説明

サスペンションシステム

【課題】車両の走行状態に拘らず、最適な乗り心地及び走行安定性を実現することが可能なサスペンションシステムを提供する。
【解決手段】サスペンションシステム100は、上側シリンダ室10Uと、下側シリンダ室10Lと、当該下側シリンダ室10Lの開口部の開口面積を調整する可変バルブ11と、を有し、車両1が有する一対の車輪2に組み込まれた一方の減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uと他方の減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lとを連通する第1連通路21と、一方の減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lと他方の減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uとを連通する第2連通路22と、第1連通路21と第2連通路22との夫々に設けられ、減衰力制御シリンダ10A、10Bの動作に応じてオイルを貯留及び排出する一対のオイル受部23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗り心地及び操縦安定性を改善するサスペンションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には乗り心地及び操縦安定性を改善するためにサスペンションが装備されている。サスペンションは、車重を支えると共に衝撃を吸収するスプリング、及び当該スプリングの振動を減衰するショックアブソーバを有して構成され、路面からの衝撃を緩衝する。このようなサスペンションに関する技術として下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の車両用ロール減衰力制御装置は、減衰力発生機構と、前後ロール減衰力制御手段とを備えて構成される。減衰力発生機構は前輪と車体との間、及び後輪と車体との間に設置され、車体のロール角速度に比例した減衰力を発生させる。具体的には、前輪側及び後輪側の夫々において、左輪側油圧シリンダの上側シリンダ室が油圧配管を介して右輪側油圧シリンダの下側シリンダ室に接続され、左輪側油圧シリンダの下側シリンダ室が他の油圧配管を介して右輪側油圧シリンダの上側シリンダ室に接続される。これにより、各シリンダがクロス配管される。また、夫々の油圧配管には、可変絞り弁が設けられる。前後ロール減衰力制御手段は車速が速くなるにつれて前後輪の減衰力を高めると共に、操舵角速度が速くなるにつれて後輪に対する前輪の減衰力の比を大きくなるように減衰力発生機構を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−46815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用ロール減衰力制御装置は、スプリング以外にロール剛性を付加する装置は備えられていない。このため、例えばランプウェイ等のように長時間に亘って旋回するような状況では、車両のロール量が大きくなってしまい、旋回性能が悪化することを避けることができない。また、同相バウンスの入力時は乗り心地を確保できるが、各輪入力によるスプリング下のばたつきは、ショックアブソーバの初期設定された減衰力に応じたものとなる。このため、常に最適な接地性や乗り心地を確保することはできない。
【0006】
また、油圧配管に設けられる可変絞り弁により、旋回時における前後輪のロール方向減衰力の制御は可能である。しかしながら、比較的大きな単輪入力により車体をロール方向へ動かす入力があった場合には、そのままボディが揺られ、乗り心地及び走行安定性の悪化は避けられない。
【0007】
また、車速センサや操舵角センサを用いて前後の減衰力バルブを制御して前後のロール減衰の絶対値や比率を変更し、アンダーステア及びオーバステアを改善している。しかしながら、ニュートラルステアの旋回状態を確保することはできない。
【0008】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車両の走行状態に拘らず、最適な乗り心地及び走行安定性を実現することが可能なサスペンションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るサスペンションシステムの特徴構成は、
伸長時に容積が大きくなると共に縮短時に容積が小さくなる上側シリンダ室と、伸長時に容積が小さくなると共に縮短時に容積が大きくなる下側シリンダ室と、前記下側シリンダ室から流出するオイルの流量を車両の物理量を検出する検出部の検出結果に基づいて調整する可変バルブと、を有し、前記車両が有する複数の車輪のうち、一対の車輪に組み込まれた減衰力制御シリンダと、
一方の減衰力制御シリンダの上側シリンダ室と他方の減衰力制御シリンダの下側シリンダ室とを連通する第1連通路と、
前記一方の減衰力制御シリンダの下側シリンダ室と前記他方の減衰力制御シリンダの上側シリンダ室とを連通する第2連通路と、
前記第1連通路と前記第2連通路との夫々に設けられ、前記減衰力制御シリンダの動作に応じて前記第1連通路及び前記第2連通路のオイルを貯留及び排出する一対のオイル受部と、
を備えている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、サスペンションの伸長方向の減衰力を最適化することができるので、路面との接地性を高めることが可能となる。このため、一対の減衰力制御シリンダが組み付けられた一対の車輪の間において、減衰力を制御してボディの動きを抑制することができる。したがって、車両の走行状態に拘らず、最適な乗り心地及び走行安定性を実現することが可能となる。
【0011】
