説明

ダンパ装置

【課題】伸縮振動を現在していなくても、長さを伸ばすことが可能なダンパ装置を提供する。
【解決手段】シリンダ2の内部をピストン3で第1流体室2aおよび第2流体室2bに区画し減衰力を発生させるダンパ装置1において、一端がピストン3に連結され他端がシリンダ2の上端側の外部に延在し内部に第3流体室4aが設けられたピストンロッド4と、一端がシリンダ2の下端側に固定され他端が第3流体室4aに配置され軸方向に貫通する流体通路5aが設けられ第3流体室4aに対して振動すると吸引と吐出を繰り返すポンピングをするポンプロッド5と、その吐出の際に作動液12が流入して内圧が高くなる第1チャンバ8と、その吸引の際に作動液が流出して内圧が低くなる第2チャンバ9と、第2流体室2bと第1チャンバ8とで連通させた状態と連通させていない状態とを切り換える第1切換手段10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さを可変制御できるダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長さを可変制御できるダンパ装置としては、車両に搭載され、車両の走行中に、ダンパ装置の伸縮振動を利用したセルフポンピングによって、長さを伸ばし、車高を所定の高さに維持するものが提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−292284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のダンパ装置では、車両が走行中で、ダンパ装置が現在伸縮振動をしていなければ、セルフポンピングによって長さを伸ばすことができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、伸縮振動を現在していなくても、長さを伸ばすことが可能なダンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、作動液を封入したシリンダの内部をピストンで第1流体室および第2流体室に区画し、前記作動液を前記第1流体室と前記第2流体室の一方から他方に流し減衰力を発生させるダンパ装置において、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの上端側の外部に延在し、内部に第3流体室が設けられたピストンロッドと、
一端が前記シリンダの下端側に固定され、他端が前記第3流体室に配置され、軸方向に貫通する流体通路が設けられ、前記ピストンロッドの前記シリンダに対する振動に伴い、前記第3流体室に対して出し入れする方向に相対的に振動し、前記第3流体室に吸引と吐出を繰り返すポンピングをさせるポンプロッドと、
前記吐出の際に前記作動液が流入して内圧が高くなる第1チャンバと、
前記第1流体室と前記第2流体室の一方と、前記第1チャンバとで、連通させた状態と、連通させていない状態とを切り換える第1切換手段とを有することを特徴としている。
【0007】
これによれば、ダンパ装置が伸縮振動をすると、ピストンに連結されたピストンロッド内に設けられた第3流体室に対して、シリンダに固定されたポンプロッドを貫通する流体通路が出し入れされる方向に振動する。ポンプロッドを貫通する流体通路は、第3流体室に差し込まれているので、その出し入れされる方向の振動によって、第3流体室内への作動液の流体通路を介しての吸引と、第3流体室内からの作動液の流体通路を介しての吐出とを交互に繰り返す。ポンプロッドを貫通する流体通路が、第3流体室から出される方向に運動すると、第3流体室内に占めるピストンロッドの体積が減少するので、その体積に相当する量の作動液が、流体通路を介して第3流体室内に流れ込み、いわゆる、第3流体室内への吸引(現象)が生じる。ポンプロッドを貫通する流体通路が、第3流体室へ入れられる方向に運動すると、第3流体室内に占めるピストンロッドの体積が増大するので、その体積に相当する量の作動液が、流体通路を介して第3流体室内から流れ出て、いわゆる、第3流体室内からの吐出(現象)が生じる。第3流体室と流体通路において、吸引(現象)と吐出(現象)が、交互に繰り返され、いわゆる、ポンピングを実施することができる。
【0008】
そして、第1チャンバは、吐出の際に流体通路を経由して作動液が流入し、内圧を高くすることができる。また、第1チャンバは、第1流体室と第2流体室の一方と連通させていない状態に維持することができるので、内圧を高いまま維持することができる。
【0009】
第1チャンバ内は高圧に維持されているので、ダンパ装置が伸縮振動を現在していなくても、第1切換手段によって、第1チャンバを、第1流体室と第2流体室の一方と連通させると、第1流体室と第2流体室の一方の内圧を高めることができる。これにより、シリンダに対してピストン(ピストンロッド)を移動させ、第1流体室と第2流体室の容積を変化させることができるので、ダンパ装置の長さを伸ばす(又は縮める)ことができる。このように、ダンパ装置が伸縮振動を現在している、していないにかかわらず、任意のタイミングで、ダンパ装置の長さを伸ばす(又は縮める)ことができる。このダンパ装置を用いて、車両の車高調整を行えば、任意のタイミングで実施できるので、車高調整の制御性を高めることができる。
【0010】
また、第2の本発明は、作動液を封入したシリンダの内部をピストンで第1流体室および第2流体室に区画し、前記作動液を前記第1流体室と前記第2流体室の一方から他方に流し減衰力を発生させるダンパ装置において、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの上端側の外部に延在し、内部に第3流体室が設けられたピストンロッドと、
一端が前記シリンダの下端側に固定され、他端が前記第3流体室に配置され、軸方向に貫通する流体通路が設けられ、前記ピストンロッドの前記シリンダに対する振動に伴い、前記第3流体室に対して出し入れする方向に相対的に振動し、前記第3流体室に吸引と吐出を繰り返すポンピングをさせるポンプロッドと、
前記吸引の際に前記作動液が流出して内圧が低くなる第2チャンバと、
