリ120b、プレファン軸120aを経て、プレファン120に伝達される。
【0048】
また、唐箕軸140に伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ140c、プーリ133b、一番コンベア軸133aを経て、一番コンベア133に伝達される。また、一番コンベア軸133aに伝達されたエンジン112の駆動力は、ベベルギア150、揚穀コンベア軸135aを経て、揚穀コンベア135に伝達される。
【0049】
また、唐箕軸140に伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ140c、プーリ134b、二番コンベア軸134aを経て、二番コンベア134に伝達される。また、二番コンベア軸134aに伝達されたエンジン112の駆動力は、ベベルギア151、二番還元コンベア軸138aを経て、二番還元コンベア138に伝達される。
【0050】
また、唐箕軸140に伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ140c、プーリ107a、振動駆動軸107、プーリ107b、プーリ106bを経て振動軸106aに伝達される。
【0051】
また、唐箕軸140に伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ140c、プーリ152a、カウンター軸152、プーリ152b(152c)、プーリ132b、吸引軸132aを経て、吸引ファン132に伝達される。
【0052】
また、唐箕軸140に伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ140b、プーリ122d、扱胴入力軸122b、ベベルギア147、扱胴軸122aを経て、扱胴122に伝達される。
【0053】
そして、扱胴軸122aに伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ122e、プーリ116c、第一排藁軸116a、ベベルギア148、第二排藁軸116bを経て、排藁チェーン116に伝達される。
【0054】
そして、扱胴入力軸122bに伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ122c、プーリ123c、処理胴入力軸123b、ベベルギア149、処理胴軸123aを経て、処理胴123に伝達される。また、処理胴入力軸123bに伝達されたエンジン112の駆動力は、プーリ123d、プーリ139b、枝梗処理胴軸139aを経て、枝梗処理胴139に伝達される。
【0055】
一方、エンジン112の駆動力は、出力軸112a、第二出力プーリ112c、プーリ153a、第一グレン入力軸153、ベベルギア155、第二グレン入力軸154、プーリ154a、プーリ114b、コンベア軸114aを経て、排出コンベア114に伝達される。
【0056】
そして、コンベア軸114aに伝達されたエンジン112の駆動力は、ベベルギア156、縦コンベア軸115bを経て、縦送りオーガ115aに伝達される。縦コンベア軸115bに伝達されたエンジン112の駆動力は、ベベルギア157、受継コンベア軸158、ベベルギア159、排出コンベア軸115cを経て、排出オーガ115に伝達される。
【0057】
次に、唐箕ファン119について説明する。図3に示す如く、唐箕ファン119は、揺動選別装置106の前下方に配設されており、左右方向に軸心を有する唐箕軸140と、この唐箕軸140から半径方向に放射状に突設する羽根体141・141・・・とを備えている。唐箕ファン119は、唐箕ファンケース142により覆われており、この唐箕ファンケース142は、後部が開放されて選別風を送風するための吐出口142aが形成されているとともに、側部が開放されて空気を導入するための吸入口142b(図8参照)が形成されている。唐箕ファンケース142の側部には、プレート143(図8参照)が固定されており、このプレート143に唐箕軸140が軸支されている。
【0058】
図8及び図9に示す如く、唐箕ファン119は、送風力を調節するためのシャッター144を備えている。シャッター144は、吸入口142bの上部を開閉するように構成されている。シャッター144は、排藁量検出機構168を介して、排藁チェーン116の下方に配設されているチェーンガイド165と連結されており、排藁量に応じてシャッター144の開度が調節されるように構成されている。
【0059】
具体的には、左右方向に軸心を有するシャッター軸145が、唐箕ファンケース142の側面に軸支されており、シャッター144は、このシャッター軸145の端部に、取付部材144aを介して、ボルト160により固設されている。取付部材144aには、シャッターレバー146の一端が固設されており、このシャッターレバー146の他端には、バネ166の一端が係止されている。バネ166の他端には、排藁量検出機構168の検出ワイヤー168aの一端(前端)が係止されている。
【0060】
