説明

ディスクブレーキ

【課題】浮動型ディスクブレーキについて、制動時にパッドを拘束する能力を高めてパッド位置を安定させ、これにより、ブレーキ鳴き、異音の抑制性能を高めることを課題としている。
【解決手段】パッド2によってディスク回転方向に向けて押圧される入力面f1と、パッド2をディスク径方向に向けて押圧する出力面f2を回転中心から離反した位置に有し、前記入力面f1のディスク回転方向変位によって回転して前記出力面f2のディスク径方向変位が起こる定位置回転可能な回転部材10を具備させ、さらに、前記出力面f2に押圧されたパッド2のディスク径方向変位を阻止するディスク径方向トルク受け面8bをマウント8に備えさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の制動に利用される浮動型(キャリパ浮動型)ディスクブレーキ、詳しくは、制動時の摩擦パッド(以下では単にパッドと言う)の挙動を安定させてブレーキのいわゆる鳴き、異音の抑制性能を高め、同時に、非制動時のパッドの引き摺り損失を低減することも可能にしたディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の浮動型ディスクブレーキの中に、制動時のブレーキ鳴きや異音の対策として、パッドをパッドサポートと称されるばねでディスク径方向(ディスクロータの径方向)に付勢し、キャリパとパッドを支持したマウントの支持部に押し付けるようにしたものがある(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4599828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮動型ディスクブレーキにおいては、ブレーキ鳴きや異音の発生事例として、パッドのディスク径方向位置が制動の度に変動することが要因となるものが存在する。
【0005】
浮動型ディスクブレーキにおけるパッドのディスク径方向変位は、制動時に働く偶力によってパッドが回転して起こる。
【0006】
その回転に対して、例えば、前掲の特許文献1のディスクブレーキでは、パッドサポートのばね力とパッドがマウントのトルク受け部に押し付けられて押し付け部に発生する摩擦力が回転抑制のための反力として働く。ところが、その反力は常時一定ではなく、パッドサポートのばね力の経時変化やトルク受け部の摩擦力の低下によってパッドを回転させようとする力に負けることがある。
【0007】
その状況になると、キャリパに対するパッドの変位が起こる。パッドは、マウントの支持部との間に変位を許容するクリアランスがあるために、ディスク回入側(ディスクロータが入り込む側)がディスク径方向外側に、ディスク回出側(ディスクロータが抜け出る側)がディスク径方向内側に変位するように回転し、そのために、ブレーキ鳴きと異音の抑制性能が低下する。
【0008】
また、パッドサポートを備えるものは、非制動時にパッドサポートのばね力で生じる摩擦力によりパッドの摺動抵抗(ディスク軸方向移動の抵抗)が大きくなり、特に、制動時にディスクロータに押圧されていたパッドが、ブレーキ解放時にディスクロータから離間する動きや、非制動時にディスクロータの振れ等でディスクロータがパッドを軸方向に押し返す動きを阻害する。このため、ディスクロータによるパッドの引き摺りが生じやすくなって車両の燃費の悪化につながる。
【0009】
この発明は、浮動型ディスクブレーキについて、制動時にパッドを拘束する能力を高めてパッド位置を安定させ、これにより、ブレーキ鳴き、異音の抑制性能を高め、同時に、非制動時のパッドの引き摺り損失を低減することも可能となすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明においては、軸方向の端面が摩擦面として構成されたディスクロータと、前記摩擦面に対向させるパッドと、そのパッドを押圧して前記摩擦面に摺接させるアクチュエータと、そのアクチュエータが組み込まれたキャリパと、前記パッドと前記キャリパをディスク軸方向スライド可能に支持するマウントを有する浮動型ディスクブレーキを以下の通りに構成した。
【0011】
即ち、前記パッドによってディスク回転方向に向けて押圧される入力面と、前記パッドをディスク径方向に向けて押圧する出力面を回転中心から離反した位置に有し、前記入力面のディスク回転方向変位によって回転して前記出力面のディスク径方向変位が起こる定位置回転可能な回転部材を前記マウント、もしくは、パッドに具備させ、さらに、前記出力面に押圧されたパッドのディスク径方向変位を阻止するディスク径方向トルク受け面を前記マウントに備えさせた。
【0012】