前記第1流体室と前記第2流体室の一方と、前記第2チャンバとで、連通させた状態と、連通させていない状態とを切り換える第1切換手段とを有することを特徴としている。
【0011】
これによっても、第3流体室と流体通路において、吸引(現象)と吐出(現象)が、交互に繰り返され、いわゆる、ポンピングを実施することができる。そして、第2チャンバは、吸引の際に流体通路を経由して作動液が流出し、内圧を低くすることができる。また、第2チャンバは、第1流体室と第2流体室の一方と連通させていない状態に維持することができるので、内圧を低いまま維持することができる。
【0012】
第2チャンバ内は低圧に維持されているので、ダンパ装置が伸縮振動を現在していなくても、第1切換手段によって、第2チャンバを、第1流体室と第2流体室の一方と連通させると、第1流体室と第2流体室の一方の内圧を低めることができる。これにより、シリンダに対してピストン(ピストンロッド)を移動させ、第1流体室と第2流体室の容積を変化させることができるので、ダンパ装置の長さを伸ばす(又は縮める)ことができる。このように、ダンパ装置が伸縮振動を現在している、していないにかかわらず、任意のタイミングで、ダンパ装置の長さを伸ばす(又は縮める)ことができる。このダンパ装置を用いて、車両の車高調整を行えば、任意のタイミングで実施できるので、車高調整の制御性を高めることができる。
【0013】
また、第2の本発明では、前記吐出の際に前記作動液が流入して内圧が高くなる第1チャンバを有し、
前記第1切換手段は、
前記第1流体室と前記第2流体室の一方と、前記第1チャンバとで、連通させた状態と、連通させていない状態とを切り換えることが好ましい。
【0014】
これによれば、第1流体室と第2流体室の一方を、第1チャンバに連通させた状態と、第2チャンバに連通させた状態と、第1チャンバと第2チャンバに連通させていない状態とを切り換えることができることになる。第1流体室と第2流体室の一方を、第1チャンバに連通させれば、第1流体室と第2流体室の一方の内圧を高めることができる。第1流体室と第2流体室の一方を、第2チャンバに連通させれば、第1流体室と第2流体室の一方の内圧を下げることができる。第1流体室と第2流体室の一方を、第1チャンバと第2チャンバに連通させなければ、第1チャンバと第2チャンバの内圧を維持することができる。第1流体室と第2流体室の一方の内圧を、下げるだけでなく、高めることもできるので、長さを伸ばす(又は縮める)のみで自然に縮む(又は伸びる)のを待つのでなく、迅速に縮める(又は伸ばす)ことができる。ダンパ装置の長さを、迅速に伸ばしたり縮めたりする(伸縮する)ことができる。なお、第1チャンバでは、第3流体室からの作動液の吐出の際に、作動液が流入し、第2チャンバでは、第3流体室への作動液の吸引の際に、作動液が流出するので、実質的には、第3流体室を介して、第2チャンバから第1チャンバへ作動液が流れたことになり、ポンピング動作に伴うダンパ本体の第1流体室・第2流体室における圧力変動を抑制することができる。
【0015】
また、本発明では、前記第1チャンバと前記第2チャンバを、前記流体通路に連通させない状態に切り換える第2切換手段を有することが好ましい。
【0016】
ダンパ装置を、第2切換手段で、流体通路に連通させない状態に切り換えることで、通常の減衰力を発生させるダンパ装置として使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、伸縮振動を現在していなくても、長さを伸ばすことが可能なダンパ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポンピング(蓄圧)モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るノーマル・モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車高アップ・モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車高ダウン・モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る複数のダンパ装置が搭載されたダンパシステム(車両)の構成図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の制御方法(その1)のフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の制御方法(その2)のフローチャートである。
【図8】(a)は車体がハイポジションに設定された車両の側面図であり、(b)は車体がロウポジションに設定された車両の側面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るポンピング(蓄圧)モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る車高アップ・モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るポンピング(蓄圧)モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る車高ダウン・モードにおけるダンパ装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置1の縦断面図を示す。図1では、ダンパ装置1が、ポンピング(蓄圧)モードにある場合を示している。ダンパ装置1では、作動液12が充填・封入されたシリンダ2内に、ピストン3が摺接し、摺動可能に嵌め込まれている。シリンダ2とピストン3とで、ピストン3の上側の第1流体室2aと、下側の第2流体室2bとが区画されている。ピストン3が摺動すると、ピストン3に設けられた減衰力発生部3a、3bを介して、作動液12が、第1流体室2aと第2流体室2bの一方から他方へ流れ、減衰力を発生させることができる。減衰力発生部3a、3bとしては、例えば、図1に示すような互いに流動可能な方向が異なる一対の逆止弁を用いることができる。
【0021】
