説明

スイッチング電源装置及びその初期設定方法

【課題】インテリジェント性に優れ、比較的低コストで高速応答性を有し、かつ高精度な過電流保護特性を備えたデジタル制御によるスイッチング電源装置及びその初期設定方法を提供する。
【解決手段】出力電流の制御に関する所定の目標値であって変更可能な値を出力する目標値設定部32a、目標値に基づいて出力電流の制御に関する演算処理を行ない演算結果を出力する演算部32b、及びその演算結果に基づいて出力電流を制御するための電流制御パルス電圧を発生するパルス生成部32cから成る電流制御パルス発生手段32を備える。出力電流又はスイッチング素子TR1に流れる電流を検出する電流検出回路38と、検出された電流が、電流制御パルス発生手段32の出力に基づいて設定された基準値を超えたときに、その電流を制限するための電流制限信号を出力する電流制限信号生成回路36を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルス幅変調信号によりスイッチング動作の制御を行って直流電圧を所望の電圧に変換して、電子機器等に電力供給するスイッチング電源装置に関し、特にデジタル制御により出力電流を制御するスイッチング電源装置及びその制御特性の初期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なスイッチング電源装置は、所定の値を超える出力電流が流れないよう、その供給能力を制限する過電流保護回路が設けられている。これは、出力に接続された負荷である電子機器等が低インピーダンス故障したとき、過大な電流が流れ続けることによってその電子機器等が発熱・焼損するのを防止するとともに、スイッチング電源装置自体の故障や発熱・焼損を防止することを目的としている。
【0003】
一方、スイッチング電源装置の負荷となる各種電子機器においては、モーター、リレー等の電磁駆動系部品を備えた機器や、CPU、DSP、FPGA等のディジタル素子を備えた電子回路であって、同一タイミングで電流が流れる機器など、当該機器の故障ではなくとも、ごく短時間の大電流(以下、ピーク電流)が流れるものがある。このような場合、短時間であれば、小型・小容量のパワー部品で構成したスイッチング電源装置であってもこのようなピーク電流を安全に供給することが可能である。そして、例えば、負荷の正常動作に必要なピーク電流値を超える値であって、出力電流の上限値として許容可能な所定の設定値(以下、過電流設定値)が設定され、コンデンサと抵抗等で構成したタイマー回路によってピーク電流の継続時間をモニタし、その時間が所定の設定時間を超えると、過電流設定値を小さな値に変更するという動作を行うピーク過電流保護回路等が実用化されている。
【0004】
上記のような過電流保護回路は、一般的にはディスクリート部品で構成されたアナログ制御のものであることが多い。従って、例えば、過電流設定値等の制御特性に電子機器等の動作状態に合わせて制御特性を調整する機能を持たせるためには、種々の信号処理を行う複雑な回路が必要で、それらを多くのディスクリート部品で構成しなければならず、その回路動作の評価やその他管理の面で煩雑さがあるだけでなく、部品点数の増大によってスイッチング電源装置の小型化や低コスト化を妨げる要因の一つになっている。
【0005】
一方、デジタル制御による過電流保護回路は、複雑な信号処理を演算プログラムに組み込むことによって制御特性を容易に調整又は切替えを行うことが可能で、インテリジェント性に優れている。例えば特許文献1に開示されているように、負荷に供給される出力電流を電圧信号に変換する電流検出抵抗と、この電圧信号をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器という)と、出力電流が過電流設定値を超える過電流状態であるか否かを上記デジタル値を基に判断する演算手段と、過電流状態と判断されたときに、スイッチング素子のパルス幅を強制的に短くする処理を行うパルス幅可変手段とを備えた過電流保護回路が提案されている。なお、上記演算手段及びパルス幅可変手段は、デジタルプロセッサを用いて構成されている。このデジタルプロセッサは、加減算機能、乗除算機能、比較機能、タイマー機能、記憶機能等を含むものであり、メモリやレジスタ等の記憶機能により、外部から設定した各設定値又は目標値を記憶しておくことができるものである。
【0006】
さらに、上記スイッチング電源装置は、過電流設定値として第一の設定値と、第一の設定値よりも低い第二の設定値が与えられており、出力電流は、過電流状態になった当初は第一の設定値に基づいて制限され、所定時間経過後には第二の設定値に基づいて制限される。具体的には、デジタルプロセッサの比較機能によって上記出力電流のデジタル値と第一の設定値及び第二の設定値とを比較演算し、演算の結果、デジタル値が第一の設定値を超えていると判断した時にパルス幅を強制的に狭くし、また、このデジタル値が第一の設定値を超えていないときでも、第二の設定値を超えている状態が所定時間以上継続したと判断した時にパルス幅を強制的に狭くするよう制御するものである。
【特許文献1】特開2001−119933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された過電流保護回路にあっては、現在の実用的なスイッチング電源装置に搭載する場合は、出力電流の急峻な増加に対して高速応答が可能な制御特性を得るために、高速クロックで動作する高価なデジタルプロセッサが必要になるという問題がある。
【0008】
一般的に、スイッチング電源装置の内部のパワー半導体等の故障を回避するためには、過電流保護回路の制御は、スイッチング動作の1周期に対して短時間で応答するものでなければならない。現在の汎用的なスイッチング電源装置は、磁性部品等の小型化等の観点から、スイッチング周波数500kHz以上に設定される場合が多い。例えばスイッチング周波数を500kHzに設定した場合、代表的なアナログ制御用ICの過電流保護回路の応答遅れ時間は130nsecに設定されており、これと同等の応答速度を得るためには、スイッチング動作の1周期である2μsecに対して、130nsec以下で応答可能な制御特性が求められる。
【0009】
ところが、特許文献1に開示された過電流保護回路のデジタル制御の流れにおいては、電流検出抵抗及びA/D変換器を介して得られた出力電流のデジタル値をデジタルプロセッサ内部に取り込む処理に50クロック程度、過電流設定値を超える過電流状態であるか否かを、上記デジタル値を基にした演算処理によって判断し、過電流状態と判断してスイッチング素子を制御して強制的にオフさせる処理に50クロック程度、合わせて100クロック程度の処理工数が必要であると考えられる。上記のように130nsecの期間でこの100クロックの処理を完了させるためには、デジタルプロセッサのクロック周波数は、処理工数100クロックを130nsecで除した値の約769MHzが必要である。また、デジタルプロセッサは、上記の過電流保護の制御以外にもいろいろな演算処理を行うため、実際にはさらに高いクロック周波数が必要となる。すなわち、アナログ制御と同等の高速応答性を備えた過電流保護回路を得るためには、スイッチング電源回路のスイッチング周波数に対して数桁以上大きなクロック周波数を備えた高速信号処理が可能なデジタルプロセッサが必要になる。
【0010】
このように高速で動作する高性能なデジタルプロセッサは非常に高価なものである。従って、デジタル制御を汎用スイッチング電源装置に採用することはコスト的な問題があり、インテリジェント性に優れたデジタル制御のスイッチング電源装置が普及するのを妨げている。
【0011】
また、過電流設定値やピーク過電流保護回路の設定時間等の制御特性は、電源回路を構成する各部品がもつ特性の個体差、温度による部品特性の変動、入力電圧や出力電圧の変動による出力電流の検出精度の変化、などに起因して変動する。
【0012】
過電流設定値(出力電流の制限値)が高めに、又は制限時間が長めに設定されていると、負荷の電子機器等の故障によって過電流状態になったとき、電子機器等が発熱・焼損を防止する保護機能が十分に発揮できず、同時にスイッチング電源にも故障等が発生する危険性が増す。例えばスイッチング電源装置自体の安全性を確保するためには、出力電流の実際の制限値に対して、故障や発熱・焼損を回避するため、定格電流や定格温度に余裕のある大型のパワー部品を用いて電源回路を構成しなければならない。従って、スイッチング電源装置の小型化、低コスト化を妨げる一因になっている。
【0013】
この発明は、上記背景技術に鑑みてなされたもので、インテリジェント性に優れ、比較的低コストの汎用デジタルプロセッサ等を用いながらもアナログ制御と同等レベル以上の高速応答性を有し、かつ高精度な過電流保護特性を得ることが可能なデジタル制御の過電流保護機能を備えたスイッチング電源装置及びその初期設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願請求項1記載の発明は、所定のスイッチング周波数でパルス幅変調された駆動パルスを出力する駆動パルス生成回路と、この駆動パルス生成回路からの駆動パルスによって直流の入力電圧を断続して交流電圧を発生させるMOS−FET等のスイッチング素子を有するインバータ回路と、その交流電圧を整流平滑して出力電圧を生成し、負荷に出力電流を供給する整流平滑回路を備えたスイッチング電源装置であって、前記出力電流の制御に関する所定の目標値であって変更可能な値を出力する目標値設定部、前記目標値に基づいて出力電流の制御に関する演算処理を行ない演算結果を出力する演算部、及びその演算結果に基づいて出力電流を制御するための電流制御パルス電圧を発生するパルス生成部から成る電流制御パルス発生手段を備えるものである。さらに、前記整流平滑回路からの出力電流又は前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路により検出された電流が、前記電流制御パルス発生手段の出力に基づいて設定された基準値を超えたときに、その電流を制限するための電流制限信号を出力する電流制限信号生成回路を備え、前記駆動パルス生成回路は、前記電流制限信号が出力されると前記スイッチング素子を駆動する駆動パルスのオン・デューティが広くなるのを止め若しくは狭くするように動作するスイッチング電源装置である。
【0015】
