説明

ニッケルゲルマノシリサイド化したゲートを組み込んだMOSFETおよびこれらのMOSFETを形成する方法

MOSFETのゲートまたはMOSFETのソースまたはドレイン領域は、シリコンゲルマニウムまたは多結晶シリコンゲルマニウムを含む。好ましくはニッケルシリサイドのモノシリサイドフェーズを含むニッケルゲルマノシリサイド(62、64)を形成すべく、ニッケルでのシリサイデーションを実行する。
ニッケルモノシリサイドによって呈される優れたシート抵抗を実質的に保持する一方、シリサイド中にゲルマニウムを含むことは、モノシリサイドフェーズが形成され得るより温度領域をより広くする。その結果、ニッケルゲルマノシリサイドは、後続のプロセスの間、ニッケルモノシリサイドよりも、より高い温度に耐えることができる。しかしながら、ニッケルモノシリサイドとほぼ同一のシート抵抗および他の有益な特性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)に関し、より詳しくは、MOSFETのソースおよびドレイン領域とゲート電極に対するコンタクトを形成するシリコンメタル化合物(silicon metal compounds)に関する。
【背景技術】
【0002】
MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)は、ほとんどの半導体デバイスの主たる構成要素となっている。
図1は、従来の技術に従って形成されたMOSFETを示す。このMOSFETは半導体基板10を含んでおり、この半導体基板10中には深いソースおよびドレイン領域12および浅いソースおよびドレイン拡張部14が形成されている。
ポリシリコンゲート16は、ゲート酸化膜18に重なっており、そのサイドウォール上に形成されたスペーサ20によって保護されている。
ソースおよびドレイン領域12は、BPSG(ホウ素燐ケイ酸ガラス)(borophosphosilicate glass)のような保護層24に埋め込まれた導電コンタクト22と接続される。
【0003】
この従来のMOSFETは、ソースおよびドレイン領域12に対する接触抵抗の低いオーミックコンタクトの形成を促進すべく、シリサイド領域26を利用する。
シリサイド領域28はまた、通常ポリサイド領域と呼ばれる構造を形成すべく、ゲート16上にも形成される。
従来、ゲートおよびソース/ドレイン・シリサイドを形成するのにチタン、タングステン、タンタルまたはモリブデンのような超硬合金が使用される。
さらに最近では、シリサイドを形成するのに好適な金属としてコバルトが使用されるようになった。
このシリサイド領域は、下にあるシリコンと、従来よりソース、ドレインおよびゲートについての第一段階の接続に使用されるアルミニウムのような他の材料との間の接触抵抗を低減する界面として役立つ。
【0004】
図1に記載されるようなシリサイド領域は、一般的にセルフアラインのプロセスを通じて形成され、それゆえ「サリサイド」(Self Aligned siLICIDEs)と呼ばれることもある。
サリサイドプロセスでは、1つのハードマスクを使用したセルフアライン方法においてゲートおよびゲート酸化膜を共にパターン化し、浅いソースおよびドレイン拡張部を形成すべく、低エネルギーのドーパント注入を実行し、その後、ゲートとゲート酸化膜のサイドウォール上にスペーサを形成し、深いソースおよびドレイン拡張部を形成すべく、高エネルギーのドーパント注入を実行し、次に、金属の共形層を構造全体の上に形成する。
それから、金属、ソースおよびドレイン領域のシリコンおよびゲートのポリシリコンを含んだシリサイド化合物の形成を促進すべく、熱処理を実行する。
所望の厚みのシリサイド化合物を生成するのに充分な時間、熱処理を実行した後に、残っている金属を取り除くと、図1に示されるようなシリサイド領域が残る。
【0005】
デバイス速度の増加および性能の向上に対する要求は、MOSFETのサイズを縮小し、動作速度を上げる方法についての絶え間ない探求へと駆り立てる。
同時に、より容易に小型化でき、プロセス統合を簡略化できるような利点を提供すべく、従来の材料の代わりに用いることができる新素材の識別に向けて、より進んだ研究がなされている。
【0006】
従来の高融点のコンタクトメタル(refractory contact metal)に代替するものとしてみなされている材料の1つは、ニッケル(Ni)である。
ニッケルは、ニッケルシリサイドの3つの相(以下、フェーズという。)、すなわちNi2Si(メタルリッチ・ジニッケルシリサイド)(metal-rich di-nickel suicide)、NiSi(ニッケルモノシリサイド)(nickel monosilicide)、NiSi2(シリコンリッチ・ニッケルジシリサイド)(silicon-rich nickel di-silicide)をとる。
ニッケルモノシリサイドはチタンに匹敵する低い固有抵抗を有するので特に好まれるが、シリサイド形成中におけるシリコンの消費が少ない。したがって、ニッケルモノシリサイドは、非常に薄い活性領域のシリサイド化に向いている。