ピストン3には、ピストンロッド4の一端が接続されている。ピストンロッド4は、第1流体室2aを通って、シリンダ2の上端部を貫通している。ピストンロッド4は、作動液12を装置外部に漏らすことなく、シリンダ2の上端面に摺接し、摺動可能に嵌め込まれている。ピストンロッド4の他端は、シリンダ2の上端側の外部に延在している。そして、このピストンロッド4の他端は、例えば、図1に示すように車体13に取り付けられる。ピストンロッド4の内部には、作動液12が充填・封入された第3流体室4aが設けられている。ピストンロッド4は、内側を第3流体室4aとする円筒形状をしている。
【0022】
シリンダ2の外側には、外筒11が設けられている。シリンダ2と外筒11とで、リザーバ室11aが区画されている。リザーバ室11aの上部の作動液12の液面の上には、ガス11bが充填されている。リザーバ室11aは、シリンダ2の下部に設けられた連通孔11cにより、第2流体室2bに接続している。
【0023】
シリンダ2の内側には、ポンプロッド5が設けられている。ポンプロッド5の一端側は、第2流体室2b内に配置され、その他端側は、第3流体室4a内に配置されている。ポンプロッド5は、ピストンロッド4の下端部を貫通している。ポンプロッド5は、作動液12を、第3流体室4aから第2流体室2bへ漏らしたり、逆に、第2流体室2bから第3流体室4aへ漏らしたりすることないように、ピストンロッド4の下端部に摺接し、摺動可能に嵌め込まれている。ポンプロッド5の一端側は、バルブ手段6a、6bや、第2切換手段7等を介して、シリンダ2の下端面(下端側)に固定されている。ポンプロッド5の内部には、軸方向に貫通する流体通路5aが設けられている。ポンプロッド5は、内側を流体通路5aとする円筒形状をしている。
【0024】
ダンパ装置1が伸縮振動をすると、ピストン3に連結されたピストンロッド4内に設けられた第3流体室4aに対して、シリンダ2に固定されたポンプロッド5を貫通する流体通路5aが出し入れされる方向(軸方向)に振動する。ポンプロッド5は、第3流体室4aに差し込まれているので、その出し入れされる方向(軸方向)の振動によって、第3流体室内4aへの作動液12の流体通路5aを介しての吸引と、第3流体室4a内からの作動液12の流体通路5aを介しての吐出とを、交互に繰り返すことになる。すなわち、ポンプロッド5が、第3流体室4aから出される方向に運動すると、第3流体室4a内に占めるポンプロッド5の体積が減少するので、その体積に相当する量の作動液12が、流体通路5aを介して第3流体室4a内に流れ込み、第3流体室4a内への吸引(現象)が生じる。逆に、ポンプロッド5が、第3流体室4aへ入れられる方向に運動すると、第3流体室4a内に占めるポンプロッド5の体積が増大するので、その体積に相当する量の作動液12が、流体通路5aを介して第3流体室4a内から流れ出て、第3流体室4a内からの吐出(現象)が生じる。以上より、ダンパ装置1が伸縮振動をすると、第3流体室4aと流体通路5aにおいて、吸引(現象)と吐出(現象)が、交互に繰り返され、いわゆる、ポンピングを実施することができる。
【0025】
ポンプロッド5内に設けられた流体通路5aの下端部は、二股に分岐し、流体通路7aと7cとに接続している。流体通路7aと7cのそれぞれには、逆止弁(バルブ手段)6a、6bが接続されている。逆止弁(バルブ手段)6aと6bとは、図1に示すように互いに流動可能な方向が異なっている。逆止弁(バルブ手段)6aは、第3流体室4aと流体通路5aの側から吐出してくる作動液12を、第2切換手段7側へ流すことができるが、第3流体室4aと流体通路5aの側へ吸引されてゆく作動液12を、第2切換手段7側から流すことはできない。逆止弁(バルブ手段)6bは、第3流体室4aと流体通路5aの側へ吸引されてゆく作動液12を、第2切換手段7の側から流すことができるが、第3流体室4aと流体通路5aの側から吐出されてくる作動液12を、第2切換手段7の側へ流すことはできない。以上から、第3流体室4aと流体通路5aの側から吐出されてくる作動液12は、逆止弁(バルブ手段)6aと流体通路7aを流れ、第3流体室4aと流体通路5aの側へ吸引されてゆく作動液12は、逆止弁(バルブ手段)6bと流体通路7cを流れることになる。
【0026】
第2切換手段7には、流体通路7a、7b、7c、7d、7eのそれぞれの一端が接続されている。流体通路7aのもう一端は、逆止弁(バルブ手段)6aに接続している。流体通路7bのもう一端は、第2流体室2bに接続している。流体通路7cのもう一端は、逆止弁(バルブ手段)6bに接続している。流体通路7dのもう一端は、高圧チャンバ(第1チャンバ)8に接続している。流体通路7eのもう一端は、低圧チャンバ(第2チャンバ)9に接続している。
【0027】
第2切換手段7は、ポンピング(蓄圧)モードと、ノーマル・モードとを切り換えることができる。図1では、第2切換手段7が、ポンピング(蓄圧)モードに切り換えられている状態を示している。ポンピング(蓄圧)モードでは、第2切換手段7によって、流体通路7aと7dとが互いに接続され、流体通路7cと7eとが互いに接続され、流体通路7bは他の流体通路に接続せずに閉じられている。
【0028】
そして、ポンピング(蓄圧)モードでは、前記吐出のたびに、流体通路5aと7aと7dとを順に経由して、高圧チャンバ(第1チャンバ)8に、作動液12が流入することになり、高圧チャンバ(第1チャンバ)8は、その内圧Phを徐々に高める蓄圧をすることができる。高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内部には、フリーピストン8bが設けられている。フリーピストン8bは、高圧チャンバ(第1チャンバ)8に摺接し、摺動可能に嵌め込まれている。高圧チャンバ(第1チャンバ)8とフリーピストン8bとで、フリーピストン8bの上側にガスが充填された気体室8aが、区画されている。前記吐出のたびに、気体室8aに充填されたガスが圧縮され内圧Phが上昇することで、その内圧Phの上昇(内圧Phと第3流体室4a内の圧力との差圧)に応じて増大する減衰力を発生させることができる。
【0029】