本願請求項2記載の発明は、前記電流制御パルス発生手段は前記電流制御パルス電圧がパルス幅変調された信号として出力可能に構成されたデジタルプロセッサから成り、前記電流制御パルス電圧を平滑化して平滑化電圧を生成するパルス平滑化回路が接続され、前記電流検出回路は、前記出力電流又は前記スイッチング素子に流れる電流を検出してそれに基づいて電流検出電圧を出力し、前記電流制限信号生成回路は、前記平滑化電圧に基づいて決定される基準電圧と前記電流検出電圧を比較する比較回路を有し、前記電流検出電圧が前記基準電圧を超えたときに前記電流制限信号を出力し、前記駆動パルス生成回路は、前記電流制限信号が出力されると前記スイッチング素子を駆動する駆動パルスのオン・デューティが広くなるのを止め若しくは狭くするように動作するスイッチング電源装置である。
【0016】
本願請求項3記載の発明は、前記電流制限信号生成回路が、一端が前記パルス平滑化回路の出力に接続される第一の抵抗と、その第一の抵抗の他端に一端が接続された第二の抵抗と、コレクタ端子が前記第二の抵抗の他端に接続され、ベース端子が前記第一の抵抗と第二の抵抗の中点に接続され、エミッタ端子が前記電流検出回路出力の一端に接続された第一のNPNトランジスタと、ベース端子が前記第一のNPNトランジスタのコレクタに接続され、エミッタ端子が前記電流検出回路出力の他端に接続され、コレクタ端子が前記電流制限信号生成回路の出力である第二のNPNトランジスタとを備え、前記第一・第二のNPNトランジスタはいずれか一方のエミッタ端子がグランド電位に接続され、前記電流検出回路は、前記整流平滑回路の出力電流が流れたとき、若しくはスイッチング素子に電流が流れたときに、前記第二のNPNトランジスタのエミッタ端子の方が前記第一のNPNトランジスタのエミッタ端子よりも低い電位になる方向に前記電流検出電圧が出力されるものである。
【0017】
本願請求項4記載の発明は、前記電流制限信号生成回路により前記電流制限信号が継続的に発生し又は前記スイッチング周波数毎に繰り返し発生している状態が所定の時間以上継続した場合に、時間超過信号を出力する電流制限動作時間監視手段を備え、前記電流制御パルス発生手段の目標値設定部は、前記電流制限動作時間監視手段の前記時間超過信号に基づいて、前記電流制限信号生成回路の前記電流制限信号によって、前記電流検出回路により検出された電流をさらに制限するように、前記目標値を決定して前記演算部へ出力し、その目標値を基に前記演算部で演算された前記電流制御パルス電圧が前記パルス生成部から出力されるものである。
【0018】
本願請求項5記載の発明は、前記電流制御パルス発生手段の前記演算部が、前記目標値設定部が出力する目標値に基づいて前記電流制御パルス電圧の時比率を算出し、前記パルス生成部は、前記演算部が算出した時比率のハイレベル及びローレベル電圧を有する一定周波数の矩形波を生成するように構成され、前記パルス平滑化回路は、一端が電流制御パルス発生手段の出力に接続される抵抗と、その抵抗の他端とグランドとの間に接続されたコンデンサとを備え、前記コンデンサの両端電圧が前記パルス平滑化回路の出力となるものである。
【0019】
本願請求項6記載の発明は、前記電流制御パルス発生手段の前記演算部が、前記目標値設定部が出力する目標値に基づいて前記電流制御パルス電圧の時比率を算出し、前記パルス生成部は、前記演算部が算出した時比率のハイレベル及びフローティングレベルの出力状態を、一定周期の中で繰り返すよう構成され、前記パルス平滑化回路は、一端が電流制御パルス発生手段の出力に接続される抵抗と、その抵抗の他端とグランドとの間に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに並列接続された放電経路とを備え、前記コンデンサの両端電圧が前記パルス平滑化回路の出力となるものである。また、前記コンデンサに並列に接続された前記放電経路は、前記電流信号生成回路の入力インピーダンスである。
【0020】
本願請求項7記載の発明は、前記パルス平滑化回路が、一端が前記電流制御パルス発生手段の出力に接続された第一の抵抗と、その抵抗の他端とグランドとの間に接続され、両端にパルス平滑化回路の出力電圧が発生するコンデンサと、前記コンデンサに並列接続された放電経路と、前記コンデンサと第一の抵抗との接続点から前記電流制御パルス発生手段の出力に向けて電流を流すことを可能に接続されたダイオードと第二の抵抗との直列回路とを備え、前記電流制御パルス発生手段の前記演算部は、前記動作時間超過信号に基づいて決定された目標値が与えられると、前記パルス生成部の出力状態を所定の時間だけローレベルに制御し、前記パルス平滑化回路の前記コンデンサの電圧を前記ダイオードと第二の抵抗との直列回路を介して放電されるものである。
【0021】
本願請求項8記載の発明は、スイッチング電源装置の出力電圧を所定の目標値と比較し、反転増幅された出力電圧制御信号を出力する誤差増幅回路を有し、前記電流制限信号生成回路は、前記平滑化電圧に基づいて決定される基準電圧と、前記電流検出電圧とを比較し、前記電流検出電圧が前記基準電圧を超えたときとそれ以外の場合で異なる電流制限信号を出力する比較回路を備え、前記駆動パルス生成回路は、前記スイッチング周波数で駆動されたのこぎり波電圧を発生するのこぎり波発生回路と、第一の入力端に前記のこぎり波電圧が入力され、第二の入力端に入力された前記出力電圧制御信号と前記のこぎり波電圧とを比較し、前記のこぎり波電圧の方が低い期間とそれ以外の期間とで異なる信号を出力する比較器と、前記電流制限信号が入力される信号選択回路を備え、前記信号選択回路は、前記電流制限信号生成回路により前記電流制限信号が継続的に発生し又は前記スイッチング周波数毎に繰り返し発生している状態のときは、前記電流制限信号に基づいて決定される時比率の駆動パルスが前記駆動パルス生成回路から出力され、前記電流制限信号が出力されていないときは、前記出力電圧制御信号に基づいて決定される時比率の駆動パルスが前記駆動パルス生成回路から出力されるよう、出力信号を選択する動作を行うものである。
【0022】
本願請求項9記載の発明は、感温素子によってスイッチング電源装置の環境温度を感知し、それに基づいた温度信号を出力する温度検出手段を備え、前記電流制御パルス発生手段の前記目標値設定部は、前記温度信号に基づいて前記目標値を決定し、その決定した目標値を前記演算部に出力するものである。
【0023】
本願請求項10記載の発明は、スイッチング電源装置の入力電圧を検出し、それに基づいた入力電圧信号を出力する入力電圧検出手段を備え、前記電流制御パルス発生手段の前記目標値設定部は、前記入力電圧信号に基づいて前記目標値を決定し、その決定した目標値を前記演算部に与えるものである。
【0024】
本願請求項11記載の発明は、スイッチング電源装置の出力電圧を検出し、それに基づいた出力電圧信号を出力する出力電圧検出手段を備え、前記電流制御パルス発生手段の前記目標値設定部は、前記出力電圧信号に基づいて前記目標値を決定し、その決定した目標値を前記演算部に与えるものである。
【0025】
また本願請求項12記載の発明は、所定のスイッチング周波数でパルス幅変調された駆動パルスを出力する駆動パルス生成回路と、この駆動パルス生成回路からの駆動パルスによって直流の入力電圧を断続して交流電圧を発生させるスイッチング素子を有するインバータ回路と、その交流電圧を整流平滑して出力電圧を生成し、負荷に出力電流を供給する整流平滑回路と、前記出力電流の制御に関する所定の目標値であって変更可能な値を出力する目標値設定部と、前記目標値に基づいて出力電流の制御に関する演算処理を行ない演算結果を出力する演算部と、その演算結果に基づいて出力電流を制御するための電流制御パルス電圧を発生するパルス生成部と、前記整流平滑回路の出力電流又は前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路により検出された電流が基準値を超えたときにその電流を制限するための電流制限信号を出力する電流制限信号生成回路とを備え、前記電流制限信号が出力されると、前記駆動パルス生成回路は、駆動パルスのオン・デューティが広くなるのを止め若しくは狭くするように動作するスイッチング電源装置の初期設定方法であって、前記スイッチング電源装置の入力に所定の直流電圧を供給して起動する電源起動ステップと、出力に負荷を接続し、所望の過電流設定値と等しい出力電流を出力させる負荷設定ステップと、前記電流制御パルス発生手段が備える前記目標値設定部の演算プログラムに設定されている所定の固定係数を調整し、前記演算部に出力される目標値を連続的に変化させる目標値可変ステップと、前記出力電流が前記過電流設定値の状態で前記目標値の変化に対して、前記出力電圧が連続的に変化する状態と、前記出力電圧が一定値に保持される状態との境界点における固定係数境界値を抽出する境界値抽出ステップと、前記固定係数境界値を当該固定係数の設定値として前記演算プログラムに記憶させる境界値記憶ステップとを備えるスイッチング電源装置の初期設定方法である。
【発明の効果】
【0026】
この発明によるスイッチング電源装置によれば、インテリジェント性に優れ高速応答可能なデジタル制御の過電流保護回路を、比較的低速クロックで低コストのデジタルプロセッサで実現することができるものである。特に、外界の温度や入力電圧、出力電圧等の変動に対しても、最適な過電流保護制御を行うことができる。さらに、スイッチング電源装置を構成するディスクリート部品等の特性の個体差やスイッチング電源装置の使用状態に合わせて、自動的に過電流保護特性を調整することができ、負荷の電子機器やスイッチング電源装置自体の安全性を確保することができる。そして、小型で低コストのスイッチング電源装置を提供することができる。
【0027】
また、この発明によるスイッチング電源装置の初期設定方法によれば、スイッチング電源装置を構成するディスクリート部品等の特性の個体差に合わせて、プログラム的に過電流保護特性を調整して最適な状態に設定することができ、抵抗値の調節や部品の取り替え等の工程を削減することができ、簡単な回路構成で負荷の電子機器やスイッチング電源装置自体の過電流保護及び安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態について、図1から図6に基づいて説明する。まず、図1に示す全体回路図に基づいて概要を説明する。スイッチング電源装置10は、直流の入力電源Einが接続され、スイッチング素子TR1のオン・オフ動作によって交流電圧V2を発生するインバータ回路12と、その交流電圧V2を整流平滑して出力電圧Voutを生成する整流平滑回路14を有し、出力電圧Vout端子が、負荷22に接続されている。出力電圧Voutは、出力電圧Voutと所定の基準電圧Vrefとの差分を増幅した出力電圧制御信号V(vol)を出力する反転増幅器から成る誤差増幅回路16に接続されている。さらに誤差増幅回路16から出力された制御電圧V(vol)に応じてパルス幅変調を行い、スイッチング素子TR1の駆動端子に向けて駆動パルスVgを出力する駆動パルス生成回路18を備えている。
