説明

スキャンチェーン検査装置及び検査方法

【課題】 スキャンチェーンの検査を好適に行うことが可能なスキャンチェーン検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置10のスキャンチェーンに検査信号を供給する検査信号供給部18と、スキャンチェーンの各レジスタでの検査信号の信号レベルの時間変化を測定するレジスタ測定部20と、測定部20による測定結果に基づいて各レジスタにレジスタ番号を付与するレジスタ番号解析部51を有する検査解析装置50とによってスキャンチェーン検査装置1Aを構成する。供給部18は、信号長nが異なるm種類の検査信号列を供給する。解析部51は、信号長nの検査信号列を用いた測定結果からスキャンチェーンの複数のレジスタをn個のグループに分けるグループ分けをm種類の検査信号列のそれぞれについて行い、その結果に基づいて各レジスタにレジスタ番号を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に設けられたスキャンチェーンについて検査を行うためのスキャンチェーン検査装置、及びスキャンチェーン検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、LSIなどの半導体装置(半導体集積回路)における回路規模は、膨大なものとなっている。このため、装置内に不良が発生した場合に、その機能を外部からプロービングして検査を行うことは困難になっている。
【0003】
このような半導体装置の検査方法として、LSIの内部に形成された、複数のレジスタが直列に接続されたスキャンチェーンと呼ばれる信号の入出力/保存ラインによって検査を行う方法が用いられている。この検査方法では、スキャンチェーンに入力した信号と、再度書き出された信号との整合、不整合から不良箇所を検出する(例えば、特許文献1、非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−230075号公報
【特許文献2】特開2005−19537号公報
【特許文献3】特開2005−19635号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yin S Ng et al., "LaserVoltage Imaging: A new Perspective of Laser Voltage Probing", Proceedingsof the 36th International Symposium for Testing and Failure Analysis (2010)pp.5-13
【非特許文献2】Steven Kasapi et al.,"Laser Voltage Imaging for ATPG Scan Chain Diagnosis on 40 nm CMOS",Proceedings of the 30th LSI Testing Symposium (2010) pp.199-202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したスキャンチェーンが設けられた半導体装置において、スキャンチェーンそのものに不良が発生し、信号の入出力を行うことが出来なくなった場合、スキャンチェーンでの不良の発生位置を特定することは困難である。これを解決する手法として、スキャンチェーンの各レジスタに保持されている信号の信号レベル、及びその時間変化等を検出する測定技術を用いる方法が考えられる。
【0007】
そのような測定としては、例えば、回路のスイッチングの状態を可視化する技術である時間分解発光計測法がある(特許文献2、3)。また、回路のスイッチングに伴う電界の変化から、半導体内部の電気光学効果(Electro Optical Effect)により、反射光の変調を検出するEOプロービングという方法がある。この方法では、例えば、半導体装置の裏面より回路にCWレーザ光を照射する。そして、ロックイン検出等により、照射光に対する反射レーザ光に含まれる特定周波数の信号を2次元にマッピングすることで、スイッチング位置のマッピングを行うことが可能である。このような方法は、反射レーザ光に重畳するスイッチングの周波数、すなわちスキャンチェーンに流し込むデータの周波数を可視化する技術であり、EOFM(Electro Optical Frequency Mapping)法と呼ばれる(非特許文献1、2)。
【0008】
ここで、スキャンチェーンは、自動配置配線により、半導体装置においてチップ内に配置される。このため、上記した測定手法を用いた場合でも、スイッチングの有無によってスキャンチェーンのどの部分に信号が到達していないかを調べることはできるが、信号が途切れている境である不良発生箇所を特定することは難しい。
【0009】
LSIの設計情報(DEF/LEF)がある場合、その設計情報から信号を追跡して、不良箇所の位置を検出することが可能である。しかしながら、現在のLSIの生産はファブレス化しているため、生産工場で検査を行う場合、マスクデータはあっても、設計情報は入手できない場合がある。このような場合、時間分解発光計測法、EOFM法などによる半導体装置の検査を行っても、スキャンチェーンにおいて、検出された各レジスタについて、入力端から出力端までのレジスタ配列内での位置(レジスタ番号)を特定することができず、不良箇所の検査、特定を行うことができない。また、スキャンチェーンでは、スキャンチェーンを構成するレジスタ(セル)の数自体が、数万にものぼる場合があり、レジスタを数えることが困難であるという問題もある。
【0010】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、半導体装置の設計情報等がない場合でも、スキャンチェーンについての検査を好適に行うことが可能なスキャンチェーン検査装置、及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明によるスキャンチェーン検査装置は、半導体装置に設けられ、入力端と出力端との間で複数のレジスタが直列に接続されたスキャンチェーンについて検査を行う検査装置であって、(1)スキャンチェーンに対して入力端から、「1」及び「0」の2つの信号レベルを有する信号を検査信号として時系列に供給する検査信号供給手段と、(2)スキャンチェーンを構成する複数のレジスタのそれぞれに保持された検査信号の信号レベルの時間変化を測定するレジスタ測定手段と、(3)レジスタ測定手段による測定結果に基づいて、複数のレジスタについての検査を行う検査解析手段とを備え、(4)検査解析手段は、複数のレジスタのそれぞれについて、入力端から出力端までのレジスタ配列内での位置を示すレジスタ番号を付与するレジスタ番号解析手段を有し、(5)検査信号供給手段は、「1」信号、及び「0」信号を少なくとも1つずつ含む信号長n(nは2以上の整数)の検査信号によって検査信号列を構成し、信号長nが互いに異なるm種類(mは2以上の整数)の検査信号列をスキャンチェーンに対して供給するとともに、(6)レジスタ番号解析手段は、信号長n=nの第1検査信号列をスキャンチェーンに繰り返して供給したときのレジスタ測定手段による測定結果を参照し、信号レベルの時間変化の遅延量から複数のレジスタをn個のグループに分ける第1のグループ分けを行い、このような複数のレジスタのグループ分けをm種類の検査信号列のそれぞれについて行うとともに、得られたm種類のグループ分け結果に基づいて、複数のレジスタのそれぞれにレジスタ番号を付与することを特徴とする。