また、ポンピング(蓄圧)モードでは、前記吸引のたびに、流体通路7eと7cと5aとを順に経由して、低圧チャンバ(第2チャンバ)9から作動液12が流出することにより、低圧チャンバ(第2チャンバ)9は、その内圧Plを徐々に下げる蓄圧をすることができる。低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内部には、フリーピストン9bが設けられている。フリーピストン9bは、低圧チャンバ(第2チャンバ)9に摺接し、摺動可能に嵌め込まれている。低圧チャンバ(第2チャンバ)9とフリーピストン9bとで、フリーピストン9bの上側にガスが充填された気体室9aが、区画されている。前記吸引のたびに、気体室9aに充填されたガスが膨張し内圧Plが降下することで、その内圧Plの降下(内圧Plと第3流体室4a内の圧力との差圧)に応じて増大する減衰力を発生させることができる。
【0030】
一方、図2に、第2切換手段7が、ノーマル・モードに切り換えられている状態を示すが、ノーマル・モードでは、第2切換手段7によって、流体通路7aと7bと7cとが相互に接続され、流体通路7dは他の流体通路に接続せずに閉じられ、流体通路7eも他の流体通路に接続せずに閉じられている。ノーマル・モードでは、前記吐出のたびに、流体通路5aと7aと7bとを順に経由して、第2流体室2b、さらには、リザーバ室11aに、作動液12が流入することになり、ガス11bが圧縮され圧力が上昇することで減衰力を発生させることができる。また、前記吸引のたびに、流体通路7bと7cと5aとを順に経由して、第2流体室2b、さらには、リザーバ室11aから作動液12が流出することにより、ガス11bが膨張し圧力が低下することで減衰力を発生させることができる。
【0031】
図1に示すように、第1切換手段10には、流体通路10a、10b、10cのそれぞれの一端が接続されている。流体通路10aのもう一端は、高圧チャンバ(第1チャンバ)8に接続している。流体通路10bのもう一端は、低圧チャンバ(第2チャンバ)9に接続している。流体通路10cのもう一端は、第2流体室2bに接続している。
【0032】
第1切換手段10は、車高アップ(UP)モードと、車高ダウン(DOWN)モードと、圧力維持モードとを切り換えることができる。図1では、第1切換手段10が、圧力維持モードに切り換えられている状態を示している。圧力維持モードでは、第1切換手段10によって、流体通路10aは他の流体通路に接続せずに閉じられ、流体通路10bも他の流体通路に接続せずに閉じられ、流体通路10cも他の流体通路に接続せずに閉じられている。流体通路10aと10cが閉じられていることで、高圧チャンバ(第1チャンバ)8を、高圧側に蓄圧された高圧状態に維持することができる。流体通路10bと10cが閉じられていることで、低圧チャンバ(第2チャンバ)9を、低圧側に蓄圧された低圧状態に維持することができる。
【0033】
一方、図3に、第1切換手段10が、車高アップ(UP)モードに切り換えられている状態を示すが、車高アップ(UP)モードでは、第1切換手段10によって、流体通路10aと10cとが互いに接続されて連通した状態となり、流体通路10bは他の流体通路に接続せずに閉じられている。流体通路10aと10cとが連通することで、高圧に維持されていた高圧チャンバ(第1チャンバ)8内の作動液12が、流体通路10aと10cとを順に経由して、第2流体室2bに流れ込み、第2流体室2bの内圧を高めることができる。第2流体室2bの内圧の上昇により、シリンダ2に対してピストン3(ピストンロッド4)が押し上がり(第2流体室2bの容積が増大し)、ダンパ装置1の長さを伸ばすことができる。このダンパ装置1の伸長は、ダンパ装置1が伸縮振動を今している、していないにかかわらず、任意のタイミングで、実施することができる。
【0034】
また、図4に、第1切換手段10が、車高ダウン(DOWN)モードに切り換えられている状態を示すが、車高ダウン(DOWN)モードでは、第1切換手段10によって、流体通路10bと10cとが互いに接続されて連通した状態となり、流体通路10aは他の流体通路に接続せずに閉じられている。流体通路10bと10cとが連通することで、第2流体室2b内の作動液12が、流体通路10cと10bとを順に経由して、低圧に維持されていた低圧チャンバ(第2チャンバ)9内に流れ込み、第2流体室2bの内圧を下げることができる。第2流体室2bの内圧の低下により、シリンダ2に対してピストン3が下がってピストンロッド4が引き込まれ(第2流体室2bの容積が減少し)、ダンパ装置1の長さを縮めることができる。このダンパ装置1の短縮は、ダンパ装置1が伸縮振動を今している、していないにかかわらず、任意のタイミングで、実施することができる。
【0035】
このように、本実施形態のダンパ装置1によれば、伸縮振動を現在していなくても、長さを伸ばしたり縮めたりことできる。このダンパ装置1を用いて、車体13の車高調整を行えば、任意のタイミングで実施できるので、車高調整の制御性を高めることができる。
【0036】
なお、本実施形態のダンパ装置1では、第1切換手段10に一端が接続する流体通路10cのもう一端は、第2流体室2bに接続しているが、これに限られず、第1流体室2aに接続していてもよい。第1流体室2aと第2流体室2bとは、一方の容積が増大すれば、他方の容積が減少する関係にあるので、第1流体室2aの容積を増減させても、第2流体室2bの容積を増減させた本実施形態と同様に、ダンパ装置1の長さを伸ばしたり縮めたりすることができる。
【0037】
図5に、本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置1が、複数個(例えば、図5では4個)搭載されたダンパシステム(車両)14の構成図を示す。ダンパ装置1(FR)は、車両14に備えられた4輪のうちの右側の前輪に、車体13を懸架させるのに用いられている。ダンパ装置1(FL)は、車両14の左側の前輪に、車体13を懸架させるのに用いられている。ダンパ装置1(RR)は、車両14の右側の後輪に、車体13を懸架させるのに用いられている。ダンパ装置1(RL)は、車両14の左側の後輪に、車体13を懸架させるのに用いられている。
