説明

パターン形成方法及び被覆膜形成用材料

【課題】ダブルパターニング法における工程数を低減できる新規なパターン形成方法、及び該パターン形成方法に好適に用いられる被覆膜形成用材料を提供する。
【解決手段】支持体1上に第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜2を形成し、第一のレジスト膜2を選択的に露光し、現像して複数の第一のレジストパターン3を形成し、第一のレジストパターン3の表面にそれぞれ水溶性樹脂膜からなる被覆膜4を形成して複数の被覆パターン5を形成し、該被覆パターン5が形成された支持体1上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第二のレジスト膜6を形成し、第二のレジスト膜6を選択的に露光し、現像することにより、複数の被覆パターン5と、第二のレジスト膜6に形成された第二のレジストパターン7とからなるパターンを支持体1上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルパターニング法によりパターンを形成するパターン形成方法、及び該パターン形成方法に好適に用いられる被覆膜形成用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の上に微細なパターンを形成し、これをマスクとしてエッチングを行うことによって該パターンの下層を加工する技術(パターン形成技術)は、半導体産業のIC作成などに広く採用され、大きな注目を浴びている。
【0003】
微細パターンは、通常、有機材料からなり、リソグラフィー法やナノインプリント法などの技術によって形成される。例えばリソグラフィー法においては、基板などの支持体の上に、樹脂などの基材成分を含むレジスト組成物からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介して、光、電子線などの放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、上記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト組成物をポジ型、露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト組成物をネガ型という。そして、上記レジストパターンをマスクとして、基板をエッチングにより加工する工程を経て半導体素子などが製造される。
【0004】
近年、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されており、例えばArFエキシマレーザーを用いたリソグラフィーにより、45nmレベルの解像性でのパターン形成が可能となっている。また、解像性のさらなる向上のために、これらエキシマレーザーより短波長のFエキシマレーザー、電子線、EUV(極紫外線)やX線などについても検討が行われている。
【0005】
レジスト組成物には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性などのリソグラフィー特性が求められる。このような要求を満たすレジスト組成物として、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている(特許文献1参照)。例えばポジ型の化学増幅型レジストは、通常、基材成分として、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する樹脂を含有しており、レジストパターン形成時に、露光によって酸発生剤から酸が発生すると、露光部がアルカリ可溶性となる。
【0006】
解像性のさらなる向上のための手法の1つとして、露光機の対物レンズと試料との間に、空気よりも高屈折率の液体(液浸媒体)を介在させて露光(浸漬露光)を行うリソグラフィー法、いわゆる液浸リソグラフィー(Liquid Immersion Lithography。以下、液浸露光ということがある。)が知られている(非特許文献1参照)。
【0007】
液浸露光によれば、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様の高解像性を達成でき、しかも焦点深度幅の低下もないといわれている。また、液浸露光は、既存の露光装置を応用して行うことができる。そのため、液浸露光は、低コストで、高解像性で、かつ焦点深度幅にも優れるレジストパターンの形成を実現できると予想され、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コスト的にも、解像度などのリソグラフィー特性的にも、半導体産業に多大な効果を与えるものとして大変注目されている。
【0008】
液浸露光は、あらゆるパターン形状の形成において有効であり、さらに、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることも可能であるとされている。現在、液浸露光技術としては、主に、ArFエキシマレーザーを光源とする技術が活発に研究されている。また、現在、液浸媒体としては、主に水が検討されている。
【0009】
最近、新しく提案されているリソグラフィー技術の1つとして、パターニングを2回以上行ってパターンを形成するダブルパターニング法がある(非特許文献2、3参照)。このダブルパターニング法によれば、1回のパターニングで形成されるパターンよりも微細なパターンが形成できるとされている。例えば非特許文献2には、図2に示すような方法が記載されている。
【0010】
すなわち、まず、図2(a)に示すように、基板101と下層膜102とハードマスク103とが積層された積層体を用意する。次に、ハードマスク103上にレジスト膜を設け、該レジスト膜を、図2(b)に示すように、マスク105を介して選択的に露光し、現像することにより、スペース幅d/4のトレンチパターンが複数、ピッチdで配置されたレジストパターン104を形成する。次に、レジストパターン104をマスクとしてハードマスク103のエッチングを行った後、残ったレジストパターン104を除去する。これにより、図2(c)に示すように、レジストパターンが転写されたハードマスク103’が得られる。次に、図2(d)に示すように、マスク105の位置をシフトさせ、また、ハードマスク103’上にレジスト材料を塗布することにより、ハードマスク103’内の空隙を充填する、ハードマスク103’の厚さよりも厚い膜厚のレジスト膜を形成する。そして、該レジスト膜を、シフトさせたマスク105を介して選択的に露光し、現像してレジストパターン106を形成する。次に、レジストパターン106をマスクとしてハードマスク103’のエッチングを行った後、残ったレジストパターン106を除去する。これにより、図2(e)に示すように、スペース幅d/4のトレンチパターンが複数、ピッチd/2で配置されたパターンが転写されたハードマスク103”が得られる。そして、ハードマスク103”をマスクとしてエッチングを行うことにより、下層膜102にハードマスク103”のパターンが転写され、使用したマスク105の1/2のピッチのパターン102’が形成される。
【0011】
このように、ダブルパターニング法によれば、同じ露光波長の光源を用いても、また、同じレジスト組成物を用いても、より高解像性のレジストパターンを形成することが可能である。また、ダブルパターニング法は、既存の露光装置を用いて行うことができる。
【特許文献1】特開2003−241385号公報
【非特許文献1】オプトロニクス(OPTRONICS)N0.4(2003年).
【非特許文献2】プロシーディングスオブエスピーアイイ(Proceedings of SPIE)第5256巻、第985〜994頁(2003年).
【非特許文献3】プロシーディングスオブエスピーアイイ(Proceedings of SPIE)第6153巻、第615301−1〜19頁(2006年).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のダブルパターニング法においては、通常、基板上に下層膜を設ける必要があり、また、基板上にパターンを形成するためには、レジスト膜のパターニングを少なくとも2回、その下層のハードマスクのエッチングを少なくとも2回行う必要がある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ダブルパターニング法における工程数を低減できる新規なパターン形成方法、及び該パターン形成方法に好適に用いられる被覆膜形成用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討を重ねた。その結果、第一のレジストパターンの表面に被覆膜を形成することにより、ダブルパターニング法における工程数を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0015】
本発明の第一の態様は、化学増幅型レジスト組成物を用いてパターンを形成するパターン形成方法であって、支持体上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜を形成する工程と、前記第一のレジスト膜を、第一のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第一のレジストパターンを形成する工程と、前記第一のレジストパターンの表面に、水溶性樹脂膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成する工程と、前記被覆パターンが形成された前記支持体上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第二のレジスト膜を形成する工程と、前記第二のレジスト膜を、第二のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第二のレジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法である。
【0016】
本発明の第二の態様は、水溶性樹脂及び水溶性架橋剤を含有してなる水溶液から構成される被覆膜形成用材料であって、前記第一の態様のパターン形成方法において、前記被覆膜を形成するために用いられることを特徴とする被覆膜形成用材料である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダブルパターニング法における工程数を低減できる新規なパターン形成方法、及び該パターン形成方法に好適に用いられる被覆膜形成用材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
≪パターン形成方法≫
本発明のパターン形成方法は、化学増幅型レジスト組成物を用いるパターン形成方法である。化学増幅型レジスト組成物としては、特に制限はなく、これまで化学増幅型レジスト組成物として提案されている多数の化学増幅型レジスト組成物の中から、使用する露光光源、リソグラフィー特性などに応じて適宜選択して用いることができる。化学増幅型レジスト組成物は、ネガ型レジスト組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物であってもよく、好ましくはポジ型レジスト組成物である。
【0019】
化学増幅型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する基材成分(A)(以下、(A)成分という。)及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分という。)が有機溶剤(S)(以下、(S)成分という。)に溶解してなるものが一般的である。
【0020】
ここで、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのパターンを形成しやすい。
【0021】
前記分子量が500以上の有機化合物は、分子量が500以上2000以下の低分子量の有機化合物(以下、低分子化合物という。)と、分子量が2000より大きい高分子量の樹脂(重合体)とに大別される。前記低分子化合物としては、通常、非重合体が用いられる。樹脂(重合体)の場合は、「分子量」としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、単に「樹脂」という場合は、分子量が2000より大きい樹脂を示すものとする。
【0022】
(A)成分としては、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する低分子化合物であってもよく、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する樹脂であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0023】
(A)成分としては、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている有機化合物を1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
化学増幅型レジスト組成物がネガ型レジスト組成物である場合、(A)成分としては、酸の作用によりアルカリ溶解性が減少する基材成分が用いられるもともに、当該ネガ型レジスト組成物にさらに架橋剤が配合される。かかるネガ型レジスト組成物においては、露光により(B)成分から酸が発生すると、当該酸の作用により(A)成分と架橋剤との間で架橋が起こり、(A)成分がアルカリ可溶性からアルカリ不溶性へと変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ネガ型レジスト組成物を基板上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ不溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ可溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することができる。
【0025】
ネガ型レジスト組成物の(A)成分としては、通常、アルカリ可溶性樹脂が用いられ、該アルカリ可溶性樹脂としては、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、及びα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸の低級アルキルエステルの中から選ばれる1種以上から誘導される単位を有する樹脂が、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。なお、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸は、カルボキシ基が結合するα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸と、このα位の炭素原子にヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基)が結合しているα−ヒドロキシアルキルアクリル酸の一方又は両方を示す。
【0026】
架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基又はアルコキシメチル基を有するグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤を用いると、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。架橋剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。
【0027】
化学増幅型レジスト組成物がポジ型レジスト組成物である場合、(A)成分としては、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大する基材成分が用いられる。かかるポジ型レジスト組成物は、露光前はアルカリ不溶性であり、レジストパターン形成時に、露光により(B)成分から酸が発生すると、当該酸の作用により酸解離性溶解抑制基が解離し、(A)成分がアルカリ可溶性へと変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型レジスト組成物を基板上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することができる。
【0028】
ポジ型レジスト組成物の(A)成分としては、酸解離性溶解抑制基を有するものであればよく、下記(A−1)成分及び/又は(A−2)成分がより好ましい。親水性基は酸解離性溶解抑制基を兼ねていてもよい。
・(A−1)成分:酸解離性溶解抑制基を有する樹脂。
・(A−2)成分:酸解離性溶解抑制基を有する低分子化合物。
以下、(A−1)成分及び(A−2)成分の好ましい態様をより具体的に説明する。
【0029】
[(A−1)成分]
(A−1)成分としては、酸解離性溶解抑制基を有する構成単位を有する樹脂が好ましい。
【0030】
当該樹脂中の、前記酸解離性溶解抑制基を有する構成単位の割合は、当該樹脂を構成する全構成単位の合計量に対し、20〜80モル%であることが好ましく、20〜70モル%がより好ましく、30〜60モル%がさらに好ましい。
【0031】
(A−1)成分として、より具体的には、酸解離性溶解抑制基を有するノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン系樹脂、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位と(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とを含有する共重合樹脂などが好適に用いられる。
【0032】
なお、本明細書において、「(α−低級アルキル)アクリル酸」とは、アクリル酸(CH=CH−COOH)及びα−低級アルキルアクリル酸の一方又は両方を示す。α−低級アルキルアクリル酸は、アクリル酸におけるカルボニル基が結合している炭素原子に結合した水素原子が、低級アルキル基で置換されたものを示す。「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」は「(α−低級アルキル)アクリル酸」のエステル誘導体であり、アクリル酸エステル及びα−低級アルキルアクリル酸エステルの一方又は両方を示す。「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性2重結合が開裂して形成される構成単位であり、以下(α−低級アルキル)アクリレート構成単位ということがある。「(α−低級アルキル)アクリレート」は、アクリレート及びα−低級アルキルアクリレートの一方又は両方を示す。「ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン又はα―低級アルキルヒドロキシスチレンのエチレン性2重結合が開裂して形成される構成単位であり、以下ヒドロキシスチレン単位ということがある。「α−低級アルキルヒドロキシスチレン」は、フェニル基が結合する炭素原子に低級アルキル基が結合していることを示す。
【0033】
「α−低級アルキルアクリル酸エステルから誘導される構成単位」及び「α−低級アルキルヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」において、α位に結合している低級アルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基であり、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
【0034】
(A−1)成分として好適な樹脂成分としては、特に限定するものではないが、例えば、下記構成単位(a1)のようなフェノール性水酸基を有する単位と、下記構成単位(a2)及び下記構成単位(a3)の中から選ばれる少なくとも1つのような酸解離性溶解抑制基を有する単位と、必要に応じて用いられる下記構成単位(a4)のようなアルカリ不溶性の単位とを有する樹脂成分(以下、(A−11)成分ということがある。)が挙げられる。当該(A−11)成分においては、露光によって酸発生剤から発生する酸の作用によって、構成単位(a2)及び/又は構成単位(a3)において開裂が生じ、これによって、初めはアルカリ現像液に対して不溶性であった樹脂において、そのアルカリ溶解性が増大する。その結果、露光・現像により、化学増幅型のポジ型のパターンを形成することができる。
【0035】
・・構成単位(a1)
構成単位(a1)は、フェノール性水酸基を有する単位であって、好ましくは下記一般式(1)で表されるヒドロキシスチレンから誘導される単位である。
【化1】