図8に示す如く、排藁量検出機構168は、検出ワイヤー168aと、検出ロッド168bと、検出プレート168cと、回動軸168dと、検出アーム168eとを備えている。排藁量検出機構168は、左右方向に軸心を有する回動軸168dが、コンバイン101の機体に枢支されており、この回動軸168dに、検出プレート168cの端部(後端)及び検出アーム168eの一端(上端)が固定されている。検出プレート168cの上面には、チェーンガイド165の下面に垂設されている検出ロッド168bの下端が当接されている。検出アーム168eの他端(下端)には、検出ワイヤー168aの他端(後端)が取り付けられている。
【0061】
このような構成により、排藁チェーン116により、機体後部に搬送される排藁(穀稈)の量が増加すると、チェーンガイド165が下方に押し下げられて、検出プレート168c及び検出アーム168eが回動軸168dを中心として反時計回りに回動されて、検出アーム168eの他端(下端)に取り付けられている検出ワイヤー168aが、後方に引っ張られる。
【0062】
検出ワイヤー168aが、後方に引っ張られると、検出ワイヤー168aの一端(前端)に係止されているバネ166を介して、シャッターレバー146がシャッター軸145を中心として、反時計回りに回動される(図8及び図10に示す二点鎖線位置)。シャッターレバー146が反時計回りに回動されると、取付部材144aを介して、シャッター144が反時計回りに回動されて(図8及び図10に示す二点鎖線位置)、シャッター144の開度が大きくされて、吸入口142bからの空気の導入量が増加される。
【0063】
なお、詳細な説明は省略するが、排藁チェーン116により、機体後部に搬送される排藁(穀稈)の量が減少すると、これとは反対の動作により、シャッター144の開度が小さくされて、吸入口142bからの空気の導入量が減少される。
【0064】
次に、プレファン120について説明する。図3、図4、図5、図8及び図9に示す如く、プレファン120は、揺動選別装置106の前方に配設されており、左右方向に軸心を有するプレファン軸120aと、このプレファン軸120aから半径方向に放射状に突設する羽根体162・162・・・とを備えている。プレファン120は、プレファンケース163により覆われており、このプレファンケース163は、後部の開口部が後方に延設されてプレファン120からの送風を導く送風路163aが形成されている。送風路163aは、揺動選別装置106の前フィードパン127と受網124との間にまで延設されている。プレファンケース163は、側部が開放されて、空気を導入するための吸入口163b(図8参照)が形成されているとともに、送風路163aの後部が開放されて、選別風を送風するための吐出口163cが形成されている。図5に示す如く、吐出口163cの上面の一部は、正面視において受網124の形状に沿う形状に形成されており、吐出口163cの右側(運転部109側)の上下幅は、左側(フィードチェン108側)の上下幅より大きくなるように構成されている。図8及び図9に示す如く、プレファンケース163の側部には、プレート164が固定されており、このプレート164にプレファン軸120aが軸支されている。プレファン軸120a上の左端には、エンジン112の駆動力が伝達されるプーリ120bが固設されている。
なお、本発明に係るプレファンの吐出口の実施の一形態である吐出口163cは、上記の如き形状には限定されず、正面視において略台形形状等でもよく、受網124の形状に沿うようにプレファン120からの送風を送ることが可能な構成であれば良い。
【0065】
そして、図4に示す如く、エンジン112を冷却するラジエータファン112gによるエンジン冷却風をプレファン120の吸入口163bに導入する冷却風導入通路180が形成されている。冷却風導入通路180は、主としてエンジン112の左側方を覆う壁部材180a及び後側方を覆う壁部材180b等から構成されている。
なお、本発明に係る冷却風導入通路の実施の一形態である冷却風導入通路180は、上記の如く壁部材180a・180b等から構成されるものであるが、本実施例に限定されず、エンジン112とプレファン120の吸入口163bとの間にダクト等を配置しても良く、ラジエータファン112gによる熱気排風をプレファン120の吸入口163bに導入可能な構成であればよい。
【0066】
以上の如く、エンジン112と、エンジン112の近傍、かつ、脱穀部105前方に配置されるプレファン120と、脱穀部105の扱胴122下方に配設される受網124と、脱穀部105下方に配設される揺動選別装置106と、を備えるコンバイン101において、エンジン112とプレファン120の吸入口163bとの間に冷却風導入通路180を形成したので、エンジン112の作動により、ラジエータファン112gによって吸入されたラジエータを通過して、該ラジエータにより冷却した後の暖まった空気をプレファン120に導入することができる。また、脱穀部105の前壁であって、受網124と揺動選別装置106(前フィードパン127)との間にプレファン120の送風路163aを延設して、吐出口163cより吐き出される風を送る連通路を形成したので、プレファン120からの暖まった空気を受網124に当てることができて、受網124を乾燥状態に保つことができるので、受網124に湿材が付着することを防止し、受網124の目詰まりを防止して、選別効率の低下を防止することができる。また、受網124から揺動選別装置106に落下するときに暖まった空気を当てることができるので、湿材を乾燥させることができ、揺動選別装置106における詰まりも防止できる。
