スライドドア構造
【課題】車室空間を狭めることなく、スライドレールに水平ローラおよび垂直ローラを組み付けることができるスライドドア構造を提供する。
【解決手段】車両のスライドドア構造20は、スライドドア21に設けられたアッパガイド部31と、アッパガイド部31を案内可能なアッパスライドレール32とを備える。アッパガイド部31は、上垂直ローラ47と上水平ローラ51とを備える。アッパスライドレール32は、上垂直ローラ47を載せる上底部45aと、上水平ローラ51を挟み込む内外の案内壁48,49とを備える。外上案内壁49のうち、アッパ湾曲部33に相当する部位49aに組付開口部58が形成され、組付開口部58を覆うカバー部材60が設けられている。
【解決手段】車両のスライドドア構造20は、スライドドア21に設けられたアッパガイド部31と、アッパガイド部31を案内可能なアッパスライドレール32とを備える。アッパガイド部31は、上垂直ローラ47と上水平ローラ51とを備える。アッパスライドレール32は、上垂直ローラ47を載せる上底部45aと、上水平ローラ51を挟み込む内外の案内壁48,49とを備える。外上案内壁49のうち、アッパ湾曲部33に相当する部位49aに組付開口部58が形成され、組付開口部58を覆うカバー部材60が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体にスライドドアを開閉自在に支持する車両のスライドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスライドドア構造のなかには、車両のルーフに沿ってスライドレールが設けられ、スライドレールに上ガイドローラ(以下、「水平ローラ」という)および吊りローラ(以下、「垂直ローラ」という)が移動可能にまとめて配置され、水平ローラおよび垂直ローラがスライドドアの上端部に設けられ、スライドドアが垂直ローラで吊り下げられたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−204836号公報
【0003】
このスライドドア構造によれば、スライドレールに沿って水平ローラをスライドさせることで、スライドドアが内外方向(車幅方向)にずれることを防いでいる。
また、スライドドア構造によれば、スライドレールの水平壁に垂直ローラを載せてスライドさせることで、スライドドアを垂直ローラで吊り下げるように支えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スライドレールに水平ローラや垂直ローラをまとめて配置するためには、スライドレールに各ローラを組み付けるための組付開口部を形成し、形成した組付開口部からスライドレール内に水平ローラや垂直ローラを組み付ける必要がある。
ここで、水平ローラや垂直ローラを組付開口部からスライドレール内に組み付けた後、組み付けた各ローラが組付開口部から抜け出さないように組付開口部をカバー部材で覆うことが要求される。
【0005】
カバー部材で組付開口部を覆うためには、スライドレールの近傍にカバー部材を取り付けるための空間を確保する必要がある。
カバー部材を取り付ける空間をスライドレールに対して、車両の外側に確保するためには、例えば、スライドレールを車両の内側に移動する必要がある。
しかし、スライドレールを車両の内側に移動すると、車室空間が狭められることが考えられる。
【0006】
本発明は、車室空間を狭めることなく、スライドレールに水平ローラおよび垂直ローラを組み付けることができるスライドドア構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車両本体に沿わせてスライドドアを開閉可能なスライドドア構造であって、前記スライドドアに設けられたガイド部と、前記ガイド部を案内可能に前記車両本体に設けられ、かつ前記スライドドアを閉じる際に前記車両本体側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた湾曲部を有するスライドレールと、を備え、前記ガイド部は、下方向の動きを規制する垂直ローラと、水平方向の動きを規制する水平ローラと、を備え、前記スライドレールは、前記垂直ローラを載せる底部と、前記水平ローラを挟み込む内外の案内壁とを備え、前記外案内壁のうち、前記湾曲部に相当する部位に、前記水平ローラを車両本体の外方から組み付けるための組付開口部が形成されるとともに、前記組付開口部を覆うカバー部材が設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2において、前記ガイド部は、前記スライドドアの上部に設けられ、前記スライドレールは、前記車両本体に形成されたスライドドア開口部の上縁部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3において、前記カバー部材は、前記車両本体に固定される固定部と、前記組付開口部を遮蔽する遮蔽部と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4において、前記カバー部材の前記固定部は、前記車両本体の外方に向けて延出されたフランジ部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、スライドレールに水平ローラを挟み込む内外の案内壁とを備えた。そして、外案内壁のうち、湾曲部に相当する部位に、水平ローラを車両本体の外方から組み付けるための組付開口部を形成した。
よって、組付開口部を覆うカバー部材を湾曲部に設けることができる。
ここで、湾曲部は、車内方向に向けて湾曲させた部位である。このため、湾曲部と車両本体の外側部との間、すなわち湾曲部の外側(すなわち、湾曲部近傍)に比較的大きな空間を確保することができる。
【0012】
これにより、湾曲部の外側に確保した空間を利用してカバー部材を設けることができるので、空間を確保するためにスライドレールを車室側に寄せる必要がない。
したがって、車室空間を狭めることなく、スライドレールに水平ローラおよび垂直ローラを組み付けることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ガイド部をスライドドアの上部に設け、スライドレールをスライドドア開口部の上縁部に設けた。
このスライドドア構造によれば、請求項1で説明したように、スライドレールの湾曲部近傍に確保した空間を利用してカバー部材を設けることができる。
【0014】
これにより、スライドレールをスライドドア開口部の上縁部に設けた場合に、スライドレールを設けるためにルーフライニング(車室のルーフを仕切るライニング)を車体内側に向けて張り出す必要がないので、乗降者の頭上空間を大きく確保することができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、カバー部材は固定部と遮蔽部とを有する。そして、遮蔽部で組付開口部を遮蔽した状態で、固定部を車両本体に固定した。
固定部を車両本体に固定することで、カバー部材を車両本体に強固に取り付けることができる。
これにより、遮蔽部に沿って水平ローラが転動する際に、遮蔽部で水平ローラを確実に支えることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、カバー部材の固定部を車両本体の外方に向けて延ばした。
固定部を車両本体の外方に向けて延ばすことで、車両本体に固定部を固定する作業を容易におこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る車両のスライドドア構造を閉じた状態を示す斜視図、図2は本発明に係る車両のスライドドア構造を開いた状態を示す斜視図である。
車両10は、車両本体11の左側部にスライドドア開口部12が形成され、車両本体11の左側部にスライドドア開口部12を開閉する車両のスライドドア構造20が備えられている。
スライドドア開口部12は、乗員(図示せず)が乗降するための開口部で、上下の縁部12a,12bおよび前後の縁部で略矩形状に形成されている。
【0018】
車両のスライドドア構造20は、車両本体11のスライドドア開口部12を開閉するスライドドア21と、スライドドア21の上部21aを支えるアッパ支持手段24と、スライドドア21の後中央部21bを支えるセンタ支持手段25と、スライドドア21の下部21cを支えるロア支持手段26とを備える。
【0019】
スライドドア21は、上部21a、下部21c、前部21dおよび後部21eで略矩形状に形成され、車両本体11に沿わせて開閉可能なドアである。
【0020】
アッパ支持手段24は、スライドドア21の上部21aに設けられたアッパガイド部(ガイド部)31と、アッパガイド部31を案内可能なアッパスライドレール(スライドレール)32とを備えている。
アッパスライドレール32は、スライドドア開口部12の上縁部12aに設けられ、前端部にアッパ湾曲部(湾曲部)33を有する。
アッパ湾曲部33は、スライドドア21を閉じる際に、スライドドア21を車両本体11側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた部位である。
