説明

パターン形成方法およびパターン形成装置

【課題】 高価で大型な装置を用いずに発生することができる長波長の光を用いて、幅が細い微細なパターンであって、高アスペクト比のパターンを形成することができるパターン形成方法およびパターン形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 特定の波長を有する光を吸収して熱を発生する光吸収熱変換物質1とその熱によって化学反応する熱感応性物質2とを含む混合物3が塗布された基板4を用い、レーザ光源5から出射されたレーザ光6を収束手段7によって収束した後、基板4にレーザ光6を照射することによって、基板上にパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にパターンを形成するパターン形成方法およびパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体基板およびガラス基板などの基板上にパターンを形成する場合、リソグラフィ技術を用いる。リソグラフィ技術とは、塗布工程、露光工程および現像工程などによって、基板上などにパターンを形成する方法である。塗布工程では、フォトレジストを基板に塗布する。露光工程では、基板上に形成すべきパターンに基づいてフォトレジストに光を照射してフォトレジストを露光する。現像工程では、露光された露光部および露光部以外の非露光部のいずれかを除去する現像によって基板上にレジストのパターンを形成する。以上の工程によって、基板上にパターンを形成する。さらに、リソグラフィ技術は、エッチング工程および除去工程などを行って、レジストのパターンに対応するパターンを基板に形成する。エッチング工程では、基板上に形成されたレジストのパターンをエッチング用のマスクとして基板をエッチングする。除去工程では、エッチング用のマスクを除去する。以上の工程によって、基板に溝などのパターンを形成する。
【0003】
露光工程では、たとえば、フォトレジストに感度のある光を用いて露光する光露光装置などが用いられている。光露光装置としては、パターンが形成された露光用のホトマスクに光を照射することによりフォトレジストに投影露光する装置、および基板上に形成すべきパターンに基づいてレーザ光を直接フォトレジストに照射して露光する装置などが挙げられる。
【0004】
近年、基板の高集積化が望まれており、パターンの微細化が試みられている。しかしながら、上記のような光露光装置は、光に回折限界があるため、光が基板などに照射される領域を小さくするのに限界がある。つまり、いくら光を収束させても、光が照射される領域の直径が、光の波長程度にしかならないので、使用した光の波長と同程度の直径がパターンの寸法限界となる。したがって、パターンの微細化を実現するために、使用する光の短波長化が進行している。
【0005】
短波長の光としては、たとえば、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)およびF2レーザ(波長:157nm)などの紫外波長の光が挙げられる。さらに、より短波長の光である波長5〜15nmの軟X線領域のEUV(Extreme Ultra Violet)光の使用も検討されている。しかしながら、上記のような短波長の光を発生させる装置は、いずれも非常に高価であり、さらに非常に大きな装置である。
【0006】
したがって、上記のような短波長の光を発生させる装置より安価であって、装置を小型化することが可能なピックアップ用の光源を用いることが検討されている。しかしながら、ピックアップ用の光源は、一般的に、赤色光および赤外波長の光を発生する光源であるので、回折限界のため、そのまま使用するとパターンを微細化することができない。
【0007】
そこで、光源から基板上に照射された光を熱に変換して、その熱を利用する方法が検討されている。典型的な従来の技術は、特許文献1に記載されている。特許文献1の微細パターン描画材料を用いた描画方法は、光を吸収して発熱する光吸収熱変換層と熱によって化学反応する熱感応性物質層とを積層した基板に光を照射して微細パターンを描画する方法である。他の従来の技術として、特許文献2に記載されている。特許文献2の微細パターン描画材料を用いた微細加工方法は、照射された光を吸収して発熱する第1の無機物質の層と光照射によって第1の無機物質と反応する第2の無機物質の層とからなる複合層を有する基板に光を照射して微細加工する方法である。さらに他の従来の技術は、特許文献3に記載されている。特許文献3のパターン形成方法は、光を吸収して発熱する光吸収熱変換層で熱を吸収して化学反応する熱感応性物質層を挟む構造を有する基板に光を照射して微細パターンを形成する方法である。
【0008】
【特許文献1】特開2002−365806公報
【特許文献2】特開2003−145941公報
