説明

シリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴

【目的】シリコン樹脂を利用した部材を靴の所定部位に追加的に取付けることで、クッション性と同時に部材に付与した各種機能を発揮させて、履き心地の向上や健康増進その他の効果を総合的に実現することができる靴を提案する。
【構成】クッション性と共に耐熱性、耐薬品性、自己潤滑性、耐摩耗性に優れたシリコン樹脂を利用した部材1を靴2の所定部位用に複合的に用いて履き心地の向上を図ったシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン樹脂を利用した部材を靴の所定部位に追加的に取付けることで、クッション性と同時に部材に付与した各種機能を発揮させて、履き心地の向上や健康増進その他の効果を総合的に実現することができる靴を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の靴やサンダルその他の履物類は日常的な歩行動作に不可欠なものとして必須的に使用され、それゆえにファッション性の対象となり種々のデザインが提案され、また履き心地向上等の機能性を改善するための様々な工夫も提案されている。
【0003】
主に歩行時における足への衝撃を和らげる目的で各種のクッション材を用いることは当然に従来から行われているところであり、優れた衝撃吸収性を有するシリコン樹脂素材を靴のインソールなどに採用しようとする提案もなされている。
【0004】
また、近時足裏部の所謂ツボ部分を適切に刺激することで治療効果や健康増進効果があることが注目されるようになり、このような効果を与えるように工夫する提案もそれなりになされてはいる。
【特許文献1】特開2004−105457号公報
【特許文献2】実用新案登録第3094307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような従来技術によるものは、何れもそれなりの効果を上げているものと思われるが、靴その他の履物類において要求される複合的な課題を総合的且つ効果的に解消するものとは言い難いものである。
【0006】
また、靴のクッション材としてシリコン樹脂を利用することを提案するものについても、単にシリコン樹脂の衝撃吸収性に注目するのみでその他の優れた素材特性を活用しようとするものにはなっていない。
【0007】
ツボ部を刺激することで治療効果や健康増進効果を得ようとするものにおいても主に足裏部分におけるツボ部の刺激だけに着目したものであり、歩行動作に付随して適切な刺激を与えることができる他の箇所のツボ部に対する配慮や、ツボ刺激以外の手段による健康増進効果などについては何ら示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記したような従来技術における課題を解消するために実験と検討を重ねて創案されたものであり、靴その他の履物類において要求される多様な課題を、シリコン樹脂を利用した部材を靴の所定部位に複合的に用いることで適切に解消することができることを見出し、これを用いた靴などの履物類を提案するものであって、具体的には以下の如くである。
【0009】
(1) クッション性と共に耐熱性、耐薬品性、自己潤滑性、耐摩耗性に優れたシリコン樹脂を利用した部材を靴の所定部位用に複合的に用いて履き心地の向上を図ったことを特徴とするシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0010】
(2) 靴の所定部位として靴底、踵、中敷、つま先の少なくとも何れかに用いる部材であることを特徴とする前記(1)項に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0011】
(3) シリコン樹脂を利用した部材が脱臭・消臭性、芳香性の何れかを有するものであることを特徴とする前記(1)項または(2)項に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0012】
(4) シリコン樹脂を利用した部材を靴底や踵に用いる場合に、転倒防止用の滑り止めをも取付けたものであることを特徴とする前記(1)項〜(3)項の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0013】
(5) シリコン樹脂を利用した部材を中敷に用いる場合に、土踏まずや足裏のツボを刺激して健康増進を図れるように所定箇所に突部を形成したことを特徴とする前記(1)項〜(4)項の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0014】
(6) シリコン樹脂を利用した部材を中敷に用いる場合に、所定箇所に磁石粒を配置して使用時に足裏部の血流を良くするように配慮したことを特徴とする前記(1)項〜(5)項の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0015】