【0021】
センタ支持手段25は、スライドドア21の後中央部21bに設けられたセンタガイド部35と、センタガイド部35を案内可能なセンタスライドレール36とを備えている。
センタスライドレール36は、スライドドア開口部12の後縁部から車両後方に向けて設けられ、前端部にセンタ湾曲部37を有する。
センタ湾曲部37は、スライドドア21を閉じる際に、スライドドア21を車両本体11側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた部位である。
【0022】
ロア支持手段26は、スライドドア開口部12の下縁部12bに設けられたロアガイド部41と、ロアガイド部41を案内可能なロアスライドレール42とを備えている。
ロアスライドレール42は、スライドドア21の下部21cに設けられ、ロアスライドレール42の開き方向側の端部(すなわち、後端部)42bにロア湾曲部43を有する。
ロア湾曲部43は、スライドドア21を閉じる際に、スライドドア21を車両本体11側に寄せるために車外方向に向けて湾曲させた部位である。
【0023】
車両のスライドドア構造20によれば、図1に示すように、スライドドア21を閉じた状態において、アッパ支持手段24、センタ支持手段25およびロア支持手段26が図1に示す位置に配置されている。
すなわち、アッパ支持手段24は、アッパスライドレール32のアッパ湾曲部33にアッパガイド部31が位置している。
また、センタ支持手段25は、センタスライドレール36のセンタ湾曲部37にセンタガイド部35が位置している。
さらに、ロア支持手段26のロアスライドレール42のロア湾曲部43にロアガイド部41が位置している。
【0024】
この状態で、スライドドア21を矢印の方向に開くことで、アッパガイド部31およびセンタガイド部35がアッパ湾曲部33およびセンタ湾曲部37からそれぞれ車両後方に向けて移動する。
同時に、ロアスライドレール42が、スライドドア21とともに車両後方に向けて移動する。
【0025】
スライドドア21が全開位置まで移動した状態を図2に示す。スライドドア21が全開した状態において、アッパ支持手段24、センタ支持手段25およびロア支持手段26が図2に示す位置に配置される。
すなわち、アッパ支持手段24は、アッパスライドレール32の後端部32aにアッパガイド部31が位置している。
また、センタ支持手段25は、センタスライドレール36の後端部36aにセンタガイド部35が位置している。
さらに、ロア支持手段26のロアスライドレール42の前端部42aにロアガイド部41が位置している。
【0026】
図3は図1の3−3線断面図である。
アッパスライドレール32は、図2に示すスライドドア開口部12の上縁部12aに設けられた第1上レール部45と、第1上レール部45に設けられた第2上レール部46とを備えている。
第1上レール部45は、上垂直ローラ(垂直ローラ)47を載せる上底部(底部)45aを備えている。
第2上レール部46は、断面略コ字状に形成することで内外の上案内壁(内外の案内壁)48,49を備えている。内外の上案内壁48,49で一対の上水平ローラ(水平ローラ)51を挟み込んでいる。
第2上レール部46については図4〜図6で詳しく説明する。
【0027】
アッパガイド部31は、スライドドア21の上部21aにボルト54で固定された上固定ブラケット52と、上固定ブラケット52にボルト55でスイング自在に支持された上揺動ブラケット53と、上揺動ブラケット53に設けられた上垂直ローラ47および一対の上水平ローラ51とを備える。
【0028】
上垂直ローラ47は、第1上レール部45の上底部45aに沿って移動することで、下方向の動きを規制するローラである。
すなわち、上垂直ローラ47でスライドドア21の重量を支えることができる。
【0029】
一対の上水平ローラ51は、第2上レール部46の内外の上案内壁48,49間に配置され、それぞれの上案内壁48,49に沿って移動することで、水平方向の動きを規制するローラである。
すなわち、一対の上水平ローラ51でスライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
アッパガイド部31の構成については図4〜図6で詳しく説明する。
【0030】
図4は本発明に係るアッパ支持手段を示す斜視図、図5は本発明に係るアッパ支持手段を示す分解斜視図である。
アッパ支持手段24は、前述したように、アッパガイド部31を備えている。アッパガイド部31の上揺動ブラケット53は、基端部53aが上固定ブラケット52の先端部52aにボルト55でスイング自在に支持され、先端部に一対の支持片56が形成され、一対の支持片56間から下方に折り曲げられた折曲片57(図3も参照)が形成されている。
一対の支持片56は、車両前後方向に所定間隔をおいて形成されている。
【0031】
一対の支持片56に上水平ローラ51がそれぞれ回転自在に取り付けられている。さらに、折曲片57に上垂直ローラ47(図3も参照)が回転自在に取り付けられている。
すなわち、一対の上水平ローラ51および上垂直ローラ47は、上揺動ブラケット53にまとめて取り付けられている。
【0032】
ここで、一対の支持片56間に折曲片57を設け、折曲片57に上垂直ローラ47を取り付けることで、上垂直ローラ47を一対の上水平ローラ51間に配置できる。
よって、上垂直ローラ47を一対の上水平ローラ51に近づけることができ、上垂直ローラ47および一対の上水平ローラ51の高さ寸法H(図3参照)を小さく抑えることができる。
また、一対の上水平ローラ51の幅はS1に設定されている。
一対の上水平ローラ51は、図3に示すように、第2上レール部46内、すなわち内外の上案内壁48,49内に配置されている。
【0033】
また、アッパ支持手段24は、第2上レール部46のアッパ湾曲部33に組付開口部58が形成され、組付開口部58を覆うカバー部材60を備えている。
具体的には、組付開口部58は、外上案内壁49のうち、アッパ湾曲部33に相当する部位49aに、開口幅S2で形成されている。
【0034】
開口幅S2は、一対の上水平ローラ51の幅S1と比較して大きく、S2>S1の関係が成立する。
外上案内壁49に組付開口部58を形成することで、図3に示すように、一対の上水平ローラ51を車両本体11の外方からアッパ湾曲部33内に差し込む(組み付ける)ことができる。
【0035】
ここで、上揺動ブラケット53には、一対の上水平ローラ51および上垂直ローラ47を取り付けられている。よって、一対の上水平ローラ51の下方に上垂直ローラ47が突出されている。
加えて、第2上レール部46の下方には、上垂直ローラ47を載せる上底部45aが設けられている。
【0036】
このため、一対の上水平ローラ51を第2上レール部46の下方から組み付けようとすると、上底部45aが邪魔になり組み付けることができない。
そこで、前述したように、アッパ湾曲部33に組付開口部58を形成し、組付開口部58を通すことで一対の上水平ローラ51をアッパ湾曲部33内に組み付けることができるようにした。
【0037】
カバー部材60は、車両本体11に固定される固定部61と、組付開口部58を遮蔽する(覆う)遮蔽部62とを有し、固定部61および遮蔽部62で略く字状に形成されている。
遮蔽部62は、組付開口部58より一回り大きく形成された略矩形状のフラップである。
【0038】
固定部61は、図3に示すように、車両本体11の外方に向けて斜め上向きに延出されたフランジ部である。
固定部61を車両本体11の外方に向けて延ばすことで、スライドドア開口部12の上縁部12a(すなわち、車両本体11)に固定部61を固定する作業を容易におこなうことができる。
【0039】
固定部61をスライドドア開口部12の上縁部12aに一対のボルト63で固定することで、遮蔽部62で組付開口部58が遮蔽されている(覆われている)。
このように、固定部61を上縁部12a(車両本体11)に固定することで、カバー部材60を車両本体11に強固に取り付けることができる。
【0040】
よって、遮蔽部62に沿って一対の上水平ローラ51が転動する際に、遮蔽部62で一対の上水平ローラ51を確実に支えることができる。
これにより、一対の上水平ローラ51がアッパ湾曲部33内から外方に抜け出すことを防止できる。
【0041】
図6は本発明に係るアッパ支持手段を示す平面図である。
図3で説明したように、アッパスライドレール32は、前端部にアッパ湾曲部33を有する。アッパ湾曲部33は、車内方向(車両中心方向)に向けて湾曲させた部位である。
アッパ湾曲部33は、アッパスライドレール32のアッパ直線レール部34に対して車内方向(車両中心方向)に距離Lだけ寄せられている。
よって、アッパ湾曲部33と車両本体11の外側部との間、すなわちアッパ湾曲部33の車両外側(アッパ湾曲部33近傍)に比較的大きな略三角形の空間64(図4、図5も参照)を確保することができる。
【0042】
これにより、アッパ湾曲部33の外側に確保した空間64を利用してカバー部材60を設けることができる。
