説明

スピーカ、および、それを備える電子機器

【課題】細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカを提供することを目的とする。
【解決手段】長尺状の平板で構成される振動板11と、振動板11の長手方向の端部に配置され、振動板11を振動可能に支持するエッジ12と、振動板11の振動振幅の2倍以上の高さを有する略角筒形状で構成され、開口部周縁が振動板11と直接的に接続されており、振動板11を支持し、かつ、振動板11に振動を伝えるための少なくとも1つのボイスコイルボビン14と、ボイスコイルボビン14の高さ方向の略中央部の外周上に巻き線されているボイスコイル15と、ボイスコイル15を駆動させるための磁気回路21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカおよびそれを備える電子機器に関し、特に、スリム化および薄型化を図るスピーカおよびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイビジョンおよびワイドビジョンテレビ等の普及により、テレビの画面は横長で大型のものが一般的になりつつある。その一方では、日本国の住宅事情から、テレビセット全体として狭幅かつ薄型のものが望まれている。
【0003】
テレビ用のスピーカユニット(以下、スピーカと呼ぶ)は、通常ブラウン管などテレビの表示面の両脇に取り付けられるので、テレビセットの横幅を大きくする一因となっている。そのため、従来、テレビ用のスピーカとして角型または楕円型等の細長構造のスピーカが用いられてきた(例えば特許文献1)。また、ブラウン管などテレビの表示面の横長化により、スピーカの横幅にはますます狭幅化が要求されているとともに、表示画面の高画質化に対応した音声の高音質化もスピーカに要求されている。また、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイを用いた薄型テレビが増加していることから、スピーカに対し薄型化がさらに要求されている。
【0004】
以下、特許文献1に開示される従来の細長型(スリム型)のスピーカについて図を参照しながら説明する。図24A〜図24Cは、従来のスリム型スピーカの構造を示す図である。図24Aは従来のスリム型スピーカの平面図を示しており、図24Bは従来のスリム型スピーカの長手方向(C−C’)に関する断面図を示しており、図24Cは短手方向(O−O’)に関する断面図を示している。
【0005】
図24A〜図24Cに示すスリム型スピーカは、マグネット801、プレート802、ヨーク803、フレーム804、ボイスコイルボビン805、ボイスコイル806、ダンパー807、振動板809、ダストキャップ810、およびエッジ811を備えている。また、このスリム型スピーカは、マグネット801とプレート802とヨーク803とで磁気ギャップ808を構成している。
【0006】
ボイスコイル806は、銅またはアルミ等の導体の巻き線で構成されている。ボイスコイル806は、円筒形状のボイスコイルボビン805に固着される。換言すると、ボイスコイル806は、磁気ギャップ808中に吊り下げるようにボイスコイルボビン805により支持されている。
【0007】
ボイスコイルボビン805は、ダンパー807を介してフレーム804に接続されている。また、ボイスコイルボビン805は、ボイスコイル806が固着される側の反対側において、振動板809に接着されている。
【0008】
振動板809は、楕円または略楕円形状であり、振動板809の中央部には、断面が略半円形状であるダストキャップ810が固着されている。
【0009】
エッジ811は、環状の形状でかつ断面が半円形状であり、エッジ811の内周部が振動板809の外周部に固定されている。また、エッジ811の外周部はフレーム804に固着される。
【0010】
次に、このように構成された図24A〜図24Cに示すスピーカを駆動させる場合について説明する。すなわち、まず、ボイスコイル806に電流が印可される。すると、ボイスコイル806に印可される駆動電流およびボイスコイル806の周りの磁界によってボイスコイルボビン805はピストン運動を行う。それにより、振動板809が上記ピストン運動の方向に振動し、その結果、振動板809から音波が放射される。
【0011】
図25は、特許文献1に記載のスピーカの再生音圧レベルに関する周波数特性を示す図である。なお、図25において、縦軸は、このスピーカに1Wの電力を入力したときの再生音圧レベルを示しており、横軸は駆動周波数を示している。また、再生音圧レベルは、スピーカの中心軸上であってスピーカから正面側に1[m]離れた位置にマイクが配置されて測定されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−32659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来のスピーカには次のような問題点がある。すなわち、図24A〜図24Cに示すスピーカでは、細長の振動板809の中央部分を駆動する駆動方法であるため、長手方向に関して分割共振が発生し易く、結果として、再生音圧レベルに関する周波数特性は、中高域にピーク・ディップを生じる特性を示してしまう。つまり、上記従来のスピーカでは、長手方向に関して分割共振が発生してしまい音質の劣化を招いていた。これは、図25に示すように、駆動周波数2kHz(図中、Aの位置)、駆動周波数3kHz(図中、Bの位置)および駆動周波数5kHz(図中、Cの位置)付近に顕著なディップ(ピークディップ)が見られることからもわかる。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものあって、長尺構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカおよびそれを備える電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の第1局面におけるスピーカは、長尺状の平板で構成される振動板と、前記振動板の長手方向の端部に配置され、前記振動板を振動可能に支持するエッジと、前記振動板の振動振幅の2倍以上の高さを有する略角筒形状で構成され、開口部周縁が前記振動板と直接的に接続されており、前記振動板を支持し、かつ、前記振動板に振動を伝えるための少なくとも1つのボイスコイルボビンと、前記ボイスコイルボビンの高さ方向の略中央部の外周上に巻き線されているボイスコイルと、前記ボイスコイルを駆動させるための磁気回路と、を備える。
【0016】
この構成によれば、エッジを振動板の短手方向に構成しないため、非常に細長いスピーカを構成することができる。それにより、細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカを実現できる。
【0017】