[式(1)中、Rは水素原子又は低級アルキル基を示す。]
【0036】
式(1)中、Rは水素原子又は低級アルキル基である。低級アルキル基については上記の通りであり、特に水素原子又はメチル基が好ましい。Rの説明は以下同様である。−OHのベンゼン環への結合位置は、特に限定されるものではないが、式中に記載の4の位置(パラ位)が好ましい。
【0037】
構成単位(a1)は、パターンを形成する点からは、(A−11)成分中に40〜80モル%、好ましくは50〜75モル%含まれることが好ましい。40モル%以上とすることにより、アルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができ、パターン形状の改善効果も得られる。80モル%以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0038】
また、パターン上に被覆膜が形成される点からは、構成単位(a1)は、(A−11)成分中に、50モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上である。上限は特に限定されないが80モル%以下である。上記の範囲であると、フェノール性水酸基の存在により、パターン上に良好な被覆膜が形成でき、良好な形状のパターンを得ることができる。またパターンと被覆膜との密着性が良好となる。
【0039】
・・構成単位(a2)
構成単位(a2)は、酸解離性溶解抑制基を有する構成単位であって、下記一般式(2)で表されるものである。
【化2】

[式(2)中、Rは上記と同じであり、Xは酸解離性溶解抑制基を示す。]
【0040】
酸解離性溶解抑制基Xは、第3級炭素原子を有するアルキル基であって、当該第3級アルキル基の第3級炭素原子がエステル基[−C(O)O−]に結合している酸離性溶解抑制基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基のような環状アセタール基などである。このような酸解離性溶解抑制基Xは、例えば化学増幅型のポジ型レジスト組成物において用いられているものの中から上記以外のものも任意に使用することができる。
【0041】
構成単位(a2)としては、例えば下記一般式(3)で表されるものなどが好ましいものとして挙げられる。
【化3】

[式(3)中、Rは上記と同じであり、R11、R12、R13は、それぞれ独立に低級アルキル基(直鎖、分岐鎖のいずれでもよい。炭素数は好ましくは1〜5である。)である。あるいは、R11、R12、R13のうち、R11が低級アルキル基であり、R12とR13とが結合して単環又は多環の脂肪族環式基を形成していてもよい。該脂肪族環式基の炭素数は好ましくは5〜12である。]
【0042】
ここで、「脂肪族」とは、当該基又は化合物が芳香族性を有さないことを意味し、「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基又は多環式基を意味する。
【0043】
11、R12、R13が脂肪族環式基を有さない場合には、例えばR11、R12、R13がいずれもメチル基であるものが好ましい。
【0044】
11、R12、R13のいずれかが脂肪族環式基を有する場合において、脂肪族環式基が単環の脂肪族環式基である場合は、構成単位(a2)として、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基を有するものなどが好ましい。
【0045】
脂肪族環式基が多環の脂環式基である場合、構成単位(a2)として好ましいものとしては、例えば下記一般式(4)で表されるものを挙げることができる。
【化4】

[式(4)中、Rは上記と同じであり、R14は低級アルキル基(直鎖、分岐鎖のいずれでもよい。炭素数は好ましくは1〜5である。)である。]
【0046】
また、多環の脂肪族環式基を含む酸解離性溶解抑制基を有するものとして、下記一般式(5)で表されるものも好ましい。
【化5】

[式(5)中、Rは上記と同じであり、R15、R16は、それぞれ独立に低級アルキル基(直鎖、分岐鎖のいずれでもよい。炭素数は好ましくは1〜5である。)である。]
【0047】
構成単位(a2)は、(A−11)成分中に、5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%、さらに好ましくは10〜35モル%含まれることが好ましい。
【0048】
・・構成単位(a3)
構成単位(a3)は、酸解離性溶解抑制基を有する構成単位であって、下記一般式(6)で表されるものである。
【化6】

[式(6)中、Rは上記と同じであり、X’は酸解離性溶解抑制基を示す。]
【0049】
酸解離性溶解抑制基X’は、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基などの第3級アルキルオキシカルボニル基;tert−ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチルオキシカルボニルエチル基などの第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基;tert−ブチル基、tert−アミル基などの第3級アルキル基;テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などの環状アセタール基;エトキシエチル基、メトキシプロピル基などのアルコキシアルキル基などである。
【0050】
中でも、tert―ブチルオキシカルボニル基、tert―ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基が好ましい。
【0051】
酸解離性溶解抑制基X’は、例えば化学増幅型のポジ型レジスト組成物において用いられているものの中から上記以外のものも任意に使用することができる。
【0052】
一般式(6)において、ベンゼン環に結合している基(−OX’)の結合位置は特に限定するものではないが式中に示した4の位置(パラ位)が好ましい。
【0053】
構成単位(a3)は、(A−11)成分中に、5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%、さらに好ましくは10〜35モル%含まれることが好ましい。
【0054】
・・構成単位(a4)
構成単位(a4)は、アルカリ不溶性の構成単位であって、下記一般式(7)で表されるものである。
【化7】

