説明

コンバイン

【課題】コンバインにおいて、排気ガス浄化装置65をエンジン20自体又はその近傍に効率よくコンパクトに配置できるようにする。
【解決手段】本願発明のコンバインは、脱穀装置5及びグレンタンク7が横並び状に搭載された走行機体1と、グレンタンク7前側にある操縦部10の下方に、エンジン出力軸83を走行機体1の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジン20とを備える。エンジン20からの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置65を備える。排気ガス浄化装置65は平面視でエンジン出力軸83と交差する方向に長い形態にする。排気ガス浄化装置65の排気ガス取入れ側をエンジン20の排気マニホールド64に連結する。排気ガス浄化装置65の排気ガス排出側を脱穀装置5とグレンタンク7との間に向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀するコンバインに係り、より詳しくは、走行機体に搭載されたエンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置の配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、ディーゼルエンジンに関する高次の排ガス規制が適用されるのに伴い、ディーゼルエンジンが搭載される農作業機や建設機械等に、排気ガス中の大気汚染物質を浄化処理する排気ガス浄化装置を搭載することが要望されつつある。排気ガス浄化装置としては例えばDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)が知られている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−145430号公報
【特許文献2】特開2003−27922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気ガス浄化装置の一例であるDPFでは、経年使用にて排気ガス中の粒子状物質がスートフィルタに堆積するので、ディーゼルエンジンの駆動時に粒子状物質を燃焼除去してスートフィルタを再生させている。よく知られているように、スートフィルタ再生動作は、排気ガス温度が所定温度(例えば300℃程度)以上で起こるから、DPFを通過する排気ガス温度は所定温度以上であることが望ましい。このため、従来から、DPFを排気ガス温度が高い位置、すなわち、ディーゼルエンジン自体に又はその近傍に配置したいという要請がある。
【0005】
一方、農作業機の中でもコンバインは、トラクタといった他の農作業機に比べて、刈取装置、脱穀装置及びグレンタンク等の様々な装置を備えているため、エンジンは、グレンタンク前側に位置する操縦部の下方に、エンジン出力軸を走行機体の左右方向に向けた状態で搭載される。エンジン出力軸を横向きにしてエンジンを搭載するのは、走行機体の機体全長をコンパクトにする目的で、エンジン搭載スペースの前後幅寸法をできるだけ短く制限しているからである。このように近年は、軽量化・コンパクト化の要請で、エンジン搭載スペースに制約がある(狭小である)ことが多い。
【0006】
このため、エンジン自体に又はその近傍にDPFを配置するに当たっては、DPFをできるだけコンパクトにレイアウトする必要がある。特にコンバインでは、エンジン搭載スペースだけでなく、脱穀装置やグレンタンクとの位置関係を踏まえた上で、総合的な観点から見てDPFを効率的且つコンパクトに配置することが求められる。
【0007】
本願発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、排気ガス浄化装置をエンジン自体又はその近傍に効率よくコンパクトに配置できるようにすることを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、脱穀装置及びグレンタンクが横並び状に搭載された走行機体と、前記グレンタンク前側にある操縦部の下方に、エンジン出力軸を前記走行機体の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジンとを備えているコンバインであって、前記エンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置を備えており、前記排気ガス浄化装置は平面視で前記エンジン出力軸と交差する方向に長い形態になっており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス取入れ側が前記エンジンの排気マニホールドに連結されており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側が前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向けられているというものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したコンバインにおいて、前記エンジンのうち前記走行機体の左右外側にある側部に、エンジン空冷用の冷却ファンが設けられており、平面視で前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側と前記冷却ファンとの間に、前記エンジンにおける吸気マニホールドの吸気入口部が位置しているというものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