また、第2の局面におけるスピーカとして、前記磁気回路は、内磁形の磁気回路であって、中央部に凹部を有するヨークと、前記ヨークの前記凹部の底面に配置されるマグネットと、前記ヨークの前記凹部に配置され、前記マグネットの上面に固着される直方体形状のプレートと、前記プレート、前記マグネットおよび前記ヨークの中心部を貫通する貫通孔と、前記ボイスコイルボビンの内壁と前記プレートの外周面との間の磁気ギャップ内側部と、前記磁気ギャップ内側部を塞ぐように配置された磁気吸着性を有する液体である磁性流体とを備え、前記磁性流体は、前記振動板と前記ボイスコイルボビンとで囲まれる空間において、前記振動板が発生する音の前記貫通孔以外での通過を遮断するとしてもよい。
【0018】
この構成によれば、スピーカが音を再生する際でも、ボイスコイルボビンが磁気ギャップ内側部から飛び出すことがなく空気遮断を維持することができるとともに、乖離再突入移動に伴う磁性流体のかき出しを防止することができる。つまり、スピーカは、振動板の振動の状態にかかわらず、磁性流体が飛散することなく安定した状態を保つことができる。
【0019】
また、第3の局面におけるスピーカとして、前記ヨークは、短手方向の断面においては凹状の形状で構成され、前記スピーカの背面方向からみて、前記プレートの長手方向の辺に対向する辺が略円弧状であり、前記長手方向の中央部の短手方向の幅が前記長手方向の端部の短手方向の幅に比べて広く、前記ヨークは、前記スピーカの背面方向からみて、前記プレートの前記長手方向の辺と、前記対向する辺とで前記磁気ギャップ内側部を含む磁気ギャップを形成するとしてもよい。
【0020】
この構成により、磁性流体の圧力によるボイスコイルボビン形状変化に対応した磁気回路により能率の低下を防ぐことができる。
【0021】
また、第4の局面におけるスピーカとして、前記磁気回路は、外磁形の磁気回路であって、センターポールを有する逆T字形状のヨークと、前記センターポールの外側に配置されたマグネットと、前記センターポールの外側に配置され、前記マグネットの上面に固着されるプレートと、前記センターポールの中心部を貫通する貫通孔と、前記ボイスコイルボビンの内壁と前記センターポールの外周面との間の磁気ギャップ内側部と、前記磁気ギャップ内側部を塞ぐように配置された磁気吸着性を有する液体である磁性流体と、を備え、前記磁性流体は、前記振動板と前記ボイスコイルボビンとで囲まれる空間において、前記振動板が発生する音の前記貫通孔以外での通過を遮断するとしてもよい。
【0022】
この構成によれば、スピーカが音を再生する際でも、ボイスコイルボビンが磁気ギャップ内側部から飛び出すことがなく空気遮断を維持することができるとともに、乖離再突入移動に伴う磁性流体のかき出しを防止することができる。つまり、スピーカは、振動板の振動の状態にかかわらず、磁性流体が飛散することなく安定した状態を保つことができる。
【0023】
また、第5の局面におけるスピーカとして、前記プレートは、前記スピーカの背面方向からみて、前記センターポールに対向する長手方向の辺が略円弧状であり、前記長手方向の辺の中央部は端部に比べ幅が広いとしてもよい。
【0024】
この構成により、磁性流体の圧力によるボイスコイルボビン形状変化に対応した磁気回路により能率の低下を防ぐことができる。
【0025】
また、第6の局面におけるスピーカとして、前記振動板は、略平面形状であり、当該振動板の長手方向の面上に連続する凹凸からなる複数個の補強リブが設けられているとしてもよい。
【0026】
この構成によれば、振動板の短手方向の剛性を高くして共振を抑制することができる。
【0027】
また、第7の局面におけるスピーカとして、前記エッジは、ロール形状に構成されており、ロール頂部はロール基部に比べて薄く形成され、前記ロール頂部から前記ロール基部にかけて厚くなるように形成されているとしてもよい。
【0028】
また、第8の局面におけるスピーカとして、前記振動板は、長手方向の長さを1とした場合に短手方法の長さは0.5以下となるよう形成されているとしてもよい。
【0029】
また、第9の局面におけるスピーカとして、前記スピーカは、一方の端部が前記振動板に垂直に固着された連結部材と、一方の端部が前記連結部材の他方の端部に接続され、他方の端部が前記スピーカのフレームに接続されているダンパーとを備え、前記ボイスコイルは、前記振動板を介して、前記連結部材および前記ダンパーにより前記フレームに支持されるとしてもよい。
【0030】
ダンパーとエッジによる安定した支持構造体を有し、大振幅時のローリングの発生を防止することができる。
【0031】
また、第10の局面におけるスピーカとして、前記連結部材は、前記貫通孔を介して、前記振動板と前記ダンパーの前記一方の端部と連結するとしてもよい。
【0032】
また、上記目的を達成するために、本発明の第11の局面における電子機器は、第1の局面から第10の局面のいずれかに記載のスピーカを備える。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカおよびそれを備える電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1のスピーカの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1のスピーカの構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1のスピーカの構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1のスピーカの構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1のスピーカを構成するボイスコイルボビンを示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1のスピーカを構成するボイスコイルを示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1のスピーカを構成するスピーカ振動板を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1のスピーカを構成する磁気回路を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1のスピーカを構成する振動板の一例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1の変形例におけるスピーカの構成を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態1の変形例におけるスピーカの構成を示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態1の変形例におけるスピーカの構成を示す図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態1の変形例におけるスピーカの構成を示す図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態2におけるスピーカの構成を示す図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態2におけるスピーカの構成を示す図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態2におけるスピーカの構成を示す図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態2におけるスピーカを構成する部品を示す図である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態2におけるスピーカを構成する部品を示す図である。
