説明

ドレーンパイプ埋設工法及び建築物等の傾斜,沈下又は浮上防止構造

【課題】 簡単且つ効率的にドレーンパイプを地盤に埋設することができるとともに、十分な工事スペースが確保し難い作業現場であっても極めて良好に実施することができる新規なドレーンパイプ埋設工法及び建築物等の傾斜,沈下又は浮上防止構造を提供する。
【解決手段】 先端に掘削ビットが固定された掘削ロッドを回転させながら上記ドレーンパイプ10の埋設位置に対応した地表から鉛直方向又は傾斜方向に地盤Eを掘削した後に、地中方向に衝撃力を繰り返し付与する衝撃発生部80を内部に備えた地盤穿孔装置20をドレーンパイプ10の内部に配置し、ドレーンパイプ10及び地盤穿孔装置20の先端に穿孔ビット30を配置する。衝撃発生部80を駆動させることにより、地盤穿孔装置20及びドレーンパイプ10を地盤E内に貫入させて、ドレーンパイプ10を地盤E内に埋設する。上記地盤E内に埋設されたドレーンパイプ10内から、地盤穿孔装置20を撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレーンパイプ埋設工法及び建築物等の傾斜,沈下又は浮上防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緩い飽和砂質地盤においては、地震が発生すると、地盤中の間隙水圧が上昇することにより有効応力が減少するとともにせん断強度を失い、所謂地盤の液状化現象が発生し易いことが知られている。こうした液状化現象が発生すると、基礎地盤が不当沈下を起し、建築物や電柱が傾き、或いはマンホール等の地中埋設物が浮上する場合が多い。
【0003】
ところで、こうした液状化の発生を防止する技術として、従来ドレーンパイプ埋設工法が知られている。この工法は、通水性を有するドレーンパイプを地表から地盤内に埋設し、地震により地盤内で水圧が高まった地下水を、このドレーンパイプ内に流入させ、地表へと排出することにより、地盤の液状化現象を防止するものである。例えば、特許文献1には、ドレーンパイプとして、麺状の合成樹脂を集積させて管状に成形してなる透水材や、複数個の孔が貫通形成された透水パイプ、不織布、合成樹脂ネットなどを組み合わせる技術が開示されている。上記麺状の管材は、麺同士の隙間が管材の全面で良好な通水性を発揮し、地盤内の水を迅速に排出することができるなどの利点を有している。このようなドレーンパイプの施工方法に関して、上記特許文献1では、可動ブームの先端に削孔マシンを取り付けた作業車を施工現場に乗り入れ、削孔マシンで鋼管などからなるケーシング管を地盤に打ち込み、この地盤に埋設されたケーシング管の内部にドレーンパイプを挿入設置した後に、該ケーシング管を引き抜くことにより、ドレーンパイプが地盤と接触した状態で埋設される。この方法によれば、比較的に耐久性や強度に劣るドレーンパイプであっても容易に埋設することができ、上記麺状の管材を使用する場合であっても地盤に埋設することができる。
【特許文献1】特開平10−204864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のドレーンパイプ埋設工法では、ドレーンパイプを地表から地盤内に埋設するためには、大掛かりな装置や設備が必要となり、既設住宅における地盤流動化防止対策等には適用しがたい。例えば、上記特許文献1に開示された技術では、大型の可動ブーム付き作業車を施工現場に乗り入れる必要があるが、住宅が密集している住宅地などでは個々の住宅の周囲に大型作業車を乗り入れる空間が無いことが多い。また、削孔マシンでケーシング管に打撃を加えて地盤に打ち込む作業を行うと、大きな騒音が発生することを避けられず、周辺住民に多大の迷惑がかかるばかりではなく、作業に伴って発生する過大な振動で、周辺住宅の壁面や土台に悪影響を与える恐れもある。特に、地盤の深くまでドレーンパイプを埋設しようとする場合には、長大なケーシング管を地盤に打ち込む必要があるため、長大なケーシング管を保持したり打ち込んだりすることができる大型の作業車や可動ブームが必要となる。したがって、上記従来のドレーンパイプ埋設方法では、広い道路や空き地に面する施工現場でなければ実施することができない。また、こうしたことは、住宅などの建築物ばかりではなく、例えば、電柱,マンホール,浄化槽,消火栓,タンク等のような地中埋設物の周囲にドレーンパイプを埋設する場合であっても同様であり、上記特許文献1に開示された技術では、その実施可能範囲は極めて限定されたものとなる。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来のドレーンパイプ埋設工法が有する課題を解決するために提案されたものであって、大掛かりな装置設備を使用することなく、簡単且つ効率的にドレーンパイプを地盤に埋設することができるとともに、施工現場の周辺への悪影響を軽減することができ、特に、既設住宅の敷地や地中埋設物の周囲等、十分な工事スペースが確保し難い作業現場であっても極めて良好に実施することができる新規なドレーンパイプ埋設工法及び建築物等の傾斜,沈下又は浮上防止構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、建築物或いは全部又は一部が地中に埋設された地中埋設物の周囲に、筒状に成形され通水性を有する複数のドレーンパイプを埋設するドレーンパイプ埋設工法であって、先端に掘削ビットが固定された掘削ロッドを回転させながら上記ドレーンパイプの埋設位置に対応した地表から鉛直方向又は傾斜方向に地盤を掘削した後に、この掘削ロッドを抜き取る工程(a)と、上記工程(a)の後に、地中方向に衝撃力を繰り返し付与する衝撃発生部を内部に備えた地盤穿孔装置をドレーンパイプの内部に配置し、該ドレーンパイプ及び地盤穿孔装置の先端に穿孔ビットを配置する工程(b)と、上記衝撃発生部を駆動させることにより、該地盤穿孔装置及びドレーンパイプを地盤内に貫入させて、上記ドレーンパイプを地盤内に埋設する工程(c)と、上記地盤内に埋設されたドレーンパイプ内から、上記地盤穿孔装置を撤去する工程(d)と、を含むことを特徴とするものである。
【0007】
そして、上記第1の発明を構成するドレーンパイプは、中空管状をなし、外面から内面へと地下水が通過可能な通水性を有していれば、その材料,形状,構造及び寸法等は特に限定されるものではないとともに、これまで使用されてきた公知のドレーンパイプを使用することができる。なお、このドレーンパイプの材料としては、塩化ビニル,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂や、鉄,銅,アルミニウム等の金属、さらには、コンクリート,セメント,ガラス,セラミック等であっても良いし、複数の材料からなるFRP管,積層管をこのドレーンパイプとして使用しても良い。また、このドレーンパイプの形状は、断面円形状であることが好ましいが、使用目的や要求性能によっては、例えば、断面角形のものや、楕円形,長円形などのように、円形以外の断面形状を有するものであっても良い。また、ドレーンパイプの貫入抵抗に問題がなければ、ドレーンパイプの外周に突起や凹溝などの凹凸形状を有していても良い。また、ドレーンパイプに通水性を付与するには、材料自体に通水性を有するものを使用するほか、ドレーンパイプの製造時あるいは製造後に通水用又は透水用の孔等を形成したものであっても良い。例えば、合成樹脂の連続発泡体や発泡セラミックのような多孔質材料は、材料そのものが通水性を有しており、こうした材料(素材)を用いてドレーンパイプを成形しても良い。また、粒子材料や繊維材料或いは線材料を、ある程度の隙間を空けた状態で集積させて一体結合すれば、得られた成形体は通水性を有することから、こうした工程により成形されたドレーンパイプを使用することもできる。或いは、線材料を網状に組み合わせたものを筒状に成形し、ドレーンパイプとすることもできる。さらに、このドレーンパイプは、棒材で組み立てられた枠に、網布状の材料を貼り付けて、管強度と通水性を確保したものとすることもできるし、他には、管状の成形体に、ドリルなどで多数の小孔をあけて通水性を付与することもできる。或いは、パンチングメタルを筒状に成形したドレーンパイプを使用することもできる。なお、本発明を構成するドレーンパイプに有する通水空間は、通水性は有していても、土砂などが流入し難いことが望ましい。