載したコンバインにおいて、前記冷却ファンの上方には、前記吸気マニホールドに供給される外気をろ過するためのエアクリーナが配置されているというものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係るコンバインは、脱穀装置及びグレンタンクが横並び状に搭載された走行機体と、前記グレンタンク前側にある操縦部の下方に、エンジン出力軸を前記走行機体の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジンとを備えているものであり、前記エンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置を備えており、前記排気ガス浄化装置は平面視で前記エンジン出力軸と交差する方向に長い形態になっている。そして、前記排気ガス浄化装置の排気ガス取入れ側が前記エンジンの排気マニホールドに連結されており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側が前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向けられている。
【0012】
このため、例えばエンジン搭載スペースの前後幅寸法より長尺の排気ガス浄化装置であっても、前記脱穀装置及び前記グレンタンクに干渉しないように、前記排気ガス浄化装置を前記エンジンに近接させて配置できることになる。また、前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側が前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向いているので、前記脱穀装置と前記グレンタンクの間のデッドスペースを活用して排気系統(例えばマフラーやテールパイプ等)を配置するにおいて、前記排気ガス浄化装置に前記排気系統を短い距離で接続できる。従って、前記エンジンの排気効率の向上も図れることになる。
【0013】
請求項2の発明によると、前記エンジンのうち前記走行機体の左右外側にある側部に、エンジン空冷用の冷却ファンが設けられており、平面視で前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側と前記冷却ファンとの間に、前記エンジンにおける吸気マニホールドの吸気入口部が位置しているから、平面視で前記吸気マニホールドの前記吸気入口部と前記排気ガス浄化装置とが重なることはない。すなわち、前記エンジンの吸気系統の配管構造に対して、前記排気ガス浄化装置の搭載姿勢が邪魔にならない。従って、前記エンジンの上方空間を利用して、前記吸気系統の配管をコンパクトに配置したり取り回したりすることが可能になり、組付け作業性やメンテナンス性の向上を図れるという効果を奏する。
【0014】
請求項3の発明によると、前記冷却ファンの上方には、前記吸気マニホールドに供給される外気をろ過するためのエアクリーナが配置されているから、前記エアクリーナが前記吸気マニホールドの前記吸気入口部の近傍に位置することになる。このため、前記吸気マニホールドの前記吸気入口部に前記エアクリーナを短い距離で接続できる。また、前記排気ガス浄化装置は前記エンジンにおける前記冷却ファンの反対側に片寄らせて配置されることになるから、前記エアクリーナの存在が邪魔にならず、前記排気ガス浄化装置と前記エアクリーナとを前記エンジンの近傍にコンパクトに配置できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】ディーゼルエンジンの左側面図である。
【図5】ディーゼルエンジンの正面図である。
【図6】ディーゼルエンジンの平面図である。
【図7】DPFの説明図である。
【図8】動力伝達系統のスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0017】
(1).コンバインの全体構造
まず、図1〜図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。図1〜図3に示されるように、実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取る4条刈り用の刈取装置3が配置されている。単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に、走行機体1の前部に刈取装置3が装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置され、グレンタンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている(図3参照)。グレンタンク7内の穀粒を機体外部に排出する穀粒排出オーガ8が配設されている。
【0018】
走行機体1の右側前部には操縦部10が設けられている。グレンタンク7の前方の操縦部10には、オペレータが搭乗するステップ11、運転座席12、操向ハンドル13や各種の操作レバーなどを備えた操作装置を配置している。走行機体1のうち運転座席12の下方には、動力源としてのディーゼルエンジン20が配置されている。実施形態のディーゼルエンジン20は、操縦部10の下方にあるエンジンルーム79(図4〜図6参照)内に、エンジン出力軸83(詳細は後述する)を走行機体1の左右方向に向けた状態で搭載されている。運転座席12の一側方に配置されたサイドコラム14には、走行機体1の変速操作を行う主変速レバー15、油圧無段変速機(図示省略)の出力及び回転数を所定範囲に設定保持する副変速レバー16、刈取装置3及び脱穀装置5への動力継断操作用のクラッチレバー17が設けられている。