【0029】
また、スイッチング電源装置の環境温度を検知して温度信号を出力する温度検出手段24と、入力電圧を検知して入力電圧信号を出力する入力電圧検出手段26と、出力電圧を検知して出力電圧信号を出力する出力電圧検出手段28とが、それぞれ電流制御パルス発生手段32に接続されている。
【0030】
電流制御パルス発生手段32は、デジタルプロセッサ等から成り、上記温度信号、入力電圧信号及び出力電圧信号に基づいて目標値を決定する目標値設定部32aと、その目標値に基づいて演算処理を行なう演算部32bと、その演算結果に基づいて、出力電流を制御するための電流制御パルス電圧Vcを出力するパルス生成部32cとを備えている。パルス生成部32cの出力は、抵抗R1とコンデンサC1で構成した積分回路であるパルス平滑化回路34の入力に接続されている。そして、平滑化電圧Vbが発生するコンデンサC1の両端は、パルス平滑化回路34の出力として、後述する電流制限信号生成回路36に接続されている。
【0031】
また、スイッチング素子TR1のソース端子と入力電源Einのマイナス端子間に電流検出抵抗R0である電流検出回路38が挿入され、電流検出抵抗R0に流れるスイッチング電流Iswに応じた電圧がその両端に発生する。そして電流検出抵抗R0の両端は、電流検出回路38の出力として電流制限信号生成回路36に接続されている。
【0032】
電流制限信号生成回路36は、スイッチング電源装置10の過電流保護回路であり、平滑化電圧Vbに基づいて決定される基準電圧Vrと、その基準電圧Vrと電流検出抵抗R0両端に発生する電圧V(R0)とを比較し、電流制限信号V(cur)を出力する比較回路である比較器CP1とを備えている。比較器CP1の出力は、電流検出回路38の電流検出抵抗R0の電流に対応して検出された電圧が、電流制御パルス発生手段32のパルス生成部32cの出力に基づいて設定された基準値である基準電圧Vrを超えたときに、その電流を制限するための電流制限信号として出力される。その出力は、電流制限信号生成回路36の出力として、駆動パルス生成回路18に接続されている。駆動パルス生成回路18は、入力された電流制限信号V(cur)に基づいてパルス幅変調を行い、スイッチング素子TR1の駆動パルスVgを出力する回路であり、その出力はスイッチングTR1の駆動端子に接続されている。
【0033】
次に、図1から図6に基づいて、スイッチング電源装置10の各回路ブロックごとの構成と動作を詳細に説明する。インバータ回路12は、図1に示すように、入力電源Einと直列にトランスT1の1次側巻線T1aとスイッチング素子TR1が接続され、スイッチング素子TR1のオン・オフ動作によってトランスT1の2次側巻線T1bに交流電圧V2を発生させる。なお、トランスT1の各巻線の極性等は、周知のシングルフォワード方式に構成されている。
【0034】
トランスT1の2次側巻線T1bには、整流平滑回路14が接続されており、スイッチング素子TR1がオンのときに導通してパルス電流を流すフォワード側整流素子TR2と、フォワード側整流素子TR2と相補的にオン・オフするフライホイール側整流素子TR3と、スイッチ素子TR1のオン・オフ動作に同期をとって各整流素子TR2,TR3を駆動する同期整流駆動回路14a、およびチョークコイルLoとコンデンサCoの平滑回路により構成されている。そして、整流平滑回路14は、2次側巻線T1bに誘起された電圧を整流平滑して出力電圧Voutを出力する。コンデンサCoの両端には、負荷22が接続され、出力電圧Vout及び出力電流Ioutが供給されている。
【0035】
誤差増幅回路16は、図1に示すように、反転入力端子に出力電圧アナログ信号が入力されるオペアンプOP1と、その非反転入力に接続される所定の基準電圧Vrefと、利得調整及び位相補償のための帰還素子Zfとを備え、出力電圧制御信号V(vol)を出力する反転増幅回路である。従って、出力電圧制御信号V(vol)は、出力電圧と基準電圧Vrefとの差分が増幅されたものであって、出力電圧が基準電圧Vrefよりも高くなると、連続的に低下し、逆の場合には連続的に上昇する。
【0036】
温度検出手段24は、図2(a)に示すように、抵抗値変化型の感温素子であるサーミスタ24aと、サーミスタ24aの抵抗値をアナログ電圧信号に変換する増幅器24bと、そのアナログ電圧信号をデジタル信号である温度信号に変換して出力するA/D変換回路24cとを備えている。なお、サーミスタ24aは、スイッチング電源装置内部のプリント基板上に実装され、プリント基板上の温度を測定している。
【0037】
入力電圧検出手段26は、図2(b)に示すように、入力電圧Vinを観測し、入力電圧Vinを所定のアナログ電圧に変換する電圧変換回路26aと、そのアナログ電圧をデジタル信号である入力電圧信号に変換して出力するA/D変換回路26bとを備えている。なお、電圧変換回路26aは、入力電圧Vinを抵抗分圧する分圧回路や、トランスT1に設けた第3の巻線に発生する電圧を入力電圧に比例した電圧に変換する回路など、適宜設定したものである。ここでは、後者の例のように、入力電圧Vinを間接的に観測するものでもよい。
【0038】
出力電圧検出手段28は、図2(c)に示すように、出力電圧Voutを観測し、出力電圧Voutを所定のアナログ電圧に変換する電圧変換回路28aと、そのアナログ電圧をデジタル信号である出力電圧信号に変換して出力するA/D変換回路28bとを備えている。なお、電圧変換回路28aは、出力電圧Voutを抵抗分圧する分圧回路や、トランスT1に設けた第3の巻線に発生する電圧を出力電圧に比例した電圧に変換する回路など、適宜設定したものである。ここでは、後者の例のように、出力電圧Voutを間接的に観測するものでもよい。
【0039】
電流制御パルス発生手段32は、例えば汎用のデジタルプロセッサ(マイコン)を用いて構成する。電流制御パルス発生手段32は、図1に示すように目標値設定部32a、演算部32b及びパルス生成部32cを備えている。目標値設定部32aは、上述の温度信号、入力電圧信号及び出力電圧信号に基づいて、演算部32bに向けて目標値Cを出力する。なお、温度信号、入力電圧信号、及び出力電圧信号などが外部からの入力がされないときは、あらかじめ固定的に記憶している温度信号既定値、入力電圧信号既定値、及び出力電圧信号に基づいて目標値Cを決定する。
【0040】
演算部32bは、目標値Cに基づいて演算処理を行いセット値Bを決定し、そのセット値Bと、あらかじめ固定的に設定されているセット値Aとをパルス生成部32cに向けて出力する。
【0041】
パルス生成部32cは、図3に示すように、クロック信号を発生するクロック回路c1と、カウンタc2,c3と、出力波形生成部c4で構成されている。図4のタイムチャートに示すように、カウンタc2,c3の初期値は共にゼロであって、クロック回路c1のクロック信号に同期してカウントアップ動作を行う。カウンタc2は、セット値Aが与えられ、カウント数がセット値Aに達するとカウント数はゼロにリセットされ、再びゼロからカウントアップ動作を開始し、この一連の動作を繰り返す。カウンタc3は、セット値Aよりも少ないセット値Bが与えられ、カウント数がセット値Bに達するとカウント数はゼロにリセットされカウントアップが停止する。そして、カウンタc2がリセットされるとそれに同期して再びゼロからカウントアップ動作を開始し、この一連の動作を繰り返す。出力波形生成部c4は、カウンタc2,c3の動作をモニタし、カウンタc3がカウントアップしているときはハイレベル電圧を、カウンタc3のカウントアップが停止しているときはローレベル電圧を出力して、パルス幅変調された波形を出力する。例えば、クロック回路c1のクロック周波数をFck、セット値A=1000、セット値B=500とすると、出力波形生成部は、周期T=1000/Fck、ハイレベルの時比率0.5の矩形波を出力し、セット値Aとセット値Bによってデジタル的にパルス幅が設定され、これを制御することによってパルス幅変調が行われる。
【0042】
スイッチング電源装置10においては、スイッチング周波数は500kHzとし、電流制御パルス発生手段32は、スイッチング周波数との周波数干渉の防止などの観点から、例えば約10kHzの一定の周波数でパルス幅変調するよう設定する。従って、演算部32bから、約10kHzに相当する一定のセット値Aが設定される。さらに、演算部32bは、温度検出手段24、入力電圧検出手段26、出力電圧検出手段28などからの情報によって変化する目標値Cに基づいてセット値Bを決定してパルス生成部32cに出力し、パルス生成部32cは、セット値Bに基づいてカウンタc3のリセットを行うカウント数を変化させる。このようにして、電流制御パルス発生手段32はパルス幅変調された所定の電流制御パルス電圧Vcを生成し、後段のパルス平滑化回路34に向けて出力する。
【0043】
パルス平滑化回路34は、図1に示すように、電流制御パルス電圧Vcがハイレベルのときには抵抗R1を介してコンデンサC1に電荷を充電し、ローレベルのときには抵抗R1を介してコンデンサC1の電荷を放電する。それによって、コンデンサC1の両端に発生する平滑化電圧Vbはほぼ直流電圧となり、電流制御パルス電圧Vcのハイレベルの時比率(オン・デューティ)が大きくなると上昇し、ハイレベルの時比率が小さくなると低下する。
【0044】
電流検出回路38は、図1に示すように、スイッチング電流Iswが流れる経路に挿入された電流検出抵抗R0である。スイッチング電源装置10において、スイッチング電流Iswは略台形状を繰り返すパルス電流であって、そのピーク値Iswpと出力電流Ioutとの関係は、トランスT1の1次側巻数N1及び2次側巻数N2を用いて表すと、Iswp≒(N2/N1)×Ioutとなる。つまり、電流検出抵抗R0に発生する電流検出電圧V(R0)のピーク値は、出力電流Ioutに略比例した値となる。このように、スイッチング電源装置10では、スイッチング電流Iswを電流検出回路38を介して観測することによって、出力電流Ioutを検出している。なお、出力電流Ioutが流れたとき、電流検出電圧V(R0)は、スイッチング素子TR1のソース端子に接続された側が高電位になる向きに発生する。電流検出回路38の出力は、その高電位になる端子がパルス平均化回路34のグランドに接続されている。
【0045】