したがって、カバー部材60を設ける空間を確保するために、スライドレールを車室側(車両中心側)に寄せる必要がないので、車室空間を狭めることなく、アッパスライドレール32にアッパガイド部31を組み付けることができる。
【0043】
加えて、アッパ湾曲部33の車両外側(アッパ湾曲部33近傍)に確保した空間64を利用してカバー部材60を設けることで、カバー部材60を設けるための空間を新たに確保する必要がない。
これにより、アッパスライドレール32を上縁部12aに設けた場合に、空間を設けるために、図3に示すルーフライニング59(車室のルーフを仕切るライニング)を車体内側に向けて張り出す必要がないので、乗降者の頭上空間を大きく確保することができる。
【0044】
図7は図2の7−7線断面図である。
センタスライドレール36は、スライドドア開口部12の後縁部から車両後方に向けて設けられた第1中央レール部65と、第1中央レール部65に設けられた第2中央レール部66とを備えている。
第1中央レール部65は、中央垂直ローラ67を載せる中央底部65aを備えている。
第2中央レール部66は、断面略コ字状に形成することで内外の中央案内壁68,69を備えている。
内外の中央案内壁68,69で一対の中央水平ローラ71を挟み込んでいる。
【0045】
センタガイド部35は、スライドドア21の後中央部21bにボルト74でスイング自在に支持された中央揺動ブラケット72と、中央揺動ブラケット72に設けられた中央垂直ローラ67および一対の中央水平ローラ71とを備える。
【0046】
中央垂直ローラ67は、第1中央レール部65の中央底部65aに沿って移動することで、下方向の動きを規制するローラである。
すなわち、中央垂直ローラ67でスライドドア21の重量を支えることができる。
【0047】
一対の中央水平ローラ71は、第2中央レール部66の内外の中央案内壁68,69間に配置され、それぞれの中央案内壁68,69に沿って移動することで、水平方向の動きを規制するローラである。
すなわち、一対の中央水平ローラ71でスライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
【0048】
図8は本発明に係る車両のスライドドア構造のロア支持手段を示す斜視図である。
ロアガイド部41は、車両本体11およびロアスライドレール42間に介在されるリンク手段81と、リンク手段81に設けられたガイド手段82とを備えている。
ロアスライドレール42は、スライドドア21の下部21cに車両前後方向に向けて設けられている。
【0049】
リンク手段81は、複数のリンク部材として車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85を有している。
車両側リンク部材84は、車両本体11側に設けられたリンク部材である。
ドア側リンク部材85は、スライドドア21側に設けられたリンク部材である。
【0050】
車両側リンク部材84は、互いに平行に設けられた車両側第1リンク87および車両側第2リンク88を有している。
ドア側リンク部材85は、互いに平行に設けられたドア側第1リンク91およびドア側第2リンク92を有している。
【0051】
車両側第1リンク87および車両側第2リンク88は、それぞれの基端部87a,88aが車両本体11にボルト94,94で回動自在に設けられている。
車両側第1リンク87の先端部87bにドア側第1リンク91の基端部91aがボルト95で回動自在に連結されている。
【0052】
車両側第2リンク88の先端部88bにドア側第2リンク92の基端部92aがボルト97で回動自在に連結されている。
車両側第2リンク88の先端部88b近傍にドア側第1リンク91の基端部91a近傍がボルト99で回動自在に連結されている。
【0053】
ドア側リンク部材85の先端部91b,92bにガイド手段82がボルト102,102で連結されている。
ガイド手段82は、ドア側第1リンク91およびドア側第2リンク92の各先端部91b,92bに連結された移動ブラケット104と、移動ブラケット104に複数の下水平ローラ105,106とを備えている。
【0054】
移動ブラケット104は、ドア側第1リンク91およびドア側第2リンク92の各先端部91b,92bにボルト102,102で回動自在に連結されたアーム部107と、アーム部107に一体に形成されて複数の下水平ローラ105,106を回動自在に支持したローラ支持部108とを備えている。
なお、ローラ支持部108は、ドア側リンク部材85に設けられてもよい。
【0055】
リンク手段81は、カバー部材115に収納可能に構成されている。
カバー部材115は、ステップ116の後端部に形成されている。ステップ116は、スライドドア開口部12の下縁部12bに形成され、乗員が乗降する際に足を載せる部位である。
【0056】
ここで、前述したように、ロアスライドレール42をスライドドア21の下部21cに設けることで、ロアスライドレール42をスライドドア開口部12の下縁部12bに設ける必要がない。
このため、スライドドア開口部12の下縁部12bを車両フロア117より低い位置に下げることが可能になる。よって、車両フロア117より低い位置に、乗降の際に乗員の足を載せるステップ116を形成することができる。
【0057】
このように、ロアスライドレール42をスライドドア21の下部21cに設け、ステップ116の後端部にカバー部材115を設けることで、乗員は無理のない姿勢で乗降することが可能になる。
すなわち、例えば、スライドドア開口部12から乗員が乗車する際に、まずステップ116に乗員の足199を載せ、つぎに頂部115aに乗員の足199を載せることで、車両フロア117に無理のない姿勢で乗車することができる。
同様に、スライドドア開口部12から乗員が降車する際にも無理のない姿勢で降車することができる。
【0058】
図9は図8の9−9線断面図である。
ロアスライドレール42は、スライドドア21の下部21cに車両前後方向に向けて延在されている。
このロアスライドレール42は、断面略コ字状に形成することで内外の下案内壁111,112を備えている。
【0059】
内外の下案内壁111,112で一対の下外水平ローラ105を挟み込んでいる。
一方、一対の下内水平ローラ106は、内下案内壁111に車両中心側から当接されている。
一対の下外水平ローラ105および一対の下内水平ローラ106は、内外の下案内壁111,112に沿って移動することで、水平方向の動きを規制するローラである。
すなわち、一対の下外水平ローラ105および一対の下内水平ローラ106でスライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
【0060】
図1、図2に戻って、車両のスライドドア構造20によれば、上垂直ローラ47(図3参照)、および中央垂直ローラ67(図7参照)でスライドドア21の重量を支えることができる。
よって、ロア支持手段26から、スライドドア21の重量を支えるための下垂直ローラを除去することができる。
これにより、ロア支持手段26のガイド手段82(図8も参照)をコンパクトにまとめることが可能になり、スライドドア21内に容易に配置することができる。
【0061】
また、車両のスライドドア構造20によれば、上水平ローラ51(図3参照)、中央水平ローラ71(図7参照)および下外水平ローラ105および下内水平ローラ106(図9参照)で、スライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
【0062】
つぎに、アッパスライドレール32にアッパガイド部31を組み付ける手順を図10〜図12に基づいて説明する。
図10(a),(b)は本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込む手順を説明する図である。
(a)に示すように、第2上レール部46は、アッパ湾曲部33の外上案内壁49に組付開口部58が形成されている。
【0063】
(b)に示すように、上揺動ブラケット53に一対の上水平ローラ51および上垂直ローラ47を取り付けたローラユニット77を矢印Aの如く移動する。
ローラユニット77を矢印Aの如く移動することで、一対の上水平ローラ51(図5も参照)を組付開口部58を経てアッパ湾曲部33内に進入させる。
【0064】
図11(a),(b)は本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
(a)に示すように、一対の上水平ローラ51(図5も参照)をアッパ湾曲部33内に配置するとともに、上垂直ローラ47を第1上レール部45の上底部45aに配置する。
上垂直ローラ47を上底部45aに沿わせて車両後方側に移動するとともに、一対の上水平ローラ51をアッパ湾曲部33に沿わせて車両後方側に移動する。
【0065】
(b)に示すように、一対の上水平ローラ51(すなわち、ローラユニット77)をアッパ湾曲部33に沿わせて矢印Bの如く車両後方側に移動することで、ローラユニット77を組付開口部58から離した位置に配置する。
