説明

コンバイン

【課題】コンバインにおいて、排藁搬送機構62を簡単な操作で搬送姿勢と詰り解除姿勢とに姿勢変更できるようにする。
【解決手段】本願発明のコンバインは、脱穀後の排藁を搬送する排藁搬送機構62と、前記排藁搬送機構62に対峙して前記排藁を挟持するための排藁挟持体603と、前記排藁を切断する排藁カッタ63と、前記排藁カッタ63に向かう排藁搬送通路648を開閉する排藁切換板650とを備える。前記排藁搬送機構62は、前記排藁挟持体603に対峙する搬送姿勢と、前記排藁挟持体603から離れる詰り解除姿勢とに姿勢変更可能に構成する。前記排藁搬送機構62には、前記排藁搬送機構62を姿勢変更操作する切換操作具626を、前記排藁搬送機構62の後方側から操作し得るように設ける。前記排藁切換板650は、側面視において、前記排藁搬送通路648を開放した状態で前記切換操作具626に向けて延びる形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈り取られた穀稈を脱穀して、脱穀物から精粒を選別・収集するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、脱穀後の排藁を搬送する排藁搬送機構と、排藁搬送機構に対峙して排藁を挟持するための排藁挟持体と、排藁を切断する排藁カッタと、排藁カッタに向かう排藁搬送通路を開閉する排藁切換板とを備えている。排藁搬送機構は、フィードチェン側に突出した切換操作レバーの上下回動操作によって、排藁挟持体に対峙する搬送姿勢と、排藁挟持体から離れる詰り解除姿勢とに姿勢変更回動し得るように構成されている(例えば特許文献1等参照)。特許文献1の構成では、切換操作レバーの上向き回動操作によって、排藁搬送機構が排藁挟持体から離れる方向に回動する。この状態で、排藁搬送機構と排藁挟持体との間で詰まった排藁を引き抜いて取り除くのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−236305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の構成では、切換操作レバーを操作するに際しては、当該操作の支障とならないように、排藁搬送機構の上方を覆う排藁上カバーや脱穀装置の上方を覆う脱穀上カバーを予め開放しておかなければならず、操作が煩雑になるという点において改良の余地があった。また、切換操作レバーがフィードチェン側に突出して存在しているため、収穫作業中に排藁詰りが生じた場合、オペレータは圃場の未刈穀稈を踏み倒さないようにしてコンバインのフィードチェン側に移動し、切換操作レバーを操作しなければならず、面倒であるという課題もあった。
【0005】
そこで、本願発明は、上記のような現状を改善したコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、脱穀後の排藁を搬送する排藁搬送機構と、前記排藁搬送機構に対峙して前記排藁を挟持するための排藁挟持体と、前記排藁を切断する排藁カッタと、前記排藁カッタに向かう排藁搬送通路を開閉する排藁切換板とを備えており、前記排藁搬送機構は、前記排藁挟持体に対峙する搬送姿勢と、前記排藁挟持体から離れる詰り解除姿勢とに姿勢変更可能に構成されているコンバインであって、前記排藁搬送機構には、前記排藁搬送機構を姿勢変更操作する切換操作具が、前記排藁搬送機構の後方側から操作し得るように設けられており、前記排藁切換板は、側面視において、前記排藁搬送通路を開放した状態で前記切換操作具に向けて延びる形状に形成されているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したコンバインにおいて、前記切換操作具は、前後方向に向けて移動操作可能なトリガー体と、前記トリガー体の後方側に位置して前記トリガー体と共に手で握られるグリップ体とを備えているというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載したコンバインにおいて、前記排藁切換板は、前後中途部を境目にして、前記排藁カッタから遠い側に頂部が形成されるように側面視略く字状に屈曲しており、前記排藁切換板の先端側は、前記排藁搬送通路を開放した状態で前記切換操作具と対峙しているというものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、脱穀後の排藁を搬送する排藁搬送機構と、前記排藁搬送機構に対峙して