説明

スライム処理装置

【課題】掘削孔に拡底部が存在するような場合であってもスライムの処理を効果的に行うことを可能としたスライム処理装置を提案する。
【解決手段】吊り軸パイプ10と、吊り軸パイプ10の先端に接続される支持部材20と、支持部材20から張り出すブラケット30と、ブラケット30の先端部に取り付けられた水中ポンプ40とを備えたスライム処理装置であって、ブラケット30は、伸縮可能に構成されており、吊り軸パイプ10は、水中ポンプ40により吸引されたスライムを地上部に輸送する輸送管として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔のスライム処理を行うスライム処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現場打ちコンクリート杭や地中連続壁の構築では、施工に伴い掘削孔や掘削溝の底にスライムが堆積する。このようなスライムは、残置しておくと構造物の品質を低下させる原因となるため、サンドポンプ等より除去する必要がある。
【0003】
従来、スライムの除去を行うサンドポンプが多数開発され、実用化に至っている。
例えば、特許文献1に記載のスライム処理ポンプ101は、図6に示すように、スライムを地上へ搬送する排水管110と、排水管110の先端に固定されたポンプ本体120と、ポンプ本体120の下方に配設された撹拌翼121と、を備えている。このスライム処理ポンプ101は、撹拌翼121により掘削孔の底部を撹拌し、浮き上がったスライムをポンプ本体120により吸引し、排水管110を介して排出するものである。
【0004】
このような従来のスライム処理ポンプ101によるスライム処理は、孔口から挿入された直管からなる排水管110を、鉛直方向で立設させた状態で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−351178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来のスライム処理ポンプ101によるスライム処理は、孔口の直下のみにしかポンプ本体120を配置することができなかった。
そのため、拡底杭等のように、孔口の平面形状よりも底部の平面形状が広い掘削孔等に採用する場合は、拡底部の側方に堆積するスライムに対しては、拡底部の側方にスライムが残存してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、掘削孔に拡底部が存在するような場合であってもスライムの処理を効果的に行うことを可能としたスライム処理装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明のスライム処理装置は、吊り軸パイプと、前記吊り軸パイプの先端に接続される支持部材と、前記支持部材から張り出すブラケットと、前記ブラケットの先端部に取り付けられた水中ポンプと、を備えている。前記ブラケットは、伸縮可能に構成されており、前記吊り軸パイプは、前記水中ポンプにより吸引されたスライムを地上部に輸送する輸送管としての機能を有している。
【0009】
かかるスライム処理装置によれば、ブラケットが伸張することで水中ポンプが吊り軸パイプから偏心した位置に配設されるため、拡底部を有する掘削孔に堆積するスライムの処理を、効果的に行うことが可能となる。
【0010】
前記スライム処理装置において、前記支持部材が、前記吊り軸パイプの先端に固定されたガイド材と、前記ガイド材に沿って上下方向にスライドするスライド材と、を備えており、前記ブラケットが、基端部が前記ガイド材に接続された上リンクアームと、基端部が前記スライド材に接続された下リンクアームと、前記上リンクアームの先端部と下リンクアームの先端部を連結する連結部材とを備えていてもよい。
【0011】
かかるスライム処理装置によれば、ガイド材に沿ってスライド材がスライドすることで支持部材が伸縮するようになる。
したがって、スライム処理装置は、支持部材が伸びた状態で掘削孔に吊り下げられ、スライド材の先端が孔底に当接すると、ガイド材が下降し、支持部材が縮んだ状態となる。
【0012】
ブラケットは、支持部材の伸張した状態では、上リンクアームの基端部と下リンクアームの基端部とが離隔し、両先端部が支持部材に近づくようになる。一方、支持部材が収縮した状態では、上リンクアームの基端部と下リンクアームの基端部とが近づき、両先端部が支持部材から離れるように両リンクアームが旋回し、水中ポンプが支持部材から離れる方向に移動する。
【0013】
