説明

トリミング回路

【課題】本発明は、トリミング素子のトリミング状態に依らず、消費電流を低減することが可能なトリミング回路を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るトリミング回路は、フューズFと;電源ラインとフューズFとの間に接続されたスイッチTr1と;その出力信号がトリミングデータOUTとして引き出されるラッチ回路FFと;電源ラインとラッチ回路FFのリセット端との間に接続され、フューズFとスイッチTr1との接続ノードに現れる電圧信号aに基づいて開閉制御されるスイッチTr2と;ラッチ回路FFのリセット端と接地ラインとの間に接続され、スイッチTr1と同一の開閉状態に制御されるスイッチTr3と;電源ラインとラッチ回路FFのリセット端との間に接続され、ラッチ回路FFの出力信号gに基づいて開閉制御されるスイッチTr4と;スイッチTr1、Tr3の開閉制御信号b、c及びラッチ回路FFのセット信号dを生成する制御回路CTRLと;を有して成る構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリミング素子(フューズ素子やゲート破壊素子等)のトリミング状態(切断/非切断或いは破壊/非破壊)に応じた論理のトリミングデータを生成するトリミング回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路装置においては、トリミング素子のトリミング状態に応じた論理のトリミングデータを生成するトリミング回路を搭載し、前記トリミングデータを用いて、装置の特性値を調整する構成が広く一般的に採用されている。
【0003】
図7(a)、(b)は、トリミング回路の一従来例を示す回路図である。
【0004】
図7(a)のトリミング回路は、電源電圧ラインと接地ラインとの間に、トランジスタ101とフューズ素子102とを直列接続し、その接続ノードからインバータ103を介してトリミングデータOUTを引き出す構成とされている。
【0005】
トランジスタ101は、制御回路104で設定された定電流をフューズ素子102に供給する手段であり、トランジスタ101とフューズ素子102との接続ノードに現れる電圧信号は、フューズ素子102の切断/非切断に応じて、その電圧レベル(論理)が変動するものとなる。より具体的に述べると、フューズ素子102が切断状態であるとき、フューズ素子102はハイインピーダンスとなるため、接続ノードに現れる電圧信号はハイレベルとなる。逆に、フューズ素子102が非切断状態であるとき、フューズ素子102はローインピーダンスとなるため、接続ノードに現れる電圧信号はローレベルとなる。
【0006】
従って、インバータ103から出力されるトリミングデータOUTは、フューズ素子102の切断/非切断に応じて、その電圧レベル(論理)がローレベル/ハイレベルに変遷されるものとなり、トリミングデータOUTを受ける後段回路では、その論理に応じてフューズ素子102の切断/非切断を判断し、所望の特性調整を行うことが可能となる。
【0007】
ただし、上記の従来構成では、制御回路104によりトランジスタ101を常時オンさせてフューズ素子102に電流を流し続けなければ、インバータ103の出力論理を保持することができないため、トリミング回路の消費電流が大きい、という課題があった。
【0008】
そこで、従来より、消費電流を抑える手段として、図7(b)に示すように、ラッチ回路を設けた回路構成が開示・提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0009】
図7(b)のトリミング回路は、データ信号として入力されるインバータ103の出力信号を制御回路CTRLのクロック制御に応じて保持するラッチ回路105(Dフリップフロップ)を有して成り、該ラッチ回路105の出力信号をトリミングデータOUTとして引き出す構成とされている。
【0010】
制御回路104は、ラッチ回路105のクロック制御を行い、インバータ103の出力論理をラッチ回路105にてラッチさせた後、トランジスタ101をオフさせてフューズ102への電流供給を停止させる。従って、上記ラッチ後は、トリミング回路の消費電流を低減することができる。
【特許文献1】特開平4−68555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