前記排藁を挟持するための排藁挟持体と、前記排藁を切断する排藁カッタと、前記排藁カッタに向かう排藁搬送通路を開閉する排藁切換板とを備えており、前記排藁搬送機構は、前記排藁挟持体に対峙する搬送姿勢と、前記排藁挟持体から離れる詰り解除姿勢とに姿勢変更可能に構成されているコンバインであって、前記排藁搬送機構には、前記排藁搬送機構を姿勢変更操作する切換操作具が、前記排藁搬送機構の後方側から操作し得るように設けられており、前記排藁切換板は、側面視において、前記排藁搬送通路を開放した状態で前記切換操作具に向けて延びる形状に形成されているから、前記排藁搬送機構の詰り解除をするに際して、例えば前記排藁搬送機構の上方を覆う排藁上カバー体等を予め開放したりしなくても、前記切換操作具を前記排藁搬送機構の後方側から操作でき、詰り解除操作の手数を少なくできる。収穫作業中に排藁詰りが生じた場合でも、コンバインの例えばフィードチェン側に移動する必要がなく、圃場の未刈穀稈を踏み倒すおそれがない。また、詰り解除操作をするに際して、前記排藁切換板に手を載せた状態で前記切換操作具に手を伸ばせることになる。すなわち、前記排藁切換板が前記切換操作具の位置を指示するかのように開放姿勢となるため、前記排藁切換板に手を載せて前記切換操作具を手軽に操作でき、前記切換操作具の操作性向上に寄与する。前記切換操作具を操作するに当たって、不用意に前記排藁搬送機構に触れたりするおそれも少なくなる。
【0010】
請求項2の発明によると、請求項1に記載したコンバインにおいて、前記切換操作具は、前後方向に向けて移動操作可能なトリガー体と、前記トリガー体の後方側に位置して前記トリガー体と共に手で握られるグリップ体とを備えているから、前記排藁チェンの詰り解除をするに際して、前記切換操作具(前記トリガー体及び前記グリップ体)とを握って、前記トリガー体をオペレータの手前に引くという極めて自然な動作をするだけで、前記排藁搬送機構を詰り解除姿勢に姿勢変更できる。従って、多くの人が簡単且つスムーズに詰り解除操作を行え、ユーザーフレンドリーな切換操作具を提供できるのである。
【0011】
請求項3の発明によると、請求項2に記載したコンバインにおいて、前記排藁切換板は、前後中途部を境目にして、前記排藁カッタから遠い側に頂部が形成されるように側面視略く字状に屈曲しており、前記排藁切換板の先端側は、前記排藁搬送通路を開放した状態で前記切換操作具と対峙しているから、前記切換操作具を操作するに際して、前記排藁切換板の先端側に手を置き易い。この点でも操作性後向上の一助になるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】4条刈り用のコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの動力伝達系統図である。
【図4】排藁チェンの取付け構造を示す平面図である。
【図5】排藁チェンと切換板との位置関係を示す側面図である。
【図6】排藁チェンの背面図である。
【図7】後方斜め右上側から見た排藁チェンの斜視図である。
【図8】切換操作具の側面説明図である。
【図9】コンバインの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
(1).コンバインの全体構造
まず、主に図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。図1及び図2に示す如く、実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取る4条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。なお、脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置され、グレンタンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている(図2参照)。
【0015】
