説明

スピーカ

【課題】低コストで、スピーカの小型(小口径化)・薄型化を実現しながら音響性能を確保する。
【解決手段】矩形,トラック形,楕円形のいずれか一つの振動板1に円形のボイスコイル2を結合、使用するスピーカにおいて、前記振動板1のエッジ部1cの内径に、前記ボイスコイル2が結合された結合部1bを該振動板1の長径方向で挟む一対の補強部1eを設け、該補強部1eも振動板として機能させて有効振動板面積を稼ぎ、ボイスコイル円形化前の異形のスピーカと同じ有効振動板面積を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器や情報機器に使用されるスピーカに関し、特に、携帯電話などに使用される小型のスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
電子・情報機器に使用されている代表的なスピーカの一つとしてダイナミックスピーカがある。このスピーカの構造は基本的に、外部接続端子を設けたフレームと、ヨーク,磁石,ポールピースからなる磁気回路と、樹脂や金属のフィルムからなる振動板と、振動板に結合したボイスコイルとからなり、フレームが中央部で磁気回路を保持するとともに、外周部で振動板の外周部を保持し、ボイスコイルが磁気回路に形成した磁気ギャップに挿入されている。外部接続端子を通してボイスコイルに電流を供給すると、ボイスコイルが上下に振動し、それに伴って振動板が振動して、音を発する。このようなスピーカは例えば携帯電話の場合、その筺体に内蔵された回路基板に外部接続端子を電気的に接続した状態で、筺体に設けられた音孔の内側に位置決めされて取り付けられ、受話音を再生するレシーバ、着信音や着信メロに加えて音楽、ラジオやテレビの放送音声を再生するスピーカとして用いられている。
【0003】
近年、携帯電話の小型・薄形化が進むとともに、液晶画面の大型化、デジタルカメラ機能などの追加により、スピーカの取り付けスペースが減少している。また、音楽再生機能、ラジオやテレビ、ワンセグ受信機能を強化した携帯電話端末が増加している。これにより、携帯電話に使用されるスピーカには、小型(小口径)・薄形化とともに、出力音圧,音質の向上が求められているが、円形(丸型)の磁気回路,振動板,ボイスコイルを使用する従来の円形(丸型)のスピーカ(例えば特許文献1参照)で小口径化しようとすると、出力音圧が低下し、音質が劣化するという課題があった。
【0004】
また、従来円形であった磁気回路,振動板,ボイスコイルのトラック形化によって実現したトラック形のスピーカ(例えば特許文献2)は、従来は最低でも10mmあったものをその半分程度(短径側)と小口径化しながら従来と同じ音響性能を確保しているが、トラック形のボイスコイルの製造コストが高く(円形のボイスコイルに比べ)、製品コストが高くなる(円形のスピーカに比べ)という課題があった。
【特許文献1】特開平9−135491号公報
【特許文献2】特開2000−201396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記トラック形のスピーカでトラック形の振動板に円形のボイスコイルを結合、使用したり、矩形や楕円形のスピーカで矩形や楕円形の振動板に円形のボイスコイルを結合、使用すると、これら異形(円形に対して)のスピーカで円形のスピーカと同程度の製品コストを実現することができ、従来技術に大きく貢献するが、トラック形,矩形,楕円形の異形の振動板に円形のボイスコイルを結合、使用すると、ボイスコイル内側の振動板として機能する部分(ドーム部)の面積が小さくなり、有効振動板面積が小さくなるため、ボイスコイル円形化前の異形のスピーカと同じ出力音圧を得ようとすれば、それ以上に大きな振幅をさせる必要が生じ、音質が劣化し、製品の厚さが損なわれるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、矩形,トラック形,楕円形のいずれか一つの振動板に円形のボイスコイルを結合、使用するスピーカにおいて、前記振動板のエッジ部の内径に、前記ボイスコイルが結合された結合部を該振動板の長径方向で挟む一対の補強部を設けた構成にしたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によるスピーカは、矩形,トラック形,楕円形のいずれか一つの振動板のエッジ部の内径に、円形のボイスコイルが結合された結合部を該振動板の長径方向で挟む一対の補強部を設けた構成により、該補強部も振動板として機能させて有効振動板面積を稼ぎ、ボイスコイル円形化前の異形のスピーカと同じ有効振動板面積を得ることができるため、出力音圧を振幅で稼ぐ必要がなく、音質が劣化せず、スピーカの厚さが損なわれることがない。