確かに、図7(b)に示す従来構成を採用すれば、インバータ103の出力論理をラッチした後にトランジスタ101をオフさせることにより、トリミングデータOUTの論理を保持するために必要としていた回路動作電流を抑えることが可能となる。
【0012】
しかしながら、フューズ素子102が切断されている場合、そのインピーダンスはハイインピーダンスとなり、インバータ103の出力論理をラッチした後にトランジスタ101がオフされると、インバータ103の入力端は、浮遊状態(ハイインピーダンス)となる。そのため、インバータ103の入力電圧レベルは不確定となり、この電位が中間電位(インバータ103の閾値近傍電位)となった場合には、インバータ103を構成するPチャネル、Nチャネルの電界効果トランジスタP1、P2が共にオン状態となり、インバータ103に貫通電流が流れてトリミング回路の消費電流増大や回路素子の破壊が招かれる、という課題があった。
【0013】
なお、インバータINV1を構成するトランジスタP1、P2のオン抵抗を大きくしても、貫通リーク電流を完全になくすことはできず、根本的な解決策とはなり得なかった。また、トリミング回路は1つの半導体集積回路装置にて複数必要とされることが多く、トリミング回路の総数が多くなると、その消費電流増大は非常に大きな問題となっていた。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑み、トリミング素子のトリミング状態に依らず、消費電流を低減することが可能なトリミング回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成すべく、本発明に係るトリミング回路は、トリミング素子と;電源電圧ラインと前記トリミング素子との間に接続された第1スイッチ素子と;その出力信号がトリミングデータとして引き出されるラッチ回路と;前記電源電圧ラインと前記ラッチ回路のリセット端との間に接続され、前記トリミング素子と第1スイッチ素子との接続ノードに現れる電圧信号に基づいて開閉制御される第2スイッチ素子と;前記ラッチ回路のリセット端と基準電圧ラインとの間に接続され、第1スイッチ素子と同一の開閉状態に制御される第3スイッチ素子と;前記電源電圧ラインと前記ラッチ回路のリセット端との間に接続され、前記ラッチ回路の出力信号に基づいて開閉制御される第4スイッチ素子と;第1、第3スイッチ素子の開閉制御信号及び前記ラッチ回路のセット信号を生成する制御回路と;を有して成る構成(第1の構成)とされている。
【0016】
より具体的に述べると、上記第1の構成から成るトリミング回路において、第1スイッチ素子は、ソースが前記電源電圧ラインに接続され、ドレインが前記トリミング素子に接続され、ゲートが前記制御回路に接続されたPチャネル電界効果トランジスタであり;第2スイッチ素子は、ソースが前記電源電圧ラインに接続され、ドレインが前記ラッチ回路のリセット端に接続され、ゲートが前記トリミング素子と第1スイッチ素子との接続ノードに接続されたPチャネル電界効果トランジスタであり;第3スイッチ素子は、ドレインが前記ラッチ回路のリセット端に接続され、ソースが前記基準電圧ラインに接続され、ゲートが前記制御回路に接続されたNチャネル電界効果トランジスタであり;第4スイッチ素子は、ソースが前記電源電圧ラインに接続され、ドレインが前記ラッチ回路のリセット端に接続され、ゲートが前記ラッチ回路の出力端に接続されたPチャネル電界効果トランジスタである構成(第2の構成)とされている。
【0017】
このような構成とすることにより、小規模な回路構成によって、少ない消費電流でトリミングデータを確実にラッチすることができ、かつ、そのラッチ後においては、トリミング素子のトリミング状態に依ることなく、消費電流を低減することが可能となる。
【0018】
なお、上記第1若しくは第2の構成から成るトリミング回路において、前記ラッチ回路は、2つの否定論理積演算回路をたすき掛けに接続して成るセットリセットフリップフロップである構成(第3の構成)にするとよい。このような構成とすることにより、小規模な回路構成でラッチ回路を実現することが可能となる。
【0019】