【0038】
ダンパ装置1(FR)には、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phを計測する圧力センサSe1と、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plを計測する圧力センサSe2が、設けられている。内圧Phと内圧Plの計測値は、電子制御ユニットECUで受信可能になっている。電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FR)の第1切換手段10の各モード(車高アップ(UP)モード、車高ダウン(DOWN)モード、圧力維持モード)を切換制御可能になっている。また、電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FR)の第2切換手段7の各モード(ポンピング(蓄圧)モード、ノーマル・モード)を切換制御可能になっている。
【0039】
同様に、ダンパ装置1(FL)には、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phを計測する圧力センサSe3と、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plを計測する圧力センサSe4が、設けられている。内圧Phと内圧Plの計測値は、電子制御ユニットECUで受信可能になっている。電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FL)の第1切換手段10の各モードを切換制御可能になっている。また、電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FR)の第2切換手段7の各モードを切換制御可能になっている。
【0040】
ダンパ装置1(RR)には、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phを計測する圧力センサSe5と、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plを計測する圧力センサSe6が、設けられている。内圧Phと内圧Plの計測値は、電子制御ユニットECUで受信可能になっている。電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FL)の第1切換手段10の各モードを切換制御可能になっている。また、電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FR)の第2切換手段7の各モードを切換制御可能になっている。
【0041】
ダンパ装置1(RL)には、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phを計測する圧力センサSe7と、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plを計測する圧力センサSe8が、設けられている。内圧Phと内圧Plの計測値は、電子制御ユニットECUで受信可能になっている。電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FL)の第1切換手段10の各モードを切換制御可能になっている。また、電子制御ユニットECUは、ダンパ装置1(FR)の第2切換手段7の各モードを切換制御可能になっている。
【0042】
電子制御ユニットECUは、圧力センサSe1〜Se8の内圧Phと内圧Plの計測値に基づいて、第2切換手段7を、その各モード(ポンピング(蓄圧)モード、ノーマル・モード)に切換制御することができる。
【0043】
図6に、ダンパ装置1の制御方法(その1:第2切換手段7の切換制御方法)の一例をフローチャートで示す。
【0044】
イグニション(IG)スイッチがオンされると、電子制御ユニットECUが起動し、ダンパ装置1の制御方法(第2切換手段7の切換制御方法)がスタートする。
【0045】
まず、ステップS1で、電子制御ユニットECUは、イグニション(IG)スイッチがオフされたか否か判定する。イグニション(IG)スイッチがオフされていれば(ステップS1、Yes)、この制御方法をストップする。イグニション(IG)スイッチがオフされていなければ(ステップS1、No)、ステップS2へ進む。
【0046】
ステップS2で、電子制御ユニットECUは、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phの現在の計測値が、所定の第1圧力未満か否か判定する。また、電子制御ユニットECUは、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plの現在の計測値が、所定の第2圧力以上か否か判定する。高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phの現在の計測値が、所定の第1圧力未満であれば、あるいは、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plの現在の計測値が、所定の第2圧力以上であれば(ステップS2、Yes)、ステップS3へ進む。高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phの現在の計測値が、所定の第1圧力未満でなく、かつ、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plの現在の計測値が、所定の第2圧力以上でなければ(ステップS2、No)、ステップS2へ戻り、繰り返しステップS2を実施する。なお、所定の第1圧力は、所定の第2圧力より高く設定されている(所定の第1圧力>所定の第2圧力)。
【0047】