[式(7)中、Rは上記と同じであり、R4’は低級アルキル基を示し、n’は0〜3の整数を示す。]
【0055】
なお、R4’の低級アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、炭素数は好ましくは1〜5とされる。n’は0〜3の整数を示すが、0であることが好ましい。
【0056】
構成単位(a4)は、(A−11)成分中、1〜40モル%、好ましくは5〜25モル%とされる。1モル%以上とすることにより、形状の改善(特に膜減りの改善)の効果が高くなり、40モル%以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0057】
(A−11)成分においては、前記構成単位(a1)と、構成単位(a2)及び構成単位(a3)の中から選ばれる少なくとも1つの構成単位とを必須としつつ、任意に構成単位(a4)を含んでもよい。また、これらの各構成単位を全て有する共重合体を用いてもよいし、これらの構成単位を1つ以上有する重合体同士の混合物としてもよい。又はこれらを組み合わせてもよい。
【0058】
また、(A−11)成分は、前記構成単位(a1)、(a2)、(a3)、(a4)以外のものを任意に含むことができるが、これらの構成単位の割合が80モル%以上、好ましくは90モル%以上(100モル%が最も好ましい)であることが好ましい。
【0059】
特に、「前記構成単位(a1)及び(a3)を有する共重合体のいずれか1種、又は該共重合体の2種以上の混合物」、又は、「構成単位(a1)、(a2)、及び(a4)を有する共重合体のいずれか1種、又は該共重合体の2種以上の混合物」を、それぞれ用いるか又は混合した態様が、簡便に効果が得られるため最も好ましい。また、耐熱性向上の点でも好ましい。
【0060】
特には、第3級アルキルオキシカルボニル基で保護したポリヒドロキシスチレンと、1−アルコキシアルキル基で保護したポリヒドロキシスチレンとの混合物であることが好ましい。かかる混合を行う場合、各重合体の混合比(質量比)(第3級アルキルオキシカルボニル基で保護したポリヒドロキシスチレン/1−アルコキシアルキル基で保護したポリヒドロキシスチレン)は、例えば1/9〜9/1、好ましくは2/8〜8/2とされ、さらに好ましくは2/8〜5/5である。
【0061】
(A−1)成分として好適な上記(A−11)成分以外の樹脂成分として、特に、耐エッチング性がより低いパターンを形成できるという点で、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂を含む樹脂成分((α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂)が好ましく、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂からなる樹脂成分がより好ましい。
【0062】
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂においては、酸解離性溶解抑制基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a5)を有する樹脂が好ましい。α−低級アルキル基については上記と同様である。
【0063】
構成単位(a5)の酸解離性溶解抑制基は、露光前の(A−12)成分全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有すると同時に、露光後に(B)成分から発生した酸の作用により解離し、この(A−12)成分全体をアルカリ可溶性へ変化させる基である。
【0064】
また、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分においては、構成単位(a5)における酸解離性溶解抑制基が、(B)成分から発生した酸により解離すると、カルボン酸を生成する。この生成したカルボン酸の存在により、レジストパターン上に形成される被覆膜との密着性が向上する。
【0065】
酸解離性溶解抑制基としては、例えばArFエキシマレーザーのレジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。一般的には、(α−低級アルキル)アクリル酸のカルボキシ基と環状又は鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、あるいは環状又は鎖状のアルコキシアルキル基などが広く知られている。
【0066】
ここで、「第3級アルキルエステルを形成する基」とは、アクリル酸のカルボキシ基の水素原子と置換することによりエステルを形成する基である。すなわち、アクリル酸エステルのカルボニルオキシ基[−C(O)−O−]の末端の酸素原子に、鎖状又は環状の第3級アルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
【0067】
なお、第3級アルキル基とは、第3級炭素原子を有するアルキル基である。鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基としては、例えばtert−ブチル基、tert−アミル基などが挙げられる。環状の第3級アルキルエステルを形成する基としては、後述する「脂環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示するものと同様のものが挙げられる。
【0068】
「環状又は鎖状のアルコキシアルキル基」は、カルボキシ基の水素原子と置換してエステルを形成する。すなわち、アクリル酸エステルのカルボニルオキシ基[−C(O)−O―]の末端の酸素原子に前記アルコキシアルキル基が結合している構造を形成する。かかる構造においては、酸の作用により、酸素原子とアルコキシアルキル基との間で結合が切断される。
【0069】
このような環状又は鎖状のアルコキシアルキル基としては、1−メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−イソプロポキシエチル、1−シクロヘキシルオキシエチル基、2−アダマントキシメチル基、1−メチルアダマントキシメチル基、4−オキソ−2−アダマントキシメチル基、1−アダマントキシエチル基、2−アダマントキシエチル基などが挙げられる。
【0070】
構成単位(a5)としては、環状、特に、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を含む構成単位が好ましい。ここで、「脂肪族」及び「脂肪族環式基」は、上記で定義した通りである。
【0071】
脂肪族環式基としては、単環又は多環のいずれでもよく、例えばArFレジストなどにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。耐エッチング性の点からは多環の脂環式基が好ましい。また、脂環式基は炭化水素基であることが好ましく、特に飽和の炭化水素基(脂環式基)であることが好ましい。
【0072】
単環の脂環式基としては、例えば、シクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。多環の脂環式基としては、例えばビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。
【0073】
具体的には、単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。多環の脂環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの中でもアダマンタンから1個の水素原子を除いたアダマンチル基、ノルボルナンから1個の水素原子を除いたノルボルニル基、トリシクロデカンからの1個の水素原子を除いたトリシクロデカニル基、テトラシクロドデカンから1個の水素原子を除いたテトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
【0074】
より具体的には、構成単位(a5)は、下記一般式(1’)〜(3’)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位であって、そのエステル部に上記した環状のアルコキシアルキル基を有する単位、具体的には2−アダマントキシメチル基、1−メチルアダマントキシメチル基、4−オキソ−2−アダマントキシメチル基、1−アダマントキシエチル基、2−アダマントキシエチル基などの置換基を有していてもよい脂肪族多環式アルキルオキシ低級アルキル(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0075】
【化8】

[式(1’)中、Rは上記と同じであり、Rは低級アルキル基を示す。]
【0076】
【化9】

[式(2’)中、Rは上記と同じであり、R及びRはそれぞれ独立に低級アルキル基を示す。]
【0077】
【化10】

[式(3’)中、Rは上記と同じであり、Rは第3級アルキル基を示す。]
【0078】
一般式(1’)〜(3’)中、Rの水素原子又は低級アルキル基としては、上述したアクリル酸エステルのα位に結合している水素原子又は低級アルキル基の説明と同様である。
【0079】
の低級アルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基であることが工業的に入手が容易であることから好ましい。
【0080】
及びRの低級アルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。中でも、R及びRが共にメチル基である場合が工業的に好ましい。具体的には、2−(1−アダマンチル)−2−プロピルアクリレートから誘導される構成単位を挙げることができる。
【0081】
は鎖状の第3級アルキル基又は環状の第3級アルキル基である。鎖状の第3級アルキル基としては、例えばtert−ブチル基やtert−アミル基が挙げられ、tert−ブチル基が工業的に好ましい。環状の第3級アルキル基としては、前述の「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示したものと同じであり、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基などを挙げることができる。
【0082】
また、基−COORは、式中に示したテトラシクロドデカニル基の3又は4の位置に結合していてよいが、結合位置は特定できない。また、アクリレート構成単位のカルボキシ基残基も同様に式中に示した8又は9の位置に結合していてよい。
【0083】
構成単位(a5)は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分中、構成単位(a5)の割合は、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%であることが好ましく、30〜50モル%がより好ましく、35〜45モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによってパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0084】
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂は、前記構成単位(a5)に加えてさらに、ラクトン環を有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a6)を有することが好ましい。構成単位(a6)は、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、現像液との親水性を高めたりする上で有効なものである。また、パターンとの密着性が高い被覆膜を形成することができる。
【0085】
構成単位(a6)において、α位の炭素原子に結合しているのは、低級アルキル基又は水素原子である。α位の炭素原子に結合している低級アルキル基は、構成単位(a5)の説明と同様であって、好ましくはメチル基である。
【0086】
構成単位(a6)としては、アクリル酸エステルのエステル側鎖部にラクトン環からなる単環式基又はラクトン環を有する多環の環式基が結合した構成単位が挙げられる。なお、このときラクトン環とは、−O−C(O)−構造を含む1つの環を示し、これを1つの目の環として数える。したがって、ここではラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
【0087】
構成単位(a6)としては、例えば、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた単環式基や、ラクトン環含有ビシクロアルカンから水素原子1つを除いた多環式基を有するものなどが挙げられる。
【0088】
構成単位(a6)として、より具体的には、例えば以下の一般式(4’)〜(7’)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0089】
【化11】

[式(4’)中、Rは上記と同じであり、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は低級アルキル基を示す。]
【0090】
【化12】

[式(5’)中、Rは上記と同じであり、mは0又は1である。]
【0091】
【化13】

[式(6’)中、Rは上記と同じである。]
【0092】
【化14】

[式(7’)中、Rは上記と同じである。]
【0093】
一般式(4’)中において、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は低級アルキル基であり、好ましくは水素原子である。R、Rにおいて、低級アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
【0094】
一般式(4’)〜(7’)で表される構成単位の中でも、一般式(4’)で表される構成単位が安価で工業的に好ましく、一般式(4’)で表される構成単位の中でもRがメチル基、R及びRが水素原子であり、メタクリル酸エステルとγ−ブチロラクトンとのエステル結合の位置が、そのラクトン環上のα位であるα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンであることが最も好ましい。
【0095】
構成単位(a6)は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分中、構成単位(a6)の割合は、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましく、30〜45モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによりリソグラフィー特性が向上し、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0096】
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分は、前記構成単位(a5)に加えて、又は前記構成単位(a5)及び(a6)に加えてさらに、極性基含有多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a7)を有することが好ましい。構成単位(a7)により、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分全体の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
【0097】
構成単位(a7)において、α位の炭素原子に結合しているのは、低級アルキル基又は水素原子である。α位の炭素原子に結合している低級アルキル基は、構成単位(a5)の説明と同様であって、好ましくはメチル基である。極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アミノ基などが挙げられ、特に水酸基が好ましい。多環式基としては、前述の(a5)単位である「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示した脂肪族環式基のうち、多環式のものから適宜選択して用いることができる。
【0098】
構成単位(a7)としては、下記一般式(8’)〜(9’)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0099】
【化15】

[式(8’)中、Rは上記と同じであり、nは1〜3の整数である。]
【0100】
一般式(8’)中のRは上記一般式(1’)〜(3’)中のRと同様である。これらの中でも、nが1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0101】
【化16】

[式(9’)中、Rは上記と同じであり、kは1〜3の整数である。]
【0102】
これらの中でも、kが1であるものが好ましい。また、シアノ基がノルボルナニル基の5位又は6位に結合していることが好ましい。
【0103】
構成単位(a7)は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分中、構成単位(a7)の割合は、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜50モル%が好ましく、15〜40モル%がより好ましく、20〜35モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによりリソグラフィー特性が向上し、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0104】
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分においては、これらの構成単位(a5)〜(a7)の合計が、全構成単位の合計に対し、70〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%であることがより好ましい。
【0105】
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分は、前記構成単位(a5)〜(a7)以外の構成単位(a8)を含んでいてもよい。構成単位(a8)としては、上述の構成単位(a5)〜(a7)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではない。
【0106】
例えば多環の脂肪族炭化水素基を含み、かつ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。該多環の脂肪族炭化水素基は、例えば、前述の「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示した脂肪族環式基のうち、多環式のものから適宜選択して用いることができる。特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、イソボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。構成単位(a8)としては、酸非解離性基であることが最も好ましい。
【0107】
構成単位(a8)として、具体的には、下記(10)〜(12)の構造のものを例示することができる。
【0108】
【化17】