【0008】
また、本発明では、比較的に耐力に劣る材料からなる管材や、通水空間の割合が多く比較的機械的強度に劣る管構造など、通常の直接的な打撃による打ち込みなどが適用し難いドレーンパイプも使用できる。通水性に優れ、実用的に十分な耐久性を有するドレーンパイプとして、合成樹脂の線条が集積され一体的に結合されてなり、線条間の隙間に生じる通水空間が全面に存在する線条集積管を用いることができる。線条集積管の具体例として、前記特許文献1に記載された麺状樹脂管が挙げられる。麺状樹脂管の市販製品としては、例えば、ポーラスドレーン(ポーラスジャパン社製)、ヘチマロン(登録商標:新光ナイロン社製)を挙げることができる。また、ドレーンパイプの寸法は、施工条件や要求性能によっても変わるが、通常は、外径100〜200mm、肉厚20〜70mm、長さ2〜20mの範囲に設定される。また、地盤に埋設するドレーンパイプの施工全長を、1本のドレーンパイプのみで施工することもできるが、短いドレーンパイプを複数本継ぎ足して使用することもできる。定尺のドレーンパイプを必要な本数だけ継ぎ足せば、広い範囲の施工条件に対応させることができる。なお、ドレーンパイプを継ぎ足すには、接着や熱融着、嵌合などの連結手段が採用できる。ドレーンパイプの両端に、互いに嵌合自在な凹凸構造を設けておくこともできるし、或いは、捻じ込み構造を設けておいても良い。また、ドレーンパイプの連結個所で、該ドレーンパイプの外周にスリーブを被せて連結すれば、強固に連結することができる。上記スリーブには、ドレーンパイプの材料と同様の樹脂、金属などからなる管材を使用することができる。スリーブは通水性のない管材であっても構わない。言うまでもなく、埋設されたドレーンパイプの後端(上端)に新たなドレーンパイプの先端を配置するだけで、特別な連結手段を講じなくても、ドレーンパイプの自重によって一体的に埋設して行ける場合もある。継ぎ足したドレーンパイプ列の後端すなわち上端に錘を載せるなどして、ドレーンパイプの継ぎ目が空かないように、押さえておくこともできる。
【0009】
そして、上記第1の発明では、先端に掘削ビットが固定された掘削ロッドを回転させながら上記ドレーンパイプの埋設位置に対応した地表から鉛直方向又は傾斜方向に地盤を掘削した後に、この掘削ロッドを抜き取る工程(a)を行う。上記掘削ロッドは、金属又は硬質樹脂により、円柱状又は円筒状に成形された軸体であって、先端には掘削ビットが固定されている必要がある。この掘削ビットは、変形や磨耗に強い金属であることが好ましい。そして、上記工程(a)においては、上記掘削ロッドを回転させながら下方(地盤方向)に加圧し地盤を掘削する。こうした工程は、例えば、簡易な掘削装置を使用することができる。この装置は、例えば、上記掘削ロッドの上端側中途部を把持するチャッキング手段と、このチャッキング手段を回転させる回転手段と、上記チャッキングされた掘削ロッドを下方に加圧する加圧手段が形成されているものを使用することができる。上記チャッキング手段は、外側から上記掘削ロッドを挟み固定できるものであれば良く、上記回転手段は、モータにより自動的に回転する装置以外に、ハンドル等を作業車が回転操作することによるものであっても良い。また、上記加圧手段に関しても、上記回転する掘削ロッドを下方に押圧する油圧又はエアーシリンダにより構成したものばかりではなく、ハンドルの回転操作により下方に掘削ロッドを加圧し、所定の深さ掘削された場合には、反対方向に回転操作することにより該掘削ロッドを上昇させるものであっても良い。
【0010】
なお、こうした工程(a)による掘削位置は、ドレーンパイプの配置位置に対応したものである。そこで、このドレーンパイプの配置に関して説明すると、ドレーンパイプは、地盤の液状化防止を図る地盤の全体に、所定の間隔を空けて埋設されるものであるが、ドレーンパイプの寸法や構造によって、液状化防止の効果は異なる。よって、ドレーンパイプの配置間隔や埋設本数は、地盤調査ないしは地質調査に基づく結果と、ドレーンパイプの性能とに合わせて適切に設定される。通常の住宅敷地内における液状化防止施工では、ドレーンパイプの設置間隔は0.2〜1.5m、ドレーンパイプの施工深さは2.0〜20.0mの範囲に設定される。また、電柱の傾斜を防止する場合におけるドレーンパイプの設置間隔は、凡そ0.2〜1.5mの範囲に施工され、また、マンホールの浮上を防止する場合におけるドレーンパイプの設置間隔も、凡そ0.2〜1.5mの範囲に施工される。特に、一般住宅の場合、住宅の基礎構造の外周から一定の距離を離して周回状にドレーンパイプを埋設しておけば、地盤の液状化による住宅及び基礎構造の傾きなどを良好に防止することができる。周回状のドレーンパイプ列を複数列で配置することもできる。施工地盤の地表から垂直下方に向かってドレーンパイプを埋設する方法のほか、地表面と直交する鉛直線に対して傾斜する方向にドレーンパイプの軸方向に向けて埋設する場合や、重力方向に対して傾斜する方向にドレーンパイプの軸方向に向けて埋設する場合もある。例えば、傾斜地や堤防の斜面、造成地の壁面などでは、地表面と直交する方向であっても重力方向とは交差する場合もある。
【0011】
そして、上述したように、掘削ロッドを使用し鉛直方向に地盤を掘削し、その後に該掘削ロッドを抜き取る工程が終了すると、次いで、地中方向に衝撃力を繰り返し付与する衝撃発生部を内部に備えた地盤穿孔装置をドレーンパイプの内部に配置し、該ドレーンパイプ及び地盤穿孔装置の先端に穿孔ビットを配置する工程(b)に移行する。上記地盤穿孔装置は、上記ドレーンパイプ内に配置されるものであって、該ドレーンパイプの内径に対応した(或いは、やや小さな)外径形状を有したものとすることができる。また、この地盤穿孔装置は、通常、全体が細い軸状をなすものであり、地盤穿孔装置の軸方向で、断面形状や外径が変化するものであってもよい。そして、第1の発明においては、少なくとも、この地盤穿孔装置は、衝撃発生部を備えている必要がある。この衝撃発生部は、地盤穿孔装置の後方(上端)側から先端側に向かう衝撃力を繰り返し発生させるものであり、この衝撃発生部で発生させた衝撃力によって、該地盤穿孔装置およびドレーンパイプの地盤内への貫入(工程(c))を促進させるものである。なお、この衝撃発生部により衝撃力を発生させた際に騒音や振動が生じても、地盤内に埋設されたドレーンパイプ内で発生するだけなので、周辺環境への悪影響は軽微である。また、この地盤穿孔装置を構成する衝撃発生部は、各種の土木装置で採用されている衝撃発生手段を採用することができる。例えば、ハンマーや錘を上昇させた後に落下させることにより、先端側への衝撃力を加える構造や、バネなどの付勢力を急激に解放することで衝撃力を発生させる構造を採用しても良い。他には、例えば、電磁力を瞬間的に加えたり解放したりすることでも衝撃力を発生する構造のものや、流体圧力を弁などで制御することでも衝撃力を発生する構造のものを採用することも可能である。
【0012】
また、上記地盤穿孔装置を構成する衝撃発生部による衝撃力の強さは、地盤の土質条件や地盤穿孔装置の大ききなどの諸条件に合わせて設定されれば良い。本発明を構成する地盤穿孔装置では、前記した工程(a)により掘削された部位に衝撃力を付与することから、通常の杭打ち装置ほどの強い衝撃力がなくても、地盤穿孔装置およびドレーンパイプは地盤に容易に貫入される。具体的には、衝撃力を0〜100Nの範囲に設定することができる。強い衝撃力を単発で作用させるよりも、比較的に弱い衝撃力でも繰り返し発生させるほうが、効率的に、地盤穿孔装置およびドレーンパイプの地盤への貫入が進む。衝撃力の発生サイクルを0〜600回/minに設定することができる。こうした衝撃力の発生サイクルを高めることで、一種の振動力を発生させることもできる。なお、上記衝撃発生部のうち、衝撃力を発生させる錘の受け材の外周や、衝撃発生部と地盤穿孔装置を構成する他の部材との間などに、衝撃力を吸収する緩衝材を配置しておけば、地盤穿孔装置の各部材が衝撃力を受けて損傷したり劣化したり、ネジなどが緩んだりすることが防止できる。衝撃によるドレーンパイプの損傷や劣化も防止できる。こうした緩衝材を設けることにより、この地盤穿孔装置の衝撃力或いはそれに伴う騒音が、地表や周辺の住宅に悪影響を与えることを防止することができる。なお、上記緩衝材には、ポリウレタン樹脂、ゴムなどの緩衝機能に優れた材料が使用できる。