【特許文献3】特開2004−144925公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パターン形成方法は、一般に基板上に現像されたレジストのパターンおよびエッチングによって形成されたパターンなどの幅が細いだけでなく、幅に対する高さまたは深さの比であるアスペクト比が高いことが望まれる。
【0010】
図7は、従来のパターン形成方法によって、パターンを形成する機構を示す模式図である。図7(a)は、フォトレジストなどのパターンを形成するパターニング材料101に短波長の光102を照射することによって、パターンを形成する機構を示す模式図である。図7(a)に示すように、短波長の光102であれば、短波長の光102の照射された光路が、パターニング材料101が化学反応する反応領域103となるので、高アスペクト比のパターンを形成させることができる。しかしながら、短波長の光102の代わりにピックアップ用の光源から照射されるような長波長の光を用いると、高アスペクト比のパターンを形成することが困難である。
【0011】
図7(b)は、特許文献1および2に記載されている方法を用いてパターンを形成する機構を示す模式図である。図7(b)に示すように、熱によって化学反応するパターニング材料101と、光を吸収して発熱する光吸収熱変換層104とを積層したものに、長波長の光105を照射する。そうすることによって、光吸収熱変換層104が発熱し、その熱を用いてパターニング材料101が化学反応することによって、幅の細いパターンを形成することができる。しかしながら、光吸収熱変換層104で発生した熱が充分に伝わったパターニング材料101のみが化学反応するので、光吸収熱変換層104に接触したパターニング材料101周辺のみに反応領域103が形成される。したがって、パターニング材料101の深いところに反応領域103が形成されず、高アスペクト比のパターンを形成することができないという問題点がある。
【0012】
図7(c)は、特許文献3に記載されている方法を用いてパターンを形成する機構を示す模式図である。図7(c)に示すように、高アスペクト比のパターンを形成することができないという問題点を解決するために、パターニング材料101を挟むように二枚の光吸収熱変換層104を積層したものに、長波長の光105を照射する。パターニング材料101の両面に光吸収熱変換層104が接触しているので、パターニング材料101のより深いところに反応領域103を形成することができる。しかしながら、光吸収熱変換層104に接触したパターニング材料101周辺のみに反応領域103が形成されることにはかわりがないので、アスペクト比が充分に高いパターンを形成することができない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、高価で大型な装置を用いずに発生することができる長波長の光を用いて、幅が細い微細なパターンであって、高アスペクト比のパターンを形成することができるパターン形成方法およびパターン形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、
特定の波長を有する光を吸収して熱を発生する光吸収熱変換物質と前記熱によって化学反応する熱感応性物質とを含む混合物を塗布した基板に、前記特定の波長を有するレーザ光を照射して前記混合物を露光することを特徴とするパターン形成方法である。
【0015】
また本発明は、前記特定の波長は、前記熱感応性物質に照射することによって前記熱感応性物質を化学反応させるような光の波長より長い波長であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記特定の波長は、赤外波長であることを特徴とする。
また本発明は、前記特定の波長は、750nm以上950nm以下であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記光吸収熱変換物質および前記熱感応性物質は、有機系化合物であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、赤外線を吸収して発熱する光吸収熱変換物質と熱を吸収して反応する熱感応性物質とを含む混合物を塗布した基板上にパターンを形成するパターン形成装置であって、
赤外波長のレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を収束する収束手段とを含むことを特徴とするパターン形成装置である。
【0019】
また本発明は、前記レーザ光を分割し変調させる偏向制御手段を含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記偏向制御手段は、デジタルマイクロミラーデバイスであることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記デジタルマイクロミラーデバイスは、複数のマイクロミラーによって前記レーザ光を反射させて分割し、分割されたレーザ光の進行方向に対して、マイクロミラーの配置方向が傾斜していることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記偏向制御手段は、液晶素子であることを特徴とする。