[式(10)中、Rは上記と同じである。]
【0109】
【化18】

[式(11)中、Rは上記と同じである。]
【0110】
【化19】

[式(12)中、Rは上記と同じである。]
【0111】
構成単位(a8)を有する場合、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分中、構成単位(a8)の割合は、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分を構成する全構成単位の合計に対して、1〜25モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましい。
【0112】
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分は、少なくとも構成単位(a5)、(a6)、及び(a7)を有する共重合体であることが好ましい。かかる共重合体としては、例えば、上記構成単位(a5)、(a6)、及び(a7)からなる共重合体、上記構成単位(a5)、(a6)、(a7)、及び(a8)からなる共重合体などが例示できる。
【0113】
(A−11)成分は、前記構成単位に係るモノマーを公知の方法で重合することにより得ることができる。例えば、各構成単位に係るモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合などによって重合させることによって得ることができる。
【0114】
(A−1)成分は、質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算質量平均分子量、以下同様。)30000以下であることが好ましく、20000以下であることが好ましく、12000以下であることがさらに好ましい。下限値は、2000超であればよく、パターン倒れの抑制、解像性向上等の点で、好ましくは4000以上、さらに好ましくは5000以上とされる。
【0115】
[(A−2)成分]
(A−2)成分としては、分子量が500以上2000以下であって、上述の(A−1)成分の説明で例示したような酸解離性溶解抑制基X又はX’を有する低分子化合物が好ましい。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基X又はX’で置換したものが挙げられる。
【0116】
(A−2)成分は、例えば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
【0117】
かかる低分子量フェノール化合物としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール又はキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2、3、4核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。
なお、酸解離性溶解抑制基も特に限定されず、上記したものが挙げられる。
【0118】
<(B)成分>
(B)成分としては、従来、化学増幅型レジストにおける酸発生剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0119】
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートが挙げられる。中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が好ましい。
【0120】
オキシムスルホネート化合物の例としては、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0121】
ジアゾメタン系酸発生剤の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンなどが挙げられる。
【0122】
(B)成分として、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対し、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部とされる。上記範囲の下限値以上とすることにより充分なパターン形成が行われ、上記範囲の上限値以下であれば溶液の均一性が得られやすく、良好な保存安定性が得られる。
【0123】
<任意成分>
化学増幅型レジスト組成物には、パターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という。)を配合させることができる。この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いればよいが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
【0124】
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキル又はアルキルアルコールのアミンをいい、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような第3級アルカノールアミンが好ましい。
【0125】
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0126】
また、化学増幅型レジスト組成物には、前記(D)成分との配合による感度劣化を防ぎ、またパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という。)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
【0127】
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
【0128】
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
【0129】
(E)成分は、(A)成分100質量部当り、通常0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0130】
化学増幅型レジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えば該レジスト組成物の塗布膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜含有させることができる。
【0131】
化学増幅型レジスト組成物は、材料を有機溶剤(S)(以下、(S)成分という。)に溶解させて製造することができる。(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0132】
具体例としては、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。これらの中でも、PGMEA、EL、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0133】
(S)成分の使用量は特に限定しないが、化学増幅型レジスト組成物が、支持体上に塗布可能な濃度の液体となる量が用いられる。
【0134】
本発明のパターン形成方法は、支持体上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜を形成する工程(以下、膜形成工程(1)という。)と、前記第一のレジスト膜を、第一のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第一のレジストパターンを形成する工程(以下、パターニング工程(1)という。)と、前記第一のレジストパターン表面に、水溶性樹脂膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成する工程(以下、被覆工程という。)と、前記被覆パターンが形成された前記支持体上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第二のレジスト膜を形成する工程(以下、膜形成工程(2)という。)と、前記第二のレジスト膜を、第二のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像してパターンを形成する工程(以下、パターニング工程(2)という。)と、を含む。
【0135】
以下、本発明のパターン形成方法について、図1を用いて好ましい実施形態を説明する。本実施形態は、第一及び二の化学増幅型レジスト組成物としてポジ型レジスト組成物を用いた例である。
【0136】
本実施形態においては、まず、図1(a)に示すように、支持体1上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜2を形成する。次に、図1(b)に示すように、第一のレジスト膜2を選択的に露光し、現像して複数の第一のレジストパターン3を形成する。次に、図1(c)に示すように、複数の第一のレジストパターン3の表面に、それぞれ、水溶性樹脂膜からなる被覆膜4を形成して複数の被覆パターン5を形成する。次に、図1(d)に示すように、複数の被覆パターン5が形成された支持体1上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布し、複数の被覆パターン5間の空隙を充填する第二のレジスト膜6を形成する。次に、図1(e)に示すように、第二のレジスト膜6の、複数の被覆パターン5を形成した位置とは異なる位置を選択的に露光し、現像する。現像により、第二のレジスト膜6の露光部が除去され、結果、複数の第二のレジストパターン7と、複数の被覆パターン5とからなるパターン(以下、このように、レジストパターンと被覆パターンとからなるパターンを複合パターンということがある。)が支持体1上に形成される。
【0137】
このようにして、支持体1上に、パターニング工程(1)で形成したレジストパターン3よりも狭ピッチの複合パターンが形成される。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0138】
[膜形成工程(1)]
支持体1としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたものなどを例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板などが挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金などが使用可能である。
【0139】
また、支持体1としては、上述のような基板上に、無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層膜などの有機膜が挙げられる。特に、下層膜が設けられていると、基板上に、高アスペクト比のパターンを形成でき、半導体の製造などにおいて有用であり、好ましい。
【0140】
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層膜)と、少なくとも一層のレジスト膜とを設け、上層のレジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。多層レジスト法には、基本的に、上層のレジスト膜と、下層膜との二層構造とする方法と、これらのレジスト膜と下層膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法とに分けられる。多層レジスト法によれば、下層膜により所要の厚みを確保することにより、レジスト膜を薄膜化し、高アスペクト比の微細パターン形成が可能となる。
【0141】
有機膜を設ける場合、有機膜は、例えば、有機膜を構成する樹脂成分などを有機溶剤に溶解した有機膜形成用材料を基板にスピンナーなどで塗布し、好ましくは200〜300℃、好ましくは30〜300秒間、より好ましくは60〜180秒間の加熱条件でベーク処理することにより形成できる。有機膜形成用材料については、詳しくは後述する。
【0142】
有機膜の厚さは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは50〜450nmである。この範囲内とすることにより、高アスペクト比のパターンが形成できる、基板エッチング時に十分な耐エッチング性が確保できるなどの効果がある。
【0143】
第一の化学増幅型レジスト組成物としては、特に制限はなく、上述したような、化学増幅型レジスト組成物として提案されている多数の化学増幅型レジスト組成物の中から適宜選択して用いることができる。
【0144】
第一のレジスト膜2は、第一の化学増幅型レジスト組成物を支持体上に塗布することにより形成できる。第一の化学増幅型レジスト組成物の塗布は、スピンナーなどを用いる従来公知の方法によって行うことができる。
【0145】
具体的には、たとえば第一の化学増幅型レジスト組成物を支持体上にスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、ベーク処理(プレベーク)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、有機溶剤を揮発させることにより第一のレジスト膜を形成できる。
【0146】
レジスト膜2の厚さは、好ましくは50〜500nm、より好ましくは50〜450nmである。この範囲内とすることにより、レジストパターンを高解像度で形成できる、エッチングに対する十分な耐性が得られるなどの効果がある。
【0147】
[パターニング工程(1)]
パターニング工程(1)は、従来公知の方法を利用して行うことができ、例えば、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介して第一のレジスト膜2を選択的に露光し、80〜150℃の温度条件下、ベーク処理(PEB(露光後加熱))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施して施し、例えば0.1〜10質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でアルカリ現像すると、使用したレジスト組成物がポジ型である場合は露光部が除去され、ネガ型である場合は未露光部が除去されて第一のレジストパターン3が形成される。
【0148】
露光に用いる波長は、特に限定されず、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。
【0149】
このとき、第一のレジスト膜2の選択的露光は、空気や窒素などの不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光により行ってもよい。
【0150】
液浸露光では、上述したように、露光時に、従来は空気や窒素などの不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト膜との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たした状態で露光を行う。より具体的には、液浸露光は、上記のようにして得られたレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で、所望のマスクパターンを介して露光(浸漬露光)することによって実施できる。
【0151】
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ本発明のポジ型レジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
【0152】
空気の屈折率よりも大きく、かつレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0153】
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl2、COCH、COC、Cなどのフッ素系化合物を主成分とする液体などが挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
【0154】
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
【0155】
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
【0156】
[被覆工程]
次に、形成した複数の第一のレジストパターン3の表面に、それぞれ、水溶性樹脂膜からなる被覆膜4を形成して複数の被覆パターン5を形成する。
【0157】
被覆膜4の形成方法としては、水溶性樹脂及び水溶性架橋剤を含有してなる水溶液から構成される被覆膜形成用材料を用いる方法が好ましく用いられる。被覆膜形成用材料については、後述する本発明の被覆膜形成用材料において詳細に説明する。
【0158】
この被覆膜形成用材料を用いる場合、被覆膜4は、例えば、当該被覆膜形成用材料をパターンの表面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜にベーク処理を施すことによって形成できる。なお、ベーク処理の前に、80〜180℃の温度で30〜180秒程度、塗膜にプレベーク処理を施すようにしても構わない。
【0159】
被覆膜形成用材料の塗布方法は、公知の方法が使用でき、例えば、第一のレジストパターン3が形成された支持体1を、被覆膜形成用材料中に浸漬する方法(ディップコート法)、被覆膜形成用材料をスピンコート法により当該支持体1上に塗布する方法などが挙げられる。また、交互吸着法等の方法によっても形成することができる。
【0160】
被覆工程においては、被覆膜形成用材料の塗布後、塗膜にベーク処理を施す。ベーク処理を施すことにより、第一のレジストパターン3からの酸の拡散が促進され、第一のレジストパターン3と塗膜との界面において架橋反応が起こる。この架橋反応により、第一のレジストパターンの表面に被覆膜4が形成される。
【0161】
ベーク処理において、ベーク温度は、70〜180℃が好ましく、80〜170℃がより好ましい。この範囲内とすることにより、強固な被覆膜4が形成できる。ベーク時間は、特に制限はないが、ベーク処理による効果、パターン形状の安定性などを考慮すると、30〜300秒間が好ましく、60〜180秒間がより好ましい。
【0162】
被覆工程においては、被覆膜形成用材料の塗布後、支持体1表面を洗浄液で洗浄することが好ましい。これにより、支持体1上の、レジスト膜が存在しない部分(非パターン部分)の表面に余分な水溶性樹脂が付着していたとしても、当該洗浄液によって洗い流されるか、または濃度が非常に薄くなる。一方、レジストパターン3表面の水溶性樹脂は、架橋しているためそのまま残る。その結果、レジストパターン3表面には水溶性樹脂膜が充分に形成されるが、支持体1上の非パターン部表面には水溶性樹脂膜が形成されないかほとんど形成されず、高い被覆選択性で、レジストパターン3表面に水溶性樹脂膜(被覆膜4)を形成できる。
【0163】
さらに、洗浄を行うことにより、被覆膜4は、膜厚が薄くて均一なものとなる。すなわち、洗浄を行うと、レジストパターン3上の、架橋していない余分な水溶性樹脂が除去され、一方、架橋により強くパターン表面に結合した水溶性樹脂はパターン表面に均一に残る。そのため、ナノメーターレベルの水溶性樹脂の薄膜が、均一な膜厚で、極めて精度よく、かつ高い再現性で形成される。
【0164】
洗浄液としては、未架橋の水溶性樹脂などを溶解して除去できるものであればよく、例えば、後述する被覆膜形成用材料の溶媒として挙げるものと同様のものを用いることができる。
【0165】
洗浄は、公知の方法を用いて行うことができ、例えば洗浄液をスプレー法などによって、被覆膜形成用材料からなる塗膜の表面に供給した後、余分な洗浄液を減圧下で吸引して行う方法や、洗浄液に浸漬洗浄する方法、スプレー洗浄する方法、蒸気洗浄する方法、洗浄液をスピンコート法により支持体上に塗布する方法などが挙げられ、特にスピンコート法が好ましい。洗浄条件(洗浄時間、洗浄液の使用量等)は、洗浄方法などを考慮して適宜設定すればよい。例えばスピンコート法による洗浄を行う場合、100〜5000rpm、1〜100秒間程度の範囲内で適宜調節すればよい。
【0166】
洗浄は、被覆膜形成用材料からなる塗膜中の溶媒が完全に揮発する前に行うことが好ましい。該溶媒が完全に揮発していないかどうかは、視認により確認できる。
【0167】
被覆膜4の厚さは、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは0.5〜50nmであり、さらに好ましくは1〜30nmである。0.1nm以上とすることにより、エッチング、例えば酸素プラズマエッチングなどのドライエッチングに対する十分な耐性が得られるなどの効果がある。
