説明

コンバイン

【課題】刈取装置の接地圧の軽減と刈取部の不要な沈み込みの防止と刈幅の変更調節の全てを兼ね備えた刈取装置は存在せず、操作性や作業性が低下するという課題がある。
【解決手段】刈取装置4の分草装置8のうち、少なくとも、右側の分草装置8Aを取付けた分草杆25は、前側分草杆25Aと後側分草杆25Bとに前後に分割する。前側分草杆25Aは後側分草杆15Bに対して縦軸27により縦軸回動自在に取付け、圃場上面に接触しつつ追従昇降する接地体26は前側分草杆25Aに一体の前側接地体26Aと後側分草杆25Bに一体の後側接地体26Bとに分割して形成したことを特徴とするコンバイン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体フレームの下方に走行装置を、上方一側に脱穀装置を、夫々設け、前記機体フレームの前方には刈取上下シリンダにより上下する刈取部を設け、刈取上下シリンダとは別に刈取部を支持して刈取部の接地圧を軽減する補助付勢手段を設けた構成は公知である(特許文献1)。
また、刈取部は、最先端位置に分草装置を左右に複数並設し、各分草装置の後側に分草装置が分草した穀稈を引起す引起装置を設け、各分草装置は分草杆の先端に設け、各分草杆の下方には接地体を夫々設けた構成は公知である(特許文献2)。
また、左右並設した分草装置のうち、少なくとも、右側の分草装置を縦軸回動自在に取付けた構成は公知である(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−174856号公報
【特許文献2】特開2006−204307号公報
【特許文献3】特開2006−158332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例のうち、特許文献1に記載されたものは、単に、刈取部の接地圧を軽減するだけであるため、刈取部の不要な沈み込みを効果的に防止できないという課題がある。
前記公知例のうち、特許文献2に記載されたものは、単に、各分草杆の下方に接地体を設けた構成であるから、刈取部の圃場の接地姿勢を安定させるのに一定の効果があるが、刈取部の不要な沈み込みを防止できないという課題がある。
前記公知例のうち、特許文献3に記載されたものは、単に、右側の分草装置を外側回動させるだけであるから、刈幅の変更調節はできるが、刈取部の不要な沈み込みや刈取部の圃場の接地姿勢を安定させられないという課題がある。
本願は、刈取部の不要な沈み込みを効果的に防止しつつ接地姿勢を安定させて、更に、刈幅の変更調節をできるように工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、機体フレーム1の下方に走行装置2を、上方一側に脱穀装置3を、夫々設け、前記機体フレーム1の前方には刈取上下シリンダ17により上下する刈取装置4を設け、刈取上下シリンダ17とは別に刈取装置4を支持して刈取装置4の接地圧を軽減する補助付勢手段20を設け、前記刈取装置4は、その前部に分草装置8を左右に複数並設し、各分草装置8の後側に分草装置8が分草した穀稈を引起す引起装置9を設け、前記各分草装置8は分草杆25の先端に設け、各分草杆25の下方には圃場の起伏変化に伴い圃場上面に接触しつつ追従昇降する接地体26を夫々設け、前記分草装置8のうち、少なくとも、右側の分草装置8Aを取付けた分草杆25は前側分草杆25Aと後側分草杆25Bとに前後に分割し、前側分草杆25Aは後側分草杆15Bに対して縦軸27により縦軸回動自在に取付け、前記接地体26のうち前記前側分草杆25Aと後側分草杆25Bとに設けた接地体26は前側分草杆25Aに一体の前側接地体26Aと後側分草杆25Bに一体の後側接地体26Bとに分割して形成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、コンバインを前進させて、分草装置8で分草するとともに引起装置9で引起し、その後刈刃10で穀稈の根本側を切断し、切断した穀稈を穀稈搬送装置11で搬送して穀稈の刈取作業を行う。
刈取装置4の刈取フレーム15は刈取支持フレーム16の先側に設け、刈取上下シリンダ17により刈取装置4を上下させて刈り高さを調節し、調節された刈り高さよりは下がらずに、前進して刈取作業を行う。