【0066】
図12(a),(b)は本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
(a)に示すように、カバー部材60の固定部61をスライドドア開口部12の上縁部12aに一対のボルト63で固定する。
ここで、固定部61は、車両本体11の外方に向けて斜め上向きに延出されたフランジ部である。よって、スライドドア開口部12の上縁部12a(すなわち、車両本体11)に固定部61を固定する作業を容易におこなうことができる。
【0067】
このように、固定部61を上縁部12aに固定することで、遮蔽部62で組付開口部58を遮蔽する(覆う)ことができる(図3参照)。
遮蔽部62で組付開口部58を遮蔽する(覆う)ことで、一対の上水平ローラ51がアッパ湾曲部33内から外方に抜け出すことを防止できる。
【0068】
(b)に示すように、上揺動ブラケット53を上固定ブラケット52にボルト55でスイング自在に取り付ける。
これにより、上揺動ブラケット53を上固定ブラケット52を介してスライドドア21の上部21aに連結する。
これにより、アッパガイド部31をアッパスライドレール32に組み付ける作業が完了する。
【0069】
つぎに、スライドドア21を開放する例を図13〜図15に基づいて説明する。なお、車両のスライドドア構造20のうち、アッパ支持手段24およびセンタ支持手段25は構成が類似している。よって、図13〜図15においては、アッパ支持手段24およびロア支持手段26について詳しく説明する。
【0070】
図13(a),(b)は本発明に係るスライドドアの開き始め動作を説明する図である。(a)は斜視図、(b)は平面図である。
(a)において、スライドドア21を車両後方に向けて開く力Fを矢印の如く作用する。アッパスライドレール32のアッパ湾曲部33からアッパガイド部31の上水平ローラ51(図3参照)が矢印Cの如く移動する。
【0071】
同時に、センタスライドレール36のセンタ湾曲部37からセンタガイド部35の中央水平ローラ71(図7参照)が矢印Dの如く移動する。
よって、スライドドア21が矢印Eの如く車両後方に移動するとともに、車両本体11から離れる方向に移動する。
スライドドア21とともに、ロアスライドレール42が矢印Eの如く移動する。
【0072】
(b)において、ロアスライドレール42が矢印Eの如く移動することで、ロア湾曲部43がロアガイド部41の下水平ローラ105,106に沿って矢印Eの如く移動する。
【0073】
ロア湾曲部43が矢印Eの如く移動することで、ロア湾曲部43の基部43aが下水平ローラ105,106に到達する。基部43aはロア直線レール部44と交差している。よって、基部43aとともに下水平ローラ105,106が矢印E方向に移動する。
これにより、リンク手段81の車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85がボルト94,94を軸に矢印F方向に伸び動作を開始する。
【0074】
アッパガイド部31の上水平ローラ51がアッパ湾曲部33からアッパスライドレール32のアッパ直線レール部34に到達する。
よって、アッパガイド部31の上水平ローラ51がアッパ直線レール部34に沿って移動する。
【0075】
これにより、スライドドア21の移動が、車両本体11から離れる方向への移動から、車両本体11に沿った車両後方への移動に変わる。
同時に、リンク手段81の車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85が完全に伸びた状態になる。
【0076】
図14(a),(b)は本発明に係るスライドドアの全開までの動作を説明する図である。
(a)において、アッパガイド部31の上水平ローラ51がアッパスライドレール32のアッパ直線レール部34に沿って矢印Gの如く移動する。
【0077】
この状態で、リンク手段81の車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85は完全に伸びた状態になる。
上水平ローラ51がアッパ直線レール部34に沿って矢印Gの如く移動することで、スライドドア21が車両本体11に沿って矢印Hの如く車両後方に移動する。
【0078】
(b)において、上水平ローラ51がアッパ直線レール部34の後端部(すなわち、アッパスライドレール32の後端部)32aに到達して静止する。
同時に、ロア直線レール部44の前端部(ロアスライドレール42の前端部)42aが下水平ローラ105,106に到達してスライドドア21が全開する。
【0079】
図15は本発明に係るスライドドアの全開状態を説明する図である。
スライドドア21が全開した状態において、アッパスライドレール32の後端部32aにアッパガイド部31が位置するとともに、センタスライドレール36の後端部36aにセンタガイド部35が位置する。
さらに、ロアスライドレール42の前端部42aがロアガイド部41に位置する。
【0080】
なお、前記実施の形態で示したスライドドア開口部12、スライドドア21、アッパガイド部31、アッパスライドレール32、アッパ湾曲部33、上底部45a、上垂直ローラ47、内外の上案内壁48,49、上水平ローラ51、組付開口部58、カバー部材60、固定部61、遮蔽部62などは、例示した形状などに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、車両本体にスライドドアを開閉自在に支持する車両のスライドドア構造を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る車両のスライドドア構造を閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両のスライドドア構造を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】本発明に係るアッパ支持手段を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るアッパ支持手段を示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係るアッパ支持手段を示す平面図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】本発明に係る車両のスライドドア構造のロア支持手段を示す斜視図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込む手順を説明する図である。
【図11】本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
【図12】本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
【図13】本発明に係るスライドドアの開き始め動作を説明する図である。
【図14】本発明に係るスライドドアの全開までの動作を説明する図である。
【図15】本発明に係るスライドドアの全開状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0083】
10…車両、11…車両本体、12…スライドドア開口部、12a…スライドドア開口部の上縁部、20…車両のスライドドア構造、21…スライドドア、21a…スライドドアの上部、31…アッパガイド部(ガイド部)、32…アッパスライドレール(スライドレール)、33…アッパ湾曲部(湾曲部)、45a…上底部(底部)、47…上垂直ローラ(垂直ローラ)、48,49…内外の上案内壁(内外の案内壁)、49a…アッパ湾曲部に相当する部位、51…上水平ローラ(水平ローラ)、58…組付開口部、60…カバー部材、61…固定部、62…遮蔽部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体にスライドドアを開閉自在に支持する車両のスライドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスライドドア構造のなかには、車両のルーフに沿ってスライドレールが設けられ、スライドレールに上ガイドローラ(以下、「水平ローラ」という)および吊りローラ(以下、「垂直ローラ」という)が移動可能にまとめて配置され、水平ローラおよび垂直ローラがスライドドアの上端部に設けられ、スライドドアが垂直ローラで吊り下げられたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−204836号公報
【0003】
このスライドドア構造によれば、スライドレールに沿って水平ローラをスライドさせることで、スライドドアが内外方向(車幅方向)にずれることを防いでいる。
また、スライドドア構造によれば、スライドレールの水平壁に垂直ローラを載せてスライドさせることで、スライドドアを垂直ローラで吊り下げるように支えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スライドレールに水平ローラや垂直ローラをまとめて配置するためには、スライドレールに各ローラを組み付けるための組付開口部を形成し、形成した組付開口部からスライドレール内に水平ローラや垂直ローラを組み付ける必要がある。
