説明

ドア開閉装置

【課題】ドアハンドルの外観に優れた金属光沢を付与しながらも、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動が生じ難いドア開閉装置を提供する。
【解決手段】車両のドアに設けられたドア開閉用のドアハンドルと、ドアハンドルに配置された電極と、人体部分のドアハンドルへの接近または接触によって電極の付近に生じる静電容量の変化を検出してロックまたはアンロックの操作信号を出力する検出回路と、操作信号によってドアのロックまたはアンロックを実行する装置と、車両に対応する携帯機との間で送受信を行うための送受信アンテナとを備え、ドアハンドルが絶縁体からなる基体19を有し、基体19の車両外側面に、SiO及びAlの少なくともいずれかで構成された無機薄膜層21を被着させ、無機薄膜層21の表面に互いに分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層22を被着させたドア開閉装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられたドア開閉用のドアハンドルと、このドアハンドルに配置されたセンサと、人体部分のドアハンドルへの接近または接触によって同センサの付近に生じる静電容量の変化を検出してロックまたはアンロックの操作信号を出力する検出回路と、同操作信号によってドアのロックまたはアンロックを実行する装置と、同車両に対応する携帯機との間で送受信を行うための送受信アンテナとを備えた、いわゆるスマートエントリー式のドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドア開閉装置に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1に記されたドア開閉装置は、樹脂製のドアハンドルの外表面にスパッタリングにより金属(クロム)の薄膜を形成することで、メッキと同等の金属光沢を有しながら、アンテナ出力の損失低減や通信の安定性確保が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−142784号公報(0005段落、0015段落、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記されたドア開閉装置では、アンテナ出力の損失低減は抑制できたが、未だ、ユーザがドアのロックやアンロック操作を実行させようとして手などをドアハンドルに近接または接触させる際に誤作動や不作動が生じる傾向が見られた。誤作動の具体例としては、ロック状態のドアをアンロックしようとしてドアハンドルのアンロックセンサに手を近づけると、一旦アンロックされ、その直後に再度ロックされるなどの不都合な現象が挙げられる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術によるドア開閉装置が与える課題に鑑み、ドアハンドルの外観に優れた金属光沢を付与しながらも、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動が生じ難いドア開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるドア開閉装置の第1の特徴構成は、
車両のドアに設けられたドア開閉用のドアハンドルと、このドアハンドルに配置された電極と、人体部分の前記ドアハンドルへの接近または接触によって前記電極の付近に生じる静電容量の変化を検出してロックまたはアンロックの操作信号を出力する検出回路と、前記操作信号によって前記ドアのロックまたはアンロックを実行する装置と、前記車両に対応する携帯機との間で送受信を行うための送受信アンテナとを備え、
前記ドアハンドルが絶縁体からなる基体を有し、
前記基体の少なくとも車両外側面には、SiO及びAlの少なくともいずれかで構成され、前記基体の表面に被着された無機薄膜層と、互いに分離された島状の金属粒子の集合からなり、前記無機薄膜層の表面に被着された金属薄膜層とが設けられている点にある。
【0007】
上記の特徴構成によるドア開閉装置では、樹脂などの絶縁体からなるドアハンドルの基体の外側面に、SiO及びAlの少なくともいずれかで構成された無機薄膜層が被着され、さらに同無機薄膜層の上に、互いに分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層が被着されることで、ドアハンドルの外観に優れた金属光沢を付与しながらも、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動が生じ難くなる。
【0008】