【0019】
主変速レバー15は、走行機体1の前進、停止、後退及びその車速を無段階に変更操作するためのものである。副変速レバー16は、作業状態に応じてミッションケース86(図6参照)内の副変速機構(図示省略)を変更操作し、油圧無段変速機の出力及び回転数を、中立を挟んで低速と高速の2段階の変速段に設定保持するためのものである。
【0020】
クラッチレバー17は、刈取装置3の動力継断操作用のレバーと脱穀装置5の動力継断操作用のレバーとを1本で兼ねたものであり、サイドコラム14に形成されたL字状のクランク溝に沿って傾動可能に構成されている。この場合、クラッチレバー17をクランク溝の左部先端側に傾動させると刈取クラッチ92及び脱穀クラッチ93(図8参照)が共に切り状態になり、クランク溝の中途コーナ部に傾動させると脱穀クラッチ93のみが入り状態になり、クランク溝の前部先端側にまで傾動させると両クラッチ92,93とも入り状態になる。
【0021】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にディーゼルエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持する。
【0022】
図1〜図3に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに刈取フレーム9を連結している。刈取装置3は、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置47と、圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置48と、刈刃装置47によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置49と、圃場の未刈り穀稈を分草する4条分の分草体50とを備える。刈取フレーム9の下方に刈刃装置47が設けられている。刈取フレーム9の前方に穀稈引起装置48が配置されている。穀稈引起装置48とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間に穀稈搬送装置49が配置されている。穀稈引起装置48の下部前方に分草体50が突設されている。ディーゼルエンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0023】
図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤27と、揺動選別盤27に選別風を供給する唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別盤27の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン30とを備えている。
【0024】
図1乃至図3に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン34が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0025】
揺動選別盤27の下方側には、揺動選別盤27にて選別された穀粒(一番選別物)を取出す一番コンベヤ31と、枝梗付き穀粒等の二番選別物を取出す二番コンベヤ32とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ31,32は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ31、二番コンベヤ32の順で、側面視において走行機体1の上面側に横設されている。
【0026】
図1乃至図3に示す如く、揺動選別盤27は、扱胴26の下方に落下した脱穀物を、揺動選別(比重選別)するように構成している。揺動選別盤27から落下した穀粒(一番選別物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン28からの選別風によって除去され、一番コンベヤ31に落下する。一番コンベヤ31のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒33が連通接続されている。一番コンベヤ31から取出された穀粒は、一番揚穀筒33内の一番揚穀コンベヤ(図示せず)によってグレンタンク7に搬入され、グレンタンク7に収集される。
【0027】
揺動選別盤27は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベヤ32に落下させるように構成している。二番コンベヤ32によって取出された二番選別物は、二番還元筒36及び二番処理部37を介して揺動選別盤27の上面側に戻されて再選別される。また、扱胴26からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン28からの選別風によって、走行機体1の後部から圃場に向けて排出される。
【0028】
(2).コンバインの動力伝達系統
次に、図8を参照しながら、コンバインの動力伝達系について説明する。
【0029】
ディーゼルエンジン20の動力は、ディーゼルエンジン20の左右両側に突出したエンジン出力軸83の一方から、ミッションケース86及び刈取装置3と、脱穀装置5との2方向に分岐して伝達される。ディーゼルエンジン20の他の動力は、エンジン出力軸83の他方から穀粒排出オーガ8に伝達される。
【0030】