また、上記第1〜第3いずれかの構成から成るトリミング回路において、前記トリミング素子は、フューズ素子或いはゲート破壊素子である構成(第4の構成)にするとよい。このような構成とすることにより、トリミング制御端子に対する溶断電圧或いは破壊電圧の印加/非印加に応じて、そのトリミング状態を任意に制御することが可能となる。
【0020】
また、上記第4の構成から成るトリミング回路は、カソードがトリミング制御端子と前記トリミング素子との接続ノードに接続され、アノードが第1スイッチ素子の一端と第2スイッチ素子の制御端との接続ノードに接続された保護ダイオードを有して成る構成(第5の構成)にするとよい。このような構成とすることにより、フューズ素子の切断工程やゲート破壊素子の破壊工程にて、トリミング制御端子に高電圧を印加する場合でも、当該印加電圧によってトリミング回路(特に第1、第2トランジスタ)が破壊されないように保護することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るトリミングデータ検出回路は、接続及び非接続の2つの状態を有するトリミング素子に接続された第1のトランジスタの出力をそれに従属接続された第2、第3のトランジスタで検出し、その検出結果をラッチ回路で保持して出力するように構成された回路であって、第4のトランジスタを第2のトランジスタと並列に接続して、そのゲートに前記ラッチ回路の出力端を接続した構成(第6の構成)とされている。
【0022】
また、本発明に係るトリミングデータの検出方法は、上記第6の構成から成るトリミングデータ検出回路を用いたトリミングデータの検出方法であって、第1のトランジスタの出力部がハイインピーダンス状態のときに、前記ラッチ回路の出力を第4のトランジスタに入力させることで、第2のトランジスタの不確定状態を回避する構成とされている。
【発明の効果】
【0023】
上記したように、本発明に係るトリミング回路であれば、小規模な回路構成により、少ない消費電流でトリミングデータを確実にラッチすることができ、かつ、そのラッチ後においては、トリミング素子のトリミング状態に依ることなく、消費電流を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、本発明に係るトリミング回路の第1実施形態について詳細な説明を行う。
【0025】
図1は、本発明に係るトリミング回路の第1実施形態を示す回路図である。本図に示すように、本実施形態のトリミング回路は、トリミング素子TRIMと、トランジスタTr1〜Tr4と、ラッチ回路FFと、制御回路CTRLと、を有して成る。
【0026】
トリミング素子TRIMの一端は、トリミング制御端子(溶断電圧印加端子)T1に接続されており、他端は基準電圧ライン(接地ライン)に接続されている。なお、本実施形態では、トリミング素子TRIMとしてフューズ素子Fを用いている。すなわち、トリミング素子TRIMのトリミング状態(切断/非切断)は、トリミング制御端子T1に対する溶断電圧の印加/非印加に応じて任意に制御することが可能である。
【0027】
トランジスタTr1は、Pチャネル電界効果トランジスタである。トランジスタTr1のソースは、電源電圧ライン(Vcc印加ライン)に接続されている。トランジスタTr1のドレインは、トリミング素子TRIMの一端に接続されている。トランジスタTr1のゲートは、制御回路CTRLの第1開閉制御信号出力端に接続されている。すなわち、トランジスタTr1は、制御回路CTRLからの第1開閉制御信号bに基づいて開閉制御される第1スイッチ素子であると言える。
【0028】
トランジスタTr2は、Pチャネル電界効果トランジスタである。トランジスタTr2のソースは、電源電圧ラインに接続されている。トランジスタTr2のドレインは、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に接続されている。トランジスタTr2のゲートは、トランジスタTr1のドレインに接続されている。すなわち、トランジスタTr2は、トリミング素子TRIMの一端とトランジスタTr1のドレインとの接続ノードに現れる電圧信号aに基づいて開閉制御される第2スイッチ素子であると言える。
【0029】