【0012】
また、本発明によるスキャンチェーン検査方法は、半導体装置に設けられ、入力端と出力端との間で複数のレジスタが直列に接続されたスキャンチェーンについて検査を行う検査方法であって、(1)スキャンチェーンに対して入力端から、「1」及び「0」の2つの信号レベルを有する信号を検査信号として時系列に供給する検査信号供給ステップと、(2)スキャンチェーンを構成する複数のレジスタのそれぞれに保持された検査信号の信号レベルの時間変化を測定するレジスタ測定ステップと、(3)レジスタ測定ステップによる測定結果に基づいて、複数のレジスタについての検査を行う検査解析ステップとを備え、(4)検査解析ステップは、複数のレジスタのそれぞれについて、入力端から出力端までのレジスタ配列内での位置を示すレジスタ番号を付与するレジスタ番号解析ステップを含み、(5)検査信号供給ステップは、「1」信号、及び「0」信号を少なくとも1つずつ含む信号長n(nは2以上の整数)の検査信号によって検査信号列を構成し、信号長nが互いに異なるm種類(mは2以上の整数)の検査信号列をスキャンチェーンに対して供給するとともに、(6)レジスタ番号解析ステップは、信号長n=nの第1検査信号列をスキャンチェーンに繰り返して供給したときのレジスタ測定ステップによる測定結果を参照して、信号レベルの時間変化の遅延量から複数のレジスタをn個のグループに分ける第1のグループ分けを行い、このような複数のレジスタのグループ分けをm種類の検査信号列のそれぞれについて行うとともに、得られたm種類のグループ分け結果に基づいて、複数のレジスタのそれぞれにレジスタ番号を付与することを特徴とする。
【0013】
上記したスキャンチェーン検査装置及び検査方法では、複数のレジスタを含むスキャンチェーンに対し、「1」信号または「0」信号の検査信号を、入力端から複数のレジスタへと時系列に供給する。そして、レジスタに保持された検査信号の信号レベル、特に検査信号の流れによる信号レベルの時間変化を、例えば時間分解発光計測法、EOFM法などの測定手法によって測定する。
【0014】
また、このような検査信号の供給、及びレジスタの測定について、信号長nの検査信号列を用意し、検査信号列をスキャンチェーンに時系列に繰り返して供給して、そのときの測定結果から、複数のレジスタをn個のグループに分けるグループ分けを行う。さらに、そのようなグループ分けをm種類の検査信号列について行って得られたm種類のグループ分け結果を参照して、スキャンチェーンの各レジスタに対してレジスタ番号を付与する。このような構成によれば、半導体装置の設計情報がないなどの場合でも、スキャンチェーンの各レジスタについて、入力端から出力端までのレジスタ配列内での位置を特定することができ、スキャンチェーンの検査を好適に行うことが可能となる。
【0015】
ここで、上記したスキャンチェーンの検査において、m種類の検査信号列のそれぞれにおける信号長n=n〜nは、それぞれ素数として設定されることが好ましい。このように、信号長nを素数に設定することにより、信号長nの検査信号列を用いたレジスタのグループ分けによるレジスタ番号の付与を、効率的に行うことができる。
【0016】
また、m種類の検査信号列のそれぞれにおける信号長n=n〜nは、その最小公倍数がスキャンチェーンを構成する複数のレジスタの個数よりも大きくなるように設定されることが好ましい。これにより、スキャンチェーンを構成する複数のレジスタの全てについて、レジスタ番号の特定、付与を確実に行うことができる。
【0017】
スキャンチェーンに供給する検査信号列の具体的な構成については、例えば、信号長nの検査信号列を、連続するk個の「1」信号、及び連続するn−k個の「0」信号によって構成する方法を用いることができる。このような構成によれば、スキャンチェーンの各レジスタでの信号レベルの時間変化の遅延量を好適に測定することができる。このときの信号数kは1以上n−1以下の整数である。また、この場合、信号長nの検査信号列は、「1」信号の個数kが、n/2に最も近くなるように設定されることが好ましい。
【0018】
また、信号長nの検査信号列は、2個の検査信号からなる信号群を1個の検査信号とみなし、「1」信号に対応する信号群を「10」信号または「01」信号とし、「0」信号に対応する信号群を「11」信号または「00」信号として設定される構成を用いても良い。このような構成は、各レジスタでの信号レベルの時間変化の測定において、時間分解発光計測法等を用いる場合に有効である。
【0019】
スキャンチェーン検査装置は、検査解析手段が、レジスタ測定手段による測定結果、及びレジスタ番号解析手段による解析結果に基づいて、スキャンチェーンにおける不良箇所を特定する不良解析手段を有する構成としても良い。同様に、スキャンチェーン検査方法は、検査解析ステップが、レジスタ測定ステップによる測定結果、及びレジスタ番号解析ステップによる解析結果に基づいて、スキャンチェーンにおける不良箇所を特定する不良解析ステップを含む構成としても良い。
【0020】
このような構成によれば、m種類の検査信号列を用いて各レジスタに付与されたレジスタ番号を参照して、スキャンチェーンにおける不良箇所の検出、及びその発生位置の特定を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスキャンチェーン検査装置、及び検査方法によれば、複数のレジスタを含むスキャンチェーンに対し、「1」信号または「0」信号の検査信号を時系列に供給し、各レジスタでの信号レベルの時間変化を測定するとともに、信号長nの検査信号列をスキャンチェーンに時系列に繰り返して供給して、そのときの測定結果から複数のレジスタをn個のグループに分けるグループ分けを行い、そのようなグループ分けをm種類の検査信号列について行って得られたグループ分け結果を参照して、スキャンチェーンの各レジスタにレジスタ番号を付与することにより、各レジスタについてレジスタ配列内での位置を特定することができ、スキャンチェーンの検査を好適に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スキャンチェーン検査装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】半導体装置に設けられるスキャンチェーンを模式的に示す図である。
【図3】スキャンチェーンにおける検査信号列の流れについて示す図である。