ニッケルモノシリサイドのシート抵抗はまた、多くの場合、従来の高融点のシリサイドの問題となっている不都合な配線幅依存を有していない。
さらに、ニッケルモノシリサイドのシート抵抗は、ニッケルモノシリサイドに特有のエッジ効果(edge effect)のため、狭い配線において減少することが判明している。
シリコン基板上のニッケルモノシリサイドの機械的ストレスは、チタンの機械的ストレスよりも低い。
加えて、p型シリコンに対する接触抵抗は、チタンシリサイドの接触抵抗より低く、また、n型シリコンに対しても低い。
ニッケルモノシリサイドはまた、シリコンに対して良い粘着性を示す。
したがって、ニッケルモノシリサイドは、極めて浅いソースおよびドレイン拡散を備えるMOSFET中の従来の高融点のコンタクトメタルに望ましい代用物となる。
【0007】
ニッケルモノシリサイドの欠点の1つは、MOSFET製造中における温度においてその熱的安定性が相対的によくないということである。
図2に、ニッケルシリサイド合成物の3つのフェーズのシート抵抗をこれらのフェーズの形成温度に関連付けたグラフを示す。
図2に示すように、ニッケルモノシリサイドは300℃から600℃の間で最も形成される。また、その温度範囲で形成された際、毎平方(per square)当たり3オーム未満のシート抵抗となる。
対照的に、メタルリッチ・ジニッケルシリサイドおよびシリコンリッチ・ニッケルジシリサイドは、この範囲外の温度で形成され、各々シート抵抗において著しい増加を引き起こす。
この結果、ソース/ドレイン注入のアニーリングのような目的のため、典型的に半導体プロセスにおいて使用される高い処理温度は、ニッケルモノシリサイドのニッケルジシリサイドへの転化を促進する可能性があり、これによってシリサイドのシート抵抗が増加することとなる。
したがって、ニッケルモノシリサイドを使用する設計は、さらなる処理に利用可能なサーマルバジェット中に制限される。
【0008】
それゆえに、現在の技術は、後の処理に利用可能なサーマルバジェットを著しく制限することなく、ニッケルモノシリサイドの有利な構造を利用する方法を提供していない。
【発明の概要】
【0009】
上述したようなニッケルモノシリサイドの利点および欠点に照らして、既知のニッケルモノシリサイド・プロセスに固有のサーマルバジェットの制限を緩和する一方で、MOSFETソース/ドレインおよびゲートシリサイド中のコンタクトメタルとして、ニッケルの利点を利用することが本発明の目的である。
【0010】
本発明の一実施例によれば、MOSFETゲートは、多結晶の多結晶シリコンゲルマニウムの層で被覆される。
その後、好ましくはニッケルシリサイドのモノシリサイドのフェーズを含んだニッケルゲルマノシリサイド(germanosilicide)を形成すべく、ニッケルでのシリサイド化が実行される。
ソースおよびドレイン領域はさらに、ニッケルゲルマノシリサイドを使用してもよい。
シリサイド中のゲルマニウムの結合は、ニッケルモノシリサイドによって呈されるシート抵抗を基本的に維持する一方で、モノシリサイドを形成できるより広い温度領域を提供する。
その結果、ニッケルゲルマノシリサイドは、ニッケルモノシリサイドよりも、より高温な後の処理に耐えることができ、さらにニッケルモノシリサイドとほぼ同一のシート抵抗および他の有利な特性を提供する。
【0011】
本発明のある実施例の1つによれば、MOSFETは、その上にゲート絶縁層が形成された半導体基板、このゲート絶縁層上に形成されたポリシリコン層、およびこのポリシリコン層上に形成された多結晶シリコンゲルマニウム層から製造される。
多結晶シリコンゲルマニウム層、ポリシリコン層およびゲート絶縁層は、ゲート絶縁膜およびこのゲート絶縁膜を覆うゲートを形成すべくパターン化される。このゲートは、下側のポリシリコン部分と上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分とを含む。
その後、ニッケルの層が、少なくともゲートの上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分上に形成される。また、ゲート上にニッケルゲルマノシリサイドを形成すべく、熱処理が実行される。
【0012】
本発明の他の実施形態の1つによれば、MOSFETは、ソースおよびドレイン領域、このソースおよびドレイン領域の間に伸びるチャネル領域、このチャネル領域に重なるゲート絶縁膜、およびこのゲート絶縁膜に重なるポリサイドゲートを含む。
このポリサイドゲートは、下側のポリシリコン部分、上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分、および上側の多結晶シリコンゲルマニウム上に形成されるニッケルゲルマノシリサイドを有する。
あるいは、ポリサイドゲートとソースおよびドレイン領域の少なくとも1つは、ニッケルゲルマノシリサイドを含む。