グレンタンク7の後方から上方にかけてグレンタンク7内の穀粒を機体外部に排出する排出オーガ8が配設されている。排出オーガ8の縦オーガ8aを中心として、グレンタンク8の前部を機体側方へ回動できるように構成されている。グレンタンク7の前方で走行機体1の右側前部には、運転部10が設けられている。運転部10には、オペレータが搭乗するステップ10a、運転座席10b、操向ハンドル10cや各種の操作レバーやスイッチ等を備えた操作装置を配置している。走行機体1における運転座席10bの下方の箇所には、動力源としてのエンジン20が配置されている。エンジン20の前方で且つ両走行クローラ2の間には、エンジン20からの動力を適宜変速して両走行クローラ2に伝達するためのミッションケース19が配置されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とが設けられている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持している。
【0017】
図1及び図2に示す如く、刈取装置3には、圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置31と、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置32と、穀稈引起装置31からフィードチェン6の前端部(送り始端側)に刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置33とを備えている。エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈り取る。この場合、穀稈引起装置31によって圃場の未刈り穀稈が引き起こされ、刈刃装置32によって未刈り穀稈の株元が切断され、穀稈引起装置31によってフィードチェン6の前端部に刈取り穀稈が搬送される。なお、穀稈引起装置31の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する4条分の分草体38aが突設されている。
【0018】
脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴51と、扱胴51の下方に落下する脱穀物を選別する揺動選別盤52と、揺動選別盤52に選別風を供給する唐箕ファン53と、揺動選別盤52の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン61とを備えている。扱胴51の下方には、扱胴51と揺動選別盤52とを区画する受け網60が張設されている。刈取装置3から穀稈搬送装置33によって搬送された穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室(図示省略)内に搬入されて扱胴51にて脱穀される。なお、扱胴51を回転させる扱胴回転軸158(図3参照)は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。
【0019】
図1及び図2に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁搬送機構としての排藁チェン62が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン62に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ63にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0020】
揺動選別盤52の下方側には、揺動選別盤52にて選別された穀粒(一番物)を取り出す一番コンベヤ55と、穀粒、藁屑及び枝梗付き穀粒等が混在した二番物を取り出す二番コンベヤ56とが設けられている。なお、走行機体1の前進方向前側から一番コンベヤ55、二番コンベヤ56の順で、側面視において走行機体1の上面側のうち走行クローラ2の後部上方に横設されている。
【0021】
揺動選別盤52は、扱胴51の下方に落下した脱穀物を、揺動選別(比重選別)するように構成している。揺動選別盤52から落下した穀粒(一番物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン53からの選別風によって除去され、一番コンベヤ55に落下する。一番コンベヤ55のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの右側壁から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒57が連通接続されている。一番コンベヤ55から取り出された穀粒は、揚穀筒57内の揚穀コンベヤ159(図3参照)にてグレンタンク7に搬入され、グレンタンク7の内部に収集される。
【0022】