【図4】信号長n=2の第1検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。
【図5】信号長n=3の第2検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。
【図6】信号長n=5の第3検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。
【図7】各レジスタに対するレジスタ番号の付与について示す図である。
【図8】各レジスタに対するレジスタ番号の付与について示す図である。
【図9】スキャンチェーン検査装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図10】検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面とともに本発明によるスキャンチェーン検査装置、及びスキャンチェーン検査方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0024】
図1は、スキャンチェーン検査装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態によるスキャンチェーン検査装置1Aは、LSIなどの半導体装置(半導体集積回路)10を検査対象(DUT:Device Under Test)とし、半導体装置10に設けられたスキャンチェーンについて検査を行う検査装置である。
【0025】
図2は、図1に示した検査装置1Aによる検査対象となる半導体装置10、及び半導体装置10に設けられるスキャンチェーンを模式的に示している。図2の半導体装置10に形成されたスキャンチェーン15は、その入力端11と出力端12との間で、複数(図2においては24個)のレジスタR01〜R24が直列に接続されており、外部ピンからの入力、及び外部ピンへの出力が可能なシフトレジスタとして構成されている。
【0026】
スキャンチェーン15は、半導体装置10の内部回路13を検査するために用いられ、各レジスタは、回路13へと信号を入力する素子、及び回路13から出力された信号を保存する素子として使用される。内部回路13の検査では、外部クロックに同期して、検査用の信号列を入力端11からレジスタR01〜R24へと流し込む。全てのレジスタ内に信号データが格納された後、図2中に破線矢印で示した経路でデータ演算を行い、その演算結果を対応するレジスタに出力、保存する。その後、レジスタR01〜R24内に格納された信号データを出力端12からシリアルに読み出し、入力データと出力データとの整合性をチェックすることで、内部回路13の不良についての検査を行う。
【0027】
このような半導体装置10において、内部回路13の検査用に設けられたスキャンチェーン15そのものに不良が発生した場合を考える。例えば、図2に示すように、スキャンチェーン15においてレジスタR14、R15の間の箇所Fで不良が発生した場合、不良箇所Fよりも後のレジスタR15〜R24に信号データを入力することができなくなり、意味のある出力を読み出すこともできなくなる。このような不良は、解析が困難であると同時に、新しいプロセスの初期には頻発する問題でもある。図1に示す検査装置1Aは、このようなスキャンチェーン15についての検査を可能とするものである。
【0028】
図1に示すスキャンチェーン検査装置1Aは、検査信号供給部18と、レジスタ測定部20と、検査解析装置50とを備えて構成されている。検査信号供給部18は、スキャンチェーン15に対して入力端11から、「1」及び「0」の2つの信号レベルを有する信号を、検査信号として時系列に供給する(検査信号供給ステップ)。この検査信号供給部18は、例えばテスタ、パルスジェネレータ、電源などによって構成される。
【0029】
検査信号供給部18から入力端11を介して供給された時系列で複数の検査信号からなる検査信号列は、スキャンチェーン15を構成する各レジスタに入力端11側から出力端12側へと順に、外部クロックに同期して入力、格納される。図3は、スキャンチェーン15における検査信号列の流れの一例を示している。この例では、後述するように、信号長n=2の信号列「10」をスキャンチェーン15に繰り返して供給したときの検査信号の流れを示している。図3に示す状態では、入力端11側からレジスタR01〜R20まで検査信号が入力され、さらに、クロックに同期した信号データのシフトを繰り返すことで、出力端12までの全てのレジスタR01〜R24に信号が供給される。
【0030】
レジスタ測定部20は、スキャンチェーン15を構成する複数のレジスタのそれぞれに保持された検査信号の信号レベルの時間変化を測定する(レジスタ測定ステップ)。本実施形態におけるレジスタ測定部20は、レーザスキャン光学系24を有し、EOFM法によって各レジスタでの信号レベルの時間変化を測定することが可能な顕微鏡として構成されている(非特許文献1、2参照)。
【0031】
検査対象の半導体装置10は、暗箱21内に設置されたステージ22上に載置されている。また、このステージ22上の半導体装置10に対し、対物レンズ23を介して、レーザスキャン光学系24が設けられている。また、レーザスキャン光学系24に対し、測定に必要なレーザ光を供給するレーザ光源25と、半導体装置10からの反射光を検出する光検出器27とが設けられている。
【0032】
レーザスキャン光学系24及びレーザ光源25は、レーザスキャンコントローラ26によって駆動制御されており、これにより、レーザ光源25からのレーザ光は、半導体装置10の所定の測定位置へと照射される。また、このレーザ光の照射位置を光学系24によって移動することにより、半導体装置10がレーザ光によって走査され、その測定対象領域全体について、EOFM法による必要な測定が行われる。
【0033】
半導体装置10からのレーザ光の反射光は、対物レンズ23、及び光学系24を介して光検出器27によって検出される。EOFM法では、レジスタに格納されている検査信号の信号レベルが「1」の場合と「0」の場合とでレーザ反射光の強度が異なることを利用して、スキャンチェーン15の各レジスタでの信号レベルの時間変化を測定する。また、光検出器27によるレーザ反射光の検出は、ロックインアンプ28により、検査信号供給部18による検査信号の供給タイミングと同期して行われる。
【0034】
これらの検査信号供給部18及びレジスタ測定部20に対し、検査解析装置50が設けられている。この検査解析装置50は、レジスタ測定部20による測定結果に基づいて、スキャンチェーン15を構成する複数のレジスタについての検査を行う(検査解析ステップ)。本実施形態における検査解析装置50は、レジスタ番号解析部51と、不良解析部52とを有している。
【0035】
レジスタ番号解析部51は、スキャンチェーン15の複数のレジスタのそれぞれについて、入力端11から出力端12までのレジスタ配列内での位置を示すレジスタ番号を付与する(レジスタ番号解析ステップ)。また、不良解析部52は、スキャンチェーン15内に不良が発生している場合に、レジスタ測定部20による測定結果、及びレジスタ番号解析部51による解析結果に基づいて、スキャンチェーン15における不良箇所を検出、特定する(不良解析ステップ)。