ここで、水平ローラや垂直ローラを組付開口部からスライドレール内に組み付けた後、組み付けた各ローラが組付開口部から抜け出さないように組付開口部をカバー部材で覆うことが要求される。
【0005】
カバー部材で組付開口部を覆うためには、スライドレールの近傍にカバー部材を取り付けるための空間を確保する必要がある。
カバー部材を取り付ける空間をスライドレールに対して、車両の外側に確保するためには、例えば、スライドレールを車両の内側に移動する必要がある。
しかし、スライドレールを車両の内側に移動すると、車室空間が狭められることが考えられる。
【0006】
本発明は、車室空間を狭めることなく、スライドレールに水平ローラおよび垂直ローラを組み付けることができるスライドドア構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車両本体に沿わせてスライドドアを開閉可能なスライドドア構造であって、前記スライドドアに設けられたガイド部と、前記ガイド部を案内可能に前記車両本体に設けられ、かつ前記スライドドアを閉じる際に前記車両本体側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた湾曲部を有するスライドレールと、を備え、前記ガイド部は、下方向の動きを規制する垂直ローラと、水平方向の動きを規制する水平ローラと、を備え、前記スライドレールは、前記垂直ローラを載せる底部と、前記水平ローラを挟み込む内外の案内壁とを備え、前記外案内壁のうち、前記湾曲部に相当する部位に、前記水平ローラを車両本体の外方から組み付けるための組付開口部が形成されるとともに、前記組付開口部を覆うカバー部材が設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項2において、前記ガイド部は、前記スライドドアの上部に設けられ、前記スライドレールは、前記車両本体に形成されたスライドドア開口部の上縁部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3において、前記カバー部材は、前記車両本体に固定される固定部と、前記組付開口部を遮蔽する遮蔽部と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4において、前記カバー部材の前記固定部は、前記車両本体の外方に向けて延出されたフランジ部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、スライドレールに水平ローラを挟み込む内外の案内壁とを備えた。そして、外案内壁のうち、湾曲部に相当する部位に、水平ローラを車両本体の外方から組み付けるための組付開口部を形成した。
よって、組付開口部を覆うカバー部材を湾曲部に設けることができる。
ここで、湾曲部は、車内方向に向けて湾曲させた部位である。このため、湾曲部と車両本体の外側部との間、すなわち湾曲部の外側(すなわち、湾曲部近傍)に比較的大きな空間を確保することができる。
【0012】
これにより、湾曲部の外側に確保した空間を利用してカバー部材を設けることができるので、空間を確保するためにスライドレールを車室側に寄せる必要がない。
したがって、車室空間を狭めることなく、スライドレールに水平ローラおよび垂直ローラを組み付けることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ガイド部をスライドドアの上部に設け、スライドレールをスライドドア開口部の上縁部に設けた。
このスライドドア構造によれば、請求項1で説明したように、スライドレールの湾曲部近傍に確保した空間を利用してカバー部材を設けることができる。
【0014】
これにより、スライドレールをスライドドア開口部の上縁部に設けた場合に、スライドレールを設けるためにルーフライニング(車室のルーフを仕切るライニング)を車体内側に向けて張り出す必要がないので、乗降者の頭上空間を大きく確保することができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、カバー部材は固定部と遮蔽部とを有する。そして、遮蔽部で組付開口部を遮蔽した状態で、固定部を車両本体に固定した。
固定部を車両本体に固定することで、カバー部材を車両本体に強固に取り付けることができる。
これにより、遮蔽部に沿って水平ローラが転動する際に、遮蔽部で水平ローラを確実に支えることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、カバー部材の固定部を車両本体の外方に向けて延ばした。
固定部を車両本体の外方に向けて延ばすことで、車両本体に固定部を固定する作業を容易におこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る車両のスライドドア構造を閉じた状態を示す斜視図、図2は本発明に係る車両のスライドドア構造を開いた状態を示す斜視図である。
車両10は、車両本体11の左側部にスライドドア開口部12が形成され、車両本体11の左側部にスライドドア開口部12を開閉する車両のスライドドア構造20が備えられている。
スライドドア開口部12は、乗員(図示せず)が乗降するための開口部で、上下の縁部12a,12bおよび前後の縁部で略矩形状に形成されている。
【0018】
車両のスライドドア構造20は、車両本体11のスライドドア開口部12を開閉するスライドドア21と、スライドドア21の上部21aを支えるアッパ支持手段24と、スライドドア21の後中央部21bを支えるセンタ支持手段25と、スライドドア21の下部21cを支えるロア支持手段26とを備える。
【0019】
スライドドア21は、上部21a、下部21c、前部21dおよび後部21eで略矩形状に形成され、車両本体11に沿わせて開閉可能なドアである。
【0020】
アッパ支持手段24は、スライドドア21の上部21aに設けられたアッパガイド部(ガイド部)31と、アッパガイド部31を案内可能なアッパスライドレール(スライドレール)32とを備えている。
アッパスライドレール32は、スライドドア開口部12の上縁部12aに設けられ、前端部にアッパ湾曲部(湾曲部)33を有する。
アッパ湾曲部33は、スライドドア21を閉じる際に、スライドドア21を車両本体11側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた部位である。
【0021】
センタ支持手段25は、スライドドア21の後中央部21bに設けられたセンタガイド部35と、センタガイド部35を案内可能なセンタスライドレール36とを備えている。
センタスライドレール36は、スライドドア開口部12の後縁部から車両後方に向けて設けられ、前端部にセンタ湾曲部37を有する。
センタ湾曲部37は、スライドドア21を閉じる際に、スライドドア21を車両本体11側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた部位である。
【0022】
ロア支持手段26は、スライドドア開口部12の下縁部12bに設けられたロアガイド部41と、ロアガイド部41を案内可能なロアスライドレール42とを備えている。
ロアスライドレール42は、スライドドア21の下部21cに設けられ、ロアスライドレール42の開き方向側の端部(すなわち、後端部)42bにロア湾曲部43を有する。
ロア湾曲部43は、スライドドア21を閉じる際に、スライドドア21を車両本体11側に寄せるために車外方向に向けて湾曲させた部位である。
【0023】
車両のスライドドア構造20によれば、図1に示すように、スライドドア21を閉じた状態において、アッパ支持手段24、センタ支持手段25およびロア支持手段26が図1に示す位置に配置されている。
すなわち、アッパ支持手段24は、アッパスライドレール32のアッパ湾曲部33にアッパガイド部31が位置している。
また、センタ支持手段25は、センタスライドレール36のセンタ湾曲部37にセンタガイド部35が位置している。
さらに、ロア支持手段26のロアスライドレール42のロア湾曲部43にロアガイド部41が位置している。
【0024】
この状態で、スライドドア21を矢印の方向に開くことで、アッパガイド部31およびセンタガイド部35がアッパ湾曲部33およびセンタ湾曲部37からそれぞれ車両後方に向けて移動する。
同時に、ロアスライドレール42が、スライドドア21とともに車両後方に向けて移動する。
【0025】
スライドドア21が全開位置まで移動した状態を図2に示す。スライドドア21が全開した状態において、アッパ支持手段24、センタ支持手段25およびロア支持手段26が図2に示す位置に配置される。
すなわち、アッパ支持手段24は、アッパスライドレール32の後端部32aにアッパガイド部31が位置している。
また、センタ支持手段25は、センタスライドレール36の後端部36aにセンタガイド部35が位置している。