刈取装置4は、刈取装置4と圃場との接地圧力を軽減する補助付勢手段20を刈取上下シリンダ17とは別に設けているので、刈取装置4が圃場上面に接触すると、その反力により刈取装置4の上方退避が許容される。
刈取装置4の各分草装置8を設けた各分草杆25の下方には接地体26を設けているので、接地体26は圃場の起伏変化に伴い刈取装置4を圃場上面に追従昇降させて、圃場上面より所定高さの刈取作業高さに保持する。
複数の分草装置8のうち、少なくとも、右側の分草装置8Aを取り付けた分草杆25は前側分草杆25Aと後側分草杆25Bとに前後に分割し、前側分草杆25Aの基部を後側分草杆15Bに縦軸27により縦軸回動自在に取付け、右側の分草装置8Aに設ける接地体26を後側下方の前側接地体26Aと後側接地体26Bとに分割して、前側分草杆25Aと後側分草杆25Bに夫々取り付けているので、右側の分草装置8Aを通常作業位置に位置させたときは、前側接地体26Aと後側接地体26Bとは直線状に前後に並び、圃場の凸部に接触したときの刈取装置4の上方退避を円滑にさせる。
また、右側の分草装置8Aを外側回動させると、前側接地体26Aだけが外側回動して刈幅が拡大するが、この分草杆25および接地体26を回動させるときの抵抗を軽減させ、右側の分草装置8Aの回動を円滑にする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、刈取上下シリンダ17とは別に設けた補助付勢手段20により刈取装置4の接地圧力を軽減させて、刈取装置4が圃場上面に接触すると上方退避させて突っ込みによる刈取装置4の破損を防止でき、更に、刈取装置4の各分草杆25には接地体26を設けているので、接地体26により刈取装置4の接地面積を広くして圃場の起伏変化に伴い刈取装置4の圃場上面に対する追従昇降を良好にでき、しかも、右側の分草装置8Aをを外側回動させると、前側接地体26Aだけが外側回動し、分草杆25および接地体26を回動させるときの抵抗を軽減させ、右側の分草装置8Aの回動を円滑にして刈幅の拡大を容易に行え、刈取作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】同平面図。
【図3】刈取装置の概略平面図。
【図4】補助付勢手段の側面図。
【図5】分草装置の側面図。
【図6】同平面図。
【図7】同平面図。
【図8】同平面図。
【図9】分草装置の操作レバーの他の実施例の側面図。
【図10】刈取装置の他の実施例の概略斜視図。
【図11】同斜視図。
【図12】同変速装置の概略図。
【図13】刈取装置の上下動状態図。
【図14】刈取装置(コンバイン)の他の実施例の側面図。
【図15】同正面図。
【図16】同平面図。
【図17】同側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施例を図により説明すると、1は機体フレーム、2は該機体フレーム1の下方位置に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方位置に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5はグレンタンク、6はグレンタンク5内の穀粒を排出する排出オーガ、7は操縦部である。
前記刈取装置4は、最先端位置に分草装置8を左右に並設し、各分草装置8の後側に分草装置8が分草した穀稈を引起す引起装置9を設け、引起装置9の後側には刈刃10を設け、刈刃10の上方の後側には刈刃10によって刈り取った穀稈を搬送する穀稈搬送装置11を設ける。
【0009】
穀稈搬送装置11の構成は任意であり、前側搬送装置12や掻き込み装置13や後方に搬送する後側搬送装置14等により構成する。分草装置8と引起装置9と刈刃10と刈り取った穀稈を搬送する穀稈搬送装置の一部を刈取フレーム15に設け、刈取フレーム15は刈取支持フレーム16の先側に設ける。刈取支持フレーム16は、公知のごとく、機体固定部に設けた刈取懸架支持台18にその基部を回動自在に取付ける。刈取支持フレーム16と機体フレーム1の間には、刈取装置4を上下させる刈取上下シリンダ17を取付ける。
【0010】
刈取上下シリンダ17は油圧ポンプ(図示省略)により送油されて刈取装置4を上昇させ、送油した油を戻すと刈取装置4を下降させる単動式シリンダにより構成する。