【0013】
また、上記第1の発明を構成する穿孔ビットは、ドレーンパイプおよび地盤穿孔装置の先端に配置されるものであり、ドレーンパイプ及び地盤穿孔装置の先端で地盤を穿孔する機能を果たすものである。また、この穿孔ビットの基本的構造あるいは構成材料は、通常の土木機械装置あるいは穿孔装置における穿孔ビットあるいは掘削ビットなどと共通する技術を採用することができる。また、穿孔ビットの材料は、工具鋼や超硬質鋼、高速度工具鋼、硬質セラミヅクなどが使用できる。それほど固い地盤でなければ、通常の構造用鋼材を使用することもできる。なお、この穿孔ビットを、ドレーンパイプの浮き上がりを防止する錘として有効に機能させるには、比較的に比重の重い金属材料が好ましい。また、この穿孔ビヅトの外形状は、通常、先端が尖った円錐形状や円錐台形状が採用できる。地盤を押し退けて貫入し易くしたり、土砂が粘着するのを防いだりする突起や凸条、溝、段部、穴などを設けておくこともできる。また、この穿孔ビヅトの外径は、ドレーンパイプの外径に合わせて設定しておくことができる。穿孔ビヅトの外径が後続するドレーンパイプあるいは地盤穿孔装置の外径よりも小さ過ぎると、ドレーンパイプや地盤穿孔装置が地盤に貫入し難い。穿孔ビットの外径が後続するドレーンパイプや地盤穿孔装置の外径よりも大き過ぎると、ドレーンパイプや地盤穿孔装置の外形と地盤との間に隙間が開き過ぎて、地盤内にドレーンパイプや地盤穿孔装置に安定して支持されず、ずれたり傾いたりし易くなる。さらに、穿孔ビットには、後述する地盤穿孔装置の噴出口から噴出する空気混合水の通過空間を設けておくことができる。噴出口と連通して外面に開口する流路を設けておくこともできる。
【0014】
また、この穿孔ビットには、突出部又は突出部材が形成され又は固定されているものであっても良い(請求項4記載の発明)。この突出部又は突出部材は、少なくとも上記ドレーンパイプの外周面よりも外側に突出してなるものであり、その数は単数でも複数でも良い。こうした突出部又は突出部材を設けることにより、上記ドレーンパイプと地盤との間には、空間が形成されることから、貫入する際の摩擦抵抗を抑制することができるとともに、後述するように、空気混合水を穿孔ビットの先端から放出する際には、上記空間内に水が流入し、より摩擦抵抗を抑制し、ひいては短時間にドレーンパイプを埋設することができる。但し、上記突出部又は突出部材の突出長さが余り長い場合には、逆に大きな抵抗となり、極めて短い場合には、上記作用効果を奏し得ないことから、該突出長さは、ドレーンパイプの外径寸法の約4分の1程度で、凡そ2〜5mmとすることが望ましい。さらに、この穿孔ビットに形成され又は固定された突出部又は突出部材は、基端側よりも先端側が上方となるよう傾斜したものであっても良い。突出部又は突出部材がこのように傾斜している場合には、予め掘削した地盤内の土砂が外側にガイドされることから、より抵抗を軽減することができる。
【0015】
また、この穿孔ビットは、ドレーンパイプあるいは地盤穿孔装置の先端に、嵌合やボルト締結などの手設で固定しておくことができる。地盤穿孔装置を構成する衝撃発生部により発生する衝撃力が伝達される易い構造で連結しておくことにより、地盤にドレーンパイプを貫入させ易い。もっとも、ドレーンパイプの埋設作業中は、ドレーンパイプ及び地盤穿孔装置の荷重がこの穿孔ビヅトを地盤側に押圧しているので、穿孔ビヅトが地盤穿孔装置やドレーンパイプに強固に固定されていなくても外れることはないが、穿孔ビヅトと地盤穿孔装置及びドレーンパイプとの芯合わせを果たす嵌合構造や係合構造を備えていることが望ましい。なお、地盤穿孔装置の先端部に、上記穿孔ビットに相当する構造を一体形成しておくこともできる。
【0016】
そして、この第1の発明においては、上述した衝撃発生部を駆動させることにより、該地盤穿孔装置及びドレーンパイプを地盤内に貫入させて、上記ドレーンパイプを地盤内に埋設する工程(c)が終了すると、次いで、上記地盤内に埋設されたドレーンパイプ内から、上記地盤穿孔装置を撤去する工程(d)を行う。この工程(d)は、ドレーンパイプの内径と地盤穿孔装置の外径とのクリアランスが大きい場合には、作業者が手で撤去すれば良い。
【0017】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記地盤穿孔装置には、該地盤穿孔装置に強制振動を付与する強制振動部を備え、前記工程(d)は、この強制振動部の駆動により強制振動を付与しながらドレーンパイプから地盤穿孔装置を撤去することを特徴とするものである。
【0018】
上記第2の発明においては、上記地盤穿孔装置に強制振動部を備えている必要がある。この強制振動部による強制振動の振動方向は、地盤穿孔装置の軸方向と同じ方向又は該軸方向に対して直交あるいは交差する方向であるとを問わない。こうした強制振動により、ドレーンパイプと地盤穿孔装置との間に土や砂等の異物が混入した場合であっても、地盤穿孔装置をドレーンパイプ内から容易に撤去することができる。なお、強制振動を発生させる機構としては、通常の土木装置などで採用されている強制振動の発生機構が採用できる。通常、バイブレータと呼ばれる装置が使用できる。例えば、偏心モータを回転させたり、電気的に発生させた磁力を周期的に変化させたり、電気エネルギーを物理的歪みに変換する電歪素子を利用したりすることができる。油圧や空気圧、水圧を周期的に開閉する弁で制御して流体による振動を発生させるものでも良い。また、この強制振動部で発生させる振動の周波数や振幅、加振力は、地盤穿孔装置とドレーンパイプとの間のクリアランスに合わせて適切に設定される。また、こうした強制振動部は、地盤穿孔装置に対して、1個所だけに設けておいても良いし、複数個所に設けておくこともできる。例えば、地盤穿孔装置の周方向で複数個所に設け、それぞれが半径方向で外周に向かった振動が発生するよう構成したものや、鉛直方向に複数の強制振動部を配置し、それぞれが振動するように構成されたものであっても良い。
【0019】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明において、前記工程(c)は、前記地盤穿孔装置の先端から地盤に空気混合水を噴出させながら該地盤穿孔装置及びドレーンパイプを地盤内に貫入させることを特徴とするものである。
【0020】
この空気混合水は、地盤穿孔装置の先端に噴出口を設け、この噴出口から噴出するように構成することができ、この噴出口から地盤に向かって空気混合水を噴出させることで、地盤穿孔装置及びドレーンパイプの地盤内への貫入を促進させることができる。上記噴出口は、地盤穿孔装置の先端面に対して、1個所あるいは複数個所に配置しておくことができる。また、この噴出口から空気混合水が噴出される方向は、軸方向と平行であっても良いし、軸方向に対して傾斜していても良い。軸方向に対して外周側に向けて傾斜する方向であれば、地盤穿孔装置の断面積よりも広い範囲に効率的に空気混合水を噴出させることができる。また、上記噴出口を、地盤穿孔装置の先端ではなく外周面に設けておき、地盤穿孔装置の外周面と地盤との間に空気混合水を噴出させることもできる。地盤穿孔装置の軸方向で複数個所に噴出口を設けておくこともできる。さらに、上記噴出口は、地盤穿孔装置の内部に設けられた空気及び水の流路を経て、地盤穿孔装置に連結される空気配管及び水配管に接続しておくことができる。地盤穿孔装置の内部で、空気と水とを混合するようにしても良いし、予め混合された空気混合水を地盤穿孔装置に供給するようにしても良い。