さらに、ロア支持手段26のロアスライドレール42の前端部42aにロアガイド部41が位置している。
【0026】
図3は図1の3−3線断面図である。
アッパスライドレール32は、図2に示すスライドドア開口部12の上縁部12aに設けられた第1上レール部45と、第1上レール部45に設けられた第2上レール部46とを備えている。
第1上レール部45は、上垂直ローラ(垂直ローラ)47を載せる上底部(底部)45aを備えている。
第2上レール部46は、断面略コ字状に形成することで内外の上案内壁(内外の案内壁)48,49を備えている。内外の上案内壁48,49で一対の上水平ローラ(水平ローラ)51を挟み込んでいる。
第2上レール部46については図4〜図6で詳しく説明する。
【0027】
アッパガイド部31は、スライドドア21の上部21aにボルト54で固定された上固定ブラケット52と、上固定ブラケット52にボルト55でスイング自在に支持された上揺動ブラケット53と、上揺動ブラケット53に設けられた上垂直ローラ47および一対の上水平ローラ51とを備える。
【0028】
上垂直ローラ47は、第1上レール部45の上底部45aに沿って移動することで、下方向の動きを規制するローラである。
すなわち、上垂直ローラ47でスライドドア21の重量を支えることができる。
【0029】
一対の上水平ローラ51は、第2上レール部46の内外の上案内壁48,49間に配置され、それぞれの上案内壁48,49に沿って移動することで、水平方向の動きを規制するローラである。
すなわち、一対の上水平ローラ51でスライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
アッパガイド部31の構成については図4〜図6で詳しく説明する。
【0030】
図4は本発明に係るアッパ支持手段を示す斜視図、図5は本発明に係るアッパ支持手段を示す分解斜視図である。
アッパ支持手段24は、前述したように、アッパガイド部31を備えている。アッパガイド部31の上揺動ブラケット53は、基端部53aが上固定ブラケット52の先端部52aにボルト55でスイング自在に支持され、先端部に一対の支持片56が形成され、一対の支持片56間から下方に折り曲げられた折曲片57(図3も参照)が形成されている。
一対の支持片56は、車両前後方向に所定間隔をおいて形成されている。
【0031】
一対の支持片56に上水平ローラ51がそれぞれ回転自在に取り付けられている。さらに、折曲片57に上垂直ローラ47(図3も参照)が回転自在に取り付けられている。
すなわち、一対の上水平ローラ51および上垂直ローラ47は、上揺動ブラケット53にまとめて取り付けられている。
【0032】
ここで、一対の支持片56間に折曲片57を設け、折曲片57に上垂直ローラ47を取り付けることで、上垂直ローラ47を一対の上水平ローラ51間に配置できる。
よって、上垂直ローラ47を一対の上水平ローラ51に近づけることができ、上垂直ローラ47および一対の上水平ローラ51の高さ寸法H(図3参照)を小さく抑えることができる。
また、一対の上水平ローラ51の幅はS1に設定されている。
一対の上水平ローラ51は、図3に示すように、第2上レール部46内、すなわち内外の上案内壁48,49内に配置されている。
【0033】
また、アッパ支持手段24は、第2上レール部46のアッパ湾曲部33に組付開口部58が形成され、組付開口部58を覆うカバー部材60を備えている。
具体的には、組付開口部58は、外上案内壁49のうち、アッパ湾曲部33に相当する部位49aに、開口幅S2で形成されている。
【0034】
開口幅S2は、一対の上水平ローラ51の幅S1と比較して大きく、S2>S1の関係が成立する。
外上案内壁49に組付開口部58を形成することで、図3に示すように、一対の上水平ローラ51を車両本体11の外方からアッパ湾曲部33内に差し込む(組み付ける)ことができる。
【0035】
ここで、上揺動ブラケット53には、一対の上水平ローラ51および上垂直ローラ47を取り付けられている。よって、一対の上水平ローラ51の下方に上垂直ローラ47が突出されている。
加えて、第2上レール部46の下方には、上垂直ローラ47を載せる上底部45aが設けられている。
【0036】
このため、一対の上水平ローラ51を第2上レール部46の下方から組み付けようとすると、上底部45aが邪魔になり組み付けることができない。
そこで、前述したように、アッパ湾曲部33に組付開口部58を形成し、組付開口部58を通すことで一対の上水平ローラ51をアッパ湾曲部33内に組み付けることができるようにした。
【0037】
カバー部材60は、車両本体11に固定される固定部61と、組付開口部58を遮蔽する(覆う)遮蔽部62とを有し、固定部61および遮蔽部62で略く字状に形成されている。
遮蔽部62は、組付開口部58より一回り大きく形成された略矩形状のフラップである。
【0038】
固定部61は、図3に示すように、車両本体11の外方に向けて斜め上向きに延出されたフランジ部である。
固定部61を車両本体11の外方に向けて延ばすことで、スライドドア開口部12の上縁部12a(すなわち、車両本体11)に固定部61を固定する作業を容易におこなうことができる。
【0039】
固定部61をスライドドア開口部12の上縁部12aに一対のボルト63で固定することで、遮蔽部62で組付開口部58が遮蔽されている(覆われている)。
このように、固定部61を上縁部12a(車両本体11)に固定することで、カバー部材60を車両本体11に強固に取り付けることができる。
【0040】
よって、遮蔽部62に沿って一対の上水平ローラ51が転動する際に、遮蔽部62で一対の上水平ローラ51を確実に支えることができる。
これにより、一対の上水平ローラ51がアッパ湾曲部33内から外方に抜け出すことを防止できる。
【0041】
図6は本発明に係るアッパ支持手段を示す平面図である。
図3で説明したように、アッパスライドレール32は、前端部にアッパ湾曲部33を有する。アッパ湾曲部33は、車内方向(車両中心方向)に向けて湾曲させた部位である。
アッパ湾曲部33は、アッパスライドレール32のアッパ直線レール部34に対して車内方向(車両中心方向)に距離Lだけ寄せられている。
よって、アッパ湾曲部33と車両本体11の外側部との間、すなわちアッパ湾曲部33の車両外側(アッパ湾曲部33近傍)に比較的大きな略三角形の空間64(図4、図5も参照)を確保することができる。
【0042】
これにより、アッパ湾曲部33の外側に確保した空間64を利用してカバー部材60を設けることができる。
したがって、カバー部材60を設ける空間を確保するために、スライドレールを車室側(車両中心側)に寄せる必要がないので、車室空間を狭めることなく、アッパスライドレール32にアッパガイド部31を組み付けることができる。
【0043】
加えて、アッパ湾曲部33の車両外側(アッパ湾曲部33近傍)に確保した空間64を利用してカバー部材60を設けることで、カバー部材60を設けるための空間を新たに確保する必要がない。
これにより、アッパスライドレール32を上縁部12aに設けた場合に、空間を設けるために、図3に示すルーフライニング59(車室のルーフを仕切るライニング)を車体内側に向けて張り出す必要がないので、乗降者の頭上空間を大きく確保することができる。
【0044】
図7は図2の7−7線断面図である。
センタスライドレール36は、スライドドア開口部12の後縁部から車両後方に向けて設けられた第1中央レール部65と、第1中央レール部65に設けられた第2中央レール部66とを備えている。
第1中央レール部65は、中央垂直ローラ67を載せる中央底部65aを備えている。
第2中央レール部66は、断面略コ字状に形成することで内外の中央案内壁68,69を備えている。
内外の中央案内壁68,69で一対の中央水平ローラ71を挟み込んでいる。
【0045】
センタガイド部35は、スライドドア21の後中央部21bにボルト74でスイング自在に支持された中央揺動ブラケット72と、中央揺動ブラケット72に設けられた中央垂直ローラ67および一対の中央水平ローラ71とを備える。
【0046】
中央垂直ローラ67は、第1中央レール部65の中央底部65aに沿って移動することで、下方向の動きを規制するローラである。
すなわち、中央垂直ローラ67でスライドドア21の重量を支えることができる。
【0047】
一対の中央水平ローラ71は、第2中央レール部66の内外の中央案内壁68,69間に配置され、それぞれの中央案内壁68,69に沿って移動することで、水平方向の動きを規制するローラである。
すなわち、一対の中央水平ローラ71でスライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
【0048】
図8は本発明に係る車両のスライドドア構造のロア支持手段を示す斜視図である。
ロアガイド部41は、車両本体11およびロアスライドレール42間に介在されるリンク手段81と、リンク手段81に設けられたガイド手段82とを備えている。
ロアスライドレール42は、スライドドア21の下部21cに車両前後方向に向けて設けられている。