刈取上下シリンダ17とは別に、刈取装置4の接地圧力を軽減する補助付勢手段20を設ける(図1では刈取上下シリンダ17および補助付勢手段20の図示を省略している)。補助付勢手段20は刈取装置4の重量よりも所定量だけ小さい反発弾性力を備えたバネ機構21を有して構成し(図4)、バネ機構21は刈取装置4が圃場面との接触で突き上げられると、刈取装置4が上方退避できるように上昇側に付勢し、圃場面からの突き上げがなくなると、刈取装置4の自重で刈取装置4が下降するように構成する。
【0011】
下降速度を遅くする構成は任意であるが、一例を示すと、バネ機構21は伸縮自在のバネホルダ22内に大径バネ23と該大径バネ23より短い小径バネ24を内蔵して構成する。
そのため、刈取装置4が最上方位置から所定高さまでの下降速度は速くし、所定高さより更に下降させるときの下降速度が最上方位置から下降速度より遅くなるように構成する。
【0012】
即ち、刈取装置4が最上方位置から所定高さまで大径バネ23単独の弾力により支持しながら下降させて下降速度を速くして作業の迅速化を図り、所定高さより更に下降させるときは大径バネ23および小径バネ24の両者により支持して下降速度を遅くし、刈取装置4の先端部が接地位置付近では下降速度が最も遅くなって、刈取装置4の先端部が地面に突っ込みにくくなり対地追従の刈取装置4の下げ操作を行い易くする。
【0013】
また、刈取装置4の分草装置8を接地させた状態のときも、分草装置8が圃場面に接触すると、刈取装置4を上方退避させるので、刈取装置4の刈取高さを低く一定にでき、刈取高さ調節が容易になる。
【0014】
しかして、前記各分草装置8は分草杆25の先端に設け、各分草杆25の下方には橇形状の接地体26を設ける。接地体26は圃場の起伏変化に伴い圃場上面に追従昇降して、刈取装置4を所定高さに保持する作用を奏する。
【0015】
この場合、前記分草装置8のうち、少なくとも、右側の分草装置8Aを取り付けた分草杆25は前側分草杆25Aと後側分草杆25Bとに前後に分割し、前側分草杆25Aの基部を後側分草杆15Bに縦軸27により縦軸回動自在に取付ける。前側分草杆25Aにはアーム30の中間部を固定し、アーム30は前記縦軸27に回動自在に取付ける。アーム30の一方端にはバネ31を接続する。アーム30の他方端には操作用伝達部材(ワイヤー)32を係止し、操作レバー33の操作を操作用伝達部材32が伝達して分草装置8を外側回動させる。
【0016】
バネ31と操作用伝達部材32の関係は任意であり、バネ31が外側回動あるいは内側回動させるように付勢し、操作用伝達部材32がバネ31に抗して分草装置8を回動させればよい。
前記前側分草杆25Aと後側分草杆25Bの夫々の下方に設けた接地体26は、前側接地体26Aと後側接地体26Bとに分割して設ける。前側接地体26Aと後側接地体26Bは、通常、圃場の凸部に接触したときの補助付勢手段20による刈取装置4の上方退避を円滑にさせ、右側の分草装置8Aを外側回動させるときは前側接地体26Aだけを外側回動させることができ、回動させるときの抵抗を軽減させ、右側の分草装置8Aの回動を円滑にする。
【0017】
また、前記縦軸27の下方に前側接地体26Aの後端を位置させると、一層、接地体26Aの回動の抵抗を軽減させ、右側の分草装置8Aの回動を円滑にする。
また、前側接地体26Aの後端に、薄い後方突起部35を設け、後方突起部35は後側接地体26Bの先端下方に位置させ、前側接地体26Aの後端と後側接地体26Bの前端とが上下に重なるように構成する。
【0018】
そのため、接地体26を前側接地体26Aと後側接地体26Bとに分割していても、圃場の凸部に接触したときに引っ掛かるのを抑制し、補助付勢手段20による刈取装置4の上方退避を円滑にさせる。
また、前記縦軸27の下方に前側接地体26Aの後端のみならず、前側接地体26Aの後端と後側接地体26Bの前端との上下重なり部分も位置するので、縦軸27付近を保護でき、藁屑等が縦軸27付近に溜まるのを防止する。
【0019】
図7のように、後側接地体26Bの左右幅Aは前側接地体26Aの最も広い左右幅Bに比し、狭く構成すると、右側の分草装置8Aを外側回動させたとき後側接地体26Bの泥土の引っ掛けを抑制できる。
【0020】