本発明の実施形態は、以下の図面に関連して記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図3は、ニッケルシリサイドおよびニッケルゲルマノシリサイドのシート抵抗と、これらが形成される温度とを関連づけたグラフを示す。
図3のグラフは、ゲルマニウム/シリコンの組成がSi1-xGexであると仮定する。このxは0.1から0.4である。
図3に示すように、毎平方メートルあたり3から10オーム間で変化するが、ニッケルシリサイドのグラフの曲線とニッケルゲルマノシリサイドグラフのグラフの曲線は類似する。しかしながら、ニッケルゲルマノシリサイドのシリコン・リッチ・フェーズについての形成温度範囲は、ニッケルシリサイドのシリコン・リッチ・フェーズの形成温度範囲よりも高い。
ニッケルゲルマノシリサイドのモノシリサイド・フェーズの形成についての理想的な範囲は、約300℃から700℃までの範囲にある。
その結果、ニッケルゲルマノシリサイドは、モノシリサイド・フェーズを著しく低下させることなく、より高い加工温度に耐えることができる。
【0014】
したがって、好ましい第1の実施形態では、MOSFETのゲート・コンタクト層としてニッケルゲルマノシリサイドを使用する。
このようなデバイスの製造中に形成された構造を、図4aないし図4fに示す。
【0015】
図4aは、第1の好ましい実施形態のMOSFETが形成される構造を示す。
この構造は、シリコン基板40を含んでおり、このシリコン基板40の上には酸化シリコンのようなゲート酸化層42、ポリシリコン・ゲート導電層44、および多結晶シリコンゲルマニウム層46が形成される。
多結晶シリコンゲルマニウム層46は、Si1-xGexの構成を有することが好ましく、このxは、典型的には0.1から0.3の範囲にあり、約0.2であることが好ましい。
ゲート酸化層42は、10Åから30Åの厚みであることが好ましく、ポリシリコン・ゲート導電層44は、500Åから1000Åの厚みであることが好ましく、また、シリコンゲルマニウム層46は、300Åから600Åの厚みであることが好ましい。
ゲート酸化層およびポリシリコン層を形成するプロセスについては周知である。
600℃から900℃の温度のSi2H6(ジシラン)(disilane)およびGeH4(ゲルマン)(germane)(ジシラン分圧は30mPa、ゲルマン分圧は60mPa)を供給ガス(source gasses)として使用する化学蒸着法によって、多結晶シリコンゲルマニウム層を形成してもよい。
これらの定量(ration)を使用して開始するか、その代わりに傾斜的な組成(gradient composition)を形成すべく、ゲルマンの分圧を低い圧力または圧力0から徐々に増加するようにして、多結晶シリコンゲルマニウム材料を成長させてもよい。
ゲルマニウム供給ガスが傾斜層(graded layer)を形成するように徐々に導入される連続的なプロセスで、その場に(in situ)これらの層を形成することが好ましいが、別個のプロセスステップでポリシリコン44および多結晶シリコンゲルマニウム46の層を形成してもよい。
ポリシリコンのたい積に必要とされる温度よりも低温で多結晶シリコンゲルマニウムをたい積することができることが注目される。したがって、傾斜構造を形成する際に、供給ガスの制御と共に温度制御を実行することができる。
【0016】
図4bは、酸化ゲート絶縁膜48を含むセルフアラインされたゲートスタック、下側のポリシリコン部分50、および上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分52を形成すべく、ゲート絶縁層、ゲート伝導層および多結晶シリコンゲルマニウム層をパターニングした後の図4aの構造を示す。
【0017】
図4cは、ソースおよびドレインが注入され、ゲートスペーサを形成した後の、図4bの構造を示す。
図4cの構造を形成するため、浅いソースおよびドレイン拡張部54を形成すべく、図4bの構造上で低エネルギーのドーパント注入を実行する。
それから、酸化シリコンのような保護材料の共形層をたい積することによってゲートスペーサ56を形成し、その後、ゲートの上面および基板上表面からたい積した材料を除去すべく、異方性エッチングを実行する。
次に、深いソースおよびドレイン領域58を形成すべく、高エネルギーのドーパント注入を実行する。
高エネルギーのドーパント注入の間、ゲートスペーサ56は、下にある浅いソースおよびドレイン拡張部を保護するインプラントマスクとなる。
【0018】
図4dは、ソースおよびドレイン領域58の露出面およびゲートスタックの露出面を含んだ基板およびゲート・スタックの上に、ニッケル60の共形層を形成した後の、図4cの構造を示す。
ニッケル層は、物理蒸着法(スパッタリング)によって形成することが望ましいが、金属層を形成する他の周知の方法を使用して形成してもよい。
【0019】