また、この噴出口から噴出させる前の空気混合水を、地盤穿孔装置の内部機構の冷却に利用することができる。例えば、上記衝撃発生部や振動発生部では、衝撃や振動に伴って熱が発生し装置部材が過熱することがあるが、このような熱が発生する部材や過熱し易い個所の内部や周囲に、空気混合水の配管や流路或いは水、空気の単独配管や流路を配置しておくことにより、これらの流体が過熱し易い部材を冷却して、機能低下や劣化を防止することができる。また、上記噴出口から噴出させる空気混合水の圧力,流量,空気と水の混合比などは、地盤の土質や施工条件、要求性能などによって適切に設定することが望ましい。例えば、圧力を0〜35MPa,流量を0〜100kg/min、空気:水=10:1〜1:10(容量比)に設定することができる。なお、水だけを噴出させたり、空気だけを噴出させたりするだけでも、ある程度までは、地盤穿孔装置及びドレーンパイプの貫入促進効果はある。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明(請求項1記載の発明)では、衝撃発生部を駆動させることにより、該地盤穿孔装置及びドレーンパイプを地盤内に貫入させて、上記ドレーンパイプを地盤内に埋設する工程(c)を含んでいるとともに、こうしたドレーンパイプを地盤内に埋設する工程(c)に先立って、先端に掘削ビットが固定された掘削ロッドを回転させながら上記ドレーンパイプの埋設位置に対応した地表から鉛直方向に地盤を掘削した後に、この掘削ロッドを抜き取る工程(a)を採用していることから、外部から大きな打ち込み力を加えることなく、ドレーンパイプを容易且つ効率的に地盤内に埋め込むことができ、この結果、大きな打ち込み力を発生させる大掛りな施工装置等が不要となる。また、こうした工程(a)及び(c)により、既設住宅の敷地内等、大きな作業スペースが取れなかったり、大型の土木機械が搬入でき難かったり、大きな騒音を発生する土木機械が使用できなかったり、大きな振動や衝撃で周辺環境に重大な悪影響を及ぼしたりする心配のある施工現場に対しても、上記のような問題を起こすことなく、作業性のよい能率的なドレーンパイプ工法を実施することできる。
【0022】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、地盤穿孔装置には、該地盤穿孔装置に強制振動を付与する強制振動部を備え、前記工程(d)は、この強制振動部の駆動により強制振動を付与しながらドレーンパイプ内から地盤穿孔装置を撤去することから、ドレーンパイプと地盤穿孔装置との間に土や砂等の異物が混入した場合であっても、該ドレーンパイプから地盤穿孔装置を効率的に撤去することができ、地盤穿孔装置を撤去する際に、ドレーンパイプまで上方に引き抜かれてしまう事態を有功に防止することができる。
【0023】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)では、工程(c)は、前記地盤穿孔装置の先端から地盤に空気混合水を噴出させながら該地盤穿孔装置及びドレーンパイプを地盤内に貫入させることから、さらに地盤穿孔装置及びドレーンパイプの地盤内への貫入を促進させることができる。
【0024】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)では、前記掘削ビットには、前記ドレーンパイプの外周面よりも外側に突出した一又は複数の突出部が形成され、又は突出部材が固定されてなることから、上記ドレーンパイプと地盤との間には、空間が形成され、ドレーンパイプを貫入する際の摩擦抵抗を抑制することができるとともに、上記第3の発明(請求項3記載の発明)のように、空気混合水を穿孔ビットの先端から噴出する場合には、上記空間内に水が流入することから、よりドレーンパイプと地盤との摩擦抵抗を抑制し、ひいては短時間にドレーンパイプを埋設することができる。
【0025】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)によれば、地震の発生による住宅の不当沈下、電柱の傾斜、さらにはマンホール,タンク等の地中埋設物の浮上を有功に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態に係るドレーンパイプ埋設工法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この実施の形態に係るドレーンパイプ埋設工法は、先ず、後述するドレーンパイプの埋設位置に対応した地表から、図1に示すように、簡易掘削装置1を使用しながら、掘削ロッド2により地盤Eを掘削する。この掘削ロッド2は、鋼鉄により円筒状に成形された棒状体であり、先端(下端)には掘削ビット3が固定されている。なお、この実施の形態においては、この掘削ビット3には、図示しない開口が形成され、後述する空気混合水が放出されるように構成されている。また、この掘削ビット3の後端(上端)には該掘削ビット3内に空気混合水を供給する供給路4a,4bに接続されたキャップ4が遊嵌されている。一方、上記簡易掘削装置1は、上記掘削ロッド2を把持(固定)するチャッキング部5,5と、このチャッキング部5,5により把持(固定)された掘削ロッド2を軸回り方向に回転するモータ6と、このモータ6により回転する掘削ロッド2を上記チャッキング部5,5と共に下方へ押圧するハンドル7とを備えている。上記チャッキング部5,5は、上記掘削ロッド2を外周側から圧着することにより強固に該掘削ロッド2を把持するものであり、この実施の形態ではモータ6の上下に一つずつ配置されている。また、これらのチャッキング部5,5は、それぞれ上記掘削ロッド2が挿通される図示しない挿通穴が形成されてなるとともに、外形は円盤状に成形されている。こうしたチャッキング部5,5を回動操作することにより、上記掘削ロッド2は強固に固定される。また、上記モータ6は、上記各チャッキング部5,5が固定された掘削ロッド2を回転駆動するものであり、スイッチ6aの操作により回転駆動を開始し又は停止するように構成されている。また、上記ハンドル7は、上記モータ6,チャッキング部5,5によりチャッキングされた掘削ロッド2を一体的に下降させるとともに、下方に移動したこれら掘削ロッド2等を上昇させるものであり、該ハンドル7の中心には回動軸7aが設けられ、この回動軸7aには図示しないピニオンギアが固定されている。一方、上記モータ6の背面側には、上記ピニオンギアに歯合してなる図示しないラックギアが配置されている。したがって、上記ハンドル7を時計回り方向に回転操作することにより、上記モータ6,チャッキング部5,5によりチャッキングされた掘削ロッド2は、一体的に下降し、逆方向に回転操作することにより一体的に上昇する。なお、この簡易掘削装置1には、該簡易掘削装置1を移動する際に転動する複数の車輪8と、図示しない複数の重りを載置する重り載置台9が設けられている。
【0028】