ミッションケース86には、直進用の油圧無段変速機と旋回用の油圧無段変速機(共に図示省略)とを備えている。エンジン出力軸83からミッションケース86に向かう分岐動力は、直進用の油圧無段変速機の直進用入力軸88に伝達され、直進用入力軸52から旋回用の油圧無段変速機の旋回用入力軸89に動力伝達される。
【0031】
操縦部10に配置された操向ハンドル13の操作量に応じて、各油圧ポンプにおける回転斜板の傾斜角度を調節することにより、油圧ポンプ油圧モータ間の作動油の吐出方向及び吐出量が変更され、直進用又は旋回用出力軸(図示せず)の回転方向及び回転数、ひいては左右の走行クローラ2の駆動速度及び駆動方向が任意に調節される。
【0032】
また、直進用出力軸88に伝達された動力は、ミッションケース86から突出した刈取PTO軸90にも伝達され、次いで、一方向クラッチ91及びベルトテンション式の刈取クラッチ92を介して、刈取装置3に動力伝達される。
【0033】
エンジン出力軸83の一方から脱穀装置5に向かう分岐動力は、クラッチ手段であるベルトテンション式の脱穀クラッチ93を介して、唐箕ファン28の唐箕軸40に伝達される。唐箕軸40に伝達された動力の一部は、ベルト41及びプーリ伝動により、一番コンベヤ31及び一番揚穀筒33内の揚穀コンベヤ38、二番コンベヤ32及び二番還元筒36内の還元コンベヤ39、揺動選別盤27の揺動軸42、排塵ファン30の排塵軸43、並びに排藁カッタ35に伝達される。
【0034】
また、唐箕軸40からは、フィードチェンクラッチ44及びフィードチェン軸45を経て、フィードチェン6の前端にも動力伝達される。更に、唐箕軸40からの動力は扱胴入力軸52にも伝達される。扱胴入力軸52に伝達された動力は、扱胴26と処理胴29との2方向に分岐して伝達される。扱胴入力軸52から扱胴26への分岐動力は、扱胴26の回転軸53及び排藁チェン34に伝達される。扱胴入力軸52から処理胴29への分岐動力は、処理胴入力軸54を経由して処理胴29の回転軸55に伝達される。処理胴入力軸54からは二番処理部37の回転軸56にも分岐動力が伝達される。
【0035】
エンジン出力軸83から穀粒排出オーガ8に向かう動力は、グレン入力ギヤ機構94及び動力継断用のオーガクラッチ95を介して、グレンタンク7内の底コンベヤ96及び穀粒排出オーガ8における縦オーガ筒内の縦コンベヤ97に動力伝達され、次いで、受継スクリュー98を介して、穀粒排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ99に動力伝達される。
【0036】
(3).ディーゼルエンジンの吸排気構造
次に、主に図4乃至図6を参照しながら、ディーゼルエンジン20の吸排気構造について説明する。ディーゼルエンジン20は、上面にシリンダヘッド60が締結されたシリンダブロック59を備えている。ディーゼルエンジン20におけるシリンダヘッド60の前面側に排気マニホールド64が配置されている。シリンダヘッド60の背面側には吸気マニホールド75が配置されている。シリンダブロック59は、エンジン出力軸83(クランク軸)及びピストン(図示省略)を有している。シリンダブロック59の左右両側面からエンジン出力軸83の左右先端部をそれぞれ突出させている。
【0037】
図5及び図6に示すように、シリンダブロック59のうち走行機体1の左右外側にある側部(右側部)にはディーゼルエンジン20空冷用の冷却ファン77が設けられている。エンジン出力軸83の右先端側からVベルト(図示省略)を介して冷却ファン77に回転力を伝達するように構成されている。ディーゼルエンジン20を収容するエンジンルーム79の右側方に、ディーゼルエンジン20水冷用のラジエータ76が配置されている。当該ラジエータ76にディーゼルエンジン20の冷却ファン77を対峙させている。
【0038】
図4〜図6に示すように、シリンダブロック59のうち走行機体1の左右中央側にある側部(左側部)には、ディーゼルエンジン20からの動力を取り出すためのフライホイール84が設けられている。フライホイール84は、シリンダブロック59の左側部から突出したエンジン出力軸83の先端部に固定されている。フライホイール84に、刈取装置3や脱穀装置5に駆動力を伝達する作業部駆動プーリ85や、ミッションケース86から走行クローラ2に駆動力を伝達する走行駆動プーリ87を固着させて、ディーゼルエンジン20の出力部を構成している。
【0039】
図4〜図6に示すように、ディーゼルエンジン20は、フライホイール84が走行機体1の左右中央側に、冷却ファン77が走行機体1の右側に位置するようにして、操縦部10の下方に形成されたエンジンルーム79内に配置されている。すなわち、エンジン出力軸83の向きが左右方向に延びるように、ディーゼルエンジン20が配置されている。
【0040】
シリンダヘッド60の上方のうちフライホイール84寄りの位置に、排気ガス処理装置の一例であるディーゼルパティキュレートフィルタ65(以下、DPFという)が設けられている。排気マニホールド64の右側部から上向きに突出した排気出口部がDPF65の排気ガス取入れ側に連結されている。DPF65の排気ガス排出側には、中継排気管67を介してマフラー68が接続されている。マフラー68にはテールパイプ69が接続されている。すなわち、ディーゼルエンジン20の各気筒から排気マニホールド64に排出された排気ガスは、DPF65を経由して浄化処理されたのち、マフラー68を経由してテールパイプ69から外部に放出される。
【0041】