また、前記車両のボディの鉛直方向の加速度を検出する加速度検出部が備えられ、前記可変バルブは、前記加速度検出部の検出結果に基づいて前記オイルの流量を調整すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、車両の走行状態に応じてサスペンションの減衰力を調整することができるので、乗り心地を向上することが可能となる。したがって、最適な走行安定性を実現することが可能となる。
【0013】
また、前記オイル受部は、アキュムレータであると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、第1連通路や第2連通路のオイルの流量を適切に維持することが可能となる。
【0015】
また、前記アキュムレータに流入するオイルの流量を制限する可変バルブが備えられていると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、アキュムレータが第1連通路及び第2連通路のオイルを適切に貯留及び排出することが可能となる。
【0017】
また、前記一対の車輪が、前記車両の幅方向で対向して設けられる左側車輪及び右側車輪であると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、車両の左右で異なる荷重を適切に減衰させることができる。したがって、最適な乗り心地及び走行安定性を実現することが可能となる。
【0019】
或いは、前記一対の車輪が、前記車両の前後方向に設けられる前側車輪及び後側車輪であっても良い。
【0020】
このような構成とすれば、車両の前後で異なる荷重を適切に減衰させることができる。したがって、最適な乗り心地及び走行安定性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両を模式的に示した図である。
【図2】アキュムレータによるロール剛性の付加について示した図である。
【図3】第1の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両のFr単輪が段差をあがった場合の例を示した図である。
【図4】第1の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両が左旋回した場合の例を示した図である。
【図5】第1の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両に対して単輪入力があった場合の制御を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両が旋回している時の制御を示すフローチャートである。
【図7】テスト走行パターンを模式的に示した図である。
【図8】サスペンションシステムの有無による走行特性の違いを示した図である。
【図9】第2の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両を模式的に示した図である。
【図10】第3の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両を模式的に示した図である。
【図11】第3の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両のブレーキング時の例を示した図である。
【図12】第3の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両の発進・加速時の例を示した図である。
【図13】第3の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両が右旋回した場合の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係るサスペンションシステム100は、車両に搭載され、車両の乗員に対して最適な乗り心地及び走行安定性を実現する機能を備えている。
【0023】
〔第1の実施形態〕
本サスペンションシステム100の第1の実施形態について説明する。図1には車両1に搭載された本実施形態に係るサスペンションシステム100が模式的に示される。サスペンションシステム100は、減衰力制御シリンダ10、第1連通路21、第2連通路22、オイル受部23を備えて構成される。
【0024】
減衰力制御シリンダ10は、車両1が有する複数の車輪2のうち、一対の車輪2に組み込まれる。複数の車輪2とは、車両1の左側前輪2A、右側前輪2B、左側後輪2C及び右側後輪2Dである。一対の車輪2とは、車両1の幅方向で対向して設けられる左側車輪及び右側車輪である。本実施形態では、減衰力制御シリンダ10は一対からなり、左側後輪2C及び右側後輪2Dに組み込まれている。本実施形態では、以下の説明において特に区別を要する場合には、左側後輪2Cに組み込まれる減衰力制御シリンダ10は符号10Aを付して示し、右側後輪2Dに組み込まれる減衰力制御シリンダ10は符号10Bを付して示す。
【0025】
減衰力制御シリンダ10は、上側シリンダ室10Uと下側シリンダ室10Lと可変バルブ11とを有し、伸縮式のシリンダダンパーで構成される。上側シリンダ室10Uは、シリンダダンパーの伸長時に容積が大きくなると共に、シリンダダンパーの縮短時に容積が小さくなるように構成される。下側シリンダ室10Lは、伸長時に容積が小さくなると共に縮短時に容積が大きくなるように構成される。
【0026】
可変バルブ11は、下側シリンダ室10Lから流出するオイルの流量を車両の物理量を検出する検出部の検出結果に基づいて調整する。上述のように、減衰力制御シリンダ10は一対からなる。したがって、可変バルブ11も一対の可変バルブ11A、11Bからなる。一対の可変バルブ11A、11Bは、下側シリンダ室10Lから流出するオイルの流量を独立して調整可能に構成される。つまり、可変バルブ11Aと可変バルブ11Bとは、夫々異なるオイルの流量となるように調整することが可能である。