【0168】
[膜形成工程(2)]
次に、複数の被覆パターン5が形成された支持体1上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布し、複数の被覆パターン5間の空隙を充填する第二のレジスト膜6を形成する。
【0169】
本実施形態においては、第二の化学増幅型レジスト組成物として、ポジ型レジスト組成物を用いる。前記膜形成工程(1)において第一の化学増幅型レジスト組成物として、ポジ型レジスト組成物を用いる場合、第一の化学増幅型レジスト組成物と第二の化学増幅型レジスト組成物とは、同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0170】
第二のレジスト膜6は、第一のレジスト膜2と同様、従来公知の方法によって形成することができる。第二のレジスト膜6の膜厚は、少なくとも、被覆パターン5の高さと同じか、それよりも厚いことが好ましい。すなわち、支持体1を第二のレジスト膜6側から見た場合に、その表面が平坦であることが好ましい。
【0171】
[パターニング工程(2)]
次に、第二のレジスト膜6の、複数の被覆パターン5を形成した位置とは異なる位置を選択的に露光し、現像する。これにより、支持体1上に、複数の被覆パターン5と、第二のレジスト膜6に新たに形成された複数の第二のレジストパターン7とからなる複合パターンが形成される。
【0172】
ここで、本発明においては、被覆工程で形成した被覆パターンと完全に一致する場合以外はすべて「被覆パターンを形成した位置とは異なる位置」であり、全く重複していない場合、及び一部重複している場合を含むものとする。
【0173】
本発明においては、被覆パターンを形成した位置と、パターニング工程(2)で選択的に露光する位置とが全く重複しないことが好ましい。これにより、パターニング工程(1)で形成したレジストパターンよりも、パターン間の間隔(ピッチ)が狭い狭ピッチのパターンが形成できる。
【0174】
被覆パターンを形成した位置とは異なる位置の選択的露光は、例えば、パターニング工程(1)で用いたマスクパターンを水平方向に移動させて行うことができる。このようなマスクパターンの移動は、使用する露光装置のプログラムを調節することにより実施できる。マスクパターンは、1つの方向に平行移動させてもよく、回転移動させてもよい。例えば、パターンを形成する場合、パターニング工程(1)で、複数のラインが一定のピッチで配置されたラインアンドスペースのマスクパターンを用いてラインアンドスペースパターンを形成した後、パターニング工程(2)で、当該マスクパターンを、ラインの方向に対して垂直方向に平行移動させ、パターニング工程(1)で形成したラインパターンとラインパターンとの中間位置にラインパターンを形成することにより、最初に形成したラインアンドスペースのピッチの約1/2のピッチで、ラインアンドスペースの複合パターンが形成される。
【0175】
例えば、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:3のラインアンドスペースパターンを形成した後、マスクパターンを、ラインの方向に対して垂直方向に200nm平行移動させ、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:3のラインアンドスペースパターンを形成することにより、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:1のラインアンドスペースパターンを形成することができる。
【0176】
また、パターニング工程(1)で用いたマスクパターンを回転移動させたり、パターニング工程(1)で用いたマスクパターンとは異なるマスクパターンを用いたりすることにより、多様な複合パターンを形成することができる。
【0177】
マスクパターンを移動させる方法以外の方法としては、露光機中のステージ(基板を載せている台)を移動させる方法を用いることもできる。
【0178】
本発明のパターン形成方法においては、上記パターニング工程(2)後、さらに、形成された複合パターンの表面に水溶性樹脂膜からなる被覆膜を形成する第二の被覆工程を行ってもよい。これにより、複合パターン中の、第二のレジスト膜6に形成された第二のレジストパターン7の表面が、水溶性樹脂膜からなる被覆膜で被覆され、エッチング耐性などが向上する。
【0179】
本発明のパターン形成方法においては、上記パターニング工程(2)後、さらに、上述した被覆工程、膜形成工程(2)、パターニング工程(2)の一連の操作を複数回繰り返して行ってもよい。すなわち、形成された複合パターン表面に、水溶性樹脂膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成し、該被覆パターンが形成された支持体1上に化学増幅型レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成し、該レジスト膜を選択的に露光し、現像して複合パターンを形成する操作を複数回行ってもよい。これにより、さらに狭ピッチのパターンを形成したり、複雑な形状のパターンを形成したりすることができる。
【0180】
本発明のパターン形成方法においては、上記パターニング工程(2)後、形成された複合パターンをマスクとして用いて支持体1のエッチングを行ってもよい。すなわち、基板上に有機膜が設けられている場合は有機膜のエッチングを行うことができ、該有機膜に、複合パターンに忠実なパターン(有機膜パターン)を形成でき、さらに、これらのパターン(複合パターン及び有機膜パターン)をマスクとして基板のエッチングを行うことができる。複合パターンが基板上に直接形成されている場合は、そのまま、複合パターンをマスクとして、基板のエッチングを行うことができる。このように基板をエッチングすることにより、半導体デバイスなどを製造することができる。
【0181】
エッチングの方法は、公知の方法が利用でき、例えば有機膜のエッチングは、ドライエッチングが好ましい。特に、被覆膜のそれらのエッチングに対する耐性が高い点、生産効率の点から、酸素プラズマエッチング、又はCFガス若しくはCHFガスを用いたエッチングが好ましく、中でも酸素プラズマエッチングが好ましい。基板のエッチングは、ハロゲンガスを用いたエッチングが好ましく、フッ化炭素系ガスを用いたエッチングが好ましく、特にCFガス又はCHFガスを用いたエッチングが好ましい。
【0182】
[有機膜形成用材料]
上述した膜形成工程(1)に用いられる支持体1において、基板上に形成されていてもよい有機膜を形成するための有機膜形成用材料は、レジスト膜のような、電子線や光に対する感受性を必ずしも必要とするものではない。半導体素子や液晶表示素子の製造において、一般的に用いられているレジストや樹脂を用いればよい。
【0183】
また、被覆膜にて被覆された被覆パターンを用いて有機膜をエッチングすることにより、該被覆パターンを有機膜へ転写し、有機膜パターンを形成できるように、有機膜形成用材料は、エッチング、特にドライエッチング可能な有機膜を形成できる材料であることが好ましい。中でも酸素プラズマエッチングなどのエッチングが可能な有機膜を形成できる材料であることが好ましい。
【0184】
このような有機膜形成用材料としては、従来、有機BARCなどの有機膜を形成するために用いられている材料であってよい。例えば、ブリューワサイエンス社製のARCシリーズ、ロームアンドハース社製のARシリーズ、東京応化工業社製のSWKシリーズなどが挙げられる。
【0185】
中でも、上述した様に、エッチング工程において酸素プラズマエッチングを用いる場合、有機膜を、酸素プラズマエッチングによりエッチングしやすく、かつハロゲンガス、具体的にはCFガス又はCHFガスなどのフッ化炭素系ガスに対して耐性が比較的高い材料から構成すると好ましい。
【0186】
また、上記有機BARCと基板との間に、ノボラック樹脂、アクリル樹脂及び可溶性ポリイミドからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂成分を含む有機膜を形成してもよい。
【0187】
これらの材料は、酸素プラズマエッチングなどのエッチングを行いやすいと同時に、フッ化炭素系ガスに対する耐性が強く、本発明において好適である。すなわち一般に、基板などのエッチングはフッ化炭素系ガスなどのハロゲンガスを用いて行われるので、このような材料から有機膜を構成することにより、有機膜パターンを形成する際に酸素プラズマエッチングを用いて加工性を向上させるとともに、基板などをエッチングするフッ化炭素系ガスなどのハロゲンガスを用いた後工程においては、耐エッチング性を向上させることができる。
【0188】
これらの樹脂成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0189】
上記の中でも、ノボラック樹脂、及び側鎖に脂環式部位又は芳香族環を有するアクリル樹脂は、安価で汎用的に用いられ、フッ化炭素系ガスを用いたドライエッチングに対する耐性に優れるので、好ましく用いられる。
【0190】
ノボラック樹脂としては、ポジ型レジスト組成物に一般的に用いられているものが使用可能であるし、ノボラック樹脂を主成分として含むi線やg線用のポジ型レジストも使用可能である。
【0191】
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール性水酸基を持つ芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる樹脂である。
【0192】
フェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトールなどが挙げられる。
【0193】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒドなどが挙げられる。
【0194】
付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、酢酸などが使用される。
【0195】
ノボラック樹脂は、市販されているものを使用することもできる。
【0196】
ノボラック樹脂の質量平均分子量(Mw)の下限値としては、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、6000以上がより好ましく、7000以上がさらに好ましい。上限値としては、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましく、10000以下がさらに好ましく、9000以下が最も好ましい。
【0197】
Mwが3000以上であると、高温でベークしたときに昇華しにくく、装置が汚染されにくい。また、Mwを5000以上とすることにより、フッ化炭素系ガスなどに対する耐エッチング性が優れるので好ましい。また、Mwが50000以下であると、微細な凹凸を有する基板に対する良好な埋め込み特性が優れ、特に10000以下であると、ドライエッチングしやすい傾向があり、好ましい。
【0198】
ノボラック樹脂としては、特に、Mwが5000〜50000、好ましくは8000〜30000であり、かつ分子量500以下の低核体、好ましくは200以下の低核体の含有量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法において1質量%以下、好ましくは0.8質量%以下であるノボラック樹脂が好ましい。低核体の含有量は、少ないほど好ましく、望ましくは0質量%である。
【0199】
上記範囲内のMwを有するノボラック樹脂において、分子量500以下の低核体の含有量が1質量%以下であることにより、微細な凹凸を有する基板に対する埋め込み特性が良好になる。低核体の含有量が低減されていることにより埋め込み特性が良好になる理由は明らかではないが、分散度が小さくなるためと推測される。
【0200】
ここで、「分子量500以下の低核体」とは、ポリスチレンを標準としてGPC法により分析した際に分子量500以下の低分子フラクションとして検出されるものである。「分子量500以下の低核体」には、重合しなかったモノマーや、重合度の低いもの、例えば、分子量によっても異なるが、フェノール類2〜5分子がアルデヒド類と縮合したものなどが含まれる。
【0201】
分子量500以下の低核体の含有量(質量%)は、このGPC法による分析結果を、横軸にフラクション番号、縦軸に濃度をとってグラフとし、全曲線下面積に対する、分子量500以下の低分子フラクションの曲線下面積の割合(%)を求めることにより測定される。
【0202】
アクリル樹脂としては、ポジ型レジスト組成物に一般的に用いられているものが使用可能であり、例えば、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位と、カルボキシ基を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含有するアクリル樹脂を挙げることができる。
【0203】
エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体などを例示することができる。これらの化合物は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、本明細書において(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの一方あるいは両方を示す。
【0204】
カルボキシ基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシ基及びエステル結合を有する化合物などを例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は単独又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0205】
可溶性ポリイミドとは、有機溶剤により液状にできるポリイミドである。
【0206】
有機膜形成用材料には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えば有機膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜含有させることができる。
【0207】
有機膜形成用材料は、上述した樹脂成分などの材料を有機溶剤に溶解させて製造することができる。有機溶剤としては、上述した化学増幅型レジスト組成物の(S)成分として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0208】
なお、レジスト膜と有機膜との間に、シリコン系材料からなるハードマスク層を用いてもよい。
【0209】
≪被覆膜形成用材料≫
本発明の被覆膜形成用材料は、水溶性樹脂及び水溶性架橋剤を含有してなる水溶液から構成されるものであり、前記本発明のパターン形成方法において、前記被覆膜を形成するために用いられるものである。
【0210】
<水溶性樹脂>
水溶性樹脂は、室温で水に溶解し得る樹脂であればよく、特に制限されるものでないが、本発明ではアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、及びアミド系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を含む構成とするのが好ましい。
【0211】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルホリンなどのモノマーを構成成分とするポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0212】
ビニル系樹脂としては、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾリジノン、酢酸ビニルなどのモノマーを構成成分とするポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0213】
セルロース系樹脂としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、セルロールアセテートヘキサヒドロフタレート、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。
【0214】
さらに、アミド系樹脂の中で水溶性のものも用いることができる。
【0215】
中でも、ビニル系樹脂が好ましく、特にはポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールが好ましい。
【0216】
この水溶性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水溶性樹脂の配合量は、被覆膜を使用上必要十分な膜厚とするためには、被覆膜形成用材料の固形分中、1〜99質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは40〜99質量%程度であり、さらに好ましくは65〜99質量%程度である。
【0217】
<水溶性架橋剤>
水溶性架橋剤は、その構造中に少なくとも1個の窒素原子を有する。このような水溶性架橋剤としては、少なくとも2個の水素原子がヒドロキシアルキル基及び/又はアルコキシアルキル基で置換された、アミノ基及び/又はイミノ基を有する含窒素化合物が好ましく用いられる。これら含窒素化合物としては、例えばアミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコシキメチル基あるいはその両方で置換された、メラミン系誘導体、尿素系誘導体、グアナミン系誘導体、アセトグアナミン系誘導体、ベンゾグアナミン系誘導体、スクシニルアミド系誘導体や、イミノ基の水素原子が置換されたグリコールウリル系誘導体、エチレン尿素系誘導体などを挙げることができる。
【0218】
これら含窒素化合物の中でも、架橋反応性の点から、少なくとも2個の水素原子がメチロール基、又は(低級アルコキシ)メチル基、あるいはその両方で置換されたアミノ基あるいはイミノ基を有する、ベンゾグアナミン系誘導体、グアナミン系誘導体、メラミン系誘導体などのトリアジン誘導体、グリコールウリル系誘導体、及び尿素系誘導体のうちの1種以上が好ましい。
【0219】
水溶性架橋剤の配合量は、被覆膜形成用材料の固形分中、1〜99質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは1〜60質量%程度であり、さらに好ましくは1〜35質量%程度である。
【0220】
<溶媒>
本発明の被膜形成用材料は、水溶性樹脂及び水溶性架橋剤を含有してなる水溶液として通常用いられる。この被膜形成用材料は、3〜50質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましく、5〜20質量%濃度の水溶液として用いるのがより好ましい。濃度が3質量%未満ではレジストパターンへの被覆不良となるおそれがあり、一方、50質量%超では、濃度を高めたことに見合う効果の向上が認められず、取扱い性の点からも好ましくない。
【0221】
なお、溶媒としては、水とアルコール系溶媒との混合溶媒を用いることもできる。アルコール系溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコールなどが挙げられる。これらのアルコール系溶媒は、水に対して30質量%を上限として混合して用いられる。
【0222】
<任意成分>
被膜膜形成用材料には、水溶性樹脂及び水溶性架橋剤の他に、以下のように任意成分を配合してもよい。
【0223】
・界面活性剤
被膜膜形成用材料には、例えば界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、上記水溶性樹脂に対し溶解性が高く、懸濁を発生しないなどの特性が必要である。このような特性を満たす界面活性剤を用いることにより、特に被覆膜形成用材料を塗布する際の気泡(マイクロフォーム)発生を抑えることができ、このマイクロフォーム発生と関係があるとされるディフェクトの発生の防止を図ることができる。上記の点から、N−アルキルピロリドン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、ポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤、ノニウム系界面活性剤のうちの1種以上が好ましく用いられる。
【0224】
N−アルキルピロリドン系界面活性剤としては、下記一般式(13)で表されるものが好ましい。
【化20】