前記スライム処理装置が、一端が前記ガイド材の上端に固定されて、他端が前記スライド材の上端を係止可能に形成された吊りロッドを備えていれば、吊りロッドが伸縮部材の伸張時のストッパとして機能するため、スライム処理装置の破損を防止することができる。
【0014】
前記スライム処理装置において、前記水中ポンプが、複数配置されていれば、広範囲のスライム処理を効率良く行うことが可能となる。
【0015】
また、前記スライム処理装置において、少なくとも一つの前記水中ポンプから前記吊り軸パイプに至る配管に、前記水中ポンプ側へのスライムの逆流を阻止する逆止弁が介設されていれば、逆止弁を備えて接続された水中ポンプを停止させた状態で、他の水中ポンプを稼動させたとしても、停止状態に水中ポンプ側にスライムが流れ込むことがない。
【0016】
前記スライム処理装置の前記水中ポンプが、下端部に配置された撹拌翼と、前記撹拌翼の直上に配置された集水板と、を備えていれば、効果的にスライムの処理を行うことができる。
【0017】
また、前記水中ポンプがスライムを検知するセンサを備えていれば、掘削孔の拡底部のスライムの有無の確認を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスライム処理装置によれば、掘削孔等の拡底部の側部に堆積するスライムの処理を効果的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係るスライム処理装置を示す部分断面正面図である。
【図2】図1に示すスライム処理装置のヘッダーパイプを示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図3】図1に示すスライム処理装置のスタビライザ示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図4】(a)および(b)は、図1に示すスライム処理装置の使用状況を示す正面図である。
【図5】(a)および(b)は、スライム処理装置の変形例を示す正面図である。
【図6】従来のスライム処理ポンプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
本実施形態では、拡底杭の掘削孔の底面に堆積したスライムを除去するためのスライム処理装置1について説明する。
【0021】
スライム処理装置1は、図1に示すように、吊り軸パイプ10と、吊り軸パイプ10の先端に接続される支持部材20と、支持部材20から張り出すブラケット30と、ブラケット30の先端部に取り付けられた水中ポンプ40とを備えている。
【0022】
吊り軸パイプ10は、パイプ本体11と、ヘッダーパイプ12とを備えており、水中ポンプ40により吸引されたスライムを地上部に輸送する輸送管として機能する。
【0023】
パイプ本体11は、地上部から掘削孔内に略垂直に挿入された管材であって、本実施形態では鋼管を使用する。パイプ本体11を構成する材料は限定されるものではないが、水中ポンプ40を掘削孔の拡底部に配置する際や、水中ポンプ40の稼動時に、スライム処理装置1を支持することが可能な強度を有している必要がある。
【0024】
パイプ本体11の下端には、フランジ11aが一体に形成されている。フランジ11aには、後記するヘッダーパイプ12のフランジ13aが固定される。
【0025】
ヘッダーパイプ12は、図4(a)および(b)に示すように、パイプ本体11の先端(下端)に連結された本体管部13と、本体管部13から分岐した複数(本実施形態では3つ)の分岐管部14とを備えて構成されている。
【0026】
本体管部13は、支持部材20および水中ポンプ40を支持することが可能な強度を備えた管材(例えば鋼管)により構成されている。
本体管部13の上端および下端には、フランジ13a,13aが一体に形成されている。本体管部13(ヘッダーパイプ12)は、上端がパイプ本体11に、下端が支持部材20に、それぞれフランジ13a,13aを介して固定されている。本実施形態では、ヘッダーパイプ12のパイプ本体11および支持部材20への固定を、ボルトとナットを介して行うものとするが、ヘッダーパイプ12の固定方法は限定されるものではなく、適宜公知の方法により行えばよい。
【0027】
本体管部13(ヘッダーパイプ12)の下部には、図4(a)に示すように、複数(本実施形態では3本)の分岐管部14,14,14が形成されており、水中ポンプ40から延設されたスライム排出管(配管)41の接続が可能に構成されている。なお、分岐管部14の本数は、スライム処理装置1が備える水中ポンプ40の台数に応じて設定する。