(7) 靴中のつま先部やかかと部、甲部などにおける衝撃を吸収するクッション材としてシリコン樹脂を利用した部材を任意に着脱できるように構成したことを特徴とする前記(1)項〜(6)項の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0016】
(8) 靴中のつま先部やかかと部、甲部などにおいても使用中に適宜にツボ部を刺激して健康増進を図れるように所定箇所に突部を形成していることを特徴とする前記(7)項に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0017】
(9) 靴の複数の所定箇所に対してシリコン樹脂を利用した部材を適宜に用いることでクッション性と合わせて脱臭・消臭性や芳香性、ツボ刺激による健康増進性、磁石粒による血流性向上などの効果を総合的に達成することを特徴とした前記(1)項〜(8)項の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0018】
(10) 靴の複数の所定箇所に対して用いるシリコン樹脂を利用した部材のそれぞれに脱臭・消臭作用を持たせることで下駄箱等に靴を保管する際に該下駄箱内の脱臭・消臭をも行うようにしたことを特徴とする前記(9)項に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0019】
(11) シリコン樹脂を利用した部材を靴の中敷として利用する際に、足裏部分が当たる中敷表面部を吸湿性に優れながら吸収した水分を表面側に戻さない素材によってコーティングすることを特徴とする前記(5)項に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0020】
(12) シリコン樹脂を利用した部材を靴の所定箇所に適宜に取付けるための接着手段を予め部材に備付けておくことを特徴とする前記(1)項〜(11)項の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【0021】
(13)シリコン樹脂を利用した部材中にICチップを埋め込んでいることを特徴とする請求項1〜請求項12の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【発明の効果】
【0022】
クッション性と共に耐熱性、耐薬品性、自己潤滑性、耐摩耗性に優れたシリコン樹脂を利用した部材を靴の所定部位用に複合的に用いて履き心地の向上を図ったことで、衝撃吸収材としてのシリコン樹脂部材を、そのクッション性以外の優れた物性をも活用するものとして適所に用いて多目的且つ複合的に機能向上を図った靴などの履物類を実現することが可能になる。
【0023】
シリコン樹脂を利用した部材を靴の所定部位として靴底、踵、中敷、つま先の少なくとも何れかに用いる部材とすることで、特にクッション性の要求される靴などの履物類の特定箇所に対して多目的且つ複合的な履き心地向上を実現することが可能となる。
【0024】
シリコン樹脂を利用した部材が脱臭・消臭性、芳香性の何れかを有するものであるようにすることで、日常的に長時間履き続けることで生じる発汗等に基づく不快な悪臭を適切に除去して快適な着用状態を実現することが可能となる。なお、脱臭・消臭機能と芳香機能はどちらか一方でなく、両者を同時に備えるものとしても構わない。
【0025】
シリコン樹脂を利用した部材を靴底や踵に用いる場合に、転倒防止用の滑り止めをも取付けたものとすることで、濡れた平滑面上などにおいては滑りやすくなるおそれのあるシリコン樹脂を靴底や踵に採用する場合であっても滑りによる転倒事故などを適切に阻止してシリコン樹脂の物性上の不利を解消した安全な製品を提供することが可能となる。
【0026】
シリコン樹脂を利用した部材を中敷に用いる場合に、土踏まずや足裏のツボを刺激して健康増進を図れるように所定箇所に突部を形成したことにより、本発明の靴などを実際に履いて歩行動作等することに基づく体重移動を利用して土踏まずその他の足裏のツボ部分を適切に刺激することができ、疲労回復や健康増進などといった効果を期待することができるようになる。足裏部のツボを刺激するためには自身の体重を適切に利用するために中敷部材を活用することが相応しいが、刺激すべきツボ部分の位置に応じて適切に作用するように突部の形成箇所には様々なヴァリエーションを設けておくべきである。
【0027】
シリコン樹脂を利用した部材を中敷に用いる場合に、所定箇所に磁石粒を配置して使用時に足裏部の血流を良くするように配慮したことで、形成した突部によるツボ刺激だけではなく、血行促進作用が認められている磁石粒を適所に用いた複合的な疲労回復・健康増進作用を実現することが可能となる。
【0028】