図4eは、ニッケル層60と、ソースおよびドレイン領域のシリコンおよびゲートの上部52の多結晶シリコンゲルマニウムとの間のシリサイドの形成を促進すべく、図4dの構造上で熱処理を実行した後の、図4dの構造を示す。
熱処理は、好ましくは、主としてモノシリサイドのフェーズを含むニッケルゲルマノシリサイドを形成すべく、350℃から700℃の温度領域で実行する。
シリサイドの形成プロセスにおいてシリコンを消費するため、ニッケルゲルマノシリサイド層の厚みは熱処理を実行する時間によって決定する。
形成される構造には、ゲートの上部の多結晶シリコンゲルマニウム部分52上に形成されたニッケルゲルマノシリサイド領域62と、ソースおよびドレイン領域56の表面において形成されたニッケルシリサイド領域64が含まれる。
【0020】
図4aないし図4fに関して記載されたプロセスは、ニッケルゲルマノシリサイドゲートを含む1つのタイプのMOSFETを製造する好ましい方法を示しているが、ニッケルゲルマノシリサイドゲートを有する同一の構造または他のMOSFET構造を得るべく、他の処理方法を使用してもよい。
例えば、この好ましい実施形態においてはニッケルの層のたい積の後に熱処理を実行する技術を使用するが、ニッケルゲルマノシリサイドの層を形成すべく、ニッケル、シリコンおよびゲルマニウムの同時蒸発、またはニッケル、シリコンおよびゲルマニウムの同時スパッタリング、またはニッケルシリコンゲルマニウム・ターゲットからのスパッタリングのような代替的な方法を使用してもよい。
このような代替方法が、図4aから図4fの処理と異なるマスキング、エッチングおよび除去プロセスを必要としてもよいことを認識すべきである。またこれらの代替方法は、MOSFETの適切な位置において、ニッケルゲルマノシリサイド領域を形成すべく、特定の仕様に適合することができる。
【0021】
図5は、本発明の他の好ましい実施形態による構造を示す。図5の構造は、基板が、「歪み(strained)」シリコン(ストレインド・シリコン)の薄膜72をその上に形成したシリコンゲルマニウム70の層を含む点で、図4fの構造と異なる。
歪みシリコンは、シリコン格子(silicon lattice)の寸法と、その上にこのシリコン格子が形成される下地となる材料の格子の寸法の差の結果、シリコン格子に引張歪みが与えられたシリコンの形態である。
図示の場合においては、シリコンゲルマニウム格子は、純粋なシリコン格子よりも広く間隔をあけて配置される。この間隔は、ゲルマニウムのパーセンテージが増加するにつれてより広くなる。
形成中に、シリコン格子はより大きなシリコンゲルマニウム格子と整合する(aligns with)ので、引張歪みがシリコン層に与えられる。
実質的には、シリコン原子は互いに引き離される。
緩和シリコン(relaxed silicon)は、6つの等しい価電子帯を含む導電帯を有する。
シリコンに引張歪みを与えることは、6つの価電子帯のうちの4つの価電子帯のエネルギーを増加させると共に、そのうちの2つの価電子帯のエネルギーを減少させる。
量子効果の結果、より低いエネルギーバンドを電子が通り抜ける際、その重さが事実上30パーセント以下に減少する(weigh 30 percent less)。
このように、より低いエネルギーバンドは電子の流れに与える抵抗がより少ない。
さらに、シリコン原子の核から電子が受ける振動エネルギーはより少ない。このことは、500回から1000回の割合で(この割合は緩和シリコン中におけるよりも少ない。)電子を分散させる。
したがって、キャリア移動度は、緩和シリコンと比較して、歪みシリコン中において劇的に上昇し、電子について80%以上、正孔(hole)について20%以上の移動度を潜在的に上昇させる。
1.5メガボルト/センチメートルの電界まで、移動度の上昇が続くことが分かっている。
これらの要因は、デバイスサイズのさらに縮小することなく、デバイス速度を35%増加させることができ、または性能を低下させることなく、電力消費を25%減少させることができると考えられる。
【0022】
したがって、図5の構造は、シリコンゲルマニウム層70に支持された歪みシリコン72のエピタキシャル層を使用することにより、歪みシリコンの有益な特徴を利用したものである。
ソースおよびドレイン領域58およびチャネル領域は、歪みシリコン72中に形成される。
よって、図5の構造は、半導体基板40とゲート絶縁層42との間にシリコンゲルマニウム層および歪みシリコン層を有するように、図4aに示される最初の層状構造が変更された状態で、図4aないし図4fに示される方法と同様の方法で形成される。
このシリコンゲルマニウム層70は、好ましくは組成Si1-xGexを有している。このxは、約0.2であり、より一般的には0.1から0.3の範囲にある。
例えば、供給ガスとしてSi2H6(ジシラン)(disilane)およびGeH4(ゲルマン)(germane)を使用する化学蒸着法(600℃から900℃の基板温度、ジシラン分圧は30mPa、ゲルマン分圧は60mPaを使用する。)によって、シリコンゲルマニウムをシリコンウェーハ基板上で成長させてもよい。