【0028】
複数の分岐管部14は、ヘッダーパイプ12の周方向に等間隔となるように配置されている。
分岐管部14の先端には、フランジ14aが一体に形成されている。図1に示すように、フランジ14aには、スライム排出管41の取付部材42が固定される。
【0029】
分岐管部14は、本体管部13に連通しており、スライム排出管41を介して輸送されたスライムは、分岐管部14を通ってパイプ本体11に輸送される。
【0030】
ヘッダーパイプ12の外周には、図1に示すように、分岐管部14と上側のフランジ13aとの間に台座13bが形成されている。台座13bには、スタビライザ15が固定される。
【0031】
台座13bは、図2(a)に示すように、平面視矩形の鋼板であって、スタビライザ15の固定が可能となるように、複数のボルト孔hが形成されている。
なお、台座13bの構成は限定されるものではなく、スタビライザ15の形状等に応じて適宜設定することが可能である。また、台座13bは必要に応じて形成すればよく、省略することも可能である。
【0032】
スタビライザ15は、スライム処理装置1の配置時における、スライム処理装置1のブレや傾きを抑止するための部材である。本実施形態では、図3(a)および(b)に示すように、断面コ字状の溝型鋼を加工することにより平面視円形に形成された本体部15aと、平面視略H形で本体部15aに内側空間に形成された取付部15bとにより構成されている。
【0033】
スタビライザ15は、その取付部15bを台座13bに固定することにより、スライム処理装置1に装着されている。
なお、スタビライザ15の形状や固定方法等は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。また、スタビライザ15は、必ずしも台座13bを介して固定される必要はなく、直接本体管部13に固定してもよい。また、スタビライザ15は、必要に応じて形成すればよく、省略することも可能である。
【0034】
ヘッダーパイプ12の内部には、図2(b)に示すように、遮蔽部材16が配置されている。
【0035】
遮蔽部材16は、分岐管部14,14,14の接続箇所の直下に配置されており、ヘッダーパイプ12の下部を遮蔽している。遮蔽部材16は、分岐管部14を介して輸送されたスライムが、支持部材20側に流出することを防止し、パイプ本体11方向に誘導する。
なお、遮蔽部材16の配置箇所は、分岐管部14,14,14接続箇所の直下に限定されるものではなく、本体管部13の下端に配置するなど、適宜設定することが可能である。
【0036】
支持部材20は、図1に示すように、ガイド材21とスライド材22とを備えて構成されている。
【0037】
ガイド材21は、ヘッダーパイプ12(吊り軸パイプ10)の先端(下端)に固定された管材からなり、スライド材22を摺動可能に内挿している。
ガイド材21の上端には取付板21aが形成されている。取付板21aは、ヘッダーパイプ12のフランジ13aへ固定される。
【0038】
取付板21aは、ガイド材21の上端を遮蔽するように形成された板材であって、その中心部には、吊りロッド23を挿通することが可能な貫通孔が形成されている。
取付板21aは、吊りロッド23を介してガイド材21を吊持することが可能な程度の耐力を有したものであれば、その材質や厚み等は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0039】
ガイド材21の下端は、スライド材22の出し入れが可能となるように開放されている。
【0040】
スライド材22は、ガイド材21に内挿された管材であって、ガイド材21に沿って上下方向にスライドする。
【0041】
スライド材22の上端は、係止板22aにより遮蔽されている。一方、スライド材22の下端の外周には、スタンド材22bが一体に形成されている。
【0042】
係止板22aの中央には貫通孔が形成されている。この貫通孔には、吊りロッド23が挿通される。そして、スライド材22は、係止板22aの貫通孔に吊りロッド23を挿通させた状態で配置されている。
【0043】
係止板22aは、吊りロッド23により吊持された状態で、スライド材22の自重を支持する程度の強度を備えている必要がある。
なお、係止板22aは、必要に応じて配設すればよい。
【0044】
スタンド材22bは、支持部材20の下端が掘削孔の底面に当接した際に、スライム処理装置1が傾斜することがないように、支持するための部材である。