靴中のつま先部やかかと部、甲部などにおける衝撃を吸収するクッション材としてシリコン樹脂を利用した部材を任意に着脱できるように構成したことにより、これらの部材を適時に交換したりその取付け位置を微調整してより良い履き心地等を実現することがやり易くなる。脱臭・消臭や芳香性などの付加機能を備えた部材の場合にはその機能が低下した場合に簡便に交換作業を行えることが望ましく、着脱が容易な構成とすることは必要である。
【0029】
靴中のつま先部やかかと部、甲部などにおいても使用中に適宜にツボ部を刺激して健康増進を図れるように所定箇所に突部を形成していることで、足のつま先部やかかと部、甲部においてもそこに存在するツボ部を刺激して各種の治療効果や健康増進効果を図ることが可能となる。このような部位は必ずしも歩行中に体重等がかかる部分ではないが、歩行動作等に起因して適度の圧迫力を受ける箇所ではあるので、適切な形状の突出部を設けることでツボ刺激を行うことが可能である。
また、このような部位に対するツボ刺激を行うための部材は必ずしもシリコン樹脂を利用したものである必要はないと考えられるが、シリコン樹脂を利用することで本発明における各種相乗効果が期待できるようになるものである。
【0030】
靴の複数の所定箇所に対してシリコン樹脂を利用した部材を適宜に用いることでクッション性と合わせて脱臭・消臭性や芳香性、ツボ刺激による健康増進性、磁石粒による血流性向上などの効果を総合的に達成することにより、各種の効果を相乗的に達成することができる新規な靴などの履物類を実現することが可能となる。
【0031】
靴の複数の所定箇所に対して用いるシリコン樹脂を利用した部材のそれぞれに脱臭・消臭作用を持たせることで下駄箱等に靴を保管する際に該下駄箱内の脱臭・消臭をも行うようにしたことにより、複数の靴類を保管する下駄箱などにおける不快な悪臭類を効果的に除去することが可能となる。下駄箱の消臭剤なども市販されているが、現実にはそれを設置した周辺のみにしか効果が上がらず下駄箱内全体を消臭することは困難であった。しかし、下駄箱に収容する複数の靴類それぞれがその周囲における悪臭除去を行うようにすれば、下駄箱全体の消臭作用が適切に実現するものである。
【0032】
シリコン樹脂を利用した部材を靴の中敷として利用する際に、足裏部分が当たる中敷表面部を吸湿性に優れながら吸収した水分を表面側に戻さない素材によってコーティングすることにより、靴を履いている際の発汗作用による水蒸気分を適切に足裏に触れないようにして蒸れなどによる不快感を阻止することが可能となる。透過した水蒸気による水分を逆透過せしめない素材も種々に提案されており、これらを適切に利用すれば恒常的に履き心地の良い履物類を実現することができる。
【0033】
シリコン樹脂を利用した部材を靴の所定箇所に適宜に取付けるための接着手段を予め部材に備付けておくことで、各部材を簡便に所定箇所に対して取付けることができるようになる。シリコン樹脂は他部材に対する接着性が必ずしも良くないので、適切な接着手段を予め用意しておくことは都合が良い。
【0034】
シリコン樹脂を利用した部材中にICチップを埋め込んでいることで、これらの部材を取付けた靴の識別管理を容易に行うことが可能となり、製品流通の際のトレーサビリティ管理等をシステム的に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
上記してきたような本発明によるシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴の具体的な実施の形態を添付図面などに基づいて説明する。
すなわち、図1はシリコン樹脂を利用した部材1を多目的且つ複合的に用いて履き心地性の向上や健康増進その他の新機能を付加した本発明による靴2の1例に関する説明図である。
【0036】
つまり、本発明の靴2などの各種履物類においては、シリコン樹脂素材の有する柔軟性に起因するクッション性を生かすことはもちろん、そのなじみ性の良さを利用してフィット感を向上したり、各種有用な機能を有する素材との複合によって新たな効果を付与して総合的に履き心地等の向上を図るものである。
【0037】
また、多目的且つ複合的にシリコン樹脂を利用した部材1を使用することを特徴とするもので、靴2のさまざまな箇所に適宜な形状・サイズとされた部材1を適用して相乗的に効果が達成されるように配慮しているものである。
【0038】
つまり、代表的には靴2の底部3、かかと部4、つま先部5、中敷6、甲部7、指先部8などにおいて、それぞれの箇所の形状やサイズに相応しく加工した部材1を適宜に適用するもので、クッション性とフィット感の向上はもちろん、適宜な形状加工によって足各部のツボ部を刺激して各種治療効果や健康増進効果を計ると共に、複合させた素材によって、脱臭・消臭性や芳香性を実現したり、磁石粒9を利用した血行促進作用や滑り止め機能、着脱容易性などの各種効果を総合的に実現するものである。
【0039】