また本発明は、前記レーザ光源は、複数のレーザ光を同時に照射することができることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記レーザ光源は、同一平面上に複数の光源を配置して構成することを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記レーザ光源は、垂直共振器型面発光レーザ素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、特定の波長を有する光を吸収して熱を発生する光吸収熱変換物質とその熱によって化学反応する熱感応性物質とを含む混合物を塗布した基板に、特定の波長を有するレーザ光を照射し、混合物を露光する。そうすることによって、光吸収熱変換物質を含む混合物は発熱し、その熱によって、熱感応性物質は化学反応を起こす。したがって、光を照射することによって光吸収熱変換物質が発熱する波長であれば、パターンを形成することができる。
【0026】
また、光が基板に照射される領域の中心の光強度が最も強く、中心から離れるにしたがって光強度が弱まる。つまり、照射される光の強度分布は、ガウス分布となる。このような光の強度分布がガウス分布になるという性質を用いれば、熱感応性物質が化学反応する領域を光が照射される領域よりはるかに小さくすることができる。したがって、形成されるパターンの幅を非常に小さくすることができる。
【0027】
さらに、光吸収熱変換物質は、熱感応性物質に分散されているので、光が照射された領域にある光吸収熱変換物質は発熱させることができる。したがって、厚み方向に深いところにある熱感応性物質も化学反応させることができるので、高アスペクト比のパターンを形成することができる。
【0028】
以上のことから、高価で大型な装置を用いずに発生することができる長波長の光を用いて、幅が細い微細なパターンであって、高アスペクト比のパターンを形成することができる。
【0029】
また本発明によれば、特定の波長は、熱感応性物質に照射することによって熱感応性物質を化学反応させるような光の波長より長い波長である。したがって、光が照射されることによって、熱感応性物質が化学反応するのではなく、光が照射されることによって、光吸収熱変換物質が発熱し、その熱によってのみ、熱感応性物質が化学反応するので、光の回折限界の影響が小さく、幅のより小さなパターンを形成することができる。
【0030】
また本発明によれば、特定の波長は、赤外波長、たとえば、750nm以上950nm以下であるので、高価で大型な装置を用いずにパターンを形成することができる。
【0031】
また本発明によれば、光吸収熱変換物質および熱感応性物質は、有機系化合物であるので、光吸収熱変換物質と熱感応性物質とが、均一に分散しやすい。
【0032】
また本発明によれば、レーザ光源から出射された赤外波長のレーザ光を、収束手段によって収束し、その収束したレーザ光を用いる。赤外線を吸収して発熱する光吸収熱変換物質と熱を吸収して反応する熱感応性物質とを含む混合物を塗布した基板に、その収束したレーザ光を用いると、光吸収熱変換物質が発熱し、その熱によって熱感応性物質が化学反応する。したがって、赤外波長のような長波長の光を用いても、パターンを形成することができる。
【0033】
また、光が基板に照射される領域の中心の光強度が最も強く、中心から離れるにしたがって光強度が弱まる。つまり、照射された光の強度分布は、ガウス分布となる。このような光の強度分布がガウス分布になるという性質を用いれば、熱感応性物質が化学反応する領域を光が照射される領域よりはるかに小さくすることができる。したがって、形成されるパターンの幅を非常に小さくすることができる。
【0034】
さらに、光吸収熱変換物質は、熱感応性物質に分散されているので、光が照射された領域にある光吸収熱変換物質は発熱させることができる。したがって、厚み方向に深いところにある熱感応性物質も化学反応させることができるので、高アスペクト比のパターンを形成することができる。
【0035】
以上のことから、高価で大型な装置を用いずに発生することができる長波長の光を用いて、幅が細い微細なパターンであって、高アスペクト比のパターンを形成することができる。
【0036】
また本発明によれば、レーザ光を分割し変調させる偏向制御手段を含む。そうすることによって、レーザ光が分割され、変調されるので、複数のレーザ光を同時に照射することができる。したがって、レーザ光を照射する時間を短縮することができる。
【0037】
また本発明によれば、偏向制御手段は、デジタルマイクロミラーデバイスであるので、マイクロミラーによってレーザ光が反射されて分割されるので、複数のレーザ光を同時に照射することができる。したがって、レーザ光を照射する時間を短縮することができる。
【0038】