これらの定量を使用して開始するか、その代わりに傾斜的な組成を形成すべく、ゲルマンの分圧を低い圧力または圧力0から徐々に増加するようにして、シリコンゲルマニウム材料を成長させてもよい。
その後、例えば、供給ガスとしてSi2H6(ジシラン)を使用する化学蒸着法(CVD)(分圧30mPa、約600℃から900℃の基板温度)によって、シリコンゲルマニウム層の上に歪みシリコン層を成長させることができる。
【0023】
図6は、本発明の好ましい第3の実施形態による構造を示す。
図6の構造は、シリコンゲルマニウム格子上に形成された歪みシリコンを使用するという点において図5の構造に類似しているが、図6の構造の歪みシリコンは、ゲート絶縁膜48およびスペーサ56の下のチャネル領域74に限られている。
このような構造は、スペーサ56を形成し、深いソースおよびドレイン領域58を注入する前において、シリコンゲルマニウムを有する歪みシリコンをエッチングする代わりにエピタキシャル歪みシリコン層をエッチングすることによって形成することができる。
代替的に、ゲート絶縁層およびその上に重なる層を形成する前に、歪みシリコンチャネル領域74を埋め込む方法(inlaid manner)によって形成してもよい。
図6の構造のようなシリコンゲルマニウムのソースおよびドレイン領域を有する構造の利点は、ソースおよびドレイン領域にニッケルゲルマノシリサイドの利点も有するし、傍らデバイスにも歪みシリコンの利点も有するということである。
さらにこのような実施形態は、シリコンゲルマニウム中のホウ素(B)ドーパントの拡散を減少させるので、PMOS実装におけるソースおよびドレインの形状(geometry)を正確に制御するのに特に望ましいものとなり得る。
【0024】
図7は、本発明の好ましい第4の実施形態による構造を示す。
図7の構造は、一般的にバーティカル・ダブルゲートMOSFET(vertical double gate MOSFET)またはFinFETと呼ばれるシリコン・オン・インシュレータ(SOI)構造である。
この構造は、絶縁基板78上に形成されたモノリシック(monolithic)半導体本体76を含む。
この半導体本体は、ソースおよびドレイン領域80、およびこのソースおよびドレイン領域の間に伸びるチャネル領域82を含む。
ゲート84は、チャネル領域82上およびその周辺に形成される。このゲート84は、図示しないゲート絶縁膜によってチャネル領域から分離されると共に、図示しない絶縁スペーサによってソースおよびドレイン領域から保護される。
本発明によれば、このゲートは下側のポリシリコン部分86と上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分88を含んでいる。これらの上にはニッケルゲルマノシリサイド90が形成される。
ソースおよびドレイン領域の上にはまた、ニッケルゲルマノシリサイド92が形成される。ある実施形態においては、半導体本体76をシリコンから形成する。
他の実施形態の一例においては、半導体本体76をシリコンゲルマニウムから形成し、歪みシリコンの層で被覆してもよい。
さらに他の実施形態の一例においては、半導体本体76をシリコンゲルマニウムから形成し、チャネル領域においてのみ、歪みシリコンの層で被覆してもよい。これにより、ソースおよびドレイン領域80上にニッケルゲルマノシリサイドを形成することができる。
【0025】
図4f、図5、図6および図7のMOSFET構造は、現在の好ましい実施形態を示しているが、ニッケルゲルマノシリサイドは他の種類のMOSFET構造に同じように適用できる。
例えば、チャネル領域の下にゲートがある反転ゲートまたはボトムゲートMOSFETのような他の構造はまた、ソースおよびドレイン領域とゲートに低い接触抵抗を与えるべく、ニッケルゲルマノシリサイドを利用してもよい。
このような代替的な構造は、チャネル領域とソースおよびドレイン領域中に歪みシリコンを組み入れてもよい。
上述の好ましい実施形態でのように、ニッケルモノシリサイド・フェーズによって可能な限りニッケルゲルマノシリサイドを含むことが望ましい。
【0026】
したがって、本発明の範囲内にある実施形態が様々なMOSFET構造(これらの各MOSFETは、ゲート上またはソースおよびドレイン中のシリサイドとしてニッケルゲルマノシリサイドを使用するものである。)を含むことが理解されるべきである。
【0027】
図8は、前述した好ましい実施形態および他の変更例と共に、この明細書においては特に記載されていないさらなる他の実施形態をも含む、MOSFETを製造するプロセスフローを示す図である。
まず、半導体基板を提供する(ステップ100)。
この基板の上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上にポリシリコン層を形成し、このポリシリコン層上に多結晶シリコンゲルマニウム層を形成する。