ステップS3で、電子制御ユニットECUは、第2切換手段7を切換制御して、ノーマル・モードから、ポンピング(蓄圧)モードに切り換え、ポンピングによる昇圧と降圧をオンさせる。これにより、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phは上昇し、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plは降下する。
【0048】
ステップS4で、電子制御ユニットECUは、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phの現在の計測値が、所定の第3圧力以上か否か判定する。また、電子制御ユニットECUは、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plの現在の計測値が、所定の第4圧力未満か否か判定する。高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phの現在の計測値が、所定の第3圧力以上であり、かつ、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plの現在の計測値が、所定の第4圧力未満であれば(ステップS4、Yes)、ステップS5へ進む。高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phの現在の計測値が、所定の第3圧力以上でなければ、あるいは、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plの現在の計測値が、所定の第4圧力未満でなければ(ステップS4、No)、ステップS3へ戻り、繰り返しステップS3とS4を実施する。なお、所定の第3圧力は、所定の第1圧力より高く設定されている(所定の第3圧力>所定の第1圧力)。また、所定の第4圧力は、所定の第2圧力より低く設定されている(所定の第4圧力<所定の第2圧力)。
【0049】
ステップS5で、電子制御ユニットECUは、第2切換手段7を切換制御して、ポンピング(蓄圧)モードから、ノーマル・モードに切り換え、ポンピングによる昇圧と降圧ををオフさせ、ステップS1へ戻る。以上によれば、高圧チャンバ(第1チャンバ)8の内圧Phを、常時、所定の第1圧力以上の高圧に維持でき、低圧チャンバ(第2チャンバ)9の内圧Plを、常時、所定の第2圧力未満の低圧に維持できる。これにより、ダンパ装置1を、常時、伸縮させることができる。
【0050】
図7に、ダンパ装置1の制御方法(その2:第1切換手段10の切換制御方法)の一例をフローチャートで示す。
【0051】
電子制御ユニットECUは、車速Vや、ナビゲーション・システム(NAVI)からの情報や、ETC(Electronic Toll Collection)車載器からの情報等に基づいて、第1切換手段10を、その各モード(車高アップ(UP)モード、車高ダウン(DOWN)モード、圧力維持モード)に切換制御することができる。
【0052】
イグニション(IG)スイッチがオンされると、電子制御ユニットECUが起動し、ダンパ装置1の制御方法(第1切換手段10の切換制御方法)がスタートする。
【0053】
まず、ステップS6で、電子制御ユニットECUは、イグニション(IG)スイッチがオフされたか否か判定する。イグニション(IG)スイッチがオフされていれば(ステップS6、Yes)、この制御方法をストップする。イグニション(IG)スイッチがオフされていなければ(ステップS6、No)、ステップS7へ進む。
【0054】
ステップS7で、電子制御ユニットECUは、ナビゲーション・システム(NAVI)からの情報や、ETC車載器からの情報等に基づいて、車両14が、現在、高速道路を走行しているか否か判定する。車両14が、現在、高速道路を走行していると判定されれば(ステップS7、Yes)、ステップS9へ進み、車両14が、現在、高速道路を走行していないと判定されれば(ステップS7、No)、ステップS8へ進む。
【0055】
ステップS8で、電子制御ユニットECUは、車両14の現在の車速Vが、予め設定した設定車速以上か否か判定する。車両14の現在の車速Vが、設定車速以上であると判定されれば(ステップS8、Yes)、ステップS9へ進み、車両14の現在の車速Vが、設定車速以上でないと判定されれば(ステップS8、No)、ステップS10へ進む。
【0056】
ステップS9で、電子制御ユニットECUは、第1切換手段10を切換制御して、圧力維持モードから、車高ダウン(DOWN)モードに切り換え、ダンパ装置1を短縮させ、図8(b)に示すように車体13をロウポジションに設定し、ステップS6に戻る。これにより、車体13の下を通過していた空気が、車体13の上を通過するようになり、車体13の上を通過する空気を増やすことができる。これにより、車両14は路面へより確実に接地するようになり、高速走行時の操縦性を向上させることができる。なお、車体13がロウポジションに設定されたタイミングで、電子制御ユニットECUは、第1切換手段10を切換制御して、車高ダウン(DOWN)モードから、圧力維持モードに切り換えて(戻して)おく。
【0057】
ステップS10で、電子制御ユニットECUは、第1切換手段10を切換制御して、圧力維持モードから、車高アップ(UP)モードに切り換え、ダンパ装置1を伸長させ、図8(a)に示すように車体13をハイポジションに設定し、ステップS6に戻る。これにより、オフロードのような凹凸にある道でも、車体13を路面に擦ることなく走行することができる。なお、車体13がハイポジションに設定されたタイミングで、電子制御ユニットECUは、第1切換手段10を切換制御して、車高アップ(UP)モードから、圧力維持モードに切り換えて(戻して)おく。
【0058】
以上で説明したように、ステップS7〜S10は、第2切換手段7のモードに関わらず、常時、実施することができるので、任意のタイミングで、ダンパ装置1を伸縮することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