電流制限信号生成回路36は、図1に示すように、平滑化電圧Vbに応じて変化する基準電圧Vrと電流検出電圧V(R0)を比較器CP1で比較し、電流検出電圧V(R0)が基準電圧Vrより低いとき、すなわちスイッチング電流Iswが所定の値よりも小さいときは、ハイレベルを出力する。逆に、電流検出電圧V(R0)が基準電圧Vrより高いとき、すなわちスイッチング電流Iswが所定の値よりも大きいときは、ローレベルを出力する。また、平滑化電圧Vbと基準電圧Vrとの関係は、平滑化電圧Vbが上昇すると基準電圧Vrも上昇し、逆に、平滑化電圧Vbが低下すると基準電圧Vrも低下するよう構成されている。
【0046】
駆動パルス生成回路18は、図5に示すように、のこぎり波電圧V(osc)を生成するのこぎり波発生回路18bと、のこぎり波電圧V(osc)が反転端子に入力され、誤差増幅回路16の出力である端子a1から入力された出力電圧制御信号V(vol)が、非反転端子に入力される比較器CP11とを備えている。さらに、比較器CP11の出力信号と、端子a2から入力される電流制御信号V(cur)とが入力されるナンド回路NAND11と、ナンド回路NAND11の出力信号がリセット端子Rに入力され、発信器OS11が発生するトリガ信号がセット端子Sに入力され、出力端子Qが駆動パルス生成回路18の端子a0に接続された周知のセット・リセット・フリップ・フロップFF11(以下、RS−FF11という)とで構成する信号選択回路18aを備えている。そして、RS−FF11の出力端子Qが出力する信号は、スイッチング素子TR1を駆動する駆動パルスVgとなり、端子a0を介してスイッチング素子TR1の駆動端子であるゲートに入力される。
【0047】
のこぎり波発生回路18bは、電圧一定の直流電源Vcc11と、一端が直流電源Vcc11に接続された充電抵抗R11と、その充電抵抗R11のもう一端とグランド間に接続されたタイマーコンデンサC11と、タイマーコンデンサC11の両端に接続されたリセット素子S11と、リセット素子S11を制御する発振器OS11とを備えており、タイマーコンデンサC11の両端に発生する電圧V(osc)が出力される。
【0048】
発振器OS11は、インパルス状のトリガパルスを発生する。このトリガパルスは周期一定の繰り返しパルスであって、スイッチング素子TR1のスイッチング周波数と、スイッチング素子TR1のターンオンのタイミングを決定するものである。また、リセット素子S11は、トリガパルスが入力されるとタイマーコンデンサC11の両端を短絡し、瞬時に開放状態となり、次のトリガパルスが入力されるまではその開放状態を継続する働きをする。
【0049】
このように構成された駆動パルス生成回路18は、以下のように動作する。まず、のこぎり波発生回路18bは、発振器OS11からトリガパルスが入力され、リセット素子S11がタイマーコンデンサC11の両端を短絡し、電荷が放電されてV(osc)≒0となる。さらに、リセット素子S11は瞬時に開放状態となり、充電抵抗R11を介して供給される充電電流によってタイマーコンデンサC11が充電され、V(osc)が上昇する。このとき、充電抵抗R11とタイマーコンデンサC11の直列回路が有する時定数はトリガパルスの周期に比べて十分大きな値に設定されているので、V(osc)は、ほぼ一定の傾きをもって直線的に上昇する。その後、次のトリガパルスが入力されるとリセット素子S11が短絡し、上記の動作を繰り返す。このような動作によって、タイマーコンデンサC11の両端にのこぎり波電圧V(osc)を発生させている。
【0050】
比較器CP11は、出力電圧制御信号V(vol)がのこぎり波電圧V(osc)よりも高い場合にはハイレベルを、逆の場合にはローレベルを出力する。ナンド回路NAND11の一方の入力端子には、端子a2から入力された電流制限信号V(cur)が入力され、他方の入力端子に比較器CP11の出力信号が入力されている。これにより、比較器CP11からの信号がローレベル、又は電流制限信号V(cur)のいずれか一方がローレベルになると、ナンド回路NAND11の出力がハイレベルとなる。RS−FF11は、セット端子Sに入力される発振器OS11のインパルス状のトリガパルスにより、出力端子Qの出力がハイレベルとなり、リセット端子Rにナンド回路NAND11からハイレベル信号が入力されことによって、出力端子Qの出力がローレベルに反転する。RS−FF11の出力端子Qから出力される信号は、スイッチング素子TR1の駆動端子に入力される駆動パルスVgである。すなわち、出力端子Qがハイレベルを出力している期間はスイッチング素子TR1をオンし、ローレベルを出力している期間はスイッチング素子TR1をオフする動作を行う。
【0051】
次に、上記のように構成されたスイッチング電源10の一連の動作を、図6のタイムチャートに基づいて説明する。まず、期間1は、過電流保護回路が動作していない期間である。過電流設定値は、電流制御パルス発生手段32の目標値設定部32aが決定する目標値によって制御される。目標値設定部32aは、温度検出手段24が出力する温度信号と、入力電圧検出手段26が出力する入力電圧信号と、出力電圧検出手段28が出力する出力電圧信号とをパラメータとする演算式が設定されており、その演算式に基づいて目標値が決定される。例えば、回路部品の一つであるバイポーラトランジスタのベース・エミッタ間に発生する電圧VBEの温度依存性が過電流設定値に影響を与える場合、その温度係数(約−2mV/℃)が演算式に盛り込まれる。また、入力電圧Vinの変動がスイッチング電流のピーク値Iswpと出力電流Ioutとの略比例関係に無視できない影響を及ぼす場合、入力電圧Vinに関する係数が演算式に盛り込まれる。また、過電流保護回路が動作すると、後述するように出力電圧が低下する。そのような出力電圧の変動がスイッチング電流のピーク値Iswpと出力電流Ioutとの略比例関係に無視できない影響を及ぼす場合、出力電圧Voutに関する係数が演算式に盛り込まれる。このようにして、スイッチング電源装置10の使用状態や動作状態に基づいて、目標値は適宜変化し、それに基づいて電流制御パルス電圧Vc、平滑化電圧Vb、および基準電圧Vrが変化する。その結果、過電流設定値が自動調整される。
【0052】
期間1においては、出力電流Ioutは過電流設定値以下の小さな値であるため電流制限信号生成回路36が出力する電流制限信号V(cur)はハイレベルを維持し、駆動パルス生成回路18のナンド回路NAND11の一方の入力端子には、継続的にハイレベルの信号が入力している。従って、RS−FF11の出力端子Qに発生する駆動パルスVgは、比較器CP11の出力信号と同一のロジックとなり、図6のタイムチャートに示すように、駆動パルスVgは、もっぱら誤差増幅回路16が出力する出力電圧制御信号V(vol)に基づいてパルス幅制御されることとなる。
【0053】
このように、スイッチング電源10は、出力電圧Voutが誤差増幅回路16内の基準電圧Vrefと等しくなるようスイッチング素子TR1の駆動パルスVgのオン・デューティが制御なされ、出力電圧Voutが一定に保たれる。このとき、出力電圧Voutは式(1)のように決定される。
【数1】

【0054】
ここで、N1:トランスT1の一次側巻数、N2:トランスT1の2次側巻数、T:スイッチング周期、duty:スイッチング素子TR1のオン・デューティである。
【0055】
次の期間2は、例えば負荷の電子機器が低インピーダンスに故障して出力電流Ioutが増加して過電流保護回路が動作し、出力電流Ioutが過電流設定値を超えないようスイッチング電流Iswを基にして制限されている状態である。
【0056】
この状態は、出力電圧Voutが低下し、出力電圧制御信号V(vol)が上昇する。これにより、のこぎり波電圧V(osc)よりも出力電圧制御信号V(vol)が高い期間が長くなり、常時出力電圧制御信号V(vol)がのこぎり波電圧V(osc)よりも高くなる。すると、比較器CP11の出力は常時ローレベルにあり、スイッチング素子TR1が常時オンして、スイッチング電流Iswが常時流れることが可能となる。
【0057】
一方、スイッチング電流Iswの増大により、電流検出回路38の電流検出抵抗R0に発生する電流検出電圧V(R0)が増大し、電流制限信号生成回路36の比較器CP1の出力である電流制限信号V(cur)がローレベルになる。すると、ナンド回路NAND11の入力がローレベルになり、ナンド回路NAND11の出力がローレベルからハイレベルになる。これにより、電流制限信号V(cur)がハイレベルからローレベルに反転するタイミングで、ナンド回路NAND11からリセット端子Rにリセット信号が出力される。そして、RS−FF11の出力端子Qが発生させる駆動パルスVgは、そのリセット信号が入力されたタイミングで、ハイレベルからローレベルに反転し、スイッチング素子TR1をオフさせる。これによって、出力電流Ioutは過電流設定値を超えないよう制限され、また、スイッチング素子TR1のオン・デューティdutyが小さくなるので、(1)式に基づいて出力電圧Voutも低下する。
【0058】
なお、この状態にあっては、RS−FF11は、セット端子Sに次のセット信号が入力されるまで、出力端子Qの状態を保持する性質を有している。従って、出力端子Qがローレベルになってスイッチング素子TR1がオフすると、スイッチング電流Iswが流れなくなり電流制限信号V(cur)がハイレベルに反転するが、次の周期に移るまでの間、出力端子Qの状態(ローレベル)は保持され、スイッチングTR1はオフ状態を維持する。一方、上記のように出力電圧Voutが低下すると、反転増幅器である誤差増幅回路16はハイレベルに飽和し、出力電圧制御信号V(vol)はそのハイレベルの飽和電圧値を維持する。
【0059】
従って、RS−FF11の出力端子Qに発生する駆動パルスVgは、電流制限信号V(cur)がローレベルに反転するタイミングに同期してローレベルに反転し、図6のタイムチャートに示すように、駆動パルスVgは、もっぱら電流制限信号生成回路36が出力する出力電圧制御信号V(cur)に基づいてパルス幅制御されることとなる。
【0060】
このように、スイッチング電源装置10にあっては、電流発生手段32を構成するデジタルプロセッサは、10kHz程度の低い周波数で動作するものであればよく、低速クロックで低コストの汎用デジタルプロセッサを用いてインテリジェント性の優れたスイッチング電源装置を実現することができる。
【0061】
また、スイッチング電源装置10が稼働している使用状態や動作状態(環境温度、入力電圧、出力電圧の状態)をリアルタイムに監視し、それに基づいて過電流設定値を常に所定の値に自動調整することによって、万一負荷の電子機器が異常状態になったときでも焼損事故などを防止し、高い安全性を提供することができる。さらに、電源回路を構成するパワー部品として、定格電流や定格温度に過剰に余裕のある大型部品を選定せずともスイッチング電源装置自体の安全性が確保できるので、スイッチング電源装置の小型化、低コスト化に寄与することができる。