すなわち、出願人は一連の実験によって、樹脂などの絶縁体からなるドアハンドルの基体の外側面に、互いに分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層を被着させたドアハンドルとすることで、ドアハンドルの外観に優れた金属光沢を付与しながらも、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動を生じ難くし得るという知見を以前より得ていた。
【0009】
しかし、今般さらなる実験によって、先ず、ドアハンドルの基体の外側面にSiO及びAlの少なくともいずれかで構成された無機薄膜層を被着し、次に、同無機薄膜層の上に互いに分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層を被着した構造とすることで、少なくとも、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動が更に生じ難くなるという知見を得たものである。
【0010】
このように、樹脂などの絶縁体からなるドアハンドルの基体の外側面と、互いに分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層との間に、SiO及びAlの少なくともいずれかで構成された無機薄膜層を介装させることで、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動が更に生じ難くなる理由については、以下のような説明が可能である。
【0011】
すなわち、互いに分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層を樹脂製の基体上に直に形成した構造では(以後、単層薄膜構造と呼ぶ)、薄膜層が所望の光沢が得られる厚さとなるまで薄膜形成を継続した場合、一見すると島状に分離しているかに見える直径が50nm前後の金属粒子どうしが実は基体近傍において更に非常に薄い金属薄膜によって連結された状態となり易いことが判明した(図7を参照)。したがって、一見すると島状に見られる多数の金属粒子による一群こそが、厳密に電気的な意味での一つの大きな島を構成していることとなるため、個々の50nm前後の金属粒子どうしが電気的にも正しく島状に分離している構成に比べると、表面抵抗が小さくなることになる。
【0012】
しかし、本発明による上記の特徴構成のように、先ず、ドアハンドルの基体の外側面にSiO及びAlの少なくともいずれかで構成された無機薄膜層を被着し、次に、同無機薄膜層の上に互いに分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層をスパッタリングによって被着した構造(以後、二層薄膜構造と呼ぶ)とすれば、薄膜層が所望の光沢が得られる厚さとなるまで金属の薄膜形成を継続しても、個々の50nm前後の金属粒子どうしが電気的にも正しく島状に分離している構成が得られ(図5を参照)、表面抵抗が十分に大きくなり、そのために、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動が更に生じ難くなるという新たな知見が得られたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るドア開閉装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ドア開閉装置の車載機の要部を示す破断平面図である。
【図3】図2のIII−IIIによる断面を示す破断側面図である。
【図4】ドアハンドル表面の層形成工程を示す説明図である。
【図5】本発明による各層の微細構造を示す説明図である。
【図6】ドアハンドル表面の層形成状態による色相と表面抵抗を示すグラフである。
【図7】比較例による各層の微細構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための一形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明に係るスマートエントリー式のドア開閉装置は主に、車両に設置された車載機Aと、車両のユーザによって懐中などに携帯される携帯機Bとで構成されている。
【0015】
図2、3に示すように、車載機Aは、車両のドア50に軸心X回りで揺動可能に設けられたドア開閉用のドアハンドル2と、ドアハンドル2に配置された電極状のロックセンサ4aおよびアンロックセンサ4bと、ユーザの手(人体部分の一例)などのドアハンドル2の各部への接近または接触によって各センサ4a,4bの付近に生じる静電容量の変化を検出してロック(またはアンロック)の操作信号を出力する検出回路6とを備える。
【0016】
また、図1に示すように、車載機Aは、検出回路6から出力された操作信号によってドア50のロック機構52Lを操作(ロックまたはアンロック)するアクチュエータ8と、携帯機Bとの間で送受信を行うための送信アンテナ10および受信アンテナ14とを備える。