【図19】図19は、本発明の実施の形態2の変形例におけるスピーカの構成を示す図である。
【図20】図20は、実施の形態3のスピーカを構成する磁気回路を示す斜視図である。
【図21】図21は、実施の形態3のスピーカを構成する磁気回路を示す平面図である。
【図22】図22は、実施の形態3のスピーカを構成するヨーク34を示す平面図である。
【図23】図23は、本発明のスピーカを用いた表示装置の一例を示す図である。
【図24A】図24Aは、従来のスリム型スピーカの構造を示す図である。
【図24B】図24Bは、従来のスリム型スピーカの構造を示す図である。
【図24C】図24Cは、従来のスリム型スピーカの構造を示す図である。
【図25】図25は、特許文献1に記載のスピーカの再生音圧レベルに関する周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係るスピーカについて説明する。なお、図1〜図22において、同じ機能の構成要素については同一番号を付け説明を省略する。
【0036】
図1〜図4は、本発明の実施の形態1におけるスピーカの構成を示す図である。図1は、本実施の形態に係るスピーカの構成を裏側(背面方向とも称する)からみた状態の斜視図を示している。図2は、本実施の形態に係るスピーカの構成を表側(正面方向とも称する)からみた状態の斜視図を示している。図3は図1に示すスピーカのA−a断面図を示し、図4は図1に示すスピーカのB−b断面図を示している。また、図5〜図8はそれぞれ、図1に示スピーカを構成する部品を示す図である。図5はボイスコイルボビンを示しており、図6はボイスコイルを、図7は振動板を、図8は磁気回路を示している。
【0037】
図1〜図4に示すスピーカ1は、振動板11と、ロールエッジ12と、フレーム13と、ボイスコイルボビン14と、ボイスコイル15と、プレート16、マグネット17およびヨーク18を有する磁気回路21とを備えている。スピーカ1は、縦方向(長手方向)と横方向(短手方向)との長さが異なる長尺状に構成されている。例えば、スピーカ1は、縦方向(長手方向)が横方向(短手方向)に比べ2倍以上長い細長形状で構成される。このスピーカ1は、図1〜図4に示す正面方向から音を放出する。
【0038】
以下、スピーカ全体の構成を図1から図8を用いて説明する。
【0039】
振動板11は、長尺状の平板で構成される平面振動板である。また、振動板11は、紙、アルミまたはポリイミド等の薄いシート材で構成される。例えば、振動板11は、縦方向(長手方向)と横方向(短手方向)との長さが異なる細長形状であり、縦方向(長手方向)と横(短手方向)の長さの比は2:1以上である。また、振動板11は、長手方向の両端部にロールエッジ12が固着される。一方、振動板11は、短手方向の両端部にはロールエッジ12等は固着されない。この構成により、振動板11は、ロールエッジ12により、振動可能に支持される。また、短手方向にロールエッジ12を配置しないのでロールエッジ12のロール幅が必要ない。つまり、ロールエッジ12を配置しない分だけスピーカ1を細くスリムに構成することができる。また、振動板11は、表側(正面方向)の外周部11aの全体にボイスコイルボビン14が固着されている。これらの構成により、振動板11は、長手方向全体に駆動力が加わることになる。なお、振動板11では、図3に示すように、外周部11aがコの字型に形成されているのが好ましい。そうすることにより、ボイスコイルボビン14との固着がより堅固となるからである。
【0040】
ボイスコイルボビン14は、振動板11の振動振幅の2倍以上の高さを有する略角筒形状で構成され、開口部周縁が振動板11と直接的に接続されている。ボイスコイルボビン14は、振動板11を支持し、かつ、振動板11に振動を伝える。
【0041】
具体的には、ボイスコイルボビン14は、図5に示すように、振動板11の最大振幅の2倍以上の高さhを有しており、長手方向の面が開口されている長尺状の略四角筒形状で構成される。ボイスコイルボビン14は、例えば、ポリイミド等の高分子フィルムまたはアルミの薄いシート材料で構成される。また、ボイスコイルボビン14は、高さ方向の中心位置(h/2付近)にボイスコイル15が巻き線されている。また、ボイスコイルボビン14は、図3および図4に示すように片側端部(開口部周縁)には振動板11が固着されて、振動板11を支持するとともに、振動を振動板11に伝える。
【0042】
ボイスコイル15は、ボイスコイルボビン14の高さ方向の略中央部の外周上に巻き線される。具体的には、ボイスコイル15は、音声電流を、振動に変える役割を果たすものであり、図6に示すようにボイスコイルボビン14の高さ方向の中心位置に巻き線される。また、ボイスコイル15は、例えば、銅やアルミ材料で構成される線材からなる。
【0043】
ロールエッジ12は、振動板11の長手方向の端部に配置され、振動板11を振動可能に支持するエッジである。具体的には、ロールエッジ12は、図1および図3に示すように、断面が半円状のロール形状で構成されている。ロールエッジ12は、一方の端部が振動板11の長手方向の終端部に固着され、反対側の端部がフレーム13に固着されることで、ボイスコイル15が振動可能(振動板11が振動可能)となるように振動板11を支持する。
【0044】
ここで、ロールエッジ12のエッジ材料と断面厚さ形状について説明する。ロールエッジ12は、材料として発泡ゴム材料やソリッドゴム、高分子材料用いて射出成型したものが好ましい。ロールエッジ12がこれら材料で構成される場合には、その厚みを自由に変化させることができるので、ロールエッジ12は、ロールの頂部を薄く基部を厚くなるよう構成されていることが望ましい。換言すると、ロールエッジ12は、ロール形状に構成されており、ロール頂部はロール基部に比べて薄く形成され、ロール頂部からロール基部にかけて厚くなるように形成されているのが好ましい。ロールエッジ12がこのように形成されると、振動板11の振幅の小さな状態では頂部が変形するため、柔らかく動き、振動板11の大振幅時には基部の変形により段々に硬くなるというソフトクリップ支持系を構成することができるからである。つまり、振動板11の最大振幅時でも、ロールエッジ12が振動板11を急激に突っ張ることなく、振動板11に所望の動作(最大振幅動作)を実現することができる優れた支持系を実現できるからである。
【0045】
磁気回路21は、ボイスコイル15を駆動させるための回路である。換言すると、磁気回路21は、ボイスコイル15を駆動されるための駆動力を発生する。磁気回路21はボイスコイル15と相似形状である長尺形状(ここでは細長形状)で構成され、図4および図8に示すように、プレート16、マグネット17、ヨーク18、貫通孔19、および磁気ギャップ22を有している。また、図4およびお図8に示すように、磁気回路21は、マグネット17がヨーク18の内側に構成される内磁型磁気回路である。