また本発明によれば、デジタルマイクロミラーデバイスは、複数のマイクロミラーによってレーザ光を反射させて分割し、分割されたレーザ光の進行方向に対して、マイクロミラーの配置方向が傾斜している。したがって、分割されたレーザ光同士が重ならないので、効率的にレーザ光を照射することができ、レーザ光を照射する時間を短縮することができる。
【0039】
また本発明によれば、偏向制御手段は、液晶素子であるので、レーザ光を分割することができ、複数のレーザ光を同時に照射することができる。したがって、レーザ光を照射する時間を短縮することができる。
【0040】
また本発明によれば、レーザ光源は、複数のレーザ光を同時に照射することができるので、複数のレーザ光を同時に照射することができる。したがって、レーザ光を照射する時間を短縮することができる。
【0041】
また本発明によれば、レーザ光源は、同一平面上に複数の光源を配置して構成するので、複数のレーザ光を同時に照射することができる。したがって、レーザ光を照射する時間を短縮することができる。
【0042】
また本発明によれば、レーザ光源は、垂直共振器型面発光レーザ素子であるので、同一平面上に、容易に複数の光源を配置することができる。したがって、複数のレーザ光を同時に照射することができ、レーザ光を照射する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に本発明を実施の形態によって詳細に説明する。本発明は、その要旨を変えない限り、本実施の形態に限定されるものではない。
【0044】
図1は、本発明であるパターン形成方法の機構を説明する概略図である。本発明であるパターン形成方法は、特定の波長を有する光を吸収して熱を発生する光吸収熱変換物質1とその熱によって化学反応する熱感応性物質2とを含む混合物3が塗布された基板4を用いる。そして、レーザ光源5から出射されたレーザ光6を収束手段7によって収束した後、基板4にレーザ光6を照射する。
【0045】
そうすることによって、レーザ光6で露光されている露光部8にある光吸収熱変換物質1が発熱し、その熱によって熱感応性物質2が化学反応され、露光部8は溶解度などの物性が熱感応性物質2と異なるものとなる。そして、アルカリ溶液などの現像液を用いて、混合物3のみを溶解して除去、または、露光部8のみを溶解して除去することによって、基板上のパターンを形成することができる。
【0046】
また、レーザ光6が混合物3に照射される領域の中心の光強度が最も強く、中心から離れるにしたがって光強度が弱まる。つまり、照射される光の強度分布は、ガウス分布となる。このような光の強度分布がガウス分布になるという性質を用いれば、熱感応性物質が化学反応する領域を光が照射される領域よりはるかに小さくすることができる。したがって、形成されるパターンの幅を非常に小さくすることができる。
【0047】
光吸収熱変換物質1は、光を吸収して発熱する物質であればどのような物質であっても用いることができる。たとえば、GeSbTeのようなGe−Sb−Te合金、Sb金属、Ag−In−Sb−Te合金、Ag−In−Sb−Te−V合金のような合金、ニオブ酸リチウムおよびメチルニトロアニリンなどが挙げられる。
【0048】
光吸収熱変換物質1は、熱感応性物質2に照射することによって熱感応性物質2を化学反応させるような光の波長より長い波長を有する光を吸収して発熱する物質であることが好ましい。光吸収熱変換物質1がそのような物質であると、光を照射することによって、熱感応性物質2が化学反応するのではなく、光が照射されることによって、光吸収熱変換物質1が発熱し、その熱によってのみ、熱感応性物質2が化学反応する。したがって、光の回折限界の影響が小さく、幅のより小さなパターンを形成することができる。
【0049】
さらに、光吸収熱変換物質1が、750nm以上950nm以下である赤外波長の光を吸収して発熱する物質、たとえばCD−R(Compact Disk Recordable)およびDVD
(Digital Versatile Disk)などに用いられている有機色素粉末であることが好ましい。そうすることによって、光吸収熱変換物質1は、ピックアップ用の光源から射出されるレーザ光によって発熱することができるので、高価で大型な装置を用いずにパターンを形成することができる。
【0050】
熱感応性物質2は、加熱することによって、物質の性質が変化して、現像処理によりパターンが形成される物質であればどのようなものも用いることができる。たとえば、従来からリソグラフィ法に用いられてきたポジ型フォトレジストおよびネガ型フォトレジストなどが挙げられる。
【0051】
また、光吸収熱変換物質1と熱感応性物質2とは、均一に分散されていることが好ましい。たとえば、光吸収熱変換物質1および熱感応性物質2の両方を有機系化合物にしたり、光吸収熱変換物質1と熱感応性物質2とを攪拌した直後に基板4に塗布したりする。そうすることによって、光が照射された領域にある光吸収熱変換物質1は発熱させることができ、厚み方向に深いところにある熱感応性物質2も化学反応させることができるので、高アスペクト比のパターンを形成することができる。