[式(13)中、R20は炭素数6以上のアルキル基を示す]
【0225】
かかるN−アルキルピロリドン系界面活性剤として、具体的には、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−へプチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、N−ノニル−2−ピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、N−ウンデシル−2−ピロリドン、N−ドデシル−2−ピロリドン、N−トリデシル−2−ピロリドン、N−テトラデシル−2−ピロリドン、N−ペンタデシル−2−ピロリドン、N−ヘキサデシル−2−ピロリドン、N−ヘプタデシル−2−ピロリドン、N−オクタデシル−2−ピロリドンなどが挙げられる。中でもN−オクチル−2−ピロリドン(「SURFADONE LP100」;ISP社製)が好ましく用いられる。
【0226】
第4級アンモニウム系界面活性剤としては、下記一般式(14)で表されるものが好ましい。
【化21】

[式(14)中、R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し(ただし、そのうちの少なくとも1つは炭素数6以上のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す)、Xは水酸化物イオン又はハロゲンイオンを示す。]
【0227】
かかる第4級アンモニウム系界面活性剤として、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ペンタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、へプタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。中でも、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく用いられる。
【0228】
ポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤としては、下記一般式(15)で表されるものが好ましい。
【化22】

[式(15)中、R25は炭素数1〜10のアルキル基又はアルキルアリル基を示し、R26は水素原子又は(CHCHO)R25(R25は上記で定義したとおり)を示し、xは1〜20の整数を示す。]
【0229】
かかるポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤としては、具体的には「プライサーフA212E」、「プライサーフA210G」(以上、いずれも第一工業製薬(株)製)などとして市販されているものを好適に用いることができる。
【0230】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル化物又はアルキルアミンオキシド化合物であることが好ましい。
【0231】
ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル化物は、下記一般式(16)又は(17)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化23】

【0232】
上記一般式(16)、(17)において、R27及びR28は、炭素数1〜22の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、水酸基を有するアルキル基、又はアルキルフェニル基を示す。Aはオキシアルキレン基であり、オキシエチレン、オキシプロピレン、及びオキシブチレン基の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。yは整数である。
【0233】
アルキルアミンオキシド化合物は、下記一般式(18)又は(19)で示される化合物が好ましく用いられる。
【化24】