【0036】
検査解析装置50には、これらの解析部51、52に加えて、検査制御部55が設けられている。検査制御部55は、必要に応じて、検査信号供給部18、レジスタ測定部20の動作、及びレジスタ番号解析部51、不良解析部52での解析動作を制御する。また、検査解析装置50に対し、表示装置56、及び入力装置57が接続されている。表示装置56は、本検査装置1Aにおけるスキャンチェーン15の検査に関する情報を操作者に表示する。また、入力装置57は、検査に必要な情報、指示等の入力に用いられる。
【0037】
このような構成において、検査信号供給部18は、nを2以上の整数として、「1」信号、及び「0」信号を少なくとも1つずつ含む信号長nの検査信号によって検査信号列を構成する。そして、mを2以上の整数として、信号長nが互いに異なるm種類の検査信号列、すなわち、信号長n=nの第1検査信号列、信号長nの第2検査信号列、…、信号長nの第m検査信号列を用意し、それらの第1〜第m検査信号列をスキャンチェーン15に対して供給して、スキャンチェーン15の検査を行う。
【0038】
レジスタ番号解析部51は、このような第1〜第m検査信号列をスキャンチェーン15に供給したときのレジスタ測定部20による測定結果に基づいて、スキャンチェーン15の各レジスタに対するレジスタ番号の特定、付与を行う。
【0039】
具体的には、まず、信号長nの第1検査信号列をスキャンチェーン15に繰り返して供給した状態で、レジスタ測定部20によって、各レジスタに格納される検査信号の信号レベルの時間変化を測定する。そして、レジスタ番号解析部51は、その測定結果を参照し、信号レベルの時間変化の遅延量(レジスタ毎の遅延時間差)から、スキャンチェーン15の複数のレジスタをn個のグループに分ける第1のグループ分けを行う。
【0040】
第1のグループ分けが終了したら、次に、信号長nの第2検査信号列をスキャンチェーン15に繰り返して供給した状態で、レジスタ測定部20による測定を行い、その測定結果を参照し、信号レベルの時間変化の遅延量から、複数のレジスタをn個のグループに分ける第2のグループ分けを行う。さらに、このような複数のレジスタのグループ分けを第1〜第m検査信号列のそれぞれについて行う。そして、レジスタ番号解析部51は、得られたm種類のグループ分け結果に基づいて、スキャンチェーン15の複数のレジスタのそれぞれについて、レジスタ番号の特定、付与を行う。
【0041】
本実施形態によるスキャンチェーン検査装置1A、及びスキャンチェーン検査方法の効果について説明する。
【0042】
図1に示したスキャンチェーン検査装置1A、及びスキャンチェーン検査方法では、半導体装置10に設けられた複数のレジスタを含むスキャンチェーン15に対し、「1」信号または「0」信号からなる検査信号を、入力端11から複数のレジスタへと時系列に供給する。そして、各レジスタに保持された検査信号の信号レベル、特に検査信号の流れによる信号レベルの時間変化を、レジスタ測定部20によって測定する。
【0043】
また、このようなスキャンチェーン15への検査信号の供給、及び各レジスタの状態の測定について、信号長nの検査信号列を用意し、検査信号列を検査信号供給部18からスキャンチェーン15に時系列に繰り返して供給する。また、そのように検査信号列をスキャンチェーン15に供給したときのレジスタ測定部20による測定結果から、複数のレジスタを信号長nに対応したn個のグループに分けるグループ分けを行う。
【0044】
さらに、検査解析装置50のレジスタ番号解析部51において、そのようなグループ分けをm種類の検査信号列について行って得られたm種類のグループ分け結果を参照して、スキャンチェーン15の各レジスタに対してレジスタ番号を付与する。このような構成によれば、半導体装置10のDEF/LEFなどの設計情報がない場合でも、スキャンチェーンの各レジスタについて、入力端11から出力端12までのレジスタ配列内での位置を特定することができ、スキャンチェーンの検査を好適に行うことが可能となる。
【0045】
また、上記実施形態では、検査解析装置50において、レジスタ番号解析部51に加えて、スキャンチェーン15における不良箇所を検出、特定するための不良解析部52を設けている。このような構成によれば、m種類の検査信号列を用いて各レジスタに付与されたレジスタ番号を参照して、スキャンチェーン15における不良箇所の検出、及びその発生位置の特定を好適に行うことができる。なお、スキャンチェーン15に対してレジスタ番号の付与のみを行う場合には、不良解析部52は設けない構成としても良い。
【0046】
図1に示したスキャンチェーン検査装置1A、及び検査装置1Aにおいて実行されるスキャンチェーン検査方法について、さらに具体的に説明する。なお、ここでは、図1に関して上述したように、各レジスタでの信号レベルの時間変化の測定にEOFM法を用いた場合について説明する。
【0047】
スキャンチェーン15の検査においては、まず、検査対象となるLSIサンプルなどの半導体装置10を、レジスタ測定部20の暗箱21内のステージ22上にセットすることによって、検査信号供給部18によるスキャンチェーン15に対する検査信号の供給、及びレジスタ測定部20による各レジスタでの検査信号の信号レベルの時間変化の測定が可能な状態とする。
【0048】
また、この半導体装置10に対し、スキャンチェーン15の検査に用いる第1検査信号列を信号長n=2の信号列「10」に設定する。そして、この信号列を時系列に繰り返した周期的な検査信号列「101010…」を、検査信号供給部18から半導体装置10に設けられたスキャンチェーン15の複数のレジスタへと供給して、レジスタ測定部20による各レジスタの測定を行う。
【0049】
なお、検査の開始時に、スキャンチェーン15を構成する複数のレジスタの半導体装置10内での配置が特定されていない場合には、例えば、第1検査信号列を用いた最初の測定の際に、合わせて半導体装置10におけるレジスタ配置の特定(レジスタ配置のマップ作成)を行う。EOFM法では、特定周波数で動作している回路のマッピング像を取得して、周波数、位相等についての解析を行うが、このマッピング像により、半導体装置10におけるレジスタ配置を特定することが可能である。
【0050】
図4は、第1検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、(a)検査信号供給部18を動作させる外部クロック、(b)レジスタ測定部20において各レジスタでの検査信号の信号レベルの時間変化を測定するための測定トリガ、及び(c)スキャンチェーン15の各レジスタに格納されている検査信号の信号レベルを示している。
【0051】