【0052】
基板4は、従来のリソグラフィ法で基板として通常用いられているものであればどのようなものでも用いることができる。たとえば、ケイ素、酸化ケイ素、タンタル、アルミニウム、ガリウム−ヒ素、ガラス板のような無機質基板、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などのプラスチック基板、アルミニウムおよびタンタルを蒸着したガラス板、光硬化性樹脂層で被覆したガラス板などが挙げられる。
【0053】
また、光吸収熱変換物質1および熱感応性物質2を含む混合物3を、基板保護層が形成されている基板4に塗布してもよい。そうすることによって、基板4が光吸収熱変換物質1から発生した熱によって損なわれるような場合でも、基板4を保護することができる。基板保護層の材料としては、たとえば、ZnS・SiOのような無機化合物およびポリイミドのような有機化合物などを用いることができる。
【0054】
以上のことから、本発明のパターン形成方法は、高価で大型な装置を用いずに発生することができる長波長の光を用いて、幅が細い微細なパターンであって、高アスペクト比のパターンを形成することができる。
【0055】
本発明であるパターン形成装置は、上記のパターン形成方法を用いた装置である。本発明であるパターン形成装置は、図1に記載の基板4の一箇所にレーザ光を照射するパターン形成方法を用いた装置であってもよいし、基板4の複数箇所にレーザ光を同時に照射するパターン形成装置であってもよい。基板4の複数箇所にレーザ光を同時に照射するパターン形成装置としては、レーザ光を偏向制御手段で分割するパターン形成装置および複数のレーザ光を発生させることができる光源を用いるパターン形成装置などが挙げられる。
まず、レーザ光を偏向制御手段で分割するパターン形成装置について説明する。
【0056】
図2は、本発明であるパターン形成装置11の構成を示す概略図である。パターン形成装置11は、レーザ光源21とデジタルマイクロミラーデバイス22と収束手段23とを含むパターン形成装置である。
【0057】
レーザ光源21は、基板24上に塗布されている光吸収熱変換物質に照射すると、光吸収熱変換物質が発熱する特定の波長を有するレーザ光を出射する。デジタルマイクロミラーデバイス22は、その表面に複数のマイクロミラー25をアレイ状に配列して構成されている。デジタルマイクロミラーデバイス22は、照射されたレーザ光をそれぞれのマイクロミラー25で反射させて、レーザ光を分割する。さらに、デジタルマイクロミラーデバイス22は、マイクロミラー25が設置されている角度を変化させて、分割されたレーザ光の進行方向を制御することができる。デジタルマイクロミラーデバイス22は、偏向制御手段である。収束手段23は、レンズなどで実現され、基板に照射されるレーザ光を収束する。
【0058】
パターン形成装置11は、基板24を載置したステージ26を一定方向に移動させ、レーザ光の照射をオン・オフすることによって、レーザ光を基板24に照射する必要があるときに照射してパターンを形成するラスタ走査方式でパターンを形成する。レーザ光照射のオン・オフは、デジタルマイクロミラーデバイス22に照射されたレーザ光を反射させるマイクロミラー25の角度を変化させることによって行う。
【0059】
以上のことから、パターン形成装置11を用いてパターンを形成すると、複数のレーザ光によって、基板上の複数箇所を同時に照射することができるので、レーザ光の照射時間を短縮することができる。さらに、レーザ光源21から出射されたレーザ光をデジタルマイクロミラーデバイス22で反射させるので、レーザ光源21のレーザが出射される方向が基板に向いている必要がないので、装置を小型化することができる。
【0060】
図3は、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31とマイクロミラー25の配置方向32との関係を説明する概略図である。図3(a)は、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31とマイクロミラー25の配置方向32とが傾斜していない場合の概略図である。図3(b)は、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31とマイクロミラー25の配置方向32とが傾斜している場合の概略図である。
【0061】