以下において、本発明の具体的な実施例の幾つかを説明する。
なお、これらの実施例はそれぞれを組合せて実施することで相乗的効果をあげることができるようになるものである。
【実施例1】
【0040】
本発明におけるシリコン樹脂を利用した靴用部材1を靴底部3に用いる場合である。シリコン樹脂本来の持つ柔軟性によって靴2のクッション性を高めることは当然であるが、シリコン樹脂が耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性においても優れた素材であることから、従来品と比較して耐久性において優れた靴底部3を提供することが可能となる。
【0041】
また、シリコン樹脂素材は濡れた平滑床面上などにおいては滑り易くなり、転倒事故などを起こす危険があるので、靴底部3の適宜な箇所において公知の手段によって適当な滑り止め加工10を行っておく必要がある。これにより、シリコン樹脂による優れたクッション性を確保しながら転倒事故の如きを有効に防止することが可能となるものである。
【0042】
この場合において、靴底部分3の全体をシリコン樹脂をいようした部材1により形成することも良いが、特にかかと部4やつま先部5のみに採用するといったような部分的な適用も可能である。そして、靴底部3の全体に用いる場合でも、かかと部4やつま先部5のように部分的に用いる場合でも公知の手法を応用して適宜な接着が容易に行えるように予め接着手段11を靴2に対する接着箇所に施しておくことが望ましい。シリコン樹脂は他素材に対する接着性が必ずしも良くないので、適切な接着手段が前もって準備されている方が便利だからである。
【0043】
さらに、このように靴底部分3に本発明によるシリコン樹脂を利用した部材1を適用する場合でも脱臭・消臭作用や芳香作用を実現するための各種手段を組合せておくことが望ましい。すなわち、靴2の着用者の発汗などに基づく不快な匂いを除く目的からは靴2内での脱臭・消臭作用等が望ましいが、下駄箱などに保管した状態での悪臭除去という観点からは靴底部分3などにおける脱臭・消臭作用なども有効に働くからである。
【0044】
このような脱臭・消臭作用や芳香作用を実現するための手段は公知の脱臭・消臭剤や芳香剤の作用成分をシリコン樹脂内に練り込んだり表面部分にコーティング加工することで可能となる。少なくとも数ヶ月程度の期間であればこのような脱臭・消臭作用や芳香作用が持続することが確認されている。
なお、この脱臭・消臭作用や芳香作用との組合せはシリコン樹脂を利用した靴底部3以外の公知の靴底部材に対しても実現することが可能である。
【実施例2】
【0045】
本発明による靴2などの履物部材の中敷6にシリコン樹脂を利用した部材1を用いることが可能である。この中敷6においてもシリコン樹脂の柔軟性がクッション性向上に役立つものであることは当然である。本発明では、この中敷6に更に別の機能を付加して相乗的効果をあげることを提案する。
【0046】
すなわち、まず、図2に示すように中敷6の所定箇所に適宜なサイズの凸部12を形成して、それにより歩行時等の体重移動を利用した足裏部のツボ刺激を行うものである。周知のように人間の足裏部には所謂ツボが多数存在しており、そこに適切な刺激を加えることで各種の治療効果や健康増進効果が実現されることも広く知られている。例えば、図示のように土踏まずに当たる部分を凸部12としておくことで「青竹踏み」と同様の効果が得られるのである。
【0047】
本発明では、その他の足裏部の各ツボ部に対して適切な刺激を与えることができるように所定箇所に適切な凸部12を形成することを提案するものである。したがって、目的に応じてそれぞれに相応しいツボ部に対する刺激を与えることができるように、凸部12を形成すべき箇所に応じた複数種類の中敷6を用意することが望ましい。
【0048】
また、靴2内で用いる中敷6に採用する場合には発汗作用による不快な悪臭除去の必要性がより高いものとなるので、実施例1で示したような脱臭・消臭機能や芳香機能を更に付加することがより望ましいものとなる。この際、着用者の体温による加温により機能を発揮する芳香剤などを用いることも可能である。
【0049】
また、靴内のムレなどによる不快感を軽減するために、発汗よる水蒸気は透過するが水分は透過しない性質を持った公知の素材を中敷6の表面に取付ける加工を施すことが望ましい。
【0050】
さらに血行不良による凝りが生じている箇所に磁石粒9の磁力を影響させることによって、血行が促進され凝り等の疲労が解消されることも良く知られた事実である。そこで、このような磁石粒9を中敷6の所定箇所に適宜に配置しておくことで、磁力を利用した健康増進作用も同時に実現できることが確認されている。
【0051】
また、この中敷6として本発明のシリコン樹脂を利用した部材1を採用する場合にも使用中のズレなどを防止するために適宜な接着手段による接着を行っておくことが望ましい。但し、中敷6の場合には比較的頻繁な交換作業が予想されるので、接着剤などで接着する場合でも再剥離性に優れ接着カスなども残り難いタイプのものを採用すべきである。