また、図4において、スキャンチェーン15の各レジスタでの検査信号の信号レベルについては、入力端11側からみて、レジスタ番号1、2、3、…、2i+1、2i+2、2(i+1)+1、…の各レジスタについて、信号レベルの時間変化を示している。このような信号レベルの時間変化は、EOFM法では、上述したように、レーザ反射光の強度の時間変化によって検出、識別することが可能である。
【0052】
図4の測定例では、第1検査信号列の信号長がn=2に設定されていることに対応して、検査信号供給の1クロックの時間tcに対して、EOFM法の測定トリガは、トリガ周期T=n×tc=2×tcで与えられている。スキャンチェーン15の各レジスタでの信号レベルの時間変化の遅延量は、この周期2×tcの測定トリガに対する時間遅延量(位相遅延量)として測定される。
【0053】
具体的には、図4に示すように、入力端11から1番目のレジスタでは、信号長2の検査信号列「10」の時間遅延は0であり、また、トリガ周期T=2×tcを1として規格化したときの位相遅延も0である。2番目のレジスタでは、信号列の時間遅延はtcであり、規格化した位相遅延は1/2である。3番目のレジスタでは、信号列の時間遅延は0であり、規格化した位相遅延は0である。
【0054】
さらに、iを1以上の整数として、入力端11から2i+1番目のレジスタでは、1番目のレジスタと同様に、信号列「10」の時間遅延は0であり、位相遅延は0である。また、2i+2=2(i+1)番目のレジスタでは、2番目のレジスタと同様に、信号列の時間遅延はtcであり、位相遅延は1/2である。
【0055】
このような時間遅延、位相遅延を全てのレジスタについて測定することにより、スキャンチェーン15を構成する複数のレジスタを、位相遅延が0の第1グループと、位相遅延が1/2の第2グループとの2グループにグループ分けをすることができる。このとき、第1グループに分類されたレジスタには、レジスタ番号1、3、…、2i+1、…のレジスタが含まれている。また、第2グループに分類されたレジスタには、レジスタ番号2、4、…、2i+2、…のレジスタが含まれている。
【0056】
第1検査信号列を用いた測定を終了したら、次に、第2検査信号列を信号長n=3の信号列「110」に設定する。そして、この信号列を時系列に繰り返した周期的な検査信号列「110110110…」をスキャンチェーン15に供給して、レジスタ測定部20による各レジスタの測定を行う。
【0057】
図5は、第2検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。なお、図5においては、スキャンチェーン15の各レジスタでの検査信号の信号レベルについて、入力端11側からみて、iを0以上の整数として、レジスタ番号3i+1、3i+2、3i+3、3(i+1)+1の各レジスタについて、信号レベルの時間変化を示している。また、図5の測定例では、クロック時間tcに対して、EOFM法の測定トリガは周期T=n×tc=3×tcで与えられている。
【0058】
具体的には、図5に示すように、入力端11から3i+1番目のレジスタでは、信号長3の検査信号列「110」の時間遅延は0であり、また、トリガ周期T=3×tcを1として規格化したときの位相遅延も0である。3i+2番目のレジスタでは、信号列の時間遅延はtcであり、位相遅延は1/3である。3i+3=3(i+1)番目のレジスタでは、信号列の時間遅延は2×tcであり、位相遅延は2/3である。3(i+1)+1番目のレジスタでは、3i+1番目のレジスタと同様に、信号列の時間遅延は0であり、位相遅延は0である。
【0059】
このような時間遅延、位相遅延を全てのレジスタについて測定することにより、スキャンチェーン15を構成する複数のレジスタを、位相遅延が0の第1グループと、位相遅延が1/3の第2グループと、位相遅延が2/3の第3グループとの3グループにグループ分けをすることができる。
【0060】
第2検査信号列を用いた測定を終了したら、次に、第3検査信号列を信号長n=5の信号列「11100」に設定する。そして、この信号列を時系列に繰り返した周期的な検査信号列「111001110011100…」をスキャンチェーン15に供給して、レジスタ測定部20による各レジスタの測定を行う。
【0061】
図6は、第3検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。なお、図6においては、スキャンチェーン15の各レジスタでの検査信号の信号レベルについて、入力端11側からみて、iを0以上の整数として、レジスタ番号5i+1、5i+2、5i+3、5i+4、5i+5、5(i+1)+1の各レジスタについて、信号レベルの時間変化を示している。また、図6の測定例では、クロック時間tcに対して、EOFM法の測定トリガは周期T=n×tc=5×tcで与えられている。
【0062】
具体的には、図6に示すように、入力端11から5i+1番目のレジスタでは、信号長5の検査信号列「11100」の時間遅延は0であり、また、トリガ周期T=5×tcを1として規格化したときの位相遅延も0である。5i+2番目のレジスタでは、信号列の時間遅延はtcであり、位相遅延は1/5である。5i+3番目のレジスタでは、信号列の時間遅延は2×tcであり、位相遅延は2/5である。5i+4番目のレジスタでは、信号列の時間遅延は3×tcであり、位相遅延は3/5である。5i+5=5(i+1)番目のレジスタでは、信号列の時間遅延は4×tcであり、位相遅延は4/5である。5(i+1)+1番目のレジスタでは、5i+1番目のレジスタと同様に、信号列の時間遅延は0であり、位相遅延は0である。
【0063】
このような時間遅延、位相遅延を全てのレジスタについて測定することにより、スキャンチェーン15を構成する複数のレジスタを、位相遅延が0の第1グループと、位相遅延が1/5の第2グループと、位相遅延が2/5の第3グループと、位相遅延が3/5の第4グループと、位相遅延が4/5の第5グループとの5グループにグループ分けをすることができる。
【0064】
さらに、このような信号長nの検査信号列の位相遅延を用いたスキャンチェーン15の複数のレジスタのグループ分けを、第1〜第m検査信号列のそれぞれについて行う。これにより、m種類のグループ分け結果を参照して、スキャンチェーン15の複数のレジスタのそれぞれにレジスタ番号を付与することができる。
【0065】
図7は、スキャンチェーンの各レジスタに対するレジスタ番号の付与について示す図である。この図では、(a)信号長n=2の検査信号列Sを用いた測定において、レジスタ番号1〜10の各レジスタに格納される検査信号、(b)信号長n=3の検査信号列Sを用いた測定において、各レジスタに格納される検査信号、及び(c)信号長n=5の検査信号列Sを用いた測定において、各レジスタに格納される検査信号を示している。具体的には、この図7では、測定トリガが出力される直前での各レジスタ内の信号レベルの状態を示している。
【0066】