前記前側接地体26Aは前記前側分草杆25Aの下方に上下に重なるように設ける(図8では理解を容易にするため、前側分草杆25Aの部分に斜線を付しているが、これにより構成は限定されない)。前記前側接地体26Aの左右両側縁は前記前側分草杆25Aの左右両側縁より夫々側方に突出するように幅広に形成する。図8のように、前側接地体26Aの左右両側縁の前側分草杆25Aより側方に突出する幅広部分は、左の張り出し幅Aよりも右の張り出し幅Bを大きく構成する。
【0021】
前側接地体26Aの左の張り出し幅Aを右の張り出し幅Bより小さく構成しているので、分草装置8と分草装置8との間の分草通路内のまだ刈刃10により切断されていない未刈り稈を倒すことがなく、前側接地体26Aの右の張り出し幅Bを大きくしても既刈地側なので、穀稈を倒す虞がなく、前側接地体26Aの接地面積を大きくして、圃場の凸部との接触範囲を広くでき、刈取装置4の上方退避を円滑に行える。
【0022】
前記前側接地体26Aは平面視において、先細の略三角形状に形成し、前側接地体26Aによる分草作用を期待する(図6,図7)。
前側接地体26Aと後側接地体26Bとは、前側接地体26Aの接地面積より後側接地体26Bの接地面積を大きく形成する(図5)。
刈取装置4の重量が荷重として掛かる場合、比較的荷重を受けない前側接地体26Aの接地面積より、荷重の大きく掛かる後側接地体26Bの接地面積を大きくしたことにより、刈取装置4を支持する接地圧を低減できる。
【0023】
即ち、前記前側接地体26Aは側面視において、前端より後端を低く前上がりに取付け、前側接地体26Aの接地面積より後側接地体26Bの接地面積を大きく形成する(図5)。
また、前側接地体26Aによる圃場の泥を押す抵抗を軽減させることができる。
前記前側接地体26Aは平面視において、分草装置8の分草カバー40と上下に重なるように構成し、分草カバー40と重なる部分の前側接地体26Aは、分草カバー40の左右側縁より夫々内側に位置するようにする(図6)。
【0024】
そのため、分草装置8の分草カバー40が先に穀稈に接触し、前側接地体26Aが分草装置8の分草作用に悪影響を与えるのを防止する。
図9は、右側の分草装置8Aを外側回動させる操作レバー33の設置位置の他の実施例を示すものであり、操縦部7の側部操作パネル41に操作レバー33を設けている。
【0025】
しかして、図10は刈取装置4の他の実施例であり、左右方向の上部横伝動ケース50に、複数の引起装置9を吊設し、引起装置9の下部は前記各分草装置8の分草杆25に取付ける。分草杆25の基部は下部横フレーム51に固定し、下部横フレーム51の左右両側には側部フレーム52を設ける。
上部横伝動ケース50の左右中間に前後方向の刈取上側支持フレーム53の先端を取付け、刈取上側支持フレーム53の基部には機体側に設けた懸架台(図示省略)に回転自在に取り付けた後部横伝動ケース54を設ける。
55はプーリー、56は伝動軸である。
【0026】
そして、刈取上側支持フレーム53に変速機構60を設けている(図11)。変速機構60の構成は任意であり、実施例では所謂割プーリによりプーリ径を変更して変速するベルコン変速機構としている。
刈取フレーム15は、上部横伝動ケース50と、下部横フレーム51および側部フレーム52とを別体に構成し、上部横伝動ケース50の左右中間に前後方向の刈取上側支持フレーム53の先端を取付けているので、刈取作物適応性を広くできる。
また、ベルコン変速機構60により引起装置9を含めた刈取装置4の回転数の変速を容易に行え、作業性を向上させる。
【0027】
また、ベルコン変速機構60により変速構成を簡単に構成できる。
また、刈取上側支持フレーム53にベルコン変速機構60を設けているので、上部横伝動ケース50および刈取上側支持フレーム53を、下部横フレーム51および側部フレーム52と切り離して、ベルコン変速機構60ごと上下させることができるので、伝動機構の遮断作業を不要にして、引起装置9を上昇させて刈刃10周辺を開放でき、メンテナンス等を容易にできる。
【0028】
また、ベルコン変速機構60の操作レバー61を操縦部6に設けられ、通常の刈取装置4の上下に際し、ベルコン変速機構60と操作レバー61との間の操作系の遮断も不要となる。
【0029】
しかして、図14は刈取装置4の他の実施例であり、複数並設した引起装置9のうち、中央の引起装置9の上部後側に上部カバー70を設け、上部カバー70の下方に案内ガイド71を設ける。