したがって、低コストで、スピーカの小型(小口径化)・薄型化を実現しながら音響性能を確保することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。図1は本発明の一実施の形態にかかる矩形のスピーカに使用する振動系を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。図2は図1に示す振動系を使用した本発明の一実施の形態にかかる矩形のスピーカの平面図、図3は図2のA−A線断面図である。
【0009】
図1(A)(B)に示すように、振動系は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルムや例えばアルミなどの金属フィルムからなる矩形の振動板1と、導線を螺旋状に巻いて円筒状に形成した円形(丸型)のボイスコイル2とからなり、振動板1の裏面側中心部にボイスコイル2の上端を固着し、振動板1の中心部からその裏面側にボイスコイル2を垂下している。
【0010】
矩形の振動板1は、円形のボイスコイル2の内側上方(振動板1の中心部)に相当する中心部に、振動板として機能する上方にドーム状に膨らんだ形状のドーム部1aを形成し、このドーム部1aの周囲に円形のボイスコイル2の上端を固着する平坦で幅狭な円環状の結合部1bを形成するとともに、矩形の振動板1の周辺部には内径の中心部にドーム部1aが位置してその内径から外径までの間で上方に円弧状に膨らんだ形状のエッジ部1cを形成し、このエッジ部1cの周囲(矩形の振動板1の最外周縁部)に後述するフレームに固着するための平坦で幅狭な矩形環状の貼り付け部1dを形成している。
【0011】
図2,図3に示すように、矩形のスピーカは、図1(A)(B)に示した振動系とこれを駆動する磁気回路3とをフレーム7に組み付けて構成される。
【0012】
磁気回路3は、ヨーク4,磁石5,ポールピース6とからなるが、円形のボイスコイル2を使用するため、それに対応して円形(丸型)に構成され、円形のボイスコイル2を挿入可能な円環状の磁気ギャップ3aを形成する。具体的には、磁性材料からなるヨーク4に有天円筒状のセンターポール4aと、このセンターポール4aの下端側から径方向外側に張り出す円形のフランジ4bとを一体に形成し、また、磁石5を円形リング状に形成し、さらに、磁性材料からなるポールピース6を円形リング状に形成し、磁石5をヨーク4のフランジ4bとポールピース6とで挟んだ状態で、磁石5とポールピース6をセンターポール4aの外周側に所定の隙間を設けて配置し、センターポール4aとポールピース6との間に円環状の磁気ギャップ3aを形成した円形で外磁型の磁気回路3に構成している。なお、磁気回路3には、磁性材料からなる有底円筒状のヨークと、このヨークの内底面にヨーク周側壁との間に所定の隙間を設けて配置する円板状の磁石と、この磁石の上に重ねて配置する円板状のポールピースからなり、このポールピースとヨーク周側壁との間に円環状の磁気ギャップを形成した円形で内磁型の磁気回路を使用してもよい。
【0013】
フレーム7は、絶縁樹脂材料からなる成形品であるが、矩形の振動板1を使用するため、それに対応して矩形板状に形成されるとともに、フレーム7の中央部には表裏貫通の円形の貫通孔7aが設けられ、フレーム7の裏面側(スピーカの背面側)から貫通孔7a内に円形の磁気回路3を嵌め込むことによって、フレーム7の中央部に円形の磁気回路3を結合保持している。円環状の磁気ギャップ3aはフレーム7の表面側(スピーカの正面側)に開放されている。また、フレーム7の外周縁部にはフレーム7の表面側に立ち上がる周側壁1bが一体に形成され、フレーム7の表面側から周側壁1bの内側に振動系を嵌め込み、フレーム7の表面側外周縁部に振動板1の最外周縁部に形成した貼り付け部1dを幅狭な矩形環状のパッド8を介して固着することによって、フレーム7の表面側外周縁部に振動板1の最外周縁部を結合保持し、円形のボイスコイル2を円環状の磁気ギャップ3aに垂直上下動可能に懸架挿入している。