揺動選別盤52は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ56に落下させるように構成されている。二番コンベヤ56によって取り出された二番物は、還元筒58内の還元コンベヤ160(図3参照)及び再処理装置59を介して、揺動選別盤52の上面側に戻されて再選別される。また、扱胴51からの脱穀物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン53からの選別風と排塵ファン61の吸排塵作用とにより、走行機体1の後部から圃場に向けて排出される。前述した揺動選別盤52、唐箕ファン53、一番コンベヤ55、二番コンベヤ56並びに排塵ファン61等によって、穀物選別機構65(図1参照)が構成されている。
【0023】
(2).コンバインの動力伝達系
次に、図3を参照して、コンバインの動力伝達系を説明する。エンジン20からの動力の一方は、走行クローラ2(刈取装置3も含む)と脱穀装置5との2方向に分岐して伝達される。エンジン20からの他の動力は排出オーガ8に向けて伝達される。エンジン20から走行クローラ2への分岐動力は一旦、プーリ・ベルト伝動系を介して、ミッションケース19に伝達される。この場合、エンジン20からの分岐動力は、ミッションケース19等にて適宜変速され、ミッションケース19から左右外向きに突出した駆動出力軸151を介して左右の駆動スプロケット22に出力される。ミッションケース19には、駆動出力軸151とは別に刈取PTO軸152が突設されている。ミッションケース19から刈取PTO軸152に伝達された変速動力は、刈取クラッチ153の入り作動にて、横長の刈取回動支点軸4a(図1参照)内にある刈取入力軸154を介して、刈取装置3の各装置31〜33に伝達される。この場合、刈取装置3の各装置31〜33は、走行機体1の走行速度(車速)と同調した速度で駆動することになる。
【0024】
エンジン20からの動力のうち脱穀装置5に向かう分岐動力は、脱穀クラッチ155を介して、唐箕ファン53を回転駆動させるための唐箕ファン軸156に伝達される。唐箕ファン軸156に伝達された動力の一部は、プーリ・ベルト伝動系を介して、扱胴入力軸157に伝達され、扱胴入力軸157から、扱胴回転軸158と排藁チェン62とに伝達される。
【0025】
また、唐箕ファン軸156からは、プーリ・ベルト伝動系を介して、一番コンベヤ55と揚穀コンベヤ159、二番コンベヤ56と還元コンベヤ160と再処理胴161、揺動選別盤52の揺動軸162、排塵ファン61の排塵軸163、並びに排藁カッタ63にも動力伝達される。排塵軸163を経由した分岐動力は、フィードチェン軸164を介してフィードチェン6に伝達される。なお、扱胴入力軸157からの動力は、刈取装置3に一定回転力を伝達する流し込みクラッチ165を介して刈取入力軸154に伝達可能である。すなわち、ミッションケース19を経由せずに、エンジン20からの動力を刈取装置3に直接伝達することによって、車速の速い遅いに拘らず、一定の高速回転数にて刈取装置3を強制駆動させることが可能になっている。
【0026】
エンジン20から排出オーガ8に向かう動力は、グレン入力ギヤ機構166及び動力継断用のオーガクラッチ167を介して、グレンタンク7内の底コンベヤ168及び排出オーガ8における縦オーガ8a内の縦コンベヤ169に伝達され、次いで、受継スクリュー170を介して、排出オーガ8における横オーガ内の排出コンベヤ171に動力伝達される。
【0027】
図4及び図5を用いて、穀物選別機構65の動力伝達系をより詳しく説明する。唐箕ファン軸156に設けられた唐箕プーリ241と、一番コンベヤ55の回転軸である一番軸242に設けられた二連の一番プーリ243の一方とには、伝動上流ベルト244が巻き掛けられている。伝動上流ベルト244には、これを緊張させる第1テンションプーリ245を外側から押圧当接させている。
【0028】
一番プーリ243の他方には伝動下流ベルト246が巻き掛けられている。伝動下流ベルト246は、二番コンベヤ56の回転軸である二番軸247に設けられた二番プーリ248と、二番軸247の上方にある中継軸249に固着された二連の中継プーリ250の一方と、排塵軸163の近傍にある排塵駆動軸251に設けられた二連の排塵駆動プーリ252の一方とに掛け回されている。伝動下流ベルト246のうち一番プーリ243と二番プーリ248との間には、これを緊張させる第2テンションプーリ253を外側から押圧当接させている。二連の中継プーリ250の他方と、揺動軸162に設けられた揺動プーリ254とに、揺動ベルト255が巻き掛けられている。排塵駆動プーリ252の他方と、排藁カッタ63の回転軸であるカッタ入力軸256に設けられたカッタ入力プーリ257とに、カッタ入力ベルト258が巻き掛けられている。