【0027】
各下側シリンダ室10Lには、開口部(図示せず)が設けられ、この開口部に可変バルブ11が連通して設けられる。可変バルブ11は、電気制御により開口面積が変更可能に構成される。具体的には、図示しない制御部からの信号により開口面積が変更される。これにより、可変バルブ11は、各下側シリンダ室10Lから流出するオイルの流量を制限することが可能となる。なお、可変バルブ11は流入方向にもオイルを流通可能である。
【0028】
また、可変バルブ11と並列にチェックバルブ12が設けられる。上述のように、可変バルブ11は、一対の可変バルブ11A、11Bからなる。このため、チェックバルブ12も、可変バルブ11Aに並列に設けられるチェックバルブ12A、及び可変バルブ11Bに並列に設けられるチェックバルブ12Bからなる。チェックバルブ12は、下側シリンダ室10Lからはオイルが流出しないようにし、下側シリンダ室10Lにはオイルがスムーズに流入するように動作する。
【0029】
各上側シリンダ室10Uには、開口部(図示せず)が設けられ、この開口部にオイルの流出時(縮短時)に減衰力を発生する減衰力バルブ14(14A,14B)と、流入時(伸長時)にスムーズにオイルを流入させるチェックバルブ13(13A,13B)が連通して設けられる。チェックバルブ13Aは、バネの付勢力に抗して開弁し、減衰力バルブ14Aとは、互いに異なる方向にのみオイルが流通するよう構成されている。同様に、チェックバルブ13Bは、バネの付勢力に抗して開弁し、減衰力バルブ14Bとは、互いに異なる方向にのみオイルが流通するよう構成されている。したがって、各上側シリンダ室10Uからオイルが流出する経路と、各上側シリンダ室に10Uにオイルが流入する経路とが異なる。
【0030】
第1連通路21は、一方の減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uと他方の減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lとを連通する。すなわち、減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uはチェックバルブ13A、及び減衰力バルブ14Aを介して第1連通路21に連通し、減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lは可変バルブ11B、及びチェックバルブ12Bを介して第1連通路21に連通する。
【0031】
第2連通路22は、一方の減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lと他方の減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uとを連通する。すなわち、減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lは可変バルブ11A、及びチェックバルブ12Aを介して第2連通路22に連通し、減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uはチェックバルブ13B、及び減衰力バルブ14Bを介して第2連通路22に連通する。
【0032】
オイル受部23は、第1連通路21と第2連通路22との夫々に設けられ、減衰力制御シリンダ10の動作に応じて第1連通路21及び第2連通路22のオイルを貯留及び排出する。したがって、オイル受部23は、第1連通路21に連通するオイル受部23Aと、第2連通路22に連通するオイル受部23Bとの一対からなる。本実施形態では、オイル受部23は、アキュムレータから構成される。アキュムレータにて、車両のロール剛性を付与することができる。アキュムレータの容器の中には気体が充填されており、アキュムレータの容器内のオイルの体積変化により、気体の体積が変化することで気体のバネとして作用する。すなわち、アキュムレータにオイルが流入すると、気体が圧縮され、気体のバネ力による反発力がオイルに付加され、車両のロール剛性(スタビライザ機能)を付与することが可能となる。以下の説明では、オイル受部23(23A、23B)をアキュムレータ23(23A、23B)として説明する。
【0033】
本サスペンションシステム100には、アキュムレータ23に流入するオイルの流量を制限する可変バルブ24を備えている。上述のように、アキュムレータ23は一対のアキュムレータ23A、23Bからなる。したがって、可変バルブ24も、一対の可変バルブ24A、24Bからなる。可変バルブ24は、可変バルブ11と同様に、電気制御により開口面積が変更可能に構成される。具体的には、図示しない制御部からの信号により開口面積が変更される。これにより、可変バルブ24は、アキュムレータ23に流入するオイルの流量を制限することが可能になる。なお、可変バルブ24は流出方向にもオイルを流通可能である。
【0034】
また、可変バルブ24と並列にチェックバルブ25が設けられる。上述のように、可変バルブ24は、一対の可変バルブ24A、24Bからなる。このため、チェックバルブ25も、可変バルブ24Aに並列に設けられるチェックバルブ25A、及び可変バルブ24Bに並列に設けられるチェックバルブ25Bからなる。チェックバルブ25は、アキュムレータ23にはオイルが流入しないようにしつつ、アキュムレータ23からはオイルがスムーズに流出するように動作する。したがって、アキュムレータ23からは、オイルはチェックバルブ25を介して流出する。一方、アキュムレータ23には、オイルは可変バルブ24のみを介して流入する。これにより、第1連通路21及び第2連通路22の夫々の圧力を調整することが可能となる。
【0035】