本実施形態では、スタンド材22bとして、支持部材20の外径よりも広い外径を有した円盤状の部材により構成するものとしたが、スタンド材22bの構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0045】
吊りロッド23は、図1に示すように、上端がガイド材21の取付板21aに係止されており、下端がガイド材21の上端に配設された係止板22aに係止可能に形成されている。
【0046】
吊りロッド23の上端には、ナットが固定されている。吊りロッド23は、スライド材22の上端の係止板22aの貫通孔に挿通されており、上端のナットにより取付板21aに係止され、ガイド材21内に吊下げられている。
なお、吊りロッド23の上端は、取付板21aに固定されていてもよい。
【0047】
吊りロッド23の下端には、ナットが固定されている。そして、スライド材22が、ガイド材21に沿って下方向にスライドした際に、吊りロッド23下端のナットに係止板22aが係止される(図4(a)参照)。
【0048】
支持部材20は、図4(a)および(b)に示すように、スライム処理装置1を掘削孔Hへ挿入する際においては、伸張した状態(スライド材22の下端部がガイド材21から突出した状態)になっていて、掘削孔Hの底面Hbにスタンド材22bが当接した状態でさらに下降させると、収縮した状態(スライド材22がガイド材21に収納された状態)になる。
【0049】
ブラケット30は、図4(a)および(b)に示すように、横方向に伸縮可能なリンク機構により構成されており、支持部材20の伸縮に伴い、水中ポンプ40の位置を横移動させる。
【0050】
ブラケット30は、図1に示すように、基端部がガイド材21に接続された上リンクアーム31と、基端部がスライド材22に接続された下リンクアーム32と、上リンクアーム31の先端部と下リンクアームの先端部を連結する連結部材33と、角度制御ブラケット34と、を備えている。
【0051】
本実施形態では、ブラケット30を3つ配設するものとするが、ブラケット30の数は限定されるものではなく、水中ポンプ40の数や配置に応じて適宜設定することが可能である。
【0052】
上リンクアーム31は、上下方向での旋回が可能となるようにガイド材21と連結部材33に接続されている。すなわち、上リンクアーム31は、基端部はガイド材21の側面にピン接続されており、先端部は連結部材33にピン接続されている。
【0053】
上リンクアーム31は、図4(a)に示すように、掘削孔Hへのスライム処理装置1の挿入時には、ガイド材21の側面に吊下げられた状態となっている。スライド材22が掘削孔Hの底面Hbに当接して支持部材20が収縮する際には、図4(b)に示すように、上リンクアーム31の先端部が上昇する方向(支持部材から離れる方向)に旋回する。
【0054】
下リンクアーム32は、上下方向での旋回が可能となるようにスライド材22と連結部材33に接続されている。すなわち、下リンクアーム33は、基端部はスライド材22の側面にピン接続されており、先端部は連結部材33にピン接続されている。
【0055】
下リンクアーム32は、図4(a)に示すように、掘削孔Hへのスライム処理装置1の挿入時には、スライド材22に基端部が接続された状態で、略立設している。スライド材11が掘削孔Hの底面Hbに当接して支持部材20が収縮する際には、図4(b)に示すように、下リンクアーム32の先端部が下降する方向(支持部材20から離れる方向)に旋回する。
【0056】
連結部材33は、図1に示すように、上リンクアーム31および下リンクアーム32と、水中ポンプ40とを連結する部材である。
連結部材33の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0057】
連結部材33は、図4(a)に示すように、支持部材20が伸張した状態では支持部材20に近接し、支持部材20が収縮した状態では支持部材20から離隔する。連結部材33の移動に伴い、水中ポンプ40の位置も移動する。
【0058】
角度制御ブラケット34は、図1に示すように、下リンクアーム32に固定された部材である。
角度制御ブラケット34は、断面視台形に形成された部材であって、本実施形態では、樹脂により構成されている。なお、角度制御ブラケット34の材質や形状寸法等は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0059】