図9に、本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置1の縦断面図を示す。図9では、ダンパ装置1が、ポンピング(蓄圧)モードにある場合を示している。第2の実施形態のダンパ装置1が、第1の実施形態のダンパ装置1と比較して異なっている点は、低圧チャンバ(第2チャンバ)9が省かれている点である。これに伴い、流体通路7eは、第1の実施形態では、第2切換手段7と低圧チャンバ(第2チャンバ)9とに接続していたが、第2の実施形態では、第2切換手段7と第2流体室2bとに接続している。また、第1切換手段10では、車高ダウン(DOWN)モードが省かれ、車高アップ(UP)モードと、圧力維持モードとを切り換えることができるようになっている。
【0060】
そして、ポンピング(蓄圧)モードでは、前記吸引のたびに(ピストンロッド4が上方に移動するたびに)、流体通路7eと7cと5aとを順に経由して、第2流体室2bから作動液12が流出し、第3流体室4aに流入する。また、前記吐出のたびに(ピストンロッド4が下方に移動するたびに)、作動液12が、第3流体室4aから流出して、流体通路5aと7aと7dとを順に経由して、高圧チャンバ(第1チャンバ)8に流入する。ピストンロッド4の上下動に伴い、これら吸引と吐出を繰り返すことで、高圧チャンバ(第1チャンバ)8は、その内圧Phを徐々に高める蓄圧をすることができる。なお、第2流体室2bから作動液12が流出するので、第2流体室2bの内圧を下げることができる。第2流体室2bの内圧の低下により、シリンダ2に対してピストン3(ピストンロッド4)が引き込まれ(第2流体室2bの容積が減少し)、ダンパ装置1の長さを縮め、車高を下げることができる。例えば、図9に示すように、車高を設定車高Hから下げることができる。また、第1切換手段10は、圧力維持モードに切り換えられている状態を示している。圧力維持モードでは、第1の実施形態と同様に、高圧チャンバ(第1チャンバ)8を、高圧側に蓄圧された高圧状態に維持することができる。
【0061】
図10に、第1切換手段10が、車高アップ(UP)モードに切り換えられている状態を示す。車高アップ(UP)モードでは、第1切換手段10によって、流体通路10aと10cとが互いに接続されて連通した状態となる。流体通路10aと10cとが連通することで、高圧に維持されていた高圧チャンバ(第1チャンバ)8内の作動液12が、流体通路10aと10cとを順に経由して、第2流体室2bに流れ込み、第2流体室2bの内圧を高めることができる。第2流体室2bの内圧の上昇により、シリンダ2に対してピストン3(ピストンロッド4)が押し上がり(第2流体室2bの容積が増大し)、ダンパ装置1の長さを伸ばすことができる。そして、車高を上げることができる。具体的には、設定車高Hより下がっていた車高を、その設定車高Hまで上げて戻すことができる。このダンパ装置1の伸長は、ダンパ装置1が伸縮振動を、今、している、していないにかかわらず、任意のタイミングで、実施することができる。なお、第2切換手段7は、第1の実施形態の図2に示したのと同様に、ノーマル・モードに切り換え、作動液12が、第2流体室2bから高圧チャンバ(第1チャンバ)8へ流れるのを防止している。
【0062】
第2の実施形態では、第2切換手段7によって、ポンピング(蓄圧)・モードと、ノーマル・モードを選択することができる。車高を変動させる必要がないとき(ハイポジション)は、ノーマル・モードを選択すればよい。車高を下げる必要があるとき(例えば、高速走行時、ロウポジション)は、ポンピング(蓄圧)・モードを選択する。車高はポンピングによって徐々に下がってゆくので、所望の車高(ロウポジション)が得られたときに、ノーマル・モードに切り替えれば、車高を所望の車高(ロウポジション)に維持することができる。車高をハイポジション(設定車高H)に戻す(車高を上げる)ときは、第1切換手段10を車高アップ(UP)モードに切換えればよい。
【0063】
なお、第2の実施形態では、高圧チャンバ8を、液体通路7d、7a、7c、7e等の系統と、液体通路10a、10c等の系統の2系統で、第2流体室2bに連通させたが、これに限らず、その2系統を第1流体室2aに連通させてもよい。この場合、車高の上下の動作を逆にすることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
図11に、本発明の第3の実施形態に係るダンパ装置1の縦断面図を示す。図11では、ダンパ装置1が、ポンピング(蓄圧)モードにある場合を示している。第3の実施形態のダンパ装置1が、第1の実施形態のダンパ装置1と比較して異なっている点は、高圧チャンバ(第1チャンバ)8が省かれている点である。これに伴い、流体通路7dは、第1の実施形態では、第2切換手段7と高圧チャンバ(第1チャンバ)8とに接続していたが、第3の実施形態では、第2切換手段7と第2流体室2bとに接続している。また、第1切換手段10では、車高ダウン(DOWN)モードと、圧力維持モードとを切り換えることができるようになっている。
【0065】
そして、ポンピング(蓄圧)モードでは、前記吸引のたびに(ピストンロッド4が上方に移動するたびに)、流体通路7eと7cと5aとを順に経由して、低圧チャンバ9から作動液12が流出し、第3流体室4aに流入する。また、前記吐出のたびに(ピストンロッド4が下方に移動するたびに)、作動液12が、第3流体室4aから流出して、流体通路5aと7aと7dとを順に経由して、第2流体室2bに流入する。ピストンロッド4の上下動に伴い、これら吸引と吐出を繰り返すことで、低圧チャンバ(第2チャンバ)9は、その内圧Plを徐々に下げる蓄圧をすることができる。なお、第2流体室2bへ作動液12が流入するので、第2流体室2bの内圧を高めることができる。第2流体室2bの内圧の上昇により、シリンダ2に対してピストン3(ピストンロッド4)が押し上がり(第2流体室2bの容積が増大し)、ダンパ装置1の長さを伸ばし、車高を上げることができる。例えば、図11に示すように、車高を設定車高Hから上げることができる。また、第1切換手段10は、圧力維持モードに切り換えられている状態を示している。圧力維持モードでは、第1の実施形態と同様に、低圧チャンバ(第2チャンバ)9を、低圧側に蓄圧された低圧状態に維持することができる。
【0066】