このようなアキュムレータ23の効果が図2に示される。図2は、縦軸をバネ反力とし、横軸をストローク量としている。図2において、破線はスプリング40のみによる特性を示し、実線はスプリング40とアキュムレータ23との双方による特性を示す。図2に示されるように、アキュムレータ23を用いることにより、車両のロール時にはスタビライザーと同様な効果を得ることができる。
【0036】
なお、図示はしないが、可変バルブ24及びチェックバルブ25に対して並列配置となるオリフィスレベルの連通路が可変バルブ24内に設けられている。当該連通路により、アキュムレータ23と第1連通路21及び第2連通路22の夫々とを常時連通させると共に、低速でのシリンダストローク時に減衰力特性を付与することも可能である。
【0037】
図1に戻り、車両1には、当該車両1のボディの鉛直方向の加速度を検出する加速度検出部30が備えられる。加速度検出部30の検出結果は、図示しない制御部に伝達される。制御部は、加速度検出部30の検出結果に基づいて下側シリンダ室10Lから流出するオイルの流量を調整する。したがって、本実施形態では、上述の「検出部」は「加速度検出部30」に相当する。
【0038】
連通バルブ39は、第1連通路21及び第2連通路22を連通及び非連通にする。この連通バルブ39はメカ式でも電磁式でも構成可能であり、後述する車両1の走行に基づくサスペンション性能には影響を与えるものではない。連通バルブ39は、第1連通路21を含む油圧回路及び第2連通路22を含む油圧回路におけるオイルの内部漏れや、オイルの温度変化等に伴うオイルの体積の増減によって生じる車両1の傾き等に対して、2つの油圧回路間でオイルを微少流量にて漏れさせることにより体積の平衡を保ち、不平衡状態になるのを防止する。
【0039】
一方、車両1の左側前輪2A、及び右側前輪2Bには、夫々ショックアブソーバ49が組み込まれる。このショックアブソーバ49は一対からなり、夫々のショックアブソーバ49の上側シリンダ室49Uと下側シリンダ室49Lとが可変バルブ50及びチェックバルブ51を介して連通する構成からなる。このようなショックアブソーバ49は、周知であるので説明は省略する。なお、車両1の左側前輪2A、及び右側前輪2Bに組み込まれる一対のショックアブソーバ49間には公知のスタビライザー52が備えられる。本実施形態では、このような構成のサスペンションシステム100が車両1に備えられる。
【0040】
次に、本サスペンションシステム100の動作について説明する。例えば図3(a)のように、車両1の左側前輪2Aが段差を走行した際(乗りあがった後)、車体の動く方向は図3(a)の矢印の如き方向となり、車輪と車体との間に相対動きが生じる。左側後輪2Cの減衰力制御シリンダ10Aは、リバウンド方向へ伸長し、右側後輪2Dの減衰力制御シリンダ10Bはバウンド方向へ縮短する。係る場合、オイルは、図3(b)に示されるように、一方の減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lより可変バルブ11Aを介して流出すると共に、他方の減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uからも減衰力バルブ14Bを介して流出し、そのオイルは可変バルブ24Bを介してアキュムレータ23Bへ合わせて流入し、左右の減衰力制御シリンダ10A、10Bに大きな減衰力を発生させる。この際、一方の減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10U、及び他方の減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lへ、アキュムレータ23Aから各ポートのチェックバルブ(チェックバルブ25A、チェックバルブ13A、チェックバルブ12B)を介してスムーズにオイルが流入する。
【0041】
更に、例えば図4(a)のように、車両1が左旋回しながら走行している際には、車両1の左側に上側方向の荷重がかかり、車両1の右側に下側方向の荷重がかかる。係る場合、オイルは、図4(b)に示されるように、一方の減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lより可変バルブ11Aを介して流出すると共に、他方の減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uからも、減衰力バルブ14Bを介して流出する。これらのオイルは、可変バルブ24Bを介してアキュムレータ23Bに流入する。
【0042】
また、一方の減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uにはチェックバルブ13Aを介してオイルがスムーズに流入すると共に、他方の減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lにも、チェックバルブ12Bを介してスムーズに流入する。これらのオイルは、チェックバルブ25Aを介してアキュムレータ23Aから流出したものに相当する。
【0043】
この時、減衰力制御シリンダ10Aには、減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lの可変バルブ11A及びアキュムレータ23Bの可変バルブ24Bにより大きな減衰力が作用する。一方、減衰力制御シリンダ10Bには、減衰力バルブ14B及びアキュムレータ23Bの可変バルブ24Bにより大きな減衰力が作用する。
【0044】
これにより、サスペンションシステム100は、減衰力制御付きサスペンションとして機能する。通常の直進や緩いカーブ等では、車両1に設けられた加速度検出部30によって、路面からのバネ下入力(ばたつき)によるボディの動きを推定し、各輪の伸長方向の減衰力を最適に制御することによって、車輪2のばたつきを抑えて接地性を高め、乗り心地及び走行安定性を確保する。
【0045】