角度制御ブラケット34は、図4(a)に示すように、スライム処理装置1の移動時(スライム処理装置1を吊持した状態)に、下リンクアーム32と後記する支持台40cとの間に挟まることで、下リンクアーム32の角度(支持部材20の伸長)を制御する。
【0060】
角度制御ブラケット34により、スライム処理装置1の移動時の下リンクアーム32の角度が制御されているため、スライム処理装置1を掘削孔H底面に載置する際に、水中ポンプ40の横移動を効率的に行うことが可能となる。
【0061】
水中ポンプ40は、掘削孔Hの底部(底面Hb)に堆積するスライムを吸引し、地上部まで圧送する。本実施形態では、3台の水中ポンプ40を配設するが、水中ポンプ40の数は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0062】
水中ポンプ40は、図1に示すように、スライム排出管41を介して吊り軸パイプ11に接続されている。
【0063】
スライム排出管41は、ゴム製ホースであって、水中ポンプ40によるスライム圧送時の圧力に対して十分な強度を有したものにより構成されている。また、スライム排出管41は、水中ポンプ40の移動に伴って変形するように構成されている。スライム排出管41は、取付部材42を介して、ヘッダーパイプ12に連結されている。
なお、スライム排出管41を構成する材料は限定されるものではなく、適宜公知の管材から選定して使用することが可能である。例えば、取付部材42が回転可能に構成されている場合には、スライム排出管41を鋼管等により構成することが可能である。
【0064】
水中ポンプ40により吸引されたスライムは、スライム排出管41を介してヘッダーパイプ12に圧送された後、吊り軸パイプ10により地上まで圧送される。
本実施形態では、水中ポンプ40の圧送力によりスライムを圧送するものとしたが、地上部にスライムを吸引するためのポンプを配置してもよい。
【0065】
本実施形態では、図1に示すように、2つの水中ポンプ40、40(図1では1つのみを示している)のスライム排出管41,41に、水中ポンプ40側へのスライムの逆流を阻止する逆止弁43が介設されている。
【0066】
水中ポンプ40は、出力軸の下端部に配置された撹拌翼40aと、撹拌翼40aの直上に配置された集水板40bとを備えている。
集水板40bは、皿状の板材であって、撹拌翼40aによる撹拌力を向上させるとともに、水中ポンプ40による集水力の向上を図る。
【0067】
水中ポンプ40は、支持台40c上に固定されている。支持台40cは、撹拌翼40aおよび集水板40bを保護するものである。
支持台40cは、連結部材33の下端部に取り付けられた篭状の部材であって、水中ポンプと掘削孔底面との間に所定の間隔をあけるとともに、撹拌翼40aの回転による水とスライムの撹拌を妨げないように構成されている。
【0068】
水中ポンプ40は、スライムを検知するためのセンサ(図示省略)を備えている。本実施形態では、スライムを検知するためのセンサとして、電流センサ(テスター)を使用するが、スライムを検知するためのセンサは限定されるものではなく、例えば超音波、電磁波または磁歪式センサなど、適宜公知のセンサの中から選定して採用することが可能である。
【0069】
スライム処理装置1は、図1に示すように、検測テープ50を備えており、掘削孔Hの底面Hbの深さを検測することが可能に構成されている。
検測テープ50の設置方法は限定されるものではないが、本実施形態では、スタビライザ15、連結部材33、水中ポンプ40等に設置されたローラーや係止部材等を介して底面Hbの検測が可能となるように設置する。
【0070】
次に、スライム処理装置1の動作について説明する。
スライム処理装置1は、クレーン等の揚重機により吊持された状態で、掘削孔H内に挿入される。このとき、吊り軸パイプ10は、吊り軸パイプ10の傾きやスライム処理装置1の平面位置のぶれを抑止するために、孔口部において支持されている。
【0071】
スライム処理装置1は、掘削孔H内への挿入時においては、図4(a)に示すように、スライド材22の自重により支持部材20が伸張した状態となっている。
【0072】
支持部材20が伸張した状態では、上リンクアーム31の基端部と下リンクアーム32の基端部とが互いに離隔し、上リンクアーム31と下リンクアーム32が略立設した状態になる。これにより、連結部材33を介して上リンクアーム31および下リンクアーム32の先端部に取り付けられた水中ポンプ40は、支持部材20に近接した位置に配置される。
【0073】