【0049】
リンク手段81は、複数のリンク部材として車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85を有している。
車両側リンク部材84は、車両本体11側に設けられたリンク部材である。
ドア側リンク部材85は、スライドドア21側に設けられたリンク部材である。
【0050】
車両側リンク部材84は、互いに平行に設けられた車両側第1リンク87および車両側第2リンク88を有している。
ドア側リンク部材85は、互いに平行に設けられたドア側第1リンク91およびドア側第2リンク92を有している。
【0051】
車両側第1リンク87および車両側第2リンク88は、それぞれの基端部87a,88aが車両本体11にボルト94,94で回動自在に設けられている。
車両側第1リンク87の先端部87bにドア側第1リンク91の基端部91aがボルト95で回動自在に連結されている。
【0052】
車両側第2リンク88の先端部88bにドア側第2リンク92の基端部92aがボルト97で回動自在に連結されている。
車両側第2リンク88の先端部88b近傍にドア側第1リンク91の基端部91a近傍がボルト99で回動自在に連結されている。
【0053】
ドア側リンク部材85の先端部91b,92bにガイド手段82がボルト102,102で連結されている。
ガイド手段82は、ドア側第1リンク91およびドア側第2リンク92の各先端部91b,92bに連結された移動ブラケット104と、移動ブラケット104に複数の下水平ローラ105,106とを備えている。
【0054】
移動ブラケット104は、ドア側第1リンク91およびドア側第2リンク92の各先端部91b,92bにボルト102,102で回動自在に連結されたアーム部107と、アーム部107に一体に形成されて複数の下水平ローラ105,106を回動自在に支持したローラ支持部108とを備えている。
なお、ローラ支持部108は、ドア側リンク部材85に設けられてもよい。
【0055】
リンク手段81は、カバー部材115に収納可能に構成されている。
カバー部材115は、ステップ116の後端部に形成されている。ステップ116は、スライドドア開口部12の下縁部12bに形成され、乗員が乗降する際に足を載せる部位である。
【0056】
ここで、前述したように、ロアスライドレール42をスライドドア21の下部21cに設けることで、ロアスライドレール42をスライドドア開口部12の下縁部12bに設ける必要がない。
このため、スライドドア開口部12の下縁部12bを車両フロア117より低い位置に下げることが可能になる。よって、車両フロア117より低い位置に、乗降の際に乗員の足を載せるステップ116を形成することができる。
【0057】
このように、ロアスライドレール42をスライドドア21の下部21cに設け、ステップ116の後端部にカバー部材115を設けることで、乗員は無理のない姿勢で乗降することが可能になる。
すなわち、例えば、スライドドア開口部12から乗員が乗車する際に、まずステップ116に乗員の足199を載せ、つぎに頂部115aに乗員の足199を載せることで、車両フロア117に無理のない姿勢で乗車することができる。
同様に、スライドドア開口部12から乗員が降車する際にも無理のない姿勢で降車することができる。
【0058】
図9は図8の9−9線断面図である。
ロアスライドレール42は、スライドドア21の下部21cに車両前後方向に向けて延在されている。
このロアスライドレール42は、断面略コ字状に形成することで内外の下案内壁111,112を備えている。
【0059】
内外の下案内壁111,112で一対の下外水平ローラ105を挟み込んでいる。
一方、一対の下内水平ローラ106は、内下案内壁111に車両中心側から当接されている。
一対の下外水平ローラ105および一対の下内水平ローラ106は、内外の下案内壁111,112に沿って移動することで、水平方向の動きを規制するローラである。
すなわち、一対の下外水平ローラ105および一対の下内水平ローラ106でスライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
【0060】
図1、図2に戻って、車両のスライドドア構造20によれば、上垂直ローラ47(図3参照)、および中央垂直ローラ67(図7参照)でスライドドア21の重量を支えることができる。
よって、ロア支持手段26から、スライドドア21の重量を支えるための下垂直ローラを除去することができる。
これにより、ロア支持手段26のガイド手段82(図8も参照)をコンパクトにまとめることが可能になり、スライドドア21内に容易に配置することができる。
【0061】
また、車両のスライドドア構造20によれば、上水平ローラ51(図3参照)、中央水平ローラ71(図7参照)および下外水平ローラ105および下内水平ローラ106(図9参照)で、スライドドア21の車両の内外方向(車両幅方向)のガタ付きを防ぐことができる。
【0062】
つぎに、アッパスライドレール32にアッパガイド部31を組み付ける手順を図10〜図12に基づいて説明する。
図10(a),(b)は本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込む手順を説明する図である。
(a)に示すように、第2上レール部46は、アッパ湾曲部33の外上案内壁49に組付開口部58が形成されている。
【0063】
(b)に示すように、上揺動ブラケット53に一対の上水平ローラ51および上垂直ローラ47を取り付けたローラユニット77を矢印Aの如く移動する。
ローラユニット77を矢印Aの如く移動することで、一対の上水平ローラ51(図5も参照)を組付開口部58を経てアッパ湾曲部33内に進入させる。
【0064】
図11(a),(b)は本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
(a)に示すように、一対の上水平ローラ51(図5も参照)をアッパ湾曲部33内に配置するとともに、上垂直ローラ47を第1上レール部45の上底部45aに配置する。
上垂直ローラ47を上底部45aに沿わせて車両後方側に移動するとともに、一対の上水平ローラ51をアッパ湾曲部33に沿わせて車両後方側に移動する。
【0065】
(b)に示すように、一対の上水平ローラ51(すなわち、ローラユニット77)をアッパ湾曲部33に沿わせて矢印Bの如く車両後方側に移動することで、ローラユニット77を組付開口部58から離した位置に配置する。
【0066】
図12(a),(b)は本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
(a)に示すように、カバー部材60の固定部61をスライドドア開口部12の上縁部12aに一対のボルト63で固定する。
ここで、固定部61は、車両本体11の外方に向けて斜め上向きに延出されたフランジ部である。よって、スライドドア開口部12の上縁部12a(すなわち、車両本体11)に固定部61を固定する作業を容易におこなうことができる。
【0067】
このように、固定部61を上縁部12aに固定することで、遮蔽部62で組付開口部58を遮蔽する(覆う)ことができる(図3参照)。
遮蔽部62で組付開口部58を遮蔽する(覆う)ことで、一対の上水平ローラ51がアッパ湾曲部33内から外方に抜け出すことを防止できる。
【0068】
(b)に示すように、上揺動ブラケット53を上固定ブラケット52にボルト55でスイング自在に取り付ける。
これにより、上揺動ブラケット53を上固定ブラケット52を介してスライドドア21の上部21aに連結する。
これにより、アッパガイド部31をアッパスライドレール32に組み付ける作業が完了する。
【0069】
つぎに、スライドドア21を開放する例を図13〜図15に基づいて説明する。なお、車両のスライドドア構造20のうち、アッパ支持手段24およびセンタ支持手段25は構成が類似している。よって、図13〜図15においては、アッパ支持手段24およびロア支持手段26について詳しく説明する。
【0070】
図13(a),(b)は本発明に係るスライドドアの開き始め動作を説明する図である。(a)は斜視図、(b)は平面図である。
(a)において、スライドドア21を車両後方に向けて開く力Fを矢印の如く作用する。アッパスライドレール32のアッパ湾曲部33からアッパガイド部31の上水平ローラ51(図3参照)が矢印Cの如く移動する。
【0071】
同時に、センタスライドレール36のセンタ湾曲部37からセンタガイド部35の中央水平ローラ71(図7参照)が矢印Dの如く移動する。
よって、スライドドア21が矢印Eの如く車両後方に移動するとともに、車両本体11から離れる方向に移動する。
スライドドア21とともに、ロアスライドレール42が矢印Eの如く移動する。
【0072】
(b)において、ロアスライドレール42が矢印Eの如く移動することで、ロア湾曲部43がロアガイド部41の下水平ローラ105,106に沿って矢印Eの如く移動する。
【0073】