なお、前記回転部材がマウントに設けられるものについては、前記出力面がパッドをディスク径方向に向けて直接押圧する。また、前記回転部材がパッドに設けられるものについては、出力面がマウントをディスク径方向に向けて押圧し、それにより、回転部材がパッドのディスク回出側とともにディスク径方向に変位して間接的押圧がなされる。
【0013】
前記回転部材の態様として、下記a)〜d)が考えられる。
a)互いに交差する仮想線上に前記入力面と前記出力面を設けた基部と、その基部の前記仮想線の交差部よりも前記入力面及び出力面から離反した位置に設置されるディスク軸方向に突出した回転軸を有するもの。
【0014】
b)互いに交差する仮想線上に前記入力面と前記出力面を設けた基部を有し、その基部に、ディスク軸と平行な凸円弧の外周面が設けられているもの。
【0015】
c)前記回転部材の前記出力面が弾性変形可能に構成され、その出力面の弾性変形によって当該出力面によるパッド押圧力の上限が調整されるようにしたもの。
【0016】
d)前記回転部材の出力面を凸円弧の面にし、その凸円弧の出力面が前記パッドに接触する部位よりも前記回転部材の回転中心から遠い側に変形支点を持つ弾性アームを前記回転部材に設けてその弾性アームに前記凸円弧の出力面を形成したもの。
【0017】
これらのうち、a)の態様の回転部材を備えるものは、その回転部材を、設置相手(マウントまたはパッド)に設けた軸受で支えて設置相手に取り付ける。
【0018】
また、b)の態様の回転部材を備えるものは、基部の凸円弧の外周面に対応させた凹円弧面を設置相手(マウントまたはパッド)に設け、その凹円弧面で前記凸円弧の外周面を支持して回転部材を設置相手に取り付ける。
【0019】
なお、前記回転部材がマウントに設置されるディスクブレーキには、マウントの回転部材設置部に、回転部材とマウント間の隙間につながるダスト排出溝を必要に応じて設けることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明のディスクブレーキは、前記回転部材の入力面がトルク受け面として機能する。制動トルクを受けたパッドがディスク回転方向に変位して前記入力面に押し付けられ、その力によって回転部材が自己の回転中心を支点にして回転する。その回転により、回転部材がマウントに設置されているものについてはその回転部材の出力面がディスク径方向に変位し、パッドのディスク回出側をディスク径方向に押圧する。
【0021】
このときの回転部材によるパッドのディスク径方向への押圧は、回転部材の回転中心がマウントに支持されるパッド裏板の耳部(ガイド部)よりもディスク径方向の内側にあるか外側にあるかで押圧方向が正反対になる。
【0022】
回転部材の回転中心がパッド裏板の耳部よりもディスク径方向の内側にある場合には、回転部材はパッドが回転しようとする方向に逆らってパッドのディスク回出側をディスク径方向外側に向けて押圧する。
【0023】
これにより、パッドの回転が阻止され、パッドはディスク回出側がディスク径方向トルク受け面(このケースでは、そのトルク受け面は、前記耳部よりもディスク径方向の外側に配置される)に押し付けられてその位置に固定される。
【0024】
また、回転部材の回転中心がパッドの裏板の耳部よりもディスク径方向の外側にある場合には、回転部材はパッドのディスク回出側をディスク径方向内側に向けて押圧する(このケースでは、前記トルク受け面は、前記耳部よりもディスク径方向の内側に配置される)。
【0025】
この場合の押圧の方向は、パッドが回転しようとする方向と同じであるが、前掲の特許文献1では回転後の逆転が許容されるのに対し、この発明のブレーキでは、回転部材によるディスク径方向の押圧がディスク径方向内側に向けてなされてパッドが回転した位置に拘束される。
【0026】
従って、この発明のディスクブレーキでは、制動時のパッド位置が安定し、ブレーキ鳴きと異音の抑制性能の低下が起こり難い。
【0027】
なお、回転部材がパッドに取り付けられているものは、回転部材の出力面がマウントに押し付けられて回転部材がディスク径方向に変位し、それによってパッドがディスク径方向のトルク受け面に押しつけられる。
【0028】
このほか、この発明のディスクブレーキは、パッドのディスク回転方向への移動力で回転部材を回転させ、その回転部材で運動の方向を転換してパッドにディスク径方向の力を加えるので、力の変換効率が高く、パッドの拘束安定性に優れる。
【0029】
また、制動トルクの受け止めが回転部材によってなされ、ディスク回転方向のトルク受けが他の面に依存せずに行われるため、パッドの拘束状態が低圧から高圧まで安定し、制動トルクの大小によるパッドの接触状態の変化、それによるブレーキ鳴きの防止性能の変動が起こらない。
【0030】