また、以上の如く、プレファン120の吐出口163cを受網124の形状に沿うように形成したので、プレファン120からの送風を受網124に向けて効率的に当てることが可能となり、さらには、受網124へ落下する籾等が多くなる穀稈の穂先位置にも上述の如き暖まった空気を当てることができ、受網124の目詰まりを防止することができ、選別効率の低下を防止できる。
【0067】
そして、プレファン120の送風路163a内(吐出側)には、プレファン120からの送風力を調節する開閉弁161が設けられている。開閉弁161と唐箕ファン119のシャッター144との間には、連動機構169が設けられており、シャッター144に連動されて、排藁量に応じて開閉弁161が開閉されるように構成されている。
【0068】
具体的には、図8及び図9に示す如く、開閉弁161は、左右方向が長手方向とされる板状部材であり、左右方向に軸心を有する開閉弁軸161aに固定されている。開閉弁161の左右(長手)方向の長さは、プレファン120の左右方向の長さと略一致するように構成されている。開閉弁軸161aは、プレファンケース163の送風路163a内に配設されて、送風路163aの側面に軸支されている。
【0069】
図10及び図11に示す如く、連動機構169は、第一アーム部材170と、第二アーム部材171と、第一連結部材172と、第二連結部材173とを備える。第一アーム部材170の一端が、第一取付部材170aを介して、開閉弁軸161aに第一ボルト170bにより固定されている。そして、第二アーム部材171の一端が、第二取付部材171aを介して、シャッター144のシャッター軸145に第二ボルト171bにより固定されている。第一連結部材172及び第二連結部材173は、略L型に形成された板状部材であり、それぞれ長辺の端部が、第一アーム部材170(第二アーム部材171)の他端に、第一ピン172a(第二ピン173a)により回動可能に取り付けられている。第一連結部材172及び第二連結部材173は、互いの短辺172b、173b同士が対向するように配設されている。
【0070】
そして、次のようにして、プレファン120の開閉弁161は、唐箕ファン119のシャッター144に連動される。
【0071】
前述のように、唐箕ファン119のシャッター144は、排藁量検出機構168を介して、チェーンガイド165と連結されており、排藁量に応じてシャッター144の開度が調節されるように構成されている。排藁チェーン116により、機体後部に搬送される排藁(穀稈)の量が増加すると、シャッター144の開度が大きくされて、吸入口142bからの空気の導入量が増加される。ここで、シャッターレバー146がシャッター軸145を中心として、反時計回りに回動されると、シャッター軸145に固定されている第二アーム部材171が、シャッター軸145を中心として、反時計回りに回動される。
【0072】
第二アーム部材171が、反時計回りに回動されると、第一連結部材172、第二連結部材173、長さ調節機構174を介して、第二アーム部材171と連結されている第一アーム部材170が、第二アーム部材171と連動して、開閉弁軸161aを中心として、反時計回りに回動される。
【0073】
第一アーム部材170が、反時計回りに回動されると、開閉弁軸161aに固定されている開閉弁161が、開閉弁軸161aを中心として、反時計回りに回動されて(図8及び図10に示す二点鎖線位置)、開閉弁161の開度が大きくされて、プレファン120からの送風量が増加される。
【0074】
なお、詳細な説明は省略するが、排藁チェーン116により、機体後部に搬送される排藁(穀稈)の量が減少すると、これとは反対の動作により、開閉弁161の開度が小さくされて、プレファン120からの送風量が減少される。
【0075】
また、開閉弁161を閉じた場合、プレファン120の吹き返し風が発生し、これにより機体上の塵埃等を吹き飛ばすことができる。すなわち、プレファン120は、プレファンケース163の側部に形成されている吸入口163bから、常時空気が導入されている。この導入された空気は、プレファン軸120aに突設されている羽根体162・162・・・の回転により、送風路163aに導かれる。ここで、開閉弁161が閉じられていた場合、送風路163aに導かれた空気は、送風路163aの後部に形成されている吐出口163cから選別風として送風されずに、開閉弁161により跳ね返されて、吹き返し風となる。
【0076】
以上の如く、プレファン120の吐出側である、送風路163a内に、風力調節手段となる開閉弁161を設けたので、収穫量や収穫対象の湿り具合に応じて風力を調節することができるようになり、受網124への詰まりを効率的に回避することができる。