【0014】
フレーム7の長径側(長手側)の各端部にはインサート成形により良導電性の金属薄板からなる接片9が一体に設けられるとともに、フレーム7の裏面側には長径側の各端部に1つずつ合計2つのバネ性を有する外部接続端子10が設けられている。各接片9の一部はフレーム1の表面側に略面一に露出して、フレーム7の長径方向で隣接する2つの角部またはフレーム7の対角方向に位置する2つの角部に図示しない内部接点を形成し、この2つの内部接点にボイスコイル2から引き出す2本のリード線が半田付けで接続され、また、各接片9の他の一部はフレーム1の裏面側に略面一に露出して、フレーム7の長径側の各端部に1つずつ合計2つの外部接点9aを形成し、この2つの外部接点9aに外部接続端子10の固定端が半田付けで接続されて、ボイスコイル2と各外部接続端子10が導通接続されている。なお、バネ性を有する外部接続端子10には、接片9と別部品の良導電性の金属コイルバネを使用したが、接片9から一体に延出した板バネを使用してもよい。
【0015】
図2,図3において、11は縁付きの金属平板からなるバッフルであり、矩形の振動板1を使用するため、それに対応して矩形に形成されている。このバッフル11は振動系をフレーム7に装着した後に、フレーム7の表面側から周側壁1bの内側に嵌め込むことによって、縁部を矩形の振動板1の外周縁部の上に重ね合わせた状態で、フレーム7の表面側に結合保持され、矩形の振動板1をその上から所定の隙間を設けて覆いそれを保護している。そして、矩形の振動板1の中央部表面側に位置するバッフル11の中央部にはスピーカ正面側に音(空気)を放出する正面音孔11aが開口されるとともに、矩形の振動板1の中央部裏面側に位置するセンターポール4aの天面にはフレーム7の裏面側(スピーカの背面側)に音(空気)を逃がす背面音孔(排気孔)4cが開口されている。
【0016】
上記のように構成された本実施の形態にかかる矩形のスピーカは、例えば携帯電話の筺体に内蔵された回路基板に各外部接続端子10の自由端を電気的に接続した状態で、筺体に設けられた音孔の内側に位置決めされて取り付けられ、受話音を再生するレシーバ、着信音や着信メロに加えて音楽、ラジオやテレビ,ワンセグの放送音声を再生するスピーカとして用いられるもので、回路基板から各外部接続端10と各接片9を通して電流を円形のボイスコイル2に供給すると、円形のボイスコイル2に流れる電流により発生する磁束と磁石5により発生する磁束の相乗作用によって、円形のボイスコイル12が垂直振動し、それに伴って矩形の振動板1が垂直振動して、背面音孔4cから音(空気)を逃がしながら、正面音孔11aからスピーカ正面側に音(空気)を放出し、筺体の音孔から外部に放出する。
【0017】
ここで、図1〜図3に示すように、ドーム部1a・エッジ部1c一体型の矩形の振動板1のエッジ部1cの内径は、その全周が結合部1bの外径に接するような円形状に形成するのではなく、中心部にドーム部1aが位置し、相対する長径側(長手側)の内縁が結合部1bと接し、かつ相対する短径側(短手側)の内縁が結合部1bから離れるような形状に形成している。これにより、矩形の振動板1のエッジ部1cの内径におけるドーム部1aと結合部1bを除いた部分、つまり矩形の振動板1の長径方向において、結合部1bとエッジ部1cとの間に位置して、結合部1bを矩形の振動板1の長径方向で挟んで相対する一対の空き部を追加形成している。そして、この各空き部を補強し、矩形の振動板1のエッジ部1cの内径に、結合部1bを矩形の振動板1の長径方向で挟む一対の補強部1eを追加して設けている。
【0018】
このように、矩形の振動板1のエッジ部1cの内径に、円形のボイスコイル2が結合された結合部1bを該振動板1の長径方向で挟む一対の補強部1eを設けているので、この各補強部1eでの剛性を高めることができ、各補強部1eもドーム部1aと同様に振動板として機能させることができる。これによって、各補強部1eで有効振動板面積を稼ぎ、ボイスコイル円形化前の異形のスピーカと同じ有効振動板面積を得ることができるため、出力音圧を振幅で稼ぐ必要がなく、音質が劣化せず、スピーカの厚さが損なわれることがない。したがって、低コストで、スピーカの小型(小口径化)・薄型化を実現しながら音響性能を確保することがでる。なお、各補強部1eもドーム部1aと同様に振動板として機能させているため、これに対応して正面音孔11aは、矩形の振動板1のドーム部1aと各補強部1eの表面側をスピーカ表面側に開放する形状に形成されている。