【0029】
排塵駆動軸251は、排塵ギヤ機構259を介して排塵軸163とカウンタ軸260とに動力伝達可能に連結されている。排塵駆動軸251に伝達された回転動力は、排塵ギヤ機構259を経由して排塵軸163とカウンタ軸260とに伝達され、カウンタ軸260からフィードチェン軸164を介してフィードチェン6に伝達される。
【0030】
(3).排藁チェン及びその周辺の詳細構造
次に、図4〜図9を参照しながら、排藁チェン62及びその周辺の詳細構造を説明する。図4及び図5に示すように、脱穀装置5における四番樋の上方に、平面視コ字状の四番上面パイプ601が設けられている。四番上面パイプ601のうち後ろ向きに延びる左右両パイプ部の後端側に、左右横長の横桟パイプ602が設けられている。四番上面パイプ601及び横桟パイプ602には、排藁搬送機構としての排藁チェン62が、フィードチェン6の後端側(送り終端側)から走行機体1後部の左右中央側に向けて延び、且つ、排藁を搬送する搬送姿勢と詰り解除姿勢とに姿勢変更し得るように吊り下げ支持されている。排藁チェン62の下方側には、排藁チェン62に対峙して排藁を挟持するための排藁挟持体603が配置されている。なお、排藁チェン62の上方は排藁上カバー体600にて覆われている。
【0031】
実施形態では、四番上面パイプ601における左パイプ部の中途部位と、横桟パイプ602の長手中途部とに、枢支ブラケット604がそれぞれ吊り下げて設けられている。排藁チェン62の本体には、各枢支ブラケット604に対応するアームブラケット605が同じ向きに突出するように設けられている。各パイプ601,602側の枢支ブラケット604に、搬送チェン62側のアームブラケット605が、排藁チェン62の搬送方向と平行状に延びる枢支ピン606にて回動可能に枢支されている。一対の枢支ピン606は、排藁チェン62の搬送方向と平行な同心状に位置している。両枢支ピン606の軸心Aは、排藁チェン62の搬送方向と平行に、平面視で左前方から右後方に向けて傾斜状に延びている。従って、排藁チェン62は、両枢支ピン606の軸心Aを中心として、下向き回動にて排藁挟持体603に対峙する搬送姿勢と、上向き回動にて排藁挟持体603から離れる詰り解除姿勢とに姿勢変更回動可能になっている。なお、排藁挟持体603は、排藁挟持バネ607によって排藁チェン62の下面側に向けて常時付勢されている。排藁チェン62の下面側と排藁挟持体603との間に、フィードチェン6から排藁を受け継いで挟持搬送することになる。
【0032】
排藁チェン62の前端側(送り始端側)に排藁駆動ケース608が配置されている。排藁チェン62の後端側(送り終端側)には伝動ケース609が配置されている。伝動ケース609には、排藁チェン62に略平行に並んで排藁の穂先側を搬送する排藁補助タイン610が設けられている。伝動ケース609は、排藁チェン62の送り終端側に設けられたチェンテンションローラ62aより前方に配置されている。排藁チェン62から、チェンテンションローラ62aより前方の伝動ケース609を経由して、排藁補助タイン610に駆動力を伝達するように構成されている。排藁チェン62と排藁挟持体603とによって、フィードチェン6から受け継いだ排藁の株元側を挟持搬送しつつ、排藁補助タイン610によって排藁の穂先側が搬送される。なお、排藁チェン62における本体の中途部に、連結フレーム体619の一端側が取り付けられている。そして、連結フレーム体619の他端側に、排藁補助タイン610における本体の中途部が取り付けられている。従って、排藁チェン62と排藁補助タイン610とは、伝動ケース609及び連結フレーム体619によって互いに平行に並んだ状態で一体回動するように連結されている。
【0033】
図4〜図7に示すように、扱胴51を内蔵した扱室のうち後部側にある出口側板611から後方に、扱胴回転軸158の後端側を突出させている。扱胴回転軸158の後端側には、扱胴出力プーリ612が固着されている。また、排藁駆動ケース608に軸支された前向き突出状の排藁駆動軸613に排藁駆動プーリ614が固着されている。扱胴出力プーリ612と排藁駆動プーリ614との間に、テンションローラ615を介して排藁駆動ベルト616が巻き掛けられている。扱胴51の回転駆動に連動して、排藁駆動ベルト616を介して排藁チェン62が駆動することになる。なお、テンションローラ615は、出口側板611の後面側に回動可能に軸支されたテンションアーム617の一端側に軸支されている。テンションアーム617の他端側は、テンションバネ618を介して脱穀装置5の固定部に連結されている。テンションバネ618の付勢力によって排藁駆動ベルト616に緊張力が付与されている。