【0046】
ヨーク18は、磁石を接着(固定)している部品であり、短手方向における断面が略U字形状すなわち中央部に凹部を有するよう構成されている。マグネット17は、ヨーク18の凹部の底面に固着(配置)されている。プレート16は、直方体形状であり、ヨーク18の凹部にマグネット17の上面に固着(配置)されている。
【0047】
貫通孔19は、プレート16、マグネット17およびヨーク18の中心部を貫通するよう設けられている。貫通孔19は、振動板11で発生する音をスピーカの表面(正面方向)に導く働きをする。
【0048】
磁気ギャップ22は、プレート16とヨーク18の凹部内壁との隙間(間隔)である磁気ギャップ内側部を含むプレート16とヨーク18との間の隙間(間隔)であり、磁束を集中して発生させるための隙間(間隔)である。また、磁気ギャップ22はボイスコイル15と相似形状に構成されているため、図8に示すように、背面方向からみて、長手方向に2本の長い直線状となっている。
【0049】
磁気ギャップ内側部は、ボイスコイルボビン14の内壁とプレート16の外側との隙間(間隔)である。そして、この磁気ギャップ内側部に磁力で吸着される磁性流体20が充填されることで、振動板11の発生する音を内側と外側で遮断する。
【0050】
磁性流体20は、磁力で吸着される特性である磁気吸着性を有する液体であり、磁気ギャップ内側部を塞ぐように充填(配置)されている。それにより、磁性流体20は、振動板11とボイスコイルボビン14の内壁とで囲まれる空間において、振動板11が発生する音の貫通孔19以外での通過を遮断する。つまり、振動板11の発生する音を内側と外側で遮断する。
【0051】
以上のようにスピーカ1は、構成される。
【0052】
次に、以上のように構成されたスピーカ1の効果について説明する。
【0053】
まず、スピーカ1の振動系について説明する。すなわち、ボイスコイル15に電流を印可する。すると、ボイスコイル15は、印可された電流および磁気回路21による磁界によって駆動力が発生し、ボイスコイルボビン14を介して振動板11を振動させる。つまり、ボイスコイル15は、発生した駆動力によって振動板11を振動させ、振動板11の振動により発生した音が空間に放射される。
【0054】
ここで、一般的に、薄いシートからなる平板振動板を1点のみで中心駆動した場合には、数多くの共振が誘起され、音圧周波数特性はピークやディップの多い特性となってしまう。特に、平板振動板が細長い形状で、薄いフィルムの材料で構成されている場合には長手方向においては低い周波数から多くの共振が発生してしまう。
【0055】
それに対して、本発明では、振動板11の外周部全体にボイスコイルボビン14が固着されているため長手方向全体に駆動力が加わる。このため長手方向の共振モードを全て抑制することができるという効果を奏する。
【0056】
また、振動板11の短手方向は長手方向に対し長さが半分以下である。そのため共振周波数は長手方向に比べ高い周波数となる。このように非常に細長い振動板11では長手方向に全面駆動することで使用帯域を高い周波数にまで拡大することができるという効果を奏する。
【0057】
次に、スピーカ1の支持系について説明する。
【0058】
まず、スピーカ1がロールエッジ12を備えることより奏する効果について説明する。
【0059】
一般的に、エッジの役割は、振動板がピストン振動可能なように支持することと、振動板の前後の空気を遮断することである。
【0060】
スピーカ1では、上述したように、ロールエッジ12が振動板11の長手方向の端部のみに固着されている。つまり、ロールエッジ12は、振動板11の長手方向の両端部に配置(固着)されて、振動板11を振動可能なように支持する。
【0061】
この構成により、スピーカ1では、振動板全周をエッジで支持する一般的なスピーカの場合に比べると、スチフネスを小さくすることができる。なお、振動板全周をエッジで支持した場合にスチフネスが高くなる理由は、次の通りである。すなわち、スチフネスがエッジ周長に比例することと振動板のコーナー部でエッジ内側と外側とで周長が異なるためである。つまり、エッジは、その周長が異なると、振動板がピストン振動の際に材料収縮を伴う動作を必要とし、この収縮動作に多大な力を必要とするためスチフネスが高くなる。
【0062】
このように、本実施の形態1のスピーカではエッジ周長が短いことと、全周でつながっていないために内周と外周の周長差がないためにスチフネスを小さくすることができる。つまり、スピーカ1ではロールエッジ12を備えることにより、スピーカ1の最低共振周波数を小さくすることができるという効果を奏する。
【0063】
続いて、スピーカ1がロールエッジ12を備えていてもエッジのもう一つの役割である振動板11前後の空気を遮断することができることについて説明する。
【0064】
スピーカ1では、上述したように、ボイスコイルボビン14の内側(内壁)とプレート16の外周との隙間(磁気ギャップ内側部)に磁性流体20が充填されている。そして、この磁性流体20は、ボイスコイル15と磁気回路21との接触を防ぐ働きをする。また、この磁性流体20は、振動板11の発生する音を内側と外側とで遮断する。
【0065】
つまり、スピーカ1では、上記のように構成されるためロールエッジ12を振動板11の全周に配置して振動板11の前後の空気を遮断する必要がない。
【0066】
したがって、本発明のスピーカ1では、上記のように磁性流体20を備えることによって振動板11の前後の空気遮断をする効果を奏することができるとともに、ロールエッジ12を備えることによりスチフネスを小さくすることができる。それにより、スピーカ1は、優れた低音再生特性を得ることができる。
【0067】
次に、ボイスコイルボビン14の高さと振動振幅の関係について説明する。
【0068】
スピーカ1では、ボイスコイルボビン14の高さhは、振動板11の最大の振動振幅(最大振幅)の2倍以上としている。振動振幅は、再生する音の周波数に応じて変化する。
【0069】
例えば、スピーカ1が口径8cm相当のスピーカであり、低域100HZまで、かつ、最大音圧レベル87dB/mに対応できるとすると、振動板11の最大振幅は+−4mmである。この場合、ボイスコイルボビン14は、8mm以上の高さhで構成されることになる。なお、ボイスコイルボビン14は、振動板11における通常振幅余裕を考慮すれば10mmの高さhで構成されることが望ましい。
【0070】
実際には、振動板11の最大振幅は、スピーカ1を構成する部品(ロールエッジ12)により決定されることになる。そのため、振動板11の最大振幅を、スピーカ1を構成する部品の物理的な限界値から設定することになる。
【0071】
具体的には、振動板11は、その最大振幅をロールエッジ12が伸びた状態を基準に決定すればよい。つまり、スピーカ1では、振動板11の最大振幅は、材料の伸縮を無視すればロールエッジ12が直線状になる位置に対応する。