図3(a)に示すように、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31とマイクロミラー25の配置方向32とが傾斜されていない場合、デジタルマイクロミラーデバイス22に照射されたレーザ光が、マイクロミラー25によって基板のある方向に反射させると、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31が、マイクロミラー25の配置方向32と一致してしまい、同時に基板に照射できるレーザ光をあまり多くできない。たとえば、縦3個横3個の格子状に配置されたデジタルマイクロミラーデバイス22を用いた場合、マイクロミラー25が9個配置されていても、レーザ光によって基板の3箇所しか同時に照射することができない。これに対して、図3(b)に示すように、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31とマイクロミラー25の配置方向32とが傾斜している場合、デジタルマイクロミラーデバイス22に照射されたレーザ光が、マイクロミラー25によって基板のある方向に反射させると、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31が、マイクロミラー25の配置方向32と一致せず、同時に基板に照射できるレーザ光を多くすることができる。たとえば、縦3個横3個の格子状に配置されたデジタルマイクロミラーデバイス22を用いた場合、デジタルマイクロミラーデバイス22にマイクロミラー25が9個配置されており、その9個のマイクロミラー25によって反射されたレーザ光がそれぞれ基板の別の箇所に照射することができるので、基板の9箇所を同時に照射することができる。したがって、デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31とマイクロミラー25の配置方向32とが傾斜するように、デジタルマイクロミラーデバイス22を設置することによって、基板24のより多くの箇所に同時にレーザ光を照射することができるので、レーザ光の照射時間をより短縮することができる。
【0062】
図4は、本発明であるパターン形成装置12の構成を示す概略図である。パターン形成装置12は、偏向制御手段がデジタルマイクロミラーデバイス22である代わりに、液晶素子27である以外はパターン形成装置11と同様である。液晶素子27は、光透過性を変化させて光の透過および遮断を行う液晶シャッタ28を複数アレイ状に配列して構成されている。液晶素子27は、照射されたレーザ光をそれぞれの液晶シャッタ28に透過させて、レーザ光を分割する。
【0063】
パターン形成装置12は、液晶シャッタ28の光透過性をそれぞれ変化させて、液晶素子27に照射されたレーザ光の透過および遮断することによって、レーザ光照射のオン・オフを行う。
【0064】
以上のことから、パターン形成装置12を用いてパターンを形成すると、複数のレーザ光によって、基板上の複数箇所を同時に照射することができるので、レーザ光の照射時間を短縮することができる。
【0065】
つぎに、複数のレーザ光を発生させることができる光源を用いるパターン形成装置について説明する。
【0066】
図5は、本発明であるパターン形成装置13の構成を示す概略図である。パターン形成装置13は、レーザ光源29と収束手段23とを含むパターン形成装置である。
【0067】
レーザ光源29は、同一平面上に複数の光源30を配置して構成する。したがって、複数のレーザ光を同時に照射することができる。たとえば、垂直共振器型面発光レーザ素子(VCSEL)であると、容易に同一平面上に複数の光源30を配置することができるので好ましい。
【0068】
パターン形成装置13は、複数の光源30をそれぞれオン・オフすることによって、レーザ光照射のオン・オフを行う。
【0069】
したがって、パターン形成装置13を用いてパターンを形成すると、複数のレーザ光によって、基板上の複数箇所を同時に照射することができるので、レーザ光の照射時間を短縮することができる。
【0070】
以下に、本発明であるパターン形成方法を用いた実施例を示す。
実施例は、光吸収熱変換物質1としてCD−Rに使用されている有機色素粉末を用い、熱感応性物質2としてフォトレジスト(クラリアントジャパン社製、AZ5214E)を用いた。このフォトレジストは、波長が450nm以上の長波長の光を照射したときの反応性が、反応性が極大となる波長である380nmを照射したときの4%前後の反応性しかなく、さらに、熱による溶解速度の変化の特性も併せ持つ。
【0071】
有機色素粉末とフォトレジストとを攪拌して、その攪拌された混合物を光ディスク基板に0.8μm以上1.0μm以下の膜厚となるように塗布した。CD用光ディスクドライブを用い、光源が基板をなぞる速度である線速度を3m/秒となるように、混合物が塗布された基板にレーザ光を照射した。レーザ光は、波長850μmで、基板上で約15mWとなる出力である。
【0072】
その後、レジスト剥離液(ラサ工業社製、RS−30PE)を用いて、レーザ光が照射されていない混合物を除去した。
【0073】
基板のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を観察し、その結果を図6に示す。図6は、実施例における基板上に形成されたレジストパターンのSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図6のSEM写真に示すように、基板上に深さ方向の高さが1.0μm、幅が0.552μmのパターンが形成された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明であるパターン形成方法の機構を説明する概略図である。