【0034】
なお、排藁駆動プーリ614が平面視で両枢支ピン606の軸心Aよりも前方に位置するため、排藁チェン62が詰り解除姿勢になるように回動した場合は、排藁駆動プーリ614が排藁駆動ベルト616の緊張力を緩める下向きに動くことになる。従って、排藁チェン62を詰り解除姿勢にする際に、排藁駆動ベルト616が引っ張られて回動の邪魔をしたり、排藁駆動ベルト616がねじれて外れたりするおそれは極めて少ない。
【0035】
図4〜図8に示すように、排藁チェン62における本体の後面中央部に、平面視L型の固定プレート板621が設けられている。固定プレート板621の左右水平板部には、排藁チェン62を排藁挟持体603から離す方向に付勢する詰り解除バネ622の一端側が連結されている。詰り解除バネ622の他端側は横桟パイプ602の長手中途部に引っ掛けられている。排藁チェン62は、詰り解除バネ622によって、排藁挟持体603から離れる方向、すなわち両枢支ピン606の軸心A回りに上向き回動する方向に常時付勢されている。
【0036】
固定プレート板621における前後水平部の下面側には、下向き開口状に切り欠かれた係合凹部623が形成されている。係合凹部623は、上から下に行くに連れて末広がり状の形態になっている。固定プレート板621における前後水平部の近傍には、横桟パイプ602から下向きに突出するブラケット片624が位置している。当該ブラケット片624には、左右横向きのロックピン625が固定されている。ロックピン625は、固定プレート板621の係合凹部623に相対的に係脱可能に構成されている。ブラケット片624のロックピン625に、固定プレート板621の係合凹部623を上方から係合(当接)させた状態で、排藁チェン62が排藁挟持体603に対峙する搬送姿勢をとることになる。
【0037】
図4〜図8に示すように、排藁チェン62の本体のうちアームブラケット605と反対側には、排藁チェン62を姿勢変更操作する切換操作具626が、排藁チェン62の後方側から操作し得るように設けられている。切換操作具626は、前後方向に向けて移動操作可能なトリガー体627と、トリガー体627の後方側に位置してトリガー体627と共に手で握られるグリップ体628とを備えている。
【0038】
トリガー体627は、固定プレート板621の左右水平部と平行状に延びる把持アーム部627aと、固定プレート板621の左右水平部を前後スライド可能に貫通する連動アーム部627bとにより、平面視略L字状の形態になっている。連動アーム部627bにおいて固定プレート板621の左右水平部より後方側に、トリガー体627の前進操作を規制する鍔片629が固定されている。連動アーム部627bにおいて固定プレート板621の左右水平部より前方側に、戻しバネ630が被嵌されている。戻しバネ630より前方側には、戻しバネ630の外れ止め用である座板片631が固定されている。トリガー体627は、戻しバネ630の弾性復原力によって常時前進方向に付勢されている。連動アーム部627bの最前端側には、ロックピン625に係脱可能な側面視略コ字状の係止フック部632が設けられている。
【0039】
ブラケット片624のロックピン625に、固定プレート板621の係合凹部623を上方から係合(当接)させた状態で、戻しバネ630の弾性付勢力にてロックピン625にトリガー体627の係止フック部632を係合させることにより、排藁チェン62が排藁挟持体603に対峙する搬送姿勢を維持する(搬送姿勢にロックされる)ことになる。
【0040】
また、図8に示すように、係止フック部632の前半部下端面632aは前高後低の傾斜面に形成されている。排藁チェン62を搬送姿勢に姿勢変更するように下向き回動させた場合は、前向き付勢されている係止フック部632の前半部下端面632aがロックピン625の外周面を滑りながら、戻しバネ630の弾性復原力に抗して、係止フック部632ひいてはトリガー体627が後退動する。そして、係止フック部632の前向き凹部がロックピン625と対峙した時点で、戻しバネ630の弾性復元力によって係止フック部632が前進動してロックピン625に係合し、排藁チェン62が搬送姿勢にロックされる。すなわち、排藁チェン62を搬送姿勢に姿勢変更する際は、トリガー体627を操作しなくてもよく、排藁チェン62を下向き回動させるだけで済むのである。