さらに、この発明では、特許文献1が採用しているパッドサポートを用いずにパッドの位置を安定させることができるので、特に非制動時にはディスク径方向への拘束力がゼロ或いは極めて小さいため、パッドサポートのばね力に起因したパッドの摺動抵抗増加が原因となって起こるパッドの引き摺りの低減も可能になり、車両の燃費向上にも貢献できる。
【0031】
なお、非制動時にパッドがガタついて発生するラトル音や、制動初期にパッドがマウントの支持部に衝突して発生するクロンク音の対策としてパッドサポートを設けることは制限されない。その目的で設けるパッドサポートは、パッドの回転力に打ち勝つばね力が要求されず、従って、この場合も、従来品に比べればパッドの摺動抵抗と引き摺りの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明のディスクブレーキの一例を示す平面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図
【図4】図2の要部を拡大した図
【図5】回転部材の他の例を示す図
【図6】図5の回転部材の出力面を弾性変形可能にした例を示す図
【図7】回転部材のさらに他の例を示す図
【図8】回転部材のさらに他の例を示す図
【図9】回転部材をパッド裏板の耳部よりもディスク径方向外側に設けた例を示す図
【図10】回転部材をパッドに設けた例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面の図1〜図10に基づき、この発明のディスクブレーキの実施の形態について説明する。
【0034】
図1〜図3は、この発明の浮動型ディスクブレーキの第1形態であって、車輪と一体回転するディスクロータ1と、そのディスクロータ1を間において対向配置する一対のパッド(摩擦パッド)2,2と、そのパッドをディスク軸方向に押圧してディスクロータ1に摺接させるアクチュエータ3と、そのアクチュエータ3を備えたキャリパ6と、パッド2,2とキャリパ6をディスク軸方向スライド可能に支持するマウント8と、この発明を特徴づける回転部材10とで構成されている。
【0035】
ディスクロータ1は、軸方向の端面が摩擦面1aとして構成されており、その摩擦面1aにパッド2,2を押し付けて制動力を発生させる。
【0036】
パッド2は、摩擦材2aとパッド裏板2bを一体化した既知のパッドであって、パッド裏板2bのディスク回転方向両端に、マウント8に案内される耳部2cを有する。
【0037】
アクチュエータ3は、シリンダ4に導入されるブレーキ液でブレーキピストン5を作動させ、そのブレーキピストン5でパッド2を押圧するものを示したが、モータに駆動されて推進するピストンでパッドを押圧するものであってもよい。
【0038】
キャリパ6は、ガイドピン7aと、そのガイドピンをスライド可能に挿入するピン孔7bとからなる既知のスライドガイド7をマウント8との間に設けてマウント8でディスク軸方向スライド可能に支持している。このキャリパ6は、インナー部6aとアウター爪6bを、ディスクロータ1を跨ぐブリッジ部6cを介して一体に成形したフィスト型のキャリパであり、インナー部にシリンダ4が形成され、そのシリンダ4にブレーキピストン5が挿入されている。
【0039】
マウント8は、ディスク回入側とディスク回出側のトルク受け部9にディスク回転方向に凹んだガイド部8aを有しており、そのガイド部8aにパッド裏板2bの耳部2cをスライド自在に挿入してマウント8によるパッドの支持がなされている。ガイド部8aのディスク接線方向と平行に加工された2つのガイド面のうち一方の面は、ディスク径方向のトルク受け面8bとして利用される。
【0040】
このマウント8のトルク受け部9は、従来のディスクブレーキでは、パッドのディスク回転方向両端と向き合う側面9aがトルク受け面として構成されるが、この発明では、制動トルク(ディスク回転方向を向く力)の受け止めが回転部材によってなされるため、上記トルク受け面は必須でない。ただし、回転部材10の剛性次第では、フエールセーフ対応としてそのトルク受け面を併設し、制動トルクは規定値を超えたときにパッドをトルク受け面に当接させることで回転部材10の弾性変形量を規制することはあり得る。
【0041】
図4に詳細を示したように、回転部材10は、入力面f1と出力面f2を設けた基部10aと、その基部と一体の回転軸10bを有する。入力面f1と出力面f2は、互いに交差する仮想線VL1,VL2上に設置され、回転軸10bは、基部10aの、仮想線VL1,VL2の交差部よりも入、出力面から離反した位置にディスク軸方向に突出して設置されている。
【0042】
入力面f1と出力面f2は、図のように直交した仮想線VL1,VL2上に設置することは必須でない。回転部材10の弾性変形が見込まれる場合には、鋭角に交わる仮想線上に設置して弾性変形後に入力面f1に対してパッドのトルク伝達面が面接触するようにしてもよい。
【0043】