トランジスタTr3は、Nチャネル電界効果トランジスタである。トランジスタTr3のドレインは、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に接続されている。トランジスタTr3のソースは、基準電圧ライン(接地ライン)に接続されている。トランジスタTr3のゲートは、制御回路CTRLの第2開閉制御信号出力端に接続されている。なお、第2開閉制御信号cは、先述した第1開閉制御信号bの反転信号とされている。すなわち、トランジスタTr3は、トランジスタTr1と同一の開閉状態に制御される第3スイッチ素子であると言える。
【0030】
トランジスタTr4は、Pチャネル電界効果トランジスタである。トランジスタTr4のソースは、電源電圧ラインに接続されている。トランジスタTr4のドレインは、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に接続されている。トランジスタTr4のゲートは、ラッチ回路FFの出力端(Q)に接続されている。すなわち、トランジスタTr4は、ラッチ回路FFの出力信号gに基づいて開閉制御される第4スイッチ素子であると言える。
【0031】
ラッチ回路FFは、2つの否定論理積演算回路NAND1、NAND2をたすき掛けに接続して成るセットリセットフリップフロップである。より具体的に述べると、否定論理積演算回路NAND1の一入力端は、ラッチ回路FFのリセット端(XR)として、トランジスタTr2〜Tr4のドレインに各々接続されている。否定論理積演算回路NAND1の出力端は、否定論理積演算回路NAND2の一入力端に接続されている。否定論理積演算回路NAND2の他入力端は、ラッチ回路FFのセット端(XS)として、制御回路CTRLのセット信号出力端に接続されている。否定論理積演算回路NAND2の出力端は、否定論理積演算回路NAND1の他入力端に接続される一方、ラッチ回路FFの出力端(Q)として、不図示の後段回路にも接続されており、その出力信号gがトリミングデータOUTとして引き出される。このように、ラッチ回路FFを最も一般的でシンプルなセットリセットフリップフロップとすることにより、小規模な回路構成でラッチ回路FFを実現することが可能となる。
【0032】
図2は、ラッチ回路FFの真理値表である。本図に示すように、セット端(XS)の論理がローレベル(L)であるとき、出力端(Q)の論理は、リセット端(XR)の論理に依らず常にハイレベル(H)となる。一方、セット端(XS)の論理がハイレベル(H)で、リセット端(XR)の論理がローレベル(L)であれば、出力端(Q)の論理はローレベル(L)となる。また、セット端(XS)の論理とリセット端(XR)の論理がともにハイレベル(H)であれば、出力端(Q)の論理は事前の出力状態に保持される。
【0033】
制御回路CTRLは、トランジスタTr1、Tr3の第1、第2開閉制御信号b、c及びラッチ回路FFのセット信号dを生成する手段である。制御回路CTRLは、ラッチ回路FFのラッチ前(トリミングデータ検出時)においては、トランジスタTr1、Tr3を共にオンさせるように、また、ラッチ回路FFのセット端(XS)の論理をローレベルとするように、第1、第2開閉制御信号b、c及びセット信号dを生成する。一方、制御回路CTRLは、ラッチ回路FFのラッチ後においては、トランジスタTr1、Tr3を共にオフさせるように、また、ラッチ回路FFのセット端(XS)の論理をハイレベルとするように、第1、第2開閉制御信号b、c及びセット信号dを生成する。このように、トランジスタTr1、Tr3の開閉状態、並びに、ラッチ回路FFのセット端(XS)の論理状態は、いずれも制御回路CTRLによって制御される。
【0034】
上記構成から成るトリミング回路の動作について、図3及び図4を参照しながら、詳細に説明する。図3は、図1に示した信号a〜gの波形を示すタイミングチャートであり、図4は、第1実施形態におけるトリミング状態、トランジスタのオン/オフ状態、及び、データラッチ状態の相関関係を示す説明図である。
【0035】
まず、図3(A)及び図4を参照しながら、トリミング素子TRIMが非切断状態である場合につき、ラッチ前(トリミングデータ検出時)と、ラッチ時と、ラッチ後に状況を分けて、各トランジスタTr1〜Tr4及びラッチ回路FFの動作を詳細に説明する。なお、トリミング素子TRIMは、その非切断により、接地ラインに対してローインピーダンス状態となっている。
【0036】