【0017】
ここでは、送信アンテナ10はドアハンドル2の内部に設置されており、受信アンテナ14はピラー内部、ラゲージルームなどに設置されている。車載機Aは、送信アンテナ10のための送信回路(不図示)、受信アンテナ14のための受信回路(不図示)、ロックセンサ4aおよびアンロックセンサ4bのロック・アンロック信号回路(不図示)、および、アクチュエータ8の駆動回路などと接続された制御ECUを含む。携帯機Bは、送信アンテナ、受信アンテナおよびECU(不図示)を備えている。
【0018】
図1に示すように、車載機Aの送信アンテナ10からは、周波数134kHzなどのリクエスト信号が常時送信され、携帯機Bは同リクエスト信号を受信すると、トランスポンダIDコードを変調した周波数300MHzなどの信号を返信する。車載機Aの受信アンテナ14で受信された周波数300MHzの信号は受信部で復調されて制御ECUに入力される。制御ECUはトランスポンダIDコードを受信し、メモリ(不図示)に記憶されたIDコードと照合し、両IDコードが照合された状態でアンロックセンサ4bに触れると車両はアンロックされ、ロックセンサ4aに触れると、IDコードの照合を実行し、照合されると車両はロックし、制御ECUはアンロック信号又はロック信号に基づいてアクチュエータ8をロック状態又はアンロック状態にする。
【0019】
(ドアハンドルの構成)
図2に示すように、ドアハンドル2は、車両の外側に面したアウタ部材2aと、アウタ部材2aの内側に取り付けられたインナ部材2bとを有する。アウタ部材2aの一端には、ドアハンドル2をドア50に軸心X回りで揺動自在に支持させるための軸部材2Sが形成され、他端にはロック機構52Lと係合可能な被係止片2Pが設けられている。アウタ部材2aとインナ部材2bの間の空隙には、ロックセンサ4a、アンロックセンサ4b、送信アンテナ10、検出回路6の基板などが配置されており、これらはインナ部材2bに固定されている。アウタ部材2aおよびインナ部材2bはいずれも樹脂(絶縁体の一例)で形成されており、互いに前後の両端箇所でネジによって固定されている。ドアパネル50Pの窪み50Hとインナ部材2bとの間にはユーザが手を差し入れることの可能な空隙Sが形成されている。
【0020】
図5に示すように、ドアハンドル2のアウタ部材2aは、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの射出成形によって作製された樹脂基体19(基体の一例)を備え、この樹脂基体19の車両外側に相当する面には意匠的に優れた鏡面状の外観を与えるための金属薄膜層22が設けられている。
実際には、図5に示すように、アウタ部材2aの車両外側に相当する樹脂基体19に金属薄膜層22を含む5層の膜が形成されている。
尚、樹脂基体19の材質としてはPBTに限らず例えばPC(ポリカーボネート)など種々の樹脂を用いることができる。
【0021】
(平滑塗膜層)
第1の層は、樹脂基体19の表面をより平滑化させる目的で形成された約20μmの厚さの平滑塗膜層20であり、具体例としては樹脂基体19の表面にアクリルウレタン系塗料を塗布し、熱乾燥方式によって焼付ければよい。
【0022】
(無機薄膜層)
第2の層は、平滑塗膜層20の表面にスパッタリングによって形成された約30nmの厚さの無機薄膜層21であり、SiOまたはAlの各単一組成、或いはSiOとAlの混合物または複合体で構成されている。尚、無機薄膜層21の厚さは約30nmに限らず1〜200nmの範囲であればよく、5〜50nmの範囲であれば更に好適である。
【0023】
尚、SiOまたはAlの各単一組成、或いはSiOとAlの混合物または複合体で構成された無機薄膜層21は無色に近く高い透明性を有するため、着色傾向のある薄膜層を用いる場合に比べてドアハンドル2の外観に影響を与え難く好都合である。
また、無機薄膜層21をスパッタリングによって形成する場合、スパッタリングによる無機薄膜層21の形成工程と、後述するスパッタリングによる金属薄膜層22の形成工程とは連続的に実施することが可能である。
【0024】
(金属薄膜層)
第3の層は、無機薄膜層21の表面にスパッタリングによって被着された金属薄膜層22である。ドアハンドル2の鏡面状の外観は主にこの金属薄膜層22によって与えられる。金属薄膜層22は、SiOまたはAlで構成された無機薄膜層21の上にインジウムをスパッタリングによって形成することで、図5に示すように、自然に互いに電気的にも十分に分離された島状のインジウム粒子(金属粒子の一例)の集合からなり、全体としては約20nmの厚さを備える。尚、金属薄膜層22の厚さは約20nmに限らず10〜100nmの範囲であればよく、20〜50nmの範囲であれば更に好適である。
【0025】