【0041】
一方、グリップ体628は、トリガー体627における把持アーム部627aの後方側で、当該把持アーム部627aと平行状に延びる把手部628aと、固定プレート板621の前後水平部に固定される支持部628bとにより、平面視略L字状の形態になっている。トリガー体627の把持アーム部627aとグリップ体628の把手部628aとは平行状に並んでいて、把持アーム部627aと把手部628aとを一緒に握ることが可能になっている。
【0042】
上記の構成において、収穫作業中又は収穫作業後、排藁チェン62と排藁挟持体603との間に排藁が詰ったり挟まったりした場合、オペレータが切換操作具626を握り操作すれば、両枢支ピン606の軸線を中心にして排藁チェン62が上向き回動し、排藁挟持体603に対して排藁チェン62が上方に持ち上げられて離れることになる。その結果、排藁チェン62と排藁挟持体603との間に詰ったり挟まったりしている排藁を除去できるのである。
【0043】
さて、図5及び図9に示すように、脱穀装置5の後部で且つ排藁チェン62の後半部下方には、上下開口略箱型の排藁ケース640が設けられている。排藁ケース640内には、排藁を切断するための排藁カッタ63が配置されている。排藁カッタ63は、前カッタ軸641及びカッタ入力軸256と、円盤状のディスク刃643,644とを備えている。前カッタ軸641上には複数の低速ディスク刃643が等間隔に並べて設けられており、カッタ入力軸256上には複数の高速ディスク刃644が等間隔に並べて設けられている。前カッタ軸641及びカッタ入力軸256は排藁ケース640の左右両側板に回転可能に軸支されている。前カッタ軸641及びカッタ入力軸256は、低速ディスク刃643と高速ディスク刃644とを交互に並べて側面視で外周部を重ねた状態で左右方向に平行状に延びている。排藁チェン62によって、排藁ケース640の上面側に形成された排藁入口646から内部に搬送された排藁は、各ディスク刃643,644にて適宜長さに短く切断されたのち、排藁ケース640の下面側に形成された排藁出口647から機外に排出される。排藁チェン62の下方から、排藁入口646を介して排藁ケース640内部に通ずる通路が、排藁カッタ63に向かう排藁搬送通路648を構成している。
【0044】
カッタ入力軸256のうち排藁ケース640の左側板から外向きに突出した先端部にカッタ入力プーリ257が固着されている(図3参照)。カッタ入力プーリ257と二連の排塵駆動プーリ252の他方とに、カッタ入力ベルト258が巻き掛けられている。排塵駆動軸251に伝達された回転動力が、カッタ入力ベルト258を介してカッタ入力軸256に伝達される。詳細は図示していないが、これら両平歯車213,214の噛み合いにより、カッタ入力軸256の回転動力は、スプロケット及びチェン伝動系を介して前カッタ軸641に伝達される。
【0045】
排藁ケース640の排藁入口646側には、排藁搬送通路648を開閉する排藁切換板650が設けられている。排藁切換板650は、その後端部を排藁ケース640の左右側板に回動支軸651にて枢着することによって、排藁ケース640に対して上下開閉回動可能に連結されている。詳細は図示していないが、排藁切換板650の回動支軸651は、ワイヤやリンクといった連結機構を介して、運転部10の後方に配置された切換板操作レバーに連動連結されている。
【0046】
この場合、切換板操作レバーを開放方向に操作して、連結機構を介して排藁切換板650を上向き回動させることにより、排藁搬送通路648(排藁入口646)が開放され、排藁チェン62から排藁ケース640内に排藁が搬送される。また、切換板操作レバーを閉止方向に操作して、連結機構を介して排藁切換板650を下向き回動させることにより、排藁搬送通路648(排藁入口646)が閉止され、排藁チェン62から排藁をそのまま圃場に向けて放出したり、排藁チェンの後方に配置される結束機に送り込んだりすることになる。
【0047】