マウント8には、ガイド部8aの凹んだ部分のコーナ近くに軸受11を設けており、その軸受11に回転軸10bを取り付けてマウント8で回転部材10を支持し、回転部材10でパッド裏板の耳部2cを支えるようにしている。
【0044】
回転部材10は、必要強度を確保できる金属で形成されている。材料金属の種類は特に限定されないが、鉄系金属を材料にする場合には、発錆防止のためメッキ処理などを施しておくのがよい。
【0045】
このように構成した第1形態のディスクブレーキは、パッド2がブレーキピストン5に押圧されてディスクロータ1に押し付けられると、制動トルクを受けたパッド2がディスク回転方向に移動してディスク回出側回転部材10の入力面f1を押圧する。
【0046】
このために、ディスク回出側回転部材10が回転軸10bを支点にして回転し、出力面f2がディスク径方向に変位してパッド2をディスク径方向外向きに押圧する。その押圧によって耳部2cがマウントのディスク径方向トルク受け面8bに押し付けられ、パッド2がその位置に拘束される。
【0047】
従って、キャリパ6に対するパッド2の変位が起こらず、ブレーキ鳴きと異音が効果的に抑制される。また、このように、パッドサポートを使わずにパッドをディスク径方向に押圧して拘束することができるので、ガイド部におけるパッドの摺動抵抗増を招かず、ディスクロータによるパッドの引き摺りが低減されて車両の燃費も向上する。
【0048】
なお、図5に示すように、回転部材10の基部10aに、ディスク軸と平行な凸円弧の外周面10cを設け、その面に対応させた凹円弧面12をマウント8に設け、その凹円弧面12で凸円弧の外周面10cを支持する構造でも回転部材10をマウント8に取り付けることができる。
【0049】
この形態は、上記回転軸10bが不要であるが、ブレーキの構造によっては、回転部材10のディスク軸方向変位を防止するために、凹円弧面12のディスク軸方向両端の縁に係止する鍔13などが要求されることがある。
【0050】
回転部材10は、図6〜図8に示すように、出力面f2を弾性変形可能に構成してもよい。図6の回転部材10は、基部10aの出力面設置側にスリット10dを設けて出力面f2が形成された部分を弾性変形可能となしている。
【0051】
また、図7の回転部材10は、円筒の一部を切り欠いた材料で基部10aを構成して基部の全体を弾性変形可能となしている。これ等は、出力面f2の弾性変形によって当該出力面によるパッド押圧力の上限が調整される。
【0052】
図8は、回転部材10の出力面f2を凸円弧の面にし、その凸円弧の出力面f2がパッドに接触する部位よりも回転部材の回転中心Oから遠い側に変形支点を持つ弾性アーム14を回転部材10に設け、その弾性アーム14に凸円弧の出力面f2を形成したものである。
【0053】
この図8の回転部材10は、出力面f2によるパッド押圧力の増加に伴って弾性アーム14の弾性変形量が大きくなる。これにより、パッドに対する出力面f2の接触点sの回転部材の回転中心Oからの離反量が大きくなるため、弾性アーム14の弾性変形による緩衝と併せて、モーメント長さの増加による押圧力の低下が起こり、その2つの作用で押圧力の上限が調整される。
【0054】
図4の15は、マウント8のガイド部8aに設けたダスト排出溝である。回転軸10bを設けた回転部材10を軸受11で支持してマウント8に設ける場合、軸受11の根元にパッドの摩耗粉が溜まると回転体の円滑な回転が妨げられる可能性がある。ダスト排出溝15は、その不具合の回避策として有効である。
【0055】
なお、回転部材10は、以上の実施例では、マウント8に支持されたパッド裏板の耳部2cよりもディスク径方向の内側に配置したが、図9に示すように、パッド裏板の耳部2cよりもディスク径方向の外側に配置してもよい。
【0056】
この態様は、制動力を受けた回転部材10が、パッド2のディスク回出側をディスク回転方向に向けて押圧する。それにより、パッド2は、マウントのガイド部の耳部2cよりもディスク径方向の内側に設けられたディスク径方向トルク受け面8bに押し付けられ、回転規制がなされる位置に拘束される。
【0057】
また、回転部材10は、図10に示すように、パッド裏板2bに取り付けられていてもよい。この態様は、制動時に回転部材10の入力面f1がマウント8に押し付けられ、それにより回転部材10が回転してその部材の出力面f2がマウントのガイド面に押し付けられ、反力でパッドのディスク回出側がディスク径方向外側に動いてパッド裏板の耳部2cがトルク受け面8bに押し付けられてパッドの回転が阻止される。
【0058】
なお、この発明のディスクブレーキには、ラトル音やクロンク音の抑制を目的にして特許文献1が開示しているようなパッドサポートを設置することができる。そのパッドサポートのばね力を、制動力によるパッド回転を止め得る力よりも弱く設定することで、特許文献1が開示しているディスクブレーキに比べてパッドの引き摺り低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ディスクロータ