その後、ゲート絶縁膜およびこのゲート絶縁膜に重なるゲートを形成すべく、多結晶シリコンゲルマニウム層、ポリシリコン層およびゲート絶縁層をパターン化する(ステップ102)。
このゲートはこのように下側のポリシリコン部分と、上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分を含んでいる。
ニッケルの層を、少なくともゲートの上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分上に形成する(ステップ104)。
その後、ゲート上にニッケルゲルマノシリサイドを形成すべく、熱処理を実行する(ステップ106)。
図4f、図5および図6の実施形態において使用されるように、ここに記載される基板は半導体基板、または図8の実施形態において使用されるように、その上に予めパターン化した半導体本体を有する絶縁基板を含んでいてもよいことに注目すべきである。
【0028】
さらなる実施形態においては、さらなる種類の処理を実行するか、または異なる種類の構造を形成することが望ましい可能性がある。
例えば、ゲルマノシリサイドのフェーズの安定性を改善するバナジウム(Va)、タンタル(Ta)、またはタングステン(W)のような他の金属を混ぜてニッケル層を合金化することが望ましい可能性がある。
加える金属はニッケル層に注入してもよいし、またはゲルマノシリサイドを形成する前に、ニッケル層上の分離CVD層またはPVD層として形成してもよい。
他の実施形態に置いては、多結晶シリコンゲルマニウムゲートを使用してもよい。
さらなる実施形態では、ゲートの多結晶シリコンゲルマニウム部分を、ゲルマニウム雰囲気中におけるポリシリコン・ゲートのアニーリングによって、またはポリシリコンゲートにゲルマニウムを注入することによって形成してもよい。
他の実施形態においては、ニッケル層をたい積する前に酸化物を除去すべく、水素雰囲気における還元(リダクション)を実行することが望ましい可能性がある。
【0029】
上記プロセスに記載されたタスクから他のタスクが必ずしも除外されていないことは当業者に明白であろう。しかしながら、形成されるべき特定の構成にしたがって、上記のプロセスにさらなるタスクをさらに組み入れてもよい。
例えば処理タスク間の保護膜(passivation layer)または保護層(protective layer)の形成および除去、フォトレジストマスクおよび他のマスキング層の形成および除去、ドーピングおよび反ドーピング、洗浄、プレーナ化、および他のタスクのような中間の処理タスクを、特に上述のタスクと共に実行してもよい。
さらに、全体的なウェーハのように基板全面上においてこのプロセスを実行する必要はないが、基板の一部分上において選択的に実行してもよい。
このように、現在では図に示したような上述の実施形態が好ましいが、これらの実施形態は単なる一例として記載されていることを理解すべきである。
本発明は特定の実施形態に限られず、それどころか、請求の範囲およびこの均等の範囲内にある、様々な修正例、組み合わせおよび置換に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のポリシリコンゲート構造を使用する従来のMOSFETの断面を示す図。
【図2】ニッケルシリサイドのシート抵抗とこれを形成するのに使用した熱処理温度の関係を示すグラフ。
【図3】ニッケルシリサイドおよびニッケルゲルマノシリサイドのシート抵抗とこれらを形成するのに使用した熱処理温度の関係を示すグラフ。
【図4a】本発明の第1の好ましい実施形態によるMOSFETの製造中に形成される構造を示す図。
【図4b】本発明の第1の好ましい実施形態によるMOSFETの製造中に形成される構造を示す図。
【図4c】本発明の第1の好ましい実施形態によるMOSFETの製造中に形成される構造を示す図。
【図4d】本発明の第1の好ましい実施形態によるMOSFETの製造中に形成される構造を示す図。
【図4e】本発明の第1の好ましい実施形態によるMOSFETの製造中に形成される構造を示す図。
【図4f】本発明の第1の好ましい実施形態によるMOSFETの製造中に形成される構造を示す図。
【図5】本発明の第2の好ましい実施形態にしたがって製造されたMOSFETを示す図。
【図6】本発明の第3の好ましい実施形態にしたがって製造されたMOSFETを示す図。
【図7】本発明の第4の好ましい実施形態にしたがって製造されたMOSFETを示す図。
【図8】好ましい実施形態およびその他の実施例に従ってデバイスを製造するためのプロセスフローを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に形成されるゲート絶縁層(42)を有する半導体基板、このゲート絶縁層上に形成されるポリシリコン層(44)、およびこのポリシリコン層上に形成される多結晶シリコンゲルマニウム層(46)を提供するステップと、