島状をなす個々のインジウム粒子の平面視における粒径は約10nm〜約2000nmの範囲で、無機薄膜層21の表面に沿って延びた概して平坦な形状を有し、互いに幅が5〜200nmの間隙によって分離されることで全体としては島状を呈している。金属薄膜層22の全体としては十分な反射率(40〜60%)を有する。
金属薄膜層22は、十分な反射率を備えるにも関わらず、互いに電気的に十分に分離された島状の金属粒子の集合という形態をとることで、1.0×1014(Ω/□)以上(トップコート層23を設ける前の測定結果)という非常に大きな表面抵抗を示す。
【0026】
スパッタリングによって互いに電気的にも十分に分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層22を得るために用いる金属元素または合金は、アルミニウムより融点の低いものが適している。本発明に最適な金属の一つとして確認されたインジウムの融点は約157℃である。アルミニウム(融点:660℃)を蒸発源とした蒸着で形成した金属薄膜では、島状の粒子の集合体とならず、高い表面抵抗値も得られない。この点はクロム(融点:1890℃)を用いた場合も同様である。
【0027】
アルミニウムよりも融点の低い金属元素または合金としては、インジウムの他にスズ(融点:232℃)、マグネシウム(融点:651℃)、スズ/ビスマス合金などが存在し、これらの金属をターゲットとしてスパッタリングを行った場合も、島状の粒子の集合体と十分に高い表面抵抗値が得られる。
【0028】
(トップコート層)
第4の層は、無機薄膜層21及び金属薄膜層22を保護するための保護塗装として形成された約30μmの厚さのトップコート層23であり、金属薄膜層22を形成後の表面に例えばアクリルウレタン系塗料を塗布し、熱乾燥方式によって硬化させたものである。
【0029】
(ドアハンドルの表面抵抗)
ドアハンドル2のアウタ部材2aの表面を以上のような構成とした結果、電気的にも十分に分離された島状の金属粒子の集合からなる金属薄膜層22が得られるため、一般的なクロムメッキに匹敵する優れた意匠性を備え、しかも、その金属薄膜層22がロックセンサ4a、アンロックセンサ4b、送信アンテナ10などの電磁波および静電容量に関する作用に悪い影響を及ぼす虞の少ないドア開閉用のドアハンドル2が得られた。特に、ロックセンサ4aやアンロックセンサ4bが金属薄膜層22と容量結合する現象が抑制されるので、ユーザが手をドアハンドル2に近接または接触させて実行しようとするロックやアンロックの操作において誤作動や不作動が生じ難いドアハンドル2が得られる。
【0030】
(ドアハンドルの外観色)
尚、スパッタリングによって形成する金属薄膜として成膜性においてクロム(Cr)よりも有利なインジウム(In)を用いた構成では、前述した単層薄膜構造では、ドアハンドルの外観が目標とする金属光沢の色相よりも黄色味を帯びるという好ましくない傾向が認められていた。
【0031】
しかし、金属薄膜としてインジウム(In)を用いた場合でも、SiOまたはAlで構成された無機薄膜層21の上にインジウムをスパッタリングによって形成するという方法によって、金属薄膜層22が互いに十分に分離された島状の金属粒子の集合という形態をとることで、L表色系(CIE)におけるbの値が0以下という、外観に黄色味を感じさせない色相上の特性を示すようになることが確認された。
【0032】
このように、上記の特徴構成のような二層薄膜構造とすることで、外観の色相から黄色味が失われた理由については、局所場プラズモン共鳴現象という考え方に基づく説明が可能である。プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動して擬似的な粒子として振る舞う状態を指す。
【0033】
すなわち、金属の超微粒子はその粒子径や種類によって特定の波長の光を吸収する作用(プラズモン吸収)を有し、本発明の解決課題に関して論じれば、前述したように、単層薄膜構造では、一見すると島状に見られる多数の金属粒子による一群こそが電気的な意味での一つの大きな島を構成しているために、実質的に大きな金属粒子が個々の島を構成している状態となり、プラズモン吸収によって短波長側の青色光が吸収されることで、外観が黄色味を帯びるものと推測される。
【0034】
他方、本発明による上記の特徴構成のように、先ず、ドアハンドルの基体の外側面にSiO及びAlの少なくともいずれかで構成された無機薄膜層を被着させ、次に、同無機薄膜層の表面に対してスパッタリングによって互いに分離された島状の金属粒子の集合からなり、被着された金属薄膜層を被着させた二層薄膜構造とすれば、個々の50nm前後の金属粒子どうしが電気的にも正しく島状に分離している構成が得られるため、結果として、実質的により小さな金属粒子が個々の島を構成している状態となり、プラズモン吸収による短波長側(青色)の光吸収が抑制或いはなくなることで、外観から黄色味が除かれるものと推測される。
【実施例1】
【0035】