【0072】
ロールエッジ12は、フレーム13と振動板11とに渡って取り付けされた断面が略半円状のロール形状のエッジである。このロールエッジ12は、振動振幅に応じて形状を変えながら振動板11が安定したピストン振動が行えるように振動板11を支持する。そして、ロールエッジ12では、ロールが直線状に伸びきった状態が振動板11の振動振幅の最大値となる。
【0073】
例えば、ロールエッジ12のロール形状が半円であるとする。この場合、ロール形状が直線状に伸びた状態において、ロールエッジ12のエッジ周長が斜辺、フレーム13と振動板11との間隔が底辺、振動板11の最大振幅距離が高さとなる直角三角形を形成すると見なせる。それにより、振動板11の最大振幅距離はロール半径の2.4倍となることがわかる。従って、上記の計算を鑑みて、ボイスコイルボビン14の高さhは、ロールエッジ12のロール半径の4.8倍以上とすれば良い。
【0074】
反対に設計値として、振動板11の最大振幅を±4mmとするとしてもよい。その場合、上記の計算方法から、ロールエッジ12のロールの半径は1.7mm、フレーム13と振動板11との間隔が3.4mmと計算できる。
【0075】
このように、本発明のスピーカ1では、振動板11の長手方向の両端部にロールエッジ12を配置するだけであり、短手方向にロールエッジ12を配置しない。そのため、スピーカ1は、短手方向にロールエッジ12を配置しない分だけ、スピーカ1を細くスリムに構成することができるという効果も奏する。具体的には、8cm口径相当のスピーカでエッジ幅を3.4mmとした場合には3.4*2+エッジ貼りシロ分(2mm*2)合計10.8mm短手方向のスピーカ幅を狭くスリムに構成することができるという効果を奏する。
【0076】
次に、磁性流体20とボイスコイルボビン14との構成に基づく効果について説明する。
【0077】
ボイスコイルボビン14は、上述したように、振動板11の最大振幅の2倍以上の高さを有し、高さ方向の中央部に駆動力を発生するボイスコイル15が巻き線されている。また、ボイスコイルボビン14の内側(内壁)とプレート16の外側との隙間(間隔)である磁気ギャップ内側部には磁力で吸着される磁性流体20が充填されている。
【0078】
これら構成により、ボイスコイルボビン14は、スピーカ1が音を再生する際に、磁気回路21の磁気ギャップ内側部の領域を飛び出すことがない。換言すると、ボイスコイルボビン14は、プレート16の外周とヨーク18の凹部内側面との間から飛び出すことがない。そのため、磁性流体20とボイスコイルボビン14とは離れることはないので、ボイスコイルボビン14は磁性流体20と表面張力により濡れ性を維持しながら振動することになる。なお、磁性流体20とボイスコイルボビン14とが乖離した場合は磁性流体20を切り裂くように再突入し、磁性流体20が飛散してしまう恐れがあるが、本構成では乖離再突入という動作をしない。
【0079】
このため磁性流体20はプレート16から離れることなくボイスコイルボビン14の内側に留まる。その結果、振動板11の前後の空気遮断効果を維持することができる。
【0080】
また、スピーカ1では、振動板11の長手方向の両端部に配置(固着)されて、振動板11を振動可能なように支持するロールエッジ12を備えることで、ボイスコイルボビン14がプレート16に接触することを防ぐ。
【0081】
また、上述したように、ボイスコイルボビン14の外側に、ボイスコイル15が巻き線されているため、ボイスコイルボビン14の内側の寸法をほぼ均一に維持できる。このため、ボイスコイルボビン14の内側と磁性流体20との接触状態は振動板11の振動状態にかかわらず安定状態を維持し続けることができる。
【0082】
以上、実施の形態1によれば、細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカ1を実現することができる。
【0083】
具体的には、エッジを振動板11の短手方向に構成しないため、非常に細長いスピーカ1を構成することができる。さらに具体的には、振動板11の振動振幅の2倍以上のボイスコイルボビン14を構成し、そのボイスコイルボビン14の高さ方向の中央部にボイスコイル15を配置するとともにボイスコイルボビン14の高さ方向の一端部に振動板11を配置する構成とする。それにより、細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカ1を実現することができる。
【0084】
また、本実施の形態のスピーカ1では、ボイスコイルボビン14とプレート16との隙間(間隔)に構成される磁気ギャップ内側部に磁性流体20を備える。この構成により、スピーカ1が音を再生する時にボイスコイルボビンが磁気ギャップ内側部の領域から飛び出すことがなく、空気遮断が維持されるとともに、乖離再突入移動に伴う磁性流体20のかき出しを防止することができる。つまり、スピーカ1は、振動板11の振動の状態にかかわらず、磁性流体20が飛散することなく安定した状態を保つことができる。
【0085】
それにより、エッジとしてロールエッジ12を振動板11の全周に配置することなく、安定した支持構造と振動板11前後の空気遮断効果を実現することができる。そして、スピーカ1の形状としては短手方向にロールエッジ12を設置しない分短くできるのでよりスリムなスピーカ1を実現することができる。
【0086】
なお、実施の形態1では、振動板11を長尺状の平板で構成される平面振動板であるとして説明したが、それに限らない。例えば、図9に示すように凹凸構造の補強リブ23を設けた振動板11Aとしても良い。換言すると、振動板11Aは、略平面形状であり、振動板11Aの長手方向の面上に連続する凹凸からなる複数個の補強リブが設けられているとしてもよい。ここで、図9は、本発明の実施の形態1のスピーカを構成する振動板の一例を示す図である。このように、振動板11Aに補強リブ23が設けられることで、短手方向の共振周波数をさらに高くすることができ、より高い周波数の音まで、歪無く再生することができる。
【0087】
また、実施の形態1では、磁気回路21はマグネット17がヨーク18の内側に構成される内磁型磁気回路であるとして説明したが、それに限らない。もちろん、外磁型磁気回路であってもよい。以下、その場合を変形例として図を用いて説明する。
【0088】
図10〜図13は、本発明の実施の形態1の変形例におけるスピーカの構成を示す図である。図10は、本実施の形態の変形例に係るスピーカの構成を裏側(背面方向)からみた状態の斜視図を示している。図11は、本実施の形態の変形例に係るスピーカの構成を表側(正面方向)からみた状態の斜視図を示している。図12は図10に示すスピーカのA−a断面図を示し、図13は図10に示すスピーカのB−b断面図を示している。なお、図1〜図4と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0089】
図10〜図13に示すスピーカ2は、振動板11と、ロールエッジ12と、フレーム13と、ボイスコイルボビン14と、ボイスコイル15と、プレート16a、マグネット17aおよびヨーク18aを有する磁気回路21aとを備えている。