図5には、前輪の単輪入力により車両1にローリング方向成分力が入力された場合に制御部で行われる処理のフローが示される。例えば、前輪の単輪入力により車両1にローリング方向成分力が入力された場合(ステップ#01)、加速度検出部30の検出結果により路面からの入力によるボディ側の動きを推定し(ステップ#02)、後輪側の可変バルブ11の減衰力を制御することによってボディの動きを抑制する(ステップ#03)。これにより、乗り心地を向上させることが可能となる。具体的には、右側前輪2Bにバウンド方向の入力が入った場合、反力によってボディの前方右側に鉛直上方向への荷重が入り、上側方向へ移動すると共に、相対的にはボディ全体がローリング方向へ移動する。そのボディの動きを車両1に搭載された加速度検出部30の検出結果によって推定し、後輪側の可変バルブ11をロール減衰力を高める様に制御し、ボディの動きを抑制する。
【0046】
図6には、車両1の旋回時においてローリング方向成分力が入力された場合に制御部で行われる処理のフローが示される。横加速度がある程度以上発生する旋回時には操舵角センサの検出結果(ステップ#01)、及び車速センサの検出結果(ステップ#02)によってボディの動きを推定し(ステップ#03)、ヨーと横Gとが同期したニュートラルステアとなる様に後輪側の可変バルブ11、及び可変バルブ24の減衰力を制御し(ステップ#04)、ロール剛性配分を変えることによって、アジリティーや旋回時の車両安定性が向上する。また、本構成によれば、スプリング40によるロール剛性に加えアキュムレータ23からの供給圧に基づくロール剛性をロール時だけ付加することが可能で、比較的長い時間旋回を継続する様な場合でも一定以下のロールに抑えることができる。したがって、車両安定性を向上することができる。
【0047】
次に、本サスペンションシステム100を有する車両1が走行して得られたデータを用いてその効果について説明する。車両1の走行パターンが図7に示される。2.25mの間隔を有する一対のパイロンを20m毎に3列並べる。4列目の一対のパイロンは、3列目の走行方向左側のパイロンの左端から2.9mの位置を中心として2.8mの間隔を有し、3列目のパイロンから走行方向に20m離して配置される。5−7列目の一対のパイロンは、1−3列目のパイロンと同心で、2.8mの間隔で、20m毎に配置される。
【0048】
このような走行パターンを車両1が走行した場合のステアリングの舵角とヨーレートとの関係、ステアリングの舵角とロール角との関係、及びステアリングの舵角と横加速度との関係が図8に示される。なお、比較のために、サスペンションシステム100を搭載しない場合の特性が破線で示され、サスペンションシステム100を搭載した場合の特性が実線で示される。図8(a)に示されるように本サスペンションシステム100により、舵角に対するヨーが安定している。また、図8(b)に示されるように本サスペンションシステム100により舵角に対するロール姿勢も安定している。更には、図8(c)に示されるように本サスペンションシステム100により舵角に対する横加速度の立ち上がりが速くなっている。このようにサスペンションシステム100を備えることにより走行安定性、及びアジリティーが向上する。
【0049】
このように本サスペンションシステム100によれば、直進や緩いカーブ等の横加速度が小さい状態での通常走行時には、ボディに配置した加速度検出部30の検出結果によってボディの状態を検知し、減衰力制御シリンダ10の各輪の伸長側の減衰力を制御して乗り心地を向上することができる。また、前輪側の単輪入力により車両1にローリング方向成分力が入力された場合、後輪側の可変バルブ11、及び可変バルブ24は減衰力可変バルブとして機能し、減衰力を制御してボディの動きを抑制する。更に、横加速度を生じるような旋回時には、舵角センサ、車速センサによってヨーと横加速度が同期したニュートラルステアとなるように後輪側の可変バルブ11、及び可変バルブ24の減衰力を制御し、車両1の前後でロール剛性配分を変えることによって常に理想的な車両1の旋回状態を確保することができる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
次に、本サスペンションシステム100の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、後輪側にサスペンションシステム100が備えられ、前輪側にスタビライザー52が備えられているとして説明した。本実施形態では、前輪側にもサスペンションシステム100が備えられている点で上記第1の実施形態と異なる。
【0051】
本実施形態に係るサスペンションシステム100が備えられた車両1を模式的に示した図が図9に示される。図9に示されるように、後輪側のサスペンションシステム100は上記第1の実施形態と同様である。また、前輪側のサスペンションシステム100は、後輪側のサスペンションシステム100と同様である。したがって、動作及び機能は上記第1の実施形態と同様であるので、以下では簡単に説明する。
【0052】
本実施形態のサスペンションシステム100においては、前輪側及び後輪側の減衰力制御シリンダ10は、夫々上側シリンダ室10U及び下側シリンダ室10Lを左右でクロス接続して構成される。このように前輪側及び後輪側の双方にサスペンションシステム100を設けることにより、上記第1の実施形態のサスペンションシステム100に比べ、更に効果を高めることができる。例えば、右側前輪2Bにバウンド方向の入力が入った場合、反力によってボディの前方右側に鉛直上方向への荷重が入り、上方向へ移動すると共に、相対的にボディ全体がローリング方向へ移動する。そのボディの動きを車両1に搭載された加速度検出部30の検出結果によって推定し、前輪側及び後輪側の双方の可変バルブ11、及び可変バルブ24をロール減衰力を高める様に制御し、更にボディの動きを抑制する。