スライム処理装置1の下降により、支持部材20の下端が掘削孔の底部に当接すると、図4(b)に示すように、スライド材22に沿ってガイド材21が下降することで支持部材20が収縮する。これにより、上リンクアーム31の基端部と下リンクアーム32の基端部とが互いに近接するとともに、上リンクアーム31および下リンクアーム32が、先端部が支持部材20から離れるように旋回する。
上リンクアーム31および下リンクアーム32の旋回により、上リンクアーム31および下リンクアーム32の先端部に取り付けられた水中ポンプ40は、支持部材20から離隔する。
【0074】
したがって、水中ポンプ40は、掘削孔Hの底面Hbにおいて、吊り軸パイプ10から偏心した位置に配置されることで、拡底部分に配置することが可能となる。
【0075】
水中ポンプ40を、掘削孔Hの拡底部分に配置した状態で作動させて、スライムの除去を行う。
【0076】
水中ポンプ40を作動させると、撹拌翼の回転により水流が底面Hb方向に押し付けられ、底面Hbに堆積するスライムが巻き上げられる。水流とともに巻き上げられたスライムは、水中ポンプ40の吸引力により集水板に沿って水中ポンプ40内へと吸引される。そして、水中ポンプ40により吸引されたスライムは、スライム排出管41および吊り軸パイプ10を介して地上部に排出される。
【0077】
センサによりスライムの除去が確認できたら、随時スライム処理装置1の平面位置を移動させて、掘削孔Hの底面Hb全体についてスライムの除去を行う。このとき、検測テープ50により掘削孔Hの底面Hbにおけるスライムの有無を感触で確認する。
【0078】
以上、本実施形態に係るスライム処理装置1によれば、掘削孔の底部において、水中ポンプが偏心した位置に移動するため、拡底孔等の拡底部(拡径部)の側部のスライムの除去を行うことができる。そのため、高品質施工が可能となる。
【0079】
スライム処理装置1は、シリンダー状に形成された支持部材20が、スライム処理装置1の下降に伴い収縮することにより、自動的にブラケット30が拡径(拡幅)して水中ポンプ40の位置が移動する構成なため、スライム処理装置1の設置を簡易に行うことができ、操作性に優れている。また、複雑な設備を必要としないため、スライム処理装置1の軽量化が可能となるとともに、安価に構成することが可能である。
【0080】
また、吊りロッド23がスライド材22のストッパとして機能するため、スライド材22がガイド材21から抜け出すことはない。
【0081】
スライム処理装置1は、3台の水中ポンプ40によりスライムの除去を行うため、広範囲のスライムを効率よく除こすることを可能としている。
また、逆止弁43を備えていることで、一部の水中ポンプ40を停止させた状態で、他の水中ポンプ40を作動させたとしても、停止状態の水中ポンプ40側にスライムが流れ込むことを防止できる。そのため、不要な水中ポンプ40を停止することが可能となり、使用エネルギーの削減が可能となる。
【0082】
掘削孔Hの底面Hbのスライムの有無は、センサを利用して行うため、高品質施工が可能である。また、検測テープ50により底面Hbにおけるスライムの有無を感触で確認することができる
【0083】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、拡底杭を形成するための掘削孔Hについて、掘削孔Hの底面Hbに堆積したスライムを除去する場合について説明したが、例えば地中連続壁を構築する際に削孔した掘削孔(掘削溝)などに採用可能であり、本発明のスライム処理装置の利用の対象となる掘削孔の構築目的は限定されるものではない。
【0084】
また、スライム除去のタイミングは限定されるものではなく、適宜行えばよい。例えば、掘削孔Hの掘削が完了し、鉄筋かごを建て込む前に行ってもよいし、鉄筋かごを掘削孔Hの底面Hbから所定の間隔をあけた位置に吊持した状態で底面のスライム除去を行ってもよい。
【0085】
前記実施形態では、支持部材20がシリンダー状に形成されていることで、伸縮するように構成し、この支持部材20とブラケット30が連動していることで水中ポンプ40の位置が変化するように構成したが、水中ポンプ40の移動方法は、これに限定されるものではない。つまり、ブラケット30が油圧により伸縮してもよく、地上からの操作により、水中ポンプ40の位置を調節するようにしてもよい。
また、図5に示すように支持部材20の先端にブラケット30が取り付けられており、ブラケット30の下端に取り付けらえたスタンド材35が掘削孔Hの底面Hbに載置された状態で支持部材20(吊り軸パイプ10)を下降させることで、ブラケット30を拡径(水中ポンプ40を横移動させるものとしてもよい。
【0086】