【0234】
上記一般式(18)、(19)において、R29は酸素原子で中断されていてもよい炭素数8〜20のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、p及びqは1〜5の整数を示す。
【0235】
上記一般式(18)、(19)で表されるアルキルアミンオキシド化合物としては、オクチルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、イソヘキシルジエチルアミンオキシド、ノニルジエチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド、イソペンタデシルメチルエチルアミンオキシド、ステアリルメチルプロピルアミンオキシド、ラウリルジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシド、セチルジエタノールアミンオキシド、ステアリルジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ドデシルオキシエトキシエトキシエチルジ(メチル)アミンオキシド、ステアリルオキシエチルジ(メチル)アミンオキシドなどが挙げられる。
【0236】
これらの界面活性剤の中でも、特にディフェクト低減の点からは、ノニウム系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0237】
界面活性剤の配合量は、被覆膜形成用材料の固形分中、0.1〜10質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは0.2〜2質量%程度である。上記配合量範囲を外れた場合、塗布性の悪化、あるいはマイクロフォームと呼ばれる塗布時に発生する気泡に関係が深いと考えられるディフェクトの発生といった問題が生じるおそれがある。
【0238】
・水溶性フッ素化合物
被膜膜形成用材料には、水溶性フッ素化合物を配合してもよい。水溶性フッ素化合物としては、特に限定されるものではないが、上記水溶性樹脂に対し溶解性が高く、懸濁を発生しないなどの特性が必要である。このような特性を満たす水溶性フッ素化合物を用いることにより、レベリング性(被膜膜形成用材料の広がり度合い)を向上させることができる。このレベリング性は、界面活性剤の添加による接触角の引き下げにより達成することも可能であるが、界面活性剤添加量を過剰にした場合、ある一定以上の塗布向上性が認められないばかりか、過剰量とすることにより、塗布した際に、塗布条件によっては被覆膜上に気泡(マイクロフォーム)が発生し、ディフェクトの原因となり得るという問題がある。この水溶性フッ素化合物を配合することにより、そのような発泡を抑制しつつ、接触角を下げ、レベリング性を向上させることができる。
【0239】
かかる水溶性フッ素化合物としては、フルオロアルキルアルコール類、フルオロアルキルカルボン酸類などが好ましく用いられる。フルオロアルキルアルコール類としては、2−フルオロ−1−エタノール、2,2−ジフルオロ−1−エタノール、トリフルオロエタノール、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロアミルアルコールなどが挙げられる。フルオロアルキルカルボン酸類としては、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。ただし、これら例示に限定されるものではなく、水溶性を有するフッ素化物であって、上述の効果を奏するものであれば限定されない。特には、炭素数6以下のフルオロアルキルアルコール類が好ましく用いられる。中でも入手しやすさなどの点から、トリフルオロエタノールが特に好ましい。
【0240】
水溶性フッ素化合物の配合量は、被覆膜形成用材料の固形分中、0.1〜30質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%程度である。上記配合量範囲未満では塗布性が悪化するおそれがある。また上記配合量より過剰量配合した場合、配合量に見合うレベリング性の向上は望めない。
【0241】
・アミド基含有モノマー
被膜膜形成用材料には、アミド基含有モノマーを配合してもよい。アミド基含有モノマーとしては、特に限定されるものではないが、上記水溶性樹脂に対し溶解性が高く、懸濁を発生しないなどの特性が必要である。
【0242】
かかるアミド基含有モノマーとしては、下記一般式(20)で表されるアミド化合物が好ましく用いられる。
【化25】

【0243】
上記一般式(20)において、R30は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示し、R31は炭素数1〜5のアルキル基を示し、R32は水素原子又はメチル基を示し、zは0〜5の数を示す。上記においてアルキル基、ヒドロキシアルキル基は直鎖、分岐鎖のいずれも含む。
【0244】
上記一般式(20)中、R30が水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、zが0であるアミド基含有モノマーがより好ましく用いられる。このようなアミド基含有モノマーとしては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミドなどが挙げられる。中でも、アクリルアミド、メタクリルアミドが特に好ましい。
【0245】
アミド基含有モノマーの配合量は、被覆膜形成用材料の固形分中、0.1〜30質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは1〜15質量%程度である。0.1質量%未満では所望の効果を得ることが難しく、一方、30質量%を超えても配合量に見合う効果の向上が得られない。
【0246】
・少なくとも酸素原子及び/又は窒素原子を有する複素環式化合物
被膜膜形成用材料には、少なくとも酸素原子及び/又は窒素原子を有する複素環式化合物を配合してもよい。
【0247】
かかる複素環式化合物としては、オキサゾリジン骨格を有する化合物、オキサゾリン骨格を有する化合物、オキサゾリドン骨格を有する化合物、およびオキサゾリジノン骨格を有する化合物の中から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0248】
オキサゾリジン骨格を有する化合物としては、下記構造式(21)で示されるオキサゾリンのほか、その置換体が挙げられる。
【化26】

【0249】
該置換体としては、上記構造式(21)で示されるオキサゾリンの炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、(低級アルコキシ)アルキル基などが挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0250】
オキサゾリン骨格を有する化合物としては、下記構造式(22−1)で示される2−オキサゾリン、構造式(22−2)で示される3−オキサゾリン、構造式(22−3)で示される4−オキサゾリンのほか、それらの置換体が挙げられる。
【化27】

【0251】
該置換体としては、上記構造式(22−1)〜(22−3)で示されるオキサゾリン骨格を有する化合物の炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、(低級アルコキシ)アルキル基などが挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0252】
該オキサゾリン骨格を有する化合物の中でも、下記構造式(22−1−A)で示される2−メチル2−オキサゾリンが好ましく用いられる。
【化28】

【0253】
オキサゾリドン骨格を有する化合物としては、下記構造式(23−1)で示される5(4)−オキサゾロン、下記構造式(23−2)で示される5(2)−オキサゾロン、下記構造式(23−3)で示される4(5)−オキサゾロン、下記構造式(23−4)で示される2(5)−オキサゾロン、下記構造式(23−5)で示される2(3)−オキサゾロンのほか、それらの置換体が挙げられる。
【化29】

【0254】
該置換体としては、上記構造式(23−1)〜(23−5)で示されるオキサゾリドン骨格を有する化合物の炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、(低級アルコキシ)アルキル基などが挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0255】
オキサゾリジノン骨格を有する化合物(又は2−オキサゾリドン骨格を有する化合物)としては、下記構造式(24)で示されるオキサゾリジノン(又は2−オキサゾリドン)のほか、その置換体が挙げられる。
【化30】

【0256】
該置換体としては、上記構造式(24)で示されるオキサゾリジノン(又は2−オキサゾリドン)の炭素原子あるいは窒素原子に結合する水素原子が、炭素数1〜6の置換若しくは未置換の低級アルキル基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基で置換された化合物が挙げられる。上記置換された低級アルキル基としては、ヒドロキシアルキル基、(低級アルコキシ)アルキル基などが挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0257】
該オキサゾリジノン骨格を有する化合物の中でも、下記構造式(24−1)で示される3−メチル−2−オキサゾリドンが好ましく用いられる。
【化31】