【0053】
横加速度がある程度以上発生する旋回時には操舵角センサの検出結果、及び車速センサの検出結果によってヨーと横Gが同期したニュートラルステアとなる様に前輪側及び後輪側の双方の可変バルブ11、及び可変バルブ24の減衰力を制御し、ロール剛性配分を変えることによってアジリティーや旋回時の車両安定性を向上する。また、本構成によれば、スプリングによるロール剛性に加えアキュムレータ23からの供給圧に基づくロール剛性をロール時だけ付加することが可能で、比較的長い時間旋回を継続する様な場合でも前輪側及び後輪側の双方でロールを抑えることができる。したがって、車両安定性を更に向上できる。
【0054】
〔第3の実施形態〕
次に、本サスペンションシステム100の第3の実施形態について説明する。上記第1及び第2の実施形態では、サスペンションシステム100が車両1の幅方向で対向して設けられる左側車輪及び右側車輪に亘って備えられるとして説明した。本実施形態では、サスペンションシステム100は、車両1の前後方向に設けられる前側車輪及び後側車輪に亘って備えられる点で上記第1及び第2の実施形態と異なる。以下では異なる点を中心に説明する。
【0055】
図10には車両1に搭載された本実施形態に係るサスペンションシステム100が模式的に示される。本実施形態に係るサスペンションシステム100が有する減衰力制御シリンダ10は、車両1が有する複数の車輪2のうち、一対の車輪2に組み込まれる。複数の車輪2とは、車両1の左側前輪2A、右側前輪2B、左側後輪2C及び右側後輪2Dである。一対の車輪2とは、車両1の前後方向に設けられる前側車輪及び後側車輪である。したがって、減衰力制御シリンダ10は一対からなる。本実施形態では、左側前輪2A及び左側後輪2Cで対をなし、右側前輪2B及び右側後輪2Dで対をなして設けられる。
【0056】
以下の説明では、特に区別を要する場合には、左側前輪2A及び右側前輪2Bに組み込まれる減衰力制御シリンダ10は符号10Aを付して示し、左側後輪2C及び右側後輪2Dに組み込まれる減衰力制御シリンダ10は符号10Bを付して示す。車両1の左側に備えられるサスペンションシステム100と、車両1の右側に備えられるサスペンションシステム100とは、動作及び機能は同様であるので、以下では主に車両1の左側に備えられるサスペンションシステム100を用いて説明する。
【0057】
本実施形態に係る第1連通路21は、一方の減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uと他方の減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lとを連通する。すなわち、左側前輪2Aに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uは減衰力バルブ14A、及びチェックバルブ13Aを介して第1連通路21に連通し、左側後輪2Cに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lは可変バルブ11B、及びチェックバルブ12Bを介して第1連通路21に連通する。
【0058】
また、本実施形態に係る第2連通路22は、一方の減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lと他方の減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uとを連通する。すなわち、左側前輪2Aに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lは可変バルブ11A、及びチェックバルブ12Aを介して第2連通路22に連通し、左側後輪2Cに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uは減衰力バルブ14B、及びチェックバルブ13Bを介して第2連通路22に連通する。
【0059】
本実施形態では、このような構成のサスペンションシステム100が車両1の左側部に備えられる。一方、車両1の右側前輪2B及び右側後輪2Dにも上述と同様に構成されたサスペンションシステム100が備えられる。また、本実施形態にかかるサスペンションシステム100では、車両1の前側及び車両1の後側に、幅方向に沿って(車両1の左側部と右側部とに亘って)スタビライザー52が備えられる。
【0060】
次に、本実施形態に係るサスペンションシステム100の動作について説明する。例えば図11(a)のように、車両1がブレーキをかけた際、車体の前方がしずみ込むのに伴い、前輪側の減衰力制御シリンダ10Aは相対的にバウンド方向へストロークする。同時に車体の後方が持ち上がるのに伴い、後輪側の減衰力制御シリンダ10Bは相対的にリバウンド方向へストロークする。係る場合、オイルは、図11(b)に示されるように、一方の減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uから減衰力バルブ14Aを介して流出すると共に、他方の減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lからも、可変バルブ11Bを介して流出する。これらのオイルは、可変バルブ24Aを介してアキュムレータ23Aに流入する。
【0061】
また、一方の減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lへはチェックバルブ12Aを介してオイルがスムーズに流入すると共に、他方の減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uへは、チェックバルブ13Bを介してスムーズに流入する。これらのオイルは、チェックバルブ25Bを介してアキュムレータ23Bから流出したものに相当する。