【0019】
本実施の形態では、矩形の振動板1のエッジ部1cの内径を長円形に形成しているため、各空き部の形状が三日月状になり、この各空き部を補強した各補強部1eの形状も三日月状になっているが、矩形の振動板1のエッジ部1cの内径は長円形の他、矩形や楕円形に形成してもよい。
【0020】
また、各空き部は、各空き部を全体的に上方に断面(A−A線断面)形状が「へ」の字状になる山状に膨らまらせるような各空き部と同形の三日月状の補強用リブ1fで補強して、各補強部1eとなしているが、図4(A)(B)に示すように、結合部1bの外周からエッジ部1cの内周までの間で放射方向に延びる複数の幅狭な補強用リブ1gで各空き部を補強して、各補強部1eとなしてもよく、図5(A)(B)に示すように、各空き部に対応する形状の振動板材1hをその各空き部1の表面側または裏面側に貼り重ねで各空き部を補強して、各補強部1eとなしてもよい。なお、図5(A)では網掛けした部分が振動板材1hである。
【0021】
さらに、本実施の形態では、図1(A),図4(A),図5(A)に示すように、矩形の振動板1のエッジ部1cにおける長径方向(長尺方向)の両端部にある辺領域には、エッジ部1cの内径から外径の間に略放射方向に複数の直線状の補強用リブ1jを狭間隔で渡し、矩形の振動板1の長径方向の剛性を高め、ばらつきのないコンプライアンスを確保し、円形のボイスコイル2と一体的にドーム部1aと一対の補強部1eが、より確実に垂直振動を行えるようにしている。
【0022】
なお、本実施の形態では、矩形の振動板1に円形のボイスコイル2を結合、使用した矩形のスピーカに適用して説明したが、本発明は、矩形のスピーカに限らず、トラック形(長円形)や楕円形の振動板に円形のボイスコイルを結合、使用したトラック形や楕円形のスピーカにも適用できる。このトラック形(長円形)や楕円形のスピーカは、上述した本実施の形態の矩形のスピーカと振動板の形状とそれに対応してフレームやバッフルの形状が異なるだけで、その他は同じ構造であるので、これらトラック形(長円形)や楕円形のスピーカの詳しい説明や図示は省略している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる矩形のスピーカに使用する振動系を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図2】図1に示す振動系を使用した本発明の一実施の形態にかかる矩形のスピーカの平面図である。
【図3】図3は図2のA−A線断面図である。
【図4】図1(A)(B)の振動板における空き部の他の補強手段を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図5】図1(A)(B)の振動板における空き部のさらに他の補強手段を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 振動板
1a ドーム部
1b 結合部
1c エッジ部
1e 補強部
1f 補強用リブ
1g 補強用リブ
1h 振動板材1h
2 ボイスコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形,トラック形,楕円形のいずれか一つの振動板に円形のボイスコイルを結合、使用するスピーカにおいて、前記振動板のエッジ部の内径に、前記ボイスコイルが結合された結合部を該振動板の長径方向で挟む一対の補強部を設けたことを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記補強が振動板に一体に形成したリブである請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記補強が振動板材の重ね貼りである請求項1に記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−263515(P2008−263515A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106009(P2007−106009)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】