図5に示すように、排藁切換板650は、側面視において、排藁搬送通路648を開放した状態で切換操作具626に向けて延びる形状に形成されている。すなわち、排藁切換板650は、前後中途部を境目にして、排藁カッタ63から遠い側に頂部650a(境目)が形成されるように側面視略く字状に屈曲している。そして、排藁切換板650の先端側は、排藁搬送通路648を開放した状態で切換操作具626と対峙している。なお、排藁切換板650の先端右寄りの部位は、排藁搬送通路648を開放した状態で排藁チェン62と干渉しないように切り欠かれている。従って、排藁搬送通路648を開放した状態で切換操作具626と対峙するのは、排藁切換板650の先端左寄りの部位になる。
【0048】
上記のように構成すると、排藁チェン62の詰り解除をするに際して、排藁チェン62の上方を覆う排藁上カバー体600を予め開放したりしなくても、切換操作具626を排藁チェン62の後方側から操作でき、詰り解除操作の手数を少なくできる。収穫作業中に排藁詰りが生じた場合でも、コンバインのフィードチェン6側に移動する必要がなく、圃場の未刈穀稈を踏み倒すおそれがない。また、詰り解除操作をするに際して、排藁切換板650に手を載せた状態で切換操作具626に手を伸ばせることになる。すなわち、排藁切換板650が切換操作具626の位置を指示するかのように開放姿勢となるため、排藁切換板650に手を載せて切換操作具626を手軽に操作でき、切換操作具626の操作性向上に寄与する。切換操作具626を操作するに当たって、不用意に排藁チェン62に触れたりするおそれも少なくなる。
【0049】
更に、切換操作具626は、前後方向に向けて移動操作可能なトリガー体627と、トリガー体627の後方側に位置してトリガー体627と共に手で握られるグリップ体628とを備えているから、排藁チェン62の詰り解除をするに際して、切換操作具626(トリガー体627及びグリップ体628)とを握って、トリガー体627をオペレータの手前に引くという極めて自然な動作をするだけで、排藁チェン62を詰り解除姿勢に姿勢変更できる。従って、多くの人が簡単且つスムーズに詰り解除操作を行え、ユーザーフレンドリーな切換操作具を提供できるのである。
【0050】
排藁切換板650は、前後中途部を境目にして、排藁カッタ63から遠い側に頂部650aが形成されるように側面視略く字状に屈曲しており、排藁切換板650の先端側は、排藁搬送通路648を開放した状態で切換操作具626と対峙しているから、切換操作具626を操作する際に、排藁切換板650の先端側に手を置き易い。この点でも操作性後向上の一助になるのである。
【0051】
なお、本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 走行機体
5 脱穀装置
62 排藁チェン
63 排藁カッタ
603 排藁挟持体
626 切換操作具
627 トリガー体
628 グリップ体
640 排藁ケース
646 排藁入口
648 排藁搬送通路
650 排藁切換板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀後の排藁を搬送する排藁搬送機構と、前記排藁搬送機構に対峙して前記排藁を挟持するための排藁挟持体と、前記排藁を切断する排藁カッタと、前記排藁カッタに向かう排藁搬送通路を開閉する排藁切換板とを備えており、前記排藁搬送機構は、前記排藁挟持体に対峙する搬送姿勢と、前記排藁挟持体から離れる詰り解除姿勢とに姿勢変更可能に構成されているコンバインであって、
前記排藁搬送機構には、前記排藁搬送機構を姿勢変更操作する切換操作具が、前記排藁搬送機構の後方側から操作し得るように設けられており、前記排藁切換板は、側面視において、前記排藁搬送通路を開放した状態で前記切換操作具に向けて延びる形状に形成されている、
コンバイン。
【請求項2】
前記切換操作具は、前後方向に向けて移動操作可能なトリガー体と、前記トリガー体の後方側に位置して前記トリガー体と共に手で握られるグリップ体とを備えている、
請求項1に記載したコンバイン。
【請求項3】
前記排藁切換板は、前後中途部を境目にして、前記排藁カッタから遠い側に頂部が形成されるように側面視略く字状に屈曲しており、前記排藁切換板の先端側は、前記排藁搬送通路を開放した状態で前記切換操作具と対峙している、
請求項2に記載したコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−85597(P2012−85597A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236466(P2010−236466)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】