【0062】
この時、減衰力制御シリンダ10Aには、減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uの減衰力バルブ14A及びアキュムレータ23Aの可変バルブ24Aにより大きな減衰力が作用する。一方、減衰力制御シリンダ10Bには、減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lの可変バルブ11B及びアキュムレータ23Aの可変バルブ24Aにより大きな減衰力が作用する。
【0063】
また、例えば図12(a)のように、車両1が発進・加速時には車両1の前方が持ち上がるのに伴い前輪側の減衰力制御シリンダ10Aは相対的にリバウンド方向へストロークする。同時に車両の後方はしずみ込み、それに伴い後輪側の減衰力制御シリンダ10Bは相対的にバウンド方向へストロークする。係る場合、オイルは、図12(b)に示されるように、一方の減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lより可変バルブ11Aを介して流出すると共に、他方の減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uからも、減衰力バルブ14Bを介して流出する。これらのオイルは、可変バルブ24Bを介してアキュムレータ23Bに流入する。
【0064】
また、一方の減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uにはチェックバルブ13Aを介してオイルがスムーズに流入すると共に、他方の減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lにも、チェックバルブ12Bを介してスムーズに流入する。これらのオイルは、チェックバルブ25Aを介してアキュムレータ23Aから流出したものに相当する。
【0065】
この時、減衰力制御シリンダ10Aには、減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lの可変バルブ11A及びアキュムレータ23Bの可変バルブ24Bにより大きな減衰力が作用する。一方、減衰力制御シリンダ10Bには、減衰力バルブ14B及びアキュムレータ23Bの可変バルブ24Bにより大きな減衰力が作用する。
【0066】
更に、例えば図13(a)のように、車両1が右旋回しながら走行している際には、車両1の右側に上側方向の荷重がかかり、車両1の左側に下側方向の荷重がかかる。係る場合、オイルは、図13(b)に示されるように、左側後輪2Cに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uから、減衰力バルブ14Bを介して流出する。このオイルは、左側前輪2Aに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lにチェックバルブ12Aを介してスムーズに流入すると共に、減衰力制御シリンダ10Aのロッド進入分の少量のオイルが可変バルブ24Bを介してアキュムレータ23Bに流入する。
【0067】
また、オイルは、左側前輪2Aに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uから、減衰力バルブ14Aを介して流出する。このオイルは、左側後輪2Cに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lにチェックバルブ12Bを介してスムーズに流入すると共に、減衰力制御シリンダ10Bのロッド進入分の少量のオイルが可変バルブ24Aを介してアキュムレータ23Aに流入する。
【0068】
この際、減衰力制御シリンダ10Bには、減衰力バルブ14Bにより減衰力が働くが、アキュムレータ23Bの可変バルブ24Bに流入するオイルは、減衰力制御シリンダ10Bのロッド進入分に相当する少量であるため減衰力の作用は小さい。一方、減衰力制御シリンダ10Aには、減衰力バルブ14Aにより減衰力が働くが、アキュムレータ23Aの可変バルブ24Aに流入するオイルは、減衰力制御シリンダ10Bのロッド進入分に相当するが少量であるため減衰力の作用は小さい。
【0069】
一方、オイルは、右側前輪2Bに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Aの下側シリンダ室10Lから、可変バルブ11Aを介して流出する。このオイルは、右側後輪2Dに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Bの上側シリンダ室10Uにチェックバルブ13Bを介してスムーズに流入する。また、アキュムレータ23Bから下側シリンダ室10Lから排出されたロッド容積分に対応するオイルがチェックバルブ25Bを介して上側シリンダ室10Uに流入する。この際、主として下側シリンダ室10Lの可変バルブ11Aにより減衰力制御シリンダ10Aの伸長方向の減衰力が発生する。一方、アキュムレータ23Bから上側シリンダ室10Uに流入するオイルは少量なので可変バルブ24B及びチェックバルブ25Bによるアキュムレータ側の減衰力は小さい。
【0070】
また、オイルは、右側後輪2Dに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Bの下側シリンダ室10Lから、可変バルブ11Bを介して流出する。このオイルは、右側前輪2Bに組み込まれた減衰力制御シリンダ10Aの上側シリンダ室10Uにチェックバルブ13Aを介してスムーズに流入する。また、アキュムレータ23Aから下側シリンダ室10Lから排出されたロッド容積分に対応するオイルが、チェックバルブ25A、及びチェックバルブ13Aを介して上側シリンダ室10Uに流入する。この際、主として下側シリンダ室10Lの可変バルブ11Bにより減衰力制御シリンダ10Bの伸長方向の減衰力が発生する。一方、アキュムレータ23Aから上側シリンダ室10Uに流入するオイルは少量なので可変バルブ24A及びチェックバルブ25Aによるアキュムレータ側の減衰力は小さい。