図6には、下記の各成膜条件で基体19上の平滑塗膜層20の上に無機薄膜層21及び金属薄膜層22を形成した場合の2つの表面特性(表面抵抗値及びL表色系におけるbの値)の測定結果を示すグラフが、無機薄膜層21のない比較例と共に示されている。
本発明の実施例として、SiOによる無機薄膜層21及びInによる金属薄膜層22を形成した場合の各値が(○)で示され、及び、Alによる無機薄膜層21及びInによる金属薄膜層22を形成した場合の各値が(●)で示されている。
また、比較例に関する多数のプロット(◇で示す)は、全て、無機薄膜層21を設けることなく、下記の金属薄膜層の成膜条件で基体19上の平滑塗膜層20の上に直に金属薄膜層22を形成した場合の2つの表面特性を示す。
【0036】
(無機薄膜層の成膜条件)
・成膜方法:RFマグネトロンスパッタ法
・投入電圧:300W
・スパッタ圧:0.5Pa
・成膜速度:0.1〜0.2nm/秒
【0037】
(金属薄膜層の成膜条件)
・成膜方法:DCマグネトロンスパッタ法
・投入電圧:10000W
・スパッタ圧:1.0Pa
・成膜速度:10〜20nm/秒
【0038】
表面抵抗値は、保護層(トップコート層23)を設ける前の金属薄膜層22について、二重リング電極方式の抵抗測定装置(三菱化学アナリテック製ハイレスタUP MCP−HT450型)により、JIS−K6911準拠の測定方法で測定したものである。
また、L表色系におけるbの値は保護層(トップコート層23)を設ける前の金属薄膜層22について、分光側色計(コニカミノルタ製CM−700d)による測定値である。
【0039】
図6のグラフからは、無機薄膜層21を設けることなく基体19上の平滑塗膜層20の上に直に金属薄膜層22を形成した場合、表面抵抗は1.00×10未満に留まること、及び、L表色系におけるb値が黄色味を帯びた外観に対応する0.7〜2.7の範囲をとることがわかる。
【0040】
他方、SiOによる無機薄膜層21を設けた上で、Inによる金属薄膜層22を形成した場合は、1.00×1014を超える表面抵抗が認められ、b値が黄色味のない外観に対応する−0.1前後を示すことがわかる。
また、Alによる無機薄膜層21を設けた上で、Inによる金属薄膜層22を形成した場合も、1.00×1014を超える表面抵抗が認められ、b値は黄色味がなく、むしろ若干の青味を帯びた外観に対応する−1.7前後を示すことがわかる。
【0041】
〔別実施形態〕
〈1〉無機薄膜層21や金属薄膜層22の形成方法としては、スパッタリング以外の成膜技術、すなわち、蒸着、イオンプレーティング、CVD、PVDなどを用いることも可能である。
【0042】
〈2〉樹脂基体19に設ける平滑塗膜層20および保護層としてのトップコート層23の材質は、アクリルウレタン系塗料に限らず、アクリル系塗料、UV硬化型塗料など種々の塗料を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
車両用のスマートエントリー式のドア開閉装置において、ドアハンドルに優れた金属光沢を付与しながらも、ロックやアンロック操作時の誤作動や不作動が生じ難い装置を提供する技術として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
A 車載機
B 携帯機
2 ドアハンドル
2a アウタ部材
2b インナ部材
4a ロックセンサ(電極)
4b アンロックセンサ(電極)
6 検出回路
8 アクチュエータ
10 送信アンテナ
14 受信アンテナ
19 樹脂基体
21 無機薄膜層
22 金属薄膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられたドア開閉用のドアハンドルと、このドアハンドルに配置された電極と、人体部分の前記ドアハンドルへの接近または接触によって前記電極の付近に生じる静電容量の変化を検出してロックまたはアンロックの操作信号を出力する検出回路と、前記操作信号によって前記ドアのロックまたはアンロックを実行する装置と、前記車両に対応する携帯機との間で送受信を行うための送受信アンテナとを備え、
前記ドアハンドルが絶縁体からなる基体を有し、
前記基体の少なくとも車両外側面には、SiO及びAlの少なくともいずれかで構成され、前記基体の表面に被着された無機薄膜層と、互いに分離された島状の金属粒子の集合からなり、前記無機薄膜層の表面に被着された金属薄膜層とが設けられているドア開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225041(P2012−225041A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93170(P2011−93170)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】