したがって、このドレーンパイプ埋設工法においては、先ず、上記簡易掘削装置1を構成する上記チャキング部5,5に上記掘削ロッド2を固定(チャッキング)させ、上記モータ6を駆動させながら、上記ハンドル7を時計回り方向に回転操作する。なお、掘削する地盤によっては、図示しない上記重り載置台に所定の重りを載置した上で上記ハンドル7を回転操作する。こうしたハンドル7の回転操作により、上記モータ6により回転駆動する掘削ロッド2は、先端に固定された掘削ビット3により地表から地盤Eを掘削しながら徐々に下降する。この際、上記供給路4a,4bを介して水及び空気を掘削ロッド2内に供給すると、空気混合水は、上記掘削ビット3から放水される。なお、上記ハンドル7の回転操作により、所定の長さ分上記掘削ロッド2を下降させた場合には、次いで、上記モータ6の駆動を停止させるとともに、上記チャッキング5,5による掘削ロッド2のチャッキング状態を解除させ、上記ハンドル7を逆回転させることにより、上記モータ6及びチャッキング部5,5を一体的に上昇させる。そして、このように上記モータ6及びチャッキング部5,5の上昇操作ないしは作業が終了すると、再び上記チャッキング部5,5により掘削ロッド2をチャッキングし、再びモータ6を駆動させ、ハンドル7の回転操作により掘削ロッド2を下降させる。上記簡易掘削装置1を使用して、こうした操作を繰り返すことにより、上記掘削ロッド2により地盤Eが掘削される。なお、このような方法により、図2又は図3に示すように、所定の長さ分地盤Eが掘削された場合には、次いで、上記掘削ロッド2を抜き取る。こうした掘削ロッド2の抜き取り作業は、地盤Eの性状や上記掘削ビット3の形状、或いは掘削長さ等により作業者により簡単に抜き取ることができない場合には、上記簡易掘削装置1を使用する。すなわち、上記ハンドル7を回転操作し、上記モータ6,チャッキング部5,5を最も下降させ、この状態において埋め込まれている掘削ロッド2をチャッキング部5,5によりチャッキングし、ハンドル7を逆回転させる。こうした操作により、徐々に掘削ロッド2は上昇する。なお、上記ハンドル7の回転操作により上記モータ6等が上止点まで上昇した場合には、再び上記チャッキング部5,5による掘削ロッド2のチャッキングを解除し、ハンドル7の正回転操作によりモータ6等を下止点まで下降させ、再びチャッキング部5,5により掘削ロッド2をチャッキングさせた後に、ハンドル7を逆回転操作する。こうした操作を順次繰り返すことにより、埋設された掘削ロッド2を抜き取る際に大きな抵抗がある場合であっても、簡単に抜き取ることができる。
【0029】
そして、上述した工程が終了すると、次いで、上記掘削ロッド2により掘削した地表から、図4に示すように、地盤E内を垂直下方に向かってドレーンパイプ10を埋設する。本実施の形態において、このドレーンパイプ10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の細い線条を中空管の形態に集積させて一体結合してなる線条集積管である「ポーラスドレーン」(商品名、ポーラスジャパン社製、外径15cm、内径7cm、長さ2m)であり、全面において内外周を連通する通水空間を有している。また、この実施の形態では、上記ドレーンパイプ10の外周には、該ドレーンパイプ10の通水空間が土砂などで目詰まりするのを防止するために、不織布からなる筒状のフィルター袋40を装着されている。
【0030】
そして、このように構成されたドレーンパイプ10を埋設する前段階において、該ドレーンパイプ10の内部に地盤穿孔装置20を挿入配置する。この地盤穿孔装置20は、図5に示すように、全体が細い軸状をなしており、図4に示すように、ドレーンパイプ10の内周にほぼ密接して挿入される形状(大きさ)となされている。なお、このドレーンパイプ10の内部で地盤穿孔装置20は軸方向に摺動可能である。また、上記地盤穿孔装置20及びドレーンパイプ10の下端には、銅材等からなる穿孔ビット30が配置されている。この穿孔ビット30は、外形が截頭円錐形の中空筒状をなし、後端がドレーンパイプ10の先端に嵌め込まれているとともに、該ドレーンパイプ10の先端から突き出した地盤穿孔装置20の先端部60が、該穿孔ビット30の内部に着脱可能に嵌め込まれている。また、上記地盤穿孔装置20の先端部60の先端面には、空気混合水の噴出口62が形成されている。この噴出口62は、空気混合水を地盤Eに供給するものであり、上記穿孔ビット60の中空部分から外部に露出している。また、上記地盤穿孔装置20は、上記噴出口62が形成された先端部60の後方に強制振動部70を備え、この強制振動部70の後方には衝撃発生部80を備えている。上記強制振動部70は、地盤穿孔装置20に強制振動を発生させるものであり、所謂バイブレータである。また、上記衝撃発生部80は、該衝撃発生部80の配置位置よりも先端側に対して軸方向に後方側から先端側に行撃力を与えるものである。
【0031】
また、上記地盤穿孔装置20の後端には、図4又は図5に示すように、支持ケーブル52が連結されている。この支持ケーブル52は、地盤穿孔装置20の駆動制御装置50に接続されている。図4は、ドレーンパイプ10が、該ドレーンパイプ10内に収容された地盤穿孔装置20に接続された支持ケーブル52によって吊下げられた状態を示すものであり、この支持ケーブル52を引き上げたり降ろしたりすることで、地盤穿孔装置20を昇降させることができる。また、上記地盤穿孔装置20は、図5に示すように、先端部60は、鋼材等の硬質な素材により全体が円柱状に成形されており、該先端部60の先端面には、4つの噴出口62が形成されている。そして、これら4つの噴出口62は、図6に示すように、この地盤穿孔装置20内に先端部60の内部に設けられ、複数の噴出口62につながる空気混合水流路63が、先端部60の後端面に連続している。
【0032】
また、上記先端部60の後方(上方)に配置された強制振動部70は、先端部60の後端に連結された円筒状の外殻72の内側に、やや隙間を空けて配置された高周波バイブレータ74を備えている。この高周波バイブレータ74には図示しない振動モータなどが組み込まれており、電力を供給することによって、強制振動を発生させることができる。また、上記高周波バイブレータ74の先端側には、上記先端部60の空気混合水流路63につながる流路75が設けられ、この流路75の他端は、外殻72と高周波バイブレータ74との間の隙間に連通している。また、上記高周波バイブレータ74の後端で外殻72の内側には継手部73を有する。この継手部73の後端には、一端が上記駆動制御装置50に接続された空気配管56及び水配管57の他端が連結されており、上記流路75に空気および水が供給されるように構成されている。また、上記継手部73の後端には、高周波バイブレータ74に駆動電力を供給する電力供給ケーブル54も連結されている。また、上記継手部73及び外殻72の後端は、連結部71に接続されており、この連結部71の内部には空気配管56,水配管57及び電力供給ケーブル54が挿通された挿通空間(符号は省略する。)が形成されている。また、上記外殻72と、その内側に配置された継手部73,高周波バイブレータ74及び先端部60の後端部分との間には、軸方向の複数個所にOリング78が取り付けられている。このOリング78は、上記継手部73の外周から外殻72との隙間に空気及び水を供給する位置よりも後方側と、空気及び水が高周波バイブレータ74の流路75に入る個所よりも前方側の両方に配置されており、空気及び水が漏れないように封入している。したがって、この実施の形態に係る地盤穿孔装置20では、上記継手部73の先端側外周から、上記高周波バイブレータ74と外殻72との隙間を経て、先端部60へと流れる空気混合水は、該高周波バイブレータ74の外面と接触することで、高周波バイブレータ74の作動に伴って発生する熱を伝熱除去する機能を果たし、高温になり易い高周波バイブレータ74の加熱を防ぎ、長時間にわたる作業を可能にしている。
【0033】
また、図7に示すように、上記強制振動部70の後端側には、上記衝撃発生部80が配置されている。この衝撃発生部80は、鋼材などからなる打撃部84と、この打撃部84を後端側から支持する支持軸87と、この支持軸87の後端側で該支持軸87が摺動自在に収容される支持筒86と、この支持筒86を固定支持する支持端部81とを備えている。上記打撃部84の先端面は、上記強制振動部70の連結部71の後端面に当接するものである。また、上記打撃部84の外周で連結部71の後端から支持端部81までに亘っては、上記打撃部84,支持軸87及び支持筒86を覆う外殻筒82が設けられている。そして、図4(c)に示すように、断面円形をなす地盤穿孔装置20に対して、上記外殻筒82の断面形状は、円形の一部が角形に凹んだ形状を有している。この角形の凹みに沿って、電力供給ケーブル54や空気配管56、水配管57が収容され、これらの配管やケーブルが、地盤穿孔装置20の外周に出張らないようになっている。また、上記外殻筒82の断面形状に合わせて、上記打撃部84の断面形状も、円形ではなく、円形の一部が角型に凹んだ形状を有している。また、上記支持軸87及び支持筒86の中心は、上記打撃部84の重心付近に配置されているので、地盤穿孔装置20の中心からは少し外れている。また、上記外殻筒82の内部で、上記支持端部81と打撃部84の後端部との間には、コイルバネ88が装着され、打撃部84を強制振動部70の連結部71側に常時付勢している。そして、上記支持筒86に対して支持軸87を退出させる方向に作動させる際には、コイルバネ88の付勢力に抗して移動させることになる。また、上記支持端部81の後端面には、支持筒86の支持軸87を駆動させるとともに地盤穿孔装置20の全体を支持する中空チューブ状の支持ケーブル52が連結されている。上記電力供給ケーブル54や空気配管56及び水配管57は、支持端部81を通過して地盤穿孔装置20の後方に延びている。また、上記打撃部84のうち、支持軸87の連結部分と、強制振動部70の連結部71に当接する先端側との間には、ウレタン樹脂などからなる緩衝材89が装着され、この地盤穿孔装置20では、この緩衝材89により、打撃部84を強制振動部70の連結部71に衝撃的に衝突させたときに発生する衝撃を吸収し、上記支持軸87や支持筒86などを保護するようにされている。