【0258】
少なくとも酸素原子及び/又は窒素原子を有する複素環式化合物の配合量は、上記水溶性樹脂に対し、1〜50質量%とするのが好ましく、より好ましくは3〜20質量%である。1質量%未満では所望の効果を得ることが難しく、一方、50質量%を超えても配合量に見合う効果の向上が得られない。
【0259】
・少なくとも同一環内に2個以上の窒素原子を有する複素環式化合物
被膜膜形成用材料には、少なくとも同一環内に2個以上の窒素原子を有する複素環式化合物を配合してもよい。
【0260】
かかる複素環式化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、2−ピラゾリン、5−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、2,3−ジメチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、2,3−ジメチル−4−ジメチルアミノ−1−フェニル−5−ピラゾロン、ベンゾピラゾールなどのピラゾール系化合物;イミダゾール、メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、4−(2−アミノエチル)イミダゾール、2−アミノ−3−(4−イミダゾリル)プロピオン酸などのイミダゾール系化合物;2−イミダゾリン、2,4,5−トリフェニル−2−イミダゾリン、2−(1−ナフチルメチル)−2−イミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物;イミダゾリジン、2−イミダゾリドン、2,4−イミダゾリジンジオン、1−メチル−2,4−イミダゾリジンジオン、5−メチル−2,4−イミダゾリジンジオン、5−ヒドロキシ−2,4−イミダゾリジンジオン−5−カルボン酸、5−ウレイド−2,4−イミダゾリジンジオン、2−イミノ−1−メチル−4−イミダゾリドン、2−チオキソ−4−イミダゾリドンなどのイミダゾリジン系化合物;ベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−ベンゾイミダゾリノンなどのベンゾイミダゾール系化合物;1,2−ジアジン、1,3−ジアジン、1,4−ジアジン、2,5−ジメチルピラジンなどのジアジン系化合物;2,4(1H,3H)ピリミジンジオン、5−メチルウラシル、5−エチル−5−フェニル−4,6−パーヒドロピリミジンジオン、2−チオキソ−4(1H,3H)−ピリミジノン、4−イミノ−2(1H,3H)−ピリミジン、2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオンなどのヒドロピリミジン系化合物;シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ルミノールなどのベンゾジアジン系化合物;ベンゾシノリン、フェナジン、5,10−ジヒドロフェナジンなどのジベンゾジアジン系化合物;1H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール系化合物;ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオール、2,4,6−トリメトキシ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−2−オールなどのトリアジン系化合物、などが挙げられるが、これら例示に限定されるものではない。
【0261】
中でも、取り扱いが容易であり、さらには入手が容易である、などの点から、イミダゾール系化合物の単量体が好ましく用いられ、特にはイミダゾールが好ましく用いられる。
【0262】
少なくとも同一環内に2個以上の窒素原子を有する複素環式化合物の配合量は、上記水溶性樹脂に対し、1〜15質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは2〜10質量%程度である。1質量%未満では所望の効果が得られ難く、一方、15質量%を超えると所望の効果が得られ難いのと同時にディフェクト発生のリスクも高くなる。
【0263】
・水溶性アミン化合物
被膜膜形成用材料には、水溶性アミン化合物を配合してもよい。このような水溶性アミン化合物を用いることにより、不純物発生防止、pH調整などが可能となる。
【0264】
かかる水溶性アミン化合物としては、25℃の水溶液におけるpKa(酸解離定数)が7.5〜13のアミン類が挙げられる。具体的には、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンなどのポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族アミン類;ベンジルアミン、ジフェニルアミンなどの芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジンなどの環状アミン類などが挙げられる。中でも、沸点140℃以上(760mmHg)のものが好ましく、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが好ましく用いられる。
【0265】
水溶性アミン化合物の配合量は、被覆膜形成用材料の固形分中、0.1〜30質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは2〜15質量%程度である。0.1質量%未満では経時による液の劣化が生じるおそれがあり、一方、30質量%を超えるとレジストパターンの形状悪化を生じるおそれがある。
【0266】
・非アミン系水溶性有機溶媒
被膜膜形成用材料には、非アミン系水溶性有機溶媒を配合してもよい。このような非アミン系水溶性有機溶媒を用いることにより、ディフェクトの発生を抑制することができる。
【0267】
かかる非アミン系水溶性有機溶媒としては、水と混和性のある非アミン系有機溶媒であればよく、例えばジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホンなどのスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンなどのラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノンなどのイミダゾリジノン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール類及びその誘導体が挙げられる。中でも、ディフェクト発生抑制などの点から多価アルコール類及びその誘導体が好ましく、特にはグリセリンが好ましく用いられる。非アミン系水溶性有機溶媒は1種又は2種以上を用いることができる。
【0268】
非アミン系水溶性有機溶媒の配合量は、上記水溶性樹脂に対し、0.1〜30質量%程度とするのが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%程度である。0.1質量%未満ではディフェクト低減効果が低くなりがちであり、一方、30質量%を超えるとレジストパターンとの間でミキシング層を形成しがちとなり、好ましくない。
【実施例】
【0269】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【0270】
[実施例1]
ArFレジスト組成物「TArF−P6111」(東京応化工業株式会社製)を、8インチシリコン基板の上にスピンコート塗布し、140℃、60秒の条件でプレベーク処理(PAB)を施すことにより、膜厚243nmのレジスト膜を形成した。ついで、このレジスト膜を、KrFエキシマレーザー露光機NSR−S203(Nikon社製、NA=0.68、σ=0.75)を用いて、ライン幅250nm、ピッチ750nmのマスクを介して選択的に露光した。ついで、140℃、60秒の条件でベーク処理(PEB)を施した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて30秒間現像し、脱イオン水で20秒間洗浄した。その結果、レジスト膜に、ライン幅270nmのラインパターンが等間隔に配置されたレジストパターン(以下、パターン(1)という。)が形成された。
【0271】
別途、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン「PVP K30」(BASF社製)、水溶性架橋剤として尿素系架橋剤「N−8314」(三和ケミカル社製)を水溶性樹脂に対して5質量%、界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシドを全体量に対して500ppm配合した水溶液(全固形分濃度=10質量%とした)を、被覆膜形成用材料として調製した。
【0272】
この被覆膜形成用材料を、前記パターン(1)の上に、スピンコートで均一に塗布した後、130℃、60秒の条件でベーク処理を施し、脱イオン水で60秒間洗浄した。その結果、パターン(1)の表面が均一な被覆膜(水溶性樹脂膜)で被覆され、被覆ラインパターンが形成された。
【0273】
続いて、被覆ラインパターンが形成された基板上に、レジスト溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」ともいう)をスピンコートし、140℃にて60秒間乾燥処理した後、該レジスト膜をマスクなしで全面露光を施し、次いで、上記と同じ条件で現像し、脱イオン水で20秒間洗浄した。その結果、被覆ラインパターンの寸法変動は発生しなかった。
【0274】
上記の結果より、本発明の被服膜形成用材料を用いることにより、2回目のパターニングを行った後においても、被覆ラインパターンは、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が溶解することなく維持されると推測できることが確認された。
【0275】
[実施例2]
上記実施例1で用いた被覆形成用材料を、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン「PVP K30」(BASF社製)、水溶性架橋剤としてエチレン尿素系架橋剤「N−1951」(三和ケミカル社製)を水溶性樹脂に対して5質量%、界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシドを全体量に対して500ppm配合した水溶液(全固形分濃度=10質量%とした)とした以外は、全く同様の方法にて、レジストへの耐性試験を行ったところ、実施例1と同様に、被覆ラインパターンの寸法変動は発生せず、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が溶解することなく維持されると推測できることが確認された。
【0276】
[実施例3]
上記実施例1で用いた被覆形成用材料を、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン「PVP K30」(BASF社製)、水溶性架橋剤としてメラミン系架橋剤「Hw30HM」(三和ケミカル社製)を水溶性樹脂に対して5質量%、界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシドを全体量に対して500ppm配合した水溶液(全固形分濃度=10質量%とした)とした以外は、全く同様の方法にて、レジストへの耐性試験を行ったところ、実施例1と同様に、被覆ラインパターンの寸法変動は発生せず、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が溶解することなく維持されると推測できることが確認された。
【0277】
[実施例4]
ArFレジスト組成物「TArF−P6111」(東京応化工業株式会社製)を、8インチシリコン基板の上にスピンコート塗布し、140℃、60秒の条件でプレベーク処理(PAB)を施すことにより、膜厚243nmのレジスト膜を形成した。ついで、このレジスト膜を、KrFエキシマレーザー露光機NSR−S203(Nikon社製、NA=0.68、σ=0.75)を用いて、ライン幅250nm、ピッチ750nmのマスクを介して選択的に露光した。ついで、140℃、60秒の条件でベーク処理(PEB)を施した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて30秒間現像し、脱イオン水で20秒間洗浄した。その結果、レジスト膜に、ライン幅270nmのラインパターンが等間隔に配置されたレジストパターン(以下、パターン(1)という。)が形成された。
【0278】
別途、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン「PVP K30」(BASF社製)、水溶性架橋剤として尿素系架橋剤「N−8314」(三和ケミカル社製)を水溶性樹脂に対して5質量%、界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシドを全体量に対して0.5質量%配合した水溶液(全固形分濃度=10質量%とした)を、被覆膜形成用材料として調製した。
【0279】
この被覆膜形成用材料を、前記パターン(1)の上に、スピンコートで均一に塗布した後、130℃、60秒の条件でベーク処理を施し、脱イオン水で60秒間洗浄した。その結果、パターン(1)の表面が均一な被覆膜(水溶性樹脂膜)で被覆され、被覆ラインパターンが形成された。
【0280】
続いて、被覆ラインパターンが形成された基板上に、再度、前記レジスト組成物を上記と同じ条件で塗布し、プレベーク処理を施してレジスト膜を形成した。該レジスト膜をマスクなしで全面露光した後、上記と同じ条件で現像し、脱イオン水で20秒間洗浄した。その結果、被覆ラインパターンの形状及び寸法に変化は見られなかった。
【0281】
上記の結果より、本発明の被服膜形成用材料を用いることにより、2回目のレジスト膜形成を形成し、露光、現像処理を行った後においても、被覆ラインパターンは、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が溶解することなく維持されることが確認された。
【0282】
[実施例5]
上記実施例4で用いた被覆形成用材料を、水溶性樹脂としてポリビニルピロリドン「VA64W」(BASF社製)、水溶性架橋剤として尿素系架橋剤「N−8314」(三和ケミカル社製)を水溶性樹脂に対して20質量%、界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシドを全体量に対して500ppm配合した水溶液(全固形分濃度=10質量%とした)とした以外は、全く同様の方法にて、レジストへの耐性試験を行ったところ、実施例1と同様に、被覆ラインパターンの形状及び寸法に変化は見られず、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が溶解することなく維持されると推測できることが確認された。
【0283】
[実施例6]
上記実施例4で用いた被覆形成用材料を、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール、水溶性架橋剤として尿素系架橋剤「N−8314」(三和ケミカル社製)を水溶性樹脂に対して10質量%配合した水溶液(全固形分濃度=5質量%とした)とした以外は、全く同様の方法にて、レジストへの耐性試験を行ったところ、実施例1と同様に、被覆ラインパターンの形状及び寸法に変化は見られず、レジスト組成物をその上に塗布する前の形状が溶解することなく維持されると推測できることが確認された。
【0284】
[比較例1]
被覆形成用材料を用いなかった以外は、上記実施例4と同様の手法にてレジストパターンの形成と、レジスト組成物への耐性試験を行った。その結果、第一のレジストパターンは基板上から完全になくなっていた。
【図面の簡単な説明】
【0285】
【図1】本発明のパターン形成方法の好ましい実施形態を説明する概略工程図である。
【図2】従来のダブルパターニング法の一例を説明する概略工程図である。
【符号の説明】
【0286】
1 支持体、 2 第一のレジスト膜、 3 第一のレジストパターン、 4 被覆膜、 5 被覆パターン、 6 第二のレジスト膜、 7 第二のレジストパターン、 101 基板、 102 下層膜、 103 ハードマスク、 104 レジストパターン、 105 マスク、 106 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学増幅型レジスト組成物を用いてパターンを形成するパターン形成方法であって、
支持体上に、第一の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第一のレジスト膜を形成する工程と、
前記第一のレジスト膜を、第一のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第一のレジストパターンを形成する工程と、
前記第一のレジストパターンの表面に、水溶性樹脂膜からなる被覆膜を形成して被覆パターンを形成する工程と、
前記被覆パターンが形成された前記支持体上に第二の化学増幅型レジスト組成物を塗布して第二のレジスト膜を形成する工程と、
前記第二のレジスト膜を、第二のマスクパターンを介して選択的に露光し、現像して第二のレジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記被覆膜が、水溶性樹脂及び水溶性架橋剤を含有してなる水溶液から構成される被覆膜形成用材料を用いて形成される請求項1記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記水溶性樹脂が、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、及びアミド系樹脂のうちの1種以上であることを特徴とする請求項2記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記水溶性樹脂が、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールのうちの1種以上であることを特徴とする請求項2又は3記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記水溶性架橋剤が、トリアジン誘導体、グリコールウリル誘導体、及び尿素誘導体のうちの1種以上であることを特徴とする請求項2から4いずれか記載のパターン形成方法。
【請求項6】
水溶性樹脂及び水溶性架橋剤を含有してなる水溶液から構成される被覆膜形成用材料であって、
請求項1記載のパターン形成方法において、前記被覆膜を形成するために用いられることを特徴とする被覆膜形成用材料。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−83537(P2008−83537A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265115(P2006−265115)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】