この測定例において、レジスタ番号4のレジスタを解析の対象とした場合について考えると、信号長n=2の検査信号列を用いた場合、対象レジスタでの位相遅延は1/2である。また、信号長n=3の検査信号列を用いた場合、対象レジスタでの位相遅延は0である。また、信号長n=5の検査信号列を用いた場合、対象レジスタでの位相遅延は3/5である。このような各検査信号列での位相遅延の組合せ(1/2、0、3/5)により、対象レジスタのレジスタ番号を4と特定することができる。このようなレジスタ番号の特定は、他のレジスタについても同様に行うことができる。
【0067】
ここで、上記した検査信号列を用いたスキャンチェーン15の検査、及び各レジスタへのレジスタ番号の付与において、検査に用いるm種類の検査信号列のそれぞれにおける信号長n=n〜nは、それぞれ素数として設定されることが好ましい。このように、信号長nを素数に設定することにより、信号長nの検査信号列を用いたレジスタのグループ分けによるレジスタ番号の付与を、効率的に行うことができる。
【0068】
また、m種類の検査信号列のそれぞれにおける信号長n=n〜nは、その最小公倍数がスキャンチェーン15を構成する複数のレジスタの個数よりも大きくなるように設定されることが好ましい。ここで、m種類の検査信号列を用いた場合、信号長n〜nの最小公倍数が、位相遅延の組合せによるレジスタ番号の特定が可能なレジスタの最大数となる。したがって、上記のように、信号長の最小公倍数を、レジスタの個数よりも大きく設定することにより、スキャンチェーン15を構成する複数のレジスタの全てについて、入力端11からのレジスタ番号を確実に特定、付与することができる。
【0069】
このようなレジスタ番号の特定の例として、スキャンチェーン15におけるレジスタの個数が6である場合の例を図8に示す。すなわち、図8(a)に示すように、半導体装置10のスキャンチェーン15において、入力端11から出力端12までの間に、レジスタ番号が1〜6の6個のレジスタが設けられているとする。
【0070】
このようなスキャンチェーン15に対し、信号長n=2の第1検査信号列、及び信号長n=3の第2検査信号列を適用する。このとき、信号長2、3の最小公倍数は6であり、スキャンチェーン15でのレジスタ数と等しい。このような場合、図8(b)の図表に示すように、信号長n=2の検査信号列を用いた場合の位相遅延0、1/2によるグループ分け結果と、信号長n=3の検査信号列を用いた場合の位相遅延0、1/3、2/3によるグループ分け結果とによって、スキャンチェーン15を構成する各レジスタのレジスタ番号を全て特定することができる。
【0071】
また、このような信号長の最小公倍数について考慮すると、上述したように、信号長をそれぞれ素数として設定することにより、信号長n=n〜nに対する最小公倍数を最も大きくすることができ、各レジスタへのレジスタ番号の付与を効率的に行うことができることがわかる。また、この場合、レジスタ測定等におけるノイズに対する耐性を、最も高くすることができる。
【0072】
例えば、検査信号列の種類数をm=6とし、信号長n=2、3、5、7、11、13の6種類の検査信号列を用いた場合、それらの最小公倍数の30030個のレジスタまで、設計情報無しでレジスタ番号を特定することができる。また、検査信号列の種類数をm=7とし、信号長n=2、3、5、7、11、13、17の7種類の検査信号列を用いた場合、それらの最小公倍数の510510個のレジスタまで、設計情報無しでレジスタ番号を特定することができる。
【0073】
スキャンチェーン15に供給する検査信号列の具体的な構成については、例えば、信号長nの検査信号列を、連続するk個の「1」信号、及び連続するn−k個の「0」信号によって構成する方法を用いることができる。このような構成によれば、スキャンチェーン15の各レジスタでの検査信号の信号レベルの時間変化の遅延量を好適に測定することができる。このときの信号数kは、1以上n−1以下の整数である。
【0074】
また、この場合、上記した信号長n=2、3、5の検査信号列「10」、「110」、「11100」によって例示したように、信号長nの検査信号列は、「1」信号の個数kが、n/2に最も近くなるように設定されることが好ましい。これにより、各レジスタでの信号レベルの時間変化の遅延量の測定のS/N特性を向上することができ、レジスタ番号の特定を精度良く実行することが可能となる。
【0075】
ここで、上記においては、検査解析装置50のレジスタ番号解析部51によるレジスタ番号の付与について主に説明したが、半導体装置10に設けられたスキャンチェーン15の検査では、さらに必要に応じて、不良解析部52による不良箇所の特定を実行することができる。すなわち、スキャンチェーン15に不良が発生した場合、不良箇所よりも後のスキャンチェーン部分は一定の信号しか送らないようになり、その部分についてはレジスタ番号を付与することができない。
【0076】
この場合、逆に、レジスタ番号を正常に付与することができるレジスタのうちで、最も大きい番号が付与されたレジスタ、もしくはその後ろの配線、もしくは次のレジスタにおいて、スキャンチェーンが不良を起こしていると推定することができる。したがって、このような測定、解析手法を用いることにより、スキャンチェーンにおける不良の発生箇所を絞り込むことが可能である。
【0077】
具体的には、例えば、スキャンチェーン15を有するLSIなどの半導体装置10であって、スキャンチェーン15の出力端12からの出力が、「1」信号または「0」信号で固定を示す不良を有するものを検査対象とする。そして、EOFM法を用いて取得された特定周波数で動作している回路のマッピング像により、スキャンチェーン15のうちで、正常に動作しているスキャンチェーン部分と、動作していないスキャンチェーン部分との両者の領域を弁別する。EOFM法では、スイッチングの有無によって、これらの領域を弁別することが可能である。
【0078】
スキャンチェーン15における不良箇所は、弁別された動作している領域と動作していない領域との境界にあることが推測されるため、この境界部分を含む所定範囲のスキャンチェーンを構成するシフトレジスタに対して、上記した測定、解析手法を適用する。すなわち、レジスタ番号の付与に関して上述したものと同様の手順で測定、解析を行い、動作していない領域周辺で最大の番号が付与されたレジスタを特定する。そして、最大の番号が付与されたレジスタと、その次のレジスタとを、レイアウトデータ(例えば、GDSデータ)上で明示する。この場合、これらの2個のレジスタのいずれか、もしくは2個のレジスタを接続するライン上に不良箇所が存在すると推定することができる。
【0079】
なお、このような不良解析の結果を表示する場合、解析ソフトウェアの機能として、表示画面内において、上記したように最大の番号が付与されたレジスタをハイライト表示する機能を有することが好ましい。また、GDS等のマスクデータを使用し、最大の番号が付与されたレジスタとその次のレジスタ、及びその間をつなぐ配線をハイライト表示する機能を有していても良い。
【0080】