【0034】
また、図4に示すように、地表に配置された駆動制御装置50には、上述した構成からなる地盤穿孔装置20の後端から延びる支持ケーブル52、電力供給ケーブル54、空気配管56および水配管57が接続されている。この駆動制御装置50には、空気配管56に圧力空気を供給する図示しないコンプレッサ装置や、水配管57に圧力水を供給する高圧水ポンプ、電力供給ケーブル54に電力を供給する電源、さらには、上記衝撃発生部80を制御する制御機構などが組み込まれている。さらに、駆動制御装置50には、組み込まれた各機器および地盤穿孔装置20の各機構の駆動操作を行ったり、作動状態を監視したり、調整したりする制御盤や制御回路装置なども組み込まれている。また、この駆動制御装置50には走行車輪(符号は省略する。)が取り付けられており、地表を自由に走行移動させることができる。また、図8に示すように、上記衝撃発生部80の上方で、支持筒86及び支持ケーブル52の内部に摺動可能に挿入された支持軸87の上端には、操作ワイヤ53が連結されている。この操作ワイヤ53は、支持ケーブル52の内部を通って、上記駆動制御装置50の内部に引き込まれている。支持ケーブル52の端部は駆動制御装置50に固定されている。
【0035】
そして、上記駆動制御装置50の内部では、進退自在なピストン軸102の先端に操作ワイヤ53が連結されている。ピストン軸102を進退させることで、操作ワイヤ53が進退し、操作ワイヤ53に吊り下げられた支持軸87及び打撃部84が昇降する。また、上記ピストン軸102の後端にはスプリング104が配置され、ピストン軸102を常に進出方向に付勢している。ピストン軸102が進出した位置では、操作ワイヤ53に吊下げられた打撃部84が、強制振動部70の連結部71の上に当接する状態になる。また、上記ピストン軸102に隣接して、複数本の回転腕100が、電動モータなどで回転駆動自在に配置されている。この回転腕100の回転作動に伴って、回転腕100の外周端がピストン軸102の先端に当接する位置を通過し、該回転腕100がピストン軸102の先端に当接して押圧すると、ピストン軸102は、スプリング104の付勢力に抗して、退出方向に押し動かされる。そして、上記ピストン軸102が退出すると、操作ワイヤ53を介して、打撃部84が上昇方向に持ち上げられる。打撃部84が強制振動部70の連結部71から離れて上方に移動する。そして、さらに上記回転腕100が回転すると、その外周端は円周運動をする。回転腕100の外周端がピストン軸102を接線方向にある程度まで退出させたあと、回転腕100の外周端はピストン軸102から離れて、ピストン軸102の先端に当接しなくなる。すると、瞬間的にスプリング104の付勢力が解放され、ピストン軸102が進出方向に飛び出す。ピストン軸102に操作ワイヤ53を介して吊下げられていた打撃部84は、吊下げ力が瞬間的に解放されるので、自重によって落下する。打撃部84の上昇によって縮められていたコイルバネ88の付勢力も解放される。上記コイルバネ88の付勢力が付与された打撃部84は、勢い良く落下して、強制振動部70の連結部71の上端面に衝突する。このときに発生する衝撃力が、強制振動部70の連結部71を介して地盤穿孔装置20の全体から先端の穿孔ビット30に伝達され、穿孔ビット30及び地盤穿孔装置20を地盤Eに衝撃的に貫入させる。勿論、穿孔ビット30及び地盤穿孔装置20と一体になったドレーンパイプ10も地盤Eに貫入される。なお、上記回転腕100は、一定の周期でピストン軸102を後退方向に押し動かし、瞬間的に押動力を解放するという過程を繰り返し、ピストン軸102は後退運動と、瞬間的な進出運動とを繰り返す。打撃部84も、一定の周期間隔で、持ち上げられ、瞬間的に落下して強制振動部70の連結部71に衝撃力を与える動作を繰り返す。なお、上記回転腕100の回転速度を変えれば、打撃部84における衝撃力の発生間隔を変えることができる。また、ピストン軸102の先端に当接している回転腕100の先端までの半径を変えれば、回転腕100でピストン軸102を退出方向に押し動かす距離を変えて、打撃部84を持ち上げる高さを変えることもできる。打撃部84の持ち上げ高さで、打撃部84で発生する衝撃力の強さを調整することができる。
【0036】
そして、図1に示すように、ドレーンパイプ埋設工法を実施する際には、上記簡易掘削装置1による掘削後、予め、地表から地盤Eに、ガイドパイプ58を埋め込む。このガイドパイプ58は、鋼管等からなり、上記ドレーンパイプ10が挿入可能な内径を有している。ガイドパイプ58の長さは、ドレーンパイプ10よりも短いものとする。なお、このガイドパイプ58の埋め込み作業は、例えば、スコップなどで地盤Eに掘った穴にガイドパイプ58を立てて周囲に土砂を埋め戻す等、通常の土木建築技術で施工すれば良い。言うまでも無く、ガイドパイプ58を地表から地盤Eに押し込んだり打ち込んだりする方法も採用できるし、上記地盤穿孔装置20を利用して地盤Eを穿孔することもできる。このように、ガイドパイプ58を設置しておくことで、ドレーンパイプ10の埋設作業が行い易くなるとともに、ドレーンパイプ10の方向性が正確になり、ドレーンパイプ10を安定させた状態で能率的に埋設することができる。そして、図1に示すように、先に設置されたガイドパイプ58の内側にドレーンパイプ10及び地盤穿孔装置20を挿入配置する。ドレーンパイプ10及び地盤穿孔装置20の先端には、穿孔ビット30を取り付けておく。また、前述したように、このドレーンパイプ10は、不織布からなる筒状のフィルター袋40により覆われている。こうしたフィルター袋40により、地盤E側からドレーンパイプ10の内部に土砂等の異物が浸入することを防止することができる。また、上記地盤穿孔装置20の各ケーブルや配管は、ドレーンパイプ10の後端から上方空間を経て駆動制御装置50に連結しておく。
【0037】
そして、上記ドレーンパイプ10及び地盤穿孔装置20或いは穿孔ビット30の先端が、ガイドパイプ58の下端から地盤Eに押し込まれた状態で、地盤穿孔装置20を作動させる。このとき、上記衝撃発生部80において下方に衝撃を発生させる。すなわち、上記打撃部84を後方(上部側)に引き上げたあと、引き上げ力を瞬間的に解放し、該打撃部84を自重によって落下させるとともにコイルバネ88の付勢力を加えることで、大きな運動エネルギーが与えられ、上記強制振動部70の後端の連結部71に激しく衝突することになる。このとき、打撃部84から連結部71に加わる軸方向の衝撃力は、強制振動部70から先端部60を経て穿孔ビット30に伝わり、穿孔ビット30を地盤E内へと強く押し込む作用が発生する。衝撃力としては、例えば、50Nの力を、4Hzの頻度で加えることができる。また、こうした衝突発生部80からの衝突を繰り返すとともに、前記した先端部60に形成された4つの噴出口62からの空気混合水の放出により、地盤穿孔装置20及びドレーンパイプ10は、穿孔ビット30を先頭にして、極めてスムーズに地盤E内に貫入して行く。なお、このように地盤穿孔装置20及びドレーンパイプ10を地盤Eに貫入させる工程において、上記強制振動部70から強制振動を付与しても良く、こうした振動の付与により、ドレーンパイプ10及び地盤穿孔装置2の貫入は停滞することなく一層能率的に行うことができる。すなわち、地盤穿孔装置20の噴出口62から地盤E内に空気混合水を噴出させることに加えて、上記強制振動部70により強制振動を付与すれば、地盤Eの流動化が促進される。空気混合水として、例えば、圧力0.7MPaの空気を0.2m/minと、圧力0.7MPaの水を40kg/minとを混合したものを噴出させる。噴出口62から噴射された空気混合水は、穿孔ビット30の中央空間を通って、先に掘削ロッド2により掘削された地盤Eに効率よく浸透する。この状態で強制振動が加われば、地盤Eは容易に流動化することになり、ドレーンパイプ10及び地盤穿孔装置20に、地表から押し込み力や打撃力を加える代わりに、地盤穿孔装置20の衝撃発生部80で衝撃力を発生させることにより、ドレーンパイプ10及び地盤穿孔装置20の地盤E内への貫入を一層促進させるこができる。