図12に、第1切換手段10が、車高ダウン(DOWN)モードに切り換えられている状態を示す。車高ダウン(DOWN)モードでは、第1切換手段10によって、流体通路10bと10cとが互いに接続されて連通した状態となる。流体通路10bと10cとが連通することで、第2流体室2bから、作動液12が、流体通路10cと10bとを順に経由して、低圧に維持されていた低圧チャンバ(第2チャンバ)9内に流れ込む。これにより、第2流体室2bの内圧を下げることができる。第2流体室2bの内圧の低下により、シリンダ2に対してピストン3(ピストンロッド4)が引き込まれ(第2流体室2bの容積が減少し)、ダンパ装置1の長さを縮めることができる。そして、車高を下げることができる。具体的には、設定車高Hより高く上がっていた車高を、その設定車高Hまで下げて戻すことができる。このダンパ装置1の短縮は、ダンパ装置1が伸縮振動を、今、している、していないにかかわらず、任意のタイミングで、実施することができる。なお、第2切換手段7は、第1の実施形態の図2に示したのと同様に、ノーマル・モードに切り換え、作動液12が、低圧チャンバ9から第2流体室2bへ流れるのを防止している。
【0067】
第3の実施形態では、第2切換手段7によって、ポンピング(蓄圧)・モードと、ノーマル・モードを選択することができる。車高を変動させる必要がないとき(ロウポジション)は、ノーマル・モードを選択すればよい。車高を上げる必要があるとき(例えば、オフロード走行時、ハイポジション)は、ポンピング(蓄圧)・モードを選択する。車高はポンピングによって徐々に上がってゆくので、所望の車高(ハイポジション)が得られたときに、ノーマル・モードに切り替えれば、車高を所望の車高(ハイポジション)に維持することができる。車高をロウポジション(設定車高H)に戻す(車高を下げる)ときは、第1切換手段10を車高ダウン(DOWN)モードに切換えればよい。
【0068】
なお、第3の実施形態では、低圧チャンバ9を、液体通路7e、7c、7a、7d等の系統と、液体通路10b、10c等の系統の2系統で、第2流体室2bに連通させたが、これに限らず、その2系統を第1流体室2aに連通させてもよい。この場合、車高の上下の動作を逆にすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ダンパ装置
2 シリンダ
2a 第1流体室
2b 第2流体室
3 ピストン
3a、3b 減衰力発生部
4 ピストンロッド
4a 第3流体室
5 ポンプロッド
5a 流体通路
6a、6b 逆止弁(バルブ手段)
7 第2切換手段
7a、7b、7c、7d、7e 流体通路
8 高圧チャンバ(第1チャンバ)
8a 気体室
8b フリーピストン
9 低圧チャンバ(第2チャンバ)
9a 気体室
9b フリーピストン
10 第1切換手段
10a、10b、10c 流体通路
11 外筒
11a リザーバ室
11b ガス
11c 連通孔
12 作動液
13 車体
14 ダンパシステム(車両)
Ph 高圧チャンバ(第1チャンバ)内圧
Pl 低圧チャンバ(第2チャンバ)内圧
Se1〜Se8 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液を封入したシリンダの内部をピストンで第1流体室および第2流体室に区画し、前記作動液を前記第1流体室と前記第2流体室の一方から他方に流し減衰力を発生させるダンパ装置において、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの上端側の外部に延在し、内部に第3流体室が設けられたピストンロッドと、
一端が前記シリンダの下端側に固定され、他端が前記第3流体室に配置され、軸方向に貫通する流体通路が設けられ、前記ピストンロッドの前記シリンダに対する振動に伴い、前記第3流体室に対して出し入れする方向に相対的に振動し、前記第3流体室に吸引と吐出を繰り返すポンピングをさせるポンプロッドと、
前記吐出の際に前記作動液が流入して内圧が高くなる第1チャンバと、
前記第1流体室と前記第2流体室の一方と、前記第1チャンバとで、連通させた状態と、連通させていない状態とを切り換える第1切換手段とを有することを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
作動液を封入したシリンダの内部をピストンで第1流体室および第2流体室に区画し、前記作動液を前記第1流体室と前記第2流体室の一方から他方に流し減衰力を発生させるダンパ装置において、
一端が前記ピストンに連結され、他端が前記シリンダの上端側の外部に延在し、内部に第3流体室が設けられたピストンロッドと、
一端が前記シリンダの下端側に固定され、他端が前記第3流体室に配置され、軸方向に貫通する流体通路が設けられ、前記ピストンロッドの前記シリンダに対する振動に伴い、前記第3流体室に対して出し入れする方向に相対的に振動し、前記第3流体室に吸引と吐出を繰り返すポンピングをさせるポンプロッドと、
前記吸引の際に前記作動液が流出して内圧が低くなる第2チャンバと、
前記第1流体室と前記第2流体室の一方と、前記第2チャンバとで、連通させた状態と、連通させていない状態とを切り換える第1切換手段とを有することを特徴とするダンパ装置。
【請求項3】
前記吐出の際に前記作動液が流入して内圧が高くなる第1チャンバを有し、
前記第1切換手段は、
前記第1流体室と前記第2流体室の一方と、前記第1チャンバとで、連通させた状態と、連通させていない状態とを切り換えることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第1チャンバと前記第2チャンバを、前記流体通路に連通させない状態に切り換える第2切換手段を有することを特徴とする請求項3に記載のダンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−224104(P2012−224104A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90559(P2011−90559)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】