【0062】
次に、この発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態について、図7から図9に基づいて説明する。なお、上記スイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。まず、図7の全体回路図に基づいて概要を説明する。スイッチング電源装置50は、直流の入力電源Einが接続され、スイッチング素子TR1のオン・オフ動作によって交流電圧V2を発生するインバータ回路12と、その交流電圧V2を整流平滑して出力電圧Voutを得る整流平滑回路14を有し、出力電圧Vout端子が、負荷22に接続されている。出力電圧Voutは、出力電圧Voutと所定の基準電圧Vrefとの差分を増幅した出力電圧制御信号V(vol)を出力する反転増幅器の誤差増幅回路16に接続されている。さらに誤差増幅回路16から出力された制御電圧V(vol)に応じてパルス幅変調を行い、スイッチング素子TR1の駆動端子に向けて駆動パルスVgを出力する駆動パルス生成回路18を備えている。
【0063】
また、後述する電流制限動作時間監視手段52から出力された動作時間超過信号に基づいて目標値を決定する目標値設定部32aと、その目標値に基づく演算処理を行なう演算部32bと、その演算結果に基づいて、出力電流を制御するための電流制御パルス電圧Vcを発生するパルス生成部54cとを備えた電流制御パルス発生手段54が設けられている。そして、電流制御パルス発生手段54の出力は、パルス平滑化回路56の入力に接続されている。パルス生成部54cは、電源電圧Vcc41とグランドの間にスイッチ素子S41とスイッチ素子S42が直列に接続され、2つのスイッチ素子の中点がパルス平滑化回路56に接続されている。そして、この2つのスイッチ素子は、演算部32bが出力する信号によってそれぞれ制御される。なお、パルス生成部54cは、上述のスイッチング電源装置10におけるパルス生成部32cと異なる動作を行う。詳細は後述する。
【0064】
パルス平滑化回路56は、第一の抵抗R21とコンデンサC21で積分回路を構成し、さらに第一の抵抗R21と並列にダイオードD21と第二の抵抗R22の直列回路が接続されている。その際、ダイオードD21のカソードは、電流制御パルス発生手段54の出力端e0に接続されている。パルス平滑化回路56の出力は、平滑化電圧Vbが発生するコンデンサC21の両端であり、後述する電流制限信号生成回路58に接続されている。
【0065】
また、スイッチング素子TR1のソース端子と入力電源Einのマイナス端子間に電流検出抵抗R0である電流検出回路38が挿入され、電流検出抵抗R0に流れるスイッチング電流Iswに応じた電圧がその両端に発生する。その電流検出抵抗R0の両端は、電流検出回路38の出力として電流制限信号生成回路58に接続されている。
【0066】
電流制限信号生成回路58は、パルス平滑化回路56の出力に一端が接続された抵抗R31と、一端が抵抗R31のもう一端に接続された抵抗R32と、コレクタ端子が抵抗R32のもう一端に接続され、エミッタ端子がパルス平滑化回路56のグランドに接続されたトランジスタTR31を備え、トランジスタTR31のベース端子は、抵抗R31と抵抗R32の中点の接続されている。さらに、ベース端子がトランジスタTR31のコレクタ端子に接続され、エミッタ端子は電流検出抵抗R0の入力電源Einのマイナス端子側に接続されたトランジスタTR32が設けられ、コレクタ端子はオープン・コレクタとして電流制限信号生成回路58の出力を形成している。なお、トランジスタTR31,TR32は、NPNトランジスタである。
【0067】
駆動パルス生成回路18は、入力された電流制限信号V(cur)に応じてパルス幅変調を行い、スイッチング素子TR1の駆動パルスVgを出力する回路であり、その出力はスイッチング素子TR1の駆動端子に接続されている。
【0068】
電流制限動作時間監視手段52は、誤差増幅器16の出力と、電流制限信号生成回路58の出力とが入力される比較器からなる第一の比較手段52aを備えている。さらに、その比較手段52aの出力信号によって動作が制御されるタイマー回路52bと、比較器からなる第二の比較手段52cとを備えている。比較手段52cは、比較手段52aの出力がローレベルを所定時間継続すると、それ以前に出力していた信号に代えて動作時間超過信号を発生し、電流制御パルス発生手段54の目標値設定部32aに向けて出力するよう構成されている。
【0069】
次に、図7から図9に基づいて、スイッチング電源装置50の各回路ブロックの構成と動作の詳細を個別に説明する。インバータ回路12は、整流平滑回路14、誤差増幅回路16、駆動パルス生成回路18、電流検出回路38は、上述のスイッチング電源装置10と同様のため、説明を省略する。
【0070】
電流制御パルス発生手段54は、例えば汎用のデジタルプロセッサ(マイコン)を用いて構成されており、図7に示すように目標値設定部32a、演算部32b及びパルス生成部54cを備えている。目標値設定部32aは、電流制限動作時間監視手段52から動作時間超過信号が入力されると、その動作時間超過信号に基づいて演算処理を行い、過電流設定値を所定の低い値に低下させるように目標値を決定して演算部32bに出力する。なお、動作時間超過信号が外部から入力されないときは、あらかじめ固定的に記憶している所定の既定値に基づいて目標値を決定する。
【0071】
演算部32bは、目標値設定部32aから入力された目標値に基づいて演算処理を行い、パルス生成部54cのスイッチ素子S41,S42それぞれに制御信号を出力する。パルス生成部54cのグランド側のスイッチ素子S42は、電流制限動作時間監視手段52から動作時間超過信号が出力された時から所定の期間だけオンし、それ以外の期間は常にオフ状態を示す。スイッチ素子S42がオンしているときは、スイッチ素子S41はオフしている。一方、スイッチ素子S42がオフしているときは、スイッチ素子S41がオン・オフを繰り返す動作をする。
【0072】
従って、スイッチ素子S42がオフの期間において、スイッチ素子S41がオンのときは、出力端子e0にハイレベルの電圧(Vcc41)が発生し、スイッチ素子S41がオフのときは、出力端子e0はフローティング状態となり、パルス生成部54cから電気的に切り離される。また、スイッチ素子S42がオンの期間において、スイッチ素子S41はオフ状態であり、出力端子e0はグランド電位(ローレベル)となる。
【0073】
パルス平滑化回路56は、パルス生成部54cの出力端子e0がハイレベルのときは、抵抗R21を介してコンデンサC21に緩やかに電荷が充電され、平滑化電圧Vbは緩やかに上昇する。出力端子e0がフローティングのときは、コンデンサC21に並列に接続された回路部分の放電経路を介してコンデンサC21の電荷が緩やかに放電し、平滑化電圧Vbは緩やかに低下する。従って、電流制御パルス発生手段54の出力端子e0がハイレベルとなる時比率が大きくなると、平滑化電圧Vbは上昇し、逆に出力端子e0がハイレベルとなる時比率が小さくなると、平滑化電圧Vbが低下する。なお、この実施形態のスイッチング電源装置50においては、電流制限信号生成回路58の入力側インピーダンスが、上記放電経路の役割を兼ねているため、特に放電経路を形成する専用抵抗などは接続していない。
【0074】
一方、出力端子e0がグランド電位のときは、抵抗R21に加えてR22とダイオードD21の直列回路を介して、コンデンサC21の電荷が急峻に放電され、平滑化電圧Vbは急峻に低下する。すなわち、電流制限動作時間監視手段52から動作時間超過信号が出力されると、平滑化電圧Vbを急峻に低下させることができ、これによって、後述する過電流設定値の切替えを高速に行うことが可能になる。
【0075】
電流制限信号生成回路58動作について、図8に基づいて説明する。トランジスタTR31は能動状態で動作しており、ベース・エミッタ間には、ベース・エミッタ間電流によって発生する電圧VBE1が発生している。従って、抵抗R31に流れる電流I31は、式(2)のように表される。
【数2】

【0076】
ここで、トランジスタTR31の電流増幅率hFEが十分大きいとすると、抵抗R32に流れる電流I32は、I31と等しくなり、抵抗R32に発生する電圧Vrは、式(3)のように表される。
【数3】

【0077】
式(3)から分かるように、電流制限信号生成回路58において、抵抗R32に発生する電圧Vrは平滑化電圧Vbによって制御することができ、上述の電流制限信号生成回路36における基準電圧Vrの役割を果たす。
【0078】
また、トランジスタTR31のコレクタ・エミッタ間に発生する電圧Vce1は、式(4)のように表される。
【数4】

【0079】
また、トランジスタTR32のベース・エミッタ間に印加される電圧をVbe2、電流検出抵抗R0にスイッチング電流Iswが流れ、V(R0)の電圧が発生しているとすると、Vbe2に印加される電圧は、(5)式のように表される。
【数5】

【0080】
ここで、トランジスタTR31,TR32のベース・エミッタ間電流によって発生する電圧VBE1とVBE2が同じ特性を示し、トランジスタTR31とトランジスタTR32がオンできる電圧が等しくVBEであるとした場合、電流検出電圧V(R0)が基準電圧Vrに等しい値になったときに、Vbe2=VBEとなり、トランジスタTR32がオンすることができる。例えば、スイッチング電流Isw=0のとき、(5)式のように、トランジスタTR32のベース・エミッタ間に印加されている電圧Vbe2は、ベース・エミッタ間の電圧VBEよりも低いため、オンできない。しかし、スイッチング電流Iswが増加し、電流検出電圧V(R0)が基準電圧Vrに達すると、トランジスタTR32のベース・エミッタ間に印加されている電圧Vbe2は、TR32がオンできるベース・エミッタ間の電圧VBEに達し、オンすることができる。
【0081】
このように、電流制限信号生成回路58は、平滑化電圧Vbに応じて変化する基準電圧Vrを備えている。さらに、電流検出電圧V(R0)と基準電圧Vrは、トランジスタTR31,TR32がオンするときのベース・エミッタ間電圧を介して比較され、電流検出電圧V(R0)が基準電圧Vrより低いとき、すなわち出力電流Ioutが小さいときは、トランジスタTR32のコレクタ端子はハイレベルを出力する。逆に、電流検出電圧V(R0)が基準電圧Vrに達した場合、すなわち出力電流Ioutが所定の値に達すると、ローレベルを出力する。