【0038】
そして、上述した施工方法(工法)により、ドレーンパイプ10を所定の深さまで地盤Eに貫入すると、地盤穿孔装置20の作動を停止し、上記支持ケーブル52を引き上げ、該地盤穿孔装置20をドレーンパイプ10の後端から引き抜いて撤去する。このとき、上記強制振動部70に備えられた上記高周波バイブレータ74を作動させ、強制振動を発生させる。例えば、周波数240Hの高周波振動を発生させる。こうした高周波バイブレータ74の振動の振動により、地盤穿孔装置20とドレーンパイプ10との間に土や砂が混入している場合であっても、簡単に効率良く地盤穿孔装置20をドレーンパイプ10の後端から引き抜くことができる。そして、こうした地盤穿孔装置20の引き抜き作業により、図6に示すように、地蛙E内には、先端に上記穿孔ビット30が固定されてなるとともに、外周には、フィルター袋40が取り付けられドレーンパイプ10が埋設されることとなる。また、上記穿孔ビット30は高重量であることから、地震の発生により、ドレーンパイプ10が地盤Eから浮き上がるのを防止する錘の機能を果たすことができる。
【0039】
なお、上記ドレーンパイプ10は、1本だけを埋設する場合のほか、複数本のドレーンパイプ10を継ぎ足して埋設することもできる。具体的には、前記地盤穿孔装置20を引き抜く作業を経て、1本のドレーンパイプ10が地盤Eに埋め込まれる前に、ドレーンパイプ10の後端に、ポリプロピレン樹脂の円筒管などからなるスリーブ12を嵌め、スリーブ12の後端に新たなドレーンパイプ10を挿入することで、ドレーンパイプ10同士をスリーブ12で連結一体化させる。スリーブ12の内面に接着剤を塗布しておけば、ドレーンパイプ10と接着固定することができる。スリーブ12は、ドレーンパイプ10と同様に通水性を有するものであっても良いし、通水性のないものであっても良い。このようにしてドレーンパイプ10を順次継ぎ足すことにより、施工地盤Eの土質条件などに合わせて、適切な深さまでドレーンパイプ10を地盤E内に埋設することができる。
【0040】
なお、このような作業により地盤E内に埋設する単一の(又は複数の)ドレーンパイプ10の後端(上端)は、図6に示すように、地表よりも少し下になる程度まで埋め込んでおき、該ドレーンパイプ10の後端(上端)に、ウレタン発泡体などからなるフィルター14を載せ、さらに、その上方に砕石を堆積させて砕石層16を設けておく。このようにしておけば、ドレーンパイプ10が地表に露出せず、地表からドレーンパイプ10の中に土砂や異物が落ち込んで詰まってしまうような間題も防止できる。地表に溜まった雨水などを、砕石層16、フィルター蓋14を経てドレーンパイプ10に排水させる機能も果たせる。ドレーンパイプ10に入り込んだ雨水などの水は、ドレーンパイプ10の周壁面や下端のフィルター袋40を通して地盤Eに吸収される。
【0041】
上述した工程を経て、図6に示すように、ドレーンパイプ10が埋設された地盤Eでは、該地盤Eに地震が発生すると、地盤Eからの浸出水は、ドレーンパイプ10の周壁を通してドレーンパイプ10内に入り込む。浸出水の圧力が高くなっても、地盤Eからドレーンパイプ10の内部空間へと圧力が逃げる。ドレーンパイプ10内の水圧が高くなっても、ドレーンパイプ10内の水位が高くなったり、ドレーンパイプ10の上端からフィルター蓋14、砕石層16を通して地表上に水が噴き上げたりすることで、地盤E内に水圧が溜まることを防止することができる。ドレーンパイプ10から地表上に水だけが噴き上がっても、周囲の地盤Eそのものが液状化しなければ、地盤Eの崩壊や軟弱化は生ずることなく、地表を流れ排水路などに流れ落ちるだけである。また、地震が終息した場合には、地盤Eからの浸出水はなくなり、地下水圧も元に戻る。ドレーンパイプ10の内部に溜まった水も、徐々に地盤Eに吸収されて地盤E内に保持された状態に戻る。このようなドレーンパイプ10による地盤Eの液状化防止機能は、ドレーンパイプ10の周辺の一定範囲のみで有効である。したがって、広い面積がある敷地内の全体で地盤Eの液状化防止を図るには、ドレーンパイプ10を、所定の間隔をあけて施行地盤の全体に施行しておくことが望ましい。既設の住宅の敷地内における地盤の液状化防止を図るには、住宅の外壁面あるいは基礎構造の周囲に沿って、所定の間隔毎に周環状にドレーンパイプ10を埋設しておくことが有効である。また、住宅の外壁面よりも外側の地表面から、斜め下向きにドレーンパイプ10を埋設して、ドレーンパイプ10の先端側が、住宅の基礎構造より深い位置で、基礎構造の下の地盤にまで到達するようにしておけば、住宅の真下位置においても、地盤の液状化が発生することを防止することも可能である。
【0042】
また、上述したドレーンパイプ10を地盤E内に埋設することにより、地震時における地盤の液状化防止だけでなく、軟弱地盤の土質改良にも有効である。水分を大量に含んだ軟弱な地盤Eに、図6に示すドレーンパイプ10の埋設することにより、地盤Eに含まれる過剰の水分は、ドレーンパイプ10の内部に徐々に浸出して溜まってくる。過剰な水分がドレーンパイプ10に排出されれば、その分、地盤Eの含水率が減少し、地盤Eが強化される。ドレーンパイプ10に溜まった水が、フィルター蓋14および砕石層16を通じて蒸発すれば、地盤Eから継続的に水分を排出除去することができる。その結果、ドレーンパイプ10が施工された地盤Eは、過剰の水分が排出され締まった強固な地盤Eに改良される。ドレーンパイプ10の内部に吸引ホースを挿入して、ドレーンパイプ10に溜まった水を強制的に排水することもできる。このようなドレーンパイプ10による土質改良効果は、住宅地や電柱或いはマンホール等の地中埋設物の周辺に限らず、農地や公園、競技場などにも適用できる。建築物を施工する前の造成地や埋立地の土質改良にも適用することができる。
【0043】
なお、上記地盤穿孔装置20は、上述したドレーンパイプ埋設工法に限らず、地盤Eを穿孔したり、地盤Eに各種パイプを埋設したりする作業に利用することができる。例えば、図4において、ドレーンパイプ10の代わりに、塩化ビニル管や鋼管などの周面に通水性のない管材を使用することができる。前記同様の施工によって、任意の管材を地盤Eに埋設することができる。また、このようにして地盤Eに埋設された管材あるいは管材の中央に構成される穴は、種々の用途に利用できる。例えば、管材の中央空間で軸方向の途中や底部分に、地震計や磁気検出器などの測定器を設置して、地盤Eの変動や状態変化を測定するのに利用できる。管材の先端から地盤の一部を採取して、地下部分の地盤成分を分析することにも利用できる。管材を地下水脈に到達するまで埋設すれば、地下水を汲み上げる井戸になる。強度のある管材を埋設することで、地盤Eの耐久力を向上させたり、土木建築物を構鈍する基礎地盤を強化したりすることもできる。さらに、ドレーンパイプ10などの管材を使用せず、ガイドパイプ58の内部に地盤穿孔装置20および穿孔ビット30だけを配置し、地盤E内に地盤穿孔装置20と穿孔ビット30だけを貫入させて地盤に穴を形成することもできる。地盤穿孔装置20が所定の深さまで貫入されたあと、地盤Eから地盤穿孔装置20を引き上げれば、地盤Eには穴が穿孔された状態になる。地盤穿孔装置20の先端に穿孔ビット30が固定されていれば、穿孔ビット30も引き上げて回収することができる。このようにして穿孔された穴は、前記した各種の用途に利用することができる。地盤Eに穿孔された穴に、後から管材を挿入することもできる。穿孔された穴に、コンクリートなどを流し込んで硬化させれば、地盤Eを強化する基礎杭の機能を果たすこともできる。ある程度強固な地盤であれば、ドレーンパイプや補強管材が無くても、穴が崩れることはない。ドレーンパイプを使用しないで、地盤の流動化防止を果たすこともできる。