案内ガイド71は、後側搬送装置14の穂先搬送ラグ72の先端軌跡より内側へラップするまで、後方および左右方向へ張り出す形状に形成する。
そのため、長い穀稈や倒伏穀稈の搬送性能を向上させることができる。
【0030】
(実施例の作用)
刈取装置4は、最先端位置に分草装置8を左右に並設し、各分草装置8の後側に分草装置8が分草した穀稈を引起す引起装置9を設け、引起装置9の後側には刈刃10を設け、刈刃10の上方の後側には刈刃10によって刈り取った穀稈を搬送する穀稈搬送装置11を設けているので、刈取装置4が前進すると、分草装置8が圃場の穀稈を分草し、各分草装置8が分草した穀稈を引起装置9が引起し、引起した穀稈を刈刃10が切断し、刈刃10によって刈り取った穀稈を穀稈搬送装置11が搬送する。
【0031】
刈取装置4の刈取フレーム15は刈取支持フレーム16の先側に設け、刈取上下シリンダ17により刈取装置4を上下させて刈り高さを調節し、調節された刈り高さよりは下がらずに、前進して刈取作業を行う。
刈取装置4は、刈取装置4と圃場との接地圧力を軽減する補助付勢手段20を刈取上下シリンダ17とは別に設けているので、刈取装置4が圃場上面に接触すると、その反力により刈取装置4を上方退避させる。
【0032】
即ち、「やじろべえ(弥次郎兵衛)」のように、刈取装置4の先端は下から軽く圃場の障害物が当たると、直ぐに上動するように、補助付勢手段20により刈取装置4の重さを支持しているので、刈取装置4が圃場上面に接触すると、その反力により調節した刈取作業高さよりも高く上方に向けて刈取装置4を退避させ、圃場の障害物を刈取装置4が通過すると、刈取装置4は自重で刈取作業高さまで下降して刈取作業を続行する。
補助付勢手段20は刈取装置4の不要な沈み込みを防止する。
【0033】
この場合、刈取装置4の各分草装置8を設けた各分草杆25の下方には橇形状の接地体26を設けているので、接地体26は圃場の起伏変化に伴い刈取装置4を圃場上面に追従昇降させて、圃場上面より所定高さの刈取作業高さに保持する。
しかして、複数の分草装置8のうち、少なくとも、右側の分草装置8Aを取り付けた分草杆25は前側分草杆25Aと後側分草杆25Bとに前後に分割し、前側分草杆25Aの基部を後側分草杆15Bに縦軸27により縦軸回動自在に取付け、右側の分草装置8Aの後側下方の前側接地体26Aと後側接地体26Bとに分割して、前側分草杆25Aと後側分草杆25Bの夫々の下方に取り付けているので、右側の分草装置8Aを通常作業位置に位置させたときは、前側接地体26Aと後側接地体26Bとは直線状に前後に並び、圃場の凸部に接触したときの刈取装置4の上方退避を円滑にさせる。
【0034】
また、右側の分草装置8Aを外側回動させると、前側接地体26Aだけが外側回動し、分草杆25および接地体26を回動させるときの抵抗を軽減させ、右側の分草装置8Aの回動を円滑にする。
この場合、右側の分草装置8Aの回動中心となる縦軸27の下方に前側接地体26Aの後端を位置させると、一層、前側接地体26Aの回動の抵抗を軽減させ、右側の分草装置8Aの回動を円滑にする。
【0035】
また、前側接地体26Aの後端に、薄い後方突起部後方突起部35を設け、後方突起部35は後側接地体26Bの先端下方に位置させると、前側接地体26Aの後端と後側接地体26Bの前端とが上下に重なるので、接地体26を前側接地体26Aと後側接地体26Bとに分割していても、圃場の凸部に接触したときに引っ掛かるのを抑制し、補助付勢手段20による刈取装置4の上方退避を円滑にさせる。
【0036】
また、縦軸27の下方に、前側接地体26Aの後端のみならず前側接地体26Aの後端と後側接地体26Bの前端との上下重なり部分も位置するので、縦軸27付近を保護でき、藁屑等が縦軸27付近に溜まるのを防止する。
後側接地体26Bの左右幅は前側接地体26Aの最も広い左右幅に比し、狭く構成しているので、右側の分草装置8Aを外側回動させたとき後側接地体26Bの泥土の引っ掛けを抑制できる。
【0037】
前側接地体26Aは前側分草杆25Aの下方に上下方向に重なるように設け、前側接地体26Aの左右両側縁は前側分草杆25Aの左右両側縁より夫々側方に突出するように幅広に形成し、前側接地体26Aの左右両側縁の前側分草杆25Aより側方に突出する幅広部分は、左の張り出し幅よりも右の張り出し幅を大きく構成しているので、未刈り稈を倒すことがなく、前側接地体26Aの右の張り出し幅を大きくしても既刈地側なので、穀稈を倒す虞がなく、前側接地体26Aの接地面積を大きくして、圃場の凸部との接触範囲を広くでき、刈取装置4の上方退避を円滑に行える。