ゲート絶縁膜(48)、およびこのゲート絶縁膜を覆うゲートであって、下側のポリシリコン部分(50)と上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分(52)とを含むゲートを形成すべく、前記多結晶シリコンゲルマニウム層(46)、前記ポリシリコン層(44)および前記ゲート絶縁層(42)を、パターン化するステップと、
前記ゲートの少なくとも前記上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分(52)上に、ニッケルの層(60)を形成するステップと、
前記ゲート上にニッケルゲルマノシリサイド(62)を形成すべく、熱処理を実行するステップと、を含む、
MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)を形成する方法。
【請求項2】
前記ニッケルゲルマノシリサイド(62)は、ニッケルモノシリサイドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシリコン(44)および多結晶シリコンゲルマニウム(46)がその場で(in situ)形成される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ニッケルの層(60)を形成するステップの前に、
浅いソースおよびドレイン拡張部(54)を注入するステップと、
前記ゲートの周りにスペーサ(56)を形成するステップと、
深いソースおよびドレイン領域(58)を注入するステップと、を実行し、
前記ニッケルの層(60)は、前記深いソースおよびドレイン領域(58)と接触しており、前記熱処理は、前記ソースおよびドレイン領域中に、ニッケルおよびシリコンを含む化合物を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記基板は、シリコンゲルマニウムの層(70)の上に重なる歪みシリコン(ストレインド・シリコン)の表層(72)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記基板は、その中に形成された歪みシリコンチャネル領域(74)を有するシリコンゲルマニウムの層(70)を含んでいると共に、前記ゲートは、前記歪みシリコンチャネル領域上にパターン化されており、
前記MOSFETのソースおよびドレイン領域は、前記シリコンゲルマニウムの層(70)中に形成されており、
前記ニッケルの層(60)は、前記ソースおよびドレイン領域と接触していると共に、前記熱処理は、前記ソースおよびドレイン領域中にニッケルゲルマノシリサイドを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ソースおよびドレイン領域と、
このソースおよびドレイン領域の間に伸びるチャネル領域と、
このチャネル領域に重なるゲート絶縁膜(48)と、
このゲート絶縁膜に重なるポリサイドゲートであって、下側のポリシリコン部分(50)、上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分(52)、および前記ゲートの前記上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分上に形成されるニッケルゲルマノシリサイド(62)を含むポリサイドゲートと、を含む、
MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)デバイス。
【請求項8】
前記ニッケルゲルマノシリサイド(62)は、ニッケルモノシリサイドを含む、請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記ソースおよびドレイン領域と前記チャネル領域は、絶縁層(78)上に形成される半導体本体(76)を含んでおり、これによってシリコン・オン・インシュレータ(SOI)MOSFETが含まれるようになっている、請求項7記載のデバイス。
【請求項10】
ソースおよびドレイン領域と、
このソースおよびドレイン領域の間に伸びるチャネル領域と、
このチャネル領域に重なるゲート絶縁膜(48)と、
このゲート絶縁膜に重なるポリサイドゲートと、を含んでおり、
前記ポリサイドゲートおよび前記ソースおよびドレイン領域の少なくとも一方が、ニッケルゲルマノシリサイド(62、64)を含む、
MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に形成されるゲート絶縁層(42)を有する半導体基板(40)であって、シリコンゲルマニウムの層(70)の上に重なる歪みシリコン(ストレインド・シリコン)の表層(72)を含む半導体基板(40)、このゲート絶縁層上に形成されるポリシリコン層(44)、およびこのポリシリコン層(44)上に形成される多結晶シリコンゲルマニウム層(46)を提供するステップと、