【0052】
また、製品化に際しては接着面を剥離紙で覆って完成品となし、使用に際してこの剥離紙を剥がすことで接着面が使えるようになるといった形式を採ることが使い勝手を良くする上では望ましい。
なお、ここで述べた別機能との組合せも場合によればシリコン樹脂を利用した部材1以外の公知材料による中敷に対して実現することが可能である。
【実施例3】
【0053】
本発明によるシリコン樹脂を利用した部材1は実施例1や実施例2で述べた靴底部3や中敷6以外の箇所に用いる部材1としても実現可能なものである。すなわち、図3に示すように靴2内の所定箇所に対する緩衝用部材としてシリコン樹脂の柔軟なクッション性を活かし、よりフィット感を高めるような用い方が多様に提案できるのである。
【0054】
つまり、例えば、靴2内の甲部分7や靴内における指先部分8、靴内の足首部分13などに用いることが可能で、これらの部位において適切なフィット感が得られないと長時間の歩行などによって靴の着用者にとって多大なストレスとなることが知られている。
【0055】
したがって、このような箇所に適宜なクッション性を備えた緩衝用部材を取付け得るようにすることは靴の履き心地向上のために重要なことである。
【0056】
このような各部に本発明による部材1を応用する場合であっても実施例1や実施例2で述べてきた別機能と組合わせることは、やはり有用なことである。
すなわち、これらの部位は何れも靴内であるので着用者の発汗作用などに基づく不快な匂いの発生などを脱臭・消臭機能や芳香機能によって解消する必要性は同様であり、発汗による水分の逆流を阻止するような表面コーティングについても靴内のムレ防止という観点からは同様であるから、何れも採用することが望ましい付加機能である。
【0057】
また、上記してきたような足先の各部位においても所謂ツボ部分が存在しており、適切な刺激を与えることでさまざまな治療効果や健康増進効果が期待できることは広く知られている事実である。確かに、靴2内における足の甲部分や指先部、足首部には歩行動作に伴う大きな力はかからないが、それでも歩行動作に起因して相当な力が作用することは明らかである。
【0058】
したがって、これら部位に採用する本発明による各部材1の適切な箇所に凸部12を設けてやることで所望のツボ刺激効果を得ることが期待できるのである。もちろん、この場合にも適切な接着手段によって靴内の適切な箇所に各部材1が固定でき、また、任意に着脱して交換可能なものとすることが望ましい。
【0059】
また、このような足先部の各部位においても磁石粒9の磁力線を利用して血流を良好とし疲労回復を図ることの意義は上記実施例の場合と同じであるので、適宜に磁石粒9を各部材1の所定箇所に取付けることも行われるべきことである。凸部12によるツボ刺激効果と併用することで相乗効果的に健康増進などを図ることも期待されるところである。
【0060】
また、特に靴内の足首部13にフィットさせる部材1として用いる場合には、シリコン樹脂の素材特性としての滑り性を十分に発揮せしめて、使用者が靴2を着脱する際に靴べらを使っていると同様に容易に行うことができるという新機能を実現することが可能となる。
【0061】
さらに、上記した足の甲部や指先、足首部分以外でも適宜な形状とサイズによってクッション性を付与して履き心地向上に資するような多様な部材1を本実施例の応用として提案することも可能である。
【0062】
なお、ここで述べた付加的な別機能については適宜にシリコン樹脂以外の素材による緩衝部材において組合わせることも勿論可能であろう。
【実施例4】
【0063】
上記してきた各実施例に示したような本発明の靴2に取付けて用いる各部材1には、少なくともその1つにICチップを組み込むことができる。これは近時注目を集めているICタグと同様の機能を有するもので、タグのように使い捨てにされるものではなく本発明の靴2と一体化して継続的に使用され続けることができるものである。
【0064】
このようなICチップを工場段階で本発明の靴2と一体化しておけば流通段階でのトレーサビリティ管理などが容易に行えるようになるし、既に購入された靴2の部材1を介して一体化するのであっても、自己の靴を他から区別して識別管理するなどが可能となるものであり、高級品の盗難防止などにも資するものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したような本発明によるときは、シリコン樹脂の素材特性であるクッション性を活用した履き心地向上を実現できることは当然として、さらに多様な付加的機能と有機的に組合わせることで総合的に機能向上を図ることができ、各種の治療効果や健康増進といった効果をも期待できる従来にない靴などの履物類を提案できるものであり、近時関心が高まっている高機能シューズという新たなニーズに応える新商品の展開が可能となるものであるから、大きな需要を喚起する可能性のある発明として産業上の利用可能性において優れたものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による靴におけるシリコン樹脂を利用した部材の適用状況の1例を示した説明図である。