【図2】本発明であるパターン形成装置11の構成を示す概略図である。
【図3】デジタルマイクロミラーデバイス22によって分割されたレーザ光の進行方向31とマイクロミラー25の配置方向32との関係を説明する概略図である。
【図4】本発明であるパターン形成装置12の構成を示す概略図である。
【図5】本発明であるパターン形成装置13の構成を示す概略図である。
【図6】実施例における基板上に形成されたレジストパターンのSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図7】従来のパターン形成方法によって、パターンを形成する機構を示す模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1 光吸収熱変換物質
2 熱感応性物質
3 混合物
4 基板
5 レーザ光源
6 レーザ光
7 収束手段
8 露光部
11,12,13 パターン形成装置
21,29 レーザ光源
22 デジタルマイクロミラーデバイス
23 収束手段
24 基板
25 マイクロミラー
26 ステージ
27 液晶素子
28 液晶シャッタ
30 光源
31 進行方向
32 配置方向
101 パターニング材料
102 短波長の光
103 反応領域
104 光吸収熱変換層
105 長波長の光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、
特定の波長を有する光を吸収して熱を発生する光吸収熱変換物質と前記熱によって化学反応する熱感応性物質とを含む混合物を塗布した基板に、前記特定の波長を有するレーザ光を照射して前記混合物を露光することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記特定の波長は、前記熱感応性物質に照射することによって前記熱感応性物質を化学反応させるような光の波長より長い波長であることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記特定の波長は、赤外波長であることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記特定の波長は、750nm以上950nm以下であることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記光吸収熱変換物質および前記熱感応性物質は、有機系化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のパターン形成方法。
【請求項6】
赤外線を吸収して発熱する光吸収熱変換物質と熱を吸収して反応する熱感応性物質とを含む混合物を塗布した基板上にパターンを形成するパターン形成装置であって、
赤外波長のレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光を収束する収束手段とを含むことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項7】
前記レーザ光を分割し変調させる偏向制御手段を含むことを特徴とする請求項6記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記偏向制御手段は、デジタルマイクロミラーデバイスであることを特徴とする請求項7記載のパターン形成装置。
【請求項9】
前記デジタルマイクロミラーデバイスは、複数のマイクロミラーによって前記レーザ光を反射させて分割し、分割されたレーザ光の進行方向に対して、マイクロミラーの配置方向が傾斜していることを特徴とする請求項8記載のパターン形成装置。
【請求項10】
前記偏向制御手段は、液晶素子であることを特徴とする請求項7記載のパターン形成装置。
【請求項11】
前記レーザ光源は、複数のレーザ光を同時に照射することができることを特徴とする請求項6記載のパターン形成装置。
【請求項12】
前記レーザ光源は、同一平面上に複数の光源を配置して構成することを特徴とする請求項6または11記載のパターン形成装置。
【請求項13】
前記レーザ光源は、垂直共振器型面発光レーザ素子であることを特徴とする請求項6〜12のいずれか1つに記載のパターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−153998(P2006−153998A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341043(P2004−341043)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】