まず、ラッチ前(トリミングデータ検出時)の動作について説明する。トリミングデータOUTのラッチ前、制御回路CTRLは、トランジスタTr1、Tr3を共にオンさせるように、第1開閉制御信号bの論理をローレベルとし、第2開閉制御信号cの論理をハイレベルとする。また、制御回路CTRLは、ラッチ回路FFのセット端(XS)の論理をローレベルとするように、セット信号dを生成する。従って、ラッチ回路FFの出力端(Q)の論理は、先述の通り、リセット端(XR)の論理に依ることなく常にハイレベルとなり、トランジスタTr4はオフされることになる。
【0037】
なお、制御回路CTRLによりトランジスタTr1はオンされているが、このトランジスタTr1のオン時の出力インピーダンスは、トリミング素子TRIMの非切断状態におけるインピーダンスよりも大きく設定されているため、トリミング素子TRIMの一端とトランジスタTr1のドレインとの接続ノードに現れる電圧信号aは、トリミング素子TRIMが接地ラインに対してローインピーダンスであるためにローレベルとなり、トランジスタTr2はオンされることになる。
【0038】
また、制御回路CTRLによりトランジスタTr3もオンされているが、トランジスタTr2のオン時の出力インピーダンスは、トランジスタTr3のオン時の出力インピーダンスよりも大きく設定されているため、トランジスタTr2がオンしていることにより、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に印加されるリセット信号eはハイレベルとなる。
【0039】
上記のように、トランジスタTr1、Tr3のオン時の出力インピーダンスは、いずれも大きく設定されているが、このような素子特性は、各トランジスタのゲート長やゲート幅のサイズを調整する手法や、カレントミラー回路等のバイアス電圧にてオン時のゲート電圧を制御する手法などを採用することによって、容易に実現することが可能である。
【0040】
次に、ラッチ時の動作について説明する。トリミングデータOUTのラッチ時、制御回路CTRLは、ラッチ回路FFのセット端(XS)に印加されるセット信号dの論理をローレベルからハイレベルに変遷する。このとき、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に印加されるリセット信号eの論理は、上記したラッチ前の状態でハイレベルとなっているため、ラッチ回路FFの出力端(Q)から引き出される出力信号g(つまりトリミングデータOUT)の論理は、事前の出力状態(ハイレベル)にラッチされる(図2を参照)。
【0041】
次に、ラッチ後の動作について説明する。トリミングデータOUTのラッチ後、制御回路CTRLは、トランジスタTr1、Tr3を共にオフさせるように、第1開閉制御信号bの論理をハイレベルとし、第2開閉制御信号cの論理をローレベルとする。このとき、トリミング素子TRIMの一端とトランジスタTr1のドレインとの接続ノードに現れる電圧信号aは、トランジスタTr1がオフされた後も、トリミング素子TRIMが接地ラインに対してローインピーダンスであるために、引き続きローレベルとなる。従って、トランジスタTr2は、トランジスタTr1がオフされた後も、引き続きオン状態に保持され、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に印加されるリセット信号eは、引き続きハイレベルに保持される。その結果、ラッチ回路FFの出力端(Q)から引き出される出力信号g(すなわちトリミングデータOUT)の論理は、引き続き事前の出力状態(ハイレベル)にラッチされたままとなる。
【0042】
このように、トリミングデータOUTのラッチ後、トランジスタTr1、Tr3を共にオフさせる構成であれば、その動作に必要な回路電流をゼロに抑えることが可能となる。また、トリミング素子TRIMが非切断状態である場合には、ラッチ後も論理不定ノードが生じないため、トランジスタTr4がオフのままでも、貫通リーク電流などの不要な消費電流が流れることはない。
【0043】
続いて、図3(B)及び図4を参照しながら、トリミング素子TRIMが切断状態である場合につき、ラッチ前(トリミングデータ検出時)と、ラッチ時と、ラッチ後に状況を分けて、各トランジスタTr1〜Tr4及びラッチ回路FFの動作を詳細に説明する。なお、トリミング素子TRIMは、その切断により、接地ラインに対してハイインピーダンス状態となっている。