【0044】
なお、上述したドレーンパイプ埋設工法では、図10及び図11に示すように、上記穿孔ビット30の上端側外周面に二つの突出部30a,30aが形成されたものを使用することができる。これらの突出部30a,30aは、基端側から先端側にかけて水平に形成されてなるものであり、上記ドレーンパイプ10の外周面よりも外側に突出している。また、これらの突出部30a,30aは、図11に示すように、穿孔ビット30の外周面の周回り方向に幅を有するものであり、互いに等間隔を隔てて該穿孔ビット30に形成されている。また、この穿孔ビット30は、複数のネジ31によりドレーンパイプ10に固定されており、さらに先端側には逆円錐部30bが形成されている。そして、この逆円錐部30b内には、前記地盤穿孔装置20の先端が挿入される凹部30cが形成されており、この凹部30cの内周からは中心方向に突出した係合凸部32が固定されている。一方、上記凹部30c内に挿入された地盤穿孔装置20に先端外周面には、上記係合凸部32が係合する係合凹部20aが形成されている。なお、この係合凹部20aの下方は開放されている。
【0045】
したがって、上述したドレーンパイプ埋設工法において、上述した構成に係る穿孔ビット30を使用することにより、前述した要領でドレーンパイプ10を貫入させていくと、図10に示すように、上記穿孔ビット30に形成された突出部30a,30aの突出長さに略対応して空間S,Sが形成される。したがって、こうした空間S,Sにより、長尺なドレーンパイプ10の外周面と地盤Eとの摩擦抵抗は大きく低減することができるので、短時間にドレーンパイプ10を埋設することができる。特に、前述したように、穿孔ビット30の先端から空気混合水を噴出させる場合には、水は上記突出部30a,30aにより形成された空間S,S内に流入し、場合によっては、該空間S,Sからドレーンパイプ10の外周に回ることから、より一層ドレーンパイプ10と地盤Eとの摩擦抵抗を低減することができる。とりわけ、地盤Eの土質が粘性土である場合には、摩擦抵抗の低減効果は著しく、工期の短縮化に大きく貢献する。また、上記穿孔ビット30は、ドレーンパイプ10に対して複数のネジ31により固定されていることから、該ドレーンパイプ10内から上記地盤穿孔装置20を撤去する際に、ドレーンパイプ10も上方に移動してしまう危険性を有効に防止することができる。さらに、上記穿孔ビット30と地盤穿孔装置20とは、上記係合凸部32と係合凹部20aとの係合により互いに係合していることから、地盤穿孔装置20を構成する高周波バイブレータ74の駆動により強制振動を作用させることにより、該地盤穿孔装置20がドレーンパイプ10内において回転する力が作用した場合であっても、それを阻止することができ、上記支持ケーブル52が捩れてしまうことを防止することができる。なお、上記例では、二つの突出部30a,30aを穿孔ビット30に形成したが、本発明を構成する突出部の数は、特に限定されるものではないとともに、図示しない突出部材を穿孔ビット30の外周面にネジやボルト等を介して固定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】簡易掘削装置の外観を模式的に示す側面図である。
【図2】図1に示す簡易掘削装置により地表から地盤を掘削している状態を模式的に示す側面図である。
【図3】図1に示す簡易掘削装置により地盤が掘削され後の状態を示す断面図である。
【図4】ドレーンパイプを地盤内に埋設している状態を模式的に示す側断面図である。
【図5】地盤掘削装置の外観を示す側面図である。
【図6】図5に示す地盤掘削装置の下端側の詳細を示す側断面図(a)及び底断面図(b)である。
【図7】図5に示す地盤掘削装置の平面図(a)、側断面図(b)及び水平断面図(c)である。
【図8】衝撃発生部の作動機構を示す側断面図である。
【図9】ドレーンパイプの埋設完了状態を示す断面図である。
【図10】穿孔ビットの他の例を示す側断面図である。
【図11】図10に示す穿孔ビットの平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 簡易掘削装置
2 掘削ロッド
3 掘削ビット
5 チャッキング部
6 モータ
7 ハンドル
10 ドレーンパイプ
20 地盤穿孔装置
30 穿孔ビット
30a 突出部
54 電力供給ケーブル
56 空気配管
57 水配管
62 噴出口
70 強制振動部
80 衝撃発生部
84 打撃部
E 地盤
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物或いは全部又は一部が地中に埋設された地中埋設物の周囲に、筒状に成形され通水性を有する複数のドレーンパイプを埋設するドレーンパイプ埋設工法であって、
先端に掘削ビットが固定された掘削ロッドを回転させながら上記ドレーンパイプの埋設位置に対応した地表から鉛直方向又は傾斜方向に地盤を掘削した後に、この掘削ロッドを抜き取る工程(a)と、
上記工程(a)の後に、地中方向に衝撃力を繰り返し付与する衝撃発生部を内部に備えた地盤穿孔装置をドレーンパイプの内部に配置し、該ドレーンパイプ及び地盤穿孔装置の先端に穿孔ビットを配置する工程(b)と、
上記衝撃発生部を駆動させることにより、該地盤穿孔装置及びドレーンパイプを地盤内に貫入させて、上記ドレーンパイプを地盤内に埋設する工程(c)と、
上記地盤内に埋設されたドレーンパイプ内から、上記地盤穿孔装置を撤去する工程(d)と、
を含むことを特徴とするドレーンパイプ埋設工法。
【請求項2】
前記地盤穿孔装置には、該地盤穿孔装置に強制振動を付与する強制振動部を備え、前記工程(d)は、この強制振動部の駆動により強制振動を付与しながらドレーンパイプ内から地盤穿孔装置を撤去することを特徴とする請求項1記載のドレーンパイプ埋設工法。
【請求項3】
前記工程(c)は、前記地盤穿孔装置の先端から地盤に空気混合水を噴出させながら該地盤穿孔装置及びドレーンパイプを地盤内に貫入させることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかのドレーンパイプ埋設工法。
【請求項4】
前記掘削ビットには、前記ドレーンパイプの外周面よりも外側に突出した一又は複数の突出部が形成され、又は突出部材が固定されてなることを特徴とする請求項1,2又は3記載の何れかのドレーンパイプ埋設工法。
【請求項5】
建築物或いは全部又は一部が地中に埋設された地中埋設物の周囲に、筒状に成形され通水性を有する複数のドレーンパイプが、前記請求項1,2,3又は4記載のドレーンパイプ埋設工法により、それぞれ鉛直方向に埋設されてなることを特徴とする建築物等の傾斜,沈下又は浮上防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−214241(P2006−214241A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30935(P2005−30935)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(505012265)
【出願人】(505048194)
【出願人】(505048024)
【出願人】(505048149)
【出願人】(505048161)
【出願人】(505048057)有限会社テック (2)
【Fターム(参考)】