前記実施形態では、ガイド材21が外管、スライド材22が内管からなる二重管により支持部材20を構成した場合について説明したが、支持部材20の構成はこれに限定されるものではなく、例えばガイド材21が内管でスライド材22が外管であるなど、適宜構成することが可能である。また、支持部材20は二重管に限定されるものではない。
【0087】
前記実施形態では、スライド材22のストッパとして吊りロッド23や角度制御ブラケット34を配置するものとしたが、ストッパの機構は限定されるものではない。
【0088】
前記実施形態では、一部の水中ポンプ40に対して逆止弁43を設置するものとしたが、全ての水中ポンプ40に対して逆止弁43を設置するなど、逆止弁43を設置する数は限定されるものではない。また、逆止弁43は、必要に応じて設置すればよく、省略することが可能である。
【0089】
水中ポンプ40が備える撹拌翼の機構や集水板の位置や形状等は限定されるものではなく、適宜効率的なスライム除去が可能な構成とすればよい。
【0090】
前記実施形態では、センサを利用してスライムの有無を確認するものとしたが、スライムの測定方法は、前記の方法に限定されるものではない。例えば、水中ポンプ40に水中カメラを設置し、映像により確認してもよい。また、検測テープにより掘削孔Hの深度を確認してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 スライム処理装置
10 吊り軸パイプ
12 ヘッダーパイプ
20 支持部材
21 ガイド材
22 スライド材
23 吊りロッド
30 ブラケット
31 上リンクアーム
32 下リンクアーム
33 連結部材
34 角度制御ブラケット
40 水中ポンプ
40a 撹拌翼
40b 集水板
41 スライム排出管(配管)
43 逆止弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り軸パイプと、
前記吊り軸パイプの先端に接続される支持部材と、
前記支持部材から張り出すブラケットと、
前記ブラケットの先端部に取り付けられた水中ポンプと、を備えるスライム処理装置であって、
前記ブラケットは、伸縮可能に構成されており、
前記吊り軸パイプは、前記水中ポンプにより吸引されたスライムを地上部に輸送する輸送管としての機能を有することを特徴とするスライム処理装置。
【請求項2】
前記支持部材が、前記吊り軸パイプの先端に固定されたガイド材と、前記ガイド材に沿って上下方向にスライドするスライド材と、を備えており、
前記ブラケットが、前記ガイド材に接続された上リンクアームと、前記スライド材に接続された下リンクアームと、前記上リンクアームの先端部と前記下リンクアームの先端部を連結する連結部材とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のスライム処理装置。
【請求項3】
一端が前記ガイド材の上端に固定されて、他端が前記スライド材の上端を係止可能に形成された吊りロッドを備えることを特徴とする、請求項2に記載のスライム処理装置。
【請求項4】
前記水中ポンプが、複数配置されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライム処理装置。
【請求項5】
少なくとも一つの前記水中ポンプから前記吊り軸パイプに至る配管に、前記水中ポンプ側へのスライムの逆流を阻止する逆止弁が介設されていることを特徴とする、請求項4に記載のスライム処理装置。
【請求項6】
前記水中ポンプが、下端部に配置された撹拌翼と、前記撹拌翼の直上に配置された集水板と、を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のスライム処理装置。
【請求項7】
前記水中ポンプがスライムを検知するセンサを備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のスライム処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185313(P2010−185313A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28850(P2009−28850)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(596061339)豊栄産業株式会社 (2)
【出願人】(509040709)有限会社建機エンジニアリング (2)
【Fターム(参考)】