図9は、スキャンチェーン検査装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態によるスキャンチェーン検査装置1Bは、検査信号供給部18と、レジスタ測定部30と、検査解析装置50と、表示装置56と、入力装置57とを備えて構成されている。これらのうち、検査信号供給部18、検査解析装置50、表示装置56、及び入力装置57の構成については、図1に示した構成と同様である。
【0081】
レジスタ測定部30は、半導体装置10に設けられたスキャンチェーン15を構成する複数のレジスタのそれぞれに保持された検査信号の信号レベルの時間変化を測定する。本実施形態によるレジスタ測定部30は、時間位置分解カメラ35、及び時間位置演算部36を有し、時間分解発光計測法によって各レジスタでの信号レベルの時間変化を測定する時間分解発光顕微鏡として構成されている(特許文献2、3参照)。
【0082】
検査対象の半導体装置10は、暗箱31内に設置されたステージ32上に載置されている。また、このステージ32上の半導体装置10に対し、対物レンズ33、及び結像レンズ34を介して、時間位置分解カメラ35が設けられている。また、時間位置分解カメラ35で取得された半導体装置10の画像に対し、時間位置演算部36において必要な演算が行われ、これによって、時間分解発光計測が実行される。
【0083】
ここで、時間分解発光計測法では、EOFM法とは異なり、レジスタに格納されている検査信号の信号レベルが0から1、または1から0に切り替わるときに、発光量が優勢となる。したがって、各レジスタでの信号レベルの時間変化の測定において、時間分解発光計測法等を用いる場合には、スキャンチェーン15へと供給する信号長nの検査信号列について、2個の検査信号からなる信号群を1個の検査信号とみなし、EOFM法の場合と比べて、検査信号列の信号数を2倍にすることが好ましい。
【0084】
具体的には、時間分解発光計測法を用いた検査では、EOFM法での「1」信号に対応する信号群を、スイッチング発光が多く観測される「10」信号または「01」信号とする。また、EOFM法での「0」信号に対応する信号群を、スイッチング発光が観測されない「11」信号または「00」信号とする。これにより、時間分解発光計測法を用いた場合でも、EOFM法を用いた場合と同様に、スキャンチェーンの検査を好適に行うことができる。
【0085】
図10は、時間分解発光計測法を用いた場合における、検査信号列によるスキャンチェーンの検査について示すタイミングチャートである。ここでは、EOFM法において信号長をn=3とした図5のタイミングチャートに対応する測定例を示している。図10における信号長は、EOFM法の場合の2倍のn=6であるが、上記したように2個の検査信号からなる信号群を1個の検査信号とみなすと、実質的な信号長はn=3である。
【0086】
また、図10のタイミングチャートでは、(a)検査信号供給部18を動作させる外部クロック、(b)レジスタ測定部30において各レジスタでの検査信号の信号レベルの時間変化を測定するための測定トリガ、(c)レジスタ1に格納されている検査信号の信号レベル、(d)レジスタ1の発光タイミング、(e)レジスタ2に格納されている検査信号の信号レベル、(f)レジスタ2の発光タイミング、(g)レジスタ3に格納されている検査信号の信号レベル、及び(h)レジスタ3の発光タイミングを示している。
【0087】
図10の測定例では、検査信号列の実質的な信号長がn=3に設定されていることに対応して、検査信号供給の2クロックの時間tcに対して、時間分解発光計測法の測定トリガは、トリガ周期T=n×tc=3×tcで与えられている。また、スキャンチェーン15に供給される検査信号列では、EOFM法での「1」信号に対応する信号群を「10」信号とし、「0」信号に対応する信号群を「00」信号としている。また、このような信号列に対し、各レジスタでの発光は、そのレジスタに格納されている検査信号の信号レベルが切り替わるときに発生している。
【0088】
実質的な信号長がn=3以外の場合についても、同様の方法を適用することが可能である。例えば、実質的な信号長がn=2の場合、検査信号列は「1000」となる。また、実質的な信号長がn=3の場合、検査信号列は図10に示したように「101000」となる。また、実質的な信号長がn=5の場合、検査信号列は「1010100000」となる。なお、これらの検査信号列、及び時間分解発光計測法を用いた場合の各レジスタでの時間遅延、位相遅延の取得、レジスタ番号の付与、不良箇所の特定等については、EOFM法に関して上述した方法と基本的には同様である。
【0089】
本発明によるスキャンチェーン検査装置、及びスキャンチェーン検査方法は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、レジスタ測定手段等を含む検査装置の具体的な構成については、図1、図9に示した実施形態の構成に限らず、具体的には様々な構成を用いて良い。また、レジスタ測定手段における各レジスタの信号レベルの時間変化の測定については、上述したEOFM法、及び時間分解発光計測法以外にも、回路のスイッチングを検出することで信号レベルの時間変化を測定することが可能な他の方法、装置を用いても良い。
【0090】
また、検査信号列の信号長、または実質的な信号長については、上記した構成例では、信号長を素数に設定した場合について主に説明したが、信号長を素数以外に設定した場合でも、同様の方法でレジスタ番号の付与、不良箇所の特定等の解析を実行することが可能である。また、検査信号列における具体的な検査信号の配列、組合せについても、上記した例に限らず、具体的には様々な信号列を用いて良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、半導体装置の設計情報等がない場合でも、スキャンチェーンについての検査を好適に行うことが可能なスキャンチェーン検査装置、及びスキャンチェーン検査方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1A、1B…スキャンチェーン検査装置、10…半導体装置(半導体集積回路)、11…入力端、12…出力端、13…内部回路、15…スキャンチェーン、18…検査信号供給部、
20、30…レジスタ測定部、21、31…暗箱、22、32…ステージ、23、33…対物レンズ、24…レーザスキャン光学系、25…レーザ光源、26…レーザスキャンコントローラ、27…光検出器、28…ロックインアンプ、34…結像レンズ、35…時間位置分解カメラ、36…時間位置演算部、
50…検査解析装置、51…レジスタ番号解析部、52…不良解析部、55…検査制御部、56…表示装置、57…入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置に設けられ、入力端と出力端との間で複数のレジスタが直列に接続されたスキャンチェーンについて検査を行う検査装置であって、
前記スキャンチェーンに対して前記入力端から、「1」及び「0」の2つの信号レベルを有する信号を検査信号として時系列に供給する検査信号供給手段と、