【図2】本発明による部材を靴の中敷に持ちいる場合の1例を示した説明図である。
【図3】本発明による部材を足の甲や指先、足首部に対して適用する場合の1例について示した説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 本発明のシリコン樹脂を利用した部材
2 本発明の靴などの履物類
3 靴底部材
4 かかと部材
5 つま先部材
6 靴の中敷部材
7 足の甲部用部材
8 足の指先部用部材
9 磁石粒
10 滑り止め加工
11 接着手段
12 ツボ部刺激用凸部
13 靴内の足首部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション性と共に耐熱性、耐薬品性、自己潤滑性、耐摩耗性に優れたシリコン樹脂を利用した部材を靴の所定部位用に複合的に用いて履き心地の向上を図ったことを特徴とするシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項2】
靴の所定部位として靴底、踵、中敷、つま先の少なくとも何れかに用いる部材であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項3】
シリコン樹脂を利用した部材が脱臭・消臭性、芳香性の何れかを有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項4】
シリコン樹脂を利用した部材を靴底や踵に用いる場合に、転倒防止用の滑り止めをも取付けたものであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項5】
シリコン樹脂を利用した部材を中敷に用いる場合に、土踏まずや足裏のツボを刺激して健康増進を図れるように所定箇所に突部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項6】
シリコン樹脂を利用した部材を中敷に用いる場合に、所定箇所に磁石粒を配置して使用時に足裏部の血流を良くするように配慮したことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項7】
靴中のつま先部やかかと部、甲部などにおける衝撃を吸収するクッション材としてシリコン樹脂を利用した部材を任意に着脱できるように構成したことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項8】
靴中のつま先部やかかと部、甲部などにおいても使用中に適宜にツボ部を刺激して健康増進を図れるように所定箇所に突部を形成していることを特徴とする請求項7に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項9】
靴の複数の所定箇所に対してシリコン樹脂を利用した部材を適宜に用いることでクッション性と合わせて脱臭・消臭性や芳香性、ツボ刺激による健康増進性、磁石粒による血流性向上などの効果を総合的に達成することを特徴とした請求項1〜請求項8の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項10】
靴の複数の所定箇所に対して用いるシリコン樹脂を利用した部材のそれぞれに脱臭・消臭作用を持たせることで下駄箱等に靴を保管する際に該下駄箱内の脱臭・消臭をも行うようにしたことを特徴とする請求項9に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項11】
シリコン樹脂を利用した部材を靴の中敷として利用する際に、足裏部分が当たる中敷表面部を吸湿性に優れながら吸収した水分を表面側に戻さない素材によってコーティングすることを特徴とする請求項5に記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項12】
シリコン樹脂を利用した部材を靴の所定箇所に適宜に取付けるための接着手段を予め部材に備付けておくことを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。
【請求項13】
シリコン樹脂を利用した部材中にICチップを埋め込んでいることを特徴とする請求項1〜請求項12の何れか1つに記載のシリコン樹脂を多目的・複合的に用いた靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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