【0082】
また、平滑化電圧Vbと基準電圧Vrとの関係は、平滑化電圧Vbが上昇すると基準電圧Vrも上昇し、逆に平滑化電圧Vbが低下すると基準電圧Vrも低下するよう構成されている。なお、駆動パルス生成回路18は、図5に示すように、電流制限信号生成回路58の出力が接続される端子a2と電源電圧Vcc11の間にプルアップ抵抗R12が接続され、トランジスタTR32によるオープンプンコレクタ式の出力に対応した構成としている。
【0083】
電流制限動作時間監視手段52に設けられた比較手段52aは、誤差増幅器16が出力する出力電圧信号V(vol)と、電流制限信号生成回路58が出力する電流制限信号V(cur)とが入力され、通常動作では電流制限信号V(cur)の方が高くハイレベルを出力し、電流制限信号V(cur)の方が低くなるとローレベルを出力する。
【0084】
タイマー回路52bは、比較手段52aがローレベルを出力した時にリセット素子TR51がオフし、タイマーコンデンサC51への充電が開始される。そして、タイマーコンデンサC51両端の電圧が所定の基準電圧Vrrよりも高くなると、比較手段52cはそれ以前に出力していたハイレベル信号にからローレベルになり、それが動作時間超過信号として電流制御パルス発生手段54の目標値設定部32aに向けて出力する。
【0085】
また、比較手段52aがハイレベルを出力しているときはリセット素子TR51がオンしているので、タイマーコンデンサC51への充電が行われず、タイマー回路52bは動作しない。
【0086】
次に、上記のように構成されたスイッチング電源50の一連の動作を、図9のタイムチャートに基づいて説明する。期間1は、過電流保護回路が動作していない期間である。また、期間2は、第一の過電流設定値によって過電流保護回路が動作している期間である。期間3は、第二の過電流保護設定値によって過電流保護回路が動作している期間である。ここで、期間1及び期間2の動作は、前述のスイッチング電源装置10の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
前述のとおり、期間2がスタートすると、電流信号生成回路58の出力に発生する電流制限信号V(cur)は、誤差増幅器16の出力に発生する出力電圧信号V(vol)よりも低い状態が継続する。この2つの信号は、電流制限動作時間監視手段52の比較手段52aに入力され、比較手段52aは継続してローレベルを出力する。すると、このリセット素子TR51は、比較手段52aが出力するローレベルの信号によってオンからオフの状態に切り替わる。すると、直流電源Vcc51から充電抵抗R51を介してタイマーコンデンサC51に電荷が充電され、タイマーコンデンサC51両端の電圧が上昇する。タイマーコンデンサC51両端の電圧は、比較手段52cによって所定の基準電圧Vrrと比較され、タイマーコンデンサC51両端の電圧が基準電圧Vrrよりも高くなると、比較手段52cの出力には、それ以前に出力していたデジタル信号に代えて動作時間超過信号を発生する。期間2の長さは、スイッチング電源装置50がピーク電流を負荷に供給することができる時間の許容上限値Tmaxに設定されるものであり、電源電圧Vcc51、充電抵抗R51、タイマーコンデンサC51および基準電圧Vrrによって適宜設定することができる。このようにして、電流制限動作時間監視手段52は、電流制御パルス発生手段54の目標値設定部32aに向けて、第一過電流設定値による過電流保護の動作時間が許容上限値Tmaxに達したことを知らせる信号が出力される。
【0088】
電流制御パルス発生手段54は、目標値設定部32aが決定した目標値によって制御される。目標値設定部32aは、動作時間超過信号が入力されると、過電流設定値を第一の設定値から第二の設定値に変更するため、動作時間超過信号に基づいて第二の目標値を演算して決定する。第二の過電流設定値は、故障した電子機器などの安全性を考慮して設定されるものであるので、第二の設定値は第一の設定値よりも小さく設定してある。そして、第二の目標値が演算部32bに入力されると、それに基づいて電流制御パルス電圧Vcのハイレベルの時比率は小さくなり、平滑化電圧Vbは低下し、基準電圧Vrが低下し、その結果、過電流設定値は第一の設定値よりも小さな第二の設定値に変更され、出力電流Ioutは第二の設定値を超えないように制限される。
【0089】
さらに、スイッチング電源装置50の場合、第一の過電流設定値を第二の設定値に高速で切り換えるためには、平滑化電圧Vbを急峻に低下させる必要がある。そこで、パルス生成部54cのスイッチ素子S42、パルス平滑化回路56に抵抗R22とダイオードD21の直列回路を用いる。パルス生成部54cにスイッチ素子S42を用いない場合には、コンデンサC21の放電経路の抵抗値が大きいため、平滑化電圧Vbは、緩やかなスピードでしか低下しない。そこで、第一の過電流設定値を第二の設定値に切り換えるごく短い時間だけ、スイッチ素子S42をオンし、抵抗値の小さな抵抗R22とダイオードD21による放電経路を設けている。これによって、図9に示すように、平滑化電圧Vbが急峻に低下することができ、過電流設定値の切り換えが高速になされている。
【0090】
以上説明したように、スイッチング電源装置50の電流制御パルス発生手段54は、低速クロックの汎用デジタルプロセッサにより構成しても、十分な性能を実現することができる。また、電流制限動作時間監視手段52も、汎用デジタルプロセッサを用いて構成することによって時間監視の精度を向上させることができる。このように、この実施形態のスイッチング電源装置50にあっては、高性能で高価なデジタルプロセッサを使用することなく、インテリジェント性に優れ、精度の高い過電流保護回路を備えたスイッチング電源装置を安価に提供することができる。
【0091】
また、ピーク電流が流れる機器に対応して、第一、第二の過電流設定値や過電流保護の動作時間を精度よく制御することによって、万一負荷の電子機器が異常状態になったときでも焼損事故などを防止する、高い安全性を提供することができる。さらに、電源回路を構成するパワー部品として、定格電流や定格温度に過剰に余裕のある大型部品を選定せずともスイッチング電源装置自体の安全性が確保できるので、スイッチング電源装置の小型化、低コスト化に寄与することができる。
【0092】
次に、第一の実施形態のスイッチング電源装置10の変形例について、図10を基に説明する。ここでは、電流検出抵抗R0である電流検出回路38を、整流平滑回路14のコンデンサCoのマイナス側と負荷22のマイナス側に挿入している。この変形例の場合、電流検出抵抗R0には出力電流Ioutが流れるので、スイッチング素子TR1に流れるスイッチング電流Iswを代用特性として出力電流Ioutを検出する場合よりも、より正確に出力電流Ioutを検出することができる。なお、スイッチング電流Iswは、スイッチング周波数で繰り返される略台形状のパルス電流であるのに対し、出力電流Ioutは直流電流又は比較的低速で変動する電流であるが、スイッチング電源装置全体としての動作については、スイッチング装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
なお、本変形例は、非絶縁型のスイッチング電源装置等に適した形態である。しかし、絶縁型のスイッチング電源装置であっても、電源装置の1次回路―2次回路間の絶縁が、過電流保護回路においても確保できれば本変形例を適用して何ら問題ない。
【0094】
次に、第二の実施形態のスイッチング電源装置50の変形例について、図11を基に説明する。ここでは、電流検出抵抗R0である電流検出回路38を、カレントトランスT2を用いてスイッチング電流Iswを観測する電流検出回路60に置き換えている。電流検出回路60は、カレントトランスT2の1次側巻線T2aはスイッチング素子TR1と直列に接続され、2次側巻線には整流ダイオードD61と電流検出抵抗R0の直列回路が並列接続され、電流検出抵抗R0の両端が電流検出回路60の出力として電流制限信号生成回路58に接続されている。この場合、電流検出抵抗R0には、スイッチング電流IswにカレントトランスT2の巻数比を乗じた電流が流れ、その電流にさらにR0を乗じた値の電流検出電圧V(R0)が出力される。なお、本変形例においては、平滑化電圧Vbを出力するパルス平滑化回路のグランドがTR32のエミッタ端子側に接続されていても良い。その場合、電流検出電圧V(R0)が平滑化電圧Vbと比較して十分小さな値に設定することにより、上述のスイッチング電源装置50と同様に動作する。また、カレントトランスT2を用いた回路でも、先の第二の実施形態のスイッチング電源装置と同様に、パルス平滑化回路のグランドをTR31のエミッタ端子側に接続した回路を構成することも可能である。
【0095】
次に、駆動パルス生成回路18の変形例について、図12を基に説明する。この変形例の駆動パルス生成回路62は、のこぎり波発生回路62bの充電抵抗R11が、入力電圧Vinに接続されているので、のこぎり波電圧V(osc)が上昇する傾きが入力電圧に比例して変化する。これにより、出力電圧のフィードバック制御に、入力電圧の変動に応じたフィードフォワード制御が加わり、出力電圧安定化制御の高速応答性が向上する。
【0096】
さらに、タイマーコンデンサC11と充電抵抗の中点に、入力電圧に比例した電圧が発生する電圧発生素子Rbを挿入し、タイマーコンデンサC11に発生する電圧と電圧発生素子Rbに発生する電圧の合計値をのこぎり波電圧V(osc)として比較器CP11に入力している。これによって、入力電圧Vinに応じた直流電圧がのこぎり波電圧V(osc)に重畳され、比較器CP11の遅れ時間分が入力電圧Vinに応じて補正され、上記フィードフォワード制御特性が改善され、出力電圧安定化制御の高速応答性がさらに向上する。
【0097】
また、信号選択回路62aは、出力電圧制御信号V(vol)が入力される端子a1と、電流制御信号V(cur)が入力されるa2端子とを直結し、回路構成を簡素化している。信号選択回路62aは、過電流検出時に電流制御信号V(cur)の動きに基づいて駆動パルスVgのパルス幅変調がなされるように信号を選択するものであればよい。信号選択回路62aを用いた場合も、上述した駆動パルス生成回路18と同様の動作が行われる。
【0098】