1a 摩擦面
2 パッド
2a 摩擦材
2b パッド裏板
2c 耳部
3 アクチュエータ
4 シリンダ
5 ブレーキピストン
6 キャリパ
6a インナー部
6b アウター爪
6c ブリッジ部
7 スライドガイド
7a ガイドピン
7b ピン孔
8 マウント
8a ガイド部
8b トルク受け面
9 トルク受け部
9a 側面
10 回転部材
10a 基部
f1 入力面
f2 出力面
10b 回転軸
10c 中心の軸がディスク軸と平行な凸円弧の外周面
10d スリット
11 軸受
12 凹円弧面
13 鍔
14 弾性アーム
15 ダスト排出溝
VL1,VL2 仮想線
O 回転部材の回転中心
s 出力面f2の接触点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の端面が摩擦面(1a)として構成されたディスクロータ(1)と、前記摩擦面(1a)に対向させる摩擦パッド(2)と、その摩擦パッド(2)を押圧して前記摩擦面(1a)に摺接させるアクチュエータ(3)と、そのアクチュエータ(3)を備えたキャリパ(6)と、前記摩擦パッド(2)と前記キャリパ(6)をディスク軸方向スライド可能に支持するマウント(8)を有する浮動型のディスクブレーキであって、
前記摩擦パッド(2)によってディスク回転方向に向けて押圧される入力面(f1)と、前記摩擦パッド(2)をディスク径方向に向けて押圧する出力面(f2)を、回転中心から離反した位置に有し、前記入力面(f1)のディスク回転方向変位によって回転して前記出力面(f2)のディスク径方向変位が起こる定位置回転可能な回転部材(10)を前記マウント(8)、もしくは、摩擦パッド(2)に具備させ、さらに、前記出力面(f2)に押圧された摩擦パッド(2)のディスク径方向変位を阻止するディスク径方向トルク受け面(8b)を前記マウント(8)に備えさせたことを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
前記回転部材(10)が、互いに交差する仮想線(VL1,VL2)上に前記入力面(f1)と前記出力面(f2)を設けた基部(10a)と、その基部の前記仮想線の交差部よりも前記入力面(f1)及び出力面(f2)から離反した位置に設置されるディスク軸方向に突出した回転軸(10b)を有し、
その回転部材(10)を、設置相手のマウント、または、摩擦パッドに設けた軸受(11)で前記回転軸(10b)を支えて前記設置相手に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記回転部材(10)は、互いに交差する仮想線(VL1,VL2)上に前記入力面(f1)と前記出力面(f2)を設けた基部(10a)を有し、
その基部(10a)に、ディスク軸と平行な凸円弧の外周面(10c)が設けられ、その凸円弧の外周面(10c)に対応させた凹円弧面(12)が設置相手の前記マウント(8)又は摩擦パッド(2)に設けられ、その凹円弧面(12)で前記凸円弧の外周面(10c)を支持して前記回転部材(10)を前記設置相手に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
回転部材の前記出力面(f2)が弾性変形可能に構成され、その出力面の弾性変形によって当該出力面によるパッド押圧力の上限が調整されるようにした請求項1〜3のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
回転部材の前記出力面(f2)を凸円弧の面にし、その凸円弧の出力面(f2)が前記摩擦パッド(2)に接触する部位よりも前記回転部材(10)の回転中心(O)から遠い側に変形支点を持つ弾性アーム(14)を前記回転部材(10)に設け、その弾性アーム(14)に前記凸円弧の出力面(f2)を形成した請求項1〜4のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記回転部材(10)が前記マウント(8)に設けられ、そのマウント(8)の回転部材設置部に、回転部材とマウント間の隙間につながるダスト排出溝(15)を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−53678(P2013−53678A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192426(P2011−192426)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】