前記ゲート絶縁層(42)を覆うゲートであって、下側のポリシリコン部分(50)と上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分(52)とを含むゲートを形成すべく、前記多結晶シリコンゲルマニウム層(46)および前記ポリシリコン層(44)をパターン化するステップと、
MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)の歪みシリコンチャネル領域(74)を形成すべく、このMOSFETのソースおよびドレイン領域から前記歪みシリコン層(72)を除去するステップと、
前記ゲートの前記上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分(52)と接触すると共に、前記ソースおよびドレイン領域中の前記シリコンゲルマニウム層(70)と接触するニッケルの層(60)を形成するステップと、
前記ゲート上および前記シリコンゲルマニウム・ソースおよびドレイン領域上にニッケルゲルマノシリサイドコンタクトを形成すべく、熱処理を実行するステップと、を含む、
MOSFETを形成する方法。
【請求項2】
前記ニッケルゲルマノシリサイド(62)は、ニッケルモノシリサイドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシリコン(44)および多結晶シリコンゲルマニウム(46)がその場で(in situ)形成される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ニッケルの層(60)を形成するステップの前に、
浅いソースおよびドレイン拡張部(54)を注入するステップと、
前記ゲートの周りにスペーサ(56)を形成するステップと、
深いソースおよびドレイン領域(58)を注入するステップと、を実行する、請求項1ないし3のいずれかの項記載の方法。
【請求項5】
前記ニッケルの層(60)を形成するステップの前に、
前記ゲートと前記ソースおよびドレイン領域の上に保護層を形成するステップを実行する、請求項1ないし4のいずれかの項記載の方法。
【請求項6】
シリコンゲルマニウムの層(70)を含む半導体基板と、
前記シリコンゲルマニウム層(70)中に形成されるソースおよびドレイン領域(58)と、
前記シリコンゲルマニウム層上に形成され、前記ソースおよびドレイン領域(58)の間に伸びる歪みシリコンチャネル領域(74)と、
前記チャネル領域に重なるゲート絶縁膜(48)と、
前記シリコンゲルマニウム・ソースおよびドレイン領域(58)上に形成されるニッケルゲルマノシリサイドコンタクトと、を含む、
MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)デバイス。
【請求項7】
前記ゲート絶縁膜(48)に重なるポリサイドゲートであって、下側のポリシリコン部分(50)、上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分(52)、および前記ゲートの前記上側の多結晶シリコンゲルマニウム部分(52)上に形成されるニッケルゲルマノシリサイド(62)を含むポリサイドゲートをさらに含む、請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記ポリサイドゲートのサイドウォール上に形成される保護スペーサ(56)と、
このスペーサ(56)の下に伸びる浅いソースおよびドレイン拡張部と、をさらに含む、請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記ニッケルゲルマノシリサイド(62)は、ニッケルモノシリサイドを含む、請求項6ないし8のいずれかの項記載のデバイス。
【請求項10】
前記ソースおよびドレイン領域と前記チャネル領域は、絶縁層(78)上に形成される半導体本体(76)を含んでおり、これによってシリコン・オン・インシュレータ(SOI)MOSFETが含まれるようになっている、請求項6ないし9のいずれかの項記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−501685(P2006−501685A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546734(P2004−546734)
【出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/028680
【国際公開番号】WO2004/038807
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(591016172)アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド (439)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED MICRO DEVICES INCORPORATED
【Fターム(参考)】