【0044】
まず、ラッチ前(トリミングデータ検出時)の動作について説明する。トリミングデータOUTのラッチ前、制御回路CTRLは、トランジスタTr1、Tr3を共にオンさせるように、第1開閉制御信号bの論理をローレベルとし、第2開閉制御信号cの論理をハイレベルとする。また、制御回路CTRLは、ラッチ回路FFのセット端(XS)の論理をローレベルとするように、セット信号dを生成する。従って、ラッチ回路FFの出力端(Q)の論理は、先述の通り、リセット端(XR)の論理に依ることなく常にハイレベルとなり、トランジスタTr4はオフされることになる。
【0045】
なお、制御回路CTRLによりトランジスタTr1はオンされているが、トリミング素子TRIMは切断されてハイインピーダンス状態であるため、トリミング素子TRIMに電流を流し込んでも、トリミング素子TRIMの一端とトランジスタTr1のドレインとの接続ノードに現れる電圧信号aはハイレベルとなり、トランジスタTr2はオフされることになる。従って、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に印加されるリセット信号eの論理は、トランジスタTr3がオンしていることにより、ローレベルとなる。
【0046】
次に、ラッチ時の動作について説明する。トリミングデータOUTのラッチ時、制御回路CTRLは、ラッチ回路FFのセット端(XS)に印加されるセット信号dの論理をローレベルからハイレベルに変遷する。このとき、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に印加されるリセット信号eの論理は、上記したラッチ前の状態でローレベルとなっているため、ラッチ回路FFの出力端(Q)から引き出される出力信号g(すなわちトリミングデータOUT)の論理は、ローレベルにラッチされる(図2を参照)。また、出力信号gの論理がローレベルとなることで、トランジスタTr4はオンされることになる。
【0047】
次に、ラッチ後の動作について説明する。トリミングデータOUTのラッチ後、制御回路CTRLは、トランジスタTr1、Tr3を共にオフさせるように、第1開閉制御信号bの論理をハイレベルとし、第2開閉制御信号cの論理をローレベルとする。このとき、トリミング素子TRIMの一端とトランジスタTr1のドレインとの接続ノードは、トリミング素子TRIMが接地ラインに対してハイインピーダンスであるために、浮遊状態となり、そこに現れる電圧信号aは、その論理が不確定な状態(トランジスタTr2の開閉状態が定まらない不定電位状態)となる。
【0048】
しかし、ラッチ後には、トランジスタTr3がオフされ、かつ、トランジスタTr4がオンされることにより、ラッチ回路FFのリセット端(XR)に印加されるリセット信号eがローレベルからハイレベルに変遷され、かつ、当該ハイレベルで固定されることになる。そのため、ラッチ回路FFの出力信号g(すなわちトリミングデータOUT)の論理は、トランジスタTr2の不確定な開閉状態に依ることなく、確実に事前の出力状態(ローレベル)にラッチされたままとなる。
【0049】
このように、本実施形態では、トリミング素子TRIMに接続されたトランジスタTr1の出力(電圧信号a)をそれに従属接続されたトランジスタTr2、Tr3で検出し、その検出結果をラッチ回路FFで保持して出力するように構成された回路であって、トランジスタTr4をトランジスタTr2と並列に接続して、そのゲートにラッチ回路FFの出力端を接続した上で、負荷側のトランジスタTr3も含めて、トランジスタTr1の開閉制御を行うトリミングデータ検出回路が採用されている。言い換えれば、本実施形態では、トランジスタTr1の出力部がハイインピーダンス状態のときに、ラッチ回路FFの出力信号gをトランジスタTr4に入力させることで、トランジスタTr2の不確定状態を回避するトリミングデータOUTの検出方法が採用されている。
【0050】
このような構成であれば、トリミング素子TRIMが切断状態である場合に、トリミング素子TRIMの一端とトランジスタTr1のドレインとの接続ノードに現れる電圧信号aの論理が不確定な状態となっても、それ以外の周辺回路部を安定した論理状態に維持することができるので、従来のインバータ(図7を参照)で見られた貫通リーク電流などの不要な消費電流が流れることはない。また、トリミング素子TRIMが非切断状態である場合と同様、トリミングデータOUTのラッチ後は、トランジスタTr1、Tr3が共にオフされるので、その動作に必要な回路電流をゼロに抑えることができ、また、上記の論理不定ノード自体でリーク電流が生じることもない。