排気ガス浄化装置の一例であるDPF65は、排気ガス中の粒子状物質(PM)等を捕集するためのものである。図4〜図9に示すように、実施形態のDPF65は、平面視でエンジン出力軸83と交差する前後方向に長い形態になっている。そして、シリンダヘッド60の上方において、排気ガス移動方向が脱穀装置5とグレンタンク7との間に向くようにして、ディーゼルエンジン20の上面から離して配置されている。換言すると、DPF65の排気ガス排出側は脱穀装置5とグレンタンク7との間に向けられている。DPF65全体としては、平面視において排気マニホールド64の左側部から後方斜め右向きに傾いた姿勢に配置されている。
【0042】
図8に示すように、DPF65は、耐熱金属材料製のDPFケーシング100に内蔵された略筒型のフィルタケース101,102に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒103とハニカム構造のフィルタ体であるスートフィルタ104とを直列に並べて収容した構造になっている。
【0043】
DPFケーシング100の長手方向一端側(前側)には、ディーゼル酸化触媒103より排気ガス上流側の空間に連通する排気ガス入口管106が溶接固定されている。排気ガス入口管106が排気マニホールド64の排気出口部にボルト締結される。DPFケーシング100の長手方向他端側(後ろ側)には、スートフィルタ104より排気ガス下流側の空間に連通する排気ガス出口管107が設けられている。排気ガス出口管107の排気ガス排出側(先端側)が中継排気管67の一端側に接続される。
【0044】
また、図4及び図5に示すように、DPFケーシング100の長手方向他端側(後ろ側)には、下向きに突出する固定脚体108の上端側が溶接固定されている。固定脚体108の下端側はシリンダヘッド60の背面側にボルト締結されている。つまり、上記したDPF65は、高剛性の排気マニホールド64及びシリンダヘッド60にて、ディーゼルエンジン20の上部に高剛性で且つ安定的に連結支持されている。
【0045】
図4に示すように、排気ガス出口管107の排気ガス排出側(先端側)に接続された中継排気管67は上向きに折り曲げられている。中継排気管67の上端部がマフラー68の排気ガス取入れ側に連通接続されている。脱穀装置5とグレンタンク7の間において、マフラー68からテールパイプ69の前端側を上向きに延長させている(図4及び図5参照)。そして、脱穀装置5の上面より高い位置で、テールパイプ69の後端側を後方に向けて延長させ、グレンタンク7の左側において、グレンタンク7から離れる方向に向けてテールパイプ69の後端側を開口させている(図6参照)。このため、穀粒を貯留するグレンタンク7が排気ガスにて汚れるのを低減できる。
【0046】
一方、図6に詳細に示すように、シリンダヘッド60の背面側に配置された吸気マニホールド75の吸気入口部75aは、平面視でDPF65の排気ガス排出側と冷却ファン77との間の略中央部に位置している。吸気マニホールド75の吸気入口部75aは、中継吸気管78及び排気マニホールド64上に設けられたEGR装置111のコレクタ115に連通接続されている。
【0047】
図5及び図6に示すように、EGR装置111は、ディーゼルエンジン20の排気ガスの一部(EGRガス)と新気(外気)とを混合させて吸気マニホールド75に供給するコレクタ115と、吸気管70とコレクタ115とをつなぐ吸気スロットル116と、排気マニホールド64にEGRクーラ117を介して接続される再循環排気ガス管(図示省略)と、再循環排気ガス管にコレクタ115を連通させるEGRバルブ部材119とを備えている。
【0048】
すなわち、吸気マニホールド75と吸気スロットル116とが、排気マニホールド64側に位置するコレクタ115及び中継吸気管78を介して接続されている。そして、コレクタ115には、排気マニホールド64から延びる再循環排気ガス管の出口側がEGRバルブ部材119を介して接続されている。
【0049】
EGRバルブ部材119は、その内部にあるEGRバルブ(図示省略)の開度を調節することにより、コレクタ115へのEGRガスの供給量を調節するものである。EGRクーラ117は、排気マニホールド64から吸気マニホールド75に還流するEGRガスを冷却するためのものであり、実施形態では、シリンダブロック59の前側面のうち排気マニホールド64の下方側に配置されている。再循環排気ガス管の入口側は、EGRクーラ117を介して排気マニホールド64の下面側に連結されている。
【0050】
図4〜図6に示すように、吸気スロットル116の吸気取入れ側は、吸気管70を介してエアクリーナ71の吸気排出側に接続されている。エアクリーナ71の吸気取入れ側は、吸気ダクト73を介してプリクリーナ72に接続されている。図5及び図6に示すように、エアクリーナ71は冷却ファン77の上方に片寄らせて配置されている。このため、実施形態のようにDPF65をシリンダヘッド60の上方のうちフライホイール84寄りに片寄らせて配置する際に、エアクリーナ71の存在が邪魔にならない。
【0051】
プリクリーナ72からエアクリーナ71に吸い込まれた新気(外部空気)は、エアクリーナ71にて除塵・浄化されたのち、吸気スロットル部材116を介してコレクタ115内に供給される。一方、排気マニホールド64からEGRバルブ部材119を介してコレクタ115内にEGRガスが供給される。エアクリーナ71からの新気と排気マニホールド64からのEGRガスとがコレクタ115内で混合されたのち、吸気マニホールド75に供給され、ディーゼルエンジン20の各気筒に送られる。
【0052】