【0038】
前側接地体26Aと後側接地体26Bとは、前側接地体26Aの接地面積より後側接地体26Bの接地面積を大きく形成しているので、刈取装置4の重量が荷重として掛かる場合、比較的荷重を受けない前側接地体26Aの接地面積より、荷重の大きく掛かる後側接地体26Bの接地面積を大きくしたことにより、刈取装置4を支持する接地圧を低減できる。
【0039】
前側接地体26Aは側面視において、前端より後端を低く前上がりに取付けているので、圃場の泥を押す抵抗を軽減させることができる。
前側接地体26Aは平面視において、分草装置8の分草カバー40と上下に重なるように構成し、分草カバー40と重なる部分の前側接地体26Aは、分草カバー40の左右側縁より夫々内側に位置させているので、分草装置8の分草カバー40が先に穀稈に接触し、前側接地体26Aが分草装置8の分草作用に悪影響を与えるのを防止する。
【0040】
しかして、前側分草杆25Aにアーム30の中間部を固定し、アーム30は縦軸27に回動自在に取付け、アーム30の一方端にはバネ31を接続し、アーム30の他方端には操作用伝達部材32を係止しているので、操作レバー33の操作により操作用伝達部材32を牽引すると、分草装置8を縦軸27中心に外側回動させ、操作レバー33により操作用伝達部材32を弛めると、バネ31の弾力により分草装置8を縦軸27中心に元の作業位置に戻す。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0041】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、7…操縦部、8…分草装置、9…引起装置、10…刈刃、11…穀稈搬送装置、12…掻き込み装置、13…後側搬送装置、15…刈取フレーム、16…刈取支持フレーム、17…刈取上下シリンダ、20…補助付勢手段、21…バネ、25…分草杆、26…接地体、27…縦軸、30…アーム、31…バネ、32…操作用伝達部材、33…操作レバー、35…後方突起部、40…分草カバー、50…上部横伝動ケース、51…下部横フレーム、52…側部フレーム、53…刈取上側支持フレーム、54…後部横伝動ケース、60…ベルコン変速機構、61…操作レバー、70…上部カバー、71…案内ガイド、72…穂先搬送ラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の下方に走行装置(2)を、上方一側に脱穀装置(3)を、夫々設け、前記機体フレーム(1)の前方には刈取上下シリンダ(17)により上下する刈取装置(4)を設け、刈取上下シリンダ(17)とは別に刈取装置(4)を支持して刈取装置(4)の接地圧を軽減する補助付勢手段(20)を設け、前記刈取装置(4)は、その前部に分草装置(8)を左右に複数並設し、各分草装置(8)の後側に分草装置(8)が分草した穀稈を引起す引起装置(9)を設け、前記各分草装置(8)は分草杆(25)の先端に設け、各分草杆(25)の下方には圃場の起伏変化に伴い圃場上面に接触しつつ追従昇降する接地体(26)を夫々設け、前記分草装置(8)のうち、少なくとも、右側の分草装置(8A)を取付けた分草杆(25)は前側分草杆(25A)と後側分草杆(25B)とに前後に分割し、前側分草杆(25A)は後側分草杆(15B)に対して縦軸(27)により縦軸回動自在に取付け、前記接地体(26)のうち前記前側分草杆(25A)と後側分草杆(25B)とに設けた接地体(26)は前側分草杆(25A)に一体の前側接地体(26A)と後側分草杆(25B)に一体の後側接地体(26B)とに分割して形成したことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−172239(P2010−172239A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16980(P2009−16980)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】