【0051】
従って、本実施形態のトリミング回路であれば、小規模な回路構成によって、少ない消費電流でトリミングデータOUTを確実にラッチすることができ、かつ、そのラッチ後においては、トリミング素子TRIMのトリミング状態に依ることなく、消費電流を低減することが可能となる。
【0052】
次に、本発明に係るトリミング回路の第2実施形態について詳細な説明を行う。本実施形態のトリミング回路は、トリミング素子TRIMとしてゲート破壊素子Gを用いた以外は、先述の第1実施形態と同様の構成から成る。
【0053】
このように、フューズ素子Fに代えてゲート破壊素子Gを用いた構成であっても、先述の第1実施形態と同様、トリミング制御端子T1に対する破壊電圧の印加/非印加に応じて、そのトリミング状態を任意に制御することが可能となる。
【0054】
なお、フューズ素子Fとゲート破壊素子Gは、一般に高電圧の印加/非印加に応じて、そのトリミング状態(切断/非切断、或いは、破壊/非破壊)が制御されるという点で一致しており、トリミング工程上の極性が逆であるという点で相違している。より具体的に述べると、素子の非破壊時(非トリミング時)において、フューズ素子Fはローインピーダンスとなるのに対し、ゲート破壊素子Gはハイインピーダンスとなる。逆に、素子の破壊時(トリミング時)において、フューズ素子Fはハイインピーダンスとなるのに対し、ゲート破壊素子Gはローインピーダンスとなる。すなわち、トリミング素子TRIMとしてゲート破壊素子Gを用いたとしても、トリミングデータOUTのラッチ動作は、先述の第1実施形態と何ら変わるところがなく、先と同様に機能するものとなる。
【0055】
次に、本発明に係るトリミング回路の第3実施形態について詳細な説明を行う。本実施形態のトリミング回路は、カソードがトリミング制御端子T1とトリミング素子TRIMとの接続ノードに接続され、アノードがトランジスタTr1のドレインとトランジスタTr2のゲートとの接続ノードに接続された保護ダイオードD1を有して成る構成とされている。このような構成とすることにより、トリミング工程(フューズ素子Fの切断工程やゲート破壊素子Gの破壊工程)にて、トリミング制御端子T1に高電圧を印加する場合でも、当該印加電圧によってトリミング回路(特にトランジスタTr1、Tr2)が破壊されないように保護することが可能となる。
【0056】
なお、保護ダイオードD1の挿入によって、トリミング素子TRIMの非切断時におけるインピーダンスは多少変わってくるが、非切断時のローインピーダンス、切断時のハイインピーダンスとも検出動作に支障のない範囲であるため、トリミングデータOUTのラッチ動作については、先述の第1実施形態と何ら変わるところがなく、先と同様に機能するものとなる。
【0057】
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、いずれもトリミング制御端子T1への高電圧印加によってトリミング素子TRIMを破壊する工程を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、トリミング工程は、レーザ照射等によるものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、半導体集積回路装置に搭載されるトリミング回路の消費電力低減を図る上で有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】は、本発明に係るトリミング回路の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】は、ラッチ回路FFの真理値表である。
【図3】は、信号a〜gの波形を示すタイミングチャートである。
【図4】は、第1実施形態におけるトリミング状態、トランジスタのオン/オフ状態、及び、データラッチ状態の相関関係を示す説明図である。
【図5】は、本発明に係るトリミング回路の第2実施形態を示す回路図である。
【図6】は、本発明に係るトリミング回路の第3実施形態を示す回路図である。