ただし、信号選択回路62aは、誤差増幅回路16の出力と、第一実施形態の電流制限信号生成回路36または第二実施形態の電流制限信号生成回路58の出力を直結するものであるので、スイッチング電源装置50の電流制限動作時間監視回路52を備えた構成においては適用できない。それは、電流制限動作時間監視回路52の比較手段52aが、過電流保護の動作状態を検知できないからである。従って、信号選択回路62aを用いる場合には、例えば、電流制限動作監視回路52の比較手段52aは、出力電圧Voutを監視し、出力電圧Voutが所定電圧以下に低下したときにローレベルを出力するよう構成する方法を用いれば良い。これは、出力電圧Voutが所定の電圧以下に低下した状態は、前記電流制限信号V(cur)がスイッチング周波数ごとにローレベルが繰り返し発生している状態、又はローレベルが継続している状態であるものとみなすことができるので、代用特性として監視する方法である。
【0099】
さらに、誤差増幅回路16の変形例について、図13を基に説明する。誤差増幅器64は、出力電圧Voutをデジタル信号に変換するA/D変換器64aと、そのデジタル信号に基づいて制御パルスを発生する制御パルス発生手段64bと、その制御パルスを平滑化して出力制御信号V(vol)を出力するパルス平滑化回路64cを備えている。この誤差増幅器64によれば、低速・低クロック周波数の低コストの汎用デジタルプロセッサを用いて、誤差増幅回路16を構成することが可能であり、低コストでインテリジェント性に優れたスイッチング電源装置を実現することができる。
【0100】
次に、本発明のスイッチング電源装置の初期設定方法の一実施形態について、図14,図15に基づいて説明する。まず、図14のフローに示す各ステップについて説明する。
【0101】
ステップS81は、スイッチング電源装置10に入力電圧を供給して起動するステップである。これによって、スイッチング電源装置10は、スイッチング素子がスイッチング動作を行って所定の出力電圧Voutを出力し、出力電流Ioutを供給可能なスタンバイ状態に置かれる。
【0102】
ステップS82は、スイッチング電源装置10の出力に負荷装置を接続し、所望の過電流設定値と等しい出力電流Ioutが出力されるように、その負荷装置の設定を行うステップである。ここで使用される負荷装置は、例えば電流制御型の電子負荷装置が好ましい。この電子負荷装置によれば、出力電圧Voutの状態によらず、過電流設定値と等しい一定の出力電流Iout電流が出力されるよう負荷状態を制御することができる。
【0103】
ステップS83は、電流制御パルス発生手段32が備える目標値設定部32aの演算プログラムに設定されている所定の固定係数Kを可変し、演算部32bに出力される目標値を連続的に変化させるステップである。なお、固定係数Kを連続的に可変すると、出力電圧Voutが一定を維持する領域と、連続的に変化する領域が生じる。
【0104】
ステップS84は、上記2つの領域の境界点である固定係数境界値K(lim)を抽出するステップである。
【0105】
ステップS85は、抽出された固定係数境界値K(lim)を当該固定係数の設定値として演算プログラムに記憶させるステップである。
【0106】
以上説明した本実施形態の初期設定方法の動作について、図15(a)(b)に基づいて説明する。図15(a)は、スイッチング電源装置10の過電流保護特性の例である。出力電圧Voutは、出力電流Ioutが小さいときは、誤差増幅回路16によって所定の一定の値に制御される。出力電流Ioutが大きくなって過電流設定値に達すると、電流制限信号生成回路36によって出力電流Ioutは制限され、出力電圧Voutも同時に低下する。ここで、固定係数Kの変化は過電流設定値の変化となる。固定係数Kが変化すると目標値演算回路が決定する目標値が変化し、電流制限信号生成回路36の基準電圧Vrは変化し、その結果、過電流設定値が変化する。本実施形態の初期設定方法は、固定係数Kを利用し、過電流設定値を所望のIocpに設定するための方法である。
【0107】
ステップS81でスイッチング電源装置が出力電流供給可能なスタンバイ状態にする。次に、ステップS82において、電子負荷装置の電流設定を所望の過電流設定値Iocpに設定する。このとき、固定係数Kは任意の値であるため、図15(b)に示すように、出力電圧Voutがどのような値を示すかは不定である。
目標値設定部に設定されている演算式は、例えば式(6)のように表すことができる。
【数6】

【0108】
Cは目標値、T24は温度検出手段24の出力信号、V26は入力電圧検出手段26の出力信号、V28は出力電圧検出手段28の出力信号、Kは固定係数、fはこれらをパラメータとする所定の関数である。固定係数Kは、通常スイッチング電源装置10を使用するときは所定の値に固定されているものであるが、ステップS83では、その固定係数Kを可変し、それによって目標値を連続的に変化させる手段として使用する。
【0109】
ステップS83で固定係数Kが連続的に可変されると、図15(b)に示すように、出力電圧Voutが一定値を維持する領域と、連続的に変化する領域が生じる。そして、その2つの領域の境界点である固定係数境界値K(lim)を抽出する処理が行われる。
【0110】
そして、ステップS84で、目標設定部の演算式の固定係数Kは、K(lim)に固定的に設定・記憶される。これによって、スイッチング電源装置10過電流特性は、図15(a)に示すK=K(lin)のときの特性に固定され、初期設定が完了する。
【0111】
以上説明したように、この制御特性の初期設定方法によれば、例えば、トランスT1のインダクタンス値、電流検出回路38の電流検出抵抗R0の抵抗値、電流制限信号生成回路の比較の精度など、回路を構成する電子部品の特性の個体差によって過電流設定値のばらつきが生じても、すべて所望の過電流設定値に調整することができる。その際、部品交換や半固定抵抗器の調整など、煩雑なハードウエア的な調整作業は必要なく、ソフトウエア的な処理だけで調整が可能であり、自動化することも容易である。
【0112】
なお本発明は、上記実施形態に限定するものではなく、プッシュプル方式、ブリッジ方式、フライバック方式、各種チョッパ方式等にも適用可能である。
【0113】
また、電流制限動作時間監視回路は、電流制御パルス発生手段を構成するデジタルプロセッサを用いて、出力電圧Voutを監視する方法としても良い。温度検出手段、入力電圧検出手段、出力電圧検出手段に用いられるA/D変換回路も、デジタルプロセッサに内臓の機能を用いても良い。その他、各演算処理のために設定される演算式等は、当該スイッチング電源装置が有する動作特性や性質等を的確に数式化されたものであればよく、工学的な回路網解析等によって導出した理論式、試験・実験等によって導出した実験式、又はそれらと経験則を複合した経験式などのいずれであってもよい。
【0114】
さらに、上記初期設定方法においては、複数の固定係数Kを設定し、一連のステップを異なる条件の下で複数回行ってもよい。例えば、第一の固定係数Kは周囲温度25℃の環境で調整し、第二の固定係数Kは周囲温度50℃の環境下で調整するなどしてもよい。また、第一の固定係数Kは入力電圧を許容範囲の最低値に設定して調整を行い、第二の固定係数Kは入力電圧を許容範囲の最高値に設定して調整するなどしてもよい。これによって、回路を構成する電子部品の特性の個体差の影響を、異なる条件下で多角的に排除することとなり、スイッチング電源装置の過電流特性をより正確に所望の特性に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】この発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態を示すブロック図である。
【図2】この第一の実施形態が備える温度検出手段、入力電圧検出手段、及び出力電圧検出手段の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図3】この第一の実施形態が備えるパルス生成部の機能ブロック図である。
【図4】この第一の実施形態が備えるパルス生成部の実際の動作を示すタイムチャートである。
【図5】この第一の実施形態が備える駆動パルス生成回路を示す機能ブロック図である。
【図6】この第一の実施形態が備える駆動パルス生成回路の実際の動作を示すタイムチャートである。
【図7】この発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態を示すブロック図である。
【図8】この第二の実施形態が備える電流制限信号生成回路を示す回路図である。
【図9】この第二の実施形態が備える電流制限信号生成回路の実際の動作を示すタイムチャートである。
【図10】この発明のスイッチング電源装置の実施形態が備える電流検出回路の他の実施形態を示す回路図である。
【図11】この発明のスイッチング電源装置の実施形態が備える電流検出回路の他の実施形態を示す回路図である。
【図12】この発明のスイッチング電源装置の実施形態が備える駆動パルス生成回路の他の実施形態を示す機能ブロック図である。
【図13】この発明のスイッチング電源装置の実施形態が備える誤差増幅回路の機能ブロック図である。
【図14】この発明のスイッチング電源装置の初期設定方法の一実施形態に係る各ステップを示すフローチャートである。
【図15】この一実施形態が備える目標値可変ステップ、及び境界値抽出ステップにおけるスイッチング電源装置の出力電圧の挙動を説明する図である。
【符号の説明】
【0116】
10,50 スイッチング電源装置
12 インバータ回路
16,64 誤差増幅回路
18,62 駆動パルス生成回路
24 温度検出手段
26 入力電圧検出手段
28 出力電圧検出手段
32,54 電流制御パルス発生手段
32a 目標値設定部
32b 演算部
32c,54c パルス生成部
34,56 パルス平滑化回路
36,58 電流制限信号生成回路
38,60 電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のスイッチング周波数でパルス幅変調された駆動パルスを出力する駆動パルス生成回路と、この駆動パルス生成回路からの駆動パルスによって直流の入力電圧を断続して交流電圧を発生させるスイッチング素子を有するインバータ回路と、その交流電圧を整流平滑して出力電圧を生成し、負荷に出力電流を供給する整流平滑回路とを備えたスイッチング電源装置において、
前記出力電流の制御に関する所定の目標値であって変更可能な値を出力する目標値設定部、前記目標値に基づいて出力電流の制御に関する演算処理を行ない演算結果を出力する演算部、及びその演算結果に基づいて出力電流を制御するための電流制御パルス電圧を発生するパルス生成部から成る電流制御パルス発生手段と、
前記整流平滑回路からの出力電流又は前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路により検出された電流が、前記電流制御パルス発生手段の出力に基づいて設定された基準値を超えたときに、その電流を制限するための電流制限信号を出力する電流制限信号生成回路とを備え、