ロア湾曲部43が矢印Eの如く移動することで、ロア湾曲部43の基部43aが下水平ローラ105,106に到達する。基部43aはロア直線レール部44と交差している。よって、基部43aとともに下水平ローラ105,106が矢印E方向に移動する。
これにより、リンク手段81の車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85がボルト94,94を軸に矢印F方向に伸び動作を開始する。
【0074】
アッパガイド部31の上水平ローラ51がアッパ湾曲部33からアッパスライドレール32のアッパ直線レール部34に到達する。
よって、アッパガイド部31の上水平ローラ51がアッパ直線レール部34に沿って移動する。
【0075】
これにより、スライドドア21の移動が、車両本体11から離れる方向への移動から、車両本体11に沿った車両後方への移動に変わる。
同時に、リンク手段81の車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85が完全に伸びた状態になる。
【0076】
図14(a),(b)は本発明に係るスライドドアの全開までの動作を説明する図である。
(a)において、アッパガイド部31の上水平ローラ51がアッパスライドレール32のアッパ直線レール部34に沿って矢印Gの如く移動する。
【0077】
この状態で、リンク手段81の車両側リンク部材84およびドア側リンク部材85は完全に伸びた状態になる。
上水平ローラ51がアッパ直線レール部34に沿って矢印Gの如く移動することで、スライドドア21が車両本体11に沿って矢印Hの如く車両後方に移動する。
【0078】
(b)において、上水平ローラ51がアッパ直線レール部34の後端部(すなわち、アッパスライドレール32の後端部)32aに到達して静止する。
同時に、ロア直線レール部44の前端部(ロアスライドレール42の前端部)42aが下水平ローラ105,106に到達してスライドドア21が全開する。
【0079】
図15は本発明に係るスライドドアの全開状態を説明する図である。
スライドドア21が全開した状態において、アッパスライドレール32の後端部32aにアッパガイド部31が位置するとともに、センタスライドレール36の後端部36aにセンタガイド部35が位置する。
さらに、ロアスライドレール42の前端部42aがロアガイド部41に位置する。
【0080】
なお、前記実施の形態で示したスライドドア開口部12、スライドドア21、アッパガイド部31、アッパスライドレール32、アッパ湾曲部33、上底部45a、上垂直ローラ47、内外の上案内壁48,49、上水平ローラ51、組付開口部58、カバー部材60、固定部61、遮蔽部62などは、例示した形状などに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、車両本体にスライドドアを開閉自在に支持する車両のスライドドア構造を備えた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る車両のスライドドア構造を閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両のスライドドア構造を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】本発明に係るアッパ支持手段を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るアッパ支持手段を示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係るアッパ支持手段を示す平面図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】本発明に係る車両のスライドドア構造のロア支持手段を示す斜視図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込む手順を説明する図である。
【図11】本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
【図12】本発明に係るアッパスライドレールに上水平ローラを差し込んだ状態を説明する図である。
【図13】本発明に係るスライドドアの開き始め動作を説明する図である。
【図14】本発明に係るスライドドアの全開までの動作を説明する図である。
【図15】本発明に係るスライドドアの全開状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0083】
10…車両、11…車両本体、12…スライドドア開口部、12a…スライドドア開口部の上縁部、20…車両のスライドドア構造、21…スライドドア、21a…スライドドアの上部、31…アッパガイド部(ガイド部)、32…アッパスライドレール(スライドレール)、33…アッパ湾曲部(湾曲部)、45a…上底部(底部)、47…上垂直ローラ(垂直ローラ)、48,49…内外の上案内壁(内外の案内壁)、49a…アッパ湾曲部に相当する部位、51…上水平ローラ(水平ローラ)、58…組付開口部、60…カバー部材、61…固定部、62…遮蔽部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に沿わせてスライドドアを開閉可能なスライドドア構造であって、
前記スライドドアに設けられたガイド部と、
前記ガイド部を案内可能に前記車両本体に設けられ、かつ前記スライドドアを閉じる際に前記車両本体側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた湾曲部を有するスライドレールと、を備え、
前記ガイド部は、下方向の動きを規制する垂直ローラと、水平方向の動きを規制する水平ローラと、を備え、
前記スライドレールは、前記垂直ローラを載せる底部と、前記水平ローラを挟み込む内外の案内壁とを備え、
前記外案内壁のうち、前記湾曲部に相当する部位に、前記水平ローラを車両本体の外方から組み付けるための組付開口部が形成されるとともに、前記組付開口部を覆うカバー部材が設けられたことを特徴とするスライドドア構造。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記スライドドアの上部に設けられ、
前記スライドレールは、前記車両本体に形成されたスライドドア開口部の上縁部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスライドドア構造。
【請求項3】
前記カバー部材は、
前記車両本体に固定される固定部と、
前記組付開口部を遮蔽する遮蔽部と、
を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のスライドドア構造。
【請求項4】
前記カバー部材の前記固定部は、
前記車両本体の外方に向けて延出されたフランジ部であることを特徴とする請求項3記載のスライドドア構造。
【請求項1】
車両本体に沿わせてスライドドアを開閉可能なスライドドア構造であって、
前記スライドドアに設けられたガイド部と、
前記ガイド部を案内可能に前記車両本体に設けられ、かつ前記スライドドアを閉じる際に前記車両本体側に寄せるために車内方向に向けて湾曲させた湾曲部を有するスライドレールと、を備え、
前記ガイド部は、下方向の動きを規制する垂直ローラと、水平方向の動きを規制する水平ローラと、を備え、
前記スライドレールは、前記垂直ローラを載せる底部と、前記水平ローラを挟み込む内外の案内壁とを備え、
前記外案内壁のうち、前記湾曲部に相当する部位に、前記水平ローラを車両本体の外方から組み付けるための組付開口部が形成されるとともに、前記組付開口部を覆うカバー部材が設けられたことを特徴とするスライドドア構造。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記スライドドアの上部に設けられ、
前記スライドレールは、前記車両本体に形成されたスライドドア開口部の上縁部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のスライドドア構造。
【請求項3】
前記カバー部材は、
前記車両本体に固定される固定部と、
前記組付開口部を遮蔽する遮蔽部と、
を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のスライドドア構造。
【請求項4】
前記カバー部材の前記固定部は、
前記車両本体の外方に向けて延出されたフランジ部であることを特徴とする請求項3記載のスライドドア構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−161113(P2009−161113A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2437(P2008−2437)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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