【図7】は、トリミング回路の一従来例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0060】
Tr1〜Tr4 第1〜第4トランジスタ(第1〜第4スイッチ素子)
TRIM トリミング素子
F フューズ素子
G ゲート破壊素子
FF ラッチ回路(セットリセットフリップフロップ)
NAND1〜NAND2 否定論理積演算回路
CTRL 制御回路
T1 トリミング制御端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリミング素子と;電源電圧ラインと前記トリミング素子との間に接続された第1スイッチ素子と;その出力信号がトリミングデータとして引き出されるラッチ回路と;前記電源電圧ラインと前記ラッチ回路のリセット端との間に接続され、前記トリミング素子と第1スイッチ素子との接続ノードに現れる電圧信号に基づいて開閉制御される第2スイッチ素子と;前記ラッチ回路のリセット端と基準電圧ラインとの間に接続され、第1スイッチ素子と同一の開閉状態に制御される第3スイッチ素子と;前記電源電圧ラインと前記ラッチ回路のリセット端との間に接続され、前記ラッチ回路の出力信号に基づいて開閉制御される第4スイッチ素子と;第1、第3スイッチ素子の開閉制御信号及び前記ラッチ回路のセット信号を生成する制御回路と;を有して成ることを特徴とするトリミング回路。
【請求項2】
第1スイッチ素子は、ソースが前記電源電圧ラインに接続され、ドレインが前記トリミング素子に接続され、ゲートが前記制御回路に接続されたPチャネル電界効果トランジスタであり;
第2スイッチ素子は、ソースが前記電源電圧ラインに接続され、ドレインが前記ラッチ回路のリセット端に接続され、ゲートが前記トリミング素子と第1スイッチ素子との接続ノードに接続されたPチャネル電界効果トランジスタであり;
第3スイッチ素子は、ドレインが前記ラッチ回路のリセット端に接続され、ソースが前記基準電圧ラインに接続され、ゲートが前記制御回路に接続されたNチャネル電界効果トランジスタであり;
第4スイッチ素子は、ソースが前記電源電圧ラインに接続され、ドレインが前記ラッチ回路のリセット端に接続され、ゲートが前記ラッチ回路の出力端に接続されたPチャネル電界効果トランジスタである;
ことを特徴とする請求項1に記載のトリミング回路。
【請求項3】
前記ラッチ回路は、2つの否定論理積演算回路をたすき掛けに接続して成るセットリセットフリップフロップであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトリミング回路。
【請求項4】
前記トリミング素子は、フューズ素子或いはゲート破壊素子であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のトリミング回路。
【請求項5】
カソードがトリミング制御端子と前記トリミング素子との接続ノードに接続され、アノードが第1スイッチ素子の一端と第2スイッチ素子の制御端との接続ノードに接続された保護ダイオードを有して成ることを特徴とする請求項4に記載のトリミング回路。
【請求項6】
接続及び非接続の2つの状態を有するトリミング素子に接続された第1のトランジスタの出力をそれに従属接続された第2、第3のトランジスタで検出し、その検出結果をラッチ回路で保持して出力するように構成された回路であって、第4のトランジスタを第2のトランジスタと並列に接続して、そのゲートに前記ラッチ回路の出力端を接続したことを特徴とするトリミングデータ検出回路。
【請求項7】
請求項6に記載のトリミングデータ検出回路を用いたトリミングデータの検出方法であって、第1のトランジスタの出力部がハイインピーダンス状態のときに、前記ラッチ回路の出力を第4のトランジスタに入力させることで、第2のトランジスタの不確定状態を回避することを特徴とするトリミングデータの検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−319504(P2006−319504A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138102(P2005−138102)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】