前記駆動パルス生成回路は、前記電流制限信号が出力されると前記スイッチング素子を駆動する駆動パルスのオン・デューティが広くなるのを止め若しくは狭くするように動作することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記電流制御パルス発生手段は、前記電流制御パルス電圧がパルス幅変調された信号として出力可能に構成されたデジタルプロセッサから成り、
前記電流制御パルス電圧を平滑化して平滑化電圧を生成するパルス平滑化回路が接続され、
前記電流検出回路は、前記出力電流又は前記スイッチング素子に流れる電流を検出してそれに基づいて電流検出電圧を出力し、
前記電流制限信号生成回路は、前記平滑化電圧に基づいて決定される基準電圧と前記電流検出電圧を比較する比較回路を有し、前記電流検出電圧が前記基準電圧を超えたときに前記電流制限信号を出力し、
前記駆動パルス生成回路は、前記電流制限信号が出力されると前記スイッチング素子を駆動する駆動パルスのオン・デューティが広くなるのを止め若しくは狭くするように動作することを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記電流制限信号生成回路は、一端が前記パルス平滑化回路の出力に接続される第一の抵抗と、その第一の抵抗の他端に一端が接続された第二の抵抗と、コレクタ端子が前記第二の抵抗の他端に接続され、ベース端子が前記第一の抵抗と第二の抵抗の中点に接続され、エミッタ端子が前記電流検出回路出力の一端に接続された第一のNPNトランジスタと、ベース端子が前記第一のNPNトランジスタのコレクタに接続され、エミッタ端子が前記電流検出回路出力の他端に接続され、コレクタ端子が前記電流制限信号生成回路の出力である第二のNPNトランジスタとを備え、前記第一・第二のNPNトランジスタはいずれか一方のエミッタ端子がグランド電位に接続され、
前記電流検出回路は、前記整流平滑回路の出力電流が流れたとき、若しくは前記スイッチング素子に電流が流れたときに、前記第二のNPNトランジスタのエミッタ端子の方が前記第一のNPNトランジスタのエミッタ端子よりも低い電位になる方向に前記電流検出電圧が出力されることを特徴とする請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記電流制限信号生成回路により前記電流制限信号が継続的に発生し又は前記スイッチング周波数毎に繰り返し発生している状態が所定の時間以上継続した場合に、時間超過信号を出力する電流制限動作時間監視手段を備え、
前記電流制御パルス発生手段の目標値設定部は、前記電流制限動作時間監視手段の前記時間超過信号に基づいて、前記電流制限信号生成回路の前記電流制限信号によって、前記電流検出回路により検出された電流をさらに制限するように、前記目標値を決定して前記演算部へ出力し、その目標値を基に前記演算部で演算された前記電流制御パルス電圧が前記パルス生成部から出力されることを特徴とする請求項1,2又は3記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記電流制御パルス発生手段の前記演算部は、前記目標値設定部が出力する目標値に基づいて前記電流制御パルス電圧の時比率を算出し、前記パルス生成部は、前記演算部が算出した時比率のハイレベル及びローレベル電圧を有する一定周波数の矩形波を生成するように構成され、
前記パルス平滑化回路は、一端が電流制御パルス発生手段の出力に接続される抵抗と、その抵抗の他端とグランドとの間に接続されたコンデンサとを備え、前記コンデンサの両端電圧が前記パルス平滑化回路の出力となることを特徴とする請求項2,3又は4記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記電流制御パルス発生手段の前記演算部は、前記目標値設定部が出力する目標値に基づいて前記電流制御パルス電圧の時比率を算出し、前記パルス生成部は、前記演算部が算出した時比率のハイレベル及びフローティングレベルの出力状態を、一定周期の中で繰り返すよう構成され、
前記パルス平滑化回路は、一端が電流制御パルス発生手段の出力に接続される抵抗と、その抵抗の他端とグランドとの間に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに並列接続された放電経路とを備え、前記コンデンサの両端電圧が前記パルス平滑化回路の出力となることを特徴とする請求項2,3又は4記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記パルス平滑化回路は、一端が前記電流制御パルス発生手段の出力に接続された第一の抵抗と、その抵抗の他端とグランドとの間に接続され、両端にパルス平滑化回路の出力電圧が発生するコンデンサと、前記コンデンサに並列接続された放電経路と、前記コンデンサと第一の抵抗との接続点から前記電流制御パルス発生手段の出力に向けて電流を流すことを可能に接続されたダイオードと第二の抵抗との直列回路とを備え、
前記電流制御パルス発生手段の前記演算部は、前記動作時間超過信号に基づいて決定された目標値が与えられると、前記パルス生成部の出力状態を所定の時間だけローレベルに制御し、前記パルス平滑化回路の前記コンデンサの電圧を前記ダイオードと第二の抵抗との直列回路を介して放電すること特徴とする請求項6記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
スイッチング電源装置の出力電圧を所定の目標値と比較し、反転増幅された出力電圧制御信号を出力する誤差増幅回路を有し、
前記電流制限信号生成回路は、前記平滑化電圧に基づいて決定される基準電圧と、前記電流検出電圧とを比較し、前記電流検出電圧が前記基準電圧を超えたときとそれ以外の場合で異なる電流制限信号を出力する比較回路を備え、
前記駆動パルス生成回路は、前記スイッチング周波数で駆動されたのこぎり波電圧を発生するのこぎり波発生回路と、第一の入力端に前記のこぎり波電圧が入力され、第二の入力端に入力された前記出力電圧制御信号と前記のこぎり波電圧とを比較し、前記のこぎり波電圧の方が低い期間とそれ以外の期間とで異なる信号を出力する比較器と、前記電流制限信号が入力される信号選択回路を備え、
前記信号選択回路は、前記電流制限信号生成回路により前記電流制限信号が継続的に発生し又は前記スイッチング周波数毎に繰り返し発生している状態のときは、前記電流制限信号に基づいて決定される時比率の駆動パルスが前記駆動パルス生成回路から出力され、前記電流制限信号が出力されていないときは、前記出力電圧制御信号に基づいて決定される時比率の駆動パルスが前記駆動パルス生成回路から出力されるよう、出力信号を選択する動作を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
感温素子によってスイッチング電源装置の環境温度を感知し、それに基づいた温度信号を出力する温度検出手段を備え、
前記電流制御パルス発生手段の前記目標値設定部は、前記温度信号に基づいて前記目標値を決定し、その決定した目標値を前記演算部に出力することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
スイッチング電源装置の入力電圧を検出し、それに基づいた入力電圧信号を出力する入力電圧検出手段を備え、
前記電流制御パルス発生手段の前記目標値設定部は、前記入力電圧信号に基づいて前記目標値を決定し、その決定した目標値を前記演算部に与えることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
スイッチング電源装置の出力電圧を検出し、それに基づいた出力電圧信号を出力する出力電圧検出手段を備え、
前記電流制御パルス発生手段の前記目標値設定部は、前記出力電圧信号に基づいて前記目標値を決定し、その決定した目標値を前記演算部に与えることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のスイッチング電源装置。
【請求項12】
所定のスイッチング周波数でパルス幅変調された駆動パルスを出力する駆動パルス生成回路と、この駆動パルス生成回路からの駆動パルスによって直流の入力電圧を断続して交流電圧を発生させるスイッチング素子を有するインバータ回路と、その交流電圧を整流平滑して出力電圧を生成し、負荷に出力電流を供給する整流平滑回路と、前記出力電流の制御に関する所定の目標値であって変更可能な値を出力する目標値設定部と、前記目標値に基づいて出力電流の制御に関する演算処理を行ない演算結果を出力する演算部と、その演算結果に基づいて出力電流を制御するための電流制御パルス電圧を発生するパルス生成部と、前記整流平滑回路の出力電流又は前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路により検出された電流が基準値を超えたときにその電流を制限するための電流制限信号を出力する電流制限信号生成回路とを備え、前記電流制限信号が出力されると、前記駆動パルス生成回路は、駆動パルスのオン・デューティが広くなるのを止め若しくは狭くするように動作するスイッチング電源装置の初期設定方法において、
前記スイッチング電源装置の入力に所定の直流電圧を供給して起動する電源起動ステップと、出力に負荷を接続し、所望の過電流設定値と等しい出力電流を出力させる負荷設定ステップと、前記電流制御パルス発生手段が備える前記目標値設定部の演算プログラムに設定されている所定の固定係数を調整し、前記演算部に出力される目標値を連続的に変化させる目標値可変ステップと、前記出力電流が前記過電流設定値の状態で前記目標値の変化に対して、前記出力電圧が連続的に変化する状態と、前記出力電圧が一定値に保持される状態との境界点における固定係数境界値を抽出する境界値抽出ステップと、前記固定係数境界値を当該固定係数の設定値として前記演算プログラムに記憶させる境界値記憶ステップとを備えることを特徴とするスイッチング電源装置の初期設定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−136105(P2009−136105A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310205(P2007−310205)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】