【0071】
これにより、サスペンションシステム100は、減衰力制御付きサスペンションとして機能する。これにより、サスペンションシステム100は、減衰力制御付きサスペンションとして機能する。車両1に設けられた加速度検出部30によって、路面からのバネ下入力(ばたつき)によるボディの動きを推定し、各輪の伸長方向の減衰力を最適に制御することによって、車輪2のばたつきを抑えて接地性を高め、乗り心地及び走行安定性を確保する。また、車両1にピッチングの力が入力された場合は加速度検出部30により前後方向、及びピッチ速度を検知し、油圧回路中のピッチを減衰する効果を発揮するアキュムレータ23に設けられる可変バルブ24を制御部により制御して、ピッチを減衰する。また、ロール方向の力が入力された場合は、左右の前輪及び後輪に組み付けられた減衰力制御シリンダ10の上側シリンダ室10Uと下側シリンダ室10Lとの間でオイルが移動し、ロールの抑制力が十分でないため、スタビライザー52にてロールを抑制する。したがって、車両安定性を更に向上できる。
【0072】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、車両1のボディの鉛直方向の加速度を検出する加速度検出部30が備えられ、可変バルブ11は、加速度検出部30の検出結果に基づいて開口面積が調整されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。加速度検出部30以外の方法、例えばホイールのストローク量を検出し、当該検出した結果に基づき可変バルブ11の開口面積を調整する構成とすることも可能である。もちろん、他の方法を用いて行うことも当然に可能である。
【0073】
上記実施形態では、減衰力バルブ14がメカ式のバルブとして図示した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。上側シリンダ室10Uにも、下側シリンダ室10Lと同様に電磁式の可変バルブを設けることも当然に可能である。
【0074】
上記実施形態では、アキュムレータ23の流入側の弁が可変バルブ24であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。アキュムレータ23の流入側の弁をメカ式のバルブ(減衰力バルブ)で構成することも当然に可能である。係る場合、第1連通路21及び第2連通路22の夫々が負圧にならないように、当該メカ式のバルブ(減衰力バルブ)及びチェックバルブ25と並列にオリフィスが設けられる。これにより、アキュムレータ23と第1連通路21及び第2連通路22の夫々とを連通させることが可能となる。
【0075】
本発明は、車両の乗り心地及び操縦安定性を改善するサスペンションシステムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
2:車輪
10:減衰力制御シリンダ
10A:一方の減衰力制御シリンダ
10B:他方の減衰力制御シリンダ
10L:下側シリンダ室
10U:上側シリンダ室
11:可変バルブ
21:第1連通路
22:第2連通路
23:アキュムレータ(オイル受部)
24:可変バルブ
30:加速度検出部
100:サスペンションシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸長時に容積が大きくなると共に縮短時に容積が小さくなる上側シリンダ室と、伸長時に容積が小さくなると共に縮短時に容積が大きくなる下側シリンダ室と、前記下側シリンダ室から流出するオイルの流量を車両の物理量を検出する検出部の検出結果に基づいて調整する可変バルブと、を有し、前記車両が有する複数の車輪のうち、一対の車輪に組み込まれた減衰力制御シリンダと、
一方の減衰力制御シリンダの上側シリンダ室と他方の減衰力制御シリンダの下側シリンダ室とを連通する第1連通路と、
前記一方の減衰力制御シリンダの下側シリンダ室と前記他方の減衰力制御シリンダの上側シリンダ室とを連通する第2連通路と、
前記第1連通路と前記第2連通路との夫々に設けられ、前記減衰力制御シリンダの動作に応じて前記第1連通路及び前記第2連通路のオイルを貯留及び排出する一対のオイル受部と、
を備えるサスペンションシステム。
【請求項2】
前記車両のボディの鉛直方向の加速度を検出する加速度検出部が備えられ、
前記可変バルブは、前記加速度検出部の検出結果に基づいて前記オイルの流量を調整する請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項3】
前記オイル受部は、アキュムレータである請求項1又は2に記載のサスペンションシステム。
【請求項4】
前記アキュムレータに流入するオイルの流量を制限する可変バルブが備えられている請求項3に記載のサスペンションシステム。
【請求項5】
前記一対の車輪が、前記車両の幅方向で対向して設けられる左側車輪及び右側車輪である請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。
【請求項6】
前記一対の車輪が、前記車両の前後方向に設けられる前側車輪及び後側車輪である請求項1から4のいずれか一項に記載のサスペンションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−71523(P2013−71523A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210702(P2011−210702)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】