【0090】
磁気回路21aは、ボイスコイル15を駆動させるための回路である。換言すると、磁気回路21aは、ボイスコイル15を駆動されるための駆動力を発生する。磁気回路21aはボイスコイル15と相似形状である長尺形状(ここでは細長形状)で構成され、図13に示すように、プレート16a、マグネット17a、ヨーク18a、貫通孔19a、および磁気ギャップ22aを有している。また、図13に示すように、磁気回路21は、マグネット17がヨーク18の外側に構成される外磁型磁気回路である。
【0091】
ヨーク18aは、磁石を接着(固定)している部品であり、短手方向における断面が逆T字形状すなわち中央部に凸部を有するよう構成されている。なお、この凸部をセンターポールと称する。
【0092】
マグネット17aは、ヨーク18の凸部(センターポール)の外側面と対向するように、ヨーク18の底面に配置されている。
【0093】
プレート16aは、ヨーク18の凸部(センターポール)の外側面と対向するように配置され、かつ、マグネット17aの上面に固着(配置)されている。
【0094】
貫通孔19aは、ヨーク18の凸部(センターポール)の中心部を貫通するよう設けられており、振動板11で発生する音をスピーカの表面(正面方向)に導く働きをする。
【0095】
磁気ギャップ22aは、プレート16とヨーク18との間の隙間(間隔)であり、磁束を集中して発生させるための隙間(間隔)である。また、磁気ギャップ22aはボイスコイル15と相似形状に構成されているため、磁気ギャップ22と同様に、背面方向からみて、長手方向に2本の長い直線状となっている。
【0096】
また、磁気ギャップ22aは、ボイスコイルボビン14の内壁とセンターポールの外周面との隙間(間隔)である磁気ギャップ内側部を含む。換言すると、磁気ギャップ内側部は、ボイスコイルボビン14の内壁とセンターポールの外側との隙間(間隔)である。そして、この磁気ギャップ内側部には、磁力で吸着される磁性流体20が充填されることで、振動板11の発生する音を内側と外側で遮断する。
【0097】
磁性流体20は、磁力で吸着される特性である磁気吸着性を有する液体であり、磁気ギャップ内側部を塞ぐように充填(配置)されている。それにより、磁性流体20は、振動板11とボイスコイルボビン14の内壁とで囲まれる空間において、振動板11が発生する音の貫通孔19a以外での通過を遮断する。つまり、振動板11の発生する音を内側と外側で遮断する。
【0098】
(実施の形態2)
実施の形態1では、振動板11をロールエッジ12で支持する構成について説明したがそれに限られない。実施の形態2では、振動板11をロールエッジ12に加えて、ダンパーを用いて支持する場合について説明する。
【0099】
以下、実施の形態2に係るスピーカ3について説明する。
【0100】
図14〜図16は、本発明の実施の形態2におけるスピーカの構成を示す図である。図14は、本実施の形態に係るスピーカの構成を正面方向からみた状態の示す斜視図を示している。図15は図14に示すスピーカのA−a断面図を示し、図16は図14に示すスピーカのB−b断面図を示している。また、図17および図18はそれぞれ、図14に示スピーカを構成する部品を示す図である。図17は、連結部材を示しており、図18はダンパーを示している。なお、図14〜図16においては、図1〜図8と同様の要素には同一の参照符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0101】
図14〜図16に示す本実施の形態に係るスピーカ2は、図1〜図8に示す実施の形態1に係るスピーカ1に対して、連結部材25とダンパー26とを設けている点で構成が異なる。具体的には、本実施の形態に係るスピーカ2では、実施の形態1に係るスピーカ1に比べて、貫通孔19に連結部材25を通し、連結部材25をダンパー26で支持する構成が追加されている。
【0102】
連結部材25は、一方の端部が振動板11に垂直に固着され、貫通孔19を介して、振動板11とダンパー26の一方の端部とを連結する。
【0103】
具体的には、連結部材25は、図17に示すように、振動板11と固着するために一方の端部として設けられた平坦部27と、振動板11の裏面から貫通孔19を通じて、スピーカ3の表面(正面方向側)に至る連結部29とで構成される。連結部29の端部(平坦部27とは反対側の端)にはダンパー26と連結される突起28が構成されている。そして、連結部材25は、図16に示すように、一方の端部が振動板11の裏面(正面方向)すなわち振動板11の貫通孔19側に垂直に固着される。これにより、連結部材25は、貫通孔19を介して、振動板11とダンパー26とを連結する。
【0104】
ダンパー26は、一方の端部が連結部材25の他方の端部に接続され、他方の端部がスピーカ3のフレーム13に接続されている。具体的には、ダンパー26は、図18に示すように、ダンパー平坦部30と、2つの半円状のロール261と、2つの半円状のロール261の間に形成された連結領域262とで構成される。
【0105】
連結領域262は、突起28を固着するために一定の面積の平坦な領域を有しており、図15および図16に示すように、突起28が固着される。
【0106】
ダンパー平坦部30は、フレーム13に固着される。
【0107】
ロール261は、材料として発泡ゴム材料やソリッドゴム、高分子材料用いて射出成型したもので構成される。ここで、ロール261は、ロールの頂部を薄く基部を厚くなるよう構成されていることが望ましい。また、ダンパー26のロール261が取り付ける方向は、正面方向からみて、ロールエッジ12のロールが取り付けられている方向に垂直である。
【0108】
以上のように構成された連結部材25およびダンパー26は、ロールエッジ12とともに振動板11を支持する。換言すると、ボイスコイル15が、振動板11を介して、連結部材25およびダンパー26によりフレーム13に支持されている。
【0109】
次に、以上のように構成されたスピーカ3の効果について説明する。
【0110】
すなわち、本実施の形態のスピーカ3は、ロールエッジ12とともにダンパー26により支持することで、実施の形態1のスピーカ1と比較して支持系の強化を実現している。具体的には、ダンパー26は、振動板11に固着された連結部材25を介して、振動板11とボイスコイル15を支持する。そのため、スピーカ3では、ロールエッジ12とダンパー26とで振動系(振動板11、ボイスコイルボビン14およびボイスコイル15)が2点で支持されることで振動系の安定した振動を実現することできる。さらに、ロールエッジ12とダンパー26は、振動板11の表裏(正面および背面)に配置され、2つの支持体(ロールエッジ12とダンパー26)の間に振動系の重心がある構造を実現している。このため、2点支持の支持点の間隔が最大となる支持系を実現できるのでより安定した振動系の支持が行える。それにより、振動系を大振幅させてもローリングや異常振動といったものが発生しないので、歪の少ないスピーカ3を実現することができる。
【0111】
また、ダンパー26とロールエッジ12との方向を直交配置としているため、スピーカ3の短手方向および長手方向両方に抗力のある支持系を実現することができる。