また、開閉弁161を排藁量検知手段となる排藁量検出機構168と連係したので、排藁量と、扱胴122に送り込まれる穀稈量と、の相関を関係付けることができるようになり、受網124を乾燥させるため、ひいては湿材を乾燥させるための風力を排藁量に基づいて自動的に調節できるようになる。
【0077】
なお、以上の構成においては、前記風力調節手段は、プレファン120の吐出側である送風路163a内に設けたものであるが、プレファン120の吸入側に該風力調節手段を設ける場合においては、唐箕ファン119の吸入口142bに設けられるシャッター144と同様に構成されるシャッターを、プレファン120の吸入口163bに適宜設けて、該シャッターを開閉させる手段を設けて、該開閉手段と排藁量検出機構168とを、連動機構169を介して連係させることも可能である。また、以上の如く構成することにより、上述と同様の作用・効果を得ることが可能である。
【0078】
また、連動機構169は、第一連結部材172と第二連結部材173との間に、開閉弁161とシャッター144との連動量を調節可能とするための長さ調節機構174が介設されており、第一連結部材172と第二連結部材173とは、長さ調節機構174を介して、連結されている。
【0079】
具体的には、図10及び図11に示す如く、長さ調節機構174は、長さ調節ボルト174aと、第一長さ調節ナット174bと、第二長さ調節ナット174cとを備える。長さ調節ボルト174aが、第一連結部材172の短辺172bと第二連結部材173の短辺173bとの間に差し込まれている。長さ調節ボルト174aの先端には、第一長さ調節ナット174b及び第二長さ調節ナット174cが螺合されており、この第一長さ調節ナット174bと第二長さ調節ナット174cとにより、第一連結部材172の短辺172bが挟持されている。第一連結部材172の短辺172bと第二連結部材173の短辺173bとの間には、間隔L(図10及び図11参照)が形成されている。
【0080】
また、長さ調節機構174において、長さ調節ボルト174aに螺合されている第一長さ調節ナット174b及び第二長さ調節ナット174cを緩めて、間隔L(図10及び図11参照)が長くされると、開閉弁軸161aとシャッター軸145との軸間距離に対する、連動機構169の長さ(第一ピン172aと第二ピン173aとの軸間距離)の比が大きくされる。これにより、シャッター144に連動される開閉弁161の回動角度が、小さくされる。一方、第一長さ調節ナット174b及び第二長さ調節ナット174cを締めて、間隔L(図10及び図11参照)が短くされると、開閉弁軸161aとシャッター軸145との軸間距離に対する、連動機構169の長さ(第一ピン172aと第二ピン173aとの軸間距離)の比が小さくされる。これにより、シャッター144に連動される開閉弁161の回動角度が、大きくされる。
【0081】
このような構成により、唐箕ファン119のシャッター144に連動される開閉弁161の開閉量を調節できるため、作業状況に応じてプレファン120の送風力を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】脱穀部の側面断面図。
【図4】同じく平面図。
【図5】同じく拡大正面断面図。
【図6】同じく背面断面図。
【図7】脱穀部の駆動構成を示すスケルトン図。
【図8】プレファンの側面断面図。
【図9】同じく平面断面図。
【図10】連動機構の側面図。
【図11】同じく平面図。
【符号の説明】
【0083】
101 コンバイン
105 脱穀部
106 揺動選別装置
119 唐箕ファン
120 プレファン
127 前フィードパン
161 開閉弁(風力調節手段)
163a 送風路(連通路)
163c 吐出口
169 連動機構
180 冷却風導入通路(冷却風導入手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンの近傍、かつ、脱穀部前方に配置されるプレファンと、前記脱穀部の扱胴下方に配設される受網と、前記脱穀部の下方に配設される揺動選別装置とを備えるコンバインの脱穀部において、
前記エンジンとプレファンの吸入側との間に冷却風導入手段を設けるとともに、前記脱穀部の前壁であって、前記受網と揺動選別部との間に、前記プレファンの吐出側との連通路を形成することを特徴とするコンバインの脱穀部。
【請求項2】
前記プレファンの吸入側または吐出側に、風力調節手段を設けることを特徴とする請求項1に記載のコンバインの脱穀部。
【請求項3】
前記風力調節手段を、プレファンの送風口に設ける開閉弁により構成し、該開閉弁を排藁量検知手段と連係することを特徴とする請求項2に記載のコンバインの脱穀部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−289383(P2008−289383A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135975(P2007−135975)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】