すなわち、ディーゼルエンジン20から排気マニホールド64に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド75からディーゼルエンジン20に還流することによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が低下し、ディーゼルエンジン20からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減されることになる。
【0053】
(4).まとめ
上記の記載並びに図4〜図6から明らかなように、本願発明に係るコンバインは、脱穀装置5及びグレンタンク7が横並び状に搭載された走行機体1と、グレンタンク7前側にある操縦部10の下方に、エンジン出力軸83を走行機体1の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジン20とを備えるものであり、エンジン20からの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置65を備えており、排気ガス浄化装置65は平面視でエンジン出力軸83と交差する方向に長い形態になっており、排気ガス浄化装置65の排気ガス取入れ側がエンジン20の排気マニホールド64に連結されており、排気ガス浄化装置65の排気ガス排出側が脱穀装置5とグレンタンク7との間に向けられている。
【0054】
このため、エンジン搭載スペース(エンジンルーム79)の前後幅寸法より長尺の排気ガス浄化装置65であっても、脱穀装置5及びグレンタンク7に干渉しないように、排気ガス浄化装置65をエンジン20に近接させて配置できることになる。また、排気ガス浄化装置65の排気ガス排出側が脱穀装置5とグレンタンク7との間に向いているので、脱穀装置5とグレンタンク7との間のデッドスペースを活用してマフラー68及びテールパイプ69等の排気系統を配置するにおいて、排気ガス浄化装置65に排気系統を短い距離で接続できる。従って、エンジン5の排気効率の向上も図れることになる。
【0055】
上記の記載並びに図4〜図6から明らかなように、エンジン20のうち走行機体1の左右外側にある側部に、エンジン5空冷用の冷却ファン77が設けられており、平面視で排気ガス浄化装置65の排気ガス排出側と冷却ファン77との間に、エンジン20における吸気マニホールド75の吸気入口部75aが位置しているから、平面視で吸気マニホールド75の吸気入口部75aと排気ガス浄化装置65とが重なることはない。すなわち、エンジン20の吸気系統の配管構造に対して、排気ガス浄化装置65の搭載姿勢が邪魔にならない。従って、エンジン20の上方空間を利用して、吸気系統の配管をコンパクトに配置したり取り回したりすることが可能になり、組付け作業性やメンテナンス性の向上を図れる。
【0056】
上記の記載並びに図4〜図6から明らかなように、冷却ファン77の上方には、吸気マニホールド75に供給される外気をろ過するためのエアクリーナ71が配置されているから、エアクリーナ71が吸気マニホールド75の吸気入口部75aの近傍に位置することになる。このため、吸気マニホールド75の吸気入口部75aにエアクリーナ71を短い距離で接続できる。また、排気ガス浄化装置65はエンジン20における冷却ファン77の反対側に片寄らせて配置されることになるから、エアクリーナ71の存在が邪魔にならず、排気ガス浄化装置65とエアクリーナ71とをエンジン20の近傍にコンパクトに配置できるのである。
【0057】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 走行機体
5 脱穀装置
7 グレンタンク
10 操縦部
20 ディーゼルエンジン
65 排気ガス浄化装置としてのDPF
64 排気マニホールド
71 エアクリーナ
75 吸気マニホールド
75a 吸気入口部
77 冷却ファン
83 エンジン出力軸
84 フライホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置及びグレンタンクが横並び状に搭載された走行機体と、前記グレンタンク前側にある操縦部の下方に、エンジン出力軸を前記走行機体の左右方向に向けた状態で搭載されたエンジンとを備えているコンバインであって、
前記エンジンからの排気ガスを浄化処理する排気ガス浄化装置を備えており、前記排気ガス浄化装置は平面視で前記エンジン出力軸と交差する方向に長い形態になっており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス取入れ側が前記エンジンの排気マニホールドに連結されており、前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側が前記脱穀装置と前記グレンタンクとの間に向けられている、
コンバイン。
【請求項2】
前記エンジンのうち前記走行機体の左右外側にある側部に、エンジン空冷用の冷却ファンが設けられており、平面視で前記排気ガス浄化装置の排気ガス排出側と前記冷却ファンとの間に、前記エンジンにおける吸気マニホールドの吸気入口部が位置している、
請求項1に記載したコンバイン。
【請求項3】
前記冷却ファンの上方には、前記吸気マニホールドに供給される外気をろ過するためのエアクリーナが配置されている、
請求項2に記載したコンバイン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−209813(P2010−209813A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57409(P2009−57409)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】