【0112】
以上、実施の形態2によれば、細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカ3を実現することができる。
【0113】
なお、連結部材25は、上述した形態に限定されるものではない。例えば、連結部29の長さを短くした連結部材31であってもよい。その場合の例について以下に説明する。
【0114】
図19は、本発明の実施の形態2の変形例におけるスピーカの構成を示す図である。図19は、本変形例に係るスピーカの構成を裏側(背面方向)からみた状態の斜視図を示している。なお、図1〜図8と同様の要素には同一の参照符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0115】
図19に示す本変形例に係るスピーカ3は、実施の形態2に係るスピーカ2に対して、ダンパー26Aと、連結部材31と、補助フレーム32との構成が異なる。
【0116】
具体的には、連結部材31は、ロールエッジ12と同じ側の面の振動板11に固着する。また、補助フレーム32は、スピーカ3の背面方向でフレーム13の上部に取り付けられる。また、ダンパー26Aは、スピーカ3の背面方向で補助フレーム32に固着される。より具体的には、ダンパー26Aは、実施の形態2と同様に、ダンパー平坦部30と、2つの半円状のロール261と、2つの半円状のロール261の間に形成された連結領域262とで構成されている。連結領域262は、連結部材31の振動板11と固着していない方の端部(突起28)が固着される。また、ダンパー平坦部30は、補助フレーム32と固着される。
【0117】
このようにして、スピーカ3は、ダンパー26Aと、連結部材31と、補助フレーム32とで支持系を構成するとしても良い。このように構成することにより、ダンパー26Aとロールエッジ12とが同一面側に構成することができる。そのため、ロールエッジ12を固着したのちスピーカ3を裏返すことなく、ダンパー26Aを固着することができるので、組み立て作業が簡素化されるという効果を奏する。また、連結部材31が、貫通孔19に形成されないことは、振動板11が発した音の通り道である貫通孔19を塞がないということであり、実施の形態2のスピーカ2に比べて音質が向上するという効果を奏する。
【0118】
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、ボイスコイルボビン14の内側の形状が、長方形(直方体)であるとして説明したが、それに限らない。ボイスコイルボビン14の外側に、ボイスコイル15が巻き線されているため、ボイスコイルボビン14の内側の寸法をほぼ均一に維持できるものの、ボイスコイルボビン14が薄いシート状に構成されているため磁力等により長手方向の中央付近において短手方向の幅が大きくなってしまう場合がある。以下、この場合について、実施の形態3に係るスピーカとして説明する。
【0119】
図20は、実施の形態3のスピーカを構成する磁気回路を示す斜視図である。図21は、実施の形態3のスピーカを構成する磁気回路を示す平面図である。図22は、実施の形態3のスピーカを構成するヨーク34を示す平面図である。なお、図8と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0120】
図20および図21に示す磁気回路33は、図8に示す磁気回路21と同様に、プレート16、マグネット17(不図示)と、貫通孔19と、ヨーク34と、磁気ギャップ35とを備え、マグネット17がヨーク34の内側に構成される内磁型磁気回路である。
【0121】
この磁気回路33は、図8に示す磁気回路21に対して、図21に示すようにヨーク34が、長手方向の中央部が端部に比べて緩やかに短手方向の長さが広くなる略円弧状に構成されている。
【0122】
マグネット17は、一方側が直方体形状のプレート16の下部に固着され、他方側にはヨーク34に固着されている。
【0123】
ヨーク34は、短手方向の断面においては凹状の形状で構成され、スピーカの背面方向からみて、プレート16の長手方向の辺に対向する辺が略円弧状であり、長手方向の中央部の短手方向の幅が長手方向の端部の短手方向の幅に比べて広い。また、ヨーク34は、スピーカの背面方向からみて、プレート16の長手方向の辺と、それに対向する辺とで磁気ギャップ35を含む間隙を形成する。具体的には、ヨーク34は、図22に示すように構成されており、長手方向の中央部における短手方向の長さDcは、長手方向の端部における短手方向の長さDeに比べ広くなるように緩やかな円弧状となっている。
【0124】
磁気ギャップ35は、プレート16とヨーク34の凹部内壁との隙間(間隔)の磁気ギャップ内側部を含むプレート16とヨーク34との間の隙間(間隔)であり、磁束を集中して発生させるための隙間(間隔)である。ここでの磁気ギャップ35は、プレート16が直方体形状であり、ヨーク34が上記の円弧状の形状を有するため、図21に示すように、長手方向の中央部が長手方向の端部に比べ短手方向の長さが広くなっている。
【0125】
以上のように実施の形態3のスピーカは構成される。
【0126】
次に、以上のように構成されたスピーカの効果について説明する。
【0127】
まず、スピーカ1の振動系について説明する。すなわち、ボイスコイル15に電流を印可する。すると、ボイスコイル15は、印可された電流および上記磁気回路33による磁界によってボイスコイル15には駆動力が発生し、ボイスコイルボビン14を介して振動板11を振動させる。つまり、ボイスコイル15は、発生した駆動力によって振動板11を振動させ、振動板11の振動により発生した音が空間に放射される。
【0128】
続いて、磁性流体20は、ボイスコイルボビン14がプレート16に接触しないように内圧を発生する。ボイスコイルボビン14は、略四角筒状で細長い形状であるが、内圧により外側に膨らむように変位する。その際中央部が最も大きく変位する。
【0129】
実施の形態1および2に示した磁気回路21では、直線状の磁気ギャップ22を有するが、その分磁気ギャップ22の幅を全周で広く採る構成としている。それに対して、本実施の形態の磁気回路33ではヨーク34の内面を円弧状に形成することで、長手方向の端部に比べて中心部の幅が広い磁気ギャップ35を有する。すなわち、本実施の形態の磁気回路33では、ボイスコイルボビン14の長手方向における中央部の膨らみを考慮し、全周で広くするのではなく変形量に対応した磁気ギャップ35を有する構成としている。
【0130】
このように構成することで磁束密度の低下を防ぎ音圧レベルの高いスピーカを実現できるという効果を奏する。
【0131】
以上、実施の形態3によれば、細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカを実現することができる。
【0132】
なお、ヨーク34の内壁は、円弧状として構成されるとして説明したが、それに限らない。例えば二等辺三角形を形成するように長手方向の中心部と端部との幅を直線状に変化させてもよい。
【0133】