前記スキャンチェーンを構成する前記複数のレジスタのそれぞれに保持された前記検査信号の信号レベルの時間変化を測定するレジスタ測定手段と、
前記レジスタ測定手段による測定結果に基づいて、前記複数のレジスタについての検査を行う検査解析手段とを備え、
前記検査解析手段は、前記複数のレジスタのそれぞれについて、前記入力端から前記出力端までのレジスタ配列内での位置を示すレジスタ番号を付与するレジスタ番号解析手段を有し、
前記検査信号供給手段は、「1」信号、及び「0」信号を少なくとも1つずつ含む信号長n(nは2以上の整数)の検査信号によって検査信号列を構成し、前記信号長nが互いに異なるm種類(mは2以上の整数)の検査信号列を前記スキャンチェーンに対して供給するとともに、
前記レジスタ番号解析手段は、
前記信号長n=nの第1検査信号列を前記スキャンチェーンに繰り返して供給したときの前記レジスタ測定手段による測定結果を参照し、前記信号レベルの時間変化の遅延量から前記複数のレジスタをn個のグループに分ける第1のグループ分けを行い、
このような前記複数のレジスタのグループ分けを前記m種類の検査信号列のそれぞれについて行うとともに、得られたm種類のグループ分け結果に基づいて、前記複数のレジスタのそれぞれに前記レジスタ番号を付与する
ことを特徴とするスキャンチェーン検査装置。
【請求項2】
前記m種類の検査信号列のそれぞれにおける前記信号長n=n〜nは、それぞれ素数として設定されることを特徴とする請求項1記載のスキャンチェーン検査装置。
【請求項3】
前記m種類の検査信号列のそれぞれにおける前記信号長n=n〜nは、その最小公倍数が前記スキャンチェーンを構成する前記複数のレジスタの個数よりも大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1または2記載のスキャンチェーン検査装置。
【請求項4】
前記信号長nの前記検査信号列は、連続するk個の「1」信号、及び連続するn−k個の「0」信号によって構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のスキャンチェーン検査装置。
【請求項5】
前記信号長nの前記検査信号列は、「1」信号の個数kが、n/2に最も近くなるように設定されることを特徴とする請求項4記載のスキャンチェーン検査装置。
【請求項6】
前記信号長nの前記検査信号列は、2個の検査信号からなる信号群を1個の検査信号とみなし、「1」信号に対応する信号群を「10」信号または「01」信号とし、「0」信号に対応する信号群を「11」信号または「00」信号として設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のスキャンチェーン検査装置。
【請求項7】
前記検査解析手段は、前記レジスタ測定手段による測定結果、及び前記レジスタ番号解析手段による解析結果に基づいて、前記スキャンチェーンにおける不良箇所を特定する不良解析手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のスキャンチェーン検査装置。
【請求項8】
半導体装置に設けられ、入力端と出力端との間で複数のレジスタが直列に接続されたスキャンチェーンについて検査を行う検査方法であって、
前記スキャンチェーンに対して前記入力端から、「1」及び「0」の2つの信号レベルを有する信号を検査信号として時系列に供給する検査信号供給ステップと、
前記スキャンチェーンを構成する前記複数のレジスタのそれぞれに保持された前記検査信号の信号レベルの時間変化を測定するレジスタ測定ステップと、
前記レジスタ測定ステップによる測定結果に基づいて、前記複数のレジスタについての検査を行う検査解析ステップとを備え、
前記検査解析ステップは、前記複数のレジスタのそれぞれについて、前記入力端から前記出力端までのレジスタ配列内での位置を示すレジスタ番号を付与するレジスタ番号解析ステップを含み、
前記検査信号供給ステップは、「1」信号、及び「0」信号を少なくとも1つずつ含む信号長n(nは2以上の整数)の検査信号によって検査信号列を構成し、前記信号長nが互いに異なるm種類(mは2以上の整数)の検査信号列を前記スキャンチェーンに対して供給するとともに、
前記レジスタ番号解析ステップは、
前記信号長n=nの第1検査信号列を前記スキャンチェーンに繰り返して供給したときの前記レジスタ測定ステップによる測定結果を参照し、前記信号レベルの時間変化の遅延量から前記複数のレジスタをn個のグループに分ける第1のグループ分けを行い、
このような前記複数のレジスタのグループ分けを前記m種類の検査信号列のそれぞれについて行うとともに、得られたm種類のグループ分け結果に基づいて、前記複数のレジスタのそれぞれに前記レジスタ番号を付与する
ことを特徴とするスキャンチェーン検査方法。
【請求項9】
前記m種類の検査信号列のそれぞれにおける前記信号長n=n〜nは、それぞれ素数として設定されることを特徴とする請求項8記載のスキャンチェーン検査方法。
【請求項10】
前記m種類の検査信号列のそれぞれにおける前記信号長n=n〜nは、その最小公倍数が前記スキャンチェーンを構成する前記複数のレジスタの個数よりも大きくなるように設定されることを特徴とする請求項8または9記載のスキャンチェーン検査方法。
【請求項11】
前記信号長nの前記検査信号列は、連続するk個の「1」信号、及び連続するn−k個の「0」信号によって構成されることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項記載のスキャンチェーン検査方法。
【請求項12】
前記信号長nの前記検査信号列は、「1」信号の個数kが、n/2に最も近くなるように設定されることを特徴とする請求項11記載のスキャンチェーン検査方法。
【請求項13】
前記信号長nの前記検査信号列は、2個の検査信号からなる信号群を1個の検査信号とみなし、「1」信号に対応する信号群を「10」信号または「01」信号とし、「0」信号に対応する信号群を「11」信号または「00」信号として設定されることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項記載のスキャンチェーン検査方法。
【請求項14】
前記検査解析ステップは、前記レジスタ測定ステップによる測定結果、及び前記レジスタ番号解析ステップによる解析結果に基づいて、前記スキャンチェーンにおける不良箇所を特定する不良解析ステップを含むことを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項記載のスキャンチェーン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88318(P2013−88318A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229908(P2011−229908)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】