また、磁気回路33は、マグネット17がヨーク34の内側に構成される内磁型磁気回路であるとして説明したが、それに限られない。マグネットを外側に配置した外磁型磁気回路であってもよい。その場合には、図10〜図13に示すプレート16aが、スピーカの背面方向からみて、センターポールに対向する長手方向の辺が略円弧状であり、長手方向の辺の中央部の幅は端部の幅に比べ幅が広くすればよい。
【0134】
以上、本発明によれば、細長構造でありながら分割共振が起こりにくく、平坦な周波数特性を得ることができる、音質の優れたスピーカを実現することができる。
【0135】
なお、本発明に係るスピーカは、スリム化および薄型化が容易であるので、図23に示すような薄型テレビ、または携帯電話やPDA等の電子機器に利用することできる。換言すると、電子機器は、本発明に係るスピーカと、スピーカを内部に保持する筐体とを備えて構成される。
【0136】
以上、本発明のスピーカおよびそれを備える電子機器について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、細長構造でありながら大振幅を可能とし、より低い周波数まで再生することができるスピーカおよびそれを備える電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1、2、3 スピーカ
11、11A、809 振動板
12 ロールエッジ
13、804 フレーム
14、805 ボイスコイルボビン
15、806 ボイスコイル
16、16a、802 プレート
17、17a、801 マグネット
18、18a、34、803 ヨーク
19、19a 貫通孔
20 磁性流体
21、21a、33 磁気回路
22、22a、35、808 磁気ギャップ
23 補強リブ
25 連結部材
26、26A、807 ダンパー
27 平坦部
28 突起
29 連結部
30 ダンパー平坦部
31 連結部材
32 補助フレーム
261 ロール
262 連結領域
810 ダストキャップ
811 エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の平板で構成される振動板と、
前記振動板の長手方向の端部に配置され、前記振動板を振動可能に支持するエッジと、
前記振動板の振動振幅の2倍以上の高さを有する略角筒形状で構成され、開口部周縁が前記振動板と直接的に接続されており、前記振動板を支持し、かつ、前記振動板に振動を伝えるための少なくとも1つのボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの高さ方向の略中央部の外周上に巻き線されているボイスコイルと、
前記ボイスコイルを駆動させるための磁気回路と、を備える
スピーカ。
【請求項2】
前記磁気回路は、内磁形の磁気回路であって、
中央部に凹部を有するヨークと、
前記ヨークの前記凹部の底面に配置されるマグネットと、
前記ヨークの前記凹部に配置され、前記マグネットの上面に固着される直方体形状のプレートと、
前記プレート、前記マグネットおよび前記ヨークの中心部を貫通する貫通孔と、
前記ボイスコイルボビンの内壁と前記プレートの外周面との間の磁気ギャップ内側部と、
前記磁気ギャップ内側部を塞ぐように配置された磁気吸着性を有する液体である磁性流体とを備え、
前記磁性流体は、前記振動板と前記ボイスコイルボビンとで囲まれる空間において、前記振動板が発生する音の前記貫通孔以外での通過を遮断する
請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記ヨークは、短手方向の断面においては凹状の形状で構成され、前記スピーカの背面方向からみて、前記プレートの長手方向の辺に対向する辺が略円弧状であり、前記長手方向の中央部の短手方向の幅が前記長手方向の端部の短手方向の幅に比べて広く、
前記ヨークは、前記スピーカの背面方向からみて、前記プレートの前記長手方向の辺と、前記対向する辺とで前記磁気ギャップ内側部を含む磁気ギャップを形成する
請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記磁気回路は、外磁形の磁気回路であって、
センターポールを有する逆T字形状のヨークと、
前記センターポールの外側に配置されたマグネットと、
前記センターポールの外側に配置され、前記マグネットの上面に固着されるプレートと、
前記センターポールの中心部を貫通する貫通孔と、
前記ボイスコイルボビンの内壁と前記センターポールの外周面との間の磁気ギャップ内側部と、
前記磁気ギャップ内側部を塞ぐように配置された磁気吸着性を有する液体である磁性流体と、を備え、
前記磁性流体は、前記振動板と前記ボイスコイルボビンとで囲まれる空間において、前記振動板が発生する音の前記貫通孔以外での通過を遮断する
請求項1に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記プレートは、前記スピーカの背面方向からみて、
前記センターポールに対向する長手方向の辺が略円弧状であり、前記長手方向の辺の中央部は端部に比べ幅が広い
請求項4に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記振動板は、略平面形状であり、当該振動板の長手方向の面上に連続する凹凸からなる複数個の補強リブが設けられている
請求項2に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記エッジは、ロール形状に構成されており、ロール頂部はロール基部に比べて薄く形成され、前記ロール頂部から前記ロール基部にかけて厚くなるように形成されている
請求項2に記載のスピーカ。
【請求項8】
前記振動板は、長手方向の長さを1とした場合に短手方法の長さは0.5以下となるよう形成されている
請求項1〜7のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項9】
前記スピーカは、
一方の端部が前記振動板に垂直に固着された連結部材と、
一方の端部が前記連結部材の他方の端部に接続され、他方の端部が前記スピーカのフレームに接続されているダンパーとを備え、
前記ボイスコイルは、前記振動板を介して、前記連結部材および前記ダンパーにより前記フレームに支持される
請求項1〜8のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項10】
前記連結部材は、前記貫通孔を介して、前記振動板と前記ダンパーの前記一方の端部と連結する
請求項9に記載のスピーカ。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のスピーカを備える
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−223559(P2011−223559A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54607(P2011−54607)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】